(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】電池ユニット
(51)【国際特許分類】
H01M 50/213 20210101AFI20230303BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20230303BHJP
H01M 50/244 20210101ALI20230303BHJP
【FI】
H01M50/213
H01M50/209
H01M50/244 Z
(21)【出願番号】P 2019032919
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】中島 武
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-101809(JP,A)
【文献】特開2011-198570(JP,A)
【文献】特開2017-073195(JP,A)
【文献】特開2007-027011(JP,A)
【文献】特開2015-076369(JP,A)
【文献】特開2009-135088(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003478(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池モジュールと、
前記複数の電池モジュールを収納する外側筐体とを備え、
前記複数の電池モジュールのそれぞれは、
複数の電池セルと、
前記複数の電池セルを収納する内側筐体とを備え、
前記外側筐体は、
前記複数の電池モジュールが配置された前記外側筐体の内部と反対側の前記外側筐体の外側の外側表面であって、かつ少なくとも1つの電池セルに対向した外側表面に、内部に向かって凹んだ形状の外側凹部を備え、
前記少なくとも1つの電池セルを収納する前記電池モジュールの前記内側筐体は、前記複数の電池セルが配置された前記内側筐体の内部と反対側の前記内側筐体の外側の内側表面であって、かつ前記少なくとも1つの電池セルに対向した内側表面に、内部に向かって凹んだ形状の内側凹部を備え、
前記複数の電池セルのそれぞれは、正極板と負極板とを内蔵し、
前記外側凹部は、前記外側表面から前記外側筐体の内部に向かって物体を挿入する場合に、前記内側筐体を介して、前記少なくとも1つの電池セルの正極板と負極板とを前記物体により短絡可能な位置に配置され、
前記外側凹部は、前記外側表面から内部に向かって細くなるテーパー形状を有する第1側面と、前記第1側面の内部側端を塞ぐ第1底面とを含
み、
前記内側凹部は、前記外側凹部から前記内側筐体の内部に向かって前記物体を挿入して、前記少なくとも1つの電池セルの正極板と負極板とを前記物体により短絡させる場合に、前記物体が貫通される位置に配置され、
前記内側凹部は、前記内側表面から内部に向かって細くなるテーパー形状を有する第2側面と、前記第2側面の内部側端を塞ぐ第2底面とを含む、
電池ユニット。
【請求項2】
前記物体は、導体であり、
前記外側凹部は、前記外側表面から前記外側筐体の内部に向かって前記導体を挿入する場合に、前記内側筐体を介して、前記少なくとも1つの電池セルの内部において、当該電池セルの正極板と負極板とを前記物体により短絡可能な位置に配置される、
請求項
1に記載の電池ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池ユニットに関し、特に複数の電池セルを収納する電池ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池のような電池セルは、正極板と負極板との間に、それぞれの極板を電気的に絶縁し、電解液を保持する役割を有する絶縁層を備える。正極板、負極板、絶縁層の表面に付着した導体粉(異物)により絶縁層が破れ、正極板と負極板とが電気的に導通することによって、内部短絡が発生する。内部短絡が一旦発生すると、短絡電流に伴うジュール熱によって、電池セルが破壊してしまう場合も起こり得る。一方、電池セルで内部短絡が生じた場合でも、電池セルの安全性を確保するためには、内部短絡が発生した際の電池セルの安全性を正しく評価することが重要となる。その評価試験の一例が釘刺し試験である。釘刺し試験では、外部より電池セルに釘を突き刺し、正極板と負極板とを釘によって短絡させ、発生するジュール発熱によって生じる電池セルの温度や電圧などの変化が測定される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
釘刺し試験では、内部短絡を発生させる位置に釘を突き刺さなければならない。一方、複数の電池セルが筐体に収納されることによって電池モジュールが構成される。また、複数の電池モジュールが別の筐体にさらに収納されることによって電池ユニットが構成される。このような電池ユニットあるいは電池モジュールにおいては、電池セルが外部に露出しない。そのため、内部短絡を発生させる位置に釘を突き刺さすことが困難になる。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、複数の電池セルが収納された構造においても電池セルを内部短絡させやすくする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の電池ユニットは、複数の電池モジュールと、複数の電池モジュールを収納する外側筐体とを備える。複数の電池モジュールのそれぞれは、複数の電池セルと、複数の電池セルを収納する内側筐体とを備える。外側筐体は、複数の電池モジュールが配置された外側筐体の内部と反対側の外側筐体の外側の外側表面であって、かつ少なくとも1つの電池セルに対向した外側表面に、内部に向かって凹んだ形状の外側凹部を備える。少なくとも1つの電池セルを収納する電池モジュールの内側筐体は、複数の電池セルが配置された内側筐体の内部と反対側の内側筐体の外側の内側表面であって、かつ少なくとも1つの電池セルに対向した内側表面に、内部に向かって凹んだ形状の内側凹部を備える。複数の電池セルのそれぞれは、正極板と負極板とを内蔵し、外側凹部は、外側表面から外側筐体の内部に向かって物体を挿入する場合に、内側筐体を介して、少なくとも1つの電池セルの正極板と負極板とを物体により短絡可能な位置に配置され、外側凹部は、外側表面から内部に向かって細くなるテーパー形状を有する第1側面と、第1側面の内部側端を塞ぐ第1底面とを含み、内側凹部は、外側凹部から内側筐体の内部に向かって物体を挿入して、少なくとも1つの電池セルの正極板と負極板とを物体により短絡させる場合に、物体が貫通される位置に配置され、内側凹部は、内側表面から内部に向かって細くなるテーパー形状を有する第2側面と、第2側面の内部側端を塞ぐ第2底面とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、複数の電池セルが収納された構造においても電池セルを内部短絡させやすくできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(a)-(b)は、本実施例に係る電池セルの構造を示す図である。
【
図2】
図2(a)-(b)は、
図1(a)-(b)の電池セルが複数含まれる電池モジュール、電池ユニットの構造を示す図である。
【
図3】本実施例に係る電池ユニットの構造を示す図である。
【
図4】
図4(a)-(b)は、
図3の外側凹部、内側凹部の構造を示す図である。
【
図5】変形例に係る電池モジュールの構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施例を具体的に説明する前に、実施例の概要を説明する。本実施例は、電池ユニットに関する。電池ユニットの筐体(以下、「外側筐体」という)には複数の電池モジュールが収納され、各電池モジュールの筐体(以下、「内側筐体」という)には複数の電池セルが収納される。電池セルがリチウムイオン二次電池である場合、導体粉による絶縁層の破壊、あるいは高温下における絶縁層の収縮によって、正極板と負極板との間に内部短絡が発生しうる。正極板と負極板との間の内部短絡が発生すると、短絡電流に伴うジュール熱によって短絡部はさらに拡大するとともに異常加熱を生じ、電池セルが破壊してしまう場合も起こり得る。一方、電池セルに内部短絡が発生した場合においても、電池セルの破壊などを抑制し、安全性を確保することは重要である。電池セルの安全性を確保するためには、内部短絡が発生した際の電池の安全性を正しく評価することが必要になる。そのために、リチウムイオン二次電池について、UL、JIS、SAE規格などで内部短絡時の挙動評価が制定されている。内部短絡時の挙動評価の方法として、様々な方法が提唱されているが、例えば、SAE J 2464において、釘差し試験による評価が記載されている。
【0011】
前述のごとく、釘刺し試験では、外部より電池に釘を突き刺し、正極板と負極板とを釘によって短絡させ、発生するジュール発熱によって生じる電池の温度や電圧などの変化が測定される。その際、内部短絡が発生しない位置に釘を突き刺すと、正確な釘刺し試験とはならない。そのため、内部短絡を発生させる位置に釘を突き刺さすことが重要になる。一方、電池ユニットでは、外側筐体および内側筐体の内部に複数の電池セルが収納されるので、電池セルが外部に露出せず、内部短絡を発生させる位置に釘を突き刺さすことが困難になる。さらに、電池モジュールあるいは電池ユニットの大容量化に伴い、電池セルの大型化あるいは多直多並化がなされる。この場合、破壊した電池セルが隣接した電池セルへ与える影響についても従来以上に重要となるので、最終形態で評価することが望ましい。
【0012】
複数の電池セルが収納された構造においても電池セルを内部短絡させやすくするために、本実施例では、電池セルにおいて内部短絡を発生させる位置(以下、「短絡位置」という)に、一直線状に延びる仮想の釘が突き刺された場合を想定する。仮想の釘と、当該電池セルを収納している内側筐体の表面(以下、「内側表面」という)とが交差する位置に、内側筐体の内部に向かって凹んだ形状の内側凹部が設けられる。また、仮想の釘と、外側筐体の表面(以下、「外側表面」という)とが交差する位置に、外側筐体の内部に向かって凹んだ形状の外側凹部が設けられる。釘刺し試験を実行する場合、外側凹部から釘を突き刺せば、釘は、外側凹部と内側凹部とを貫通して、電池セルの短絡位置に到達する。さらに、外側凹部から突き刺した釘の角度が短絡位置に向かっていなくても、内側凹部によって釘の角度が修正され、釘が短絡位置に向かうようになる。以下の説明において、「平行」、「垂直」は、完全な平行、垂直だけではなく、誤差の範囲で平行、垂直からずれている場合も含む。また、「略」は、おおよその範囲で同一であるという意味である。
【0013】
図1(a)-(b)は、電池セル100の構造を示す。
図1(a)は、電池セル100の外観図である。電池セル100は、第1面10、第2面12、第3面14、正極端子16、負極端子18を含む。電池セル100は円柱形状を有し、その上面が円形状の第1面10であり、その側面が第2面12であり、その下面が円形状の第3面14である。ここで、第1面10、第2面12、第3面14の組合せがケースを構成しており、ケースは例えばスチール製である。第1面10の中心部分には、上方に向かって突起する正極端子16が配置される。また、第3面14は負極端子18でもある。
【0014】
図1(b)は、第1面10と第3面14に対して垂直方向の電池セル100の断面図である。電池セル100は、正極板50、セパレータ60、負極板70を内蔵し、正極板50、セパレータ60、負極板70は、渦巻き状に巻かれたスパイラル構造を有する。例えば、正極板50は、コバルト酸リチウムを主活物質とし、負極板70は、特殊カーボンを主活物質とする。また、セパレータ60は、電解液を含浸させた絶縁層である。このような構造において、短絡位置は、セパレータ60を横切り、かつ正極板50および負極板70を含む位置であり、例えば、位置P1のように示される。
【0015】
正極端子16が設けられる第1面10から釘を刺すことを想定する場合、位置P1を第1面10に向かって直線的に移動させた位置が、第1面10上の位置P2と示される。釘刺し試験の際に、第1面10上の位置P2に釘をあて、第3面14に向かって釘を進ませると、釘は位置P1に到達する。しかしながら、釘が刺される方向は、正極端子16が設けられる第1面10に限定されず、負極端子18が設けられる第3面14であってもよく、第2面12であってもよい。以下では、一例として、
図1(b)のように、正極端子16が設けられる第1面10から釘を刺すことを前提に説明を進める。また、短絡位置は、位置P1に限定されず、第1面10の中央部分から第3面14の方に進んだ位置、周縁部分から第3面14の方に進んだ位置以外であればよい。
【0016】
図2(a)-(b)は、電池セル100が複数含まれる電池モジュール200、電池ユニット300の構造を示す。
図2(a)-(b)に示すように、x軸、y軸、z軸を含む直交座標系が規定される。x軸、y軸は、電池モジュール200および電池ユニット300の底面内において互いに直交する。z軸は、x軸およびy軸に垂直であり、電池モジュール200および電池ユニット300の高さ(垂直)方向に延びる。また、x軸、y軸、z軸のそれぞれの正の方向は、
図1における矢印の方向に規定され、負の方向は、矢印と逆向きの方向に規定される。また、x軸の正方向側を「前側」、x軸の負方向側を「後側」、z軸の正方向側を「上側」あるいは「天面側」、z軸の負方向側を「下側」あるいは「底面側」ということもある。さらに、y軸方向の正方向側を「右側」、y軸の負方向側を「左側」ということもある。
【0017】
図2(a)は、電池モジュール200の最前端に近い位置におけるy-z平面の断面を前側から見た場合の構造を示す。図示のごとく、電池モジュール200は、電池セル100と総称される第1電池セル100aから第11電池セル100k、内側筐体110を含む。電池モジュール200に含まれる電池セル100の数は「11」に限定されない。また、内側筐体110は、前後方向に長い中空の箱形形状を有し、内側表面120と総称される第1内側表面120aから第6内側表面120fによって囲まれる。
図2(a)においては、第1内側表面120aと第2内側表面120bは省略される。
【0018】
具体的に説明すると、内側筐体110の上側には第3内側表面120cが配置され、下側には第4内側表面120dが配置され、左側には第5内側表面120eが配置され、右側には第6内側表面120fが配置される。さらに、内側筐体110の前側には第1内側表面120aが配置され、後側には第2内側表面120bが配置される。第1内側表面120aから第6内側表面120fはいずれも矩形状である。特に、対向する2つの内側表面120は同一形状を有する。内側筐体110および内側表面120の形状はこれに限定されない。
【0019】
内側筐体110の内部には、複数の電池セル100が収納される。ここでは、第1面10を前側に向けて複数の電池セル100が並べられる。その際、電池セル100の第1面10と、第1内側表面120aとは、所定の間隔だけ離間される。複数の電池セル100を接続するための配線、複数の電池セル100に対する制御を実行するための回路も電池モジュール200に含まれるが、ここではそれらの図示を省略する。
【0020】
図2(b)は、電池ユニット300の最左端に近い位置におけるz-x平面の断面を左側から見た場合の構造を示す。図示のごとく、電池ユニット300は、電池モジュール200と総称される第1電池モジュール200aから第3電池モジュール200c、外側筐体210を含む。電池ユニット300に含まれる電池モジュール200の数は「3」に限定されない。ここでは、一例として電池モジュール200が上下に3つ重ねられているので、外側筐体210は、上下方向に長い中空の箱形形状を有し、外側表面220と総称される第1外側表面220aから第6外側表面220fによって囲まれる。
図2(b)においては、第5外側表面220eと第6外側表面220fは省略される。
【0021】
具体的に説明すると、外側筐体210の前側には第1外側表面220aが配置され、後側には第2外側表面220bが配置され、上側には第3外側表面220cが配置され、下側には第4外側表面220dが配置される。さらに、外側筐体210の左側には第5外側表面220eが配置され、右側には第6外側表面220fが配置される。特に、対向する2つの外側表面220は同一形状を有する。外側筐体210および外側表面220の形状はこれに限定されない。
【0022】
外側筐体210の内部には、複数の電池モジュール200が収納される。その際、電池モジュール200の第1内側表面120aと、第1外側表面220aとは、所定の間隔だけ離間される。複数の電池モジュール200を接続するための配線、複数の電池モジュール200に対する制御を実行するための回路も電池ユニット300に含まれるが、ここではそれらの図示を省略する。
【0023】
前述のごとく、電池モジュール200の内側筐体110の内部には複数の電池セル100が収納されているが、電池ユニット300を外側から見た場合に、複数の電池セル100は露出しない。さらに、電池セル100の第1面10と第1内側表面120aとは離間し、第1内側表面120aと第1外側表面220aとも離間するので、電池セル100の第1面10は第1外側表面220aから離れて配置される。これらの状況を組み合わせると、電池ユニット300に収納された複数の電池セル100の少なくとも1つに対する釘刺し試験を実行する場合、第1外側表面220aから釘を刺しても、
図1(b)の第1面10の位置P2に釘が到達する可能性は低いといえる。この可能性を向上させるために、本実施例に係る電池モジュール200、電池ユニット300は、さらに次の構造を有する。
【0024】
図3は、電池ユニット300の構造を示す。これは、z-x平面の断面図である。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。一例として、最下段の第3電池モジュール200cにおける第8電池セル100hが釘刺し試験の対象とされる。
図2(a)に示されるように、第8電池セル100hは、最下段かつ左端に配置される電池セル100である。図示のごとく、第8電池セル100hの位置P1と位置P2は前後方向に並べられ、位置P2は、第8電池セル100hの第1面10上に配置される。
【0025】
内側筐体110の第1内側表面120aには、内側筐体110の内部に向かって凹んだ形状の内側凹部130が設けられる。内側凹部130は、第1内側表面120aのうちの第8電池セル100hの第1面10に対向した部分に配置される。特に、内側凹部130は、位置P1と位置P2と前後方向に並べられる位置に配置される。また、外側筐体210の第1外側表面220aには、外側筐体210の内部に向かって凹んだ形状の外側凹部230が設けられる。外側凹部230は、第1外側表面220aのうちの第8電池セル100hの第1面10に第1内側表面120aを介して対向した部分に配置される。特に、外側凹部230は、位置P1と位置P2と内側凹部130と前後方向に並べられる位置に配置される。
【0026】
図3において、前述の釘あるいは仮想の釘は導体400と示される。この定義のもと、外側凹部230は、第1外側表面220aから外側筐体210の内部に向かって導体400を挿入する場合に、内側筐体110を介して、第8電池セル100hの正極板50と負極板70とを導体400により短絡可能な位置に配置されるといえる。また、内側凹部130は、内側凹部130から内側筐体110の内部に向かって導体400を挿入して、第8電池セル100hの正極板50と負極板70とを導体400により短絡させる場合に、導体400が貫通される位置に配置されるといえる。そのため、釘刺し試験の試験者は、外側凹部230に導体400の先端をあて、導体400を後側に移動させるだけで、導体400は、外側凹部230、内側凹部130、位置P2を通過して位置P1に到達する。その結果、第8電池セル100hは導体400により短絡される。
【0027】
一方、外側凹部230に先端があてられた導体400の移動の方向が後側からずれる場合、導体400は内側凹部130、位置P2を通過しないおそれがある。これに対応するための外側凹部230、内側凹部130の構造を説明するために、ここでは
図4(a)-(b)を使用する。
図4(a)-(b)は、外側凹部230、内側凹部130の構造を示す。
図4(a)は、
図3の外側凹部230の近傍を拡大した断面図である。外側凹部230は、側面232、底面234を含む。側面232は、第1外側表面220a上に円形状の開口を有し、第1外側表面220aから後側に向かって細くなるテーパー形状を有する面である。側面232の後側端には、円形状の底面234が配置される。このような構造により、導体400の先端の角度が後側に向いていない場合、導体400の先端は底面234ではなく、側面232に接触する。側面232に接触した導体400は、側面232の傾斜により底面234の方に移動する。底面234に到達した導体400は、底面234を貫通して、外側筐体210の内部に移動する。そのため、導体400の先端の角度が後側に向くように修正される。
【0028】
図4(b)は、
図3の内側凹部130の近傍を拡大した断面図である。内側凹部130は、側面132、側面132を含む。側面132、底面134は、側面232、底面234と同様の形状を有する。ここで、側面132、底面134のサイズは、側面232、底面234のサイズと同一であってもよく、異なっていてもよい。このような構造により、外側凹部230を貫通した導体400の移動の方向が仮に後側からずれる場合、導体400の先端は底面134ではなく、側面132に接触する。側面132に接触した導体400は、側面132の傾斜により底面134の方に移動する。底面134に到達した導体400は、底面134を貫通して、内側筐体110の内部に移動する。
図3に戻る。その結果、導体400は、位置P2を通過して位置P1に到達する。
【0029】
以下では、釘刺し試験の対象とすべき電池セル100、電池モジュール200について説明する。
図2(a)のように、内側筐体110内に複数の電池セル100が配置されている場合、隣接する電池セル100の数(以下、「隣接数」という)が電池セル100毎に異なる。例えば、第1電池セル100a、第4電池セル100d、第8電池セル100h、第11電池セル100kにおける隣接数は「3」である。第2電池セル100b、第3電池セル100c、第9電池セル100i、第10電池セル100jにおける隣接数は「4」である。第5電池セル100e、第7電池セル100gにおける隣接数は「5」である。第6電池セル100fにおける隣接数は「6」である。
【0030】
前述のごとく、電池セル100のケースはスチール製である。また、内側筐体110が、スチール等の金属よりも熱伝導性の低い材料、例えば樹脂により形成されていることを想定する。このような状況下において、隣接数の多い電池セル100において生じる発熱は、隣接数の少ない電池セル100において生じる発熱よりも、隣接する電池セル100に逃げやすくなる。第6電池セル100fに対して釘刺し試験を実験した場合、第6電池セル100fからの発熱は逃げやすいので、発熱の影響が低減される。一方、第8電池セル100hに対して釘刺し試験を実験した場合、第8電池セル100hからの発熱は逃げにくいので、発熱の影響が低減されにくくなる。そのため、隣接数の少ない電池セル100ほど、釘刺し試験の対象として適しているといえる。これは、内側筐体110に対向する面積が広い電池セル100ほど、釘刺し試験の対象として適しているともいえる。
【0031】
次は、
図2(b)のように、外側筐体210内に複数の電池モジュール200が上下方向に配置されている構造において、いずれかの電池モジュール200が発熱により燃える場合を想定する。電池モジュール200からの炎は上側に向かうので、当該電池モジュール200の下側に配置される電池モジュール200よりも、上側に配置される別の電池モジュール200の方が類焼の可能性が高くなる。つまり、発熱により燃える電池モジュール200が下側であるほど、類焼による被害が大きくなる。そのため、下側に配置される電池モジュール200ほど、釘刺し試験の対象として適しているといえる。
図2(b)の構造では、第3電池モジュール200cが釘刺し試験の対象として最も適している。
【0032】
このように選択された電池モジュール200のうちの電池セル100に対向するように、内側凹部130と外側凹部230とが設けられる。また、釘刺し試験の対象とされる電池セル100は1つでなくてもよく、複数であってもよい。その際、複数の内側凹部130と複数の外側凹部230とが設けられる。
【0033】
本実施例によれば、外側表面220から内部に向かって導体400を挿入する場合に、電池セル100を内部短絡可能な位置に外側凹部230を配置させるので、複数の電池セル100が収納された構造においても電池セル100を内部短絡させやすくできる。また、外側凹部230は、側面232と底面234とを含むので、導体400の先端の方向が側面232に向いていても、導体400の先端の方向を底面234の方に修正できる。また、導体400の先端の方向が底面234の方に修正されるので、電池セル100を内部短絡させやすくできる。
【0034】
また、外側凹部230から内部に向かって導体400を挿入して電池セル100を内部短絡させる場合に、導体400の貫通位置に内側凹部130を配置させるので、複数の電池セル100が収納された構造においても電池セル100を内部短絡させやすくできる。また、内側凹部130は、側面132と底面134とを含むので、導体400の先端の方向が側面132に向いていても、導体400の先端の方向を底面134の方に修正できる。また、導体400の先端の方向が底面134の方に修正されるので、電池セル100を内部短絡させやすくできる。
【0035】
また、隣接する電池セル100の数が少ない電池セル100を釘刺し試験の対象にして、内側凹部130、外側凹部230を設けるので、試験結果の精度を向上できる。また、下側に配置される電池モジュール200に含まれる電池セル100を釘刺し試験の対象にして、内側凹部130、外側凹部230を設けるので、試験結果の精度を向上できる。
【0036】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様の電池モジュール200は、複数の電池セル100と、複数の電池セル100を収納する内側筐体110とを備える。内側筐体110は、少なくとも1つの電池セル100に対向した内側表面120に、内部に向かって凹んだ形状の内側凹部130を備える。複数の電池セル100のそれぞれは、正極板50と負極板70とを内蔵し、内側凹部130は、内側表面120から内側筐体110の内部に向かって物体を挿入する場合に、少なくとも1つの電池セル100の正極板50と負極板70とを物体により短絡可能な位置に配置される。
【0037】
物体は、導体400であり、内側凹部130は、内側表面120から内側筐体110の内部に向かって導体400を挿入する場合に、前記少なくとも1つの電池セル100の内部において、電池セル100の正極板50と負極板70とを導体400により短絡可能な位置に配置されてもよい。
【0038】
本開示の別の態様は、電池ユニット300である。この電池ユニット300は、複数の電池モジュール200と、複数の電池モジュール200を収納する外側筐体210とを備える。複数の電池モジュール200のそれぞれは、複数の電池セル100と、複数の電池セル100を収納する内側筐体110とを備える。外側筐体210は、少なくとも1つの電池セル100に対向した外側表面220に、内部に向かって凹んだ形状の外側凹部230を備える。複数の電池セル100のそれぞれは、正極板50と負極板70とを内蔵し、外側凹部230は、外側表面220から外側筐体210の内部に向かって物体を挿入する場合に、内側筐体110を介して、少なくとも1つの電池セル100の正極板50と負極板70とを物体により短絡可能な位置に配置される。
【0039】
少なくとも1つの電池セル100を収納する電池モジュール200の内側筐体110は、少なくとも1つの電池セル100に対向した内側表面120に、内部に向かって凹んだ形状の内側凹部130をさらに備えてもよい。内側凹部130は、外側凹部230から内側筐体110の内部に向かって物体を挿入して、少なくとも1つの電池セル100の正極板50と負極板70とを物体により短絡させる場合に、物体が貫通される位置に配置される。
【0040】
物体は、導体400であり、外側凹部230は、外側表面220から外側凹部230の内部に向かって導体400を挿入する場合に、内側筐体110を介して、前記少なくとも1つの電池セル100の内部において、当該電池セル100の正極板50と負極板70とを導体400により短絡可能な位置に配置されてもよい。
【0041】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0042】
本実施例において、内側表面120に内側凹部130が設けられ、外側表面220に外側凹部230が設けられる。しかしながらこれに限らず例えば、外側表面220に外側凹部230が設けられるが、内側表面120に内側凹部130が設けられなくてもよい。本変形例によれば、構造を簡易にできる。
【0043】
本実施例において、電池ユニット300に含まれた電池セル100を釘刺し試験の対象にしている。しかしながらこれに限らず例えば、電池モジュール200に含まれた電池セル100を釘刺し試験の対象にしてもよい。本変形例によれば、本実施例の適用範囲を拡大できる。
【0044】
本実施例において、内側凹部130は、内側表面120から、内側筐体110の内部に向かって凹んだ形状を有する。しかしながらこれに限らず例えば、内側凹部130は、内側表面120から、内側筐体110の内部に向かって進むトンネル形状を有していてもよい。
図5は、電池セル100の構造を示す。一例として、内側凹部130は、第6内側表面120fから、第4電池セル100dと第3電池セル100cと、第7電池セル100gとの間を通って、屈曲しながら第6電池セル100fに向かう形状を有する。この場合、導体400として、曲げることが可能な尖端をもつ機具が使用される。本変形例によれば、構成の自由度を向上できる。
【0045】
本実施例において、釘のような導体400を電池セル100の内部に刺すことによって、内部短絡を発生させている。しかしながらこれに限らず例えば、電池セル100の第2面12を物体で局所的に押さえつけることで、正極板50と負極板70間の距離を狭くさせて内部短絡を発生させてもよい。その際、物体は、釘のような導体400でなくてもよく、内側凹部130あるいは外側凹部230を貫通可能な強度を有していればよい。本変形例によれば、構成の自由度を向上できる。
【符号の説明】
【0046】
10 第1面、 12 第2面、 14 第3面、 16 正極端子、 18 負極端子、 50 正極板、 60 セパレータ、 70 負極板、 100 電池セル、 110 内側筐体(筐体)、 120 内側表面(表面)、 130 内側凹部(凹部)、 132 側面、 134 底面、 200 電池モジュール、 210 外側筐体、 220 外側表面、 230 外側凹部、 232 側面、 234 底面、 300 電池ユニット、 400 導体(物体)。