(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】複数の電気モータのうちの1つに流れる電流の特定
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230306BHJP
H02P 5/46 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
H02M7/48 F
H02P5/46 Z
(21)【出願番号】P 2020526350
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(86)【国際出願番号】 DK2018000178
(87)【国際公開番号】W WO2019096359
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-11-15
(32)【優先日】2017-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】594167956
【氏名又は名称】リナック エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】バストルム、イェッペ クリスチャン
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-073194(JP,A)
【文献】国際公開第2017/084668(WO,A1)
【文献】特開平09-184860(JP,A)
【文献】特開2017-108609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02P 5/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源(14)に接続されるとともに当該電源から電力供給される複数の電気モータ(51,52,53;71,72,73,74;91,92,93)のうちの選択された1つを流れる電流を特定するための方法であって、前記電源(14)と前記複数の電気モータ(51,52,53;71,72,73,74;91,92,93)との間の接続部には、電流測定装置(46)が配置されており、前記方法は、
選択されていない電気モータを、前記電源(14)から一時的に切断するように制御するステップと、
前記選択されていない電気モータが前記電源(14)から一時的に切断されている間、前記電流測定装置(46)によって、前記選択された電気モータを流れる電流を示す電流測定を行うステップと、
前記電流測定が行われた後、前記選択されていない電気モータを前記電源(14)に再接続するように当該電気モータを制御するステップと、を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
測定される電流は、複数のリニアアクチュエータ(31,32,33)のうちの選択された1つにおける電気モータを流れる電流であって、各リニアアクチュエータは、
可逆式電気DCモータ(2)と、
前記可逆式電気DCモータ(2)によって駆動されるスピンドル(4)と、
前記スピンドル(4)に取り付けられるとともに回転しないように固定されたスピンドルナット(6)と、を含み、前記スピンドルナット(6)は、2つのリミット位置間を移動するように配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電気モータ(51,52,53;71,72,73,74;91,92,93)の各々と直列に配置された少なくとも1つの電子スイッチを切り替えることにより、当該電気モータを駆動するステップを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記選択されていない電気モータと直列の前記少なくとも1つの電子スイッチのうちの少なくとも1つをオフに切り替えることによって、前記電源(14)から前記選択されていない電気モータを一時的に切断するステップを含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
可変デューティ比を有するパルス幅変調電圧を用いて前記電気モータ(51,52,53;71,72,73,74;91,92,93)を駆動するステップを含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記選択された電気モータを駆動する前記パルス幅変調電圧のパルスの中間において前記電流測定を実行するステップを含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記選択された電気モータを流れる電流を示す測定電流によって、前記選択された電気モータを駆動する前記パルス幅変調電圧の前記デューティ比を調節するステップを含むことを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記選択された電気モータを流れる電流を示す前記測定電流が所定の最大値を超える場合、前記選択された電気モータをオフに切り替えるステップを含むことを特徴とする、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
電源(14)と、
前記電源(14)に接続されるとともに、当該電源から電力供給される複数の電気モータ(51,52,53;71,72,73,74;91,92,93)と、
コントローラ(15)と、
前記コントローラ(15)の制御下で前記電気モータ(51,52,53;71,72,73,74;91,92,93)を駆動するように構成された少なくとも1つの駆動回路(41,42,43;68,69;94,95,96)と、を含むシステム(30;87)であって、
前記システムは、前記電源(14)と前記複数の電気モータ(51,52,53;71,72,73,74;91,92,93)との間の接続部に配置された電流測定装置(46)をさらに含み、
前記コントローラ(15)は、前記電気モータ(51,52,53;71,72,73,74;91,92,93)のうちの選択された1つを流れる電流を測定するべく、
選択されていない電気モータを、前記電源(14)から一時的に切断するように制御し、
前記選択されていない電気モータが前記電源(14)から一時的に切断されている間、前記電流測定装置(46)によって、前記選択された電気モータを流れる電流を示す電流測定を行い、
前記電流測定が行われた後、前記選択されていない電気モータを前記電源(14)に再接続するように当該電気モータを制御する、
ように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項10】
前記システムは、複数のリニアアクチュエータ(31,32,33)を含むアクチュエータシステム(30)であって、各リニアアクチュエータは、
可逆式電気DCモータ(2)と、
前記可逆式電気DCモータ(2)によって駆動されるスピンドル(4)と、
前記スピンドル(4)に取り付けられるとともに回転しないように固定されたスピンドルナット(6)と、を含み、前記スピンドルナット(6)は、2つのリミット位置間を移動するように配置されていることを特徴とする、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記アクチュエータシステム(30)は、
少なくとも、前記電源(14)、前記コントローラ(15)、及び前記少なくとも1つの駆動回路(41,42,43;68,69)を含むコントロールボックス(37;67)と、
複数のケーブル(34,35,36)と、を含み、各ケーブルは、前記リニアアクチュエータ(31,32,33)のうちの1つを、前記コントロールボックス(37;67)において対応する駆動回路に接続することを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの駆動回路(41,42,43;68,69;94,95,96)は、複数の電子スイッチを含み、
前記電気モータ(51,52,53;71,72,73,74;91,92,93)の各々は、前記複数の電子スイッチのうちの少なくとも1つと直列に配置されており、
前記少なくとも1つの駆動回路(41,42,43;68,69;94,95,96)は、前記コントローラ(15)の制御下で、各電気モータ(51,52,53;71,72,73,74;91,92,93)と直列の前記少なくとも1つの電子スイッチを切り替えることにより、当該電気モータを駆動するように構成されていることを特徴とする、請求項9~11のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項13】
前記複数の電子スイッチは、電界効果トランジスタであることを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記コントローラ(15)は、選択されていない電気モータと直列の前記少なくとも1つの電子スイッチのうちの少なくとも1つをオフに切り替えることによって、前記電源(
14)から前記選択されていない電気モータを一時的に切断するように構成されていることを特徴とする、請求項12又は13に記載のシステム。
【請求項15】
前記コントローラ(15)は、可変デューティ比を有するパルス幅変調電圧を用いて前記電気モータ(51,52,53;71,72,73,74;91,92,93)を駆動するように構成されていることを特徴とする、請求項9~14のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項16】
前記コントローラ(15)は、前記選択された電気モータを駆動する前記パルス幅変調電圧のパルスの中間において前記電流測定を実行するように構成されていることを特徴とする、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記コントローラ(15)は、前記選択された電気モータを流れる電流を示す測定電流によって、前記選択された電気モータを駆動する前記パルス幅変調電圧の前記デューティ比を調節するように構成されていることを特徴とする、請求項15又は16に記載のシステム。
【請求項18】
前記コントローラ(15)は、前記選択された電気モータを流れる電流を示す前記測定電流が所定の最大値を超える場合、前記選択された電気モータをオフに切り替えるように構成されていることを特徴とする、請求項
17に記載のシステム。
【請求項19】
複数の駆動回路(41,42,43)を含み、各駆動回路は、前記コントローラ(15)の制御下で前記電気モータ(51,52,53)のうちの1つを駆動するように構成されるとともに、4つの電子スイッチを含むHブリッジ駆動回路として構成されることを特徴とする、請求項9~18のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項20】
3つのハーフブリッジに配置された6つの電子スイッチを有する少なくとも1つの駆動回路(68;69)を含み、前記駆動回路は、前記コントローラ(15)の制御下で2つの電気モータ(71,72;73,74)を駆動するように構成されていることを特徴とする、請求項9~18のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項21】
前記電流測定装置は、電流測定シャント抵抗器(46)であって、前記コントローラ(15)は、前記電流測定シャント抵抗器(46)における電圧を測定することにより前記電流測定を実行するように構成されている、請求項9~20のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項22】
プログラムコード手段を含むコンピュータプログラムであって、前記プログラムコード手段は、コンピュータ上で実行されたときに請求項1~8のいずれか1つに記載のステップを実行する、コンピュータプログラム。
【請求項23】
プログラムコード手段が保存されたコンピュータ可読媒体であって、前記プログラムコード手段は、コンピュータ上で実行されたときに請求項1~8のいずれか1つに記載の方法を実行する、コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源に接続されるとともに、当該電源から電力供給される複数の電気モータのうちの選択された1つを流れる電流を特定する方法、及び、電源と、当該電源に接続されるとともに当該電源から電力供給される複数の電気モータとを含むシステムに関する。本発明はまた、コンピュータプログラム、及びコンピュータ可読媒体にも関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータは、多くの異なる用途に使用される。例として、リニアアクチュエータ、他のタイプのアクチュエータ、冷却ファン、ディスクドライブ、自動ドア開閉装置、ビークルにおけるリフトモータ、牽引モータ、及び/又は他のモータ(可動ベッド、及び医療用カートを含む)などが挙げられる。電気モータは、バッテリや整流器などの直流(DC)電源、又は送電網などの交流(AC)電源で駆動することができる。典型的には、電気モータの回転速度は、モータコントローラによって制御される。
【0003】
多くのタイプの電気モータ(DCモータ、及びユニバーサルモータを含む)の場合、典型的な使用条件下におけるモータの回転速度は、モータの供給電圧に比例する一方で、送出される機械的トルク、又は機械的力は、供給電源から引き込まれる電流に比例している。これは、モータの機械的負荷が増大すると、供給電源からより大きな電流が引き込まれることを意味する。このより大きな電流により、増大した負荷との釣り合いをとるための追加のトルクが付与される。
【0004】
例えば、リニアアクチュエータで駆動される病院のベッドや高さ調節が可能なテーブルに過度な負荷がかかったり、単にモータで駆動される装置の動作が阻害されたりして、モータが過負荷状態になると、供給電源から引き込まれる電流が増大して、モータが破損するおそれがある。このような破損を防止するためには、モータによって引き込まれる電流を検出又は測定して、電流が所定の最大値を超えた場合にモータへの電力供給を遮断すればよい。これに代えて、測定された電流に応じて、モータコントローラによりモータへの供給電圧を調節してもよい。
【0005】
モータによって引き込まれる電流は、モータと電源との間の接続部に配置された電流測定装置によって測定することができる。電流測定装置は、例えば、電流計、電流測定シャント抵抗器、電流測定変圧器、ホール効果電流センサ変換器、又は磁気抵抗磁場電流センサ(magnetoresistive field current sensor)であってもよい。
【0006】
多くの用途においては、複数の電気モータが、共通電源に接続され、当該電源から電力供給を受ける。この場合においても、モータによって引き込まれる電流を監視するために、電源とモータとの間の接続部に電流測定装置を配置することができる。ただし、この場合、全てのモータが同時に自己の最大電流を引き込むことを許容できるようにすべきであり、このため、所定の最大値を個々の最大値の合計値に設定して、これらのモータのうちの1つ以上に対する供給電圧が遮断されるのは、測定された電流が最大値の合計を上回った場合のみとしなければならない。しかしながら、ある時点における一部のモータは、ほとんど、或いは全く電流を引き込まない場合があるため、他のモータは、実際には、合計の最大電流値を超えることなく自己の所定最大値よりも遥かに大きい電流を引き込むことができる。すなわち、この解決策は、過負荷から個々のモータを保護するには十分でない。
【0007】
1つの解決策としては、各モータの接続部に個別の電流測定装置を配置して、これらのモータの電流消費を個々に測定できるようにすることである。しかしながら、複数の電流測定装置を使用すると、より多くのコンポーネントが必要となり、追加のコストが発生するだけでなく、コントローラにおいて必要な空間も増大する。さらに、コントローラにおいて、電流測定装置毎に個別の入力端子が必要となるが、これは必ずしも実現できるとは限らない。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の実施形態の目的は、共通電源に接続されるとともに当該電源から電力供給される複数の電気モータの各々に対して個別の電流測定装置を使用せずに、これらの電気モータの各々によって引き込まれる電流を特定する、単純且つコスト効率の高い方法を提供することである。
【0009】
本発明の実施態様によれば、上記目的は、電源に接続されるとともに当該電源から電力供給される複数の電気モータのうちの選択された1つを流れる電流を特定するための方法により達成される。前記電源と前記複数の電気モータとの間の接続部には、電流測定装置が配置されている。また、上記目的は、前記方法が、選択されていない電気モータを、前記電源から一時的に切断するように制御するステップと、前記選択されていない電気モータが前記電源から一時的に切断されている間、前記電流測定装置によって、前記選択された電気モータを流れる電流を示す電流測定を行うステップと、前記電流測定が行われた後、前記選択されていない電気モータを前記電源に再接続するように当該電気モータを制御するステップと、を含む場合に達成される。
【0010】
前記電源と前記電気モータとの間に配置された共通の電流測定装置によって電流測定が実行されている間、1つの電気モータ以外の全ての電気モータを前記電源から一時的に切断することにより、測定された総電流が、切断されていないモータにより引き込まれる電流と等しくなる。このようにすると、1つの電流測定装置のみを使用して、個々のモータにより引き込まれる電流を測定することができるため、追加のコストの発生や、複数の電流測定装置のためにコントローラの空間を増やす必要性を回避することができる。個々のモータの電流消費を知ることにより、あるモータが、過負荷により当該モータの個別の最大電流値を超えている場合、当該モータをオフに切り替えることができ、また、個々のモータを、それぞれの電流消費に応じて制御することが可能になる。
【0011】
測定される電流は、複数のリニアアクチュエータのうちの選択された1つにおける電気モータを流れる電流であってもよく、各リニアアクチュエータは、可逆式電気DCモータと、前記可逆式電気DCモータによって駆動されるスピンドルと、前記スピンドルに取り付けられるとともに回転しないように固定されたスピンドルナットと、を含み、前記スピンドルナットは、2つのリミット位置間を移動するように配置されている。
【0012】
いくつかの実施形態においては、前記方法は、前記電気モータの各々と直列に配置された少なくとも1つの電子スイッチを切り替えることにより、当該電気モータを駆動するステップを含む。
【0013】
前記方法は、前記選択されていない電気モータと直列の前記少なくとも1つの電子スイッチのうちの少なくとも1つをオフに切り替えることによって、前記電源から前記選択されていない電気モータを一時的に切断するステップを含みうる。前記電気モータを駆動するために既に配置されている電子スイッチを使用して、選択されていない電気モータを前記電源から一時的に切断することにより、この目的のために新たなコンポーネントを追加する必要がなくなる。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記方法は、可変デューティ比を有するパルス幅変調電圧を用いて前記電気モータを駆動するステップを含む。このようにすると、電気モータを制御する際に好適であり、特に、同じ電源から複数のモータに電力を供給する場合に好適である。この場合、前記方法は、前記選択された電気モータを駆動する前記パルス幅変調電圧のパルスの中間において前記電流測定を実行するステップを含みうる。前記パルスの中間において、前記電流は、前記モータの平均電流と等しい。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記選択された電気モータを流れる電流を示す測定電流によって、前記選択された電気モータを駆動する前記パルス幅変調電圧の前記デューティ比を調節するステップを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記方法は、前記選択された電気モータを流れる電流を示す前記測定電流が所定の最大値を超える場合、前記選択された電気モータをオフに切り替えるステップを含む。
【0016】
上述したように、本発明はまた、システムに関し、当該システムは、電源と、前記電源に接続されるとともに、当該電源から電力供給される複数の電気モータと、コントローラと、前記コントローラの制御下で前記電気モータを駆動するように構成された少なくとも1つの駆動回路と、を含む。前記システムは、前記電源と前記複数の電気モータとの間の接続部に配置された電流測定装置をさらに含み、前記コントローラは、前記電気モータのうちの選択された1つを流れる電流を測定するべく、選択されていない電気モータを、前記電源から一時的に切断するように制御し、前記選択されていない電気モータが前記電源から一時的に切断されている間、前記電流測定装置によって、前記選択された電気モータを流れる電流を示す電流測定を行い、前記電流測定が行われた後、前記選択されていない電気モータを前記電源に再接続するように当該電気モータを制御するように構成されている。
【0017】
前記電源と前記電気モータとの間に配置された共通の電流測定装置によって電流測定が実行されている間、1つの電気モータ以外の全ての電気モータを前記電源から一時的に切断するように前記コントローラを構成することにより、測定された総電流が、切断されていないモータにより引き込まれる電流と等しくなる。このようにすると、1つの電流測定装置のみを使用して、個々のモータにより引き込まれる電流を測定することができるため、追加のコストの発生や、複数の電流測定装置のためにコントローラの空間を増やす必要性を回避することができる。個々のモータの電流消費を知ることにより、あるモータが、過負荷により当該モータの個別の最大電流値を超えている場合、当該モータをオフに切り替えることができ、また、個々のモータを、それぞれの電流消費に応じて制御することが可能になる。
【0018】
前記システムは、複数のリニアアクチュエータを含むアクチュエータシステムであってもよく、各リニアアクチュエータは、可逆式電気DCモータと、前記可逆式電気DCモータによって駆動されるスピンドルと、前記スピンドルに取り付けられるとともに回転しないように固定されたスピンドルナットと、を含み、前記スピンドルナットは、2つのリミット位置間を移動するように配置されている。前記アクチュエータシステムは、少なくとも、前記電源、前記コントローラ、及び前記少なくとも1つの駆動回路を含むコントロールボックスと、複数のケーブルと、を含んでもよく、各ケーブルは、前記リニアアクチュエータのうちの1つを、前記コントロールボックスにおいて対応する駆動回路に接続する。これに代えて、前記システムは、同じ電源に接続されるとともに当該電源から電力供給される1つ以上の他の電気モータと組み合わせて、1つ以上のリニアアクチュエータを含んでもよい。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つの駆動回路は、複数の電子スイッチを含み、前記電気モータの各々は、前記複数の電子スイッチのうちの少なくとも1つと直列に配置されており、前記少なくとも1つの駆動回路は、前記コントローラの制御下で、各電気モータと直列の前記少なくとも1つの電子スイッチを切り替えることにより、当該電気モータを駆動するように構成されている。前記複数の電子スイッチは、電界効果トランジスタであってもよい。
【0020】
前記コントローラは、選択されていない電気モータと直列の前記少なくとも1つの電子スイッチのうちの少なくとも1つをオフに切り替えることによって、前記電源から前記選択されていない電気モータを一時的に切断するように構成されてもよい。前記電気モータを駆動するために既に配置されている電子スイッチを使用して、選択されていない電気モータを前記電源から一時的に切断することにより、この目的のために新たなコンポーネントを追加する必要がなくなる。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記コントローラは、可変デューティ比を有するパルス幅変調電圧を用いて前記電気モータを駆動するように構成されている。このようにすると、電気モータを制御する際に好適であり、特に、同じ電源から複数のモータに電力を供給する場合に好適である。この場合、前記コントローラは、前記選択された電気モータを駆動する前記パルス幅変調電圧のパルスの中間において前記電流測定を実行するように構成されている。前記パルスの中間において、前記電流は、前記モータの平均電流と等しい。いくつかの実施形態において、前記コントローラは、前記選択された電気モータを流れる電流を示す測定電流によって、前記選択された電気モータを駆動する前記パルス幅変調電圧の前記デューティ比を調節するように構成されている。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記コントローラは、前記選択された電気モータを流れる電流を示す前記測定電流が所定の最大値を超える場合、前記選択された電気モータをオフに切り替えるように構成されている。
【0023】
前記システムは、複数の駆動回路を含んでもよく、各駆動回路は、前記コントローラの制御下で前記電気モータのうちの1つを駆動するように構成されるとともに、4つの電子スイッチを含むHブリッジ駆動回路として構成される。
【0024】
これに代えて、前記システムは、3つのハーフブリッジに配置された6つの電子スイッチを有する少なくとも1つの駆動回路を含んでもよく、前記駆動回路は、前記コントローラの制御下で2つの電気モータを駆動するように構成されている。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記電流測定装置は、電流測定シャント抵抗器であってもよく、前記コントローラは、前記電流測定シャント抵抗器における電圧を測定することにより前記電流測定を実行するように構成されてもよい。これは、電流を測定するための単純且つコスト効率の高い方法である。
【0026】
本発明はまた、コンピュータプログラムと、コンピュータ可読媒体に関し、前記コンピュータプログラムは、コンピュータ上で実行されたときに上述した方法のステップを実行するためのプログラムコード手段を含み、前記コンピュータ可読媒体には、コンピュータ上で実行されたときに上述した方法を実行するためのプログラムコード手段が保存されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施形態をより詳細に説明する。
【
図1】リニアアクチュエータの例を概略的に示す図である。
【
図2】アクチュエータシステムの例を示す図であり、リニアアクチュエータがコントロールボックスによって制御されている。
【
図3】ケーブルによって駆動回路に接続されたリニアアクチュエータを示す電気図である。
【
図4】アクチュエータシステムの例を示す図であり、3つのリニアアクチュエータがコントロールボックスによって制御されている。
【
図5】
図2に示すアクチュエータシステムのアクチュエータと直列に挿入された電流測定シャント抵抗器を示す図である。
【
図6】
図4に示すアクチュエータシステムの3つのアクチュエータと直列に挿入された電流測定シャント抵抗器を示す図である。
【
図7】
図6に示すアクチュエータシステムのコントロールボックスの一部をより詳細に示す図であり、当該システムは、Hブリッジ駆動回路を含み、同図において、3つのモータが全てアクティブであるときの電流が示されている。
【
図8】
図7に示す3つのモータにおける電流の波形と、シャント抵抗器における総電流とを示す図であり、これらのモータはDC電圧で駆動されており、2つのモータが電源から一時的に切断されている。
【
図9】
図7において、2つのモータが電源から一時的に切断されたときの電流を示す図である。
【
図10】
図7に示す3つのモータにおける電流の波形と、シャント抵抗器における総電流とを示す図であり、これらのモータはパルス幅変調電圧で駆動されており、2つのモータが電源から一時的に切断されている。
【
図11】代替のアクチュエータシステムのコントロールボックスの一部をより詳細に示す図であり、当該システムにおいて、4つのモータが2つの駆動回路によって制御されており、同図において、これらの4つのモータが全てアクティブであるときの電流が示されている。
【
図12】
図11において、3つのモータが電源から一時的に切断されたときの電流を示す図である。
【
図13】3つの電気モータを含むモータシステムの詳細図であって、3つのモータが全てアクティブであるときの電流を示している。
【
図14】
図13において、2つのモータが電源から一時的に切断されたときの電流を示す図である。
【
図15】電流測定シャント抵抗器の両端に接続された電圧測定装置の例示的な実施態様を示す図である。
【
図16】電流測定シャント抵抗器がコントローラにおけるマイクロコンピュータに直接接続されている例を示す図である。
【
図17】電流測定シャント抵抗器が、RC回路を介してコントローラにおけるマイクロコンピュータに接続されている例を示す図である。
【
図18】共通電源に接続され、当該電源から電力を供給される複数の電気モータのうちの選択された1つを流れる電流を特定するための方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1には、リニアアクチュエータ1の例が概略的に示されている。リニアアクチュエータ1は、可逆式電気モータ2と、典型的には複数の段を有するトランスミッション/減速歯車機構3と、ネジ山を有するスピンドル4と、ネジ山5と螺合するスピンドルナット6と、筒型作動要素7と、を含む。作動要素7の端部には、例えば支持要素などにリニアアクチュエータ1を取り付けるための取付ブラケット8が配置されている。スピンドルナット6は、回転しないように固定されている。いくつかのリニアアクチュエータにおいて、スピンドルナットは、作動要素を使用せずに、支持要素などに直接接続される。モータ2によってスピンドル4が回転されると、スピンドルナット6は、スピンドル4に沿って移動し、これによって、回転運動を、2つのリミット位置の間におけるスピンドルナット6及び/又は作動要素7の直線運動に変換する。なお、いくつかのタイプのモータでは、可逆電気モータ2は、トランスミッション3を省いてスピンドル4を直接駆動することができる。なお、他のタイプの電気モータを使用してもよいが、可逆式電気モータ2は、典型的には可逆式電気DCモータである。
【0029】
典型的には、リニアアクチュエータは、コントロールボックスによって制御されるアクチュエータシステムで使用される。そのようなアクチュエータシステム11の例を
図2に示す。リニアアクチュエータ1は、ケーブル12を介してコントロールボックス13に接続されており、当該コントロールボックスは、少なくとも、電源14と、コントローラ15と、リニアアクチュエータ1用の駆動回路16とを含む。駆動回路16とリニアアクチュエータ1との間のケーブル12の長さは、最大2メートル、或いはそれ以上であってもよい。駆動回路16、したがってアクチュエータ1の電気モータ2もまた、コントローラ15からの制御信号によって制御される。典型的には、コントローラ15は、マイクロコンピュータを含む。コントロールボックス13は、通常、リニアアクチュエータ1が使用される装置に配置される。この装置は、トラック、農業機械、産業用自動化装置、病院及び介護用ベッド、レジャーベッド及び椅子、高さ調節可能なテーブル又は他の家具、及び他の同様の用途などの複数の異なる用途のうちの任意の1つを表しうる。電源14は、典型的には電源ケーブル17で主AC電源網に接続されているが、さらに、バッテリを用いることもでき、この場合、当該バッテリは、単独で用いてもよいし、主電源網に接続された供給電源と共に用いてもよい。最後に、コントロールボックス13をリモート制御装置18に接続することにより、リニアアクチュエータ1の近くの作業員によって、当該アクチュエータの動作を制御することができる。リモート制御装置18とコントロールボックス13との間の接続は、
図2に示すような有線接続であってもよいが、無線リンクや赤外線リンクなどの無線通信システムを使用することも可能である。
【0030】
リニアアクチュエータ1の電気モータの速度は、当該モータに供給されるDC電圧のレベルを調節することによって制御することもできるし、これに代えて、パルス幅変調(PWM)を用いて、パルス幅変調のデューティ比を調節することによって制御することもできる。
【0031】
駆動回路16は、複数の異なる方法で実装可能である。
図3は、4つの電子スイッチ22、23、24、及び25を含むHブリッジ駆動回路として実装された駆動回路16の典型例を示す。駆動回路16は、リニアアクチュエータ1におけるモータ2の各モータ端子を、正の供給電圧、又は接地端子(若しくは負の供給電圧)に接続させて、電子スイッチ22、25が閉じている場合にはモータ2を一方向に回転させ、電子スイッチ23、24が閉じている場合には当該モータを逆の方向に回転させることができる。スイッチ22、23、24、及び25は、電界効果トランジスタ(FET)、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)又はバイポーラトランジスタなどの任意のタイプの電子制御スイッチであってもよく、これらのスイッチは、コントローラ15によって切り替えられる。
図3において、電子スイッチは、FETとして示されている。
【0032】
コントロールボックスはまた、複数のリニアアクチュエータを有するアクチュエータシステムを制御するように構成されてもよい。
図4においては、3つのリニアアクチュエータ31、32、及び33が使用されるアクチュエータシステム30の例が示されている。リニアアクチュエータ31、32、及び33は、ケーブル34、35、及び36を介してコントロールボックス37に接続されており、当該コントロールボックスは、電源14と、コントローラ15(
図2に示すものと同様)と、各リニアアクチュエータ用の駆動回路、すなわち駆動回路41、42、及び43とを含む。各駆動回路、したがってアクチュエータ31、32、及び33の電気モータもまた、コントローラ15からの制御信号によって個別に制御されるが、これはつまり、アクチュエータ用モータの一部又は全てが同時に駆動しうることを意味する。
【0033】
多くの場合、リニアアクチュエータの電流消費を知ること、又は少なくともこの電流消費が一定の制限値を超えるか否かを知ることが妥当である。
図5に示すように、
図2のアクチュエータシステム11におけるリニアアクチュエータ1の電流消費は、アクチュエータ1及びその駆動回路16と直列に電流測定シャント抵抗器46を挿入することにより知ることができる。このシャント抵抗器は、正確に設定された低い抵抗を有する。シャント抵抗器46の両端の電圧降下は、これを流れる電流I
1に比例しており、その抵抗は既知であるため、シャント抵抗器46の両端の電圧は、電流I
1の値を直接示す。したがって、シャント抵抗器46の両端に接続された電圧測定装置47は、コントローラ15に対してリニアアクチュエータ1の電流消費についての情報を供給することができる。コントローラ15は、アクチュエータ1の制御におけるフィードバック信号として、測定された電流値を使用することができる。一例として、アクチュエータ1に対して最大電流制限値を設定することができる。測定された電流値がこの制限値を超える場合、アクチュエータのモータに過度な負荷がかかっていることを示している。このため、コントローラ15は、測定電流値が制限値を超える場合、モータのスイッチを切るように構成することができる。最大電流制限値は、モータのタイプによって異なるが、典型的な値としては、5アンペアの範囲内となりうる。これに代えて、コントローラ15は、測定した電流値に応じて、モータに供給する電圧のレベルを調節することもできる。
【0034】
リニアアクチュエータの電流消費を測定するための電流測定シャント抵抗器は、複数のアクチュエータがコントロールボックスに接続されている
図4のアクチュエータシステム30においても使用可能である。
図6はこの例を示しており、同図において、正確に設定された低い抵抗を有する電流測定シャント抵抗器46が、アクチュエータ31、32、及び33、並びにこれらの駆動回路41、42、及び43と直列に挿入されている。またこの例においても、シャント抵抗器46の両端に接続された電圧測定装置47は、コントローラ15に対して電流消費についての情報を供給する。駆動回路41、42、及び43、並びにこれらに対応するリニアアクチュエータ31、32、及び33の各々に対して電源19から供給される電流を、それぞれI
1、I
2、I
3とすると、電流測定シャント抵抗器46を流れる電流I
sumは、電流I
1、I
2、I
3の合計と等しい。したがって、シャント抵抗器46、及び電圧測定装置47によって測定された電流は、3つの駆動回路、及びこれらに対応するリニアアクチュエータによって消費された合計の電流I
sumである。
【0035】
しかしながら、場合によっては、合計の電流消費についての情報が十分でない場合もある。例えば、リニアアクチュエータ31、32、及び33の最大電流が、それぞれ5、4、及び3アンペアであると仮定すると、3つのリニアアクチュエータの全てがアクティブである場合の最大電流は12アンペアである。したがって、コントローラ15は、測定された電流Isumが12アンペアを超える場合に、(警告を出したり、これらのアクチュエータへの電力を切断したりすることにより)その旨を示すように設定することができる。ただし、アクチュエータのうちの1つ以上は、許容された最大電流よりも少ない電流を使用する場合があり、その場合、他のアクチュエータは、合計で12アンペアの制限を超える前に、自己の最大電流を遥かに超えた電流を使用する可能性がある。したがって、アクチュエータ31及び32が、例えば低負荷のために、それぞれ1アンペアのみを消費する場合、アクチュエータ33は、合計12アンペアの制限を超える前に最大10アンペアを消費する可能性がある。これは許容最大電流の3倍を超えており、電流測定によって過負荷が示されていない場合であっても、モータが破損するおそれがある。
【0036】
例えば、2つのアクチュエータのみ、例えばアクチュエータ32及び33がアクティブであって、アクチュエータ34が非アクティブである場合、コントローラ15は、測定された電流Isumが、これら2つのアクチュエータの最大電流である9アンペアを超える場合に、その旨を示すように設定することができる。ただし、これらのアクチュエータのうちの一方が許容最大電流よりも少ない電流を引き込む場合、他方のアクチュエータは、合計9アンペアの制限を超える前に許容最大電流よりも大きい電流を引き込む可能性がある。
【0037】
当然ながら、この問題は、各アクチュエータに対して個別の電流測定シャント抵抗器、及びこれに対応する電圧測定装置を配置して、これらの電流消費を個別に測定することにより解決することができる。しかしながら、この場合、複数の追加的なコンポーネントが必要であり、コントローラに対して追加の入力を使用しなければならないため、解決策としてはあまり魅力的ではない。
【0038】
以下で説明する解決策は、単一の電流測定シャント抵抗器、及びこれに対応する電圧測定装置のみを使用して、複数のアクチュエータの電流消費を個別に測定することが可能である。
【0039】
図7には、
図6に示すアクチュエータシステム30のコントロールボックス37の一部をより詳細に示す図が示されている。駆動回路41、42、及び43の各々は、
図3に関連させて示したように、FETの形態で4つの電子スイッチを含むHブリッジ駆動回路として実装される。したがって、駆動回路41は、FET54、55、56、及び57を含み、駆動回路42は、FET58、59、60、及び61を含み、駆動回路43は、FET62、63、64、及び65を含む。ここでは、リニアアクチュエータ31、32、及び33のモータ51、52、及び53は、簡略化のために複数の駆動回路の一部として示されているが、上述したように、これらのモータは、外部に配置して、ケーブルを介してこれらの駆動回路に接続してもよい。同様に、明瞭化のために、コントローラ15からFETへの接続は図示を省略する。
【0040】
この例において、モータは、DC電圧レベルで駆動される。駆動回路41において、電圧は、FET54及び57を介してモータ51に供給され、これによって、モータ電流I
1が当該モータを流れる。同様に、駆動回路42において、電圧は、FET58及び61を介してモータ52に供給され、これによって、モータ電流I
2が当該モータを流れ、また、駆動回路43において、電圧は、FET64及び63を介してモータ53に供給され、これによって、モータ電流I
3が当該モータを流れる。3つのモータが同じである場合、これらに対して同じレベルの電圧が供給されるため、これらのモータは、略同じ速度で回転する。しかしながら、これらの負荷は互いに異なりうるため、電流I
1、I
2、及びI
3も異なる場合がある。これは、電流I
1、I
2、I
3、及び総電流I
sumを時間の関数で示す
図8において、時刻t
0に示されている。同図から分かるように、総電流I
sumは、I
1+I
2+I
3に等しいので、上述したように、シャント抵抗器46、及び電圧測定装置47によって測定された電流I
sumは、リニアアクチュエータにおける3つの駆動回路全て、及びこれに対応するモータによって引き込まれる総電流である。
【0041】
複数のモータのうちの1つによって引き込まれる電流を特定するために、コントローラ15は、シャント抵抗器46及び電圧測定装置47によって電流測定が行われている間、他の2つの駆動回路及びモータが電源から電流を引き込まないように制御するよう構成することができる。これは、
図9に示すように実行することができる。駆動回路42において、FET58がオフに切り替えられ、この代わりにFET59がオンに切り替えられる。この結果、FET58及び60の両方がオフ状態となるので、モータ52が電源から切断され、この駆動回路によって電源から引き込まれる電流がなくなる。モータ52の誘導特性により、当該モータに電流が流れ続けるが、この電流は、FET59及び61を循環するため、駆動回路42及びモータ52によって引き込まれる電流I
2はゼロになる。同様に、駆動回路43において、FET64がオフに切り替えられ、この代わりにFET65がオンに切り替えられると、モータ電流がFET63及び65を循環するため、駆動回路43及びモータ43によって引き込まれる電流I
3もゼロになる。
【0042】
なお、代替として、FET61及び63をオフに切り替えて、FET60及び62をオンに切り替えることにより、モータ52及び53のモータ電流が、それぞれFET58及び60、並びにFET62及び64を循環するようにしてもよい。
【0043】
この場合を
図8の時刻t
1に示す。t
1の少し前の時点において、
図9に示し、且つ上述したように、モータ52及び53が電源から切断されて、電流I
2及びI
3がゼロとなるため、総電流I
sumは、モータ51及び駆動回路41によって引き込まれる電流I
1と等しくなる。時刻t
1において、シャント抵抗器46及び電圧測定装置47による電流測定が行われ、I
sum=I
1の測定値がコントローラ15に渡される。測定が行われた後、コントローラ15は、再度、FET58及び62をオンに切り替えるとともに、FET59及び65をオフに切り替えることによって、
図7に示す状態を復元する。このようにすると、3つのリニアアクチュエータのうちの1つの電流I
1が、単一且つ共通の電流測定シャント抵抗器46によって測定される。
【0044】
時刻t1付近の短い期間においてモータ52及び53が電源から切断されることは、これらのモータにとって当然障害となるが、その期間は、数マイクロ秒(コントローラ15の実施態様による)と短い期間であるため、この障害は十分に許容の範囲内である。
【0045】
時刻t2において、モータ52及び駆動回路42によって引き込まれる電流I2も同様に、すなわち、時刻t2付近の短い期間にモータ51及び53を電源から切断することにより、測定することができる。これは、FET54及び64をオフに切り替えるとともに、FET55及び65をオンに切り替えることにより、電流I1及びI3がゼロになり、総電流Isumが、モータ52及び駆動回路42によって引き込まれる電流I2と等しくなるようにすることで実現される。同様に、モータ53及び駆動回路43によって引き込まれる電流I3は、時刻t3付近の短い期間にモータ51及び52を電源から切断することによって測定することができる。
【0046】
複数の電流測定の間の期間、すなわち、時刻t1とt2との間の期間、及び時刻t2とt3との間の期間は、特定のアクチュエータシステムのニーズ、及びコントローラ15の特定の実施態様に従って設定することができる。典型的なアクチュエータシステムにおいては、複数の測定間の間隔を1ミリ秒に設定すると適切であろう。上記測定は、当然繰り返して行うことが可能であり、上述したシステムにおいて、例えば、I3を測定してから1ミリ秒後に電流I1を再度測定することができる。これは、各モータの電流が、3ミリ秒の測定間隔をおいて測定されることを意味する。
【0047】
コントローラ15は、上述した測定中に当該コントローラ15に供給されるI1、I2、及びI3の測定値と、モータ51、52、及び53の各々に予め設定された対応する最大電流制限値とを比較することができる。複数のモータのうちの1つについての測定電流値(すなわち、I1、I2、又はI3)が、対応する制限値を超える場合、当該モータに過度な負荷がかかっていることを意味する。このため、コントローラ15は、モータの測定電流値がその制限値を超えている場合、そのモータのスイッチを切るように構成することができる。したがって、例えば、I2が対応する制限値を超えている場合、モータ52をオフにすることができる。これは、FET58をオフに切り替えるとともに、FET59をオンに切り替えることによって実現することができる。このようにして、上記モータの過負荷を回避することができる。
【0048】
上述した方法はまた、リニアアクチュエータのモータが、上述したようなDC電圧に代えてAC電圧によって駆動されている場合にも採用することができる。ただし、この場合、測定とAC電圧の周波数とを同期することによって、50Hzの周波数について、例えば、複数の測定間に20ミリ秒の間隔をおいて測定を実行することにより、全ての測定値を比較可能にすると好適であろう。また、ACモータの場合、駆動回路は、上述したHブリッジ駆動回路とは異なる。
【0049】
図10は、パルス幅変調電圧でモータを制御する場合に、単一且つ共通の電流測定シャント抵抗器46により、
図6、7、及び9に示す3つのリニアアクチュエータのうちの1つの電流消費を測定する方法を示している。
図8と同様に、
図10は、モータ51、52、及び53によって電源から引き込まれる電流I
1、I
2、及びI
3、並びに総電流I
sumを示している。なお、電流測定の際、リニアアクチュエータの複数のモータは、複数の異なるデューティ比で制御されてもよく、さらに、複数の異なる変調周波数を有していてもよい。したがって、
図10において、モータ51及び52の変調周波数は、62.5μsの期間に対応する16kHzに設定される一方で、モータ53の変調周波数は、83.3μsの期間に対応する12kHzに設定される。3つのモータのデューティ比は、それぞれ50%、62.5%、及び25%で示されている。各パルスにおいて、モータが電源から引き込む電流は増大する。この点で、パルスにおける電流は、直線的に増大するとみなされる。パルス間の休止期間中、電流は、その誘導特性によりモータ内を流れ続けるが、例えば、駆動回路42について
図9に示したように、この電流は、FET59及び61を循環し、電源から引かれるものではない。この電流は、直線的に減少するとみなされており、
図10において破線で示されている。モータ51に関して、モータにおける平均電流I
1,avgを
図10に示す。
【0050】
この例においても、コントローラ15は、複数のモータのうちの1つによって引き込まれる電流を測定するように構成することができ、当該測定は、シャント抵抗器46及び電圧測定装置47によって電流測定が行われている間、他の2つの駆動回路及びモータが電源から電流を引き込まないように制御することによって行われる。これは、
図9に関連して説明したように行うことができる。この場合を
図10の時刻t
1に示す。t
1の少し前の時点において、上述したように、モータ52及び53が制御されて、電源から切断される。この場合、他の2つのモータのうちの一方又は両方がt
1付近においてパルス休止状態にあり、既に電源から切断されている可能性がある。したがって、コントローラ15は、電流測定が実行されるまでこれらのモータが切断された状態が確実に維持されるようにする。これは、
図10のモータ53の例で示されており、同例において、電流I
3が、パルス休止によりt
1付近において既にゼロである。
【0051】
電流I
2及びI
3がゼロになるので、総電流I
sumは、モータ51及び駆動回路41によって引き込まれる電流I
1と等しくなる。時刻t
1において、シャント抵抗器46及び電圧測定装置47による電流測定が行われ、I
sum=I
1の測定値がコントローラ15に渡される。測定が行われた後、コントローラ15は、モータ52及び53が、これらのパルス変調に従って再度電源から電流を引き込むことを許容することで、元の状態に復元する。
図10において、中断されたモータ52のパルスは、僅かに低いレベルで継続される一方で、モータ53のパルス休止は、次のパルスが開始するまで継続される。このようにすると、3つのリニアアクチュエータのうちの1つの電流I
1が、単一且つ共通の電流測定シャント抵抗器46によって測定される。なお、電流I
1の測定が行われる時刻t
1は、モータ51のPWMパルス中に設定する必要がある。パルス休止中に測定が実行された場合、電流はゼロになる。
【0052】
便宜上、電流I
1の測定時刻t
1は、
図10に示すように、モータ51のPWMパルスの中間に設定してもよい。これは、その時点におけるI
1の測定値が、その平均値I
1,avgと等しく、当該測定値が、モータにおける平均電流を示しているからである。
【0053】
時刻t1付近の短い期間においてモータ52及び53が電源から切断されることは、追加のパルス休止とみなされるため、当然これらのモータのパルス幅変調の障害となる。ただし、この期間は、数マイクロ秒(コントローラ15の実施態様による)と短い期間であるため、この障害は十分に許容の範囲内である。
【0054】
図10に示されていない時刻t
2において、上記方法と同様にしてモータ52及び駆動回路42によって引き込まれる電流I
2を測定することができる。すなわち、時刻t
2付近の短い期間に電源からモータ51及び53を切断して、電流I
1及びI
3をゼロにし、総電流I
sumがモータ52及び駆動回路42によって引き込まれる電流I
2と等しくなるようにして、測定することが可能である。同様に、モータ53及び駆動回路43によって引き込まれる電流I
3は、時刻t
3付近の短い期間にモータ51及び52を電源から切断することによって測定することができる。
【0055】
パルス変調システムにおいてもまた、複数の電流測定の間の間隔、すなわち、時刻t1とt2との間の間隔、及び時刻t2とt3との間の間隔は、特定のアクチュエータシステムのニーズ、及びコントローラ15の特定の実施態様に従って設定することができる。典型的なアクチュエータシステムにおいては、複数の測定間の間隔を1ミリ秒に設定すると適切であろう。上記測定は、当然繰り返して行うことが可能であり、上述したシステムにおいて、例えば、I3を測定してから1ミリ秒後に電流I1を再度測定することができる。これは、各モータの電流が、3ミリ秒の間隔をおいて測定されることを意味する。
【0056】
コントローラ15は、上述した測定中に当該コントローラ15に供給されるI1、I2、及びI3の測定値を、モータ51、52、及び53の制御におけるフィードバック信号として用いることができる。したがって、各モータを制御するパルス幅変調電圧のデューティ比は、コントローラ15に保存された制御プログラムに従って、対応する測定電流値によって調節することができる。I1、I2、及びI3の測定値はまた、モータ51、52、及び53の各々に予め設定された対応する最大電流制限値と比較することができる。複数のモータのうちの1つについての測定電流値(すなわち、I1、I2、又はI3)が、対応する制限値を超える場合、当該モータに過度な負荷がかかっていることを意味する。このため、コントローラ15は、モータの測定電流値がその制限値を超えている場合、そのモータのデューティ比を下げるか、或いはそのモータのスイッチを切るように構成することができる。したがって、例えば、I2が対応する制限値を超えている場合、モータ52をオフにすることができる。このようにして、上記モータの過負荷を回避することができる。
【0057】
上述の例において、コントロールボックス37のコントローラ15は、3つの駆動回路41、42、及び43を介して3つのリニアアクチュエータ31、32、及び33のモータを制御するように構成されている。ただし、これらの個数は、単なる例として使用されている。より一般的には、上記方法は、単一の電流測定シャント抵抗器、及びこれに対応する電圧測定装置のみを用いて、同じ電源から供給される複数のモータにおける個々のモータの電流消費を測定することができる。したがって、コントローラによって制御されるモータの数は2つのみであってもよいし、4つ又はそれ以上であってもよい。
図11及び12は、4つのモータが2つの駆動回路を介して制御される例を示す。
【0058】
図11においては、2つのモータ71及び72が、駆動回路68によって制御され、2つのモータ73及び74が、駆動回路69によって制御されている。各駆動回路は、3つのハーフブリッジに配置された6つのFETを含む。したがって、駆動回路68においては、モータ71及び72を駆動するために6つのFET75、76、77、78、79、及び80が配置されている。このようにすると、2つのモータを駆動するために8つのFETが必要な
図7に示す駆動回路と比較して、2つのFETを省くことができる。当然ながら、これは、モータの回転方向にいくつかの制限が課されることを意味する。例えば、
図11に示すように、FET75及び78を介してモータ71を駆動している場合、短絡を避けるためにFET77をオフにして、FET79及び78のみを介してモータ72を駆動する必要がある。ただし、多くの用途においてはこれが十分に許容可能な場合もあり、一例として、高さ調節が可能な病院のベッドやテーブルなどの、その両端が通常は同時に昇降されるものなどがある。
図11には、モータ71及び72のそれぞれを流れる電流I
1及びI
2が示されている。駆動回路69においても同様に、モータ73及び74を駆動するために6つのFET81、82、83、84、85、及び86が配置されている。
図11はまた、FET83、82、及び86によって駆動されるモータ73及び74を流れる電流I
3及びI
4を示す。
【0059】
複数のモータのうちの1つによって引き込まれる電流を特定するために、コントローラ15は、上記例と同様に、シャント抵抗器46及び電圧測定装置47によって電流測定が行われている間、他のモータが電源から電流を引き込まないように制御するよう構成することができる。これは、
図12に示すように実行することができる。駆動回路68において、FET79がオフに切り替えられ、この代わりにFET80がオンに切り替えられる。これによって、モータ72は電源から切断され、当該モータによって電源から引き込まれる電流がなくなる。モータ72の誘導特性により、当該モータに電流が流れ続けるが、この電流は、FET78及び80を循環するため、モータ72によって引き込まれる電流I
2はゼロになる。同様に、駆動回路69において、FET83がオフに切り替えられ、この代わりにFET84がオンに切り替えられると、モータ73におけるモータ電流がFET82及び84を循環し、モータ74におけるモータ電流がFET86及び84を循環する。したがって、モータ73及び74によって引き込まれるそれぞれの電流I
3及びI
4もまたゼロになる。
【0060】
なお、駆動回路69においては、代替として、FET82及び86をオフに切り替えて、FET81及び85をオンに切り替えることにより、モータ73及び74のモータ電流が、それぞれFET81及び83、並びにFET85及び83を循環するようにしてもよい。
【0061】
この状態は、第4の電流I
4がさらに流れていることを除けば、
図8及び10に示す時刻t
1に示す状態に対応している。t
1の少し前において、
図12に示し、且つ上述したように、モータ72、73、及び74が電源から切断されて、電流I
2、I
3、及びI
4がゼロとなるため、総電流I
sumは、駆動回路68におけるモータ71によって引き込まれる電流I
1と等しくなる。時刻t
1において、シャント抵抗器46及び電圧測定装置47による電流測定が行われ、I
sum=I
1の測定値がコントローラ15に渡される。測定が行われた後、コントローラ15は、再度、FET79及び83をオンに切り替えるとともに、FET80及び84をオフに切り替えることによって、
図11に示す状態を復元する。このようにすると、4つのリニアアクチュエータのうちの1つの電流I
1が、単一且つ共通の電流測定シャント抵抗器46によって測定される。
【0062】
またこの例においても、時刻t1付近の短い期間においてモータ72、73、及び74が電源から切断されることは、これらのモータにとって当然障害となるが、その期間は、数マイクロ秒(コントローラ15の実施態様による)と短い期間であるため、この障害は十分に許容の範囲内である。
【0063】
上述した例において、電気モータは、可逆式モータが必要なリニアアクチュエータシステムで使用される。しかしながら、電気モータを使用するいくつかの他のシステム、例えば、冷却ファンシステムなどにおいては、モータが一方向に回転できれば十分であり、この場合には、より単純な駆動回路を使用することができる。そのようなシステム87の例を
図13及び14に示す。上述したような複数の電気モータから選択された1つのモータにおける電流を測定する方法は、上記システムにおいても採用することができる。
【0064】
図13において、コントローラ15は、FET94、95、及び96を介して3つの電気モータ91、92、及び93を制御するように配置されている。モータを流れる電流I
1、I
2、及びI
3は、3つのモータの全てが動作している状況で示されている。フリーランニングダイオード(free-running diodes)97、98、及び99は、例えば、パルス幅変調システムのパルス休止中においてもモータ電流が循環し続けることができるようにする。
図13において、シャント抵抗器46を流れる電流I
sumは、3つの電流I
1、I
2、及びI
3の合計と等しい。
【0065】
このシステムにおける複数のモータのうちの1つによって引き込まれる電流を特定するために、コントローラ15は、上記例と同様に、シャント抵抗器46及び電圧測定装置47によって電流測定が行われている間、他のモータが電源から電流を引き込まないように制御するよう構成することができる。これは、
図14に示すように、FET95及び96をオフに切り替えて、モータ92及び93を電源から切断し、これらのモータにより電源から電流が引き込まれないようにすることによって実現することができる。モータ92及び93の誘導特性により、これらのモータに電流が流れ続けるが、この電流は、フリーランニングダイオード98及び99を循環するため、電源から引かれる電流I
2及びI
3はゼロになる。
【0066】
この状態は、
図8及び10の時刻t
1に示す状態に対応している。t
1の少し前の時点において、
図14に示し、且つ上述したように、モータ92及び93が電源から切断されて、電流I
2及びI
3がゼロとなるため、総電流I
sumは、モータ91によって引き込まれる電流I
1と等しくなる。時刻t
1において、シャント抵抗器46及び電圧測定装置47による電流測定が行われ、I
sum=I
1の測定値がコントローラ15に渡される。測定が行われた後、コントローラ15は、再度、FET95及び96をオンに切り替えることによって、
図13に示す状態を復元する。このようにすると、例えば冷却ファンシステムなどにおける3つのモータのうちの1つの電流I
1が、単一且つ共通の電流測定シャント抵抗器46によって測定される。
【0067】
シャント抵抗器46の両端に接続されるとともに、シャント抵抗器46を流れる電流に関する情報をコントローラ15に送信する電圧測定装置47は、複数の異なるやり方で実施可能である。
図15には従来の実施態様が示されており、同図においては、シャント抵抗器46における電圧が、電界効果トランジスタ101によってサンプリングされ、抵抗器103を介してコンデンサ102に供給される。次に、コンデンサ102の電圧が、増幅器104によって増幅されて、コントローラ15のマイクロコンピュータ105の入力端子に供給される。マイクロコンピュータ105においては、受信された信号が、アナログ-デジタル変換器(図示略)においてアナログ信号からデジタル信号に変換される。これによって、上述したように、マイクロコンピュータ105によって受信信号を処理することが可能となり、また、当該信号をモータの制御に使用することが可能となる。
【0068】
しかしながら、シャント抵抗器46の抵抗を適切に設定すれば、
図16に示すように、マイクロコンピュータ105の入力端子に対して当該シャント抵抗器における電圧を直接供給することができる。この解決策は、シャント抵抗器46からマイクロコンピュータ105の入力端子までの信号経路がより高い帯域幅を有するという点で有利であり、これは、
図10に示すように、他のモータが電源から切断されている期間である、例えばt
1付近の短い期間を縮める上で有効である。上述したように、この期間は、数マイクロ秒と短い。一例として、シャント抵抗器46の抵抗は、40mΩに設定することができる。
【0069】
マイクロコンピュータ105の入力端子におけるアナログ-デジタル変換器は、典型的には、3.3V/40mΩ=82.5Aのシャント抵抗器46における最大電流に対応する3.3ボルトの全電圧測定範囲(フルスケール)を有しうる。この範囲は、同例においては十分とみなされる。アナログ-デジタル変換器が、1024レベルに対応する10ビットの分解能を有する場合、電圧分解能は、シャント抵抗器46の80mAに対応する3.2mVとなり、アナログ-デジタル変換器が、4096レベルに対応する12ビットの分解能を有する場合、電圧分解能は、シャント抵抗器46の20mAに対応する0.8mVとなる。この分解能もまた、説明した用途において十分であるとみなされる。
【0070】
シャント抵抗器46からマイクロコンピュータ105の入力端子までの信号経路の帯域幅は、さらに改善することができる。これは、ある小さいインダクタンスが常にシャント抵抗器46と直列に存在しているからであって、この状態は、抵抗器とインダクタとで構成されたRL回路とみなすことができる。RL回路の3dBの帯域幅を超えると、インピーダンスが大きくなる。これは、所定の電流値についてシャント抵抗器46において測定された電圧についても同様である。なお、3dBの帯域幅は、RL回路の時定数τによって決定される(f3dB=1/2πτ)。この時定数τは、τ=L/Rshuntで定義され、Lは、シャント抵抗器46と直列の小さいインダクタンスを表す。
【0071】
これは、
図17に示すように、コンデンサ106と抵抗器107とを含むRC回路を追加することにより補償することができる。RC回路の時定数τは、τ=RCとして定義され、Rは抵抗器107の抵抗を表し、Cは、コンデンサ106の容量を表す。RC回路が、シャント抵抗器46のRL回路と同じ時定数τ、すなわちRC=L/R
shunt、を有するように設計されている場合、シャント抵抗器46と直列のインダクタンスの効果が補償され、帯域幅が大幅に増える。
【0072】
一例として、40mΩのシャント抵抗器と直列の小さいインダクタンスは、約40nHと推定され、RL回路の時定数τ=1μsになる。これに対応するRC回路の時定数τは、例えば、R=100Ω且つC=10nF、又は、R=1kΩ且つC=1nFで実現可能である。
【0073】
上述した例において、電流Isumは、電気モータと直列に挿入された電流測定シャント抵抗器46によって測定される。しかしながら、電流を測定するために他の技術を用いることも可能である。そのような技術のうちのいくつかを以下で説明する。一例として、電流計を使用することが可能であるが、これは、当該電流計が、測定した電流値を示す信号をコントローラ15に送信可能な出力を有することを条件とする。場合によっては、測定する電流の特性に応じて電流測定変圧器を使用することが可能である。また、ホール効果電流センサ変換器を使用することも可能である。これらのセンサは、DC電流を感知することが可能であり、典型的には、150kHz前後の周波数まで動作する。電流の測定に適した他のタイプのセンサには、磁気抵抗フィールド電流センサがある。これらのセンサのタイプのうちのいくつかは、集積回路として市場で入手可能である。
【0074】
図18は、上述したように、共通電源に接続され、当該電源から電力を供給される複数の電気モータのうちの選択された1つを流れる電流を特定するための方法のフローチャート200を示す。ステップ201において、例えば
図9、12、及び14に関連して説明したように、選択されていない電気モータを、電源14から一時的に切断するように制御する。ステップ202において、電流測定装置46による電流測定が行われる。この時点において、選択されていない電気モータは、電源14から一時的に切断されているため、この電流測定値は、例えば
図9及び10に示すように、選択された電気モータを流れる電流を示す。最後に、ステップ203において、電流測定が行われた後、選択されていない電気モータを電源14に再接続するようにこれらの電気モータを再び制御する。
【0075】
すなわち、本開示は、電源に接続されるとともに当該電源から電力供給される複数の電気モータのうちの選択された1つを流れる電流を特定するための方法に関し、前記電源と前記複数の電気モータとの間の接続部には、電流測定装置が配置されている。前記方法は、選択されていない電気モータを、前記電源から一時的に切断するように制御するステップと、前記選択されていない電気モータが前記電源から一時的に切断されている間、前記電流測定装置によって、前記選択された電気モータを流れる電流を示す電流測定を行うステップと、前記電流測定が行われた後、前記選択されていない電気モータを前記電源に再接続するように当該電気モータを制御するステップと、を含む。
【0076】
前記電源と前記電気モータとの間に配置された共通の電流測定装置によって電流測定が実行されている間、1つの電気モータ以外の全ての電気モータを前記電源から一時的に切断することにより、測定された総電流が、切断されていないモータにより引き込まれる電流と等しくなる。このようにすると、1つの電流測定装置のみを使用して、個々のモータにより引き込まれる電流を測定することができるため、追加のコストの発生や、複数の電流測定装置のためにコントローラの空間を増やす必要性を回避することができる。個々のモータの電流消費を知ることにより、あるモータが、過負荷により当該モータの個別の最大電流値を超えている場合、当該モータをオフに切り替えることができ、また、個々のモータを、それぞれの電流消費に応じて制御することが可能になる。
【0077】
測定される電流は、複数のリニアアクチュエータのうちの選択された1つにおける電気モータを流れる電流であってもよく、各リニアアクチュエータは、可逆式電気DCモータと、前記可逆式電気DCモータによって駆動されるスピンドルと、前記スピンドルに取り付けられるとともに回転しないように固定されたスピンドルナットと、を含み、前記スピンドルナットは、2つのリミット位置間を移動するように配置されている。
【0078】
いくつかの実施形態においては、前記方法は、前記電気モータの各々と直列に配置された少なくとも1つの電子スイッチを切り替えることにより、当該電気モータを駆動するステップを含む。
【0079】
前記方法は、前記選択されていない電気モータと直列の前記少なくとも1つの電子スイッチのうちの少なくとも1つをオフに切り替えることによって、前記電源から前記選択されていない電気モータを一時的に切断するステップを含みうる。前記電気モータを駆動するために既に配置されている電子スイッチを使用して、選択されていない電気モータを前記電源から一時的に切断することにより、この目的のために新たなコンポーネントを追加する必要がなくなる。
【0080】
いくつかの実施形態において、前記方法は、可変デューティ比を有するパルス幅変調電圧を用いて前記電気モータを駆動するステップを含む。このようにすると、電気モータを制御する際に好適であり、特に、同じ電源から複数のモータに電力を供給する場合に好適である。この場合、前記方法は、前記選択された電気モータを駆動する前記パルス幅変調電圧のパルスの中間において前記電流測定を実行するステップを含みうる。前記パルスの中間において、前記電流は、前記モータの平均電流と等しい。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記選択された電気モータを流れる電流を示す測定電流によって、前記選択された電気モータを駆動する前記パルス幅変調電圧の前記デューティ比を調節するステップを含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、前記方法は、前記選択された電気モータを流れる電流を示す前記測定電流が所定の最大値を超える場合、前記選択された電気モータをオフに切り替えるステップを含む。
【0082】
本発明はまた、システムに関し、当該システムは、電源と、前記電源に接続されるとともに、当該電源から電力供給される複数の電気モータと、コントローラと、前記コントローラの制御下で前記電気モータを駆動するように構成された少なくとも1つの駆動回路と、を含む。前記システムは、前記電源と前記複数の電気モータとの間の接続部に配置された電流測定装置をさらに含み、前記コントローラは、前記電気モータのうちの選択された1つを流れる電流を測定するべく、選択されていない電気モータを、前記電源から一時的に切断するように制御し、前記選択されていない電気モータが前記電源から一時的に切断されている間、前記電流測定装置によって、前記選択された電気モータを流れる電流を示す電流測定を行い、前記電流測定が行われた後、前記選択されていない電気モータを前記電源に再接続するように当該電気モータを制御するように構成されている。
【0083】
前記電源と前記電気モータとの間に配置された共通の電流測定装置によって電流測定が実行されている間、1つの電気モータ以外の全ての電気モータを前記電源から一時的に切断するように前記コントローラを構成することにより、測定された総電流が、切断されていないモータにより引き込まれる電流と等しくなる。このようにすると、1つの電流測定装置のみを使用して、個々のモータにより引き込まれる電流を測定することができるため、追加のコストの発生や、複数の電流測定装置のためにコントローラの空間を増やす必要性を回避することができる。個々のモータの電流消費を知ることにより、あるモータが、過負荷により当該モータの個別の最大電流値を超えている場合、当該モータをオフに切り替えることができ、また、個々のモータを、それぞれの電流消費に応じて制御することが可能になる。
【0084】
前記システムは、複数のリニアアクチュエータを含むアクチュエータシステムであってもよく、各リニアアクチュエータは、可逆式電気DCモータと、前記可逆式電気DCモータによって駆動されるスピンドルと、前記スピンドルに取り付けられるとともに回転しないように固定されたスピンドルナットと、を含み、前記スピンドルナットは、2つのリミット位置間を移動するように配置されている。前記アクチュエータシステムは、少なくとも、前記電源、前記コントローラ、及び前記少なくとも1つの駆動回路を含むコントロールボックスと、複数のケーブルと、を含んでもよく、各ケーブルは、前記リニアアクチュエータのうちの1つを、前記コントロールボックスにおいて対応する駆動回路に接続する。これに代えて、前記システムは、同じ電源に接続されるとともに当該電源から電力供給される1つ以上の他の電気モータと組み合わせて、1つ以上のリニアアクチュエータを含んでもよい。
【0085】
いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つの駆動回路は、複数の電子スイッチを含み、前記電気モータの各々は、前記複数の電子スイッチのうちの少なくとも1つと直列に配置されており、前記少なくとも1つの駆動回路は、前記コントローラの制御下で、各電気モータと直列の前記少なくとも1つの電子スイッチを切り替えることにより、当該電気モータを駆動するように構成されている。前記複数の電子スイッチは、電界効果トランジスタであってもよい。
【0086】
前記コントローラは、選択されていない電気モータと直列の前記少なくとも1つの電子スイッチのうちの少なくとも1つをオフに切り替えることによって、前記電源から前記選択されていない電気モータを一時的に切断するように構成されてもよい。前記電気モータを駆動するために既に配置されている電子スイッチを使用して、選択されていない電気モータを前記電源から一時的に切断することにより、この目的のために新たなコンポーネントを追加する必要がなくなる。
【0087】
いくつかの実施形態において、前記コントローラは、可変デューティ比を有するパルス幅変調電圧を用いて前記電気モータを駆動するように構成されている。このようにすると、電気モータを制御する際に好適であり、特に、同じ電源から複数のモータに電力を供給する場合に好適である。この場合、前記コントローラは、前記選択された電気モータを駆動する前記パルス幅変調電圧のパルスの中間において前記電流測定を実行するように構成されている。前記パルスの中間において、前記電流は、前記モータの平均電流と等しい。いくつかの実施形態において、前記コントローラは、前記選択された電気モータを流れる電流を示す測定電流によって、前記選択された電気モータを駆動する前記パルス幅変調電圧の前記デューティ比を調節するように構成されている。
【0088】
いくつかの実施形態において、前記コントローラは、前記選択された電気モータを流れる電流を示す前記測定電流が所定の最大値を超える場合、前記選択された電気モータをオフに切り替えるように構成されている。
【0089】
前記システムは、複数の駆動回路を含んでもよく、各駆動回路は、前記コントローラの制御下で前記電気モータのうちの1つを駆動するように構成されるとともに、4つの電子スイッチを含むHブリッジ駆動回路として構成される。
【0090】
これに代えて、前記システムは、3つのハーフブリッジに配置された6つの電子スイッチを有する少なくとも1つの駆動回路を含んでもよく、前記駆動回路は、前記コントローラの制御下で2つの電気モータを駆動するように構成されている。
【0091】
いくつかの実施形態において、前記電流測定装置は、電流測定シャント抵抗器であってもよく、前記コントローラは、前記電流測定シャント抵抗器における電圧を測定することにより前記電流測定を実行するように構成されてもよい。これは、電流を測定するための単純且つコスト効率の高い方法である。
【0092】
本開示はまた、コンピュータプログラムと、コンピュータ可読媒体に関し、前記コンピュータプログラムは、コンピュータ上で実行されたときに上述した方法のステップを実行するためのプログラムコード手段を含み、前記コンピュータ可読媒体には、コンピュータ上で実行されたときに上述した方法を実行するためのプログラムコード手段が保存されている。
【0093】
本発明の様々な実施形態を説明及び図示したが、本発明はこれらに限定されず、以下の特許請求の範囲に定義される主題の範囲内の他の方法で具現化することも可能である。