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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】乾燥処理の終了判断方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 25/22 20060101AFI20230303BHJP
   F26B 9/06 20060101ALI20230303BHJP
   A23L 3/40 20060101ALI20230303BHJP
   A23B 4/03 20060101ALI20230303BHJP
   A23N 12/08 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
F26B25/22 C
F26B9/06 A
A23L3/40 A
A23B4/03 501A
A23N12/08 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019058606
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020159621
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】518190514
【氏名又は名称】株式会社和陽
(74)【代理人】
【識別番号】100103148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 輝美
(72)【発明者】
【氏名】服部 純市
(72)【発明者】
【氏名】本田 正
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-225077(JP,A)
【文献】特開平11-148777(JP,A)
【文献】特開2017-104041(JP,A)
【文献】特開2003-116507(JP,A)
【文献】特開2007-105003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 25/22
F26B 9/06
A23L 3/40
A23B 4/03
A23N 12/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥処理の対象である食材を収納し、ヒータを駆動して装置内を一定温度に制御する装置内温度制御手段と、
排気ダクトと吸気ダクトと循環ダクトを使用し、装置内の空気の排気、吸気、及び循環を制御する吸排気制御手段と、を備える乾燥装置において、
前記吸排気制御手段を使用しても前記装置内の温度が前記一定温度を超えて上昇するとき、前記食材の乾燥処理の完了時期であると判断することを特徴とする乾燥処理の終了判断方法。
【請求項2】
前記乾燥処理の対象である食材は、さつま芋等の芋類、又はカボチャや人参等の野菜類、ブドウや柿等の果実類、海苔や椎茸、更にイカや魚等の魚貝類であることを特徴とする請求項1に記載の乾燥処理の終了判断方法。
【請求項3】
乾燥処理の対象である食材が収納された乾燥装置に設置された制御装置に導入されたプログラムであって、
ヒータを駆動して装置内を一定温度に制御する装置内温度制御処理と、
排気ダクトと吸気ダクトと循環ダクトを使用し、装置内の空気の排気、吸気、及び循環を制御する吸排気制御処理と、を行い、
前記吸排気制御処理によっても前記装置内の温度が前記一定温度を超えて上昇するとき、前記食材の乾燥処理の完了時期であると判断することを特徴とする乾燥処理の終了判断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はさつま芋等の芋類、カボチャや人参等の野菜類、ブドウや柿等の果実類の乾燥、更にはイカや魚貝類の乾燥を行う乾燥装置の使用において、これらの食材の乾燥処理の終了を判断する乾燥処理の終了判断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、食品加工技術の向上により多くの乾燥食品が製造され、市販されている。例えば、干し芋は元々さつま芋の保存食として作られたものであるが、乾燥技術の向上により味や触感を重視した美味しい干し芋が製造されている。また、野菜を乾燥させた乾燥カボチャや乾燥人参は各種料理の食材として広く使用されている。さらに、干しブドウや干し柿等のドライフルーツは美容や健康によい食品として広く認識されている。
【0003】
このような食材の乾燥装置おいて、乾燥処理の最適な終了時期を知ることは高品質な乾燥製品を製造するために重要である。特許文献1はヒータ温度を一定温度に維持できる自己温度制御型の遠赤外線ヒータを用いて、所定波長の遠赤外線を食材に放射し、一定の温度管理を行って食材を乾燥させ、食材に含まれる水分を調整しながら乾燥処理を行い、乾燥度を測定し、一定の乾燥値に達したとき、乾燥処理の終了を判断する方法を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3029588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の方法では、食材の温度は乾燥処理の初期には一定温度を保持しているが、乾燥処理が完了する前に急上昇してしまう。すなわち、ヒータ温度が一定であっても、食材の乾燥完了前には、蒸発する水分量が激減し、水分蒸発による気化冷却作用が低減することにより、食材温度が急激に上昇し、例えば乾燥製品の品質劣化が生じる。
【0006】
そこで、本発明は、乾燥装置内の温度を単に一定に保持するのではなく、乾燥処理の対象となる食材の乾燥処理に最適な温度に保持しつつ、装置内の排気ダクトと吸気ダクトと循環ダクトを使用し、装置内の空気の排気、吸気、及び循環を最適に制御し、乾燥製品の品質劣化を生じさせることなく、乾燥処理の終了判断を正確に行う乾燥処理の終了判断方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は本発明によれば、乾燥処理の対象である食材を収納し、ヒータを駆動して装置内を一定温度に制御する装置内温度制御手段と、排気ダクトと吸気ダクトと循環ダクトを使用し、装置内の空気の排気、吸気、及び循環を制御する吸排気制御手段と、を備える乾燥装置において、上記吸排気制御手段を使用しても装置内の温度が一定温度を超えて上昇するとき、当該食材の乾燥処理の完了時期であると判断する乾燥処理の終了判断方法を提供することによって達成できる。
【0008】
上記乾燥処理の対象である食材は、例えばさつま芋等の芋類、又はカボチャや人参等の野菜類、ブドウや柿等の果実類、海苔や椎茸、更にイカや魚等の魚貝類であり、これらの食材を収納した乾燥装置の室内温度をヒータ等を使用して乾燥処理に最適な一定温度に制御し、装置内に設置された排気ダクト、吸気ダクト、循環ダクトを使用し、吸排気制御を行っても、装置内の温度が一定温度を超えて上昇するとき、当該食材の乾燥処理の完了時期であると判断する。
【0009】
また、上記一定温度は、乾燥処理の対象となる食材によって異なり、例えば60℃の場合もあり、70℃や80℃の場合もある。
また、食材の乾燥処理に付加して、カビ菌の除去や糖度の改善等の目的で、上記一定温度を設定することもできる。また、一定温度は乾燥対象となる食材よって、一定の温度範囲であってもよい。この場合、例えば60±α℃や、70±α℃、80±α℃等の設定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の乾燥装置の正面図である。
図2】乾燥装置の内部構成を説明する図である。
図3】乾燥装置の内部構成を説明する斜視図である。
図4】乾燥装置の中央部の断面図であり、吸気ダクト弁及び排気ダクト弁が閉じた状態であり、本体循環ダクト弁が開いた状態を示す図である。
図5】乾燥装置の中央部の断面図であり、吸気ダクト弁及び排気ダクト弁が開いた状態であり、本体循環ダクト弁が閉じた状態を示す図である。
図6】ファンやヒータ、及び弁の駆動制御、及び乾燥処理の終了判断の制御を行う制御装置の構成を示すブロック図である。
図7】本実施形態の処理を説明するフローチャートである。
図8】本実施形態の処理を説明するフローチャートである。
図9】乾燥装置内の温度及び湿度の変化、更に食材の乾燥度等の変化を示す特性図である。
図10】本実施形態の乾燥処理の終了判断を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本実施形態の乾燥処理の終了判断方法を説明する為に使用する乾燥装置の正面図である。同図において、乾燥装置1は中央部に制御パネル兼モニタ部2が位置し、左右に乾燥室3、4が設けられている。乾燥装置1の中央内部には後述するコンピュータが内蔵された制御装置が配設され、本体循環ダクトを流れる乾燥風の温度制御や、ダクトに流れる乾燥風の風量制御、更に食材の乾燥処理の終了時期を正確に判断する制御処理等を行う。
【0012】
左右に設けられた乾燥室3及び4には夫々両開きの扉5、6が設けられ、例えば扉5に設けられた取手5aを握持して左右に開くことによって、乾燥室3を開放することができる。同様に、扉6に設けられた取手6aを握持して左右に開くことによって、乾燥室4を開放することができる。
【0013】
図2は乾燥装置1の内部構成を説明する図であり、図3はその斜視図である。両図において、上記左右の乾燥室3及び4には夫々2台の台車8に載せられた2台のラック9が設置され、夫々のラック9には、例えば20段のトレー10が設けられている。
【0014】
ここで乾燥室3及び4に設けられたラック9は同じ構造であるが、本実施例の説明上、乾燥室3側の2台のラック9を9a、9bとして説明し、乾燥室4側の2台のラック9を9c、9dとして説明する。また、ラック9を載せる台車8についても、同様にラック9a~9dに対応して、台車8a~8dとして説明する。
【0015】
図4は乾燥装置1の中央部の断面図である。前述のように、乾燥装置1の前面には制御パネル兼モニタ部2が設けられ、内部に後述する制御部が設けられている。中央の本体循環ダクト11は左右の乾燥室3及び4に最適な状態に制御された温度と湿度の乾燥風を送る為のダクトであり、この本体循環ダクト11を流れる乾燥風の温度と湿度と風量は制御部によって最適に制御される。
【0016】
ファン12は制御された温度と湿度の乾燥風を乾燥室3及び4に送る為の装置であり、回転軸12aに架け渡させた動力伝達ベルト13を介してモータ14に接続されている。したがって、モータ14の駆動を制御することによって、モータ14側の回転軸14aの回転速度を調整し、本体循環ダクト11に流す乾燥風の風量を制御する。
【0017】
本体循環ダクト11にはヒータ15が突出して設けられ、本体循環ダクト11に流れる乾燥風を最適温度に調整する。
また、本体循環ダクト11には分岐して外気を導入する吸気ダクト11aと装置内の熱気を機外に排出する排気ダクト11bが設けられている。尚、吸気ダクト11aは乾燥装置1の裏面に設けられた不図示の吸気口まで延設され、排気ダクト11bも乾燥装置1の裏面に設けられた不図示の排気口まで延設されている。また、吸気ダクト11aには弁16aが設けられ、排気ダクト11bには弁16bが設けられ、制御装置の制御に従って開閉制御が行われる。尚、ここで、弁16aを以下では吸気ダクト弁で示し、弁16bを排気ダクト弁で示す。
【0018】
本体循環ダクト11の上部は乾燥室3及び4側の上部に連通しており、ファン12は左右は乾燥室3及び4の下部に連通しており、ファン12によって風量が制御される乾燥風は、本体循環ダクト11を介して左右の乾燥室3及び4に送られ、ファン12に戻る構造である。また、夫々の乾燥室3及び4に送られた乾燥風はラック9に並列に設置されたトレー10内を均一に流れ、干し芋の最適な乾燥環境を形成する。
【0019】
尚、本体循環ダクト11にも弁(以後、本体循環ダクト弁で示す)17が設けられ、制御部の制御に従って開閉制御が行われる。図4に示す状態は、上記吸気ダクト弁16a及び排気ダクト弁16bが閉じた状態であり、本体循環ダクト弁17が開いた状態を示す。この場合、乾燥風は装置内で矢印c方向に流れる。
【0020】
一方、図5は上記吸気ダクト弁16a及び排気ダクト弁16bが開いた状態であり、本体循環ダクト弁17が閉じた状態を示す図である。この場合、不図示の吸気口から導入された外気は吸気ダクト11a及び本体循環ダクト11内を矢印c1、c2方向に流れ、左右の乾燥室3及び4で芋の乾燥に使用された後、ファン12を通して本体循環ダクト11及び排気ダクト16b内を矢印c3、c4方向に流れ、不図示の排気口から外部に排出される。
【0021】
尚、乾燥装置1内の所定位置には室内の温度と湿度を計測する温度計及び湿度計が設けられ、乾燥装置1の外壁には外部の温度と湿度を計測する温度計及び湿度計が設けられている。ここで、装置内の温度と湿度を計測する温度計及び湿度計を、以後内部温度計及び内部湿度計で示し、外部の温度と湿度を計測する温度計及び湿度計を以後外気温度計及び外気湿度計で示す。
【0022】
図6は上記ファン12、ヒータ15、及び3個の弁(吸気ダクト弁16a、排気ダクト弁16b、本体循環ダクト弁17)の駆動制御を行う制御装置の構成を示す図である。制御装置の中心である制御部18はCPUやROM、RAM等で構成され、記憶部19に記憶された制御データに基づいてファン12の回転制御やヒータ15の温度制御、及び3個の弁の開閉制御を行う。また、30は本例の乾燥装置1の乾燥処理の完了確認を行うための乾燥処理の終了判断プログラムの記憶部である。
【0023】
荷重計7(7a~7d)は台車8a~8dの所定位置に設置され、夫々の台車8a~8dに載せられたラック9の自重とラック9に並べられた芋の荷重の加算値を計測し、荷重データとして制御部18に送信する。
【0024】
外気温度計20は本例の乾燥装置1が設置された周辺の外気の温度を測定し、外気湿度計21は、同様に本例の乾燥装置1が設置された周辺の外気の湿度を測定し、測定した温度データ及び湿度データを制御部18に送信する。
【0025】
内部温度計22は、前述のように乾燥室3及び4内の所定位置に設置され、乾燥処理の対象である芋(干し芋)近傍の温度を測定し、内部湿度計23も同様に乾燥処理の対象である芋(干し芋)近傍の湿度を測定し、測定した温度データ及び湿度データを制御部18に送信する。
【0026】
制御部18は上記荷重計7(7a~7d)から送信される荷重データ、及び外気温度計20と外気湿度計21、内部温度計22と内部湿度計23から送信される温度及び湿度データに基づいて干し芋の乾燥制御、及び本例の乾燥処理の終了判断処理を行う。
【0027】
ファン駆動制御部24は制御部18を介して記憶部19から読み出されたファン駆動制御信号に基づいてファン12の駆動制御を行う。また、ヒータ駆動制御部25は記憶部19から読み出されたヒータ駆動制御信号に基づいてヒータ15の駆動制御を行い、ヒータ15内の発熱体を加熱制御し、本体循環ダクト11に流れる乾燥風の温度制御を行う。
【0028】
駆動制御部26aは駆動信号を吸気ダクト弁16aに送り、吸気ダクト弁16aの開閉制御を行う。また、駆動制御部26bは駆動信号を排気ダクト弁16bに送り、排気ダクト弁16bの開閉制御を行う。同様に、駆動制御部26cは駆動信号を本体循環ダクト弁17に送り、本体循環ダクト弁17の開閉制御を行う。
【0029】
以上の構成において、以下に本例の乾燥処理の終了判断方法を具体的に説明する。
図7及び図8は、上記乾燥装置1を使用した食材の乾燥処理、及び本例の乾燥処理の終了判断方法を説明するフローチャートである。先ず、平板状にスライスした芋を前述の4台のラック9a~9d(20段のトレー10)に並べ、ラック9a~9dを対応する台車8a~8dに載せ、左右に乾燥室3及び4に収納する(ステップ(以下、Sで示す)1)。
【0030】
次に、この状態で夫々の扉5、6を閉じ、例えば制御パネル兼モニタ部2に設けられた電源スイッチを投入する(S2)。この電源スイッチの投入によって、制御部18は駆動を開始し、先ず弁駆動制御部26(駆動制御部26a~26c)を制御し、吸気ダクト弁16a及び排気ダクト弁16bを閉状態に制御し、本体ダクト弁17を開状態に制御する(S3)。この制御によって、乾燥装置1内のダクトの開閉状態は、図4に示す状態に設定される。
【0031】
次に、荷重計7(7a~7d)に測定開始信号を送信し、以後所定間隔で荷重計7(7a~7d)からの荷重データを受信する(S4)。また、外気温度計20と外気湿度計21から乾燥装置1周辺の外気温度及び外気湿度のデータを取得する(S5)。さらに、内部温度計22と内部湿度計23から乾燥装置1内(ラック近傍)の温度と湿度のデータを取得する(S6)。
【0032】
電源投入当初、乾燥室3及び4内の温度は、例えば20℃の常温であり、室内温度を上昇させる為ヒータ15の駆動を開始し、更にファン12の駆動を開始する(S7)。この時、乾燥装置1のダクトの状態は上記のように図4に示す状態であり、ファン12及びヒータ15の駆動によって左右の乾燥室3及び4には乾燥風が送られ、左右の乾燥室3及び4内の温度は徐々に上昇する。
【0033】
図9は乾燥室3及び4内の温度及湿度の変化を示す図である。尚、本例の乾燥装置1は左右に乾燥室3及び4を備える為、乾燥室3及び4内の温度及湿度の変化は近似するが一致はしない。この為、乾燥室3及び4内の温度の変化を実線a、bで示し、乾燥室3及び4内の湿度の変化を点線c、dで示す。また、同図には芋の乾燥度の変化を太線eで示す。尚、同図に示す一点鎖線fは外気温度を示し、一点鎖線gは外気湿度を示す。
【0034】
上記ヒータ15の駆動によって熱気を帯びた乾燥風がスライスした芋に供給され、ラック9上に載置されたスライス状の芋から水分が放出される。この為、図9に示すように乾燥室3及び4内の温度が上昇すると共に、スライスされた芋から放出される水分によって室内の湿度も上昇する。
【0035】
制御部18は常時内部温度計22によって計測される乾燥室3及び4内の温度情報を確認し、乾燥室3及び4内の温度が60℃に達し、更に60+α℃を超えたか判断している(S8)。ここで、未だ室内温度が60+α℃を超えていなければ(S8がNO)、上記ヒータ15の駆動を継続し、乾燥風をスライスした芋に供給し、芋の乾燥処理を繰り返す(S3~S8)。
尚、本例において60℃の温度(一定温度)の設定は、本例の乾燥処理の対象食材として、例えば芋を使用していること、及び乾燥処理の結果製造される干し芋の製品価値を上げる、カビ菌の除去と糖度の向上を目的とする為である。また、上記αは、本例では例えば2~3℃であるが、使用する芋の種類や、乾燥に使用する食材によって最適な温度範囲に設定することができる。
【0036】
その後、乾燥室3及び4内の温度が60℃に達し、更に60+α℃を超えると(S8がYES)、制御部18からヒータ駆動制御部25に制御信号が送られ、ヒータ15の駆動を停止する(S9)。さらに、弁開閉制御部26に制御信号を送り、吸気ダクト弁16a、排気ダクト弁16bを開状態とし、本体ダクト弁17を閉状態に設定する(S10)。すなわち、図5に示す状態に設定し、乾燥室3及び4内の湿気を帯びた空気を外部に排出する。また、外気を室内に導入し、乾燥装置1内の温度及び湿度を低下させる。図8に示すT1はこのタイミングを示す。
【0037】
この制御によって、乾燥室3及び4内の湿度は徐々に低下し、例えば図9に示すように80%台であった室内湿度は60%近くまで低下する。また、室内温度も徐々に低下し、制御部18は乾燥室3及び4内の温度が60℃を超えて60-α℃まで低下したか判断する(S11)。そして、乾燥室3及び4内の温度が60-α℃まで低下しない間、上記状態を維持する(S11がNO、S9~S11)。この60℃前後の温度はカビ菌を死滅させるための最も適した温度であり、この間芋の表面に寄生したカビ菌の除菌処理を効率よく行い、また芋の表面から剥がれ、乾燥室3及び4内に浮遊するカビ菌の除菌処理も効率よく行う。
【0038】
乾燥室3及び4内の温度が60-α℃まで低下ると(S11がYES)、弁駆動制御部26を制御に、本体ダクト弁17、及び吸気ダクト弁16a、排気ダクト弁16bを駆動し、図4に示す状態に戻す(S12)。図9に示すT2はこのタイミングを示す。そして、再度ヒータ15の駆動を開始し(S13)、室内の温度を上昇させる。
【0039】
したがって以後、乾燥室3及び4内の温度は上昇に転じ、60℃を超え、60+α℃に達するまで、乾燥風をスライスされた芋に供給する。
【0040】
その後、乾燥室3及び4内の温度が再度60+α℃に達すると(S14がYES、図9に示すT3のタイミング)、再度ヒータ15の駆動を停止し(S15)、吸気ダクト弁16a、排気ダクト弁16bを開状態とし、本体ダクト弁17を閉状態に設定する(S16)。したがって、図5に示す状態に設定され、湿気を帯びた乾燥室3及び4内の空気を外部に排出し、外気を室内に導入し、室内温度及び湿度を低下させる。
【0041】
以後、同様な制御を繰り返し(図8に示すフローチャートを参照)、乾燥室3及び4内の温度が60-α℃以下になると(図9に示すT4、T6、・・のタイミング)、再度ヒータ15を加熱し、室内の温度を上げ、弁駆動制御部26を制御し、ダクトを駆動し、図4に示す状態とし、一方逆に乾燥室3及び4内の温度が上昇し、60+α℃を超えると(図9に示すT5、T7、・・のタイミング)、ヒータ15の駆動を停止し、弁駆動制御部26を制御し、ダクトを駆動し、図5に示す状態とし、湿気を帯びた乾燥室3及び4内の蒸気を外部に排出する。
【0042】
この間、芋の乾燥度は徐々に増し、前述のように乾燥対象である芋は予め前処理として糊化が行われており、本例の乾燥装置1内での60℃の環境化で糊化した芋の糖化が促進される。したがって、本例のように、乾燥室3及び4内の温度を60℃前後(60±α℃)に維持して芋の乾燥処理、及び芋の除菌処理を行うことによって、副次的に芋の糖化を促進され、糖度の増した乾燥芋を製造することができる。
【0043】
その後、本例の乾燥処理を終了するか判断する(図8に示すST)。図10はこの処理を具体的に説明するフローチャートであり、本例の乾燥処理の終了判断の方法を説明するフローチャートである。
図9に示すように、乾燥室3及び4内の温度は60-α℃~60+α℃に制御されており、乾燥室3及び4内の温度が60-α℃以下になると、ヒータ15を加熱し、室内の温度を上げ、一方逆に乾燥室3及び4内の温度が上昇し、60+α℃を超えるとヒータ15の駆動を停止し、この間ダクト弁を制御し、温度のみならず湿度も制御している。
【0044】
すなわち、図10のフローチャートに示すように、乾燥室3及び4内の温度が60-α℃以下になると、弁駆動制御部26を制御して、吸気ダクト弁16aと排気ダクト弁16bを閉じ、本体ダクト弁17を開放し(ステップ(以下、STで示す)1)、ヒータ15を駆動し(ST2)、乾燥室3及び4内の温度が60+α℃を超えたか判断し(ST3)、乾燥室3及び4内の温度が60+α℃を超えると(ST3がYES)、制御部18からヒータ駆動制御部25に制御信号が送られ、ヒータ15の駆動を停止し(ST4)、吸気ダクト弁16a、排気ダクト弁16bを開状態とし、本体ダクト弁17を閉状態に設定し(ST5)。そして、再度乾燥室3及び4内の温度が60-α℃以下になるか判断する(ST6)。
【0045】
このとき、乾燥室3及び4内の温度が60-α℃以下になると上記処理を繰り返すが、図9に示すように芋の乾燥度が最適な所定値に達すると、以後ヒータ15の駆動を停止しても乾燥室3及び4内の温度が上昇する。例えば、図9に示すTn+1のタイミングにおいて、乾燥室3及び4内の温度が60+α℃を超え、ヒータ15の駆動を停止し、ダクト弁を制御しても以後温度が上昇している。例えば、図9に示すTn+2のタイミングではTn+1のタイミングにおける乾燥室3及び4内の温度(60+α℃)を超えて上昇している。
【0046】
そこで、本発明は、ヒータ15の駆動を停止した後、乾燥室3及び4内の温度が上昇するか判断し(ST7)、この状態であっても乾燥室3及び4内の温度が上昇を始めた場合、芋の乾燥処理が完了したものと判断し(ST7がYES)、乾燥処理の終了する(ST8)。尚、この判断は前述の乾燥処理の終了判断プログラムを記憶する記憶部30から制御部18が上記条件の情報を読み出し、乾燥処理の終了判断を行うものである。
【0047】
このように制御することによって、最適な状態の干し芋を製造することができる。尚、上記実施形態の説明は、干し芋の乾燥装置の制御を説明する処理であり、カボチャや人参等の野菜類の乾燥装置の場合にも同様であり、乾燥室3及び4内の温度が上昇を始めた場合、当該野菜の乾燥処理が完了したものと判断し、乾燥処理を終了する。また、この判断は前述の乾燥処理の終了判断プログラムを記憶する記憶部30から制御部18が上記条件の情報を読み出し、乾燥処理の終了判断を行うものである。
【0048】
同様に、ブドウや柿等のドライフルーツの製造、海苔や椎茸、更にイカや魚等の魚貝類の干物等を製造する乾燥装置の場合にも同様であり、乾燥室3及び4内の温度が上昇を始めた場合、当該食材の乾燥処理が完了したものと判断し、乾燥処理を終了する。また、この判断も上記乾燥処理の終了判断プログラムを記憶する記憶部30から制御部18が上記条件の情報を読み出し、乾燥処理の終了判断を行うものである。
また、上記実施形態の説明では一定温度範囲として、60±α℃としたが、上記のように乾燥対象となる食材によって、又は乾燥製品の品質向上を目的として、例えば70±α℃や、80±α℃に温度設定をしてもよく、いずれにしても予め設定した一定温度を超えて装置内温度が上昇するとき、当該食材の乾燥処理が完了したものと判断するものである。
【符号の説明】
【0049】
1・・・乾燥装置
2・・・制御パネル兼モニタ部
3、4・・乾燥室
5、6・・扉
7、7a~7d・・荷重計
8、8a~8d・・台車
9、9a~9d・・ラック
10・・トレー
11・・本体循環ダクト
11a・・吸気ダクト
11b・・排気ダクト
12・・ファン
12a・・回転軸
13・・動力伝達ベルト
14・・モータ
14a・・モータ回転軸
14b・・外気導入口
14c・・遮熱カバー
15・・ヒータ
16a・・吸気ダクト弁
16b・・排気ダクト弁
17・・本体循環ダクト弁
18・・制御部
19・・記憶部
20・・外気温度計
21・・外気湿度計
22・・内部温度計
23・・内部湿度計
24・・ファン駆動制御部
25・・ヒータ駆動制御部
26・・弁開閉制御部
26a~26c・・駆動制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10