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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】穴あけ装置及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   B67B 7/52 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
B67B7/52
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020556686
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2019038902
(87)【国際公開番号】W WO2020095580
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2018211755
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594162412
【氏名又は名称】株式会社平山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】吉永 千佳士
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-103997(JP,A)
【文献】特開2016-173259(JP,A)
【文献】特開2017-019028(JP,A)
【文献】特開2019-123039(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0226786(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67B 7/52
B26D 3/00
B26F 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のウェルを持つマイクロプレートに貼着されて前記複数のウェルを密閉するシール材に対し前記ウェルごとに貫通孔を形成する穴あけ装置であって、
前記マイクロプレートにおける前記シール材側の上面に対向配置される平面部と、前記平面部から突設されるとともに先端が針状に形成された複数の突起部とを有する穴あけ治具と、
前記マイクロプレートの前記上面と前記穴あけ治具の前記平面部との間に配置される板状の押上げ面部と、前記押上げ面部と連続して設けられ前記マイクロプレートよりも外側に突設された操作面部とを有し、前記操作面部に入力された押圧力により前記押上げ面部が前記穴あけ治具を前記マイクロプレートから離隔させるリムーバー治具と、を備えた
ことを特徴とする、穴あけ装置。
【請求項2】
前記リムーバー治具は、前記マイクロプレートの前記上面の外周部に沿う環状に形成され、複数の前記押上げ面部及び前記操作面部を有する
ことを特徴とする、請求項1記載の穴あけ装置。
【請求項3】
前記リムーバー治具は、
前記マイクロプレートに対する前記リムーバー治具の位置を定める壁部と、
前記壁部における前記マイクロプレート側を向く内面から直交方向に延在する板状であり、前記マイクロプレートの前記上面側と前記穴あけ治具の前記平面部との間に挟持される固定部と、
前記固定部から離隔するとともに前記固定部と同一平面上に位置する板状であり、前記押上げ面部及び前記操作面部からなる押上げ部と、
前記固定部と前記操作面部とを連結するとともに前記固定部と同一平面上に位置する板状の連結部と、を有する
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の穴あけ装置。
【請求項4】
前記連結部は、前記操作面部の外端部に連結されたクランク形状である
ことを特徴とする、請求項3記載の穴あけ装置。
【請求項5】
前記穴あけ治具は、前記壁部に当接して前記リムーバー治具に対する前記穴あけ治具の位置を定める位置決め部を有する
ことを特徴とする、請求項3又は4記載の穴あけ装置。
【請求項6】
前記壁部は、前記固定部の一方向側に立設され、
前記壁部の前記内面には、前記マイクロプレートの側面が当接され、
前記壁部における前記マイクロプレートとは逆側を向く外面には、前記穴あけ治具の前記位置決め部としての位置決め壁部が当接される
ことを特徴とする、請求項5記載の穴あけ装置。
【請求項7】
前記壁部には、前記固定部の一方向側に立設された下壁部と、前記固定部の前記一方向とは逆側に立設された上壁部とが含まれ、
前記上壁部の前記内面には、前記穴あけ治具の前記位置決め部が当接され、
前記下壁部の前記内面には、前記マイクロプレートの側面が当接される
ことを特徴とする、請求項5記載の穴あけ装置。
【請求項8】
前記穴あけ治具は、位置決めされた状態で前記マイクロプレートよりも外側へ突出するよう前記平面部の外縁部から延設された補助面部と、前記補助面部から前記突起部と同方向へ突設された足部とを有し、
前記平面部から前記足部の先端までの距離が、前記平面部から前記突起部の先端までの距離よりも長い
ことを特徴とする、請求項7記載の穴あけ装置。
【請求項9】
前記突起部は、先端に向かって段階的に細くなる段付き形状である
ことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の穴あけ装置。
【請求項10】
前記突起部は、前記平面部からの突出長さが一定ではない
ことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の穴あけ装置。
【請求項11】
前記穴あけ治具は、規則的に配置された前記複数のウェルを持つ二種以上の前記マイクロプレートに共用される
ことを特徴とする、請求項10記載の穴あけ装置。
【請求項12】
前記突起部は、その突出方向と同方向に延設された穴部を有し、
前記穴部は、前記突起部の先端側の傾斜面に開口している
ことを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の穴あけ装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の穴あけ装置の使用方法であって、
液体が貯留された滅菌器の釜内に、前記シール材によって前記複数のウェルが密閉された状態の前記マイクロプレートを入れた状態で、前記マイクロプレートの前記上面と前記穴あけ治具の前記平面部とで前記リムーバー治具の前記押上げ面部を挟むように前記リムーバー治具及び前記穴あけ治具を前記マイクロプレートに重ね合わせ、
前記釜内で、前記穴あけ治具を前記マイクロプレートに向かって押圧することで前記ウェルごとに貫通孔を形成し、
前記釜内で、前記リムーバー治具の前記操作面部を押圧することで前記穴あけ治具を前記マイクロプレートから離隔させたのち、当該マイクロプレートを前記釜内にセットして前記滅菌器を運転させる
ことを特徴とする、穴あけ装置の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のウェルを持つマイクロプレートに貼着された密閉用のシール材に対し、ウェルごとに貫通孔を形成する穴あけ装置、及び、この穴あけ装置の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
規則的に配置された複数のウェルを持つマイクロプレートは、マルチウェルプレートやマイクロウェルプレート等とも呼ばれ、医学,薬学,生化学等の分野において実験用や検査用器具として広く用いられている。マイクロプレートは、各ウェル内の試薬や反応液等が蒸発したり隣接するウェル間で混ざり合ったりしないよう、各ウェルの開口がシール材により密閉されるのが一般的である(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-173025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、使用済みのマイクロプレートを滅菌して廃棄する場合、各ウェルの密閉状態を解放する必要がある。しかしながら、ウェルを密閉しているシール材をマイクロプレートから剥がすことで密閉状態を解放したのでは、作業効率が悪い。言い換えると、滅菌作業の効率化を図るためには、簡単に効率よく各ウェルの密閉状態を解放できる装置の開発が望まれる。
【0005】
本件の穴あけ装置及びその使用方法は、このような課題に鑑み案出されたもので、マイクロプレートの各ウェルの密閉状態を簡単に効率よく解放し、作業効率を高めることを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)ここで開示する穴あけ装置は、複数のウェルを持つマイクロプレートに貼着されて前記複数のウェルを密閉するシール材に対し前記ウェルごとに貫通孔を形成する穴あけ装置であって、前記マイクロプレートにおける前記シール材側の上面に対向配置される平面部と、前記平面部から突設されるとともに先端が針状に形成された複数の突起部とを有する穴あけ治具と、前記マイクロプレートの前記上面と前記穴あけ治具の前記平面部との間に配置される板状の押上げ面部と、前記押上げ面部と連続して設けられ前記マイクロプレートよりも外側に突設された操作面部とを有し、前記操作面部に入力された押圧力により前記押上げ面部が前記穴あけ治具を前記マイクロプレートから離隔させるリムーバー治具と、を備えている。
【0007】
(2)前記リムーバー治具は、前記マイクロプレートの前記上面の外周部に沿う環状に形成され、複数の前記押上げ面部及び前記操作面部を有することが好ましい。
(3)前記リムーバー治具は、前記マイクロプレートに対する前記リムーバー治具の位置を定める壁部と、前記壁部における前記マイクロプレート側を向く内面から直交方向に延在する板状であり、前記マイクロプレートの前記上面と前記穴あけ治具の前記平面部との間に挟持される固定部と、前記固定部から離隔するとともに前記固定部と同一平面上に位置する板状であり、前記押上げ面部及び前記操作面部からなる押上げ部と、前記固定部と前記操作面部とを連結するとともに前記固定部と同一平面上に位置する板状の連結部と、を有することが好ましい。
【0008】
(4)前記連結部は、前記操作面部の外端部に連結されたクランク形状であることが好ましい。
(5)前記穴あけ治具は、前記壁部に当接して前記リムーバー治具に対する前記穴あけ治具の位置を定める位置決め部を有することが好ましい。
(6)前記壁部は、前記固定部の一方向側に立設されていることが好ましい。この場合、前記壁部の前記内面には、前記マイクロプレートの側面が当接され、前記壁部における前記マイクロプレートとは逆側を向く外面には、前記穴あけ治具の前記位置決め部としての位置決め壁部が当接されることが好ましい。
【0009】
(7)前記壁部には、前記固定部の一方向側に立設された下壁部と、前記固定部の前記一方向とは逆側に立設された上壁部とが含まれることが好ましい。この場合、前記上壁部の前記内面には、前記穴あけ治具の前記位置決め部が当接され、前記下壁部の前記内面には、前記マイクロプレートの側面が当接されることが好ましい。
【0010】
(8)前記穴あけ治具は、位置決めされた状態で前記マイクロプレートよりも外側へ突出するよう前記平面部の外縁部から延設された補助面部と、前記補助面部から前記突起部と同方向へ突設された足部とを有し、前記平面部から前記足部の先端までの距離が、前記平面部から前記突起部の先端までの距離よりも長いことが好ましい。
【0011】
(9)前記突起部は、先端に向かって段階的に細くなる段付き形状であることが好ましい。
(10)前記突起部は、前記平面部からの突出長さが一定ではないことが好ましい。
(11)前記穴あけ治具は、規則的に配置された前記複数のウェルを持つ二種以上の前記マイクロプレートに共用されることが好ましい。
(12)前記突起部は、その突出方向と同方向に延設された穴部を有し、前記穴部は、前記突起部の先端の傾斜面に開口していることが好ましい。
【0012】
(13)また、ここで開示する穴あけ装置の使用方法は、上記(1)~(12)のいずれか一つに記載の穴あけ装置の使用方法であって、液体が貯留された滅菌器の釜内に、前記シール材によって前記複数のウェルが密閉された状態の前記マイクロプレートを入れた状態で、前記マイクロプレートの前記上面と前記穴あけ治具の前記平面部とで前記リムーバー治具の前記押上げ面部を挟むように前記リムーバー治具及び前記穴あけ治具を前記マイクロプレートに重ね合わせ、前記釜内で、前記穴あけ治具を前記マイクロプレートに向かって押圧することで前記ウェルごとに貫通孔を形成し、前記釜内で、前記リムーバー治具の前記操作面部を押圧することで前記穴あけ治具を前記マイクロプレートから離隔させたのち、当該マイクロプレートを前記釜内にセットして前記滅菌器を運転させる。
【発明の効果】
【0013】
開示の穴あけ装置及びその使用方法によれば、マイクロプレートの各ウェルの密閉状態を簡単に効率よく解放でき、作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る穴あけ装置に用いられるマイクロプレートの一例を示す図であり、(a)は96穴マイクロプレートの斜視図、(b)は96穴マイクロプレートの平面図、(c)は384穴マイクロプレートの平面図であり、(d)は二種類のマイクロプレートのウェルの位置関係を説明する図である。
図2】第一実施形態に係る穴あけ装置の穴あけ治具を示す平面図及び側面図である。
図3】第一実施形態に係る穴あけ装置のリムーバー治具を示す平面図及び側面図である。
図4】第一実施形態に係る穴あけ装置の組み合わせ前の状態を示す側面図である。
図5図1(c)のマイクロプレートに対し、図3のリムーバー治具の位置を合わせた状態を示す平面図である。
図6図5のリムーバー治具に対し、図2の穴あけ治具の位置を合わせた状態を示す平面図である。
図7】第一実施形態に係る穴あけ装置の断面図(図6のA-A矢視断面図)である。
図8】第二実施形態に係る穴あけ装置の穴あけ治具を示す平面図及び側面図である。
図9】第二実施形態に係る穴あけ装置のリムーバー治具を示す平面図及び側面図である。
図10】第二実施形態に係る穴あけ装置を組み合わせる前の状態を示す側面図である。
図11図1(c)のマイクロプレートに対し、図9のリムーバー治具の位置を合わせるとともに、図8の穴あけ治具の位置をさらに合わせた状態を示す平面図である。
図12】第二実施形態に係る穴あけ装置の断面図(図11のB-B矢視断面図)である。
図13】(a)は384穴マイクロプレートの上面部に図2又は図8の穴あけ治具の平面部を対向配置したときのウェルと突起部との位置関係を説明するための模式図であり、(b)は図13(a)のC-C矢視断面図である。
図14】(a)は96穴マイクロプレートの上面部に図2又は図8の穴あけ治具の平面部を対向配置したときのウェルと突起部との位置関係を説明するための模式図であり、(b)は図14(a)のD-D矢視断面図である。
図15】上記の実施形態に係る穴あけ装置に適用可能な台座部材を示す平面図及び側面図である。
図16】変形例に係る穴あけ装置を組み合わせる前の状態を示す側面図である。
図17】(a)は突起部の第一変形例を示す側面図であり、(b)は図17(a)の突起部の先端側を示す斜視図である。
図18】(a)は突起部の第二変形例を示す側面図であり、(b)は突起部の第三変形例を示す側面図である。
図19】一実施形態に係る穴あけ装置の使用方法を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、実施形態としての穴あけ装置及びその使用方法について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0016】
[1.共通構成]
第一実施形態及び第二実施形態に係る穴あけ装置は、図1(a)~(c)に示すような、複数のウェル4を持つマイクロプレート1に貼着されて複数のウェル4を密閉するシール材5に対しウェル4ごとに貫通孔を形成するものである。すなわち、穴あけ装置によってシール材5における各ウェル4を被覆する部分に孔をあけることで、シール材5を剥がすことなく各ウェル4の密閉状態を解放する。
【0017】
図1(a)及び(b)は、96個(8行×12列)のウェル4Aが縦横に規則的に配置された96穴マイクロプレート1Aの斜視図及び平面図であり、図1(c)は384個(16行×24列)のウェル4Bが縦横に規則的に配置された384穴マイクロプレート1Bの平面図である。これらのマイクロプレート1A,1Bは、ウェル4A,4Bの個数とその容積及び形状とが互いに異なるものの、同様の構成を有することから、以下の説明でこれらを区別しない場合には、末尾のA,Bを省略して示す。
【0018】
図1(a)~(c)に示すように、マイクロプレート1は、略矩形の平面状の上面2と、上面2の周縁部から下方に垂設された側面3とを有し、複数のウェル4が配置されている。複数のウェル4は全て同一形状であり、上面2に形成された円形の開口4cと、上面2から下方に向かって突出した容器部4dとから構成される。各ウェル4は、上面2の平面に貼着されたシール材5によって密閉される。実施形態のシール材5は、透明なフィルムで構成され、ウェル4内の試薬や反応液等の漏れや蒸発等を防止する。なお、実施形態のマイクロプレート1の外形状は、四隅のうちの二つの角部が斜めに切り欠かれた形状をなしているが、マイクロプレート1の外形状はこれに限らない。
【0019】
実施形態の穴あけ装置は、規則的に配置された複数のウェル4を持つ二種類のマイクロプレート1A,1Bに共用される。これらのマイクロプレート1A,1Bの上面2は略合同に形成される。また、384穴マイクロプレート1Bは、96穴マイクロプレート1Aのウェル4Aの四倍の個数のウェル4Bを有する。なお、図1(d)は、二種類のマイクロプレート1A,1Bを重ねた場合のウェル4A,4Bの位置関係を示す模式図であり、図中実線はウェル4Aを示し、図中破線はウェル4Bを示す。図1(d)に示すように、ウェル4Aは、縦横二つずつ並んだ四つのウェル4Bのうちの一つと完全に重なるように配置される。
【0020】
穴あけ装置は、図2又は図8に示す穴あけ治具10,10′と、図3又は図9に示すリムーバー治具30,30′とから構成される。穴あけ治具10,10′は、各ウェル4の開口4cを塞ぐシール材5に孔をあけ、ウェル4の密閉状態を解放する部品である。リムーバー治具30,30′は、穴あけ治具10,10′によりシール材5に孔をあけたのち、穴あけ治具10,10′をマイクロプレート1から離隔させる部品である。
【0021】
[2.第一実施形態]
[2-1.穴あけ治具の構成]
図2図7及び図13(a)~図14(b)は、第一実施形態に係る穴あけ装置を説明するための図である。図2に示すように、第一実施形態の穴あけ治具10は、マイクロプレート1におけるシール材5側の上面2に対向配置される平面部11と、平面部11から突設されるとともに先端が針状に形成された複数の突起部12とを有する。また、本実施形態の穴あけ治具10は、リムーバー治具30に対する穴あけ治具10の位置を定める位置決め部13を有する。なお、図2の平面図中の二点鎖線は、マイクロプレート1の側面3を示す。
【0022】
平面部11は、板厚が一定の薄板状であり、マイクロプレート1の上面2よりも一回り大きな矩形状に形成される。本実施形態の穴あけ治具10では、平面部11の四隅において突起部12の突出方向と同一方向に立設された壁部が位置決め部13として機能する。以下、この壁部を「位置決め壁部13」という。本実施形態の位置決め壁部13は四箇所に設けられ、その内面13aが後述するリムーバー治具30の壁部31に当接されることで、穴あけ治具10の位置を定める。
【0023】
複数の突起部12は、いずれも先端に向かって先細となる形状に形成されており、その先端は、上面2に貼着されたシール材5を突き破れる程度の剛性を有するとともに鋭利な形状に形成される。本実施形態の突起部12は、図2の側面図中に拡大して示すように、寸法の異なる二つの円柱部分12a,12bと、これら円柱部分12a,12bの間に位置する円錐台部分12cと、先端の円錐部分12dとを有し、先端に向かって段階的に細くなる段付き形状に形成されている。根元側(平面部11側)の円柱部分12aは、円錐台部分12cと円錐部分12dとの間に位置する円柱部分12bよりも直径及び高さ寸法がいずれも大きい。突起部12をこのような段付き形状とすることで、剛性を確保しながら先端をより鋭利にでき、かつ、シール材5への食い込み量に対する貫通孔の直径を大きくできる。
【0024】
また、本実施形態の突起部12は、穴あけ治具10がマイクロプレート1に重ね合わされたときに、少なくとも各ウェル4に一つ配置されるように設けられている。本実施形態の穴あけ治具10には、384穴マイクロプレート1Bのウェル数と同数の384個(16行×24列)の突起部12が縦横に規則的に配置されている。ここで、図13(a),(b)及び図14(a),(b)を用いて、突起部12の構成について説明する。なお、これらの図では、突起部12の形状を円錐状に簡略化して示す。
【0025】
図13(a)に示すように、384穴マイクロプレート1Bに穴あけ治具10を重ね合わせたときに、一つのウェル4Bに一つの突起部12が配置されるように突起部12の位置が設定される。なお、図13(a)は、384穴マイクロプレート1Bの上面2に穴あけ治具10の平面部11を対向配置したときのウェル4Bと突起部12との位置関係を説明するための模式図であり、図中破線はウェル4Bを示し、図中実線は突起部12を示す。また、図13(b)は、図13(a)のC-C矢視断面図である。図13(a)及び(b)では、複数の突起部12のそれぞれに#11,#12,#13等の番号を付し、例えば「突起部#11」とも表記する。
【0026】
また、図14(a)及び(b)は、96穴マイクロプレート1Aの上面2に穴あけ治具10の平面部11を対向配置したときのウェル4Aと突起部12との位置関係を説明するための模式図であり、図13(a)及び(b)のそれぞれに対応する。図14(a)に示すように、本実施形態の穴あけ治具10を96穴マイクロプレート1Aに重ね合わせると、一つのウェル4Aに少なくとも一つの突起部12が配置される。すなわち、本実施形態の穴あけ治具10であれば、ウェル数の異なる二種類のマイクロプレート1のシール部材5に対し、ウェル4ごとに貫通孔を形成することが可能である。
【0027】
また、突起部12は、図13(b)及び図14(b)に示すように、平面部11からの突出長さL(平面部11の表面から突起部12の先端までの垂直長さ)が一定ではない。具体的には、図14(a)及び(b)に示すように、ウェル数の少ない96穴マイクロプレート1Aのウェル4Aと突起部12の先端とが重なる位置の突起部12(例えば#11,#13)の突出長さLが、ウェル4Aと突起部12の先端とが重ならない位置の突起部12(例えば#12,#14)の突出長さLよりも長い。
【0028】
これにより、穴あけ治具10を96穴マイクロプレート1Aに重ねて押圧したときに、突出長さLの長い突起部#11,#13によって、各ウェル4Aを封止するシール材5に貫通孔が形成される。また、突出長さLの短い突起部#12,#14の先端は96穴マイクロプレート1Aの上面2に押圧されることがないため、これらの先端の変形や摩耗等が防止される。一方で、突起部12は384個あるため、384穴マイクロプレート1Bに重ねて押圧することで全てのウェル4Bの密閉状態を解放できる。つまり、穴あけ治具10は、二種のマイクロプレート1A,1Bに共用されるよう突起部12の突出長さLが異なるように設定されている。
【0029】
なお、穴あけ治具10が、ウェル4Aを封止するシール材5に孔をあける突起部#11,#13の突出長さLが互いに異なるように形成されていてもよい。断面図は省略しているが、例えば、突起部#11,#31の突出長さLが互いに同一に形成され、突起部#13,#33の突出長さLが互いに同一に形成されてもよい。このように、突起部12の突出長さLが、所定数ごと(例えば48個ごと)に異なっている場合には、突起部#11,#31と突起部#13,#33とがシール材5に孔をあけるタイミングがずれるため、四つの突起部#11,#13,#31,#33の突出長さLが全て同一である場合と比べて、シール材5に孔をあけるときに必要となる力(押圧力)が小さくなる。なお、突起部#12,#14の突出長さLが互いに異なっていてもよい。
【0030】
本実施形態の穴あけ治具10では、図2の側面図に示すように、突起部12の根元側の円柱部分12aの高さ寸法を変えることで、突起部12の突出長さLが異なる寸法に設定されている。言い換えると、円錐部分12d,円柱部分12b,円錐台部分12cの形状は、全ての突起部12において同一とされることから、突出長さLが最も短い突起部12の円柱部分12aがシール材5を貫通するまで穴あけ治具10をマイクロプレート1に重ね合わせれば、全ての貫通孔の大きさを同一に(円柱部分12aの外形状の大きさに)することができる。
【0031】
[2-2.リムーバー治具の構成]
図3図7に示すように、リムーバー治具30は、マイクロプレート1と穴あけ治具10との間に配置されて、てこの原理を利用して穴あけ治具10をマイクロプレート1から引き離す部品である。穴あけ治具10によってシール材5に孔をあけると、複数の突起部12の先端部分とシール材5との摩擦により、穴あけ治具10をマイクロプレート1から引き離す際の抵抗が非常に大きくなり、引き離しにくいという状況が発生した。リムーバー治具30は、この状況に対応するための部品である。ここでは、384穴マイクロプレート1Bを例示する。
【0032】
図3は、本実施形態のリムーバー治具30を示す平面図及び側面図であり、図4は、穴あけ装置の各治具10,30を組み合わせる前の状態を示す側面図である。また、図5は、マイクロプレート1Bに対しリムーバー治具30の位置を合わせた状態を示す平面図であり、図6は、図5のリムーバー治具30に対し穴あけ治具10の位置を合わせた状態を示す平面図である。図7は、図6のA-A矢視断面図である。なお、図3の平面図中の二点鎖線はマイクロプレート1Bの側面3を示す。また、図6中のドットは後述する固定部32を示し、図6中のハッチングは後述する押上げ面部33aを示す。また、図5及び図6では、ウェル4の一部のみを図示している。
【0033】
図3に示すように、本実施形態のリムーバー治具30は、マイクロプレート1Bの上面2の外周部に沿う環状に形成されており、その中央に、突起部12が通るための空間35を有する。リムーバー治具30は、マイクロプレート1Bの上面2と穴あけ治具10の平面部11との間に配置される板状の押上げ面部33aと、押上げ面部33aと連続して設けられマイクロプレート1Bよりも外側に突設された操作面部33bとを有する。
【0034】
本実施形態のリムーバー治具30は環状であることから、複数の押上げ面部33a及び操作面部33bを有する。具体的には、リムーバー治具30は、マイクロプレート1Bの上面2における二つの長辺部分と二つの短辺部分とのそれぞれに配置される、四つの押上げ面部33a及び操作面部33bを有する。
【0035】
また、本実施形態のリムーバー治具30は、位置決め用の壁部31と、固定用の固定部32と、押上げ面部33a及び操作面部33bからなる押上げ部33と、固定部32と押上げ部33とを連結する連結部34とを有する。固定部32及び連結部34はいずれも、押上げ部33(押上げ面部33a及び操作面部33b)と面一な板状部分である。一方、壁部31は、固定部32を含むこれらの板状部分に対し直交するとともに一方向側(図3の側面図中の下側)に立設されている。すなわち、本実施形態のリムーバー治具30は、平らな板状部分(固定部32,押上げ部33,連結部34)の一方の表面から板厚方向に壁部31が立設された形状をなす。
【0036】
図4図7に示すように、壁部31は、マイクロプレート1Bに対するリムーバー治具30の位置を定める部分である。本実施形態の壁部31は、マイクロプレート1Bの四隅に対応する位置にそれぞれ設けられ、マイクロプレート1Bの側面3の角部に外側から当接する。つまり、本実施形態では、各壁部31がマイクロプレート1Bの側面3の角部に対応した屈曲形状に形成され、その内面31a(マイクロプレート1B側を向く面)が側面3に当接される。
【0037】
また、図5図7に示すように、本実施形態の壁部31の外面31b(マイクロプレート1Bとは逆側を向く面)には、上記の通り、穴あけ治具10の四隅に設けられた位置決め壁部13の内面13aが当接される。これにより、リムーバー治具30に対する穴あけ治具10の位置が定まる。すなわち、本実施形態の穴あけ装置は、リムーバー治具30を介してマイクロプレート1Bと穴あけ治具10との位置決めがなされる。
【0038】
図3図7に示すように、固定部32は、壁部31の当接側の側面(内面)から直交方向に延在する板状に形成された部分であり、壁部31の内側部分に設けられる。固定部32は、図6中にドットで示すように、マイクロプレート1Bの上面2側(ここでは上面2)と穴あけ治具10の平面部11との間に挟持される。リムーバー治具30は、固定部32が挟持されることで、穴あけ治具10及びマイクロプレート1Bに対してその位置が固定される。
【0039】
図3に示すように、押上げ部33は、固定部32から離隔するとともに固定部32と同一平面上に位置する板状の部位であり、上記の通り、押上げ面部33a及び操作面部33bから構成される。言い換えると、押上げ部33の一部(内側部分)が押上げ面部33aであり、押上げ部33の他部(外側部分)が操作面部33bである。押上げ部33は、図7に示すように、操作面部33bに押圧力(図中白抜き矢印)が入力されると、押上げ部33におけるマイクロプレート1Bの上面2との接触位置を支点として、てこの原理により、図中黒塗り矢印で示すように、押上げ面部33aが平面部11を押し上げて、穴あけ治具10をマイクロプレート1Bから離隔させる。
【0040】
図3に示すように、本実施形態の押上げ部33は、四隅に位置する固定部32の間(環状のリムーバー治具30の辺に相当する位置)であって、両側の固定部32からそれぞれ間隔をあけて設けられる。また、本実施形態の押上げ部33は、平面視で矩形状に形成されており、押上げ面部33aの面積が操作面部33bの面積よりも小さい。
【0041】
連結部34は、固定部32と同一平面上に位置する板状の部位であり、上記の通り、固定部32と操作面部33bとを連結する。連結部34は、互いに離隔して配置された固定部32と押上げ部33とを同一平面内で連結することで、押上げ部33において穴あけ治具10を動かす際に、リムーバー治具30の位置決め側の部位(壁部31及び固定部32)への影響を回避する。言い換えると、連結部34は、押上げ部33の操作面部33bが押されることで押上げ面部33aが穴あけ治具10を押し上げるように変形したときに、リムーバー治具30の位置決め側に作用力が伝わらないよう、この変形を許容する部分である。
【0042】
本実施形態の連結部34は、固定部32における押上げ部33側の端部と操作面部33bの外端部とを連結し、平面視でクランク形状(略S字状)に形成されている。また、本実施形態のリムーバー治具30では、押上げ部33と固定部32との間の間隔が連結部34を配置できる最低限の寸法に設定され、四つの押上げ部33の各長辺の長さ寸法が最大限に設定されている。マイクロプレート1Bの剛性が低い場合、操作面部33bを押すことで押上げ面部33aが持ち上がっても、マイクロプレート1Bが押上げ面部33aに追従してしまい、マイクロプレート1Bと穴あけ治具10とが引き離されない可能性がある。これに対し、押上げ部33における上面2の長辺部分及び短辺部分に沿う各辺をできる限り長く設定することで、マイクロプレート1Bの剛性が低い場合でも、マイクロプレート1Bと穴あけ治具10とが引き離され、リムーバー治具30としての機能が発揮される。
【0043】
[2-3.穴あけ装置の使用方法]
ここで、上述した穴あけ装置により、マイクロプレート1Bのシール材5における各ウェル4を被覆する部分に貫通孔を形成するとともに、穴あけ治具10を取り外す手順を説明する。図4に示すように、まず、上面2が上になるようにマイクロプレート1Bの向きを決める。このとき、マイクロプレート1を作業台や机等に置いてもよいし、宙に浮かせたまま(手や装置等で保持した状態で)作業してもよい。
【0044】
次に、壁部31が固定部32よりも下に位置する向きで、リムーバー治具30をマイクロプレート1Bに重ね合わせる。このとき、壁部31の内面31aをマイクロプレート1Bの側面3に当接させることで、マイクロプレート1Bに対するリムーバー治具30の位置を定める。これにより、図5に示す状態となる。次いで、突起部12が平面部11よりも下に位置する向きで、穴あけ治具10をリムーバー治具30に重ね合わせる。このとき、図4に示すように、穴あけ治具10の位置決め壁部13の内面13aを、リムーバー治具30の壁部31の外面31bに当接させることで、図5に示すリムーバー治具30に対する穴あけ治具10の位置を定める。これにより、図6に示す状態となる。
【0045】
そして、穴あけ治具10をマイクロプレート1Bに向かって押圧することで、突出長さLの長い突起部12から順にシール材5に接触し、貫通孔が形成される。
全てのウェル4に貫通孔が形成されたら、図7中に白抜き矢印で示すように、リムーバー治具30の四つの操作面部33bをマイクロプレート1B側に押圧する。これにより、図7中に黒塗り矢印で示すように、押上げ面部33aにより穴あけ治具10の平面部11が押し上げられ、穴あけ治具10がマイクロプレート1Bから離隔し、周囲に隙間が形成される。あとは、この隙間を利用して、穴あけ治具10をマイクロプレート1Bから引き離せばよい。
【0046】
上述した貫通孔の形成から穴あけ治具の取り外しまでの操作を、滅菌器の釜(図示略)の内部で行ってもよい。この場合、図19に示すように、まずは滅菌器の釜内に液体(例えば水)を供給する(ステップS1)。次いで、液体が貯留された滅菌器の釜内に、シール材5によってウェル4が密閉された状態のマイクロプレート1Bを入れた状態で、マイクロプレート1Bの上面2と穴あけ治具10の平面部11とでリムーバー治具30の押上げ面部33aを挟むようにリムーバー治具30及び穴あけ治具10をマイクロプレート1Bに重ね合わせる(ステップS2)。
【0047】
この状態で(すなわち釜内で)、穴あけ治具10をマイクロプレート1Bに向かって押圧することでウェル4ごとに貫通孔を形成する(ステップS3)。そして、釜内で、リムーバー治具30の操作面部33bを押圧することで穴あけ治具10をマイクロプレート1Bから離隔させる(ステップS4)。これにより、マイクロプレート1Bのウェル4の密閉状態が解放されるため、このマイクロプレート1Bを釜内にセットして滅菌器を運転させればよい(ステップS5)。なお、96穴マイクロプレート1Aの場合も同様の手順で使用できる。
【0048】
[2-4.作用,効果]
したがって、上述した穴あけ装置であれば、マイクロプレート1Bの各ウェル4の密閉状態を、突起部12が形成された穴あけ治具10により簡単に解放することができる。また、リムーバー治具30の操作面部33bを押圧することで、てこの原理により押上げ面部33aが穴あけ治具10を押し上げてマイクロプレート1Bから離隔させる。このため、シール材5に突起部12が刺さった状態の穴あけ治具10を簡単に取り外すことができる。つまり、上述した穴あけ装置及びその使用方法によれば、マイクロプレート1Bの各ウェル4の密閉状態を簡単に効率よく解放することができる。このため、例えば、使用済みのマイクロプレート1Bを滅菌器で滅菌する場合に、滅菌作業の作業効率を高めることができる。なお、96穴マイクロプレート1Aを用いた場合も同様の効果が得られる。
【0049】
また、上記のリムーバー治具30は環状に形成されており、複数の押上げ面部33a及び操作面部33bが設けられるため、穴あけ治具10に対して複数箇所から押し上げ力を作用させることができる。これにより、より簡単に穴あけ治具10を取り外すことができ、作業効率を高めることができる。
【0050】
上述したリムーバー治具30では、マイクロプレート1Bに対するリムーバー治具30の位置が壁部31によって定められた状態で固定部32が挟持されるため、リムーバー治具30の位置を固定できる。一方、固定部32と押上げ部33とが離隔した状態で連結部34により連結されていることから、押上げ部33の操作面部33bに押圧力が入力されても、その力が固定部32にはほとんど伝わらない。すなわち、位置決め側の部位(壁部31及び固定部32)への影響を回避できるため、リムーバー治具30の位置ずれを防止しながら、操作面部33bに対する押圧力を押上げ面部33aに確実に伝えることができる。したがって、より簡単に穴あけ治具10を取り外すことができ、作業効率を高めることができる。
【0051】
上述したリムーバー治具30では、連結部34が操作面部33bの外端部に連結されたクランク形状である。このため、操作面部33bに入力された押圧力が位置決め側の部位(壁部31及び固定部32)に伝わることをより防止できるとともに、押上げ面部33aが平面部11を押し上げる動作を妨げることがない。
【0052】
また、上述した穴あけ治具10は、壁部31に当接してリムーバー治具30に対する穴あけ治具10の位置を定める位置決め部13を有することから、穴あけ治具10の位置決めも、リムーバー治具30の壁部31を利用して行うことができる。つまり、マイクロプレート1Bの位置出しと穴あけ治具10の位置出しとを同じ箇所で行うことができるため、作業効率を高めることができる。
【0053】
上述した穴あけ装置では、リムーバー治具30の壁部31の内面31aにおいてマイクロプレート1Bと位置決めが行われ、壁部31の外面31bにおいて穴あけ治具10と位置決めが行われる。このように、壁部31の内面31aと外面31bとを使ってマイクロプレート1B及び穴あけ治具10の位置決めすることで、壁部31の高さ寸法(固定部32と直交する方向の寸法)を小さくできる。このため、突起部12の突出長さLが短くても確実に貫通孔を形成できるとともに、穴あけ装置を小型化できる。
【0054】
さらに、リムーバー治具30は、平らな板状部分(固定部32,押上げ部33,連結部34)の一方の表面から板厚方向に壁部31が立設された形状であることから、孔をあける際に、板状部分の他方の表面側(図4中の上側)から効率よく荷重をかけることができる。このため、例えば容器内や滅菌器の釜内などの制約された空間においても、穴あけ作業を行うことができる。
【0055】
上述した突起部12は、先端に向かって段階的に細くなる段付き形状であることから、突起部12の剛性を確保したうえで先端をより鋭利な形状にすることができる。さらに、シール材5への食い込み量(ウェル4内への進入長さ)に対する貫通孔の直径を大きくすることができる。つまり、突起部12がシール材5を貫通しやすくなるとともに、突起部12が根元部分までウェル4内に入ったときに、シール材5に大きな孔を形成することができる。このため、マイクロプレート1Bの各ウェル4の密閉状態を確実に解放することができる。
【0056】
上述した突起部12は、突出長さLが一定ではないことから、穴あけ治具10をマイクロプレート1Bに重ね合わせたときの、突起部12の先端がシール材5に接するタイミングをずらすことができる。このため、全ての突起部12で同時に孔をあける場合と比べて、小さな力でシール材5に孔をあけることができ、各ウェル4の密閉状態をより簡単に解放することができる。
【0057】
上述した穴あけ治具10は、二種のマイクロプレート1A,1Bに共用される。言い換えると、一つの穴あけ治具10で二種のマイクロプレート1A,1Bの穴あけ作業ができるため、作業効率をより高めることができる。また、穴あけ治具10を共用品とすることで、穴あけ治具10を製造するためのコストを抑制できる。
【0058】
なお、上記の穴あけ治具10は、ウェル4の個数が最も多いマイクロプレート1Bのウェル数と同数の突起部12を有し、これら突起部12は、所定数のウェル4ごとに貫通孔を形成するように突出長さLが段階的に設定されている。つまり、段階的に設定された突起部12によって、シール材5に対し、所定数のウェル4ごとに孔をあけることができため、小さな力かつ一定の力で各ウェル4の密閉状態を解放することができる。このため、例えば作業者が穴あけ装置を手で扱う場合には容易に孔をあけることができ、穴あけ装置を機械に組み込んで自動化する場合には、制御性を高めることができる。
【0059】
[3.第二実施形態]
[3-1.構成]
次に、図8図12を用いて第二実施形態に係る穴あけ装置を説明する。なお、上述した第一実施形態と同様の構成については、第一実施形態と同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態の穴あけ装置では、穴あけ治具10′及びリムーバー治具30′の各構成が第一実施形態のものと異なる。
【0060】
図11は、図1(c)のマイクロプレート1Bに対し、図9のリムーバー治具30′の位置を合わせるとともに、図8の穴あけ治具10′の位置をさらに合わせた状態を示す平面図である。図12は、図11のB-B矢視断面図である。なお、図8及び図9の各平面図中の二点鎖線はマイクロプレート1Bの側面3を示し、図9中のドットは後述する壁部31′を示す。また、図11中のドット及びハッチングは、図6と同様、固定部32及び押上げ面部33aをそれぞれ示し、図11ではウェル4の一部のみを図示している。
【0061】
図8に示すように、第二実施形態の穴あけ治具10′は、マイクロプレート1Bの上面2に対向配置される平面部11′と、上記と同様の突起部12と、リムーバー治具30に対する穴あけ治具10の位置を定める位置決め部14と、突起部12の先端を保護するための補助面部15及び足部16とを有する。
【0062】
平面部11′は、板厚が一定の薄板状であり、マイクロプレート1Bの上面2と略同一形状に形成される。本実施形態の穴あけ治具10′では、平面部11′の四隅の端面が位置決め部14として機能する。すなわち、位置決め部14は四箇所に設けられ、後述するリムーバー治具30′の壁部31′の上壁部31Uに当接する。また、補助面部15は、穴あけ治具10′が位置決めされた状態で、マイクロプレート1Bよりも外側へ突出するように平面部11′の外縁部から延設された部分である。補助面部15は、平面部11′の四隅のそれぞれに設けられ、平面部11′と同一の板厚に形成され、平面部11′と面一に設けられる。
【0063】
足部16は、各補助面部15から突起部12と同方向に突設された円柱状の部分であり、先端面が平面状に形成されている。平面部11′から足部16の先端までの距離Xは、平面部11′から突起部12の先端までの距離(突出長さL)よりも長い。これにより、突起部12の先端(針先)が潰れることを防ぐ。
【0064】
図9図12に示すように、リムーバー治具30′は、上記のリムーバー治具30と同様、マイクロプレート1Bと穴あけ治具10′との間に配置されて、てこの原理を利用して穴あけ治具10′をマイクロプレート1Bから引き離す部品である。本実施形態のリムーバー治具30′も、上記と同様に、マイクロプレート1Bの上面2の外周部に沿う環状に形成されている。
【0065】
また、本実施形態のリムーバー治具30′には、位置決め用の壁部31′と、上記と同様の固定部32,押上げ部33及び連結部34とが設けられる。本実施形態の壁部31′には、固定部32を含む板状部分の一方向側(図9の側面図中の下側)に立設された下壁部31Lと、一方向とは逆側(図9の側面図中の上側)に立設された上壁部31Uとが含まれる。言い換えると、本実施形態の固定部32は、壁部31′の立設方向の中間部から直交方向に延在している。本実施形態の壁部31′では、下壁部31L及び上壁部31Uが平面視において互いに同一形状に形成される。
【0066】
図10に示すように、リムーバー治具30′の下壁部31Lの内面(マイクロプレート1B側を向く面)には、マイクロプレート1Bの側面3が当接される。これにより、マイクロプレート1Bに対するリムーバー治具30′の位置が定まる。また、上壁部31Uの内面(マイクロプレート1B側を向く面)には、穴あけ治具10′の位置決め部14(平面部11′の四隅の端面)が当接される。これにより、リムーバー治具30′に対する穴あけ治具10′の位置が定まる。すなわち、本実施形態の穴あけ装置も、上記と同様、リムーバー治具30′を介してマイクロプレート1Bと穴あけ治具10′との位置決めがなされる。なお、リムーバー治具30′は、上記と同様、固定部32が挟持されることで、マイクロプレート1B及び穴あけ治具10′に対してその位置が固定される。
【0067】
[3-2.穴あけ装置の使用方法]
ここで、本実施形態の穴あけ装置により、マイクロプレート1Bのシール材5における各ウェル4を被覆する部分に貫通孔を形成するとともに、穴あけ治具10を取り外す手順を説明する。図10に示すように、まず、上面2が上になるようにマイクロプレート1Bを向きを決める。
【0068】
次に、下壁部31Lが固定部32よりも下に位置する向きで、リムーバー治具30′をマイクロプレート1Bに重ね合わせる。このとき、下壁部31Lの内面をマイクロプレート1Bの側面3に当接させることで、マイクロプレート1Bに対するリムーバー治具30′の位置を定める。次いで、突起部12が平面部11′よりも下に位置する向きで、穴あけ治具10′をリムーバー治具30′に重ね合わせる。
【0069】
このとき、図10に示すように、穴あけ治具10′の位置決め部14(端面)を、リムーバー治具30′の上壁部31Uの内面に接触させながら下方へと滑らせることで、リムーバー治具30′に対する穴あけ治具10′の位置を定める。これにより、図11に示す状態となる。そして、穴あけ治具10′をマイクロプレート1Bに向かって押圧することで、突出長さLの長い突起部12から順にシール材5に接触し、貫通孔が形成される。
【0070】
全てのウェル4に貫通孔が形成されたら、図12中に白抜き矢印で示すように、リムーバー治具30′の四つの操作面部33bをマイクロプレート1B側に押圧する。すると、図12中に黒塗り矢印で示すように、押上げ部33におけるマイクロプレート1Bの上面2との接触位置を支点として、押上げ面部33aが穴あけ治具10′の平面部11′を押し上げてマイクロプレート1Bから離隔させる。これにより、マイクロプレート1Bの周囲に隙間が形成されるため、この隙間を利用して、穴あけ治具10′をマイクロプレート1Bから引き離せばよい。
【0071】
なお、本実施形態の穴あけ装置も、上述した第一実施形態と同様の使用方法(図19に示す方法)により使用可能である。また、96穴マイクロプレート1Aの場合も同様の手順で使用できる。
【0072】
[3-3.作用,効果]
したがって、本実施形態に係る穴あけ装置であっても、上述した第一実施形態と同様、マイクロプレート1Bの各ウェル4の密閉状態を簡単に効率よく解放することができる。このため、例えば、使用済みのマイクロプレート1Bを滅菌器で滅菌する場合に、滅菌作業の作業効率を高めることができる。なお、96穴マイクロプレート1Aを用いた場合も同様の効果が得られる。
【0073】
また、本実施形態のリムーバー治具30′では、上壁部31U及び下壁部31Lを有する壁部31′の内面を使ってマイクロプレート1B及び穴あけ治具10′の位置決めが行われる。このように、リムーバー治具30′の壁部31′を介して、同じ箇所でマイクロプレート1B及び穴あけ治具10′とリムーバー治具30′との位置決めを行うことができるため、作業性を向上させることができる。さらに、本実施形態の穴あけ治具10′では、平面部11′の四隅の端面が位置決め部14として機能することから、上記の位置決め壁部13を設ける必要がない。また、平面部11′を利用して位置決めを行うため(言い換えると、位置出しを平面部分で行うため)、位置決め精度を出しやすい。
【0074】
本実施形態の穴あけ治具10′には、補助面部15から突起部12と同方向に突設された足部16が設けられるため、突起部12の針先(先端)が潰れることを防止できる。これにより、マイクロプレート1Bの各ウェル4の密閉状態を確実に解放できる。
なお、第一実施形態と同様の構成からは、上記と同様の効果が得られる。
【0075】
[4.その他]
上述した穴あけ装置は一例であって、上述した構成に限られない。上記の実施形態では、環状のリムーバー治具30,30′に、押上げ面部33a及び操作面部33bからなる押上げ部33が複数(四つ)設けられた構成を例示したが、リムーバー治具は環状でなくてもよく、押上げ面部33a及び操作面部33bは少なくとも一つずつ設けられていればよい。
【0076】
また、上記のリムーバー治具30,30′の壁部31,31′の形状,固定部32の形状,押上げ部33の形状,連結部34の形状はいずれも一例であって、上述したものに限られない。例えば、連結部34が操作面部33bの外端部以外の部分に連結されていてもよいし、平面視でクランク形状(略S字状)でなくてもよい。また、第二実施形態において、上壁部31Uと下壁部31Lとが平面視において互いに同一形状でなくてもよい。
【0077】
なお、リムーバー治具30,30′は、繰り返し使用されるものであってもよいし、使い捨てであってもよい。後者の場合には、例えば連結部34の強度を低くし、穴あけ治具10,10′による穴あけ作業を実施した後マイクロプレート1から穴あけ治具10,10′を引き離す際に、壁部31,31′が外れる(破損する)構成としてもよい。
【0078】
リムーバー治具は、少なくとも、マイクロプレート1の上面2と穴あけ治具10,10′の平面部11,11′との間に配置される板状の押上げ面部と、これと連続して設けられてマイクロプレート1よりも外側に突設された操作面部とを有し、操作面部に入力された押圧力により押上げ面部が穴あけ治具10,10′をマイクロプレート1から離隔させるものであればよく、例えば、壁部31,31′や固定部32や連結部34を省略してもよい。
【0079】
上述した実施形態では、マイクロプレート1に対して直接的にリムーバー治具30,30′が配置される構成を例示したが、穴あけ作業時にマイクロプレート1の位置がずれないようマイクロプレート1を収容保持する台座部材を用いてもよい。図15は台座部材20の一例を示す平面図及び側面図である。図15に示すように、台座部材20は、マイクロプレート1(例えばマイクロプレート1B)が載置される底面部21と、底面部21の周囲端部に立設された周壁部22と、マイクロプレート1Bを収容保持する収容空間23とを有する。収容空間23は、底面部21と周壁部22とで囲まれて形成された空間であり、マイクロプレート1Bの外形状と略同一かやや大きく設定される。
【0080】
周壁部22は、高さ寸法が収容空間23の周囲方向において一定な環状の壁部であり、収容空間23の開口側を向く端面22a(以下「上端面22a」という)が底面部21に平行に設けられる。また、周壁部22は、その外面22b(収容空間23とは逆側を向く面)が底面部21の周囲の端面よりもやや内側に位置するように設けられる。なお、周壁部22の外面22bと底面部21の端面とが面一であってもよい。
【0081】
図15に示す台座部材20は、上述した各実施形態の穴あけ装置に適用可能である。例えば、第一実施形態の穴あけ装置に台座部材20を適用した場合の、図4に対応する側面図を図16に示す。台座部材20を用いる場合には、まず、マイクロプレート1Bが台座部材20の収容空間23に収容される。上記のリムーバー治具30は、壁部31の内面31aが台座部材20の周壁部22の外面22bに当接されることで、台座部材20を介してマイクロプレート1Bと位置決めされる。そして、上記の穴あけ治具10がリムーバー治具30に対して位置決めされる。
【0082】
マイクロプレート1Bが台座部材20に載置された状態で、マイクロプレート1Bの上面2が収容空間23から上方へ出ている場合には、第一実施形態と同様、固定部32は上面2と平面部11とで挟持される。反対に、この状態で上面2が収容空間23から出ていない場合には、固定部32は、台座部材20の上端面22aと平面部11とで挟持される。すなわち、固定部32は少なくともマイクロプレート1Bの上面2側と穴あけ治具10の平面部11とで挟持されることで、リムーバー治具30の位置ずれを防止する。
【0083】
このような構成の穴あけ装置によっても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、台座部材20を用いることで、てこの原理に利用して穴あけ治具10をマイクロプレート1Bから引き離す際に、マイクロプレート1Bの変形や追従を防止できる。なお、台座部材20は、マイクロプレートの種類ごとに設けられてもよいし、二種以上のマイクロプレートの共用品として設けられてもよい。台座部材20を共用品にする場合には、ウェル4及び突起部12の位置関係で許容される範囲内において、収容空間23の形状を多種のマイクロプレートのうち最も大きなものに合わせればよい。なお、滅菌器の釜内で穴あけ装置を使用する際にも台座部材20を用いてもよい。
【0084】
上述した二つの実施形態では、図1(c)に示すマイクロプレート1Bに適用される穴あけ装置を例示したが、穴あけ装置が貫通孔を形成するマイクロプレートは上記のものに限られない。なお、マイクロプレートの種類ごとにその外形状が異なる場合があるが、この場合には、穴あけ治具はマイクロプレートの外形状によらず一種類とし、マイクロプレートの外形状に応じて数種類のリムーバー治具を用意することが好ましい。
【0085】
上記の穴あけ治具10,10′の構成も一例である。例えば、第一実施形態では、平面部11の四隅に位置決め壁部13が設けられているが、四隅のうちの一部に位置決め壁部が設けられていてもよいし、平面部11の全周に亘って位置決め壁部が設けられていてもよい。平面部11の全周に亘って位置決め壁部を設ける場合(すなわち、穴あけ治具10の外形状を箱型にする場合)、例えばU字状の溝を周囲の位置決め壁部に複数配置することで、突起部12で密閉状態を解放したウェル4内に蒸気が進入しやすくなり、滅菌効果を高めることができる。
【0086】
また、第二実施形態において、平面部11′の四隅の端面以外に、専用の位置決め部を設けてもよいし、補助面部15及び足部16を省略してもよい。なお、穴あけ治具10,10′は、少なくとも平面部11,11′と複数の突起部12とを有していればよく、位置決め部13,14を省略してもよい。
【0087】
穴あけ治具10,10′の突起部12は、少なくとも先端が針状に形成されていればよく、その形状は特に限られない。例えば、上記の突起部12は二段の段付き形状であるが、三段以上の段付き形状としてもよいし、段付き形状ではなく、円錐形状,角錐形状,棒状等としてもよい。あるいは、突起部の形状を、プラスドライバーやマイナスドライバーの先端のような十字形状や一文字形状や、星形状にしてもよい。このように、突起部の先端を針状にしつつ、平面部11,11′から先端までの形状を十字形状や星形状等にすることで、シール材5を突き破った後にウェル4内に蒸気が進入しやすくなり、滅菌効果を高めることができる。また、上述した穴あけ治具10,10′では、突起部12の突出長さLが一定でないが、全ての突起部の突出長さLを同一にしてもよい。なお、一つのウェル4に対して二つ以上の突起部が配置されるように穴あけ治具10,10′が形成されていてもよい。
【0088】
また、上述した穴あけ治具10,10′は、中実形状の突起部12を有しているが、中空形状の突起部を有していてもよい。ここで、中空形状の突起部12Xの一例を図17(a)及び(b)に示す。図17(a)は、図2の側面図中に拡大して示した突起部12と同様の側面図であり、図17(b)は、図17(a)の突起部12Xの先端側を示す斜視図である。
【0089】
図17(a)及び(b)に示すように、突起部12Xは、二段の段付き形状に形成されるとともに、突起部12Xの突出方向と同方向に延設された一つの穴部12hを有する。すなわち、突起部12Xは、寸法の異なる二つの円筒部分12a′,12b′と、これら円筒部分12a′,12b′の間に位置する円錐台部分12c′とを有するとともに、先端側の円筒部分12b′の端面が突出方向に対して傾斜した傾斜面12fとして設けられる。突起部12Xの先端部12e(傾斜面12fにおける最も先端側に部分)は、上面2に貼着されたシール材5を突き破れる程度の剛性を有するとともに鋭利な形状に形成される。
【0090】
穴部12hは、突起部12Xに対し、例えばレーザー加工機などにより直線状に傾斜面12f側から穿設され、傾斜面12fに開口している。あるいは、穴部12hを有する穴あけ治具10,10′を金型で成型してもよい。図17(a)及び(b)には、傾斜面12fの略中央に穴部12hが開口している突起部12Xを例示する。穴部12hは、先端部12eを除いた位置に開口していることが好ましい。また、この穴部12hは、大径側の円筒部分12a′の中途に底面がある。すなわち、図17(a)に示す穴部12hは突起部12Xを貫通していない。
【0091】
このような構成の突起部12Xを有する穴あけ装置によれば、毛細管現象により穴部12h内に液体が入ることができる。このため、例えば、滅菌に適した液体に突起部12Xの先端側を浸し、穴部12hに液体を保持させた状態でマイクロプレート1の穴あけを行うことで、各ウェル4の密閉状態の解放とともにウェル4内に液体を供給することができる。これにより、滅菌作業の作業効率を高めつつ滅菌性能を高めることができる。
【0092】
なお、図17(a)及び(b)に示す突起部12Xは一例であり、穴部12hが突起部12X及び平面部11を貫通していてもよい。この場合、穴部12hに対し、平面部11側から液体を供給することもできる。また、突起部の形状を、図18(a)及び(b)に示すような形状にしてもよい。
【0093】
図18(a)の突起部12Yは、段付き形状ではないが、先端に向かって縮径した形状をなすとともに、その端面が突出方向に対して傾斜した傾斜面12fとして設けられる。この突起部12Yの穴部12hは、傾斜面12fに開口するとともに平面部11まで貫通している。このような形状の突起部12Yであっても、上記の突起部12Xと同様の作用効果を得ることができる。なお、図18(a)の突起部12Yの外径寸法が突出方向に一定であってもよいし、穴部12hが図17(a)に示すように貫通しないものであってもよい。
【0094】
図18(b)に示す突起部12Zは、その外形寸法が突出方向に一定な円筒部分12a′と先端の円錐部分12d′とから構成されており、先端部12eが突起部12Zの中心線上に位置する。この突起部12Zでは、突出方向と同様に延設された穴部12h′が、先端側の傾斜面12fに対して複数個所で開口するよう、先端側が複数(例えば二つ)に分岐形成されている。この穴部12h′は、例えば、傾斜面12fに開口する一本の細い孔を形成し、この孔とは別に、傾斜面12fの別の箇所に開口する一本の細い孔を形成し、円筒部分12a′内で二つの孔を結合させる孔を一つ形成することで設けることができる。このような形状の突起部12Zであっても、上記の突起部12Xと同様の作用効果を得ることができる。なお、図18(b)の突起部12Zが、段付き形状に形成されていてもよい。
【0095】
上述した実施形態では、96穴マイクロプレート1A及び384穴マイクロプレート1Bを例に挙げ、これら二種のマイクロプレート1A,1Bに共用される穴あけ治具10,10′を例示したが、穴あけ治具が1種類のマイクロプレートの専用品であってもよい。この場合の穴あけ治具は、そのマイクロプレートのウェル数と同数の突起部を有していればよく、これらの突起部の突出長さは一定であってもよいし一定でなくてもよい。反対に、穴あけ治具が三種以上のマイクロプレートに共用される形状に形成されていてもよい。この場合の穴あけ治具は、ウェルの個数が最も多いマイクロプレートのウェル数と同数の突起部を有していることが好ましい。
【符号の説明】
【0096】
1 マイクロプレート
1A 96穴マイクロプレート(マイクロプレート)
1B 384穴マイクロプレート(マイクロプレート)
2 上面
3 側面
4,4A,4B ウェル
5 シール材
10,10′ 穴あけ治具
11 平面部
12,#11,#12,#13,#14,12X,12Y,12Z 突起部
12e 先端部
12f 傾斜面
12h,12h′ 穴部
13 位置決め壁部(位置決め部)
13a 内面
14 角部端面(位置決め部)
15 補助面部
16 足部
20 台座部材
21 底面部
22 周壁部
22a 上端面
22b 外面
23 収容空間
30,30′ リムーバー治具
31,31′ 壁部
31a 内面
31b 外面
31L 下壁部
31U 上壁部
32 固定部
33 押上げ部
33a 押上げ面部
33b 操作面部
34 連結部
L 突出長さ
X 平面部から足部の先端までの距離
図1
図2
図3
図4
図5
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