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特許7237873定期検査工程作成支援装置及び定期検査工程作成支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】定期検査工程作成支援装置及び定期検査工程作成支援方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/00 20060101AFI20230306BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20230306BHJP
   G06Q 10/00 20230101ALI20230306BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20230306BHJP
【FI】
G21C17/00 600
G05B19/418 Z
G06Q10/00
G06Q50/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020030826
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021135144
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二葉 真市
(72)【発明者】
【氏名】三田 明
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-129414(JP,A)
【文献】特開平06-242280(JP,A)
【文献】特開2003-185782(JP,A)
【文献】特開2009-211164(JP,A)
【文献】特開2011-65626(JP,A)
【文献】特開平9-230911(JP,A)
【文献】特開2013-145478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/00
G05B 19/418
G06Q 10/20
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電プラントの定検工程表の作成を支援する定期検査工程作成支援装置であって、
入力部及び表示部と、
少なくとも、前記入力部から入力された定検期間中の実施作業情報と、点検機器データと、保安規定データと、過去定検工程実績データとを格納するデータベースと、
前記データベースに格納された前記定検期間中の実施作業情報のうち、クリティカル工程に係わる基本情報から前記過去定検工程実績データを参照してクリティカル工程に係わる主要工程からなる主要工程表を自動生成するとともに、クリティカル工程以外の複数の点検機器に関する実施作業情報から当該点検機器についての点検工程の実施時期を決める順序を決定する定検工程作成手順作成機能部と、
前記順序に従って、前記点検機器についての点検工程の実施時期を決める際に、前記表示部に表示された前記主要工程表に割り当て可能な時期を表示する工程表作成機能部と
を具備し、
前記主要工程表に、前記順序に従って、前記点検機器についての点検工程の実施時期を割り当てて全体の定検工程表を作成する
ことを特徴とする定期検査工程作成支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定期検査工程作成支援装置において、
前記工程表作成機能部は、前記点検機器についての工程の実施時期を決定する際の制約事項を前記表示部に表示する
ことを特徴とする定期検査工程作成支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の定期検査工程作成支援装置において、
前記工程表作成機能部は、前記制約事項をチェック表として表示し、前記制約事項の根拠類も表示可能とされている
ことを特徴とする定期検査工程作成支援装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の定期検査工程作成支援装置において、
前記主要工程表は、前記データベースに格納され、変更を加えられた前記主要工程表も前記データベースに格納され、前記表示部に表示可能とされている
ことを特徴とする定期検査工程作成支援装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の定期検査工程作成支援装置において、
前記工程表作成機能部は、前記主要工程表に加えられた前記点検機器についての点検工程の実施時期について、該当する前記点検機器データ、前記保安規定データ、前記過去定検工程実績データを参照してこれらに適合しているか否かを判定し、適合していない場合はその理由を表示する
ことを特徴とする定期検査工程作成支援装置。
【請求項6】
発電プラントの定検工程表の作成を支援する定期検査工程作成支援方法であって、
入力部及び表示部と、
少なくとも、入力部から入力された定検期間中の実施作業情報と、点検機器データと、保安規定データと、過去定検工程実績データとを格納するデータベースと、
前記データベースに格納された前記定検期間中の実施作業情報のうち、クリティカル工程に係わる基本情報から前記過去定検工程実績データを参照してクリティカル工程に係わる主要工程からなる主要工程表を自動生成するとともに、クリティカル工程以外の複数の点検機器に関する実施作業情報から当該点検機器についての点検工程の実施時期を決める順序を決定する定検工程作成手順作成機能部と、
前記順序に従って、前記点検機器についての点検工程の実施時期を決める際に、前記表示部に表示された前記主要工程表に割り当て可能な時期を表示する工程表作成機能部と
を具備した定期検査工程作成支援装置を使用し、
前記主要工程表に、前記順序に従って、前記点検機器についての点検工程の実施時期を割り当てて全体の定検工程表を作成する
ことを特徴とする定期検査工程作成支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、定期検査工程作成支援装置及び定期検査工程作成支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラント、火力発電プラント等の発電プラントでは、プラント毎に定期的に運転を停止し、例えば原子力発電プラントでは、原子炉の臨界防止機能や燃料の崩壊熱の除去機能を確保するなど、所定の安全基準にしたがった定期検査(定検)が実施される。定検時のプラント状態は燃料交換などの工程により大きく変化する。例えば、原子炉と燃料プールの間で燃料を移動するために炉水位を上昇させ、移送時には水路のゲートを開放する。このような基本手順に従いながらプラントの安全を確保しつつ、機器の点検や交換などの定期検査工程が計画される。
【0003】
発電プラントの定検工程は一様ではなく、プラント毎に毎回異なる。このため、そのつどベテランの技術者によって予め定検工程が計画され、定検工程表が作成されている。このような定検工程表の作成にあたっては、作業に必要な人工数、日数、手配すべき部品、作業工程、人員配置、作業場所の確保、作業制約条件、作業に必要な書類の制作等を勘案しながら、高度な熟練度を持った熟練技術者が、人員配置を含むスケジューリング(スケジュールの作成・管理)を行っていた。
【0004】
具体的には、熟練技術者の手作業によって個々の点検作業ごとのスケジュールが作成された後に、作業間の干渉を回避しながら全体の点検作業のスケジュールを構築するというやり方でスケジューリングの作業を行っていた。
【0005】
また、実際の定検の作業期間中では、現場作業者から現場作業監督者へ作業報告が提出され、これを基に熟練技術者が作業進捗状況を把握し、必要なスケジュール修正を行っていた。
【0006】
また、上記のような定検工程の計画を支援するために、従来から各種の定検工程の作成支援を行うための装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平8-129414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、発電プラントの定検工程では、複数の作業が並行して実施される中で、アイソレーション(系統隔離)、作業エリア干渉回避、保守規定の遵守等の多くの制約条件を考慮する必要がある。これらの制約条件を満たす定検工程計画は、熟練技術者の知識と経験を頼りに作成されているが、今後熟練技術者の減少は必至であり、将来の定検工程では、不備によるリスクの発生が懸念される。
【0009】
本発明の目的は、熟練技術者でなくとも、発電プラントの安全性を踏まえた定検工程計画の作成を可能とする定期検査工程作成支援装置及び定期検査工程作成支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の定期検査工程作成支援装置は、発電プラントの定検工程表の作成を支援する定期検査工程作成支援装置であって、入力部及び表示部と、少なくとも、前記入力部から入力された定検期間中の実施作業情報と、点検機器データと、保安規定データと、過去定検工程実績データとを格納するデータベースと、前記データベースに格納された前記定検期間中の実施作業情報のうち、クリティカル工程に係わる基本情報から前記過去定検工程実績データを参照してクリティカル工程に係わる主要工程からなる主要工程表を自動生成するとともに、クリティカル工程以外の複数の点検機器に関する実施作業情報から当該点検機器についての点検工程の実施時期を決める順序を決定する定検工程作成手順作成機能部と、前記順序に従って、前記点検機器についての点検工程の実施時期を決める際に、前記表示部に表示された前記主要工程表に割り当て可能な時期を表示する工程表作成機能部とを具備し、前記主要工程表に、前記順序に従って、前記点検機器についての点検工程の実施時期を割り当てて全体の定検工程表を作成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の定期検査工程作成支援装置及び定期検査工程作成支援方法によれば、熟練技術者でなくとも、発電プラントの安全性を踏まえた定検工程計画の作成を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る定期検査工程作成支援装置の概略構成を示すブロック図。
図2】実施形態に係る定期検査工程作成支援方法の工程を示すフローチャート。
図3】工程表の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態の定期検査工程作成支援装置及び定期検査工程作成支援方法について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、実施形態に係る定期検査工程作成支援装置100の概略構成を示すブロック図であり、図2は定期検査工程作成支援方法の工程を示すフローチャートである。図1に示すように、定期検査工程作成支援装置100は、データベース101と、工程作成支援部110と、入力部121と、表示部122とを具備している。
【0015】
データベース101には、当該定期検査(以下、定検とも呼ぶ)期間中の実施作業情報102、点検機器データ103、保安規定データ104、過去定検工程実績データ105が格納されている。
【0016】
上記当該定検期間中の実施作業情報102には、工程表作成者によって入力部121から入力された当該定検期間中に実施する作業についての情報が格納される。この情報には、重要な工程を含むクリティカル工程に係わる基本情報(原子力発電プラント名、定検日数、燃料交換本数、中性子検出器交換本数、制御棒駆動機構の点検台数等)、クリティカル工程以外に当該定検期間中に実施する点検機器及び点検内容に関する情報が含まれている。点検内容は分解して点検する本格点検と分解せずに点検する簡易点検があり、本格点検は簡易点検と比較して工事期間が長くなる。
【0017】
上記点検機器データ103には、原子力発電プラントの各機器についての点検実績、アイソレーション、作業エリアに関するデータが含まれている。点検実績に関するデータには、過去の点検実績に基づく必要日数に関するデータが含まれている。
【0018】
上記保安規定データ104には、原子力発電プラントにおける全ての保安規定に関するデータ、すなわち、工程作成上の全ての要求事項が格納されており、定期検査工程表は、この要求事項が全て充足されるように作成される。
【0019】
過去定検工程実績データ105には、過去に実施された定検において実施された工程に関して、クリティカル工程に係わる情報及びクリティカル工程以外に実施された機器の点検に関する情報が格納されている。
【0020】
工程作成支援部110には、定検工程作成手順作成機能111と、工程表作成機能112とが含まれている。
【0021】
定検工程表作成にあたっては、まず、工程表作成者が入力部121から当該定検期間中の実施作業情報を入力する(図2のステップ201)。この入力された当該定検期間中の実施作業情報は、データベース101に格納される。
【0022】
定検工程作成手順作成機能111は、データベース101に格納された当該定検期間中の実施作業情報102に基づき、定検工程作成手順を作成する。まず、当該定検期間中の実施作業情報102のうち、クリティカル工程に係わる基本情報(原子力発電プラント名、定検日数、燃料交換本数、中性子検出器交換本数、制御棒駆動機構の点検台数等)に基づき、過去の実績データから主要工程についての定検工程表(主要工程表)を自動生成して表示部122に表示する(図2のステップ202)。なお、図1中に、定検工程表の例を示してある。
【0023】
より具体的な例では、工程表作成者が工程作成を開始すると定期検査工程作成支援装置100は表示画面に「原子炉クリティカル工程作成」を表示する。工程表作成者が表示されている「原子炉クリティカル工程作成」を選択実行すると、データベース101に収納されている当該定検期間中の実施工事情報の中の発電機解列日、発電機並列日に基づき、発電機解列、原子炉開放、燃料交換、中性子検出器交換、原子炉復旧、原子炉漏えい検査、原子炉起動前試験、原子炉起動、発電機併入から構成されるクリティカル工程のひな形を作成して画面に表示する。
【0024】
次に、データベース101に収納されている当該定検期間中の実施工事情報の中の燃料交換本数、中性子検出器交換本数と過去定検工程実績データにある燃料交換実績時間と中性子検出器交換実績時間に基づき当該定検での燃料及び中性子検出器交換に必要な時間を算出しクリティカル工程ひな形の燃料交換、中性子検出器交換工程に反映する。
【0025】
次に、データベース101に収納されている過去定検工程実績データにある原子炉開放、原子炉復旧、原子炉漏えい検査、原子炉起動前試験、原子炉起動の実績時間に基づき、クリティカル工程ひな形の原子炉開放、原子炉復旧、原子炉漏えい検査、原子炉起動前試験、原子炉起動工程に反映する。
【0026】
次に、上記でクリティカル工程ひな形に過去定検工程実績データを反映したものを当該定検工事のクリティカル工程として画面に表示する。
【0027】
次に、定検工程作成手順作成機能111は、入力されたクリティカル工程以外の当該定検期間中に実施する点検機器についての情報、点検機器データ、保安規定データから、どの点検機器からどのような順序(優先順位)で点検時期を割り当てるかの手順を作成して表示する(図2のステップ203)。
【0028】
例えば、点検機器としてA,B,C,D,Eが入力された場合、これらの点検機器の点検時期を割り当てる順序、例えば、A→D→C→E→B等の順序が表示される。したがって、定検工程の作成では、工程表作成者が、表示された順番で点検機器の点検時期を割り当てる。上記の優先順位は、例えばクリティカル工程に直接影響する原子炉設備に関する工事を最優先とし、次に燃料の冷却に係わる設備の工事、次に放射能閉じ込めに係わる設備の工事、次に工事期間が長い工事、次に重要設備の工事、のように決められる。そして、優先順位を付けた工事件名の一覧が画面に表示される。
【0029】
前述したクリティカル工程からなる主要工程表に対して、上記の点検機器の点検時期の割り当てを行う場合、工程表作成機能112が使用される。
【0030】
工程表作成機能112は、上記した手順に表示された最初の点検機器、例えばAが選択された場合(図2のステップ204)、データベース101の点検機器データ103の中からAに関する点検機器データを抽出する。このAに関する点検機器データの中には、Aについての点検実績(必要とされる点検期間を含む)、Aの点検を行う場合に必要とされるアイソレーション(系統隔離)に関するデータ、Aの点検を行う場合に必要とされる作業エリアに関するデータが含まれている。これらのデータは、工程表作成者が所望する場合に、入力部121による操作によって表示部122に表示することができる。
【0031】
また、工程表作成機能112は、保安規定データ104から、選択された点検機器Aに関する保安規定データを抽出する。そして、点検機器Aに関する工程作成上の全ての要求事項(制約条件)は、工程表作成者が所望する場合に、入力部121による操作によって表示部122に表示することができる。
【0032】
このように、工程表作成者は、表示部122に表示された点検機器Aに関する情報、すなわち、点検機器Aについての点検実績(必要とされる点検期間を含む)、アイソレーションに関する情報、必要とされる作業エリアに関する情報、工程作成上の全ての要求事項を見ることができる。またこの際、表示部122に表示された主要工程表中に、点検機器Aの点検時期を割り当て可能な期間(割り当て可能な候補)が表示される(図2のステップ205)。また、点検機器Aに関する工程作成上の全ての要求事項(制約条件)はチェック表として表示され、要求事項に関する根拠類も必要に応じて表示することができる。
【0033】
工程表作成者は、表示部122に表示された情報に基づいて、クリティカル工程が表示された主要工程表の中に、点検機器Aについての点検時期を割り当てる(図2のステップ206)。
【0034】
同様にして、点検機器D→C→E→Bの順に、順次点検機器の点検時期を、主要工程表の中に割り当てて、全体の定検工程表を作成する(図2のステップ207)。この場合、作成途中の定検工程表は、データベース101中に格納され、必要に応じて読み出して、表示部122に表示することができる。
【0035】
上述した点検機器の点検時期の割り当てを行う際、工程を設定した工事件名の数が増えてくると、示される実施可能な期間が制約条件により短くなり、過去実績の工事期間を確保できなくなる場合が出てくる。このとき、工程表作成者が装置の示す実施可能な期間を超えて工事工程を設定すると、超えた部分についての制約条件を画面表示する。併せて、制約の原因が他の工事の場合、該当する工事のバーチャートの表示色を変えて工程表作成者に知らせる。工程表作成者は画面に表示された制約条件から対応策を検討する。装置は工程表作成者が対応策を検討する手助けとして、過去の実績から対応策の候補を複数表示する。工程表作成者は干渉する工事、当該工事の工程を画面上で動かしながら実施可能な時期を探す。実施条件が成立すると装置はこれを表示して工程表作成者に知らせ、工程表作成者は工程を設定する。
【0036】
また例えば、点検機器Eの点検時期の割り当てを行う際、表示部122に表示された割り当て可能な期間(割り当て可能な候補)以外の期間に割り当てたい場合が生じ得る。このような期間に点検機器Eの点検時期の割り当てを行った場合、割り当てた点検期間において、例えば、同時期に予定されている他の点検機器(例えば点検機器A)のアイソレーション(系統隔離)の条件や、作業エリアに関する条件と干渉していたり、その他の制約条件を満たしていない等の要因があることになる。工程表作成機能112は、表示部122に、この要因を表示する。
【0037】
この要因としては、例えば、点検機器Eを割り当てた期間のうち、一部の期間において、同時期に行う点検機器Aと作業エリアの干渉が生じる等の事象がある。このような場合、工程表作成機能112は、表示部122に、点検機器Aと干渉が生じる時期と生じない時期、干渉が生じる時期においても実施可能な点検機器Eの点検プロセス等を表示する。そして、工程表作成者が、点検時期の一部を変更したり、点検機器Eの点検プロセスを変更することで点検機器Aとの作業エリアの干渉の問題が回避されると、その条件で点検機器Eの点検時期の割り当てを行うことができる。
【0038】
上記のように、本実施形態の定期検査工程作成支援装置100によれば、クリティカル工程からなる主要工程表が自動生成され、その他の点検機器については、表示された順序で各点検機器の点検時期を割り当てることにより、熟練技術者でなくとも、原子力発電プラントの安全性を踏まえた定検工程計画の作成を行うことができる。
【0039】
上述のようにして事前に作成された定検工程表に基づいて、実際の定検作業が実施される。この場合、定検実施中に、ある点検機器についての作業工程の遅れ等によって、後続の点検機器についての作業工程が実施できない場合がある。このような場合、工程表作成機能112を使用して定検工程表を修正しつつ、全ての点検機器についての作業工程を実施できるようにする。
【0040】
上記のように、一旦作成された定検工程表を、定検実施中に変更する場合、各点検機器についての作業工程を実施するグループ、定検工程を管理するグループ等において、その情報を共有する必要がある。このため、定期検査工程作成支援装置100は、原子力発電プラント内のネットワークに接続されており、それぞれのグループ構成員が、コンピュータやタブレット端末によって、このネットワークを介して定期検査工程作成支援装置100にアクセス可能とされている。
【0041】
また、グループ構成員同士がコミュニケーションをとれるように、電話機能による通話、及び、文字によるリアルタイムコミュニケーション(チャット)機能が設けられている。このリアルタイムコミュニケーション(チャット)機能よるグループ構成員間のやり取りは、文字として記録に残るため、電話機能による通話等の違い、後で確認することができる。
【0042】
また、上記のようにして作成された定検工程表(作業開始前の定検工程表)、実際の定検作業中に修正した定検工程表に関するデータ及び修正が必要になった経緯に関する情報は、定検終了後にデータベース101の過去定検工程実績データ105が格納され、定検に関するノウハウがデータベース101中に蓄積される。これによって、次回以降の定検工程表の作成に、今回実施した定検によって得られたノウハウが生かされ、より高精度に定検工程表の作成を行うようにすることができる。
【0043】
以上では、1つの原子力発電プラントの定検を行う場合について説明したが、実際には1か所の発電所敷地内に複数の原子炉が設置され、複数の原子力発電プラントが構成されており、これらの原子力発電プラントについて同時期に定検を行う場合がある。このような場合は、1つの原子力発電プラント内におけるアイソレーション(系統隔離)、作業エリアに関する制約等の他に、使用する機器、作業に必要な人工数等が、各原子力発電プラント間での制約として考慮する必要が生じる場合がある。このような場合は、各原子力発電プラントにおける定検工程を、1つの定検工程表で管理しなければならない場合も生じる。
【0044】
図3は、上記のように1か所の発電所敷地内に複数の原子炉が設置されている場合の定検工程表の例を示すものである。図3に示す定検工程表の例では、A号機、B号機、C号機の3つの原子炉について同時期に定検を行う場合の例を示している。図3に示す定検工程表の例では、系統停止(不待機)となる期間に関する情報、系統停止期間中に実施する系統停止期間中作業情報、クレーン・揚重機の点検時期に関する情報、作業の実施が禁止される作業規制情報、例えばA作業とB作業があった場合にA作業が終了しないとB作業が実施できない等の情報を示すタスク依存情報(コンストレイント表示)、官公庁によって行われる検査に関する情報等が含まれている。このような場合、前述したとおり、使用する機器、作業に必要な人工数、或いは上記した官公庁検査等が、各原子力発電プラント間で同時期に実施することのできない制約として考慮する必要が生じる。
【0045】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、原子力発電プラント以外の火力発電プラント等の定期検査が行われる発電プラントにも適用でき、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
100……定期検査工程作成支援装置、101……データベース、102……実施作業情報、103……点検機器データ、104……保安規定データ、105……過去定検工程実績データ、110……工程作成支援部、111……定検工程作成手順作成機能、112……工程表作成機能、121……入力部、122……表示部。
図1
図2
図3