(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】灌流バイオリアクターシステムおよび灌流細胞培養方法
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20230306BHJP
C12M 3/02 20060101ALI20230306BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230306BHJP
C12M 1/12 20060101ALI20230306BHJP
C12N 5/07 20100101ALI20230306BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12M3/02
C12M1/00 D
C12M1/12
C12N5/07
(21)【出願番号】P 2020528304
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(86)【国際出願番号】 US2018062073
(87)【国際公開番号】W WO2019104071
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-11-12
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル,ライアン ローレン
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-530893(JP,A)
【文献】特開2010-029109(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0042253(US,A1)
【文献】特表平10-500286(JP,A)
【文献】国際公開第2017/112455(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/200888(WO,A1)
【文献】特表2016-523086(JP,A)
【文献】特表2009-517072(JP,A)
【文献】Conversion of Bioreactors to Continuous Perfusion Using Hollow Fiber Cell Separators, 1989, Retrieved from the Internet <URL:http://www.spectrumlabs.com/lit/CPAG.pdf>, [retrieved on 2022.09.12]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
灌流バイオリアクターシステムであって、
流体を受容するための内部区画を少なくとも部分的に画定する壁を有する容器と、
複数の外部供給源のうちの少なくとも1つに流体連通された少なくとも1つのポートと、
前記容器からの第1の出口および、前記容器への第1の入口を介して流体連通された
、第1の外部再循環ループを含む小孔膜装置と、
前記容器からの第2の出口および、前記容器への第2の入口を介して流体連通された、第2の外部再循環ループを含む大孔膜装置と、
を含
み、
前記小孔膜装置が、0.01μm~1.0μmの平均孔径を有する膜を含み、
前記大孔膜装置が、1μm~100μmの平均孔径を有する膜を含む、灌流バイオリアクターシステム。
【請求項2】
前記小孔膜装置が、細胞が膜を通過するのを防止する平均孔径を有する膜を含む、請求項1
記載の灌流バイオリアクターシステム。
【請求項3】
複数のポートをさらに含み、各ポートが前記複数の外部供給源のうちの1つに流体連通されている、請求項1
または2記載の灌流バイオリアクターシステム。
【請求項4】
共通配管マニホールドに流体連通された1つのポートをさらに含み、前記共通配管マニホールドが、前記複数の外部供給源に流体連通されている、
請求項1
または2記載の灌流バイオリアクターシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのポートと流体連通された無菌コネクタをさらに含む、
請求項1
または2記載の灌流バイオリアクターシステム。
【請求項6】
複数の出口をさらに含む、
請求項1から
5までのいずれか1項記載の灌流バイオリアクターシステム。
【請求項7】
灌流細胞培養方法であって、
細胞および細胞成長培地をバイオリアクターシステムの容器に添加するステップと、
溶解可能なマイクロキャリアを前記容器に添加するステップと、
前記容器から当該容器に流体連通された
小孔膜装置に培地を流すことにより、使用済の培地を除去するステップ
であって、前記小孔膜装置が、使用済の前記培地が通過できる程度に大きくかつ、前記細胞が通過するのを防止する程度に小さい平均孔径を有する膜を含むステップと、
除去された前記使用済の培地に取り換えて、新しい培地を前記容器に添加するステップと、
前記溶解可能なマイクロキャリアを溶解させるステップと、
前記容器から当該容器に流体連通された前記
小孔膜装置とは異なる大
孔膜装置に培地を流すことにより、溶解したマイクロキャリア材料を有する前記使用済の培地を前記容器から除去するステップ
であって、前記大孔膜装置が、使用済の前記培地が通過できる程度に大きくかつ、前記マイクロキャリアが通過するのを防止する程度に小さい平均孔径を有する膜を含むステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2017年11月22日に出願された米国仮特許出願第62/589,669号の優先権の利益を主張し、その内容は本明細書の依拠するところであり、以下に完全に記載されている場合、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、一般的には、灌流バイオリアクターシステムに関し、より詳細には、細胞をマイクロキャリアから分離し、灌流バイオリアクターシステム内の液体を交換するためのアセンブリを含む灌流バイオリアクターシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロキャリア細胞培養は、典型的にはバイオリアクター内で実施される。培養の間、細胞は、マイクロキャリアの表面上で成長する。細胞培養プロセスが完了すると、培養された細胞は、マイクロキャリアから切り離され、その後、細胞を含有する培養溶液は、使用またはさらなる処理のためにマイクロキャリアから分離させられる。
【0004】
切り離された細胞を含む培養溶液からマイクロキャリアを分離するための1つの従来技術として、この溶液を容器内で剛性メッシュスクリーンに通すことが挙げられる。スクリーンは、培養流体の通過を許容するが、マイクロキャリアの通過は阻止する。しかしながら、マイクロキャリアは、スクリーン上に蓄積すると、スクリーンを詰まらせ、流体のスクリーンの通過を妨げる。詰まったマイクロキャリアはまた、細胞を捕捉し、細胞のメッシュスクリーンの通過を妨げることがある。スクリーンが詰まると、プロセスは、スクリーンの詰まりがなくなるまで停止する。これらのプロセスステップは、高コストで時間がかかり得るため、マイクロキャリア細胞培養における細胞収量の低下の一因になるとも考えられている。さらに、メッシュスクリーンは個別のシステム構成要素であるため、培養溶液を、細胞培養プロセスが実施されている容器から輸送して、メッシュスクリーンに通過させる必要がある。当該輸送の結果、こうしたメッシュスクリーンは、細胞または細胞培養溶液を汚染するリスクを高める可能性がある。
【0005】
切り離された細胞を含む培養溶液からマイクロキャリアを分離するための幾つかの他の技術としては、例えば、示差勾配遠心分離、音響共鳴、接線流濾過、スピンフィルタ、および円錐または傾斜プレートを使用した沈降が挙げられる。これらの技術のほとんどは、高コストな資本設備を必要とするか、または操作が複雑である。切り離された細胞を含む培養溶液からマイクロキャリアを分離するための技術をもたらす、比較的複雑でない市販入手可能な装置の1つが、HyQ Harvestainerである。
【0006】
HyQ Harvestainerは、数百リットルの培地を収容することが可能であり、細胞、マイクロキャリアおよび培養培地を装置に通すポンプに基づく。より具体的には、HyQ Harvestainerは、濾過された培地用の出口を有するより大きな構造化された液体透過性バッグ内に、メッシュバッグを有する。マイクロキャリアは、繰り返し洗浄され、細胞は、外部のバイオリアクター内でマイクロキャリアから酵素により分離させられ、それから、細胞と、マイクロキャリアと、培地との溶液は、灌流させられてHyQ Harvestainer内に入り、これを通過する。マイクロキャリアは、HyQ Harvestainerの内部メッシュバッグ内に保持され、細胞および培地は、内部メッシュバッグを通過し、その後、構造化された外部バッグから出て、細胞収集容器に送られる。ここから分かるように、これらの必要なステップにより、HyQ Harvestainerの使用が煩雑になる。
【発明の概要】
【0007】
本開示の実施形態によれば、本明細書により灌流バイオリアクターシステムが提供される。灌流バイオリアクターシステムは、流体を受容するための内部区画を少なくとも部分的に画定する壁を有する容器と、複数の外部供給源のうちの少なくとも1つに流体連通された少なくとも1つのポートと、小孔膜装置に流体連通された少なくとも1つの出口とを含む。
【0008】
本開示の実施形態によれば、灌流細胞培養方法が提供される。当該方法は、細胞および細胞成長培地をバイオリアクターシステムの容器に添加するステップと、溶解可能なマイクロキャリアを容器に添加するステップとを含む。当該方法はさらに、容器から当該容器に流体連通された少なくとも1つの膜装置に培地を流すことにより、使用済の培地を除去するステップと、除去された使用済の培地に取り換えて、新しい培地を容器に添加するステップとを含む。さらに、当該方法は、溶解可能なマイクロキャリアを溶解させるステップと、容器から当該容器に流体連通された少なくとも1つの膜装置に培地を流すことにより、溶解したマイクロキャリア材料を有する使用済の培地を容器から除去するステップとを含む。
【0009】
さらなる特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載され、一部は、明細書から当業者に容易に明らかとなるか、または以下の詳細な説明を含む本明細書に記載の実施形態、特許請求の範囲ならびに添付の図面を実践することにより認識されるであろう。
【0010】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明のどちらも、単なる例示であり、特許請求の範囲の性質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供することを意図していると理解されたい。添付の図面は、さらなる理解をもたらすために同封されており、本明細書に組み込まれて、その一部を構成する。図面は、1つ以上の実施形態を図示しており、その説明とともに、様々な実施形態の原理および動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示は、純粋に非限定的な例として示される以下の説明および添付の図面から、より明確に理解されるであろう。
【
図1】本開示の実施形態に準拠した灌流バイオリアクターシステムを概略的に図示している。
【
図2】本開示の実施形態に準拠した灌流バイオリアクターシステムを概略的に図示している。
【
図3】本開示の実施形態に準拠した、灌流細胞培養方法を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
これより、添付の図面に図示される本実施形態(複数可)、例(複数可)を詳細に参照する。可能な限り、図面全体で同じ参照番号を使用して、同じまたは類似の部分を指すものとする。
【0013】
単数形「1つの(a,an)」および「その(the)」は、文脈から明らかにそうでないと示されない限り、複数の指示物を含む。同じ特性を表すすべての範囲の端点は、独立的に組み合わせ可能であり、言及した端点を含む。参考文献はすべて、参照により本明細書に組み込まれる。
【0014】
本明細書において使用する場合、「有する(have,having)」、「含む(include,including,comprise,comprising)」などは、それぞれ非限定的な意味で使用され、通常、「を含むが、これに限定されない」を意味する。
【0015】
本明細書に使用されている科学的および技術的な用語はすべて、特に別の規定のない限り、当技術分野で一般に使用されている意味を有する。本明細書において設ける定義は、本明細書で頻繁に使用する特定の用語の理解を容易にするためのものであって、本開示の範囲を限定することを意味しない。
【0016】
本開示を、以下で、まず一般的に、それから幾つかの例示的な実施形態に基づいて詳細に説明する。個々の例示的な実施形態において互いに組み合わされて示される特徴は、すべてが実現される必要はない。特に、個々の特徴は、省略されてよく、または同じ例示的な実施形態、そうでなければ他の例示的な実施形態について示す他の特徴と何らかの他の手法で組み合わされてもよい。
【0017】
本開示の実施形態は、灌流バイオリアクターシステム、および灌流細胞培養方法に関する。本明細書に記載のシステムおよび方法では、溶解可能なマイクロキャリアおよび少なくとも1つの灌流膜装置を用いて、バイオリアクターシステムの単一の容器内で個別のシステムまたはハードウェアを使用して従来実施されていた幾つかの細胞培養プロセスの性能を促進する。したがって、本明細書に記載のシステムおよび方法は、細胞の成長と、成長表面からの細胞の分離と、システムからの細胞または他の細胞産物の回収とに関連するコストを効果的に削減する。したがって、バイオリアクターシステムの単一の容器内での細胞培養および分離プロセスの性能を促進することにより、本開示の実施形態は、最初のシステムまたは容器からの細胞の除去および後続のシステムまたは容器への細胞の輸送に関連する汚染リスクおよび細胞収量損失も低減させる。低減される汚染リスクの例としては、汚染物質での、例えば、様々なシステムもしくは容器の材料からの抽出物および浸出物での、ならびに/または様々なシステムもしくは容器の材料に由来し得る微粒子での、もしくは或るシステムもしくは容器から別のシステムもしくは容器への細胞もしくは細胞産物の輸送の間の環境に由来し得る微粒子での、細胞または細胞産物の潜在的な曝露が挙げられる。こうした汚染物質に曝されると、高価な下流製品が汚染されることがあり、汚染の結果、この製品を最終的に廃棄しなければならないことがある。
【0018】
本開示の実施形態は、溶解可能なマイクロキャリアによりもたらされる、細胞培養用途での特定の利点から利益を受ける。細胞培養の場合、ほとんどの哺乳動物細胞および特定の他の細胞は、成長可能なように足場依存性であるため、細胞接着表面上で細胞を成長させることが一般的である。接着細胞が高いコンフルエンスに到達し、したがって細胞間の接触阻害により細胞増殖を制限することのある平らな表面上での細胞培養とは対照的に、表面積/体積の比が高いマイクロキャリアは、回収される細胞、細胞ベース産物、または条件培地のいずれかが望ましい産物であり得る場合、効率的な細胞培養のスケールアップまたは拡張にとって魅力的なプラットフォームを示す。プラスチック材料から形成されるマイクロキャリアが、これまで細胞培養に使用されてきた一方で、溶解可能なマイクロキャリア、またはマイクロキャリアの表面から細胞を分離するために制御可能に溶解され得るマイクロキャリアは、細胞培養用途において特定の利点をもたらす。
【0019】
以下の検討でより明らかとなるように、本明細書に開示する溶解可能なマイクロキャリアは、溶解可能でありかつ不溶性であると説明される。本明細書で使用するように、「不溶性」なる用語は、例えば細胞培養培地を含む従来の細胞培養条件下で、可溶性ではなく、かつ固体のままである材料または材料組み合わせを指す。本明細書で使用するように、「溶解可能」なる用語は、材料または材料組み合わせが溶液となるべき条件に曝されると溶液となる材料または材料組み合わせを指す。非限定的な例によれば、材料または材料組み合わせは、材料または材料組み合わせを消化または分解する適切な濃度の酵素に曝されると消化され得る。代替的かつ非限定的な例によれば、材料または材料組み合わせは、或る温度範囲または或るpH値範囲に曝されると溶液となり得る。
【0020】
本開示の実施形態の溶解可能なマイクロキャリアは、例えば、米国特許出願公開第2016/0145567号明細書およびPCT出願公開第2016/200888号に開示されているものであってよく、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
本明細書に記載の溶解可能なマイクロキャリアは、少なくとも1つのイオノトロピックに架橋された多糖類を含み得る。多糖類は、例えば、ポリガラクツロン酸(PGA)としても知られるペクチン酸もしくはその塩、またはペクチニン酸として知られる部分的にエステル化されたペクチン酸もしくはその塩であり得る。溶解可能なマイクロキャリアを、細胞培養培地と接触させる際に架橋させて、その機械的強度を増大させ、マイクロキャリアの溶解を防止してもよい。架橋をイオノトロピックゲル化により実施してもよく、ここで、イオノトロピックゲル化は、高分子電解質を多価対イオンの存在下で架橋させて、架橋されたマイクロキャリアを形成する能力に基づく。いかなる特定の理論に縛られることを望むものでもないが、溶解可能なマイクロキャリアの多糖類のイオノトロピックゲル化は、二価カチオンと多糖類との間の強い相互作用の結果であると考えられる。
【0022】
本開示の実施形態によると、本明細書に記載の溶解可能なマイクロキャリアはさらに、接着ポリマーコーティングを含み得る。接着ポリマーはペプチドを含み得る。例示的なペプチドとしては、BSP、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ラミニン、I型およびIV型コラーゲン、変性コラーゲン(ゼラチン)、および類似したペプチド、ならびにこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。さらに、ペプチドは、RGD配列を有するものであり得る。コーティングは、例えば、Synthemax(登録商標)II-SC(Corning,Incorporated,Corning,NYから市販入手可能)であり得る。
【0023】
本明細書に記載の溶解可能なマイクロキャリアは、溶解可能なマイクロキャリア材料が溶液となるべき条件に曝されると溶解され得る。こうした条件は、例えば、或る温度範囲、或るpH値の範囲、または消化剤であり得る。1つの例として、溶解可能なマイクロキャリアは、マイクロキャリアを消化または分解する適切な酵素を含む消化剤に曝されると消化され得る。マイクロキャリアの消化、細胞の回収、またはこれら双方に適した非タンパク質分解酵素は、ペクチン質を加水分解する関連酵素の不均一群であるペクチン分解酵素またはペクチナーゼを含む。ペクチナーゼ(ポリガラクツロナーゼ)は、複雑なペクチン分子をより短い分子のガラクツロン酸に分解する酵素である。市販入手可能なペクチナーゼの供給源は、通常、多酵素であり、例えば、Pectinex(商標)ULTRA SP-L(Novozyme North American,Inc.,Franklinton,NCから市販入手可能)、アスペルギルスアクレアトゥス(Aspergillus aculeatus)の選択された株から作製されたペクチン分解酵素調製物である。Pectinex(商標)ULTRA SP-Lは、主に、ポリガラクツロナーゼ(EC3.2.1.15)、ペクチントランスエリミナーゼ(EC4.2.2.2)、およびペクチンエステラーゼ(EC:3.1.1.11)を含有する。ECなる表記は、酵素が触媒する化学反応に基づく、酵素についての酵素委員会(Enzyme Commission)の分類スキームである。
【0024】
本開示の実施形態によると、消化剤は、キレート剤も含み得る。例示的なキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、シクロヘキサンジアミン四酢酸(CDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、クエン酸、および酒石酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
図1は、本開示の実施形態に準拠した灌流バイオリアクターシステムを図示している。バイオリアクターシステム100は、流体を受容するための内部区画130を少なくとも部分的に画定する壁120を有する容器110を含む。容器110は、バイオプロセス用途の使い捨て製品に従来的に関連する材料から形成された柔軟な容器であり得る。容器110は、以下の群からの少なくとも1つのプラスチック材料を含むフィルムまたは積層体から形成され得る:ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフルオロアルコキシ(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、およびこれらの誘導体、あるいは、容器110は、例えば、高密度ポリプロピレン(HDPE)、超高分子量(UHMW)ポリエチレン、ポリプロピレン、EVA、LDPE、およびLLDPEなどであるが、これらに限定されない比較的剛性のプラスチック材料から形成された剛性容器であり得る。任意で、容器110は、ガラス、金属、または別の剛性材料から形成され得る。
【0026】
本明細書で使用されているように、「流体」なる用語は、流動可能な物質、例えば、液体、液体状懸濁物、ガス、ガス状懸濁物などを指すが、これらに限定されない。「流体および/または他の成分」なる用語は、本開示の全体にわたり、細胞成長のための栄養素を有する細胞培養培地と、細胞と、細胞培養プロセスの副産物と、バイオプロセスシステム内で従来的に添加または形成され得る他の生体物質または成分とを含み得る流体を指す。本明細書に記載の容器は、1種以上の細胞または試薬を含み得る。これらの容器は、バッファも含み得る。さらに、これらの容器は、細胞培養培地を含み得る。細胞培養培地は、例えば、糖、塩、アミノ酸、血清(例えば、ウシ胎児血清)、抗生物質、成長因子、分化因子、着色剤、または他の所望の因子であり得るが、これらに限定されない。容器内に用意され得る一般的な培養培地は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ハムF12栄養素混合物、最小必須培地(MEM)、RPMI培地などを含む。不死化細胞、初代培養細胞、がん細胞、幹細胞(例えば、胚性または人工多能性)などを含むがこれらに限定されない任意のタイプの培養細胞が、容器内に含まれ得る。細胞は、哺乳動物細胞、鳥類細胞、魚類細胞などであり得る。細胞は、腎臓、線維芽細胞、乳房、皮膚、脳、卵巣、肺、骨、神経、筋肉、心臓、大腸、膵臓、免疫(例えば、B細胞)、血液などを含むがこれらに限定されない任意の組織タイプのものであり得る。細胞は、分散体(例えば、播種したばかり)、コンフルエント、二次元、三次元、スフェロイドなどを含む任意の培養形態で容器中にあり得る。幾つかの実施形態において、細胞は、培地なしで存在する(例えば、凍結乾燥、保存剤、冷凍など)。以下でさらに詳細に論じるように、本明細書に記載の容器は、溶解可能なマイクロキャリアおよび/または溶解可能なマイクロキャリア材料も含み得る。
【0027】
相対寸法および絶対寸法の双方を含む容器110の寸法は変更可能であると理解すべきである。例えば、容器110は、流体および/または他の成分の体積を、約1.0mL(約1.0cm3)~約2,000L(約2,000×103cm3)の間に保つように構成することが可能である。例えば、容器110は、流体および/または他の成分の体積を、約100mL(約100cm3)、または約250mL(約250cm3)、または約500mL(約500cm3)、または約1.0L(約1.0×103cm3)、または5.0L(約5.0×103cm3)、または約10L(約10×103cm3)、または約50L(約50×103cm3)、または約100L(約100×103cm3)、または約250L(約250×103cm3)、またはさらには約500L(約500×103cm3)、1,000L(約1,000×103cm3)、1,500L(約1,500×103cm3)および2,000L(約2,000×103cm3)、ならびにこれらの間のすべての体積に保つように構成することが可能である。
【0028】
図1~
図2にさらに示されているように、容器110は、容器110の内部区画内に撹拌機140を含み得る。撹拌機140は、容器110の頂部から延在するシャフトであって、少なくとも1つのインペラをシャフト長さに沿って有し、また容器110の内部区画130内で少なくとも1つのインペラを回転させるように構成されたオーバーヘッドモータに結合されたシャフトを含んでいてよい。あるいは、撹拌機140は、容器110の頂部から延在するシャフトであって、シャフトの端部にパドルを有するシャフトを有していてもよい。シャフトは、容器110の中心の垂直軸に対してゼロ以外の角度で実質的に円形の経路でパドルを回転させるように構成されたオーバーヘッドモータに結合されている。こうしたパドルベースの撹拌機の例は、米国特許第9,168,497号明細書に示されている。別の代替として、撹拌機140は、容器110の頂部から延在するシャフトであって、パドルブレードがそれぞれ互いに90度で配置されたシャフトから延在してこれに隣接した4つのパドルブレードを有するシャフトを含んでいてもよい。4枚型パドルブレード撹拌機はさらに、磁気誘導により4枚型パドルブレード撹拌機を回転可能とする磁気撹拌棒を収容するように構成された入れ物を含む。こうした4枚型パドルブレード撹拌機の例は、米国特許第8,057,092号明細書に示されている。さらなる別の代替として、撹拌機140は、内部区画130の底部に配置された回転式インペラを含んでいてもよい。回転式インペラは、少なくとも部分的に磁性または強磁性であり、液体撹拌要素との磁気結合を形成するための回転駆動磁石構造、液体撹拌要素を回転および浮揚させるための電磁構造、または液体撹拌要素の浮揚および回転の双方のための超伝導要素を含む外部動力装置に磁気的に結合されていてもよい。こうした回転式インペラの例は、米国特許第7,481,572号明細書に示されている。
【0029】
本明細書に記載の撹拌機は、バイオリアクターシステム100の容器110の任意の特徴であり、撹拌は、容器110の内部区画130内に撹拌機を有しない本開示の実施形態に準拠したバイオリアクターシステム100の容器110内で実施されてもよいと理解すべきである。撹拌機を含まないバイオリアクターシステムの例は、容器が閉ループチャンバを含む振動バイオリアクターシステムであり、このシステムは、閉ループチャンバを、閉ループチャンバに対して垂直な軸に対して水平な軸に沿って双方向に動かし、閉ループチャンバ内の細胞および流体の対流を強制するように構成された振動機構を含む。こうした振動バイオリアクターシステムの例は、米国特許第9,217,129号明細書に示されている。撹拌機を含まないバイオリアクターシステムの別の例は、ウェーブバイオリアクターシステムであり、ここでは、容器が、予め設定された角度および予め設定されたロッキング速度で容器を前後に運動させるロッキングプラットフォーム上に配置された枕型容器が挙げられる。ロッキング運動により、培養培地内に波が誘発され、この波により、容器内での撹拌および酸素輸送が促進される。こうしたウェーブバイオリアクターシステムは、当業者によく知られているが、一般的には、例えば米国特許第6,190,913号明細書に記載されている。
【0030】
容器110は、密閉されており、流体および/または他の成分を導入または回収するための1つ以上の開口部を有し得る。容器110が1つ以上の開口部を含む場合、1つ以上の開口部がシールを含むことができ、このシールは、第1の構成において、開口部を介した外部の容器と容器110の内部区画130との間の無菌流体連通に1つ以上の開口部を曝す。第2の構成において、シールは、1つ以上の開口部を閉じ、開口部を介した容器110の外部と容器110の内部区画130との間の流体連通を防止または低減する。シールは、クランプ、テープ、キャップ、溶接端部を有する管部分、ジッパー、スライドジッパー、インターロック構造またはカップリング構造、無菌コネクタなどを含むがこれらに限定されない所望の形状を取ることができる。
【0031】
1つの例として、
図1~
図2は、少なくとも1つのポート150を有する、本開示の実施形態に準拠した容器110を示す。少なくとも1つのポート150は、容器110の頂部に配置されていても、または容器110の側壁に配置されていてもよい。少なくとも1つのポート150は、流体および/または他の成分の少なくとも1つの外部供給源に取り付け可能である。外部供給源は、例えば、柔軟なまたは剛性の容器であってもよく、管溶接コネクタ、無菌コネクタまたは他のタイプのコネクタを含むがこれらに限定されない任意のタイプの接続により、容器110と接続可能かつ分離可能である。任意で、容器110は、複数の外部供給源のうちの1つにそれぞれ接続された複数のポートを含み得る。あるいは、複数の外部供給源は、少なくとも1つのポート150に取り付けられた配管とそれ自体が流体連通した共通配管マニホールドに流体連通されていてもよい。さらなる別の代替として、無菌コネクタは、少なくとも1つのポート150に配置されていてよく、またはこれと流体連通されていてもよい。こうした無菌コネクタは、バイオリアクターシステム100内の無菌条件を維持しながら、第1の外部供給源をコネクタから分離し、続いて、後続の外部供給源をコネクタに接続することができる。外部供給源は、細胞培養培地、溶解可能なマイクロキャリア、細胞、消化剤、回収製剤、および最終製剤のうちの1つを含み得る。
【0032】
図1はさらに、複数の出口160、170を有する容器110を図示している。
図1に示されるように、出口160は、小孔膜装置200に流体連通されていてよく、出口170は、細胞回収ライン400に流体連通されていてよい。
図2は、大孔膜装置300に流体連通された出口180をさらに含む代替的な容器110を図示している。小孔膜装置200および大孔膜装置300は、例えば、特定の物質を通す一方で他の物質を保持することが可能な膜を含み得る。通常、各膜装置200、300の膜を通過するのに十分小さな物質は、廃棄物とみなされて容器110の外部に配置された廃棄物容器に廃棄されるものであり得る。しかしながら、例えば抗体またはウィルスであるがこれらに限定されない、各膜装置200、300の膜を通過するのに十分小さな特定の細胞産物は、下流での処理または使用のために容器110の外部に配置された容器内に収集すべき産物であると考えられ得ると理解すべきである。
図1~
図2に示されるように、小孔膜装置200は、容器110に並行して動作する外部再循環ループを含んでいてよく、大孔膜装置300は、容器110に並行して動作し、かつ小孔膜装置200を有する再循環ループとは別の外部再循環ループを含んでいてよい。各膜装置200、300の膜を通過するには大き過ぎる物質は、容器110内に保持され得る。膜装置200、300が外部再循環ループを含む場合、各膜装置200、300の膜を通過するには大き過ぎる物質は、再循環ループの入口(すなわち、小さな膜装置200からの入口260および大きな膜装置300からの入口280)を介して容器110に返送され得る。あるいは、各膜装置200、300の膜を通過するには大き過ぎる物質は、容器110の各出口160、180を介して逆方向に容器110に返送され得る。膜を通過する物質または膜を通らない物質は、一般的に、流体および/または他の成分を膜の表面に複数回流した後の膜の濾過能力を表すと理解すべきである。したがって、幾つかの要因の結果、流体および/または他の成分を膜の表面に流す任意の単一のステップでは、膜を通過するのに十分小さな物質は、膜を通らないことがあり、代わりに、容器110の内部区画130に返送されることがある。しかしながら、流体および/または他の成分を膜の表面に流すステップの数が増えるほど、膜を通過するのに十分小さな物質が実際に膜を通過する可能性が増大する。
【0033】
膜装置200、300は、例えば、中空繊維フィルタ、接線流濾過装置などであり得る。通常、大孔膜装置300は、約1μm~約100μmの平均孔径を有する膜を含み、小孔膜装置200は、約0.1μm~約1μmの平均孔径を有する膜を含み得る。
【0034】
大孔膜装置300の平均孔径は、細胞老廃物(例えば、組み換えタンパク質、抗体、ウィルス粒子、DNA、RNA、糖、脂質、バイオディーゼル、無機粒子、ブタノール、代謝副産物)を有する使用済の培地が膜を通過できる程度に十分に大きいが、溶解可能なマイクロキャリアが膜を通過するのを防止し、溶解可能なマイクロキャリアを容器110内に保持する程度に十分に小さい。通常、流体および/または他の成分は、溶解可能なマイクロキャリアの表面上の細胞を増殖させるプロセスの間に、出口180から大孔膜装置300に送られ得る。
【0035】
小孔膜装置200の平均孔径は、細胞老廃物を有する使用済の培地が膜を通過できる程度に十分に大きいが、細胞が膜を通過するのを防止し、細胞を容器110内に保持する程度に十分に小さい。小孔膜装置200の平均孔径は、細胞の保持が最適となるように、細胞のサイズに合わせて調整可能である。通常、流体および/または他の成分は、溶解可能なマイクロキャリアが溶解した後に、出口160から小孔膜装置200に送られ得る。さらに、流体および/または他の成分は、通常、細胞産物をバイオリアクターシステム100から収集するプロセスにおいて細胞の増殖が完了した後に、出口170から細胞回収ライン400に送られ得る。
【0036】
図1~
図2は、3つの出口を有する容器110を図示している。しかしながら、本開示の実施形態による容器110は、これに限定されず、容器110が小孔膜装置200および任意で大孔膜装置300に流体連通されている限り、任意の数の出口を有し得ると理解すべきである。例えば、容器110は管に流体連通された1つの出口を含むことができ、この管は、出口から、管が少なくとも2つのチャネルに分割されて、この少なくとも2つのチャネルのうちの一方が小孔膜装置200に流体連通され、かつこの少なくとも2つのチャネルのうちの他方が細胞回収ライン400に流体連通される領域へと延在する。管はさらに、少なくとも2つのチャネルのうちの一方へ流体および/または他の成分の流れを向かわせ、かつ少なくとも2つのチャネルのうちの他方への流体および/または他の成分の流れを制限する、1つの弁または複数の弁を含む。
【0037】
本開示の実施形態はさらに、灌流細胞培養方法に関する。
図3は、本開示の実施形態による例示的な灌流細胞培養方法を図示している。こうした灌流細胞培養方法は、本明細書に記載されており、かつ
図1~
図2に図示されている灌流バイオリアクターシステム100を用いて実施可能である。本明細書で使用されているように、「灌流」なる用語は、さらなる新しい培地または濃縮された栄養溶液が、ある期間にわたり連続的にまたはある期間にわたり断続的に培養に供給され、同時に使用済の培地が除去される、細胞を培養するステップを指す。新しい培地は、培養プロセスの間に消耗した細胞のために栄養補助をもたらすことが一般的である。灌流により、細胞老廃物および回収副産物、例えば、溶解したマイクロキャリア材料をバイオリアクターから除去することもできる。
【0038】
本明細書に記載の灌流細胞培養方法500は、細胞および細胞成長培地をバイオリアクターシステム100の容器110に添加するステップ502を含み得る。本明細書に記載の灌流細胞培養方法500はさらに、溶解可能なマイクロキャリアをバイオリアクターシステム100の容器110に添加するステップ504を含み得る。バイオリアクターシステムにおける実質的なコンフルエンスを促進するのに十分な溶解可能なマイクロキャリアが添加される限り、任意の量の溶解可能なマイクロキャリアを容器110に添加することができる。本明細書で使用されているように、「コンフルエント」および「コンフルエンス」なる用語は、細胞が密着単細胞層を細胞培養基質の表面(すなわち、溶解可能なマイクロキャリアの表面)上に形成し、これにより実質的にすべての利用可能な表面が使用される際の条件を指すために使用される。例えば、「コンフルエント」とは、すべての細胞がその周囲全体で他の細胞と接触しており、利用可能な基質が覆われている状態と定義されている。本開示の目的について、「実質的にコンフルエント」なる用語は、隙間は残り得るものの、細胞が溶解可能なマイクロキャリアの表面と概ね接触しており、これにより約70%超、または約80%超、または約90%超の利用可能な表面が使用される際の条件を指すために使用される。「利用可能な表面」なる用語は、細胞を収容するのに十分な表面積を意味する。したがって、さらなる細胞を収容することのできない、隣接した細胞間の小さな隙間は、「利用可能な表面」を構成しない。
【0039】
細胞、培地および溶解可能なマイクロキャリアがバイオリアクターシステム100に添加された後に、容器110内で細胞の成長が起こり、これは、細胞が溶解可能なマイクロキャリア表面を占めるまで、細胞が溶解可能なマイクロキャリア上で実質的にコンフルエントになるまで、または細胞がさらなる成長を補助する培地の容量を上回るまで続く。培地の容量の超過は、細胞が培地中の栄養素を消費し、廃棄物が生成された結果であるが、これは、細胞の成長、細胞の健康および/または細胞の機能に対して直接的な悪影響を与え得る。
【0040】
以下の灌流細胞培養方法500についての検討から明らかになるように、容器110内での細胞の成長および増殖は、廃棄物を含有する培地を除去し、除去された培地に取り換えて、新しい培地を添加することにより継続し得る。通常、灌流細胞培養方法500は、容器110内での培地体積の著しい変化なしに実施可能である。あるいは、灌流細胞培養方法500は、容器110内の培地体積がこの方法の実施中に所定の時間で増加するように実施することができる。
【0041】
本開示の実施形態によると、本明細書に記載の灌流細胞培養方法500はさらに、バイオリアクターシステム100の容器110から膜装置200、300に培地を流すことにより、使用済の培地を容器110から除去するステップ506を含み得る。任意で、バイオリアクターシステム100の容器110から膜装置200、300に培地を流すステップは、容器110から当該容器110に流体連通された外部再循環ループに培地を圧送するステップを含んでいてよく、ここで、培地は膜に接触する。膜装置200、300は、溶解可能なマイクロキャリアを容器110内に保持しながら、細胞産物を有する使用済の培地が大孔膜を通過することを許容する。使用済の培地を容器110から除去するステップ506と同時に、またはこれに続いて、本明細書に記載の灌流細胞培養方法500はさらに、新しい培地を容器110に添加するステップ508を含み得る。容器110に添加される新しい培地の体積は、大孔膜装置300を介して除去される使用済の培地の体積におよそ等しい。
【0042】
使用済の培地が新しい培地と交換される速度または灌流の速度は、細胞の効率的な成長に適した任意の速度であり得る。例えば、灌流の速度は、約0.1の容器体積交換/日(vessel volume exchanges per day:vvd)~約20vvd、または約0.5vvd~約10vvd、またはさらには約0.5vvd~約2.5vvdであり得る。灌流の速度は、ある期間にわたり一定であってよく、または灌流の経過期間にわたり変化(すなわち、上昇または低下)してよく、またはこれらの任意の組み合わせであってもよい。さらに、灌流の速度の上昇または低下は、経時的な定常的変化、例えば灌流期間中の定常的上昇、または一連の経時的な変化、例えば一連の定常的変化、一連の段階的変化(例えば、灌流の速度は、段階的に上昇または低下させることができる)、またはこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない、当技術分野において公知の任意の手法で適用することができる。灌流期間の開始および停止のタイミング、ならびに灌流の任意の変化のタイミングは、例えば、設定された時間もしくは間隔で、またはバイオリアクターシステム100内で条件の幾つかのパラメータを監視することに基づいて、予め決定することが可能である。灌流は、連続的または断続的に適用することが可能である。本明細書で使用されているように、連続的な灌流は、1日24時間にわたり連続的に実施される。あるいは、断続的な灌流が、1日のうちの一部だけ実施される(例えば、1日4時間、6時間、8時間または10時間の灌流)。断続的な灌流では、より高い速度の培地の添加/除去を使用し、新しい培地の添加と、細胞産物を有する使用済の培地の除去とをほぼ同じ程度に実施することができる。
【0043】
本開示の実施形態によると、本明細書に記載の灌流細胞培養方法500はさらに、溶解可能なマイクロキャリアを溶解させるステップ510を含み得る。溶解可能なマイクロキャリアを溶解させるステップ510は、溶解可能なマイクロキャリアが溶液となるべき条件にマイクロキャリアを曝すステップを含む。溶解可能なマイクロキャリアを溶解させるステップ510により、細胞が、溶解可能なマイクロキャリアの表面から容器110の培地に放出される。1つの例として、溶解可能なマイクロキャリアを溶解させるステップ510は、消化剤を容器110に添加するステップ510を含み得る。消化剤は、先に記載の酵素を、約1U(約1.66666667×10-8Katal)~約200U(約3.33333334×10-6Katal)の濃度で含み得る。例えば、消化剤は、約2U(約3.33333334×10-8Katal)~約150U(約2.500000005×10-6Katal)、または約5U(約8.33333335×10-8Katal)~約100U(約1.66666667×10-6Katal)、またはさらには約10U(約1.66666667×10-7Katal)~約75U(約1.2500000025×10-6Katal)、およびこれらの間のすべての値を含み得る。消化剤は、キレート剤も含み得る。消化剤は、先に記載のキレート剤を、約1mM~約200mMの濃度で含み得る。例えば、消化剤は、約10mM~約150mM、または約20mM~約100mM、またはさらには約25mM~約50mM、およびこれらの間のすべての値のキレート剤濃度を含み得る。
【0044】
溶解可能なマイクロキャリアが本明細書に記載のように完全に溶解される時間は、約1時間未満であり得る。例えば、溶解可能なマイクロキャリアが完全に溶解される時間は、約45分未満、または約30分未満、または約15分未満、または約1分~約25分、または約3分~約20分、またはさらには約5分~約15分であり得る。本明細書で使用されているように、「完全に溶解」なる用語は、マイクロキャリア材料が、モノマー形態、ダイマー形態またはオリゴマー形態のうちの少なくとも1つで溶液中にあることを指す。
【0045】
溶解可能なマイクロキャリアを溶解させるステップ510の後に、本明細書に記載の灌流細胞培養方法500はさらに、培地をバイオリアクターシステム100の容器110から小孔膜装置200に培地を流すことにより、溶解したマイクロキャリア材料を有する使用済の培地およびバッファを容器110から除去するステップ512を含み得る。任意で、溶解したマイクロキャリア材料を有する使用済の培地を容器110から除去するステップ512は、容器110から当該容器110に流体連通された外部再循環ループに培地を圧送するステップを含んでいてよく、ここで、培地は小孔膜に接触する。小孔膜装置200は、細胞を容器110内に保持しながら、細胞老廃物を有する使用済の培地が小孔膜を通過することを許容する。細胞老廃物に加えて、残りの消化剤および溶解したマイクロキャリア材料も、小孔膜を通過し、容器110から除去することができる。溶解したマイクロキャリア材料を有する使用済の培地およびバッファを容器110から除去するステップ512と同時に、またはこれに続いて、本明細書に記載の灌流細胞培養方法500はさらに、新しい培地を容器110に添加するステップ514を含み得る。容器110に添加される新しい培地の体積は、小孔膜装置200を介して除去される使用済の培地の体積におよそ等しい。
【0046】
図3に示しているように、本明細書に記載の灌流細胞培養方法500は、任意で、溶解可能なマイクロキャリア(培地ありまたはなし)をバイオリアクターシステム100の容器110に繰り返し添加するステップ504を含み得る。特に、溶解可能なマイクロキャリアを溶解させるステップ510の後に、さらなるマイクロキャリアを容器110に添加することができ、細胞のさらなる成長および増殖が、後から添加される溶解可能なマイクロキャリアの表面上で進行し得る。別の選択肢として、本明細書に記載の灌流細胞培養方法500は、溶解可能なマイクロキャリアを溶解させるステップ510の前に、溶解可能なマイクロキャリア(さらなる培地ありまたはなし)をバイオリアクターシステム100の容器110に繰り返し添加するステップ504を含み得る。本方法をこうした手法で実施する場合、最初に添加される溶解可能なマイクロキャリアから続いて添加されるマイクロキャリアへの細胞のマイクロキャリア間輸送を利用することができる。マイクロキャリア間輸送を利用すると、細胞が成長可能な表面積がより大きくなり、有益である。溶解可能なマイクロキャリアを添加するステップ504が繰り返され、培地を添加するステップを含む場合、容器110内の培地体積の合計が増加し得る。こうした体積増加により、より多くの数の溶解可能なマイクロキャリアが容器110内にあることを可能にでき、細胞成長のために、より大きな体積の培地およびより大きな表面積をもたらすことができる。
【0047】
溶解したマイクロキャリア材料を有する使用済の培地を容器110から除去するステップ512の後に、本明細書に記載の灌流細胞培養方法500はさらに、細胞または細胞産物を含有する溶液を容器110内に形成するステップ516を含み得る。溶液が形成されると、本方法はさらに、細胞または細胞産物を含有する溶液を容器110から除去するステップ518を含み得る。溶液を形成するステップ516は、容器110からの除去後の細胞または細胞産物の意図した使用に基づいて選択されるバッファを添加するステップを含み得る。例えば、バッファは、濾過、捕捉およびクロマトグラフィー操作を含む下流の処理ステップが実行可能なままとなるように、細胞または細胞産物のための環境(例えば、pH条件)を維持する回収バッファであり得る。別の例として、バッファは、製剤バッファであってよく、または容器110から除去された後に細胞または細胞産物を治療用途で使用できるようにする組成物であってもよい。溶液を形成するステップ516は、細胞が容器110から除去された後に凍結保存可能であるように、凍結保護物質を容器110に添加するステップ、または細胞または細胞産物を凍結損傷から保護するために使用される組成物を容器110に添加するステップも含み得る。有利には、本開示の実施形態により、さらなる培地を容器110に添加することなく、溶解したマイクロキャリア材料を有する使用済の培地を容器110から除去するステップ512が可能になる。これに代えて、実質的にすべての使用済の培地を除去し、その後、容器110内の細胞または細胞産物を、個別のシステムまたは容器内で再懸濁すべき細胞または細胞産物を収集する必要なく、溶液に再濃縮することができる。
【0048】
本開示の態様(1)によれば、灌流バイオリアクターシステムが提供される。当該システムは、流体を受容するための内部区画を少なくとも部分的に画定する壁を有する容器と、複数の外部供給源のうちの少なくとも1つに流体連通された少なくとも1つのポートと、小孔膜装置に流体連通された少なくとも1つの出口とを含む。
【0049】
本開示の態様(2)によれば、小孔膜装置が、少なくとも1つの出口に流体連通された外部再循環ループを含む、態様(1)記載のシステムが提供される。
【0050】
本開示の態様(3)によれば、小孔膜装置が、細胞が膜を通過するのを防止する平均孔径を有する膜を含む、態様(1)または(2)記載のシステムが提供される。
【0051】
本開示の態様(4)によれば、小孔膜装置が、約0.01μm~約1.0μmの平均孔径を有する膜を含む、態様(1)から(3)までのいずれか1つ記載のシステムが提供される。
【0052】
本開示の態様(5)によれば、少なくとも1つの出口に流体連通された大孔膜装置をさらに含む、態様(1)から(4)までのいずれか1つ記載のシステムが提供される。
【0053】
本開示の態様(6)によれば、大孔膜装置が、少なくとも1つの出口に流体連通された外部再循環ループを含む、態様(5)記載のシステムが提供される。
【0054】
本開示の態様(7)によれば、大孔膜装置が、溶解可能なマイクロキャリアが膜を通過するのを防止する平均孔径を有する膜を含む、態様(5)または(6)記載のシステムが提供される。
【0055】
本開示の態様(8)によれば、大孔膜装置が、約1μm~約100μmの平均孔径を有する膜を含む、態様(5)から(7)までのいずれか1つ記載のシステムが提供される。
【0056】
本開示の態様(9)によると、複数のポートを含み、各ポートが複数の外部供給源のうちの1つに流体連通されている、態様(1)から(8)までのいずれか1つ記載のシステムが提供される。
【0057】
本開示の態様(10)によれば、共通配管マニホールドに流体連通された1つのポートを含み、共通配管マニホールドが、複数の外部供給源に流体連通されている、態様(1)から(8)までのいずれか1つ記載のシステムが提供される。
【0058】
本開示の態様(11)によれば、少なくとも1つのポートと流体連通された無菌コネクタをさらに含む、態様(1)から(8)までのいずれか1つ記載のシステムが提供される。
【0059】
本開示の態様(12)によれば、複数の出口を含む、態様(1)から(11)までのいずれか1つ記載のシステムが提供される。
【0060】
本開示の態様(13)によれば、容器が、プラスチックフィルムまたはプラスチック積層体を含む柔軟な容器である、態様(1)から(12)までのいずれか1つ記載のシステムが提供される。
【0061】
本開示の態様(14)によれば、柔軟な容器が、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフルオロアルコキシ(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、およびこれらの誘導体から成る群より選択される少なくとも1つのプラスチック材料を含む、態様(13)記載のシステムが提供される。
【0062】
本開示の態様(15)によれば、容器が剛性容器である、態様(1)から(12)までのいずれか1つ記載のシステムが提供される。
【0063】
本開示の態様(16)によれば、剛性容器が、高密度ポリプロピレン(HDPE)、超高分子量(UHMW)ポリエチレン、ポリプロピレン、EVA、LDPE、およびLLDPEから成る群より選択される少なくとも1つのプラスチック材料を含む、態様(15)記載のシステムが提供される。
【0064】
本開示の態様(17)によれば、剛性容器がガラスを含む、態様(15)記載のシステムが提供される。
【0065】
本開示の態様(18)によれば、灌流細胞培養方法が提供される。当該方法は、細胞および細胞成長培地をバイオリアクターシステムの容器に添加するステップと、溶解可能なマイクロキャリアを容器に添加するステップと、容器から当該容器に流体連通された少なくとも1つの膜装置に培地を流すことにより、使用済の培地を除去するステップと、除去された使用済の培地に取り換えて、新しい培地を容器に添加するステップと、溶解可能なマイクロキャリアを溶解させるステップと、容器から当該容器に流体連通された少なくとも1つの膜装置に培地を流すことにより、溶解したマイクロキャリア材料を有する使用済の培地を容器から除去するステップとを含む。
【0066】
本開示の態様(19)によれば、使用済の培地を除去するステップが、容器から当該容器に流体連通された大孔膜装置に培地を流すステップを含む、態様(18)記載の方法が提供される。
【0067】
本開示の態様(20)によれば、溶解したマイクロキャリア材料を有する使用済の培地を除去するステップが、容器から当該容器に流体連通された小孔膜装置に培地を流すステップを含む、態様(18)または(19)記載の方法が提供される。
【0068】
本開示の態様(21)によれば、細胞または細胞産物を含有する溶液を容器内で形成するステップをさらに含む、態様(18)から(20)までのいずれか1つ記載の方法が提供される。
【0069】
本開示の態様(22)によれば、溶液を形成するステップが、回収バッファを容器に添加するステップを含む、態様(21)記載の方法が提供される。
【0070】
本開示の態様(23)によれば、溶液を形成するステップが、製剤バッファを容器に添加するステップを含む、態様(21)記載の方法が提供される。
【0071】
本開示の態様(24)によれば、溶液を形成するステップが、凍結保護物質を容器に添加するステップを含む、態様(21)記載の方法が提供される。
【0072】
本開示の態様(25)によれば、細胞または細胞産物を含有する溶液を容器から除去するステップをさらに含む、態様(21)から(24)までのいずれか1つ記載の方法が提供される。
【0073】
本開示の態様(26)によれば、溶解可能なマイクロキャリアを溶解させる前に、使用済の培地を除去するステップと、除去された使用済の培地に取り換えて、新しい培地を容器に少なくとも2回添加するステップとを含む、態様(18)から(25)までのいずれか1つ記載の方法が提供される。
【0074】
本開示の態様(27)によれば、溶解したマイクロキャリア材料を有する除去された使用済の培地に取り換えて、新しい培地を容器に添加するステップをさらに含む、態様(18)から(26)までのいずれか1つ記載の方法が提供される。
【0075】
本開示の態様(28)によれば、溶解可能なマイクロキャリアを溶解させるステップが、消化剤を容器に添加するステップを含む、態様(18)から(27)までのいずれか1つ記載の方法が提供される。
【0076】
本開示の態様(29)によれば、消化剤が非タンパク質分解酵素を含む、態様(28)記載の方法が提供される。
【0077】
本開示の態様(30)によれば、消化剤が、約1U(約1.66666667×10-8Katal)~約200U(約3.33333334×10-6Katal)の非タンパク質分解酵素濃度を含む、態様(28)または(29)記載の方法が提供される。
【0078】
本開示の態様(31)によれば、消化剤がキレート剤を含む、態様(28)から(30)までのいずれか1つ記載の方法が提供される。
【0079】
本開示の態様(32)によれば、消化剤が、約1mM~約200mMのキレート剤濃度を含む、態様(31)記載の方法が提供される。
【0080】
本開示の態様(33)によれば、溶解可能なマイクロキャリアを溶解させるステップが、溶解可能なマイクロキャリアを約1時間未満で完全に溶解させるステップを含む、態様(18)から(32)までのいずれか1つ記載の方法が提供される。
【0081】
本開示の態様(34)によれば、溶解可能なマイクロキャリアを溶解させるステップが、溶解可能なマイクロキャリアを約15分未満で完全に溶解させるステップを含む、態様(18)から(33)までのいずれか1つ記載の方法が提供される。
【0082】
本開示の態様(35)によれば、溶解可能なマイクロキャリアを溶解させるステップが、溶解可能なマイクロキャリアを約1分~約25分で完全に溶解させるステップを含む、態様(18)から(34)までのいずれか1つ記載の方法が提供される。
【0083】
本開示の態様(36)によれば、溶解したマイクロキャリア材料を有する使用済の培地を除去するステップに続いて、溶解可能なマイクロキャリアを容器に添加するステップをさらに含む、態様(18)から(35)までのいずれか1つ記載の方法が提供される。
【0084】
本開示の態様(37)によれば、溶解可能なマイクロキャリアを溶解させるステップの前に、さらなる溶解可能なマイクロキャリアを容器に添加するステップをさらに含む、態様(18)から(36)までのいずれか1つ記載の方法が提供される。
【0085】
本開示の態様(38)によれば、約0.1~約20の容器体積交換/日を含む、態様(18)から(37)までのいずれか1つ記載の方法が提供される。
【0086】
本開示の態様(39)によれば、約0.5~約10の容器体積交換/日を含む、態様(18)から(38)までのいずれか1つ記載の方法が提供される。
【0087】
本開示の態様(40)によれば、約0.5~約2.5の容器体積交換/日を含む、態様(18)から(39)までのいずれか1つ記載の方法が提供される。
【0088】
本開示は限られた数の実施形態を含むが、当業者であれば、本開示の恩恵を受けて、本開示の範囲から逸脱しない他の実施形態が考案可能であると理解するであろう。
【0089】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0090】
実施形態1
灌流バイオリアクターシステムであって、
流体を受容するための内部区画を少なくとも部分的に画定する壁を有する容器と、
複数の外部供給源のうちの少なくとも1つに流体連通された少なくとも1つのポートと、
小孔膜装置に流体連通された少なくとも1つの出口と
を含む、灌流バイオリアクターシステム。
【0091】
実施形態2
前記小孔膜装置が、前記少なくとも1つの出口に流体連通された外部再循環ループを含む、実施形態1記載の灌流バイオリアクターシステム。
【0092】
実施形態3
前記小孔膜装置が、細胞が膜を通過するのを防止する平均孔径を有する膜を含む、実施形態1または2記載の灌流バイオリアクターシステム。
【0093】
実施形態4
前記小孔膜装置が、約0.01μm~約1.0μmの平均孔径を有する膜を含む、実施形態1から3までのいずれか1つ記載の灌流バイオリアクターシステム。
【0094】
実施形態5
前記少なくとも1つの出口に流体連通された大孔膜装置をさらに含む、実施形態1から4までのいずれか1つ記載の灌流バイオリアクターシステム。
【0095】
実施形態6
前記大孔膜装置が、前記少なくとも1つの出口に流体連通された外部再循環ループを含む、実施形態5記載の灌流バイオリアクターシステム。
【0096】
実施形態7
前記大孔膜装置は、溶解可能なマイクロキャリアが膜を通過するのを防止する平均孔径を有する膜を含む、実施形態5または6記載の灌流バイオリアクターシステム。
【0097】
実施形態8
前記大孔膜装置が、約1μm~約100μmの平均孔径を有する膜を含む、実施形態5から7までのいずれか1つ記載の灌流バイオリアクターシステム。
【0098】
実施形態9
複数のポートを含み、各ポートが前記複数の外部供給源のうちの1つに流体連通されている、実施形態1から8までのいずれか1つ記載の灌流バイオリアクターシステム。
【0099】
実施形態10
共通配管マニホールドに流体連通された1つのポートを含み、前記共通配管マニホールドが、前記複数の外部供給源に流体連通されている、実施形態1から8までのいずれか1つ記載の灌流バイオリアクターシステム。
【0100】
実施形態11
前記少なくとも1つのポートと流体連通された無菌コネクタをさらに含む、実施形態1から8までのいずれか1つ記載の灌流バイオリアクターシステム。
【0101】
実施形態12
複数の出口をさらに含む、実施形態1から11までのいずれか1つ記載の灌流バイオリアクターシステム。
【0102】
実施形態13
前記容器が、プラスチックフィルムまたはプラスチック積層体を含む柔軟な容器である、実施形態1から12までのいずれか1つ記載の灌流バイオリアクターシステム。
【0103】
実施形態14
前記柔軟な容器が、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフルオロアルコキシ(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、およびこれらの誘導体から成る群より選択される少なくとも1つのプラスチック材料を含む、実施形態13記載の灌流バイオリアクターシステム。
【0104】
実施形態15
前記容器が剛性容器である、実施形態1から12までのいずれか1つ記載の灌流バイオリアクターシステム。
【0105】
実施形態16
前記剛性容器が、高密度ポリプロピレン(HDPE)、超高分子量(UHMW)ポリエチレン、ポリプロピレン、EVA、LDPE、およびLLDPEから成る群より選択される少なくとも1つのプラスチック材料を含む、実施形態15記載の灌流バイオリアクターシステム。
【0106】
実施形態17
前記剛性容器がガラスを含む、実施形態15記載の灌流バイオリアクターシステム。
【0107】
実施形態18
灌流細胞培養方法であって、
細胞および細胞成長培地をバイオリアクターシステムの容器に添加するステップと、
溶解可能なマイクロキャリアを前記容器に添加するステップと、
前記容器から当該容器に流体連通された少なくとも1つの膜装置に培地を流すことにより、使用済の培地を除去するステップと、
除去された前記使用済の培地に取り換えて、新しい培地を前記容器に添加するステップと、
前記溶解可能なマイクロキャリアを溶解させるステップと、
前記容器から当該容器に流体連通された前記少なくとも1つの膜装置に培地を流すことにより、溶解したマイクロキャリア材料を有する前記使用済の培地を前記容器から除去するステップと
を含む、方法。
【0108】
実施形態19
前記使用済の培地を除去するステップが、前記容器から当該容器に流体連通された大孔膜装置に培地を流すステップを含む、実施形態18記載の方法。
【0109】
実施形態20
前記溶解したマイクロキャリア材料を有する前記使用済の培地を除去するステップが、前記容器から当該容器に流体連通された小孔膜装置に培地を流すステップを含む、実施形態18または19記載の方法。
【0110】
実施形態21
細胞または細胞産物を含有する溶液を前記容器内で形成するステップをさらに含む、実施形態18から20までのいずれか1つ記載の方法。
【0111】
実施形態22
溶液を形成するステップは、回収バッファを前記容器に添加するステップを含む、実施形態21記載の方法。
【0112】
実施形態23
溶液を形成するステップは、製剤バッファを前記容器に添加するステップを含む、実施形態21記載の方法。
【0113】
実施形態24
溶液を形成するステップは、凍結保護物質を前記容器に添加するステップを含む、実施形態21記載の方法。
【0114】
実施形態25
細胞または細胞産物を含有する前記溶液を前記容器から除去するステップをさらに含む、実施形態21から24までのいずれか1つ記載の方法。
【0115】
実施形態26
前記溶解可能なマイクロキャリアを溶解させる前に、前記使用済の培地を除去するステップと、除去された前記使用済の培地に取り換えて、新しい培地を前記容器に少なくとも2回添加するステップとを含む、実施形態18から25までのいずれか1つ記載の方法。
【0116】
実施形態27
前記溶解したマイクロキャリア材料を有する除去された前記使用済の培地に取り換えて、新しい培地を前記容器に添加するステップをさらに含む、実施形態18から26までのいずれか1つ記載の方法。
【0117】
実施形態28
前記溶解可能なマイクロキャリアを溶解させるステップが、消化剤を前記容器に添加するステップを含む、実施形態18から27までのいずれか1つ記載の方法。
【0118】
実施形態29
前記消化剤が非タンパク質分解酵素を含む、実施形態28記載の方法。
【0119】
実施形態30
前記消化剤が、約1U(約1.66666667×10-8Katal)~約200U(約3.33333334×10-6Katal)の非タンパク質分解酵素濃度を含む、実施形態28または29記載の方法。
【0120】
実施形態31
前記消化剤がキレート剤を含む、実施形態28から30までのいずれか1つ記載の方法。
【0121】
実施形態32
前記消化剤が、約1mM~約200mMのキレート剤濃度を含む、実施形態31記載の方法。
【0122】
実施形態33
前記溶解可能なマイクロキャリアを溶解させるステップが、前記溶解可能なマイクロキャリアを約1時間未満で完全に溶解させるステップを含む、実施形態18から32までのいずれか1つ記載の方法。
【0123】
実施形態34
前記溶解可能なマイクロキャリアを溶解させるステップが、前記溶解可能なマイクロキャリアを約15分未満で完全に溶解させるステップを含む、実施形態18から33までのいずれか1つ記載の方法。
【0124】
実施形態35
前記溶解可能なマイクロキャリアを溶解させるステップが、前記溶解可能なマイクロキャリアを約1分~約25分で完全に溶解させるステップを含む、実施形態18から34までのいずれか1つ記載の方法。
【0125】
実施形態36
前記溶解したマイクロキャリア材料を有する前記使用済の培地を除去するステップに続いて、前記溶解可能なマイクロキャリアを前記容器に添加するステップをさらに含む、実施形態18から35までのいずれか1つ記載の方法。
【0126】
実施形態37
前記溶解可能なマイクロキャリアを溶解させるステップの前に、さらなる溶解可能なマイクロキャリアを前記容器に添加するステップをさらに含む、実施形態18から36までのいずれか1つ記載の方法。
【0127】
実施形態38
約0.1~約20の容器体積交換/日を含む、実施形態18から37までのいずれか1つ記載の方法。
【0128】
実施形態39
約0.5~約10の容器体積交換/日を含む、実施形態18から38までのいずれか1つ記載の方法。
【0129】
実施形態40
約0.5~約2.5の容器体積交換/日を含む、実施形態18から39までのいずれか1つ記載の方法。