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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/10 20060101AFI20230303BHJP
   F28D 1/06 20060101ALI20230303BHJP
   F28F 1/04 20060101ALI20230303BHJP
   F28D 7/12 20060101ALI20230303BHJP
   F28D 7/02 20060101ALI20230303BHJP
   F28F 1/06 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
F28D7/10 A
F28D1/06 B
F28F1/04
F28D7/12
F28D7/02
F28F1/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021214267
(22)【出願日】2021-12-28
【審査請求日】2022-01-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】721012656
【氏名又は名称】株式会社システムサポート
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田洋三
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/131005(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/124582(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 7/10
F28D 1/06
F28F 1/04
F28D 7/12
F28D 7/02
F28F 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を熱交換する熱交換器であって、
熱媒又は冷媒が流通する第1の内部空間を有する筒状の第1のジャケットと、
前記第1のジャケットの内周壁を構成する伝熱用外筒と、
外周壁を有し、熱媒又は冷媒が流通する第2の内部空間を有する第2のジャケットと、
前記伝熱用外筒に挿脱可能に内挿される伝熱用内軸であって、前記第2のジャケットの前記外周壁を構成する伝熱用内軸とを含み、
前記伝熱用内軸の外周面には、前記伝熱用外筒の内周面とによって前記処理液が流通する処理液流路を区画するスパイラル溝が形成され、
前記第2の内部空間は、前記外周壁の内周面によって区画される筒状空間であり、
前記第2の内部空間には、蛇行しながら軸方向に延び、かつ熱媒又は冷媒が流通する媒体流通路が形成される、熱交換器。
【請求項2】
前記外周壁の前記内周面が、円筒面である、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記スパイラル溝の溝断面形状が角形である請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記スパイラルの溝断面形状が波形である請求項1又は2に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬・化粧品、ファインケミカル・新素材、食品などのあらゆる分野に適用可能な熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
現状一般的に用いられているコイル管式熱交換器は、処理液を通過させるための銅管・ステンレス鋼管又はガラス管などのコイル管とその外周を加熱・冷却するための熱媒又は冷媒を流すシェルで構成されている。
【0003】
生産工場や研究所においてコイル管式熱交換器の定期的又は品種替え・色替え前の洗浄は、接液部であるコイル管内側に洗浄液注入後に高圧水流で洗い流す方法が多く用いられている。この方法では洗浄後にコイル管内面を目視確認することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013―040706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コイル管式熱交換器の洗浄方法については、上注の通りである。洗浄後目視にてコイル管内を確認することはできない上に殺菌処理も困難である。
【0006】
処理物の中には医薬品・化粧品・新素材など、付加価値が高く微少であっても異物の混入を嫌う処理物が多くある。品種及び色替えなどを考慮すると、熱交換器内部の処理液接液部を完全に洗浄し確認することが望ましい。
【0007】
本発明の解決課題は、洗浄後に洗浄結果を目視で確認可能な熱交換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
の発明の一実施形態は、処理液を熱交換する熱交換器であって、第1の内部空間を区画し、当該第1の内部空間を熱媒又は冷媒が流通する筒状の第1のジャケットと、前記第1のジャケットの内筒壁を構成する伝熱用外筒と、前記伝熱用外筒に内挿される伝熱用内軸であって、外周面にスパイラル溝が形成された伝熱用内軸とを含む、熱交換器を提供する。そして、前記スパイラル溝と前記伝熱用外筒の内周面とによって、前記処理液が流通する処理液流路が区画される。
【0009】
の発明の一実施形態では、前記熱交換器が、第2の内部空間を区画し、当該第2の内部空間を熱媒又は冷媒が流通する第2のジャケットをさらに含む。そして、前記スパイラル溝の底壁が、前記第2のジャケットの外周壁を構成する。
【0010】
前記伝熱用内軸が、前記伝熱用外筒に挿脱可能であってもよい。前記伝熱用内軸が、第2のジャケットの前記外周壁を構成してもよい。前記第2のジャケットの前記外周壁の内周面によって、筒状空間からなる第2の内部空間が区画されていてもよい。前記第2の内部空間には、蛇行しながら軸方向に延び、かつ熱媒又は冷媒が流通する媒体流路が形成されていてもよい。
前記第2の内部空間を区画する前記外周壁の前記内周面が、円筒面であってもよい。
この発明の一実施形態では、前記スパイラル溝の溝断面形状が角形である。
【0011】
この発明の一実施形態では、前記スパイラルの溝断面形状が波形である。
【発明の効果】
【0012】
発明によれば、洗浄後に洗浄結果を目視で確認可能な熱交換器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る熱交換器全体断面図である。
図2】伝熱用外筒と伝熱用内軸のスパイラル溝部角形断面図である。
図3】伝熱用外筒と伝熱用内軸のスパイラル溝部波形断面図である。
図4】第1のジャケット(外側伝熱管)の断面図である。
図5】第2のジャケット(伝熱用内軸)の断面図である。
図6】D形バッフルプレートの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施形態の熱交換器100の全体の断面図である。
【0015】
本熱交換器100は第1のジャケット11と、第2のジャケット12と、伝熱用外筒31と、伝熱用内軸52とを備えている。
【0016】
第1のジャケット11は内部に略円筒状の第1の内部空間13を区画している。
【0017】
第1のジャケット11は、一端が閉塞した二重の略円筒状である。
【0018】
第1のジャケット11の伝熱用外筒フランジ38、及び、第2のジャケット12の蓋板57は、それぞれヘルール形状であり、パッキン59と締結クランプ58により一体化できる。また、伝熱用外筒フランジ38、及び、第2のジャケットの蓋板57がそれぞれ規格フランジ形状の場合は、ガスケットと六角ボルトナットで一体化できる。
【0019】
第1のジャケット11は、ステンレス鋼を用いて形成されている。第1の内部空間13には、熱媒又は冷媒が流通する。熱媒としてはシリコーンオイルや高温スチーム等があげられる。冷媒としてはプロピレングリコールやエチレングリコールなどを主成分とした不凍液や水等があげられる。
【0020】
第1のジャケット11の内周壁の伝熱用外筒31の外周壁32からは、螺旋状のバッフルプレート33が内側に向けて延びている。バッフルプレート33の先端と第1のジャケット11の内周筒壁との間には連続状の隙間が形成されている。バッフルプレート33によって第1の内部空間13に、螺旋状の流路が区画される。
【0021】
伝熱用外筒31は、第1のジャケット11の内周壁を構成している。つまり、伝熱用外筒31の外周壁が、第1のジャケット11の内周壁を構成している。伝熱用外筒31は、ステンレス鋼を用いて形成されている。
【0022】
伝熱用外筒31は溶接等を用いて第1のジャケット11の外周壁32に結合されている。
【0023】
伝熱用内軸52は、伝熱用外筒31に内挿される軸体であって、ステンレス鋼を用いて形成されている。伝熱用内軸52は円筒管によって構成されている。伝熱用内軸52の外周面には、スパイラル溝51が形成されている。スパイラル溝51は、図2に示すように、断面形状が角形又は、図3に示すように、断面形状が波形であっても良い。
【0024】
第2のジャケット12は、内部に第2の内部空間14を区画している。第2のジャケット12は、両端が閉塞した略円筒状である。第2のジャケット12は、ステンレス鋼を用いて形成されている。第2の内部空間14には、熱媒又は冷媒が流通する。
【0025】
第2のジャケット12の外周壁が伝熱用内軸52によって構成されている。すなわち、スパイラル溝51の底壁が第2ジャケット12の外周壁を構成している。
【0026】
スパイラル溝51と伝熱用外筒31の内周面とによって、熱交換対象の処理液が流通する螺旋状の処理液流路15が区画される。
【0027】
第2のジャケット12の第2の内部空間14には、略D状の複数のD形バッフルプレート56A、56Bが交互等間隔に配置されている。複数のD形バッフルプレート56A、56Bによって第2の内部空間14に、蛇行状の流路が形成されている。
【0028】
処理液流路15は処理液入口34と処理液出口35とを両端に有している。処理液入口34は、処理液供給配管に接続されている。処理液出口35は、処理液回収配管に接続されている。
【0029】
第1のジャケット11の端面板には熱媒や冷媒が第1の内部空間13に流入するための外側入口36が形成されている。第1のジャケット11の外周壁32には熱媒や冷媒が第1の内部空間13から流出するための外側出口37が形成されている。外側入口36及び外側出口37は、第1の内部空間13に連通している。
【0030】
外側入口36は、熱媒や冷媒等の媒体の供給源に接続されている。
【0031】
外側出口37は、次に述べる内側入口53に接続されている。
【0032】
第2のジャケット12の端面板には熱媒や冷媒が第2の内部空間14に流入するための内側入口53及び内側出口54が形成されている。内側入口53には、延長管55が接続されており、延長管55が第2の内部空間14を軸方向に延びて、その先端が他方側の端面板の付近まで延びている。
【0033】
延長管55の先端開口60及び内側出口54が、第2の内部空間14に連通している。
【0034】
外側出口37が、内側入口53に接続されている。内側出口54が熱媒や冷媒の回収配管に接続されている。
【0035】
外側入口36から第1のジャケット11に流入した熱媒や冷媒が第1の内部空間13に形成された螺旋状の流路を通って流れ、外側出口37から流出する。
【0036】
流出した熱媒や冷媒は、内部入口53を介して延長管55に流入し、その先端開口60から第2の内部空間14に流入する。
【0037】
流入した熱媒や冷媒は、第2の内部空間14に形成された蛇行状の流路を通って流れ、内側出口54から流出する。
【0038】
媒や冷媒等の媒体の供給源を外側入口36と内側入口53にそれぞれ接続し、外側出口37と内側出口54に回収配管を接続しても良い。
【0039】
また、熱媒や冷媒等の媒体の流れを逆向きに接続してもよい。
【0040】
一方、処理液入口34から処理液流路15に流入した処理液が螺旋状の処理液流路15を流れる。処理液流路15が伝熱用外筒31とスパイラル溝51とによって区画されているので、処理液流路15を流れる処理液を、第1及び第2のジャケット11,12との間で熱交換させることができる。
【0041】
また、処理液の流れを逆向きに接続してもよい。
【0042】
本熱交換器100は医薬・化粧品、ファインケミカル・新素材、食品などのあらゆる分野の生産工程で、使用されているコイル管式熱交換器の洗浄性をより向上させることができる。
【0043】
本熱交換器100は使用後に洗浄・殺菌が必要な熱交換対象物の処理にも有効であり、現状流水洗浄・エタノール希釈溶液による溜め込み殺菌を行っているが、目視洗浄・殺菌処理をより確実なものにできる。
【0044】
本熱交換器100の使用方法及び熱交換性能は、コイル管式熱交換器とほぼ同等なので、生産ラインや装置に付属している熱交換器との付け替えを容易に行うことができる。
【0045】
伝熱用内軸52の外周面にスパイラル溝51を設けた伝熱用内軸52の製作は、パイプ材に得たい溝形状・寸法に合ったリード・ピッチを定めたネジ切削加工で容易に製作できる。
【0046】
伝熱用外筒31に、外周面にスパイラル溝51を設けた伝熱用内軸52を挿入して組立てると、出現するスパイラル状の処理液流路15で、伝熱用外筒31から引き抜くと図4図5に示すように伝熱用外筒31、および、伝熱用内軸52のスパイラル溝51が露出し、直接、ブラシなどで容易に洗浄できる。
【0047】
伝熱用外筒31と伝熱用内軸52のスパイラル溝51山部には、組立式のため0.5~1.0mmの溝山部隙間16が存在する、よってショートパスする処理液が存在するが、熱貫流率の最も良い部分を通過するので熱交換効率には問題はない。
【0048】
医薬・化粧品、食品などの分野では、使用後伝熱用外筒31から引き抜くと図4図5に示すように伝熱用外筒31及び伝熱用内軸52のスパイラル溝51が露出し、殺菌・除菌処理を容易にすることができる。
【0049】
高圧微粒化装置などのように処理物にエネルギーを付加して分散・微粒化乳化・解砕・粉砕を行う装置の場合、効果が上がれば上がるほど熱が発生する、そして処理物のほとんどが温度上昇を嫌う傾向にあるため、熱交換器の取り付けは不可欠である。
【0050】
本発明の熱交換器の熱交換能力の確認を行うため、次の試験を行った。
【0051】
高圧乳化分散装置システマイザーミニ(システムサポート社製)を用い、製作した本発明の熱交換器、及び、コイル式熱交換器で、それぞれ高圧運転時の総括伝熱係数を求め、熱交換能力の平均値を比較した。
【0052】
先ず、熱交換器に、試料(処理液)及びチラー(クールエースCA-1115、東京理科器械社製)水出入口温度計を設置し、試料(水道水300mL、28℃)を高圧運転100、250MPaで運転し、1パスごとの温度変化を記録した。
【0053】
次に、得られた数値をもとに、対数平均温度差ΔTm[℃]及び熱交換負荷W[kcal/h]、総括伝熱係数U[kcal/(m・h・℃)]を算出し、その平均値を求めた。
【0054】
対数平均温度差ΔTm[℃]は、次式数1により求められる。
【0055】
(数1) ΔTm = (ΔT-Δt) / Ln(ΔT/Δt)
【0056】
熱交換負荷W[kcal/h]は、次式数2により求められる。
【0057】
(数2) W = Ca × Q × ΔT
【0058】
総括伝熱係数U[kcal/(m・h・℃)]は、次式数3により求められる。
【0059】
(数3) U = W/A × ΔTm
【0060】
なお、比較試験に使用した本発明の熱交換器の流路形状は、一辺3.0mm四角形で、伝熱面積A=0.015m、比熱係数Ca=1、製品流量Q=5.4kg/hrである。コイル式熱交換器の流路形状は、コイル径φ4.0mm、伝熱面積A=0.0193m、比熱係数Ca=1、製品流量Q=5.4kg/hrである。
【0061】
熱交換能力の比較試験結果を下記に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
熱交換能力の比較試験により総括伝熱係数及びその平均値を求めた結果、表1のコイル式熱交換器に比べて、表2の本発明の熱交換器の数値がいずれも高かった。以上のことより、本発明の熱交換器の熱交換能力を確認することができた。
【符号の説明】
【0065】
11 第1のジャケット
12 第2のジャケット
13 第1の内部空間
14 第2の内部空間
15 処理液流路
16 溝山部隙間
31 伝熱用外筒
32 第1のジャケットの外周壁
33 バッフルプレート
34 処理液入口
35 処理液出口
36 外側入口
37 外側出口
38 伝熱用外筒フランジ
51 スパイラル溝
52 伝熱用内軸
53 内側入口
54 内側出口
55 延長管
56A、56B D形バッフルプレート
57 第2のジャケットの蓋板
58 締結クランプ
59 パッキン
60 先端開口
100 本熱交換器
【要約】
【課題】洗浄後に洗浄結果を目視で確認可能な熱交換器を提供する。
【解決手段】熱媒・冷媒を通すことができる第1のジャケットを備えた外側伝熱管の伝熱用外筒31に、内部に熱媒・冷媒を通すことができる第2のジャケットを備え、外周面にスパイラル溝51を設けた伝熱用内軸52を挿入して組立てると、内外伝熱面を備えたスパイラル状の処理液流路15の熱交換器ができ上がる。使用後に、外側伝熱管の伝熱用外筒31から伝熱用内軸52を引き抜くと図4図5に示すように外側伝熱管の内面、および、伝熱用内軸52外周のスパイラル溝51が露出し、接液部全てを目視洗浄できる状態になる。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6