(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
F21S 8/02 20060101AFI20230303BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20230303BHJP
F21V 14/06 20060101ALI20230303BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20230303BHJP
F21V 14/00 20180101ALI20230303BHJP
F21Y 101/00 20160101ALN20230303BHJP
F21Y 103/00 20160101ALN20230303BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230303BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20230303BHJP
F21Y 115/20 20160101ALN20230303BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20230303BHJP
【FI】
F21S8/02 410
F21S2/00 330
F21V14/06
F21V5/04 650
F21V14/00 200
F21Y101:00 100
F21Y103:00
F21Y115:10
F21Y115:15
F21Y115:20
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2019075834
(22)【出願日】2019-04-11
【審査請求日】2022-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2018211646
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 征史
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-174601(JP,A)
【文献】特開2018-081748(JP,A)
【文献】特開2013-182717(JP,A)
【文献】特開2016-219113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/02
F21S 2/00
F21V 14/06
F21V 5/04
F21V 14/00
F21Y 101/00
F21Y 103/00
F21Y 115/10
F21Y 115/15
F21Y 115/20
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に固定される光源と、
前記筐体内に固定され、前記光源よりも光軸方向の光出射側に位置する光出射部を有する固定レンズと、
前記固定レンズよりも前記光軸方向の前記光出射側に配置される投光部を有し、前記光源との前記光軸方向の距離が変動可能である移動レンズと、
を備え
、
前記移動レンズが、前記光軸方向における前記光出射側とは反対側に突出する1以上の環状のフレネル部を外周側に有し、
前記光源が、基板に実装された複数の発光素子と、その複数の発光素子を封止する封止部材とを含み、
前記光源から出射される出射光の光軸が、前記固定レンズの中心軸に略一致すると共に、前記移動レンズの中心軸に略一致し、
前記固定レンズの前記光出射側のレンズ有効径が、前記1以上の環状のフレネル部のうちで最も径方向の内方側に位置する内側フレネル部の内径よりも小さい、照明装置。
【請求項2】
前記固定レンズが、前記移動レンズよりも耐熱性に優れる請求項
1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記固定レンズの前記基板側の先端は、前記光源における前記光出射側の先端に対して前記光軸方向に1mm前記光出射側に移動した位置よりも前記光軸方向の前記基板側に位置する、請求項1
又は2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記光源から出射される出射光の光軸が、前記固定レンズの中心軸に略一致すると共に、前記移動レンズの中心軸に略一致し、
前
記レンズ有効径が、前記光源の前記光軸方向の光出射側の環状縁の外接円の直径よりも大きく、前記移動レンズの前記光出射側のレンズ有効径よりも小さい、請求項1乃至
3のいずれか1つに記載の照明装置。
【請求項5】
前
記レンズ有効径が、前記外接円の直径の2.5倍以下である、請求項
4に記載の照明装置。
【請求項6】
前記固定レンズは、そこから出射する出射光の内で周囲に位置する光を、最も前記光軸方向の光出射側に位置している前記移動レンズの光入射面の外縁部に入射させることが可能な集光度を有する、請求項1乃至
5のいずれか1つに記載の照明装置。
【請求項7】
前記固定レンズが、前記光源に対して前記光軸方向に対向する対向面と、前記対向面よりも外周側に位置して、前記対向面よりも前記光軸方向の前記光出射側とは反対側に突出する環状のフレネル部と、を有し、
前記光源の光出射面が、前記対向面と前記環状のフレネル部とが画定する凹部に収容されている、請求項1乃至
6のいずれか1つに記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照明装置としては、特許文献1に記載されているものがある。この照明装置は、基台、光源モジュール、第1円筒部材、第2円筒部材、レンズ保持体、及びレンズを備える。基台は、筐体上側を構成し、光出射側とは反対側に複数のフィンを有する。また、光源モジュールは、基台の光出射側の端面(主面)に固定され、光軸方向のフィン側とは反対側に光を出射する。第1円筒部材は、基台に相対移動不可に固定される。また、第2円筒部材は、第1円筒部材に光軸方向に相対移動可能に取り付けられ、第1円筒部材に対して回転すると第1円筒部材に対する高さ位置が変動する。レンズ保持体は、照明装置の筐体下側を構成し、第2円筒部材の径方向外側に相対移動不可に固定される。また、レンズは、レンズ保持体の内側に相対移動不可に固定される。レンズは、光軸方向において光源モジュールよりも光出射側に位置する。この照明装置では、レンズ保持体を基台に対して回転させることで基台に対するレンズ保持体の高さ位置を変動させることができ、光源モジュールに対するレンズの光軸方向位置を適切に調整できる。したがって、出射光の侠角性能の調整が可能となって配光制御の自由度を大きくでき、所望の調光を実現し易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記照明装置では、狭角特性(レンズが光源から離れた位置における配光領域を狭くする特性)を向上させようとすると、照射光の中落ち(照射領域の中央部が暗くなる現象)が、レンズの広範囲な光軸方向位置で生じ易い。他方、レンズの中落ちの発生を抑制しようとすると、上記狭角特性が悪化し易い。
【0005】
そこで、本開示の目的は、良好な狭角特性と中落ち抑制の両方を実現し易い照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示に係る照明装置は、筐体と、筐体内に固定される光源と、筐体内に固定され、光源よりも光軸方向の光出射側に位置する光出射部を有する固定レンズと、固定レンズよりも光軸方向の光出射側に配置される投光部を有し、光源との光軸方向の距離が変動可能である移動レンズと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る照明装置によれば、良好な狭角特性と中落ち抑制の両方を実現し易い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る照明装置の主要部の斜視図である。
【
図3】上記主要部の中心軸を含む切断面における断面図である。
【
図4】照明装置の筐体に取り付けられた固定レンズアッセンブリを下側から見たときの斜視図である。
【
図8】レンズ取付部材を取り外した固定レンズアッセンブリを下から見た斜視図である。
【
図9】
図8に示す状態から更に固定レンズを取り外した固定レンズアッセンブリを下から見た斜視図である。
【
図10】光源モジュールを取り外した固定レンズアッセンブリを上から見た斜視図である。
【
図11】光源モジュールを保持した基板ホルダを上から見た斜視図である。
【
図12】レンズホルダとそれに保持された移動レンズとで構成される光学ブロックの斜視図である。
【
図17】照明装置の模式断面図であり、固定レンズの出射光制御について説明するための模式断面図である。
【
図18】1枚の移動レンズのみを有する参考例の照明装置、並びに固定レンズ及び移動レンズ(2枚のレンズ)を有する一実施例の照明装置の夫々の光学効率と、移動レンズの光軸方向位置との関係について説明する図である。
【
図19】1枚の移動レンズのみを有する参考例の照明装置における移動レンズの位置と配光の関係について説明する図である。
【
図20】固定レンズ及び移動レンズ(2枚のレンズ)を有する一実施例の照明装置における移動レンズの位置と配光の関係について説明する図である。
【
図21】移動レンズが光源から離れた位置に存在するときの照明装置の各部位の温度を説明するための模式断面図である。
【
図22】移動レンズが光源の近傍に位置するときの照明装置の各部位の温度を説明するための模式断面図である。
【
図23】移動レンズが光源から最も離れた狭角位置に配置されている状態における、光源、固定レンズ、及び移動レンズの位置関係の一例を表す模式図である。
【
図24】固定レンズから出射された周囲光が狭角位置に配置されている移動レンズの光入射面の外縁部に入射している場合における、移動レンズによる配光制御について説明する模式図である。
【
図25】照明装置との比較において、固定レンズが存在しなくて、移動レンズのみが存在する照明装置における、中角位置での光の進行方向を表す図である。
【
図26】移動レンズが光源に最も近づいている広角位置に配置されている状態における
図23に対応する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下の実施例では、異なる図間において、各部材における、縦、横、高さ等の寸法比は、必ずしも一致しない。また、以下の説明及び図面において、R方向は、以下で説明するレンズ本体41の径方向を示し、θ方向は、レンズ本体41の周方向を示す。また、Z方向は、照明装置1の高さ方向を示し、後で説明する光源モジュール20の基板21の厚さ方向に一致し、光軸方向にも一致する。R方向、θ方向、及びZ方向は、互いに直交する。また、以下の説明で、中心軸とは、レンズ本体41の中心軸を含む直線を示す。
【0010】
また、以下の説明では、Z方向が、照明装置の光源から出射される光の光軸方向に一致する場合について説明する。しかし、Z方向は、照明装置の光源から出射される光軸方向に一致しなくてもよい。また、以下の説明で、鉛直方向や水平方向に関連する文言、例えば、下側、上側、水平方向等を用いた場合、それらの文言は、照明装置からの出射光が鉛直方向下側に照射され、その出射光の光軸が鉛直方向に一致している状態で表現されている。換言すると、本実施例では、照明装置が、Z方向が鉛直方向に一致するように配置される場合を例に説明を行う。補足すると、本開示の照明装置は、鉛直方向に対する出射光の光軸方向の傾斜角度を調整できるユニバーサル型の照明装置でもよいが、その場合、鉛直方向や水平方向に関連する文言は、出射光の光軸方向が鉛直方向に一致している状態で表現されたものとなる。また、本明細書では、下側とは、Z方向の投光側のことを指し、上側とは、Z方向の投光側とは反対側を指す。また、本明細書では、「略」という文言は、「大雑把に言って」という文言と同じ意味合いで用いており、「略」の要件は、人がだいたいそのように見えれば満たされる。また、以下の説明で、レンズ有効径を、レンズにおいて光線が通過する面の光線が通過する領域の最大径として定義する。レンズ有効径を、レンズの光軸上の無限遠物点から出てレンズを通過する平行光線束の直径として定義してもよい。なお、レンズの保持部のような突起部分等にも光が入射する場合はあるが、当該突起部分等については有効径に含めない。また、以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。
【0011】
図1は、本開示の一実施形態に係る照明装置1の主要部の斜視図である。
図1に示すように、照明装置1は、埋込型ダウンライトであり、ホール等の建物の天井に埋め込み配置され、下方を照明する。照明装置1は、有底円筒状部11を有する筐体10を備える。有底円筒状部11は、筐体10内に光源22(
図9参照)を取り付ける際の取付台として機能する。筐体10は、上方に突出する複数のフィン12を有する。筐体全体は、光源22で発生する熱を放散させる役割を果たし、特にフィン12が光源22からの熱を外気に放熱する。このため、筐体10は、金属材料等の熱伝導率の高い材料によって構成されると好ましい。筐体10は、例えば、アルミダイカスト等で、有底円筒状部11とフィン12を一体成形することで構成される。なお、筐体は、有底円筒状部とフィンを接合する構成でもよい。この場合、例えば、有底円筒状部に設けた突起を、フィンに設けられた孔に挿入した後に塑性変形させることで、有底円筒状部とフィンを接続してもよい。なお、筐体は、フィンを有さなくてもよい。また、筐体は、アルミニウム以外の金属材料で構成されてもよく、ポリブチレンテレフタレート等の樹脂材料によって形成されてもよい。
【0012】
詳述しないが、筐体の円筒外周面には、例えば、図示しない2つの取付バネが、取り付けられる。2つの取付バネは、例えば、枠体外側に中心軸を挟んで径方向(R方向に一致)に対向するように配置され、ボルト等で枠体の円筒外周面に固定される。各取付バネは、例えば、外力が作用しない天井の埋め込み孔に固定される前の状態において略水平方向に延在する。取付バネは、例えば、長尺状の金属板によって構成され、板バネ構造を有する。取付バネが鉛直方向に延在するように、取付バネを歪ませ、取付バネを埋め込み孔の周囲に当接させる。取付バネが埋め込み孔内面から受ける水平方向の力で、照明装置1を天井の埋め込み孔内面に固定する。なお、取付バネは3以上設けられてもよい。また、照明装置を天井に取り付ける取付構造は、照明装置を天井に固定できる構造であれば如何なる構造でもよく、取付バネを含まなくてもよい。
【0013】
図2は、照明装置1の主要部の分解斜視図であり、
図3は、当該主要部の中心軸を含む切断面における断面図である。
図2に示すように、照明装置1は、筐体10、光源モジュール20、基板ホルダ30、固定レンズ40、ホルダ固定部材42、レンズ取付部材45、移動レンズ60、環状のレンズホルダ70、及び環状の回転部材80を備える。基板ホルダ30は、光源モジュール20の基板21を保持し、ホルダ固定部材42は、基板ホルダ30を筐体内側の上側端面(主面)に固定する際に用いられる。また、レンズ取付部材45は、基板21の下側に配置される固定レンズ40を基板ホルダ30に取り付けるために用いられ、レンズホルダ70は、移動レンズ60を保持する。また、回転部材80は、レンズホルダ70を筐体10に対して光軸方向に移動させる役割を果たす。
【0014】
図3に示すように、固定レンズ40は、光源モジュール20の下側に配置され、移動レンズ60は、固定レンズ40の下側に配置される。より正確には、固定レンズ40の光出射部(Z方向の光出射側の端面)88が、光源モジュール20よりもZ方向の光出射側(Z方向下側)に配置され、移動レンズ60の投光部(Z方向の光出射側の端面)87が、固定レンズ40よりもZ方向の光出射側(Z方向下側)に配置される。また、レンズホルダ70は、移動レンズ60を取り囲むように移動レンズ60の外径側に配置され、回転部材80は、レンズホルダ70を取り囲むようにレンズホルダ70の外径側に配置される。
【0015】
図4は、筐体10に取り付けられた固定レンズアッセンブリ90を下側から見たときの斜視図である。光源モジュール(
図3参照)20、基板ホルダ30、固定レンズ40、ホルダ固定部材42、及びレンズ取付部材45は、統合されて一体化される。固定レンズアッセンブリ90は、その一体化された構造を含む。以下では、先ず、固定レンズアッセンブリ90の構造について説明し、筐体10に対する固定レンズアッセンブリ90の固定構造についても説明する。
【0016】
図5は、固定レンズ40の斜視図であり、
図6は、レンズ取付部材45の斜視図である。また、
図7は、固定レンズアッセンブリ90の斜視図である。
図5に示すように、固定レンズ40は、レンズ本体41と、2つのレンズ固定部57を有する。固定レンズ40は、透光性を有する透光性材料によって構成される。固定レンズ40は、アクリル、ポリカーボネート、シリコーン等の透明樹脂材料、又は、ガラス材料によって形成されると好ましく、耐熱性が高い透光性材料、例えば、シリコーン材料やガラスで構成されると更に好ましい。レンズ本体41は、円錐外周面63を有し、円錐外周面63の中心軸の延在方向は、Z方向に略一致する。また、レンズ本体41は、Z方向上側に開口する凹部46を有し、凹部46は、円錐外周面63の中心軸に略一致する中心軸を有する。凹部46の側面は、例えば、円筒内周面48で構成されることができる。2つのレンズ固定部57は、レンズ本体41の中心軸をはさむようにR方向に対向配置され、各レンズ固定部57は、円錐外周面63からR方向外方に延在する。レンズ固定部57は、R方向外方とZ方向の両側に開口する凹部47をR方向外方側に有する。
【0017】
図6に示すように、レンズ取付部材45は、面対称な構造を有し、リング部50、2つのレンズ係止部51、及び2つのホルダ係止部52を有する。レンズ係止部51は、リング50から径方向外方側に突出し、R方向両側とZ方向上側が開口する凹部59を有する。また、ホルダ係止部52は、レンズ係止部51のR方向外方側の端面からR方向外方側に突出する。凹部59においてR方向及びZ方向の両方に直交する直交方向の長さaは、レンズ固定部57(
図5参照)の先端部におけるR方向及びZ方向の両方に直交する直交方向の長さbより大きい。
【0018】
図7に示すように、レンズ固定部57の先端部は、凹部59の底面53に載置される。また、基板ホルダ30は、下側に突出する突出部31を含み、突出部31は、互いに間隔をおいて配置される3つの柱状部32を先端側に有する。一方側の柱状部32の一端から他方側の柱状部32の他端までの上記直交方向の長さは、上記aと同一かaより僅かに小さい。また、中央の柱状部32の上記直交方向の長さは、凹部47の上記直交方向の長さc(
図5参照)と同一かcより僅かに小さい。中央の柱状部32は凹部47を通過し、その先端面は底面53に接触する。
【0019】
再度、
図6を参照して、ホルダ係止部52は、貫通孔56、貫通孔56の上記直交方向の両側に配置される一対の柱状部54a,54b、及び貫通孔56のR方向外側に位置するZ方向下側を向いた係止端面55を有する。また、
図7に示すように、基板ホルダ30は、下側に延在する係止部34を有する。中央の柱状部32を、凹部47を通過させ後、その先端面を、底面53に接触させたとする。すると、その接触と同時に、基板ホルダ30の係止部34が一対の柱状部54a,54bで位置決めされた状態で貫通孔56(
図6参照)に収容され、係止部34の係止爪34aが、係止端面55に係止される。これにより、基板ホルダ30、固定レンズ40、及びレンズ取付部材45が、一体に統合される。
図4に示すように、その統合構造が構成された状態で、レンズ取付部材45のリング部50は、レンズ本体41のR方向外方に位置する。
【0020】
次に、固定レンズアッセンブリ90における光源モジュール20の保持と、固定レンズアッセンブリ90の筐体10への固定について説明する。
図8は、レンズ取付部材45(
図6参照)を取り外した固定レンズアッセンブリ90を下から見た斜視図であり、
図9は、
図8に示す状態から更に固定レンズ40を取り外した固定レンズアッセンブリ90を下から見た斜視図である。また、
図10は、光源モジュール20(
図9参照)を取り外した固定レンズアッセンブリ90を上から見た斜視図であり、
図11は、光源モジュール20を保持した基板ホルダ30を上から見た斜視図である。
【0021】
図8に示す固定レンズアッセンブリ90から固定レンズ40を取り外すと、
図9に示すように、光源22が外部に露出する。
図9を参照して、光源モジュール20は、基板21と、光源22を有する。基板21は、平面視で略矩形の形状を有し、光源22は、円板状の形状を有し、基板21の下面(実装面)の略中央に配設される。光源モジュール20は、例えば、COB(Chip On Board)構造を有し、光源22は、基板21に実装された複数のLED(light emitting diode)と、複数のLEDを封止する封止部材を含む。
【0022】
基板21は、例えば、セラミックス基板、樹脂基板、又はメタルベース基板等で構成される。詳述しないが、基板21には、一対の電極端子と、所定パターンの金属配線が形成される。一対の電極端子は、LEDを発光させるための直流電力を外部から受電するために設けられる。また、所定パターンの金属配線は、LED同士を電気的に接続するために設けられる。
【0023】
LEDは、発光素子の一例である。LEDは、例えば、単色の可視光を発するベアチップで構成され、通電されれば青色光を発する青色LEDチップで構成される。複数のLEDは、例えば基板21にマトリクス状に配置される。なお、LEDは、基板に1つのみ実装されてもよい。封止部材は、例えば、透光性樹脂で構成され、蛍光体を含む。蛍光体は、LEDからの光を波長変換する役割を果たす。封止部材は、例えば、シリコーン樹脂に蛍光体粒子を分散させた蛍光体含有樹脂で構成される。光源モジュール20が白色光を出射し、LEDが青色光を発光する青色LEDチップである場合、蛍光体粒子は、例えばYAG系の黄色蛍光体で構成される。
【0024】
なお、封止部材は、例えば、全てのLEDを一括封止してもよく、複数のLEDを列ごとにライン状に封止してもよく、各LEDを1つずつ個別に封止してもよい。また、光源は、LED以外の発光素子を含んでもよく、半導体レーザ素子や、有機EL(Electro Luminescence)素子若しくは無機EL素子等の固体発光素子等を含んでもよい。又は、光源は、白熱灯や蛍光灯で構成されてもよい。
【0025】
図9に示すように、2つのホルダ固定部材42が、基板ホルダ30の長手方向に間隔をおいて基板ホルダ30の下側に配置される。ホルダ固定部材42は、取付孔43を有し、この取付孔43は、Z方向から見たとき、基板ホルダ30の取付孔39(
図10参照)に重なり、筐体10の主面18(
図4参照)に設けられたねじ孔(図示せず)にも重なる。
図10に示すように、基板ホルダ30は、平面視が略矩形の貫通孔37を有する。ホルダ固定部材42が、基板ホルダ30に対して所定位置に配置されると、ホルダ固定部材42の一部をなす基板受部42aが、Z方向から見たとき貫通孔37に重なる。基板ホルダ30及びホルダ固定部材42は、基板収容室27を画定する。
【0026】
図11に示すように、光源モジュール20は、光源22を下側に向けた状態で基板収容室27内に収容される。光源モジュール20が基板収容室27(
図10参照)に収容された状態で、基板21の下面の一部が、基板受部42a(
図10参照)に接触する。更には、基板収容室27内に基板21を収容した基板ホルダ30を、上述したように、固定レンズ40、及びレンズ取付部材45と一体に統合する。その後、図示しないボルトを、下側から、ホルダ固定部材42の取付孔43(
図9)、基板ホルダ30の取付孔39(
図10参照)、及び、筐体10の主面18に設けられたねじ孔(図示せず)に締め込む。この締め込みで、固定レンズアッセンブリ90(
図7参照)が、筐体10の主面18に固定される。
【0027】
図3に示すように、本実施例では、固定レンズアッセンブリ90が主面18に固定された状態で、光源22の光出射側の先端29におけるZ方向位置が、固定レンズ40の基板側の先端62におけるZ方向位置と一致する。なお、固定レンズアッセンブリが、主面に固定された状態で、固定レンズの基板側の先端が、光源における光出射側の先端に対してZ方向に1mm光出射側に移動した位置よりもZ方向の基板側に位置すると好ましい。また、固定レンズの基板側の先端(Z方向上端)のZ方向位置が、光源の光出射側の先端(Z方向下端)のZ方向位置と一致するか、又は光源のZ方向下端のZ方向位置よりも基板側に位置すると更に好ましく、その場合において、固定レンズの基板側の先端は、基板に接触してもよい。
【0028】
次に、移動レンズ60(
図2参照)を、Z方向に移動可能にする構造について説明する。
図12は、レンズホルダ70とそれに保持された移動レンズ60とで構成される光学ブロック95の斜視図であり、
図13は、レンズホルダ70の斜視図であり、
図14は、移動レンズ60の斜視図である。
図12に示すように、レンズホルダ70は、環状部材であり、移動レンズ60を取り囲むように配置される。レンズホルダ70は、アルミニウム等の金属材料、又はポリブチレンテレフタレート等の樹脂材料によって好適に形成される。また、移動レンズ60は、透光性を有する透光性材料によって構成され、アクリル、ポリカーボネート、シリコーン等の透明樹脂材料、又は、ガラス材料によって形成されると好ましい。
【0029】
図13に示すように、レンズホルダ70は、θ方向に間隔をおいて配置される2つの凹部71を有し、各凹部71は、Z方向上側及びR方向両側に開口し、Z方向に延在する。凹部71の役割については後で説明する。また、レンズホルダ70は、3つのレンズ嵌合部73を有し、3つのレンズ嵌合部73は、θ方向に略等間隔に配置されて内周側に配置される。レンズ嵌合部73は、R方向内方に突出する突出部で構成される。
【0030】
図14に示すように、移動レンズ60は、Z方向下側に行くにしたがって末広がりとなる形状を有する。移動レンズ60は、外周側の下側端部にθ方向に略等間隔に配置される3つのホルダ嵌合部61を有する。ホルダ嵌合部61は、レンズ嵌合部73(
図13参照)の形状に対応する形状であり、R方向内側に窪む凹部で構成される。レンズ嵌合部73をホルダ嵌合部61に圧入で嵌合させることで、移動レンズ60がレンズホルダ70に固定され、その結果、
図12に示す光学ブロック95が構成される。
【0031】
次に、回転部材80(
図2参照)に対する光学ブロック95の相対移動可能な統合構造について説明する。
図12に示すように、レンズホルダ70は、外周側に2つの嵌合爪78を有する。2つの嵌合爪78は、中心軸を介してR方向に対向するように配置され、各嵌合爪78は、板形状を有し、Z方向に対して傾斜する方向に延在する。
【0032】
図15は、回転部材80の斜視図である。
図15に示すように、回転部材80は、略円筒状の部材であり、θ方向に間隔をおいて配置される2つの傾斜溝81を有する。傾斜溝81は、螺旋溝の一部からなる形状を有する。傾斜溝81は、Z方向に対して傾斜し、θ方向一方側に行くにしたがって回転部材80のZ方向下側からZ方向上側まで延在する。傾斜溝81は、回転部材80を厚さ方向に貫通する細長い長孔形状の貫通孔の構造を有し、Z方向に対向する一対の内壁面(傾斜面)81a,81bを含む。
【0033】
図16に示すように、光学ブロック95においてR方向外方に突出する嵌合爪78を、回転部材80の傾斜溝81に嵌合させることで、光学ブロック95と回転部材80が一体に統合され、回転部材アッセンブリ85が構成される。嵌合爪78は、傾斜溝81内を傾斜溝81の延在方向に移動可能になっている。光学ブロック95が、
図16に示す状態から回転部材80に対してθ1に示す方向に相対回転すると、光学ブロック95ひいては移動レンズ60が回転部材80に対してZ方向上側に移動する。このように、傾斜溝81内における嵌合爪78の存在位置を調整することで、回転部材80に対する移動レンズ60のZ方向位置を調整できる。
【0034】
次に、筐体10に対する回転部材アッセンブリ85の取付構造について説明する。
図1に示すように、筐体10は、2分割構造を有し、第1部材10aと第2部材10bを含む。また、
図4に示すように、筐体10の主面18には、ねじ孔13が設けられる。また、
図3に示すように、回り止め部材97が、ねじ孔13に締め込まれて主面18に固定される。回り止め部材97は、柱状の部材であり、主面18に固定された状態でZ方向に延在する。回り止め部材97の先端側97aは、主面に18に固定された状態でレンズホルダ70の凹部71内に配置される。これにより、筐体10に対する光学ブロック95のθ方向の相対回転の範囲が所定の周方向領域に制限される。
【0035】
図3に示すように、筐体10は、1以上の環状溝28を内周面に有し、回転部材80は、環状溝28にZ方向に僅かな隙間を有した状態で収容されると共にθ方向に間隔をおいて配置される複数の突出部89を有する。回り止め部材97の先端側97aがレンズホルダ70の凹部71内に配置されると共に、回転部材80の突出部89が筐体10の環状溝28に収容された状態で図示しないねじで第1部材10a(
図1参照)と第2部材10bを一体化する。この一体化で、回転部材アッセンブリ85が筐体10に取り付けられて筐体10と統合される。上記Z方向の僅かな隙間が存在するため、回転部材80を筐体10に対して円滑に回転させることができる。筐体10に対する回転部材80のZ方向位置は、その僅かな隙間のZ方向長さだけ変動し、換言すると、筐体10に対する回転部材80のZ方向位置は略変動しない。
【0036】
再度、
図15を参照して、回転部材80は、人がそれを掴んで回転させるための環状の把持部82をZ方向下側に有する。
図1に示すように、照明装置1が組み立てられた状態で、把持部82は、筐体10よりもZ方向下側に突出する。したがって、人は、回転部材80の把持部82を回転させることができ、筐体10に対して回転部材80をθ方向の双方向に自在に回転させることができる。
【0037】
上記構成において、人が把持部82を用いて筐体10に対して回転部材80を回転させたとする。すると、回り止め部材97の先端側97aがレンズホルダ70の凹部71内に配置されて、筐体10に対する光学ブロック95のθ方向移動が僅かな範囲に制限されているため、光学ブロック95が回転部材80の回転と共に連れ回りすることがない状態で、回転部材80が、光学ブロック95に対して相対回転する。したがって、この相対回転によって、嵌合爪78が、傾斜溝81内を移動し、その結果、光学ブロック95が回転部材80に対してZ方向に相対移動する。よって、上述のように、回転部材80が回転しても、回転部材80のZ方向位置が殆ど変化しないので、光学ブロック95のZ方向位置を自在に変動させることができ、光学ブロック95に含まれる移動レンズ60のZ方向位置も自在に変動させることができる。
【0038】
次に固定レンズ40の出射光制御について説明する。照明装置1の模式断面図である
図17を参照して、仮に固定レンズ40が存在しなかった場合、出射光は、矢印Aで示すように、光源22からより広範囲にR方向外方に広がり易い。そして、光源22からのZ方向距離が短い場合でも、より大きな光量の光がR方向外方に進行する。
【0039】
これに対し、本実施例のように、固定レンズ40を光源22の近傍に固定した場合、光源22から出射する光の殆どを、固定レンズ40に入射させることができる。そして、光源22からの光を、固定レンズ40で矢印Bで示すZ方向との角度が小さくなる方向に制御でき、より下側方向に進行するように制御できる。よって、光源22からR方向外側に進行して移動レンズ60に入射しない光を抑制できて照明装置1の光学効率を上げることができると共に、光源22からの出射光を、移動レンズ60で精密な配光制御を実行し易い光にできる。
【0040】
次に、試験例を示すことで、これらの作用効果についてより客観的に説明する。
図18は、1枚の移動レンズのみを有する参考例の照明装置、並びに固定レンズ及び移動レンズ(2枚のレンズ)を有する一実施例の照明装置の夫々における光学効率と、移動レンズのZ方向位置との関係について説明する図である。
図18に示すように、1枚の移動レンズでは、移動レンズが光源に近い位置から狭角配光位置まで光源から離れると、光学効率が80%から60%程度まで急激に低下する。これに対し、固定レンズ及び移動レンズを有する場合、移動レンズが光源に近い位置から狭角配光位置まで光源から離れても、光学効率が略一定に保たれ、殆ど低下することがない。したがって、本実施例の照明装置1のように、固定レンズ40及び移動レンズ60を有する場合、移動レンズ60のZ方向位置に拠らず光学効率を高い値にすることができ、光源22から出射される光を効率的に照明に利用できる。
【0041】
図19は、1枚の移動レンズのみを有する参考例の照明装置における移動レンズの位置と配光の関係について説明する図である。また、
図20は、固定レンズ及び移動レンズ(2枚のレンズ)を有する一実施例の照明装置における移動レンズの位置と配光の関係について説明する図である。なお、
図19及び
図20において、移動距離は、移動レンズの光源からの距離を表し、値が正の大きい値になる程、光源からの距離が遠く、値が負の大きな値になる程、光源からの距離が近いことを意味する。また、
図19及び
図20から明らかなように、レンズを狭角位置(光源から距離が離れた位置)から光源に近づけるほど、配光角度が広くなっていく。
【0042】
図19に示す例では、参考例の照明装置でも、移動距離が0の場合に示されているように、移動レンズが光源か離れた位置で、光が照明装置直下の狭い範囲に出射されており、狭角性能に優れる。しかし、移動距離が-9以上-5以下の場合に示されているように、参考例の照明装置では、照明装置直下の領域の出射光の光量が周辺領域に出射される光の光量よりも低い中落ち現象(照射領域の中央部が暗くなる現象)が広範囲の移動距離で確認でき、しかも中落ちの度合も大きくなっている。ここで、図示はしないが、移動レンズの形状等を変更して中落ち現象を抑制しようとすると、狭角性能が悪化する。
【0043】
これに対し、
図20に示す一実施例の照明装置の場合、移動距離が0.5の場合に示されているように、移動レンズが光源か離れた位置で、光が照明装置直下の狭い範囲に出射されており、狭角性能に優れる。また、移動距離が-8以上0.5以下の殆どの範囲で、中落ちが生じることがなく、非常に小さな中落の発生も、移動距離-3、及び-4の場合のみに限られる。したって、本開示の照明装置1のように、固定レンズ40及び移動レンズ60を備える場合、良好な狭角特性と中落ち抑制の両方を実現し易い。
【0044】
更には、本開示の照明装置1では、移動レンズの耐久性も向上できる。詳しくは、照明装置では、
図3に示す照明装置1のように、移動レンズ60の外径側にZ方向上側に突出する環状のフレネル部68を設けて、移動レンズ60が受光する光の光量を大きくすることがある。ここで、一般的に、移動レンズを光源に近づけたとき、光軸方向に関して、フレネル部が光源に最も近く位置することになるので、光源からの強い光がフレネル部に照射される。したがって、フレネル部が光を吸収することで、フレネル部の温度、特に、その先端温度が高くなって、フレネル部が熱劣化を起こし易い。
【0045】
しかし、本開示の照明装置1では、
図17を用いて説明したように、光源22からの光を固定レンズ40で下側に制御でき、光源22からR方向外方のフレネル部68に進行する光を大きく抑制できて、フレネル部68に入射する光の光量を大きく低減できる。したがって、
図21及び
図22に示すように、フレネル部68の先端温度を、
図21に示す移動レンズ60が光源から遠いときよりも
図22に示す移動レンズ60が光源に近いときに低くできる。より詳しくは、
図22に示す状態は、
図21に示す状態よりも移動レンズ60が光源に近くなっているにも拘わらず、フレネル部68の先端の温度が、
図21に示す状態の72.0℃よりも低い69.1℃となっている。よって、移動レンズ60の熱劣化を大きく抑制でき、移動レンズ60の耐久性を向上できる。
【0046】
以上、照明装置1は、筐体10と、筐体10内に固定される光源22と、筐体10内に固定され、光源22よりもZ方向の光出射側に位置する光出射部(
図3参照)88を有する固定レンズ40を備える。また、照明装置1は、固定レンズ40よりもZ方向の光出射側に配置される投光部87を有し、光源22とのZ方向(光軸方向)の距離が変動可能である移動レンズ60を備える。また、光出射部88は、固定レンズ40におけるZ方向の光出射側の端面で構成され、投光部87は、移動レンズ60におけるZ方向の光出射側の端面で構成される。
【0047】
したがって、光源22から出射された出射光のうちのより多くを固定レンズ40で受光でき、固定レンズ40が受光した光をZ方向に対する傾斜角度が小さい方向に配光制御でき、下側に向かうように制御できる。したがって、光学効率を上げ易くて、光を効率的に利用できると共に、光源22からの出射光を、移動レンズ60でより精密に配光制御し易い。よって、良好な狭角特性と中落ち抑制の両方を実現し易い。
【0048】
また、移動レンズ60が、外周側にフレネル部68を有してもよい。
【0049】
本構成によれば、光源22からR方向外側に出射された光をフレネル部68で受光し易い。したがって、光学効率を大きくできる。なお、本構成は、採用されると好ましいが、採用されなくてもよく、移動レンズが、外周側にフレネル部を有さなくてもよい。
【0050】
また、固定レンズ40が、移動レンズ60よりも耐熱性に優れてもよい。この構成は、例えば、固定レンズ40を、耐熱性に優れるシリコ-ン系樹脂やガラスで構成し、移動レンズ60を、シリコ-ン系樹脂やガラスよりも耐熱性が劣るアクリルやポリカーボネートで構成することで実現できる。
【0051】
本構成によれば、固定レンズ40が、光源22からの光や光源22で生成される熱で熱劣化しにくい。したがって、照明装置1の耐久性を向上させることができる。なお、本構成は、採用されると好ましいが、採用されなくてもよい。例えば、移動レンズと固定レンズが、同一の透明材料で構成されて、移動レンズが、固定レンズと同一の耐熱性を有してもよい。又は移動レンズは固定レンズよりも優れた耐熱性を有してもよい。
【0052】
また、光源22は、基板21に実装されてもよい。また、固定レンズ40の基板21側の先端62が、光源22における光出射側の先端29に対してZ方向に1mm(1ミリメートル)光出射側に移動した位置よりもZ方向の基板21側に位置してもよい。
【0053】
本構成によれば、光源22から出射された光をより効率的に固定レンズ40で受光できる。よって、光学効率を更に向上できると共に、移動レンズ60における配光制御を更に精密に実行できる。
【0054】
なお、本開示は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0055】
例えば、上記実施形態では、回転部材80が傾斜溝81を有し、光学ブロック95が嵌合爪78を有する場合について説明した。しかし、光学ブロックが外周面に光軸方向に対して傾斜する傾斜溝を有してもよく、回転部材が、傾斜溝に嵌り込んで回転部材が回転すると傾斜溝内における存在位置が変動する嵌合爪を有してもよい。
【0056】
また、光学ブロック95をレンズホルダ70及び移動レンズ60で構成する場合について説明した。しかし、光学ブロックは、レンズのみで構成されてもよい。
【0057】
また、傾斜溝81が、回転部材80を厚さ方向に貫通する場合について説明した。しかし、傾斜溝は、回転部材又は光学ブロックの側壁部を厚さ方向に貫通しなくてもよく、一対の内壁部の間を連結する底部を有してもよい。但し、傾斜溝が、それが形成される部材を厚さ方向に貫通する貫通孔の構造を有している場合、嵌合爪の該厚さ方向の寸法を大きくできて嵌合爪の体積を大きくできる。よって、嵌合爪の強度を大きくできて好ましい。
【0058】
また、傾斜溝81に嵌り込む嵌合部が、板形状の嵌合爪78である場合について説明した。しかし、傾斜溝に嵌り込む嵌合部は、板形状以外の如何なる形状でもよくて、例えば、ピン形状等でもよい。
【0059】
また、レンズ嵌合部73が、R方向内方に突出する突出部で構成され、ホルダ嵌合部61が、R方向内側に窪む凹部で構成される場合について説明した。しかし、レンズ嵌合部が、R方向外側に窪む凹部で構成され、ホルダ嵌合部が、R方向外方に突出すると共にその凹部に嵌合する突出部で構成されてもよい。
【0060】
また、レンズホルダ70が、θ方向に互いに間隔をおいて配置される2つの凹部71を有していたが、レンズホルダは、1以上の凹部を有すればよい。また、レンズホルダ70が、θ方向に互いに間隔をおいて配置される3つのレンズ嵌合部73を有し、移動レンズ60が、θ方向に互いに間隔をおいて配置される3つのホルダ嵌合部61を有する場合について説明した。しかし、レンズホルダは、1以上のレンズ嵌合部を有すればよくて、θ方向に互いに間隔をおいて配置される2以上のレンズ嵌合部を有すると好ましい。また、レンズも、1以上のホルダ嵌合部を有すればよくて、θ方向に互いに間隔をおいて配置される2以上のホルダ嵌合部を有すると好ましい。また、照明装置1が、θ方向に互いに間隔をおいて配置される2つの傾斜溝81を有する場合について説明した。しかし、照明装置は、1つのみの傾斜溝を有してもよく、θ方向に互いに間隔をおいて配置される3以上の傾斜溝を有してもよい。なお、照明装置が、N(Nは、いずれかの自然数)の傾斜溝を有する場合、回転部材が、基台に対して(360/N)°回転すればよく、照明装置が、2以上の傾斜溝を有する場合、回転部材が基台に対して360°回転する必要はない。
【0061】
また、移動レンズを光軸方向に移動可能とする構成は、多種多様知られているが、本開示の技術では、その技術のうちのいずれの技術も採用できる。例えば、本実施例では、回転部材80が、光源22に対してZ方向位置が略変わらずに回転可能となっている構成について説明した。しかし、回転部材は、例えば、特許第5717516号に記載されている技術や特許6159460号に記載されている技術のように、筐体に対して光軸方向に移動可能でもよい。そして、光学ブロック又は移動レンズが、回転部材に直接又は他の部材を介して間接的に固定されていることで筐体に対して光軸方向に移動可能でもよい。
【0062】
また、ダウンライトやスポットライトは多種多様な構造が存在するが、本開示の技術は、それらの多種多様のダウンライトやスポットライトのうちのいずれの構造が基本となっていてもよい。また、照明装置1が、埋め込み型ダウンライトである場合について説明したが、照明装置は、レールに吊り下げられる形式や、天井に吊り下げられる形式でもよい。要は、本開示の照明装置は、筐体と、筐体内に固定される光源と、筐体内に固定され、光源よりも光軸方向の光出射側に位置する光出射部を有する固定レンズと、固定レンズよりも光軸方向の光出射側に配置される投光部を有し、光源との光軸方向の距離が変動可能である移動レンズと、を備える構成を有していれば、如何なる構造の照明装置でもよい。
【0063】
更に述べると、移動レンズは、光軸方向(Z方向)の光出射側とは反対側に突出する1以上の環状のフレネル部を外周側に有してもよい。この場合、フレネル部で、固定レンズからの光をより効率的に受光できるので、出射光の光度を高くし易く、更には、フレネル部で、受光した光の進行方向を光軸側に変更し易くなるため、狭角性能も良好なものにし易い。
【0064】
また、特に、
図14に示すように、移動レンズ60が、光軸方向(Z方向)の光出射側とは反対側に突出する1つの環状のフレネル部68をZ方向の光入射側の外周側に有していると好ましい。また、
図3に示すように、固定レンズ40のZ方向の光出射側のレンズ有効径(参照番号64は、固定レンズ40のレンズ有効径上に位置する一箇所を示す)が、光源22の外径よりも大きくて、移動レンズ60のZ方向の光出射側のレンズ有効径(参照番号65は、移動レンズ60のレンズ有効径上に位置する一箇所を示す)よりも小さいと好ましい。
【0065】
上述のように、光源22は、基板21に実装された複数のLED(発光素子)と、その複数のLEDを封止する封止部材とを含む。
図3に示すように、固定レンズ40の上記レンズ有効径は、光源22のZ方向の光出射側の環状縁の外接円の直径よりも大きくなっている。また、光源22から出射される出射光の光軸は、固定レンズ40の中心軸に略一致すると共に、移動レンズ60の中心軸に略一致している。
【0066】
なお、
図9に示すように、本実施例では、光源22が、円板形状を有するので、光源22の光出射側の環状縁と、その外接円とは、一致する。しかし、光源は、例えば、光軸方向から見たとき、正方形や長方形であってもよく、そのような場合、外接円は、光源のZ方向の光出射側の環状縁の4つの角を通過する円として定義される。また、固定レンズの光出射側のレンズ有効径が、移動レンズにおいてZ方向の光出射側とは反対側に形成される1以上の環状のフレネル部のうちで最も径方向の内方側に位置する内側フレネル部の内径よりも小さいと好ましい。より具体的な例について述べると、本実施形態では、移動レンズ60が1つのみの環状のフレネル部68をZ方向の光入射側の外周側に有し、そのフレネル部68が、内側フレネル部となる。この場合において、固定レンズ40の上記レンズ有効径が、環状のフレネル部68の内径よりも小さいと好ましい。
【0067】
また、固定レンズ40は、次に説明する集光度を有すると好ましい。
図23は、移動レンズ60が光源22から最も離れた狭角位置に配置されている状態における、光源22、固定レンズ40、及び移動レンズ60の位置関係の一例を表す模式図である。
図23に示すように、固定レンズ40は、そこから出射された光円錐(ライトコーン)67の周囲光69を、光源22から最も離れた狭角位置に配置された移動レンズ60のZ方向の光入射面の外縁72に入射させることができる程度の集光度を有していると好ましい。換言すると、固定レンズ40は、そこから出射する出射光の内で周囲に位置する周囲光69を、最も光軸方向の光出射側に位置している移動レンズ60の光入射面74の外縁部75に入射させることが可能な集光度を有すると好ましい。
【0068】
次に、これらの構成から導かれる作用効果について説明する。上述のように本実施例では、固定レンズ40の上記レンズ有効径が、光源22の外径よりも大きくて、移動レンズ60の上記レンズ有効径よりも小さくなっている。したがって、固定レンズ40が、光源が出射した光を効率的に受光でき、更には、固定レンズ40の集光度を、固定レンズ40から出射された周囲光69が狭角位置に配置されている移動レンズ60の光入射面74の外縁部75に入射可能な集光度に調整し易くなる。また、本実施例のように、固定レンズ40の上記レンズ有効径が、環状のフレネル部68の内径よりも小さいと、更に、周囲光69を、狭角位置に配置されている移動レンズ60の光入射面74の外縁部75に入射させ易くなる。
【0069】
また、本実施例では、固定レンズ40から出射された周囲光69が、狭角位置に配置されている移動レンズ60の光入射面74の外縁部75に入射する。よって、
図24、すなわち、そのような場合における、移動レンズ60の狭角位置における光の制御を表す模式図に示すように、周囲光69の進行方向を、矢印αで示すように光軸方向(Z方向)に略平行な方向に変え易い。また、本開示の移動レンズ60のように、Z方向の光出射側に光出射側に突出する1以上の環状のフレネル部76を有する場合、そのフレネル部76においても、そこに入射した光の進行方向を、矢印βで示すように光軸方向(Z方向)に略平行な方向に変え易い。よって、移動レンズ60が狭角位置に存在するとき、移動レンズ60の径方向の全ての位置で、移動レンズ60から出射された出射光を直下方向に進行させ易くなって、直下光度を高めることができると共に、1/2ビーム角(中心に比べて明るさが半分になる角度)を狭めることもできて、移動レンズ60が、狭角位置に存在する場合における狭角性能を優れたものにできる。
【0070】
更には、上述の構成を有する場合、次に
図25及び
図26を用いて説明するように、中落現象の発生も効果的に抑制できる。
図25は、照明装置1との比較において、固定レンズ40が存在しなくて、移動レンズ60のみが存在する照明装置における、中角位置での光の進行方向を表す図である。そのような場合、
図25において一点鎖線で囲んだ領域に示すように、光入射側かつ外周側のフレネル部68の全反射面68aで全反射して同じ方向に進行する光L1が増加し、その光L1に起因して直下方向より高い光の照度のピークが照射面に生じる。更には、
図25において二点鎖線で囲んだ領域に示すように、光出射側かつ径方向中央側のフレネル部76(
図24参照)で屈折して同じ方向に進行する光L2も増加し、この光L2も直下方向より高い光の照度のピークを照射面に生成する。よって、それらの光L1,L2の照度のピークより、中落現象が現れる。
【0071】
これに対し、固定レンズ40から出射された周囲光69が、狭角位置に配置されている移動レンズ60の光入射面74の外縁部75に入射するようになっていると、
図26、すなわち、移動レンズ60が光源22に最も近づいている広角位置に配置されている状態における
図23に対応する模式図に示すように、固定レンズ40から出射された周囲光69が、移動レンズ60が光源22に近づくにつれて移動レンズ60の外周側のフレネル部68に入射しなくなる。したがって、移動レンズ60が中角位置に存在している場合に、全反射面68aで全反射する上記光L1を減少させることができ、その結果、中落現象を効果的に抑制できる。
【0072】
更には、Z方向に光出射側とは反対側に突出するフレネル部で全反射する光は、配光制御できず、中落現象を引き起こし易いが、Z方向に光出射側とは反対側に突出するフレネル部が、径方向内側に配置されるほど、光源からの光がフレネル部の全反射面で全反射し易くなる。よって、照明装置1のように、光出射側とは反対側に突出する1つのみの環状のフレネル部68をZ方向の光入射側の外周側(例えば、最外周)に有すると、そのような中落の原因となる全反射面で全反射する光を抑制できて好ましい。
【0073】
更には、特に、固定レンズ40の上記レンズ有効径が、光源22の直径の2.5倍以下となると好ましく、より厳密に述べると、固定レンズ40の上記レンズ有効径が、上記外接円の直径の2.5倍以下であると好ましい。この変形例によれば、一般的な器具サイズから大きくすることなく、狭角性能を得ることが可能になり、例えば、一般的な器具サイズから大きくすることなく、1/2ビーム角で14°未満の優れた狭角性能を実現することが可能になる。ユニバーサルダウンライトのような首振りによって光軸方向を調整可能な器具の場合、天井の埋込穴径が決まっていたり、器具の首振り角度の都合上、器具を伸ばすことが難しい。よって、この構成の作用効果がより顕著なものとなる。
【0074】
また、本明細書の前半で述べたように、固定レンズの基板側の先端(Z方向上端)のZ方向位置が、光源の光出射側の先端(Z方向下端)のZ方向位置と一致するか、又は光源のZ方向下端のZ方向位置よりも基板側に位置すると更に好ましく、その場合において、固定レンズの基板側の先端は、基板に接触してもよい。また、固定レンズ40は、光源22の光出射面を、光源22から出射される出射光の光軸方向に対して‐90°以上90°以下傾斜する範囲について周方向に関して全周に亘って覆っていると好ましい。言い換えると、
図5に示すように、固定レンズ40が、光源22に対して光軸方向に対向する対向面77と、対向面77よりも外周側に位置して、対向面77よりも光軸方向の光出射側とは反対側に突出する環状のフレネル部79と、を有してもよい。そして、光源22の光出射面が、対向面77と環状のフレネル部79とが画定する凹部91に収容されてもよい。
【0075】
固定レンズは、光入射面が凹形状で、出射面側が凸形状でもよい。そして、固定レンズの光軸方向の光出射側とは反対側が、光源の発光面より基板における発光素子の実装面側に位置してもよい。又は、固定レンズは、光源22の外径よりも径方向の外側に光源方向に凸のフレネル部を有してもよい。そして、フレネル部における光軸方向の光出射側とは反対側の先端が、光源の発光面より基板における発光素子の実装面側に位置してもよい。本変形例によれば、光源22が出射した光の略全てを、固定レンズ40に入射させることができる。よって、迷光を大きく低減でき、出射光の光度を高くできる。更には、固定レンズ40で拾いきれず発光素子の周辺部材の隙間などから漏れ出た光線が、器具内での反射などを介して制御できないものとなって、配光として必要のない箇所にとぶことも抑制できる。移動レンズ60やその保持部材が上下する関係で、反射の原因となる箇所(例えば灯具本体内面)を移動レンズ60がどの位置にきたときにも隠れた状態にすることが難しい。本構成によれば、そのような制御できない光を抑制でき、照射面の光ムラを改善できる。
【0076】
なお、移動レンズが広角位置周辺に存在するとき、照射光に色ムラが生じることがある。この色ムラの改善を、次のように実行すると好ましい。詳しくは、固定レンズの一部または全体に、光を拡散させる構造を形成すると好ましく、例えば、固定レンズにおいて、光源に光軸方向に対向する光入射面にシボ等の凹凸構造を形成すると好ましい。固定レンズに光を拡散するシボ等の構造を形成すると共に移動レンズに光を拡散させるディンプル等の構造を形成して色ムラを改善する場合、固定レンズに光を拡散する構造を全く形成せずに、移動レンズのみに、光を拡散させる深さが深いディンプル等の構造を形成して色ムラを改善する場合との比較において、輝度上昇を抑えることができる。よって、固定レンズの一部または全体に、拡散性を有する構造を形成すると、眩しさを抑制することができる。
【0077】
より、詳細に説明すると、固定レンズは器具外郭に出ていないのに対して、移動レンズは器具外郭に出ているため、表面で光が拡散すると、配光の角度外(例えば器具を見上げ角度30°)で器具を斜めに見上げたときの輝度が眩しくなる。固定レンズの一部または全体に、光を拡散させる構造を形成すると、器具の狙いの配光角度より外側の余計な角度の光の輝度を抑えることができ、そのような光に起因する眩しさを抑制できる。
【0078】
また、一つの移動レンズのみを有する照明装置において、移動レンズを耐熱性が高い透明材料(例えば、シリコーンやガラス)で形成した場合、移動レンズを汎用の透明樹脂(例えば、アクリルやポリカーボネート)で形成した場合との比較において、材料費が高くつき、成形も容易でない。これに対し、本開示の2枚レンズ構造では、固定レンズを小さくできると共に、固定レンズの形状もシンプルな形状にできる。よって、一つの移動レンズのみを有する照明装置において、その移動レンズを耐熱性が高い透明材料で形成した場合との比較において、本開示の2枚レンズ構造で、移動レンズを汎用の透明樹脂で形成する一方、固定レンズを耐熱性が高い透明材料で形成した場合、2枚レンズ構造の耐熱性を良好なものにできるだけでなく、製造コストを低減し易く、成形も容易に実行できる。
【符号の説明】
【0079】
1 照明装置、 10 筐体、 21 基板、 22 光源、 29 光源における光出射側の先端、 40 固定レンズ、 60 移動レンズ、 62 固定レンズの基板側の先端、 68 フレネル部、 69 周囲光、 72 移動レンズの光入射面の外縁、 74 移動レンズの光入射面、 75 移動レンズの光入射面の外縁部、 77 対向面、 79 フレネル部、 87 投光部、 88 光出射部、 91 凹部、 R方向 レンズ本体の径方向、 θ方向 レンズ本体の周方向、 Z方向 光軸方向。