(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】セラミックヒータ及びグロープラグ
(51)【国際特許分類】
H05B 3/10 20060101AFI20230303BHJP
F23Q 7/00 20060101ALI20230303BHJP
H05B 3/18 20060101ALI20230303BHJP
H05B 3/48 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
H05B3/10 C
F23Q7/00 X
H05B3/18
H05B3/48
(21)【出願番号】P 2019172386
(22)【出願日】2019-09-23
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】林田 僚平
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-293804(JP,A)
【文献】特開2008-288110(JP,A)
【文献】国際公開第2007/135773(WO,A1)
【文献】特開2000-001371(JP,A)
【文献】特開2014-157010(JP,A)
【文献】特開2017-170554(JP,A)
【文献】特開2019-141974(JP,A)
【文献】特表2015-531318(JP,A)
【文献】特開2015-025636(JP,A)
【文献】国際公開第2011/055642(WO,A1)
【文献】米国特許第03974106(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/10
F23Q 7/00
H05B 3/18
H05B 3/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化珪素を主成分とし炭化珪素を含有する絶縁性セラミックからなる基体と、前記基体に埋設され、導電性セラミックからなる発熱体と、を備えるセラミックヒータであって、
前記基体の断面において、前記断面に現出する炭化珪素の粒子の1つの外形上の2点間を結ぶ線分のうち最も長い長さを粒子長さとし、前記断面に現出する1又は複数の前記粒子の前記粒子長さのうち最も長い前記粒子長さを最大長さLとしたとき、前記最大長さLが2.0μm以上5.0μm以下であ
り、
前記発熱体は炭化タングステンを主成分とし、
前記断面の所定の領域において、前記粒子長さが2.0μm以上5.0μm以下の前記粒子の面積の総和の、前記領域の面積に対する割合は10%以下であるセラミックヒータ。
【請求項2】
請求項
1記載のセラミックヒータと、
前記基体のうち前記発熱体を埋設した部分を少なくとも露出させつつ前記セラミックヒータを保持する筒状部材と、を備え、
前記セラミックヒータと前記筒状部材とは圧入構造をなし、
前記セラミックヒータは、前記筒状部材に圧入された部分の外周面に、前記発熱体に電気的に接続される電極取出部を備えるグロープラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化珪素を主成分とし炭化珪素を含有するセラミックヒータ及びそれを備えるグロープラグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
窒化珪素を主成分とし炭化珪素を含有する絶縁性セラミックからなる基体に導電性セラミックからなる発熱体を埋設した焼結体を得た後、焼結体に研磨加工を施してセラミックヒータを得る技術が特許文献1に開示されている。特許文献1の表6に、基体の断面に現出する炭化珪素の粒子の最大粒径が1.6μm,8.8μm,18.8μmのセラミックヒータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、基体の断面に現出する炭化珪素の粒子の最大粒径が1.6μmであると、炭化珪素による砥粒の劈開が研磨加工中に生じ難くなるので、砥粒の切れ刃が鈍化し、砥石の切れ味が低下して加工時間が長くなるという問題点がある。
【0005】
また、基体の断面に現出する炭化珪素の粒子の最大粒径が8.8μm,18.8μmであると、炭化珪素によって砥粒の劈開が部分的に過度に生じたり、砥粒が部分的に脱落したりして、砥石面が荒れてしまう。そのような状態で研磨を続けると、加工精度が低下するという問題点がある。
【0006】
本発明はこれらの問題点を解決するためになされたものであり、研磨による加工精度を確保しつつ加工時間が長くなるのを抑制できるセラミックヒータ及びグロープラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明のセラミックヒータは、窒化珪素を主成分とし炭化珪素を含有する絶縁性セラミックからなる基体と、基体に埋設され導電性セラミックからなる発熱体と、を備え、基体の断面に現出する炭化珪素の粒子の1つの外形上の2点間を結ぶ線分のうち最も長い長さを粒子長さとし、その断面に現出する1又は複数の粒子の粒子長さのうち最も長い粒子長さを最大長さLとしたとき、最大長さLが2.0μm以上5.0μm以下である。
【0008】
本発明のグロープラグは、上記セラミックヒータと、基体のうち発熱体を埋設した部分を少なくとも露出させつつセラミックヒータを保持する筒状部材と、を備え、セラミックヒータと筒状部材とは圧入構造をなし、セラミックヒータは、筒状部材に圧入された部分の外周面に、発熱体に電気的に接続される電極取出部を備える。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載のセラミックヒータによれば、基体の断面に現出する炭化珪素の粒子の最大長さLは2.0μm以上5.0μm以下である。最大長さLが2.0μm以上であると研磨(又は研削)中に炭化珪素による砥粒の劈開が生じ易くなるので、砥粒に新しい切れ刃が発生し、砥石の切れ味を維持できる。その結果、加工時間が長くならないようにできる。さらに最大長さLが5.0μm以下であると、炭化珪素の粒子による部分的な砥粒の劈開や砥石からの砥粒の脱落を抑制できるので、砥石面の荒れを抑制できる。その結果、セラミックヒータの仕上げ面粗さを小さくできるので、加工精度を確保できる。
【0010】
発熱体は炭化タングステンを主成分とし、基体は窒化珪素を主成分とし炭化珪素を含有する。基体の断面の所定の領域において、粒子長さが2.0μm以上5.0μm以下の炭化珪素の粒子の面積の総和の、領域の面積に対する割合は10%以下なので、基体に含まれる炭化珪素によって、基体の線膨張係数が発熱体の線膨張係数より著しく大きくならないようにできる。その結果、発熱体が基体に加える熱応力を抑制できる。
【0011】
請求項2記載のグロープラグによれば、セラミックヒータが、基体のうち発熱体を埋設した部分を少なくとも露出させて筒状部材に保持される。セラミックヒータと筒状部材とは圧入構造をなす。セラミックヒータは、筒状部材に圧入された部分の外周面に、発熱体に電気的に接続される電極取出部を備えるので、セラミックヒータの外周面の加工精度の確保により、電極取出部と筒状部材との電気的な接続の信頼性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施の形態におけるセラミックヒータの断面図である。
【
図2】(a)は基体の断面の模式図であり、(b)は基体の断面に現出する炭化珪素の粒子の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施の形態におけるセラミックヒータ10の軸線Oを含む断面図である。
図1では、紙面下側をセラミックヒータ10の先端側、紙面上側をセラミックヒータ10の後端側という。
図1に示すようにセラミックヒータ10は、基体11と、基体11に埋設された発熱体15と、を備えている。
【0014】
基体11は絶縁性セラミックからなり、本実施形態では先端が球冠状の略円柱状に形成されている。基体11を構成する絶縁性セラミックは窒化珪素を主成分とし、炭化珪素を含有する。主成分とは、絶縁性セラミックを構成する複数の化合物の中で窒化珪素の質量が最も大きいことを意味する。絶縁性セラミックに含まれる窒化珪素および炭化珪素以外の化合物としては、例えば希土類元素の酸化物、W,Al,Crの各酸化物、炭化物、珪化物、窒化物などから選ばれる1種または2種以上が挙げられる。希土類元素としては、例えばEr,Yb,Y等が挙げられる。
【0015】
発熱体15は、導電性セラミックからなる導体14の一部である。導体14は、基体11の先端近くに埋設されたU字状の発熱体15と、発熱体15の後端に接続され軸線Oに沿って延びる一対の棒状のリード部16と、リード部16の後端近くにそれぞれ設けられた電極取出部17,18と、を備えている。電極取出部17,18は基体11の外周面に露出している。電極取出部18は電極取出部17よりも後端側に位置する。電極取出部17,18は、リード部16を介して発熱体15に電力を供給する部位である。
【0016】
発熱体15の断面積はリード部16の断面積より狭いので、発熱体15を構成する導電性セラミックの材質がリード部16を構成する導電性セラミックの材質と同じでも、発熱体15の抵抗をリード部16の抵抗よりも大きくできる。その結果、発熱体15の発熱量をリード部16の発熱量よりも大きくできるので、発熱体15を選択的に発熱させることができる。なお、発熱体15及びリード部16の断面積を異ならせるのではなく、比抵抗がリード部16の比抵抗よりも大きい材質を発熱体15に採用して、発熱体15を選択的に発熱させることは当然可能である。
【0017】
発熱体15を構成する導電性セラミックは炭化タングステン(WC)を主成分とする。主成分とは、導電性セラミックを構成する複数の化合物の中で炭化タングステンの質量が最も大きいことを意味する。導電性セラミックに含まれる炭化タングステン以外の化合物としては、窒化珪素、焼結助剤が挙げられる。
【0018】
図2(a)は基体11の断面の模式図である。基体11の断面は、任意の平面(切断面)で基体11が切断された面である。
図2(a)に示す矩形の領域20は、走査型電子顕微鏡(SEM)の視野である。領域20の大きさは、本実施形態では、縦H=30μm、横W=45μmである。領域20には基体11の断面の画像が示される。基体11の断面観察の前にプラズマエッチング等のエッチングを施し、断面に現出する粒界をはっきりさせる。粒子の外形を識別し易くするためである。
【0019】
領域20には、絶縁性セラミックを構成する粒子、粒界および気孔が現出する。絶縁性セラミックを構成する粒子には、炭化珪素の粒子21,24が含まれる。
図2(a)では断面に現出する炭化珪素のうち、粒子長さ(後述する)が2.0μm以上の粒子のみを図示している。なお、
図2(a)では、粒子長さ(後述する)が2.0μmよりも小さい粒子や、気孔は図示が省略されている。本実施形態では、粒子長さ(後述する)が2.0μm以上の2つの粒子21,24が領域20に現出する場合について説明するが、これは一例である。領域20に現出する粒子長さが2.0μm以上の炭化珪素の粒子の数はいくつでも構わない。基体11の断面の組織に存在する炭化珪素の粒子21,24は、例えばSEM及びエネルギー分散型X線分光(EDX)を用いて特定できる。
【0020】
図2(b)は基体11の断面に現出する炭化珪素の粒子21の模式図である。粒子長さは、1つの粒子21の外形22上の2点間を結ぶ線分23のうち最も長い長さのことである。粒子24も同様にして、領域20に現出する炭化珪素の全ての粒子の粒子長さを求める。最大長さLは、領域20内の断面に現出する粒子21,24(
図2(a)参照)の粒子長さのうち最も長い粒子長さのことである。
【0021】
本実施形態では、粒子21の粒子長さLは粒子24の粒子長さKより長いので、粒子21の粒子長さが最大長さLである。粒子21,24の粒子長さK,Lは、断面の画像を基に画像解析ソフト等を用いることにより算出される。セラミックヒータ10は、基体11の断面に現出する炭化珪素の粒子21,24の粒子長さK,Lのうち最も長い粒子長さL(最大長さ)が2.0μm以上5.0μm以下である。
【0022】
また、領域20に現出する粒子長さK,Lが2.0μm以上5.0μm以下の粒子21,24の面積の総和の、領域20の面積(本実施形態では30×45μm2)に対する割合は10%以下である。粒子長さが2.0μm未満の炭化珪素の粒子は領域20内に存在するが、粒子長さが2.0μm以上5.0μm以下の粒子21,24の面積に着目して、炭化珪素の粒子の面積の総和を求める。粒子21,24の面積の総和は、断面の画像を基に画像解析ソフト等を用いることにより算出される。
【0023】
セラミックヒータ10は、例えば以下のような方法によって製造される。まず、窒化珪素を主成分とし炭化珪素を含有する絶縁性セラミックの原料粉末を湿式で混合粉砕し、バインダを添加後、スプレードライを施し基体11の原料を調製する。この原料をプレス成形することにより、軸線Oを含む切断面で基体11を二つ割りにしたような、基体11の半分を構成する成形体を得る。
【0024】
これとは別に、炭化タングステンを主成分とする導電性セラミックの原料粉末を湿式で混合粉砕し、スプレードライを施し粉末を得る。この粉末にバインダ、可塑剤、分散剤等を加えて混練し、導体14の原料を調製する。導体14の原料を射出成形することにより、導体14の成形体を得る。
【0025】
基体11の成形体に導体14の成形体を置いたものを金型に配置した後、残りの基体11の原料をプレス成形することにより、基体11の成形体に導体14の成形体が埋め込まれた棒状の成形体を得る。成形体を所定の温度で脱脂し、ホットプレス焼成を行うことにより焼成体が得られる。
【0026】
必要に応じて焼成体に切断加工が施される。次いで、ダイヤモンドホイール等の砥石を用いて焼結体の表面に研磨(研削)加工を施し、セラミックヒータ10が得られる。寸法精度を向上させるためである。電極取出部17,18が基体11に埋没している場合には、基体11の表面の研磨により、電極取出部17,18を基体11の表面に露出させることができる。
【0027】
セラミックヒータ10は、基体11の断面に現出する炭化珪素の粒子21,24の最大長さLが2.0μm以上なので、研磨加工中に、炭化珪素による砥粒の劈開が生じ易くなる。その結果、研磨加工中に砥粒に新しい切れ刃が発生し、砥石の切れ味を維持できるので、加工時間が長くならないようにできる。さらに最大長さLは5.0μm以下なので、炭化珪素の粒子21,24による部分的な砥粒の劈開や砥石からの砥粒の脱落を抑制できる。これにより砥石面の荒れを抑制できる。その結果、セラミックヒータ10の仕上げ面粗さを小さくできるので、基体11及び電極取出部17,18の加工精度を確保できる。
【0028】
発熱体15は、窒化珪素よりも線膨張係数が大きい炭化タングステン(WC)を主成分とする。基体11は、窒化珪素を主成分とし炭化珪素を含有する。粒子長さが2.0μm以上5.0μm以下の炭化珪素の粒子21,24の面積の総和の、領域20の面積に対する割合は10%以下なので、基体11に含まれる炭化珪素によって、基体11の線膨張係数が発熱体15の線膨張係数より著しく大きくならないようにできる。その結果、発熱体15が基体11に加える熱応力を抑制できる。
【0029】
図3を参照して、セラミックヒータ10を備えるグロープラグ30について説明する。
図3はグロープラグ30の軸線Oを含む断面図である。
図3では、紙面下側をグロープラグ30の先端側、紙面上側をグロープラグ30の後端側という。
【0030】
グロープラグ30は、セラミックヒータ10と、セラミックヒータ10を保持する筒状部材50と、を備えている。筒状部材50は、セラミックヒータ10のうち発熱体15を埋設した部分を少なくとも露出させて基体11を保持する。セラミックヒータ10と筒状部材50とは圧入構造をなしている。筒状部材50は、略円筒状の金属製(例えばステンレス鋼等)の部材である。セラミックヒータ10のうち筒状部材50に圧入された部分19に電極取出部17が位置し、電極取出部17は筒状部材50に接続されている。セラミックヒータ10のうち電極取出部18を含む後端側の部分が筒状部材50から突出している。
【0031】
筒状部材50は、筒部51の後端側に厚肉部52及び係合部53が形成されている。係合部53は厚肉部52よりも後端側に配置され、係合部53の外径は厚肉部52の外径よりも小さい。筒状部材50は、係合部53が主体金具31の軸孔32に嵌められ、厚肉部52が主体金具31の先端に突き当てられている。筒状部材50は主体金具31の先端に固定されている。
【0032】
主体金具31は、軸線Oに沿う軸孔32が形成された略円筒状の金属製(例えば炭素鋼やステンレス鋼等)の部材である。主体金具31は、軸線方向の略中央の外周面にねじ部33が形成され、ねじ部33よりも後端側の外周面に工具係合部34が形成されている。ねじ部33は、エンジン(図示せず)に形成されたねじ穴に係合する部位である。工具係合部34は、エンジンのねじ穴にねじ部33を締め付けるときに、レンチ等の工具を係合させる部位である。
【0033】
中軸35は金属製の円柱状の部材である。中軸35の先端側は軸孔32に収容され、中軸35の後端側は主体金具31から突出する。絶縁部材37は中軸35を囲むリング状の部材であり、主体金具31の軸孔32に配置されている。絶縁部材37は主体金具31に中軸35を固定する。絶縁部材37は、主体金具31と中軸35との間を電気的に絶縁すると共に、主体金具31と中軸35との間を気密封止する。
【0034】
絶縁部材38は中軸35を囲む筒状部39及びフランジ部40を備える部材であり、絶縁部材37よりも後端側の軸孔32に配置されている。フランジ部40は、筒状部39よりも後端側において中軸35を囲んで配置されている。絶縁部材38は、主体金具31と中軸35との間、及び、主体金具31とスリーブ41との間を電気的に絶縁する。
【0035】
スリーブ41は略円筒状の金属製の部材であり、フランジ部40に接した状態で、主体金具31の後端から突出した中軸35を取り囲む。スリーブ41は塑性変形され、中軸35に加締め固定されている。スリーブ41は絶縁部材38の脱落を防止する。
【0036】
セラミックヒータ10の後端側は、筒状部材50から突出して主体金具31の軸孔32に収容される。電極リング54はセラミックヒータ10を囲む金属製の部材であり、セラミックヒータ10の電極取出部18に接触する。中軸35の先端部36と電極リング54との間はリード線55によって電気的に接続される。グロープラグ30の中軸35と主体金具31との間に電圧が印加されると、セラミックヒータ10の電極取出部17,18から発熱体15に通電される。セラミックヒータ10は、筒状部材50に圧入された部分19の外周面に電極取出部17が形成されているので、セラミックヒータ10の外周面の加工精度の確保により、電極取出部17と筒状部材50との電気的な接続の信頼性を確保できる。
【実施例】
【0037】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0038】
(サンプルの作製)
窒化珪素(平均粒径0.7μm)80wt%、炭化珪素、焼結助剤の各粉末を湿式で混合粉砕し、バインダを添加後、スプレードライを施し基体11の原料を調製した。粒度分布の異なる炭化珪素の粉末を配合することにより、種々の基体11の原料を得た。なお、基体11の原料中の炭化珪素の配合量はサンプル間で一定にした。
【0039】
これとは別に、WC70wt%、窒化珪素、焼結助剤の各粉末を湿式で混合粉砕し、スプレードライを施し粉末を得た。この粉末にバインダ、可塑剤、分散剤等を加えて混練し、導体14の原料を調製した。導体14の原料を射出成形することにより、導体14の成形体を得た。
【0040】
基体11の原料をプレス成形することにより、二つ割りにした導体14の成形体を得た。その後、基体11の成形体に導体14の成形体を置いたものを金型に配置し、残りの基体11の原料をプレス成形することにより、基体11の成形体に導体14の成形体が埋め込まれた棒状の成形体を得た。成形体を所定の温度で脱脂した後、ホットプレス焼成を行い、異なる大きさの炭化珪素の粒子が基体11に配された焼結体のサンプル1-7を得た。
【0041】
(炭化珪素の粒子の最大長さLの測定)
サンプル1-7の基体11の断面をプラズマエッチングした後、SEMの画像を用いて、断面に現出する炭化珪素の粒子の最大長さLを測定した。具体的には、縦H=30μm、横W=45μmの矩形の領域(視野)を任意に10個選択し、その10領域(10視野)の断面に現出する炭化珪素の粒子の粒子長さのうち最も長い粒子長さ(最大長さL)を測定した。サンプル1-7の最大長さL(μm)を表1に記した。なお、サンプル2-7は、粒子長さが2.0μm以上5.0μm以下の炭化珪素の粒子の面積の総和の、領域の面積に対する割合は10%以下であった。
【0042】
【表1】
(加工試験)
#270の篩を通過し#400の篩に残る大きさの砥粒(ダイヤモンド)を保持したビトリファイドダイヤモンドホイール(砥石)を用いて、サンプル1-7の焼結体にセンタレス研磨を施す試験を行った。この試験を実施した研磨機には自動ドレス機構が備えられており、焼結体の研削300本ごとに、研磨機の運転中に自動ドレスを実施した。試験は、砥石に加わる研削抵抗を略一定にし、焼結体の研削によって砥石面が荒れるまでの本数、1000本の焼結体の研削に要した加工時間を測定した。
【0043】
なお、「砥石面の荒れ」は、接触式表面粗さ計を用いて研磨後の焼結体の表面粗さを測定して評価した。焼結体の表面に接触させた表面粗さ計の触針を軸線Oに沿って4mm走査し、算術平均粗さRaが0.4μm以上、又は、最大谷深さRvが2.5μm以上のものが発生したときに、研磨機の運転を停止して、砥石のドレッシング(目直し)を作業者が行った。表1に記した「砥石面が荒れるまでの数」はドレッシングの間隔に等しい。算術平均粗さRa及び最大谷深さRvの測定は、JIS B0601:2013に準拠した。
【0044】
頻繁にドレッシングが必要になると、研磨機の運転をその都度停止しなければならないので、研磨加工の作業性が低下する。従って作業性の観点から、「砥石面が荒れるまでの数」は100000以上が望ましい。表1によればサンプル1-5がこの条件を満たす。サンプル6,7は、基体11の断面に現出する炭化珪素の粒子長さが5.0μmを超える大きな粒子によって、砥粒を保持しているボンドブリッジが折損して砥粒が脱落したり、砥粒が部分的に劈開したりしたと推察される。サンプル6,7では、砥石の切れ味は良いので加工時間は短くなるが、仕上げ面粗さが大きくなり、加工精度が低下する。
【0045】
また、1000本の研削に要する加工時間が長くなると加工の作業性が低下するので、作業性の観点から、加工時間は6時間以内が望ましい。表1によればサンプル2-7がこの条件を満たす。サンプル1は、基体11の断面に現出する炭化珪素の粒子長さが2.0μm未満であり炭化珪素の粒子が小さいので、砥石の気孔が切り屑で塞がれたり砥粒の切れ刃が鈍化したりして、砥石の切れ味が低下し加工時間が長くなったと推察される。
【0046】
これに対し、基体11の断面に現出する炭化珪素の粒子の最大長さLが2.0μm以上5.0μm以下のサンプル2-5は、砥粒に新しい切れ刃が適度に発生し、砥石の切れ味を維持できたと推察される。さらに、炭化珪素の粒子による砥粒の砥石からの脱落や部分的な砥粒の劈開を抑制できたので、砥石面の荒れを抑制し、仕上げ面粗さを小さくすることができ、加工精度を確保できたと推察される。よって、基体11の断面に現出する炭化珪素の粒子の最大長さLが2.0μm以上5.0μm以下であると、加工精度を確保しつつ加工時間が長くなるのを抑制できることが明らかになった。
【0047】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0048】
実施形態では、セラミックヒータ10の基体11が円柱状に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。基体11の形状は用途に応じて適宜設定できる。例えば、基体の軸線Oに直交する断面を楕円状、多角状等の形状にすることは当然可能である。また、セラミックヒータは棒状の基体をもつものに限られない。例えば、板状の基体間に導体を挟み込んだいわゆる板状のセラミックヒータとすることは当然可能である。この場合は平面研削によるセラミックヒータの加工のときに、加工精度を確保しつつ加工時間が長くなるのを抑制できる。
【0049】
実施形態では、プレス成形によってセラミックヒータ10の基体11の成形体を製造する場合について説明したが、これは一例であり、公知の他の製造方法を採用できる。例えば、プレス成形ではなく、基体11の原料粉末の射出成形により基体11の成形体を得ることは当然可能である。また、プレス成形によって導体14の成形体を得ることは当然可能である。
【0050】
実施形態では、セラミックヒータ10がグロープラグ30に用いられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。セラミックヒータ10の用途には制限がない。例えばバーナーの着火用ヒータ、ガスセンサの加熱用ヒータ、Diesel particulate filter(DPF)にセラミックヒータ10を用いることは当然可能である。
【0051】
実施形態ではセラミックヒータ10と筒状部材50とが圧入構造をなし、筒状部材50に圧入されたセラミックヒータ10の電極取出部17に筒状部材50が直接接続される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えばセラミックヒータ10を金属部材の中に入れて、セラミックヒータ10の電極取出部17と金属部材との間をワイヤやろう材等の導電材料によって接続することは当然可能である。また、導電性セラミックからなる発熱体が埋設された絶縁性セラミックからなる基体の表面に、印刷等によって、発熱体に電気的に接続したリードを設けた後、金属部材の中に基体を入れ、ろう材等の導電材料によって基体のリードと金属部材とを接続することは当然可能である。
【0052】
実施形態では、セラミックヒータ10を保持する筒状部材50が主体金具31に固定されたグロープラグ30について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、セラミックヒータ10が筒状部材と共に変位可能となるように主体金具に保持されるグロープラグ(いわゆるヒータ付き圧力センサ)とすることは当然可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 セラミックヒータ
11 基体
15 発熱体
17,18 電極取出部
19 筒状部材に圧入された部分
20 領域
21,24 炭化珪素の粒子
22 外形
23 線分
30 グロープラグ
50 筒状部材
K,L 粒子長さ