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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】角膜ジストロフィーの治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/30 20150101AFI20230307BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230307BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230307BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230307BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20230307BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20230307BHJP
【FI】
A61K35/30
A61K48/00
A61K31/7088 ZNA
A61P27/02
C12N15/09 110
C12N5/10
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021131116
(22)【出願日】2021-08-11
(62)【分割の表示】P 2018545108の分割
【原出願日】2016-11-14
(65)【公開番号】P2021183626
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】62/255,310
(32)【優先日】2015-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518168616
【氏名又は名称】ムーア タラ
(73)【特許権者】
【識別番号】518168627
【氏名又は名称】ネスビット アンドリュー
(73)【特許権者】
【識別番号】518169347
【氏名又は名称】リー ジーン
(73)【特許権者】
【識別番号】518168638
【氏名又は名称】チョ スン-ヨン
(73)【特許権者】
【識別番号】518168649
【氏名又は名称】デディオニシオ ラリー
(73)【特許権者】
【識別番号】515179406
【氏名又は名称】アベリノ ラボ ユーエスエー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Avellino Lab USA, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ネスビット アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】リー ジーン
(72)【発明者】
【氏名】チョ スン-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】デディオニシオ ラリー
(72)【発明者】
【氏名】ムーア タラ
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/073978(WO,A2)
【文献】特表2018-520149(JP,A)
【文献】国際公開第2014/130518(WO,A1)
【文献】特表2017-504312(JP,A)
【文献】International Journal of Ophthalmology & Eye Science (IJOES),2015年08月27日,S2:002,7-18
【文献】Gene Therapy,2015年08月20日,23,108-112
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00
A61K 31/00
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
角膜ジストロフィーの予防、改善、又は治療を必要とする対象から単離された角膜縁上皮幹細胞において角膜ジストロフィー標的核酸中の核酸突然変異を操作するためのキットであって、
角膜縁上皮幹細胞中の角膜ジストロフィー標的核酸とハイブリダイズするガイドRNA核酸(ここで、前記角膜ジストロフィー標的核酸は、TGFβI、COL4A1、COL4A2、COL4A3、COL4A4、LOX、SPARC、LRRN1、HGF、AKAP13、ZNF469、ATG12P2、GS1-256O22.5、PLEKHA6、APOL4、SLC44A3、SLC6A18、SLC29A3、RANBP3L、KCNMA1、MUC5AC、CROCC、ATHL1、PLP1、KRT3、KRT12、GSN、又はUBIAD1の標的核酸である)と、
ヌクレアーゼをコードするヌクレアーゼ核酸と
を備え、
野生型の角膜ジストロフィー標的核酸又はそのフラグメントを含む修復核酸を更に備えていてもよい、キット。
【請求項2】
前記角膜ジストロフィー標的核酸が、TGFβI標的核酸であり、前記核酸突然変異が、TGFβIポリペプチド中のアルギニン124、アルギニン555、又はヒスチジン626のアミノ酸置換をコードする、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記核酸突然変異が、R124C、R124H、R124L、R555W、R555Q及びH626Pから選択されるアミノ酸置換をコードする、請求項2に記載のキット。
【請求項4】
前記角膜ジストロフィー標的核酸が、COL4A1、COL4A2、COL4A3、COL4A4、LOX、SPARC、LRRN1、HGF、AKAP13、ZNF469、ATG12P2、GS1-256O22.5、PLEKHA6、APOL4、SLC44A3、SLC6A18、SLC29A3、RANBP3L、KCNMA1、MUC5AC、CROCC、ATHL1、又はPLP1の標的核酸であり、
前記核酸突然変異が、COL4A1中のQ1334H、COL4A2中のG683A、COL4A2中のP718S、COL4A2中のR517K、COL4A3中のD326Y、COL4A3中のH451R、COL4A4中のV1327M、LOX中のR158Q、AKAP13中のA1046T、AKAP13中のG624V、ZNF469中のG2358R、SLC29A3中のS158F、MUC5AC中のP4493S、CROCC中のP370S、又はそれらの任意の組み合わせから選択されるアミノ酸置換をコードする、
請求項1に記載のキット。
【請求項5】
前記核酸突然変異が、rs3742207、rs3803230、rs9583500、rs7990383、rs55703767、rs11677877、rs2229813、rs1800449、rs1053411、rs2116780、rs3749350、rs2286194、rs12536657、rs2614668、rs745191、rs12598474、rs10932976、rs5908678、rs35803438、rs132728、rs132729、rs132730、rs859063、rs2893276、rs6687749、rs13189855、rs6876514、rs6876515、rs13361701、rs883764、rs780667、rs780668、rs13166148、rs10941287、rs7907270、rs200922784、rs9435793、rs116300974、又はrs2233696に相当する、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
前記角膜ジストロフィー標的核酸が、TGFβI標的核酸であり、前記核酸突然変異が、TGFβI標的核酸中のLeu509Arg、Arg666Ser、Gly623Asp、Arg555Gln、Arg124Cys、Val505Asp、Ile522Asn、Leu569Arg、His572Arg、Arg496Trp、Pro501Thr、Arg514Pro、Phe515Leu、Leu518Pro、Leu518Arg、Leu527Arg、Thr538Pro、Thr538Arg、Val539Asp、Phe540del、Phe540Ser、Asn544Ser、Ala546Thr、Ala546Asp、Phe547Ser、Pro551Gln、Leu558Pro、His572del、Gly594Val、Val613del、Val613Gly、Met619Lys、Ala620Asp、Asn622His、Asn622Lys、Asn622Lys、Gly623Arg、Gly623Asp、Val624_Val625del、Val624Met、Val625Asp、His626Arg、His626Pro、Val627SerfsX44、Thr629_Asn630insAsnValPro、Val631Asp、Arg666Ser、Arg555Trp、Arg124Ser、Asp123delins、Arg124His、Arg124Leu、Leu509Pro、Leu103_Ser104del、Val113Ile、Asp123His、Arg124Leu、及び/又はThr125_Glu126delからなる群から選択されるアミノ酸置換をコードする、請求項1に記載のキット。
【請求項7】
前記角膜ジストロフィー標的核酸が、KRT3標的核酸であり、前記核酸突然変異が、KRT3標的核酸中のGlu498Val、Arg503Pro、及び/又はGlu509Lysからなる群から選択されるアミノ酸置換をコードする、請求項1に記載のキット。
【請求項8】
前記角膜ジストロフィー標的核酸が、KRT12標的核酸であり、前記核酸突然変異が、KRT12標的核酸中のMet129Thr、Met129Val、Gln130Pro、Leu132Pro、Leu132Val、Leu132His、Asn133Lys、Arg135Gly、Arg135Ile、Arg135Thr、Arg135Ser、Ala137Pro、Leu140Arg、Val143Leu、Lle391_Leu399dup、Ile426Val、Ile426Ser、Tyr429Asp、Tyr429Cys、Arg430Pro、及び/又はLeu433Argからなる群から選択されるアミノ酸置換をコードする、請求項1に記載のキット。
【請求項9】
前記角膜ジストロフィー標的核酸が、GSN標的核酸であり、前記核酸突然変異が、GSN標的核酸中のAsp214Tyrのアミノ酸置換をコードする、請求項1に記載のキット。
【請求項10】
前記角膜ジストロフィー標的核酸が、UBIAD1標的核酸であり、前記核酸突然変異が、UBIAD1標的核酸中のAla97Thr、Gly98Ser、Asn102Ser、Asp112Asn、Asp112Gly、Asp118Gly、Arg119Gly、Leu121Val、Leu121Phe、Val122Glu、Val122Gly、Ser171Pro、Tyr174Cys、Thr175Ile、Gly177Arg、Lys181Arg、Gly186Arg、Leu188His、Asn232Ser、Asn233His、Asp236Glu、及び/又はAsp240Asnからなる群から選択されるアミノ酸置換をコードする、請求項1に記載のキット。
【請求項11】
前記角膜ジストロフィーが眼レーザー手術後に生じる、請求項1~10のいずれかに記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して角膜ジストロフィーの治療に対する方法に関する。特に、本開示は、遺伝子突然変異と関連する角膜ジストロフィーの治療に対する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
角膜ジストロフィーは、眼の外層(角膜)における一群の遺伝性障害である。例えば、角膜ジストロフィーは、眼の透明な前部である角膜における物質の異常な沈着を特徴とする場合がある。角膜ジストロフィーとして、限定されないが、以下の4つのIC3Dカテゴリーの角膜ジストロフィーが挙げられる(例えば、非特許文献1を参照されたい):上皮及び上皮下のジストロフィー、上皮間質TGFβIジストロフィー、実質ジストロフィー、及び内皮ジストロフィー。角膜ジストロフィーは、トランスフォーミング成長因子、ベータ誘導(TGFβI)、ケラチン3(KRT3)、ケラチン12(KRT12)、GSN、又はUbiAプレニルトランスフェラーゼドメイン含有タンパク質1(UBIAD1)に位置する突然変異によって引き起こされ得る。
【0003】
例えば、かかる角膜ジストロフィーのサブセットである上皮間質角膜ジストロフィーは、トランスフォーミング成長因子ベータ誘導(TGFβI)遺伝子中の突然変異と関連することが知られている。TGFβI遺伝子は、I型、II型及びIV型のコラーゲンに結合するタンパク質を含む、アルギニル-グリシル-アスパラギン酸(RGD)をコードする。RGDモチーフは、細胞接着を調節する多くの細胞外マトリックスタンパク質で見られ、幾つかのインテグリンに対するリガンド認識配列としてはたらく。幾つかの場合、上皮間質角膜ジストロフィーは互いに区別され、該疾患の臨床的特徴である、混濁の臨床所見、及び沈着の組織病理学的な染色特性に基づいて、サブタイプに分類される。いかなる特定の理論に結び付けられるものではないが、TGFβI遺伝子中の特定の突然変異が、かかる角膜ジストロフィーに関連する特定の表現型の原因となり、種々の表現型の臨床的特徴の原因となる角膜混濁は、突然変異したコードされるTGFβIタンパク質の全て又は一部の沈着に起因すると考えられる。顆粒状角膜ジストロフィーII型としても知られている、アベリーノ角膜ジストロフィーは、上皮間質角膜ジストロフィーの形態であり、表層中心角膜実質における不規則な形状の境界が明瞭な顆粒の沈着、及び進行性の視力障害を特徴とする。アベリーノ角膜ジストロフィーを患うヘテロ接合の患者は、年齢と共に視力を喪失し、晩年の数年に重篤となる。対照的に、ホモ接合の患者は、6歳までに重篤から完全に視力を喪失する。
【0004】
円錐角膜(KTCN)は、家族歴が陽性の対象のおよそ6%~23.5%に最も一般的な角膜拡張障害である(非特許文献2)。KTCNの報告される罹患率は、100000名当たり8.8名~54.4名の範囲である。罹患率におけるこの変動は、部分的には、該疾患を診断するために使用される種々の基準に起因する(非特許文献3、及び非特許文献4)。KTCNの遺伝原因を明らかにしようとする文献には、多くの研究が存在する。これらの研究は、実験パラメーターに依存する疾患の病因学に寄与すると考えられる、多数の可能性のある遺伝子変異体又は一塩基変異多型(SNP)を明らかにした。一連の円錐角膜の間、中心か傍中心の角膜が進行性の菲薄化及び前方突出を経て、不正乱視を引き起こす。遺伝パターンは、顕著ではなく、予測可能でもないが、陽性の家族歴が報告されている。円錐角膜の発生率は、2000名に1名であることが、しばしば報告される。円錐角膜は、ボーマン層の断片化、実質部の菲薄化及び上皮の積層、デスメ膜の皺襞又は破損、並びに可変的なびまん性角膜瘢痕化を含む、病理学的所見を示す場合がある。
【0005】
角膜ジストロフィーの初期段階は、角膜浮腫を軽減するために高張性の目薬及び軟膏で
最初に治療され、外科的処置に先立って症状改善を提供する場合がある。角膜ジストロフィーによって引き起こされた準最適視力は、通常角膜移植の形態の外科的処置を必要とする。しかしながら、利用可能なドナー角膜組織の不足により、外科的処置の使用が制限される。しかしながら、更に、ドナー移植片における疾患の再発が角膜移植に続いて生じる場合がある。角膜移植に続いて生じ得る他の合併症として、例えば、瘢痕化、白内障形成、移植切開からの流体の漏出、感染症、及び視力の問題が挙げられる。したがって、角膜ジストロフィーの治療に対する代替法が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Weiss et al.,Cornea 34(2):117-59(2015)
【文献】Wheeler,J.,Hauser,M.A.,Afshari,N.A.,Allingham,R.R.,Liu,Y.,Reproductive Sys Sexual Disord 2012;S:6
【文献】Wheeler,J.,Hauser,M.A.,Afshari,N.A.,Allingham,R.R.,Liu,Y.,Reproductive Sys Sexual Disord 2012;S:6
【文献】Nowak,D.,Gajecka,M.,Middle East Afr J Ophthalmol 2011;18(1):2-6
【発明の概要】
【0007】
本明細書では、角膜ジストロフィーの治療の必要のある対象の角膜ジストロフィーの治療に対する組成物、方法及びシステムを提供する。特定の実施の形態では、角膜ジストロフィーは顆粒状角膜ジストロフィーII型である。他の実施の形態では、角膜ジストロフィーは円錐角膜である。或る実施の形態では、角膜ジストロフィーは、例えばTGFBI、KRT3、KRT12、GSN、及び/又はUBIAD1の遺伝子における一塩基変異多型(SNP)と関連する。
【0008】
或る一つの態様では、角膜ジストロフィーの予防、改善、又は治療を必要とする対象において、角膜ジストロフィーを予防する、改善する、又は治療する方法を提供する。
【0009】
或る実施の形態では、上記方法は、対象に由来する幹細胞における角膜ジストロフィー標的核酸中の核酸突然変異を操作して、核酸の突然変異を修正することにより、操作された幹細胞を形成し、該操作された幹細胞を上記対象に移植することを含む。追加の実施の形態では、上記方法は、移植に先立って操作された幹細胞を培養し、複数の操作された幹細胞を形成することを含み、移植は、複数の操作された幹細胞を移植することを含む。更なる実施の形態では、上記方法は、対象に由来する複数の幹細胞における核酸突然変異を操作して核酸突然変異を修正し、それにより1以上の操作された幹細胞を形成すること、該1以上の操作された幹細胞を単離すること、及び該1以上の操作された幹細胞を移植することを含む。また更なる実施の形態では、上記方法は、移植に先立って1以上の操作された幹細胞を培養することにより、複数の操作された幹細胞を形成することを含み、移植は複数の操作された幹細胞を移植することを含む。或る実施の形態では、上記方法は、角膜ジストロフィー標的核酸に核酸突然変異を含む対象幹細胞から得ることを更に含む。
【0010】
或る実施の形態では、上記方法は、a)角膜ジストロフィー標的核酸中に核酸突然変異を含む複数の幹細胞を対象から得る工程、b)複数の幹細胞の1以上の幹細胞中の核酸突然変異を操作して、核酸突然変異を修正することにより、1以上の操作された幹細胞を形成する工程、c)上記1以上の操作された幹細胞を単離する工程、及びd)上記1以上の操作された幹細胞を上記対象に移植する工程、を含む。或る実施の形態では、角膜ジスト
ロフィー標的核酸はTGFβI標的核酸である。他の実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、COL4A1-4、LOX、SPARC、LRRN1、HGF、AKAP13、ZNF469、ATG12P2、GS1-256O22.5、PLEKHA6、APOL4、SLC44A3、SLC6A18、SLC29A3、RANBP3L、KCNMA1、MUC5AC、CROCC、ATHL1、又はPLP1の標的核酸である。
【0011】
或る実施の形態では、操作後に培養を行う。
【0012】
或る実施の形態では、単離された複数の幹細胞に1組の核酸操作試薬を導入することによって核酸突然変異を操作し、それにより該核酸操作試薬が1以上の複数の幹細胞における核酸突然変異を修正する。更なる実施の形態では、電気穿孔、トランスフェクション、又はウイルス送達を用いて、核酸操作試薬を複数の幹細胞に導入する。
【0013】
特定の実施の形態では、及び上記のいずれかによれば、核酸突然変異は、TGFβIポリペプチド中のアルギニン124、アルギニン555又はヒスチジン666のアミノ酸置換をコードする。或る実施の形態では、核酸突然変異は、R124C、R124H、R124L、R555W、R555Q及びH626Pからのアミノ酸置換の選択をコードする。
【0014】
或る実施の形態では、核酸突然変異は、COL4A1中のアミノ酸置換Q1334Hをコードする。或る実施の形態では、核酸突然変異は、COL4A2中のアミノ酸置換G683Aをコードする。或る実施の形態では、核酸突然変異は、COL4A2中のアミノ酸置換P718Sをコードする。或る実施の形態では、核酸突然変異は、COL4A2中のアミノ酸置換R517Kをコードする。或る実施の形態では、核酸突然変異は、COL4A3中のアミノ酸置換D326Yをコードする。或る実施の形態では、核酸突然変異は、COL4A3中のアミノ酸置換H451Rをコードする。或る実施の形態では、核酸突然変異は、COL4A4中のアミノ酸置換V1327Mをコードする。或る実施の形態では、核酸突然変異は、LOX中のアミノ酸置換R158Qをコードする。或る実施の形態では、核酸突然変異は、AKAP13の中のアミノ酸置換A1046Tをコードする。或る実施の形態では、核酸突然変異は、AKAP13中のアミノ酸置換G624Vをコードする。或る実施の形態では、核酸突然変異は、ZNF469中のアミノ酸置換G2358Rをコードする。或る実施の形態では、核酸突然変異は、SLC29A3中のアミノ酸置換S158Fをコードする。或る実施の形態では、核酸突然変異は、MUC5AC中のアミノ酸置換P4493Sをコードする。或る実施の形態では、核酸突然変異は、CROCC中のアミノ酸置換P370Sをコードする。
【0015】
或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs3742207に対応する(例えば、米国立バイオテクノロジー情報センターのdbSNPデータベース中のrs3742207によって識別されるSNP)。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs3803230に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs9583500に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs7990383に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs55703767に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs11677877に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs2229813に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs1800449に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs1053411に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs2116780に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs3749350に対応する。或る実
施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs2286194に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs12536657に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs2614668に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs745191に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs12598474対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs10932976に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs5908678に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs35803438に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs132728に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs132729に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs132730対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs859063に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs2893276に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs6687749対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs13189855に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs6876514に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs6876515に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs13361701に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs883764に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs780667に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs780668に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs13166148に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs10941287に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs7907270に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs200922784に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs9435793に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs116300974に対応する。或る実施の形態では、核酸突然変異は参照SNPクラスター識別子rs2233696に対応する。
【0016】
或る実施の形態では、及び上記のいずれかによれば、幹細胞は自己由来又は相同性ドナーから得られる。或る実施の形態では、上記方法は、対象から角膜ジストロフィー標的核酸中に核酸突然変異を含む幹細胞を得ることを含む。
【0017】
特定の実施の形態では、及び上記のいずれかによれば、複数の幹細胞は、角膜縁上皮幹細胞、口腔の粘膜上皮幹細胞、歯の幹細胞、毛包幹細胞、間葉系幹細胞、臍帯ライニング(umbilical cord lining)幹細胞、又は胚性幹細胞である。特定の実施の形態では、複数の幹細胞の細胞は角膜縁上皮幹細胞である。
【0018】
或る実施の形態では、核酸操作試薬のセットは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、再設計(reengineered)ホーミングヌクレアーゼ、RNA干渉(RNAi)試薬、又はクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)/ヌクレアーゼ系試薬を含む。
【0019】
特定の実施の形態では、核酸操作試薬は、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)/ヌクレアーゼシステムの試薬であり、a)複数の幹細胞のDNA分子内の角膜ジストロフィー標的核酸とハイブリダイズするガイドRNA核酸と、
b)ヌクレアーゼをコードするヌクレアーゼ核酸とを含む。かかる実施の形態では、ガイドRNAが標的核酸を標的とし(例えば、それとハイブリダイズする)、ヌクレアーゼが標的DNA分子を切断する。或る実施の形態では、CRISPR/ヌクレアーゼシステムの試薬は、c)野生型の角膜ジストロフィー標的核酸又はそのフラグメントを含む修復核酸を更に含む。かかる実施の形態では、ガイドRNAは、標的核酸とハイブリダイズして、ヌクレアーゼがDNA分子を切断することにより標的核酸切断部位を作り、それによって標的核酸切断部位の生成後に修復核酸は角膜ジストロフィー標的核酸と相同的に組み換えることができる。或る実施の形態では、ガイドRNA及び/又は修復核酸は検出可能な標識を含む。特定の実施の形態では、検出可能な標識は、核酸バーコード又は蛍光バーコード標識である。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸はTGFβI標的核酸である。他の実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、COL4A1-4、LOX、SPARC、LRRN1、HGF、AKAP13、ZNF469、ATG12P2、GS1-256O22.5、PLEKHA6、APOL4、SLC44A3、SLC6A18、SLC29A3、RANBP3L、KCNMA1、MUC5AC、CROCC、ATHL1又はPLP1の標的核酸である。或る実施の形態では、COL4A1-4、LOX、SPARC、LRRN1、HGF、AKAP13、ZNF469、ATG12P2、GS1-256O22.5、PLEKHA6、APOL4、SLC44A3、SLC6A18、SLC29A3、RANBP3L、KCNMA1、MUC5AC、CROCC、ATHL1又はPLP1の標的核酸の2以上が操作される。或る実施の形態では、TGFβI標的核酸と、COL4A1-4、LOX、SPARC、LRRN1、HGF、AKAP13、ZNF469、ATG12P2、GS1-256O22.5、PLEKHA6、APOL4、SLC44A3、SLC6A18、SLC29A3、RANBP3L、KCNMA1、MUC5AC、CROCC、ATHL1及びPLP1の標的核酸からなる群から選択される1以上の標的核酸が操作される。
【0020】
或る実施の形態では、CRISPR/ヌクレアーゼ系試薬は、非相同末端結合(NHEJ)経路に関与する遺伝子を抑制することにより、複数の幹細胞において相同組み換えの頻度を増加させる1以上の薬剤を更に含む。特定の実施の形態では、ヌクレアーゼはCas9ヌクレアーゼである。
【0021】
例示的な実施の形態では、及び上記のいずれかによれば、角膜ジストロフィーは眼レーザー手術の後に生じる。
【0022】
更なる実施の形態では、及び上記のいずれかによれば、方法は、単離された1以上の操作された幹細胞から安定した細胞株を樹立することを更に含む。
【0023】
或る実施の形態では、上記方法は、d)1以上の所定頻度(例えば毎週、毎月、三ヶ月毎、半年毎、毎年等)に対象への1以上の操作された幹細胞の移植を繰り返すことを更に含む。
【0024】
第2の態様では、角膜ジストロフィーの治療の必要のある対象の角膜ジストロフィーの治療に対するキットが本明細書において提供される。キットは、角膜ジストロフィー標的核酸とハイブリダイズするガイドRNA核酸と、ヌクレアーゼをコードするヌクレアーゼ核酸とを備える。或る実施の形態では、キットはまた、野生型の角膜ジストロフィー標的核酸又はそのフラグメントを含む修復核酸を備える。
【0025】
その追加的な実施と並んで、対象系及び方法の前述の実施についてのより良い理解のため、参照数字が図の全体にわたる対応部位を指す以下の図面と共に、下記の実施の説明が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本明細書に記載される主題の或る一つの特定の実施の形態の概要を示す図である。
図2】本明細書に提供される主題の方法を使用して修復することができる例示的な突然変異を示す図である。
図3】新規PAMに対する変異体の位置を示す図である。
図4】ストレプトコッカス・ピオゲネスCas9ヌクレアーゼを使用して、pSpCas9(BB)-2A-Puro(PX459)を含むCRISPR/Cas9系に対する例示的なベクターを示す図である。
図5】野生型及び突然変異体のケラチン12(K12)対立遺伝子を標的とするsgRNAsの例示的な設計を示す図である。K12-L132P対立遺伝子上に見出されたSNP由来PAMを使用するためのsgRNAを設計した(赤色)。このPAMは野生型対立遺伝子には存在しない。また、野生型及び突然変異体のK12対立遺伝子(緑色)を標的とする、第2のsgRNAを設計し、陽性対照として使用した。
図6】外因性発現コンストラクトを使用して、対立遺伝子特異性及びsgK12LPの効能の評価を示す図である。野生型及び突然変異体K12に対する外因性発現コンストラクトを利用して、sgK12LPの対立遺伝子特異性及び効能を試験した。(a)デュアルルシフェラーゼアッセイは、sgK12LPプラスミドの対立遺伝子特異性を実証したが、効能はsgK12コンストラクトのそれに匹敵することが示された。N=8(b)ウェスタンブロッティングは、処理したがK12野生型タンパク質を発現する細胞と比較して、sgK12LPで処理した細胞におけるK12-L132Pタンパク質の顕著な減少によりこれらの特質を更に実証した。β-アクチンをローディング対照として使用した。(c)野生型及び突然変異体の対立遺伝子の両方を発現する細胞の全K12に対する定量的逆転写酵素-PCRは、mRNA発現におけるノックダウンを実証した。N=4(d)その後、このmRNAのノックダウンの対立遺伝子割合をピロシーケンスによって定量し、両方のKRT12対立遺伝子を共発現し、sgK12LPで処理された細胞における突然変異対立遺伝子のノックダウンを確認した。N=、4、P<0.05、**P<0.01、***P<0.001.
図7】sgK12LP誘導性NHEJをin vivoで示す。GFP発現が実質内注射後24時間にマウスの角膜上皮で観察され、角膜上皮をトランスフェクトするための実質内プラスミド注射の効能を実証した(a;N=2)。GFP発現は、注射後48時間で観察されなかった。sgK12LPコンストラクトを注入したヒトのK12-L132Pヘテロ接合マウスに由来するgDNAの配列決定は、大きな欠失、及びKRT12-L132P対立遺伝子の切断によるNHEJの誘導を実証した。配列決定した13個のクローンのうち5個は、NHEJ(b)を経たことがわかった。
図8】TGFBI突然変異R514P(A)、L518R(B)及びL509R(C)に対して設計されたSNP由来PAMガイドRNAを使用する結果を示し、ルシフェラーゼ発現を使用して野生型及び突然変異体の対立遺伝子発現を評価することを示す図である。陽性対照(sgW又はsgWT)ガイドを、WT(青色バー)及びMUT(赤色バー)の両方の対立遺伝子を切断するように設計し、上に示されるように、予想通り両方の対立遺伝子を切断した。L518R(sgM又はsgMUT)に使用したガイドは、突然変異対立遺伝子(赤色バー)の最小の切断により、最も大きな対立遺伝子特異性を示す。陰性対照ガイド(sgN又はsgNSC)は、予想通りWT又はMUT DNAのいずれも切断しなかった。
図9】R124に対して設計された突然変異対立遺伝子特異的ガイドRNAを使用する結果を示す図である。TGFBI突然変異及びルシフェラーゼ発現を使用して、野生型及び突然変異体の対立遺伝子発現を評価した。陽性対照sgWTガイドをWT及びMUTの対立遺伝子の両方を切断するように設計し、上に示されるように、予想通りに両方の対立遺伝子を切断する(各グラフの青色及び赤色のバーである中間のバー)。20mer長を有するガイドは、更なるWT対立遺伝子DNAエディティングを示した。該アッセイを18merに短縮した対立遺伝子特異的RNAガイドを用いて繰り返した。これは、WT DNAの切断量を減少した(グラフの右側パネル及びグラフの右側のバー(青色バー))。
図10】左眼を非特異的陰性対照sgRNAでトランスフェクトし、右眼をLuc2を標的とするsgRNAでトランスフェクトしたことを示す図である。
図11】ストレプトコッカス・ピオゲネス(Spy)及びスタフィロコッカス・アウレウスに由来するCas9ヌクレアーゼの例示的なsgRNA配列、ヌクレオチド、及びアミノ酸配列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
I.緒言
角膜ジストロフィーは、眼の透明な前部である角膜における物質の異常な沈着を特徴とする、一群の遺伝性障害である。かかる角膜ジストロフィーのサブセットである、上皮実質角膜ジストロフィーは、トランスフォーミング成長因子ベータ誘導性(TGFβI)遺伝子中の突然変異に関連することが知られている。TGFβI遺伝子は、I型、II型及びIV型のコラーゲンに結合するRGD含有タンパク質をコードする。
【0028】
幾つかの場合には、上皮実質角膜ジストロフィーは、混濁の臨床所見、疾患の臨床的特徴、及び寄託の組織病理学の染色性に基づいて互いに区別され、サブタイプに分けられる。いかなる特定の理論に結び付けられるものではないが、TGFβI遺伝子中の特定の突然変異は、かかる角膜ジストロフィーに関連する特定の表現型を説明し、種々の表現型の臨床的特徴を説明する角膜混濁は、全部又は一部の突然変異したコードされたTGFβIタンパク質の沈着に起因すると考えられる。
【0029】
組織修復及び再生のための幹細胞系治療法は、角膜ジストロフィーを含む多くの眼障害の有望な治療法を提供する。幹細胞は、様々な成熟細胞系統を生成する自己複製及び分化が可能である。かかる細胞の移植は、標的組織(例えば角膜の組織)を再構成するための臨床ツールとして利用することができ、それにより、生理学的及び解剖学的な機能性を回復する。
【0030】
核酸操作試薬の開発における進歩は、幹細胞における核酸(例えばDNA及びRNA)の単純で効率的な操作を可能とした。CRISPR試薬の開発は、DNAにコードされた、RNA媒介、DNA又はRNAをターゲットとする配列に特異的なターゲッティングを提供する。CRISPRシステムは、例えば、標的細胞ゲノムへのドナーDNAの正確な挿入に使用することができる。かかる核酸操作試薬によって、研究者は正確に特定のゲノム要素を操作することができるようになった。
【0031】
本開示は、少なくとも一部は、幹細胞に基づくアプローチを使用して、眼の疾患の治療に対する方法の発見に基づく。特定の実施の形態では、眼のジストロフィーに対する治療を受けている対象から単離した幹細胞を得て、眼の疾患に関連する突然変異対立遺伝子を修正するためのCRISPRシステム試薬を使用して遺伝子修飾を行う。
【0032】
或る一つの態様では、角膜ジストロフィーの治療に対する方法が本明細書で提供される(例えば図1)。上記方法は、例えば、対象に由来する幹細胞において角膜ジストロフィー標的核酸中の核酸突然変異を操作して、核酸突然変異を修正することにより、操作された幹細胞を形成し、該操作された幹細胞を対象に移植することを含む。或る実施の形態では、上記方法は、対象から標的角膜ジストロフィー核酸中に核酸突然変異を含む複数の幹細胞を得る工程、b)複数の幹細胞の1以上の幹細胞中の核酸突然変異を操作して、核酸突然変異を修正することにより、1以上の操作された幹細胞を形成する工程、c)1以上の操作された幹細胞を単離する工程、及びd)1以上の操作された幹細胞を対象に移植す
る工程、を含む。主題の方法の特徴を、以下に更に詳細に説明する。
【0033】
II.角膜ジストロフィー
本明細書に提供される方法は、1以上角膜ジストロフィーの治療を必要とする対象における、1以上角膜ジストロフィーの治療方法である。
【0034】
上記方法で治療することができる対象として、限定されないが、マウス、ラット、イヌ、ヒヒ、ブタ、又はヒト等の哺乳動物の対象が挙げられる。或る実施の形態では、対象はヒトである。上記方法を使用して、1歳、2歳、3歳、5歳、10歳、15歳、20歳、25歳、30歳、35歳、40歳、45歳、50歳、55歳、60歳、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、又は100歳の対象を治療することができる
【0035】
本明細書で使用される「角膜ジストロフィー」は、眼の外層(角膜)における一群の遺伝性障害を指す。例えば、角膜ジストロフィーは、角膜における両側性の物質の異常な沈着を特徴とする場合がある。角膜ジストロフィーとして、限定されないが、以下の4つのIC3Dカテゴリーの角膜ジストロフィーが挙げられる(例えば、Weiss et al.,Cornea 34(2):117-59(2015)を参照されたい):上皮及び上皮下ジストロフィー、上皮実質TGFβIジストロフィー、実質ジストロフィー、及び内皮ジストロフィー。或る実施の形態では、角膜ジストロフィーは、基底膜ジストロフィー(EBMD)、メースマン(Meesmann)角膜ジストロフィー(MECD)、ティール-ベンケ(Thiel-Behnke)角膜ジストロフィー(TBCD)、格子状角膜ジストロフィー(LCD)、顆粒状角膜ジストロフィーGCD)及びシュナイダー(Schnyder)角膜ジストロフィー(SCD)からなる群から選択される。更なる実施の形態では、本明細書において角膜ジストロフィーはMECDを除外する。
【0036】
追加実施の形態では、角膜ジストロフィーは、例えば、トランスフォーミング成長因子、ベータ誘導(TGFBI)、ケラチン3(KRT3)、ケラチン12(KRT12)、GSN、及びUbiAプレニルトランスフェラーゼドメイン含有1(UBIAD1)からなる群から選択される遺伝子中に位置するものを含む、SNP等の1以上の突然変異によって引き起こされる。更なる実施の形態では、SNP部位は、本明細書に示される突然変異タンパク質中の突然変異体アミノ酸のコード化をもたらす。更なる実施の形態では、SNP部位を含む突然変異体配列は、(i)例えばタンパク質アクセッション番号Q15582のTGFBIにおいて、Leu509Arg、Arg666Ser、Gly623Asp、Arg555Gln、Arg124Cys、Val505Asp、Ile522Asn、Leu569Arg、His572Arg、Arg496Trp、Pro501Thr、Arg514Pro、Phe515Leu、Leu518Pro、Leu518Arg、Leu527Arg、Thr538Pro、Thr538Arg、Val539Asp、Phe540del、Phe540Ser、Asn544Ser、Ala546Thr、Ala546Asp、Phe547Ser、Pro551Gln、Leu558Pro、His572del、Gly594Val、Val613del、Val613Gly、Met619Lys、Ala620Asp、Asn622His、Asn622Lys、Asn622Lys、Gly623Arg、Gly623Asp、Val624_Val625del、Val624Met、Val625Asp、His626Arg、His626Pro、Val627SerfsX44、Thr629_Asn630insAsnValPro、Val631Asp、Arg666Ser、Arg555Trp、Arg124Ser、Asp123delins、Arg124His、Arg124Leu、Leu509Pro、Leu103_Ser104del、Val113Ile、Asp123His、Arg124Leu、及び/又はThr125_Glu126delに対応する突然変異を含む突然変異体TGFBIタンパク質、(ii)例えばタンパク質アクセッション番号P12035又はNP_476429.2のケラチン3タンパク
質において、Glu498Val、Arg503Pro、及び/又はGlu509Lysに対応する突然変異を含む突然変異体KRT3タンパク質、(iii)例えばタンパク質アクセッション番号Q99456.1又はNP_000214.1のKRT12において、Met129Thr、Met129Val、Gln130Pro、Leu132Pro、Leu132Va、Leu132His、Asn133Lys、Arg135Gly、Arg135Ile、Arg135Thr、Arg135Ser、Ala137Pro、Leu140Arg、Val143Leu、Val143Leu、Lle391_Leu399dup、Ile426Val、Ile426Ser、Tyr429Asp、Tyr429Cys、Arg430Pro、及び/又はLeu433Argを含む突然変異体KRT12タンパク質、(iv)例えばタンパク質アクセッション番号P06396のGSNにおいてAsp214Tyrを含む突然変異体GSNタンパク質、並びに(v)例えばタンパク質アクセッション番号Q9Y5Z9のUBIAD1においてAla97Thr、Gly98Ser、Asn102Ser、Asp112Asn、Asp112Gly、Asp118Gly、Arg119Gly、Leu121Val、Leu121Phe、Val122Glu、Val122Gly、Ser171Pro、Tyr174Cys、Thr175Ile、Gly177Arg、Lys181Arg、Gly186Arg、Leu188His、Asn232Ser、Asn233His、Asp236Glu、及び/又はAsp240Asnに対応する突然変異を含む突然変異体UBIAD1タンパク質からなる群から選択される突然変異タンパク質をコードする。例えば、SNP部位を含む突然変異体配列は、少なくともタンパク質アクセッション番号Q15582のアミノ酸位置509に対応するアミノ酸位置のLeuのArgによる置換によって突然変異された突然変異体TGFBIタンパク質の少なくとも一部をコードする。この場合、SNP部位の突然変異は、タンパク質アクセッション番号Q15582のアミノ酸位置509に対応するアミノ酸位置での突然変異体アミノ酸のコード化を担う場合がある。本明細書で使用される、ヒトタンパク質中の特定の突然変異に「対応する」突然変異は、ヒトタンパク質の特定の突然変異の対応する部位で生じる、異なる種における突然変異を含んでもよい。また本明細書で使用されるように、突然変異タンパク質が、例えばLeu509Argの特定の突然変異体を含むと記載される場合、かかる突然変異タンパク質は、関連するヒトタンパク質中の、例えば、本明細書に記載されるタンパク質アクセッション番号Q15582のTGFBIタンパク質中の関連するヒトタンパク質における特定の突然変異体に対応する突然変異体部位で生じる任意の突然変異を含んでもよい。
【0037】
或る実施の形態では、本明細書に記載される突然変異体は、KRT12タンパク質中のいかなる突然変異体も除外する。或る実施の形態では、本明細書に記載される突然変異体は、例えばタンパク質アクセッション番号Q99456.1のKRT12中のLeu132Proに対応する突然変異を除外する。更なる実施の形態では、本明細書に記載されるSNPは、KRT12遺伝子に生じる任意のSNPを除外する。また更なる実施の形態では、本明細書に記載されるSNPは、KRT12タンパク質中のLeu132Pro突然変異をもたらす任意のSNPを除外する。SNPは、KRT12タンパク質中のLeu132Pro突然変異をもたらすPAM部位(AAG>AGG)のSNPを更に除外してもよい。
【0038】
上皮実質角膜ジストロフィーとして、ライス-ビュックラー角膜ジストロフィー、ティール・ベンケ角膜ジストロフィー、格子状角膜ジストロフィー1型、顆粒状角膜ジストロフィー1型、及び顆粒状角膜ジストロフィー2型が挙げられる。角膜実質ジストロフィーとして、斑状角膜ジストロフィー、シュナイダー角膜ジストロフィー、先天性角膜実質ジストロフィー、後部非晶質(posterior amorphous)角膜ジストロフィー、フランソワ中心部雲状変性、及びデスメ前角膜ジストロフィーが挙げられる。或る実施の形態では、上記方法は、上皮実質角膜ジストロフィーの治療に対する。或る実施の形態では、角膜ジストロフィーはライス-ビュックラー角膜ジストロフィーである。特定
の実施の形態では、角膜ジストロフィーはティール・ベンケ角膜ジストロフィーである。特定の実施の形態では、角膜ジストロフィーは格子状角膜ジストロフィー1型である。特定の実施の形態では、角膜ジストロフィーは顆粒状角膜ジストロフィー1型である。特定の実施の形態では、角膜ジストロフィーは顆粒状角膜ジストロフィー2型である。上皮実質ジストロフィーは、TGFβI中の突然変異によって引き起こされる。本明細書で使用される「トランスフォーミング成長因子、ベータ誘導」、「TGFBI」、「TGFβI」、「BIGH3」、「CDB1」、「CDG2」、「CDG1」、「CSD」、「CSD1」、「CSD2」、「CSD3」、「EBMD」、及び「LCD1」はいずれも、I型、II型及びIV型のコラーゲン(アクセッション番号:NM_00358及びMP_000349(ヒト)、並びにNM_009369及びMP_033395(マウス))に結合する、RGD含有タンパク質を指す。ヒトでは、TGFβIはTGFBI遺伝子、遺伝子座5q31によってコードされる。RGDモチーフは、細胞接着を調節する多くの細胞外マトリックスタンパク質で見られ、幾つかのインテグリンに対するリガンド認識配列としてはたらく。TGFβIは、トランスフォーミング成長因子ベータによって誘導され、細胞接着を阻害するように作用する。TGFBI遺伝子中の突然変異である上皮実質ジストロフィーにおいて、TGFβI構造は異常であり、角膜において、不溶性突然変異体TGFβI又はそのタンパク質分解フラグメントの堆積が起こる。
【0039】
他の実施の形態では、対象は顆粒状角膜ジストロフィーII型を有する。本明細書で使用される「顆粒状角膜ジストロフィーII型」、「アベリーノ角膜ジストロフィー」、「顆粒状角膜ジストロフィー2型」、及び「混合型顆粒状-格子状角膜ジストロフィー」はいずれも、TGFBI遺伝子中、染色体5q31の位置の突然変異によって引き起こされる顆粒状角膜ジストロフィーの常染色体優性形態を指す。幾つかの場合には、顆粒状角膜ジストロフィーII型は、表面の中心角膜実質中の不規則形状の境界明瞭な顆粒の堆積、及び進行性の視力障害を特徴とする。顆粒状角膜ジストロフィーII型を患うヘテロ接合の患者は、年齢と共に徐々に視力を失い、晩年にかけて重篤となる。病変は、最初の十年間内に現れ、3歳までに明らかになる場合がある。顆粒状角膜ジストロフィーII型の発症は、概してホモ接合の患者においてより早く、軽度の角膜びらんを伴う場合がある。視力は、通常、一連の病状の後期まで良好なままである。混濁は、最初は小さな表面の白っぽい斑点である。その後、環状又は星状の実質の混濁へと発展する。最終段階の混濁はより表面的で半透明であり、前部実質前部で癒着する場合がある。
【0040】
或る実施の形態では、対象は円錐角膜を有する。円錐角膜(KTCN)は、陽性の家族歴を持つ対象のおよそ6%~23.5%が有する最も一般的な角膜拡張性障害である(Wheeler,J.,Hauser,M.A.,Afshari,N.A.,Allingham,R.R.,Liu,Y.,Reproductive Sys Sexual
Disord 2012;S:6)。報告されるKTCNの罹患率は、100000名当たり8.8名~54.4名の範囲である。罹患率におけるこの変動は、部分的にはその疾患を診断に使用される種々の基準に起因する(Wheeler,J.,Hauser,M.A.,Afshari,N.A.,Allingham,R.R.,Liu,Y.,Reproductive Sys Sexual Disord 2012;S:6、及びNowak,D.,Gajecka,M.,Middle East Afr J Ophthalmol 2011;18(1):2-6)。KTCNの遺伝原因を明らかにしようとする多くの研究が文献に存在する。これらの研究は、実験パラメーターに依存して疾患の病因学に寄与すると考えられる、多数の可能性のある遺伝変異体又はSNPを明らかにした。
【0041】
以前に、ヘテロ接合の個体は、レーシック眼レーザー手術の後に視力喪失が加速されやすいことが発見された。特に、これらの患者において、手術から2年後、病原力の増加と共に、角膜の混濁の増加が観察され、最終的に完全な失明をもたらした(Jun,R.M
.et al.,Opthalmology,111:463,2004)。以前は、レーシック又はエキシマーレーザーの手術が、角膜ジストロフィーを患う患者のかすみ眼を解消するであろうという期待のもと、眼手術が行われた。30万の症例のレーシック手術の仮定数に対して、少なく見積もって顆粒状角膜ジストロフィーII型を患うヘテロ接合の患者1/1000人に基づき、300人が視力を失っていたであろう。レーシック手術法を受けた患者は、主に、生産活動を行う、20代及び30代である。さらに、米国における2000年のレーシック手術の承認の後、レーシック手術法を受けた、顆粒状角膜ジストロフィーII型を患うアフリカ系アメリカ人の患者は、失明したことがわかり、多くの同様の症例が世界の至る所で生じているかもしれないと推測される。
【0042】
或る実施の形態では、顆粒状角膜ジストロフィーII型を有する対象は、TGFβI中の突然変異についてホモ接合である。他の実施の形態では、顆粒状角膜ジストロフィーII型を有する対象は、TGFβIの中の突然変異についてヘテロ接合である。或る実施の形態では、対象は、TGFβIポリペプチド中のアルギニン124、アルギニン555又はヒスチジン626の置換をコードする突然変異を有する。特定の実施の形態では、核酸突然変異は、R124C、R124H、R124L、R555W、R555Q及びH626Pからのアミノ酸置換の選択をコードする。
【0043】
特定の実施の形態では、治療を受ける対象は顆粒状角膜ジストロフィー1型を有し、2歳、3歳、4歳、5歳、6歳、7歳、8歳、9歳、10歳、11歳、12歳、13歳、14歳、15歳、16歳、17歳、18歳、19歳、20歳、21歳、22歳、23歳、24歳、25歳、26歳、27歳、28歳、29歳、30歳、31歳、32歳、33歳、34歳、35歳、36歳、37歳、38歳、39歳、40歳、41歳、42歳、43歳、44歳、45歳、46歳、47歳、48歳、49歳、50歳、51歳、52歳、53歳、54歳、55歳、56歳、57歳、58歳、59歳、60歳、61歳、62歳、63歳、64歳、65歳、66歳、67歳、68歳、69歳、70歳、71歳、72歳、73歳、74歳、75歳、76歳、77歳、78歳、79歳、80歳、81歳、82歳、83歳、84歳、85歳、86歳、87歳、88歳、89歳、90歳、91歳、92歳、93歳、94歳、95歳、96歳、97歳、98歳、99歳、又は100歳である。或る実施の形態では、治療を受ける対象は顆粒状角膜ジストロフィー1型を有し、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、65、70、75、80、85、90、95、あるいは100歳である。
【0044】
特定の実施の形態では、治療を受ける対象は顆粒状角膜ジストロフィーII型を有し、2歳、3歳、4歳、5歳、6歳、7歳、8歳、9歳、10歳、11歳、12歳、13歳、14歳、15歳、16歳、17歳、18歳、19歳、20歳、21歳、22歳、23歳、24歳、25歳、26歳、27歳、28歳、29歳、30歳、31歳、32歳、33歳、34歳、35歳、36歳、37歳、38歳、39歳、40歳、41歳、42歳、43歳、44歳、45歳、46歳、47歳、48歳、49歳、50歳、51歳、52歳、53歳、54歳、55歳、56歳、57歳、58歳、59歳、60歳、61歳、62歳、63歳、64歳、65歳、66歳、67歳、68歳、69歳、70歳、71歳、72歳、73歳、74歳、75歳、76歳、77歳、78歳、79歳、80歳、81歳、82歳、83歳、84歳、85歳、86歳、87歳、88歳、89歳、90歳、91歳、92歳、93歳、94歳、95歳、96歳、97歳、98歳、99歳、又は100歳である。或る実施の形態では、治療を受ける対象は顆粒状角膜ジストロフィーII型を有し、少なくとも5歳、10歳、15歳、20歳、25歳、30歳、35歳、40歳、45歳、50歳、55歳、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、又は100歳である。
【0045】
特定の実施の形態では、治療を受ける対象は格子状角膜ジストロフィー1型を有し、2歳、3歳、4歳、5歳、6歳、7歳、8歳、9歳、10歳、11歳、12歳、13歳、1
4歳、15歳、16歳、17歳、18歳、19歳、20歳、21歳、22歳、23歳、24歳、25歳、26歳、27歳、28歳、29歳、30歳、31歳、32歳、33歳、34歳、35歳、36歳、37歳、38歳、39歳、40歳、41歳、42歳、43歳、44歳、45歳、46歳、47歳、48歳、49歳、50歳、51歳、52歳、53歳、54歳、55歳、56歳、57歳、58歳、59歳、60歳、61歳、62歳、63歳、64歳、65歳、66歳、67歳、68歳、69歳、70歳、71歳、72歳、73歳、74歳、75歳、76歳、77歳、78歳、79歳、80歳、81歳、82歳、83歳、84歳、85歳、86歳、87歳、88歳、89歳、90歳、91歳、92歳、93歳、94歳、95歳、96歳、97歳、98歳、99歳、又は100歳である。或る実施の形態では、治療を受ける対象は格子状角膜ジストロフィー1型を有し、少なくとも5歳、10歳、15歳、20歳、25歳、30歳、35歳、40歳、45歳、50歳、55歳、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、又は100歳である。
【0046】
特定の実施の形態では、治療を受ける対象はライス-ビュックラー角膜ジストロフィーを有し、2歳、3歳、4歳、5歳、6歳、7歳、8歳、9歳、10歳、11歳、12歳、13歳、14歳、15歳、16歳、17歳、18歳、19歳、20歳、21歳、22歳、23歳、24歳、25歳、26歳、27歳、28歳、29歳、30歳、31歳、32歳、33歳、34歳、35歳、36歳、37歳、38歳、39歳、40歳、41歳、42歳、43歳、44歳、45歳、46歳、47歳、48歳、49歳、50歳、51歳、52歳、53歳、54歳、55歳、56歳、57歳、58歳、59歳、60歳、61歳、62歳、63歳、64歳、65歳、66歳、67歳、68歳、69歳、70歳、71歳、72歳、73歳、74歳、75歳、76歳、77歳、78歳、79歳、80歳、81歳、82歳、83歳、84歳、85歳、86歳、87歳、88歳、89歳、90歳、91歳、92歳、93歳、94歳、95歳、96歳、97歳、98歳、99歳、又は100歳である。或る実施の形態では、治療を受ける対象はライス-ビュックラー角膜ジストロフィーを有し、少なくとも5歳、10歳、15歳、20歳、25歳、30歳、35歳、40歳、45歳、50歳、55歳、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、又は100歳である。
【0047】
特定の実施の形態では、治療を受ける対象は、ティール-ベンケ角膜ジストロフィーを有し、2歳、3歳、4歳、5歳、6歳、7歳、8歳、9歳、10歳、11歳、12歳、13歳、14歳、15歳、16歳、17歳、18歳、19歳、20歳、21歳、22歳、23歳、24歳、25歳、26歳、27歳、28歳、29歳、30歳、31歳、32歳、33歳、34歳、35歳、36歳、37歳、38歳、39歳、40歳、41歳、42歳、43歳、44歳、45歳、46歳、47歳、48歳、49歳、50歳、51歳、52歳、53歳、54歳、55歳、56歳、57歳、58歳、59歳、60歳、61歳、62歳、63歳、64歳、65歳、66歳、67歳、68歳、69歳、70歳、71歳、72歳、73歳、74歳、75歳、76歳、77歳、78歳、79歳、80歳、81歳、82歳、83歳、84歳、85歳、86歳、87歳、88歳、89歳、90歳、91歳、92歳、93歳、94歳、95歳、96歳、97歳、98歳、99歳、又は100歳である。或る実施の形態では、治療を受ける対象はティール-ベンケ角膜ジストロフィーを有し、少なくとも5歳、10歳、15歳、20歳、25歳、30歳、35歳、40歳、45歳、50歳、55歳、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、又は100歳である。
【0048】
或る実施の形態では、対象は円錐角膜を有し、次の角膜の標的核酸のうちの1つにおける突然変異についてホモ接合である:COL4A1-4、LOX、SPARC、LRRN1、HGF、AKAP13、ZNF469、ATG12P2、GS1-256O22.5、PLEKHA6、APOL4、SLC44A3、SLC6A18、SLC29A3、RANBP3L、KCNMA1、MUC5AC、CROCC、ATHL1、又はPLP1。
他の実施の形態では、対象は円錐角膜を有し、次の角膜の標的核酸のうちの1つにおける突然変異についてヘテロ接合である:COL4A1-4、LOX、SPARC、LRRN1、HGF、AKAP13、ZNF469、ATG12P2、GS1-256O22.5、PLEKHA6、APOL4、SLC44A3、SLC6A18、SLC29A3、RANBP3L、KCNMA1、MUC5AC、CROCC、ATHL1、又はPLP1。
【0049】
或る実施の形態では、対象はCOL4A1中のアミノ酸置換Q1334Hをコードする核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象はCOL4A2中のアミノ酸置換G683Aをコードする核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象はCOL4A2中のアミノ酸置換P718Sをコードする核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象はCOL4A2中のアミノ酸置換R517Kをコードする核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象はCOL4A3中のアミノ酸置換D326Yをコードする核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象はCOL4A3中のアミノ酸置換H451Rをコードする核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象はCOL4A4中のアミノ酸置換V1327Mをコードする核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象はLOX中のアミノ酸置換R158Qをコードする核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象はAKAP13中のアミノ酸置換A1046Tをコードする核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象はAKAP13中のアミノ酸置換G624Vをコードする核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象はZNF469中のアミノ酸置換G2358Rをコードする核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象はSLC29A3中のアミノ酸置換S158Fをコードする核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象はMUC5AC中のアミノ酸置換P4493Sをコードする核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象はCROCC中のアミノ酸置換P370Sをコードする核酸突然変異を有する。
【0050】
或る実施の形態では、対象は、参照SNPクラスター識別子rs3742207(例えば米国立バイオテクノロジー情報センターのdbSNPデータベース中のrs3742207によって識別されるSNP)に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs3803230に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs9583500に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs7990383に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs55703767に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs11677877に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs2229813に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs1800449に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs1053411に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs2116780に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs3749350に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs2286194に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs12536657に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs2614668に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs745191に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs12598474に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs10932976に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs5908678に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNP
クラスター識別子rs35803438に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs132728に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs132729に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs132730に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs859063に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs2893276に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs6687749に相当する核酸突然変異がある。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs13189855に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs6876514に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs6876515に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs13361701に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs883764に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs780667に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs780668に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs13166148に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs10941287に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs7907270に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs200922784に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs9435793に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs116300974に相当する核酸突然変異を有する。或る実施の形態では、対象は参照SNPクラスター識別子rs2233696に相当する核酸突然変異を有する。
【0051】
特定の実施の形態では、治療を受ける対象は円錐角膜を有し、2歳、3歳、4歳、5歳、6歳、7歳、8歳、9歳、10歳、11歳、12歳、13歳、14歳、15歳、16歳、17歳、18歳、19歳、20歳、21歳、22歳、23歳、24歳、25歳、26歳、27歳、28歳、29歳、30歳、31歳、32歳、33歳、34歳、35歳、36歳、37歳、38歳、39歳、40歳、41歳、42歳、43歳、44歳、45歳、46歳、47歳、48歳、49歳、50歳、51歳、52歳、53歳、54歳、55歳、56歳、57歳、58歳、59歳、60歳、61歳、62歳、63歳、64歳、65歳、66歳、67歳、68歳、69歳、70歳、71歳、72歳、73歳、74歳、75歳、76歳、77歳、78歳、79歳、80歳、81歳、82歳、83歳、84歳、85歳、86歳、87歳、88歳、89歳、90歳、91歳、92歳、93歳、94歳、95歳、96歳、97歳、98歳、99歳、又は100歳である。或る実施の形態では、治療を受ける対象は円錐角膜を有し、少なくとも5歳、10歳、15歳、20歳、25歳、30歳、35歳、40歳、45歳、50歳、55歳、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、又は100歳である。
【0052】
特定の実施の形態では、主題の治療を受ける対象は、顆粒状角膜ジストロフィーII型を有し、また眼レーザー手術を受けたことがある。或る実施の形態では、上記治療は、眼レーザー手術の後、6ヶ月以下、1年以下、1.5年以下、2年以下、2.5年以下)、3年以下、3.5年以下、4年以下、4.5年以下、5年以下、5.5年以下、6年以下、6.5年以下、7年以下、7.5年以下、8年以下、8.5年以下、9年以下、9.5年以下、10年以下、15年以下、20年以下、25年以下、30年以下、35年以下、40年以下、45年以下、50年以下、55年以下、60年以下、65年以下、70年以
下、75年以下80年以下、85年以下、90年以下、95年以下、又は100年以下に行われる。
【0053】
本明細書において提供される方法の或る実施の形態では、治療法は、疾患又は状態(例えば角膜ジストロフィー)に関して陽性の治療効果を提供するために使用される。「陽性の治療効果」により、意図される。疾患若しくは状態の改善、及び/又は子癇若しくは状態と関連する症状の改善が意図される。主題の治療法の治療効果を、任意の好適な方法を使用して評価することができる。特定の実施の形態では、対照(例えば治療に先立つタンパク質沈着の量)と比較して、治療後の対象の角膜上のタンパク質沈着の減少によって、治療を評価する。或る実施の形態では、主題の方法は、治療を受ける前の角膜と比較して、対象における角膜タンパク質沈着の量を少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%減少させる。また、角膜混濁を、主題の方法を使用することによる治療効果を評価するために使用してもよい。さらに、或る実施の形態では、治療は視覚機能によって評価される。対象の視覚機能の評価は、限定されないが、非矯正視力(UCVA)、最高矯正視力(BCVA)及び輝度視力検査(BAT)の評価を含む、当該技術分野で知られている任意の好適な検査を使用して行うことができる。例えば、全ての目的、特に、視力の評価に対する基準に関する全ての教示に対して、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなすAwaad et al.,Am J Ophthalmol.145(4):656-661(2008)、及びSharhan et al.,Br J Ophthalmol 84:837-841(2000)を参照されたい。特定の実施の形態では、治療を受ける前と比較して、対象の視力は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%改善する。
【0054】
或る実施の形態では、対象を1以上の角膜ジストロフィーについて検査する。或る実施の形態では、対象を、本明細書に記載される角膜ジストロフィーに関連する核酸突然変異(SNP)について検査する。
【0055】
例えば、対象を、標的TGFβI核酸中の核酸突然変異について検査する。特定の実施の形態では、対象を、TGFβIポリペプチド中のアルギニン124、アルギニン555又はヒスチジン626のアミノ酸置換をコードする核酸突然変異について検査する。或る実施の形態では、核酸突然変異は、R124C、R124H、R124L、R555W、R555Q及びH626Pからのアミノ酸置換の選択をコードする。例えば、対象の頬の細胞を、頬のスワブ(swab)を使用して収集する。収集した頬の細胞を、TGFβIポリペプチド中のアルギニン124、アルギニン555又はヒスチジン626のアミノ酸置換をコードする1以上の核酸突然変異の存在について分析する。或る実施の形態では、角膜ジストロフィーは、例えば、TGFβI遺伝子中のR124突然変異をもたらすもの等(例えば、限定されないが、C(G/A)C SNPとも呼ばれる、TGFβI遺伝子のヌクレオチド418のGからAへの塩基転位によって引き起こされるR124H突然変異を含む)のアベリーノ角膜ジストロフィーに関連する一塩基変異多型(SNP)の検出によって検出される。或る実施の形態では、角膜ジストロフィーは、例えば、TGFβI遺伝子中のR555突然変異をもたらすもの等(例えば、限定されないが、(C/T)GG SNPとも呼ばれる、TGFβI遺伝子のヌクレオチド1663のCからTへの塩基転位によって引き起こされるR555W突然変異を含む)の顆粒状角膜ジストロフィーに関連するSNPの検出によって検出される。或る実施の形態では、角膜ジストロフィーは、例えば、TGFβI遺伝子中のR124及び/又は626の突然変異をもたらすもの等(例えば、限定されないが、(C/T)GC SNPとも呼ばれる、TGFβI遺伝子のヌクレオチド417のCからTへの塩基転位によって引き起こされるR124C突然変異
、又はTGFβI遺伝子のヌクレオチド1924のAからCへの塩基転位によって引き起こされるH626P突然変異を含む)の格子状ジストロフィーに関連する関連のSNPの検出によって検出される。或る実施の形態では、角膜ジストロフィーは、例えば、TGFβI遺伝子中のR124突然変異をもたらすもの等(例えば、限定されないが、C(G/T)C SNP呼ばれる、TGFβI遺伝子のヌクレオチド418のGからTへの塩基点によって引き起こされるR124L突然変異を含む)のライス-ビュックラー角膜ジストロフィーに関連するSNPの検出によって検出される。或る実施の形態では、角膜ジストロフィーは、例えば、TGFβI遺伝子中のR555突然変異をもたらすもの等(例えば、限定されないが、C(G/A)G SNPとも呼ばれる、TGFβI遺伝子のヌクレオチド1664のGからAへの塩基転位によって引き起こされるR555Q突然変異を含む)のティール-ベンケ角膜ジストロフィーに関連するSNPの検出によって検出される。或る実施の形態では、対象を、円錐角膜に関連する角膜ジストロフィー標的核酸中の核酸突然変異について検査する。特定の実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、COL4A1-4、LOX、SPARC、LRRN1、HGF、AKAP13、ZNF469、ATG12P2、GS1-256O22.5、PLEKHA6、APOL4、SLC44A3、SLC6A18、SLC29A3、RANBP3L、KCNMA1、MUC5AC、CROCC、ATHL1、又はPLP1である。
【0056】
或る実施の形態では、対象へ1以上の操作された幹細胞を移植する前に、1以上の角膜ジストロフィーに関して対象を検査する。
【0057】
III.幹細胞
主題の方法は、複数の幹細胞を得ることを含む。治療される角膜ジストロフィーの種類に応じて、任意の好適な幹細胞を主題の方法に対して使用することができる。特定の実施の形態では、幹細胞は自己由来、相同性、又は異種性のドナーから得られる。幹細胞が異種ドナーから得られる場合、異種ドナー及び治療される対象の幹細胞は、ドナー-レシピエント組織適合性である。特定の実施の形態では、自己由来の幹細胞は、角膜ジストロフィーに対する治療を必要とする対象から得られる。得られた幹細胞は、治療される特定の角膜ジストロフィーに関連する遺伝子に突然変異を持つ(例えば、上で考察されるように、対象のTGFBI遺伝子中に突然変異を有する幹細胞は、上皮実質ジストロフィーを有する)。好適な幹細胞として、限定されないが、歯髄幹細胞、毛包幹細胞、間葉系幹細胞、臍帯ライニング幹細胞、胚性幹細胞、口腔粘膜上皮幹細胞、及び角膜縁上皮幹細胞が挙げられる。
【0058】
或る実施の形態では、上記複数の幹細胞は角膜縁上皮の幹細胞を含む。角膜縁上皮幹細胞(LESC)は、角膜の縁領域に位置し、角膜表面の維持及び修復を担う。いかなる特定の理論に結び付けられるものではないが、LESCは、幹細胞プールを再配置するため、幹細胞ニッチに残る幹細胞、及び娘初期有限増殖細胞(daughter early
transient amplifying cell)(eTAC)を産生する非対称の細胞分裂を経ると考えられる。このより分化したeTACは、幹細胞ニッチから除去され、分裂して有限増殖細胞(TAC)を更に生じることができ、最終的には、最終分化細胞(DC)をもたらす。LESCは、例えば、対象の眼から生検を採取することにより得ることができる。例えば、Pellegrini et al.,Lancet 349:990-993(1997)を参照されたい。角膜縁の生検から得られたLESCを単離し、限定されないが、蛍光標識細胞分取(FACS)及び遠心分離の技術を含む任意の好適な技術を使用して、主題の方法における使用のため選別してもよい。LESCは、幹細胞関連マーカーの陽性発現、及び分化マーカー陰性発現を使用して、生検から選別することができる。陽性の幹細胞マーカーとして、限定されないが、転写因子p63、ABCG2、C/EBPδ、及びBmi-1が挙げられる。陰性の角膜特異的マーカーとして、限定されないが、サイトケラチン3(CK3)、サイトケラチン12(CK12)、コ
ネキシン43、及びインボルクリンが挙げられる。或る実施の形態では、複数の幹細胞が、p63、ABCG2又はそれらの組み合わせの発現に対して陽性である。特定の実施の形態では、複数の幹細胞において少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、86%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の細胞が、p63、ABCG2、C/EBPδ、及びBmi-1、又はそれらの組み合わせを発現する。或る実施の形態では、複数の幹細胞がCK3、CK12、コネキシン43、インボルクリン、又はそれらの組み合わせの発現に対して陰性である。特定の実施の形態では、複数の幹細胞において少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、86%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の細胞は、CK12、コネキシン43、インボルクリン、又はそれらの組み合わせを発現しない。LESCに有用な他のマーカーは、例えば、全ての目的について、特に、LESCマーカーに関する全ての教示について、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす、Takacs et
al.,Cytometry A 75:54-66(2009)に記載される。細胞の大きさ及び細胞質に対する核の高い比率等の幹細胞の特徴もまた、LESCの同定を支援するために使用することができる。
【0059】
LESCに加えて、対象の角膜から単離した他の幹細胞も、主題の方法に使用することができる。例示的な角膜の幹細胞として、限定されないが、実質幹細胞、実質線維芽細胞様細胞、実質間葉系細胞、神経冠由来角膜幹細胞、及び推定内皮幹細胞が挙げられる。
【0060】
或る実施の形態では、本明細書に記載される方法と共に使用される細胞は、対象の角膜から得られた実質幹細胞である。例えば、実質幹細胞は、限定されないが、全ての目的について、特に、様々な実質幹細胞の単離及びの培養に関する全ての技術について、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす、Funderburgh et al.,FASEB J 19:1371-1373(2005)、Yoshida et
al.,Invest Ophtalmol Vis Sci 46:1653-1658 (2005)、Du et al. Stem Cells 1266-1275(2005)、Dravida et al.,Brain Res Dev Brain Res 160:239-251(2005)、及びPolisetty et al.Mol Vis 14:431-442(2008)に記載されるものを含む、任意の好適な方法を使用して単離され得る。
【0061】
これらの実質幹細胞の特徴であるマーカーとして、限定されないが、Bmi-1、Kit、Notch-1、Six2、Pax6、ABCG2、Spag10、及びp62/OSILが挙げられる。或る実施の形態では、複数の幹細胞において少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、86%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の細胞が、Bmi-1、Kit、Notch-1、Six2、Pax6、ABCG2、Spag10、若しくはp62/OSIL、又はそれらの組み合わせを発現する。特定の実施の形態では、実質幹細胞はCD31、SSEA-4、CD73、CD105に対して陽性であり、CD34、CD45、CD123、CD133、CD14、CD106、及びHLA-DRに対して陰性である。特定の実施の形態、複数の幹細胞において少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、86%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の細胞がCD31、SSEA-4、CD73、CD105に対して陽性であり、またCD34、CD45、CD123、CD133、CD14、CD106及びHLA-DRに対して陰性である。更に他の実施の形態では、実質ステップ細胞(stromal step cells)は、CD105、CD106、CD54、CD166、CD90、CD29、CD71、Pax6に対して陽性であり、SSEA-1、Tra1-81、Tra1-61、CD31、CD45、CD11
a、CD11c、CD14、CD138、Flk1、Flt1、及びVEカドヘリンに対して陰性である。特定の実施の形態では、複数の幹細胞において、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、86%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の細胞がCD105、CD106、CD54、CD166、CD90、CD29、CD71、Pax6に対して陽性であり、SSEA-1、Tra1-81、Tra1-61、CD31、CD45、CD11a、CD11c、CD14、CD138、Flk1、Flt1、及びVEカドヘリンに対して陰性である。
【0062】
特定の実施の形態では、主題の方法により使用される細胞は、対象の角膜から単離される内皮幹細胞である。かかる幹細胞を単離する方法は、例えば、全ての目的について、特に、角膜内皮幹細胞の単離及びの培養に関する全ての技術について、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす、Engelmann et al.,Invest Ophthalmol Vis Sci 29:1656-1662(1988)に記載される。
【0063】
単離の後、複数の幹細胞(例えばLESC)を、安定した細胞株をもたらす任意の好適な方法を使用して培養することができる。幹細胞は、本明細書に記載される核酸突然変異の操作の後に及び/又は前に培養されてもよい。例えば、培養を、フィーダー細胞として線維芽細胞細胞(例えば3T3)の存在下又は不在下で維持することができる。他の例では、ヒト羊膜上皮細胞又はヒト胚線維芽細胞をフィーダー層として培養に使用する。LESCの培養に対する好適な技術は、全ての目的について、特に、LESCの培養に関する全ての技術について、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす、Takacs et al.Cytometry A 75:54-66(2009)、Shortt et al.,Surv Opthalmol Vis Sci 52:483-502 (2007)、及びCauchi et al.Am J Ophthalmol 146:251-259(2008)に更に記載される。
【0064】
IV.核酸操作試薬
或る一つの態様では、幹細胞中の核酸突然変異を操作して、角膜ジストロフィー標的核酸中の核酸突然変異を修正する。本明細書で使用される「角膜ジストロフィー標的核酸」は、1以上の角膜ジストロフィーと関連する突然変異を含む核酸を指す。
【0065】
或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、TGFBI、KRT3、KRT12、GSN及びUBIAD1遺伝子中に位置する。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、得られたSNP部位と関連し、本明細書に示される突然変異タンパク質中の突然変異体アミノ酸のコード化をもたらす。更なる実施の形態では、SNP部位を含む突然変異体配列は、(i)例えばタンパク質アクセッション番号Q15582のTGFBIにおいて、Leu509Arg、Arg666Ser、Gly623Asp、Arg555Gln、Arg124Cys、Val505Asp、Ile522Asn、Leu569Arg、His572Arg、Arg496Trp、Pro501Thr、Arg514Pro、Phe515Leu、Leu518Pro、Leu518Arg、Leu527Arg、Thr538Pro、Thr538Arg、Val539Asp、Phe540del、Phe540Ser、Asn544Ser、Ala546Thr、Ala546Asp、Phe547Ser、Pro551Gln、Leu558Pro、His572del、Gly594Val、Val613del、Val613Gly、Met619Lys、Ala620Asp、Asn622His、Asn622Lys、Asn622Lys、Gly623Arg、Gly623Asp、Val624_Val625del、Val624Met、Val625Asp、His626Arg、His626Pro、Val627SerfsX44、Thr629_Asn630insAsnV
alPro、Val631Asp、Arg666Ser、Arg555Trp、Arg124Ser、Asp123delins、Arg124His、Arg124Leu、Leu509Pro、Leu103_Ser104del、Val113Ile、Asp123His、Arg124Leu、及び/又はThr125_Glu126delに対応する突然変異を含む、突然変異体TGFBIタンパク質、(ii)例えばタンパク質アクセッション番号P12035又はNP_476429.2のケラチン3タンパク質において、Glu498Val、Arg503Pro、及び/又はGlu509Lysに対応する突然変異を含む突然変異体KRT3タンパク質、(iii)例えばタンパク質アクセッション番号Q99456.1又はNP_000214.1のKRT12において、Met129Thr、Met129Val、Gln130Pro、Leu132Pro、Leu132Va、Leu132His、Asn133Lys、Arg135Gly、Arg135Ile、Arg135Thr、Arg135Ser、Ala137Pro、Leu140Arg、Val143Leu、Val143Leu、Lle391_Leu399dup、Ile426Val、Ile426Ser、Tyr429Asp、Tyr429Cys、Arg430Pro、及び/又はLeu433Argを含む突然変異体KRT12タンパク質、(iv)例えばタンパク質アクセッション番号P06396のGSNにおいてAsp214Tyrを含む突然変異体GSNタンパク質、並びに(v)例えばタンパク質アクセッション番号Q9Y5Z9のUBIAD1中において、Ala97Thr、Gly98Ser、Asn102Ser、Asp112Asn、Asp112Gly、Asp118Gly、Arg119Gly、Leu121Val、Leu121Phe、Val122Glu、Val122Gly、Ser171Pro、Tyr174Cys、Thr175Ile、Gly177Arg、Lys181Arg、Gly186Arg、Leu188His、Asn232Ser、Asn233His、Asp236Glu、及び/又はAsp240Asnに対応する突然変異を含む突然変異体UBIAD1タンパク質からなる群から選択される突然変異タンパク質をコードする。
【0066】
特定の実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、顆粒状角膜ジストロフィーII型(例えばTGFβI)と関連する。他の実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は円錐角膜と関連する。いかなる特定の理論にも結び付けられるものではないが、図2に示される突然変異は円錐角膜と関連すると考えられる。特定の実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、図2に示される突然変異の1つ以上を含む。
【0067】
操作される幹細胞は、個々の単離された幹細胞又は単離された幹細胞から樹立された幹細胞株に由来する幹細胞を含む。任意の好適な遺伝子操作方法を使用して、幹細胞中の核酸突然変異を修正してもよい。
【0068】
特定の実施の形態では、核酸操作試薬を幹細胞に導入する。かかる核酸操作試薬は、その後、幹細胞中の核酸突然変異を修正して、操作された幹細胞を形成する。核酸操作試薬として、限定されないが、Zing-fingerヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)システム試薬が挙げられる。例えば、全ての目的、特に、核酸操作試薬に関する全ての教示に対して、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす、Gaj et al.,Trends Biotechnol 31(7):397-405(2013)を参照されたい。かかる試薬は、エラープローン非相同末端再結合(NHEJ)、及び/又は相同組み換え修復(HDR)の経路を含む、細胞内DNA修復機構を刺激する標的DNA2本鎖切断(DSB)の誘導によって標的核酸の効率的で正確な修飾を可能とすることにより作用する。核酸突然変異の野生型対立遺伝子(例えば、野生型TGFBI又はそのフラグメント)を含む相同修復核酸の存在下で、ニックの入った標的核酸は相同組み換えを経ることにより、突然変異対立遺伝子を野生型対立遺伝子に置き換え、操作された幹細胞中の核酸突然変異を修正する。
【0069】
幾つかの例では、本明細書に提供される主題の方法と共に使用される標的核酸操作試薬は、CRISPRシステム試薬を含む。主題の方法と共に使用されるCRISPRシステム試薬は、例えば、II型ヌクレアーゼをコードする核酸(例えばCas9ヌクレアーゼ又はCpfIヌクレアーゼ)、ガイドRNA(gRNA)をコードする核酸、及び目的の遺伝子の野生型対立遺伝子、又はそのフラグメントを含む修復核酸を含む。ガイドRNAはトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)と組み合わせてCRISPR RNA(crRNA)を含む。CRISPRシステム試薬を利用する幾つかの実施の形態では、crRNA及びtracrRNAはガイドRNAに代えて別々の試薬として含まれている。
【0070】
或る実施の形態では、修復核酸は、本明細書に記載される角膜ジストロフィーに関連する突然変異を含む幹細胞ゲノム(すなわち、「角膜ジストロフィー標的核酸」)の領域においてHDR経路による相同組み換えを経ることができる。特定の実施の形態では、修復核酸は、TGFBI、KRT3、KRT12、GSN及びUBIAD1の遺伝子内の標的核酸と相同組み換えすることができる。特定の実施の形態では、修復ヌクレオチド分子は、本明細書に記載される突然変異体アミノ酸(例えばLeu132Pro)をコードするTGFBI遺伝子中の核酸と相同組み換えすることができる。或る実施の形態では、少なくとも1つのベクターが複数の修復核酸を含む。修復核酸は、特定の突然変異を含む本明細書に記載される細胞の同定及び選別のための標識を更に含んでもよい。修復ヌクレオチド分子と共に含まれ得る例示的な標識として、蛍光標識及び長さ又は配列によって識別可能な核酸バーコードが挙げられる。
【0071】
II型ヌクレアーゼ及びガイドRNAをコードする核酸は、各々、制御可能に調節要素に連結されてもよく、単一のベクター又は異なるベクターに含まれてもよい。或る実施の形態では、ガイドRNA及びII型ヌクレアーゼは同じベクターに含まれる。或る実施の形態では、ガイドRNA及びII型ヌクレアーゼは異なるベクターに含まれる。
【0072】
或る例示的な実施の形態では、ガイドRNA及び/又はII型ヌクレアーゼをコードする核酸を含むベクターは、複数の幹細胞の1以上の細胞のゲノムへの安定した統合が可能である。或る例では、II型ヌクレアーゼ及びガイドRNAは、自然界で共に生じない。本発明で使用される例示的なCRISPRシステム試薬及び方法は、例えば、全ての目的、特に、CRISPRシステム試薬に関する全ての教示に対して、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす、Shalem et al.,Nature Reviews Genetics 16:299-311(2013)、Zhang et
al.,Human Molecular Genetics 23(R1):R40-6(2014)、Zetsche et al.dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.09.038(2015)、及びZhu et al.Cell 157:1262-1278(2014)に更に詳細に記載される。
【0073】
CRISPRシステムでは、gRNA/II型ヌクレアーゼ複合体は、gRNA配列と標的核酸に対する相補鎖の間の塩基対合によってゲノムの標的配列に動員される。gRNA/タイプIIヌクレアーゼ複合体の結合は、II型ヌクレアーゼがDNAの両方の鎖を切断して二本鎖切断(DSB)を引き起こすことができるように、ゲノム標的配列へとII型ヌクレアーゼを局在化させる。
【0074】
DSBの修復は、(1)非相同末端結合(NHEJ)DNA修復経路、又は(2)相同組み換え修復(HDR)経路のいずれかにより起こり得る。NHEJ修復経路は、しばしば、フレームシフト及び/又は未熟な停止コドンを生じ、標的核酸のオープンリーディングフレーム(ORF)を効果的に破壊する場合があるDSB部位での挿入/欠失(InD
els)をもたらすことにより、標的核酸によってコードされる遺伝子産物の発現を減少させる。HDR経路は、DSBを固定するために使用される修復核酸の存在を必要とする。特定のヌクレオチド変化(例えば野生型対立遺伝子)を、修復核酸と共にHDRを使用して、標的化変異体遺伝子に導入することができる。HDR経路を使用して、例えば、幹細胞における突然変異を修復することができ、ここで、該突然変異は本明細書に記載される角膜障害と関連する(例えば、TGFBI遺伝子)。
【0075】
或る実施の形態では、核酸操作試薬は修復核酸を含む。修復核酸は、HDR経路によるII型ヌクレアーゼ誘導性DSBの修復の際に複数の幹細胞の1以上の細胞のゲノムに特定の対立遺伝子(例えば野生型対立遺伝子)を導入する。或る実施の形態では、修復核酸は一本鎖DNA(ssDNA)である。他の実施の形態では、修復核酸はプラスミドベクターとして細胞に導入される。或る実施の形態では、修復核酸は、20~25、25~30、30~35、35~40、40~45、45~50、50~55、55~60、60~65、65~70、70~75、75~80、80~85、85~90、90~95、95~100、100~105、105~110、110~115、115~120、120~125、125~130、130~135、135~140、140~145、145~150、150~155、155~160、160~165、165~170、170~175、175~180、180~185、185~190、190~195、又は195~200のヌクレオチド長である。或る実施の形態では、修復核酸は、200~300、300~400、400~500、500~600、600~700、700~800、800~900、900~1000のヌクレオチド長である。他の実施の形態では、修復核酸は、1000~2000、2000~3000、3000~4000、4000~5000、5000~6000、6000~7000、7000~8000、8000~9000、又は9000~10000のヌクレオチド長である。或る実施の形態では、修復核酸は、本明細書に記載される角膜ジストロフィーに関連する突然変異を含む幹細胞ゲノムの領域(すなわち「角膜ジストロフィー標的核酸」)においてHDR経路による相同組み換えを経ることができる。特定の実施の形態では、修復核酸は、TGFBI遺伝子内内の標的核酸と相同組み換えすることができる。特定の実施の形態では、修復核酸は、TGFβIポリペプチド中のアルギニン124、アルギニン555又はヒスチジン626をコードするTGFBI遺伝子中の核酸と相同組み換えすることができる。特定の実施の形態では、修復核酸は、R124C、R124H、R124L、R555W、R555Q及びH626Pから選択されるアミノ酸置換をコードするTGFBI遺伝子中の核酸と相同組み換えすることができる。或る実施の形態では、修復核酸は、TGFβIポリペプチドのアルギニン124をコードする核酸を含む。例えば、修復核酸は、TGFβI遺伝子のヌクレオチド417にシトシンを挿入するため(例えばTGFβI遺伝子のヌクレオチド417においてCからTへの塩基転位を修正するため)、TGFβI遺伝子のヌクレオチド418にグアニンを挿入するため(例えばTGFβI遺伝子のヌクレオチド418においてGからA又はGからTへの塩基転位を修正するため)使用される。特定の実施の形態では、修復核酸は、TGFβIポリペプチドのアルギニン555をコードする核酸を含む。例えば、修復核酸は、TGFβI遺伝子のヌクレオチド1663にシトシンを挿入するため(例えばTGFβI遺伝子のヌクレオチド1663においてCからTへの塩基転位を修復するため)、及びTGFβI遺伝子のヌクレオチド1664にグアニンを挿入するため(例えばTGFβI遺伝子のヌクレオチド1663においてGからAへの塩基転位を修正するため)使用される。特定の実施の形態では、修復核酸は、TGFβIポリペプチドのヒスチジン626をコードする核酸を含む。例えば、修復核酸は、(例えばTGFβI遺伝子のヌクレオチド1924においてAからCへの塩基転位を修正するために)TGFβI遺伝子のヌクレオチド1924へのアデニンを挿入するために使用される。更に他の実施の形態では、修復核酸は、TGFβIポリペプチドのアルギニン124、アルギニン555及びヒスチジン626をコードする核酸を含む。
【0076】
他の実施の形態では、修復核酸は、円錐角膜と関連する角膜ジストロフィー標的核酸(例えば、図2に表される突然変異の1以上を含む標的核酸)と相同性組み換えすることができる。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、COL4A1-4、LOX、SPARC、LRRN1、HGF、AKAP13、ZNF469、ATG12P2、GS1-256O22.5、PLEKHA6、APOL4、SLC44A3、SLC6A18、SLC29A3、RANBP3L、KCNMA1、MUC5AC、CROCC、ATHL1又はPLP1に突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs3742207(例えば米国立バイオテクノロジー情報センターのdbSNPデータベース中のrs3742207によって識別されるSNP)に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs3803230に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs9583500に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs7990383に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs55703767に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs11677877に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs2229813に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs1800449に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs1053411に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs2116780に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs3749350に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs2286194に相当する突然変異を含んでいる。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs12536657に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs2614668に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs745191に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs12598474に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs10932976に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs5908678に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs35803438に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs132728に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs132729に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs132730に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs859063に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs2893276に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs6687749に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs13189855に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs6876514に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs6876515に相当する突然変異を含
む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs13361701に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs883764に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs780667に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs780668に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs13166148に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs10941287に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs7907270に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs200922784に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs9435793に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs116300974に相当する突然変異を含む。或る実施の形態では、角膜ジストロフィー標的核酸は、参照SNPクラスター識別子rs2233696に相当する突然変異を含む。
【0077】
或る実施の形態では、核酸操作試薬は複数の修復核酸を含む。特定の実施の形態では、修復核酸は、TGFβIポリペプチドのアルギニン124をコードする核酸、及びTGFβIポリペプチドのアルギニン555をコードする核酸を含む。或る実施の形態では、修復核酸は、TGFβIポリペプチドのヒスチジン626をコードする核酸を更に含む。或る実施の形態では、対象方法と共に使用されるCRISPRシステム試薬は、TGFβIポリペプチドのアルギニン124をコードする核酸に対する第1のガイドRNAをコードする第1の核酸と、TGFβIポリペプチドのアルギニン555をコードする核酸に対する第2のガイドRNAをコードする第2の核酸とを含む。或る実施の形態では、CRISPRシステム試薬は、ヒスチジン626をコードする核酸に対する第3のガイドRNAをコードする第3の核酸を更に含む。或る実施の形態では、CRISPRシステム試薬は、第1の核酸、第2の核酸及び第3の核酸の任意の組み合わせ(例えば、第1の核酸と第3の核酸の組み合わせ、又は第2の核酸と第3の核酸の組み合わせ)を更に含む。或る実施の形態では、修復核酸は、COL4A1中のQ1334H、COL4A2中のG683A、COL4A2中のP718S、COL4A2中のR517K、COL4A3中のD326Y、COL4A3中のH451R、COL4A4中のV1327M、LOX中のR158Q、AKAP13中のA1046T、AKAP13中のG624V、ZNF469中のG2358R、SLC29A3中のS158F、MUC5AC中のP4493S、CROCC中のP370S、又はそれらの組み合わせを含む1以上のアミノ酸置換をコードする角膜ジストロフィー標的核酸を修復することができる。
【0078】
修復核酸は、特定の突然変異を含む幹細胞の同定及び選別のための標識を更に含んでもよい。修復核酸に含むことができる例示的な標識として、蛍光標識、及び長さ又は配列によって識別可能な核酸バーコードが挙げられる。
【0079】
また、更なる実施の形態では、核酸操作試薬は、DSBのHNEJ修復に対するHDR経路を促進する、1以上の試薬を含む。かかる試薬は、有利には、HDR経路による修復核酸の相同組み換えを可能とする。DSBのHNEJ修復に関するHDR経路を促進する試薬として、限定されないが、HNEJ修復に関与する遺伝子を抑制する薬剤、例えばDNAリガーゼIVが挙げられる。例えば、全ての目的、特に、DSBのHNEJ修復に関与する遺伝子を抑制する薬剤に関する全ての教示に対して、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす、Maruyana et al.Nat Biotechnol.33(5):538-42(2015)を参照されたい。
【0080】
本明細書に提供される主題の方法と共に使用されるII型ヌクレアーゼは、経時的又は細胞型に依存する方法での発現に最適化さる誘導性II型ヌクレアーゼであってもよい。II型ヌクレアーゼに連結することができる誘導性プロモーターとして、限定されないが、テトラサイクリン誘導性プロモーター(メタロチオネインプロモーター)、テトラサイクリン誘導性プロモーター、メチオニン誘導性プロモーター(例えばMET25及びMET3プロモーター)、及びガラクトース誘導性プロモーター(GAL1、GAL7及びGAL10プロモーター)が挙げられる。他の好適なプロモーターとして、ADH1及びADH2のアルコール脱水素酵素プロモーター(グルコース中で抑制され、グルコースが使い尽くされ、エタノールが作製される際に誘導される)、CUP1メタロチオネインプロモーター(Cu2+、Zn2+の存在下で誘導される)PHO5プロモーター、CYC1プロモーター、HIS3プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、ADC1プロモーター、TRP1プロモーター、URA3プロモーター、LEU2プロモーター、ENOプロモーター、TP1プロモーター及びAOX1プロモーターが挙げられる。
【0081】
また、改善された特異性を示す突然変異体タイプIIヌクレアーゼを使用してもよい(例えば、全ての目的、特に、標的核酸に対する改善された特異性を有する変異体Cas9ヌクレアーゼに関する全ての教示に対して、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす、Ann Ran et al.Cell 154(6)1380-89(2013)を参照されたい)。また、核酸操作試薬は、非活性化されたII型ヌクレアーゼ(例えばdCas9)を含んでもよい。核酸要素への不活性化Cas9結合は、立体的にRNAポリメラーゼ機構を妨害することにより単独で転写を抑制し得る。さらに、不活性化Casを、標的核酸に不可逆的な突然変異を導入せずに、標的部位で遺伝子発現に影響する、他のタンパク質に対するホーミングデバイス(例えば転写リプレッサー、活性化因子及び誘引ドメイン)として使用してもよい。例えば、標的部位でエピジェネティックなサイレンシングを促進するため、dCas9をKRAB又はSIDエフェクター等の転写リプレッサードメインに融合してもよい。また、Cas9を、VP16/VP64又はp64活性化ドメインへの融合によって合成転写活性化因子に変換してもよい。
【0082】
核酸操作試薬を、任意の好適な方法を使用して、幹細胞へ導入することができる。核酸操作試薬を導入する例示的な方法として、限定されないが、トランスフェクション、電気穿孔及びウイルスに基づく方法が挙げられる。
【0083】
幾つかの場合、1以上の細胞取り込み試薬はトランスフェクション試薬である。トランスフェクション試薬として、例えば、ポリマー系(例えばDEAEデキストラン)トランスフェクション試薬、及びカチオンリポソーム媒介トランスフェクション試薬が挙げられる。また、電気穿孔方法を使用して、核酸操作試薬の取り込みを促進してもよい。外部場(external field)を印加することによって、細胞において膜電位差の変更が誘導され、正味の膜電位差の値(印加の合計、及び静止電位差)が閾値より大きい場合、一時的な浸透構造がメンブレンに生成され、電気穿孔が達成される。例えば、Gehl et al.,Acta Physiol.Scand.177:437-447(2003)を参照されたい。
【0084】
また、核酸操作試薬は、幹細胞中へのウイルス形質導入によって送達されてもよい。好適なウイルス送達システムとして、限定されないが、レトロウイルスのアデノ随伴ウイルス(AAV)、及びレンチウイルス送達システムが挙げられる。かかるウイルス送達システムは、幹細胞がトランスフェクションに抵抗性である場合に特に有用である。ウイルス媒介送達システムを使用する方法は、核酸操作試薬をコードするウイルスベクターを作製する工程、及びウイルス粒子中に該ベクターをパッケージングする工程を更に含んでもよ
い。核酸試薬送達の他の方法として、限定されないが、リポフェクション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン、又は脂質:核酸複合体、ネイキッドDNA、人工ビリオン、及び薬剤により増強された取り込みが挙げられる。また、全ての目的、特に、試薬送達システムに関する全ての教示に対して、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす、Neiwoehner et al.,Nucleic Acids Res.42:1341-1353(2014)を参照されたい。
【0085】
或る一つの態様では、幹細胞において、角膜ジストロフィー標的核酸中の核酸突然変異は、幹細胞への操作されたクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)/CRISPR関連タンパク質9(Cas9)システムを導入することにより操作され、ここで、CRISPR/Cas9システムは、Cas9ヌクレアーゼ及びシングルガイドRNA(sgRNA)をコードするヌクレオチド分子を含む少なくとも1つのベクターを含み、Cas9ヌクレアーゼ及び上記sgRNAは天然起源ではない。
【0086】
「非天然起源」又は「操作された」の用語は、同義的に使用され、人の手の関与を示す。上記用語は、核酸分子又はポリペプチドを指す場合、該核酸分子又はポリペプチドが、自然界において本来関連し、自然界で見られる少なくとも1つの他の成分を少なくとも実質的に含まないことを意味する。或る実施の形態では、Cas9ヌクレアーゼ及びsgRNAは天然には共に生じない。
【0087】
操作されたCRISPR/Cas9システムを、当該技術分野で知られ、本明細書に記載される任意の好適な方法を使用して、細胞に導入することができる。或る実施の形態では、導入は、培養中の幹細胞又は宿主生物に幹細胞に操作されたCRISPR/Cas9システムを投与することを含んでもよい。上で考察されるように、操作されたCRISPR/Cas9システムを導入する例示的な方法として、限定されないが、トランスフェクション、電気穿孔、及びウイルスに基づく方法が挙げられる。幾つかの場合では、1以上の細胞取り込み試薬は、トランスフェクション試薬である。トランスフェクション試薬として、例えば、ポリマー系(例えばDEAEデキストラン)トランスフェクション試薬、及びカチオンリポソーム媒介トランスフェクション試薬が挙げられる。また、電気穿孔法を使用して、核酸操作試薬の取り込みを促進してもよい。外部場(external field)を印加することによって、細胞において膜電位差の変更が誘導され、正味の膜電位差の値が(印加の合計、及び静止電位差)閾値より大きい場合、一時的な浸透構造がメンブレンに生成され、電気穿孔が達成される。例えば、Gehl et al.,Acta Physiol.Scand.177:437-447(2003)を参照されたい。また、操作されたCRISPR/Cas9システム、ウイルス形質導入により細胞に送達されてもよい。好適なウイルス送達システムとして、限定されないが、アデノ関連ウイルス(AAV)、レトロウイルス、及びレンチウイルスの送達システムが挙げられる。かかるウイルス送達システムは、細胞がトランスフェクションに抵抗性である場合に有用である。ウイルス媒介送達システムを使用する方法は、核酸操作試薬をコードするウイルスベクターを作製する工程、及びウイルス粒子中に該ベクターをパッケージングする工程を更に含んでもよい。核酸試薬送達の他の方法として、限定されないが、リポフェクション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン、又は脂質:核酸複合体、ネイキッドDNA、人工ビリオン、及び薬剤により増強された取り込みが挙げられる。また、全ての目的、特に、試薬送達システムに関する全ての教示に対して、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす、Neiwoehner et al.,Nucleic Acids
Res.42:1341-1353(2014)、並びに米国特許第5,049,386号、米国特許第4,946,787号、及び米国特許第4,897,355号を参照されたい。或る実施の形態では、導入は、DNAプラスミド、RNA(例えば本明細書に記
載されるベクターの転写物)、ネイキッド核酸、及びリポソーム等の送達ビヒクルと複合体化した核酸を含む非ウイルスベクター送達システムによって行われる。送達は、細胞(例えばin vitro又はex vivoでの投与)に対してでもよく、又は標的組織(例えばin vivoでの投与)に対してもよい。
【0088】
一般に、「CRISPRシステム」は、Cas遺伝子、すなわちtracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えばtracrRNA又は活性な部分的tracrRNA)、tracr-mate配列(「重複配列」及び内因性CRISPRシステムではtracrRNA処理された部分重複配列を包含する)、ガイド配列(本明細書では「crRNA」、又は内因性CRISPRシステムでは「スペーサー」と呼ばれる)、及び/又はCRISPR座、並びに他の配列に由来する転写物をコードする配列を含む、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現に関与する又はその活性を制御する転写物及び他の要素を合わせて指す。上に記載されるように、sgRNAは少なくともtracrRNAとcrRNAの組み合わせである。或る実施の形態では、CRISPRシステムの1以上の要素は、II型CRISPRシステムに由来する。或る実施の形態では、ストレプトコッカス・ピオゲネス又はスタフィロコッカス・アウレウス等のCRISPRシステムの1以上の要素、内因性CRISPRシステムを含む特定の生体に由来する。一般に、CRISPRシステムは、標的配列の部位でCRISPR複合体の形成を促進する要素(内因性CRISPRシステムにおいてプロトスペーサー(protospacer)とも呼ばれる)を特徴とする。CRISPR複合体の形成において、「標的配列」は、それに対してガイド配列が相補性を有するように設計される配列を指し、ここで、標的配列とガイド配列の間のハイブリダイゼーションは、CRISPR複合体の形成を促進する。ハイブリダイゼーションをもたらし、CRISPR複合体の形成を促進するのに十分な相補性がある限り、全相補性は必ずしも必要ではない。本開示において「標的部位」は、例えば、二本鎖ヌクレオチド中の標的配列とその相補配列の両方を含む標的配列の部位を指す。或る実施の形態では、本明細書に記載される標的部位は、CRISPR/Cas9システムのsgRNA又はcrRNAにハイブリダイズする第1の標的配列、及び/又はPAMの5’末端に隣接する第2の標的配列を意味する場合がある。標的配列は、DNA又はRNAのポリヌクレオチド等の任意のポリヌクレオチドを含んでもよい。或る実施の形態では、標的配列は細胞の核又は細胞質に位置する。或る実施の形態では、標的配列は、真核細胞の細胞器官、例えばミトコンドリア、葉緑体の内部にある。
【0089】
sgRNAは、人工、人造、合成、及び/又は非天然起源であってもよい。或る実施の形態では、sgRNAは、「sgRNAスキャフォルド」とも呼ばれる場合がある、(i)CRISPRターゲッティングRNA(crRNA)配列及び(ii)トランス活性化crRNA(tracrRNA)配列を含む。或る実施の形態では、crRNA配列及びtracrRNA配列は共に天然起源ではない。本明細書で使用される「sgRNA」の用語は、(i)ガイド配列(crRNA配列)及び(ii)Cas9ヌクレアーゼ誘引する配列(tracrRNA)を含むシングルガイドRNAを指す場合がある。crRNA配列は、目的の遺伝子中の領域に相同であり、Cas9ヌクレアーゼ活性を制御し得る配列であってもよい。crRNA配列及びtracrRNA配列は、共に天然起源ではない。sgRNAは、RNAとして送達されてもよく、又はプロモーターの下、sgRNA-コード配列(sgRNA遺伝子)を含むプラスミドを用いて形質転換することにより送達されてもよい。
【0090】
或る実施の形態では、sgRNA又はcrRNAは、少なくとも標的配列(例えば標的ゲノム配列)の一部にハイブリダイズし、crRNAは標的配列に対して相補的な配列を有してもよい。「相補性」は、核酸が、従来のワトソンクリック型又は他の非従来型のいずれかによる別の核酸配列にと水素結合(複数の場合がある)を形成する能力を指す。パーセント相補性は、第2の核酸配列と水素結合(例えばワトソン-クリック塩基対)形成
することができる核酸分子中の残基のパーセンテージを示す(例えば10個のうち5個、6個、7個、8個、9個、10個は、50%、60%、70%、80%、90%、及び100%の相補性である)。「完全に相補的な」は、核酸配列の全ての隣接する残基が、第2の核酸配列中の同数の隣接する残基と水素結合することを意味する。本明細書で使用される「実質的に相補的な」は、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、30個、35個、40個、45個、50個の領域にわたって少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%97%、98%、99%、100%である相補性の程度を指す、又はストリンジェントな条件下でハイブリダイズする2つの核酸を指す。本明細書で使用されるハイブリダイゼーションに対する「ストリンジェントな条件」は、標的配列に対して相補性を有する核酸が、その条件下で標的配列に優先的にハイブリダイズし、実質的に非標的配列にハイブリダイズしない条件を指す。ストリンジェントな条件は、一般に配列依存性であり、多くの因子に応じて変動する。一般に、より長い配列では、該配列がその標的配列に特異的にハイブリダイズする温度はより高い。ストリンジェントな条件の非限定的な例は、Tijssen(1993),Laboratory Techniques In Biochemistry And Molecular Biology-Hybridization With Nucleic Acid Probes Part 1, Second Chapter“Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assay”,Elsevier,N.Y.に記載されている。「ハイブリダイゼーション」とは、1以上のポリヌクレオチドが反応して、ヌクレオチド残基の塩基間の水素結合によって安定化される複合体を形成する反応を指す。水素結合は、ワトソン-クリック型塩基対合、フーグステン結合、又は任意の他の配列特異的な方式によって生じてもよい。複合体は、二重構造を形成する2本鎖、複数の鎖の複合体を形成する3本以上の鎖、単一の17自己ハイブリダイズ鎖、又はこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。ハイブリダイゼーション反応は、PCRの開始等のより広いプロセス、又は酵素によるポリヌクレオチドの切断における工程を構成する場合がある。所与の配列とハイブリダイズすることができる配列は、所与の配列の「相補(complement)」と呼ばれる。本明細書で使用される「約」の用語は、指定される参照値に類似する値の範囲を指す場合がある。特定の実施の形態では、「約」の用語は、15パーセント、10パーセント、9パーセント、8パーセント、7パーセント、6パーセント、5パーセント、4パーセント、3パーセント、2パーセント、1パーセント、指定される参照値未満の含まれる値の範囲を指す。追加実施の形態では、crRNA又はガイド配列は、約17個、18個、19個、20個、21個、又は22個のヌクレオチド長である。更なる実施の形態では、crRNAは、TAGGAAGCTAATCTATCATT(配列番号9)のヌクレオチド配列を含む。追加実施の形態では、crRNAは、配列番号9のヌクレオチド配列を有するcrRNA配列を除外する。また更なる実施の形態では、crRNAは、ケラチン12タンパク質中のL132P突然変異をもたらすSNPを含むヌクレオチド配列にハイブリダイズするcrRNA配列を除外する。また更なる実施の形態では、crRNAは、ケラチン12タンパク質中に突然変異をもたらすSNPを含むヌクレオチド配列にハイブリダイズするcrRNA配列を除外する。
【0091】
或る実施の形態では、tracrRNAは、crRNA配列の結合に対してdsDNAを開放するためCas9を活性化するヘアピン構造を提供する。tracrRNAは、パリンドロームリピートに相補的な配列を有する場合がある。tracrRNAが短いパリンドロームリピートにハイブリダイズする場合、細菌二本鎖RNA特異的リボヌクレアーゼであるRNアーゼIIIによってプロセッシングを誘発し得る。更なる実施の形態では、tracrRNAは、通常、特定の細菌種に特異的なDNA座のファミリーを構成する、SPIDR(スペーサー散在型ダイレクトリピート)を有してもよい。CRISPR座
は、大腸菌で認識された別のクラスの散在型短鎖リピート(SSR)(Ishino et al.,J.Bacteriol.,169:5429-5433[1987]、及びNakata et al.,J.Bacteriol.,171:3553-3556[1989])、及び関連する遺伝子を含む。同様の散在型SSRは、Haloferax mediterranei、ストレプトコッカス・ピオゲネス、アナベーナ、及びマイコバクテリウム・ツベルクローシスで確認された(Groenen et al.,Mol.Microbiol.,10:1057-1065[1993]、Hoe et
al.,Emerg.Infect.Dis.,5:254-263[1999]、Masepohl et al.,Biochim.Biophys.Acta 1307:26-30[1996]、及びMojica et al.,Mol.Microbiol.,17:85-93[1995]を参照されたい)。CRISPR座は、短鎖規則的間隔反復(SRSR:short regularly spaced repeats)と呼ばれる、リピートの構造によって他のSSRと異なる場合がある(Janssen et al.,OMICS J.Integ.Biol.,6:23-33[2002]、及びMojica et al.,Mol.Microbiol.,36:244-246[2000])。特定の実施の形態では、リピートは、実質的に一定の長さを有する特有の介在配列によって規則的に間隔をおくクラスターを生じる短い要素である(上記のMojica et al.,[2000])。リピート配列は株間で高度に保存されるが、幾つかの分散リピート及びスペーサー領域の配列は、典型的には株によって異なる(van Embden et al.,J.Bacteriol.,182:2393-2401[2000])。tracrRNA配列は、当該技術分野において知られているCRISPR/Cas9システムに対するtracrRNAに対する任意の配列であってもよい。追加実施の形態では、tracrRNAは、配列番号2及び6のヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。例示的な、CRISPR/Cas9システム、sgRNA、crRNA及びtracrRNA、並びにそれらの製造工程及び使用は、いずれもその全体により本明細書の一部をなす、米国特許第8697359号、米国特許出願公開第20150232882号、米国特許出願公開第20150203872号、米国特許出願公開第20150184139号、米国特許出願公開第20150079681号、米国特許出願公開第20150073041号、米国特許出願公開第20150056705号、米国特許出願公開第20150031134号、米国特許出願公開第20150020223号、米国特許出願公開第20140357530号、米国特許出願公開第20140335620号、米国特許出願公開第20140310830号、米国特許出願公開第20140273234号、米国特許出願公開第20140273232号、米国特許出願公開第20140273231号、米国特許出願公開第20140256046号、米国特許出願公開第20140248702号、米国特許出願公開第20140242700号、米国特許出願公開第20140242699号、米国特許出願公開第20140242664号、米国特許出願公開第20140234972号、米国特許出願公開第20140227787号、米国特許出願公開第20140189896号、米国特許出願公開第20140186958号、米国特許出願公開第20140186919号、米国特許出願公開第20140186843号、米国特許出願公開第20140179770号、米国特許出願公開第20140179006号、米国特許出願公開第20140170753号、米国特許出願公開第20140093913号、及び米国特許出願公開第20140080216号、及び国際公開第2016049024号に開示される。
【0092】
或る実施の形態では、本明細書に記載されるCas9ヌクレアーゼは知られており、例えば、S.ピオゲネスCas9タンパク質のアミノ酸配列はアクセッション番号Q99ZW2のもとSwissProtデータベースに見出される。Cas9ヌクレアーゼは、Cas9ホモログ又はオーソログであってもよい。また、改善された特異性を示す突然変異
体Cas9ヌクレアーゼを使用してもよい(例えば、全ての目的、特に、標的核酸に対する改善された特異性を有する変異体Cas9ヌクレアーゼに関する全ての教示に対して、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす、Ann Ran et al.Cell 154(6)1380-89(2013)を参照されたい)。また、核酸操作試薬は、不活性化Cas9ヌクレアーゼ(dCas9)を含んでもよい。核酸要素への不活性化Cas9結合は、立体的にRNAポリメラーゼ機構を妨害することにより単独で転写を抑制し得る。さらに、不活性化Casを、標的核酸に不可逆的な突然変異を導入せずに、標的部位で遺伝子発現に影響する、他のタンパク質に対するホーミングデバイス(例えば転写リプレッサー、活性化因子及び誘引ドメイン)として使用してもよい。例えば、標的部位でエピジェネティックなサイレンシングを促進するため、dCas9をKRAB又はSIDエフェクター等の転写リプレッサードメインに融合してもよい。また、Cas9を、VP16/VP64又はp64活性化ドメインへの融合によって合成転写活性化因子に変換してもよい。
【0093】
或る実施の形態では、Cas9ヌクレアーゼは、標的配列内等の標的配列の及び/又は標的配列の相補鎖内の位置の1つ又は両方の切断を指揮する。Cas9ヌクレアーゼによって指揮されたDNA切断の後、細胞に対して利用可能なDNA修復の2方式、すなわち相同組み換え修復(HDR)及び非相同末端結合(NHEJ)が存在する。突然変異部位に近いCas9切断後のHDRによる突然変異のシームレス修復は魅力的ではあるが、この方法の効率は、修復が行われたそれらの細胞選択し、それらの修飾された細胞のみを精製する追加工程を伴って、幹細胞又は人工多能性幹細胞(iPSC)のin vitro/ex vivoの修飾にのみ使用され得ることを意味する。HDRは、細胞において高い頻度発生しない。NHEJは、はるかに高い効率で生じ、多くの角膜ジストロフィーについて記載れるドミナントネガティブ突然変異に適している。追加実施の形態では、Cas9ヌクレアーゼはスタフィロコッカスに由来する。更に追加実施の形態では、Cas9ヌクレアーゼは、ストレプトコッカス・ピオゲネス、ストレプトコッカス-ディスガラクティエ、ストレプトコッカス・カニス、ストレプトコッカス・エクイ、ストレプトコッカス・イニエ、ストレプトコッカス・フォカエ、ストレプトコッカス・シュードポルシヌス、ストレプトコッカス・オラーリス、ストレプトコッカス・シュードポルシヌス、ストレプトコッカス・インファンタリウス、ストレプトコッカスミュータンス、ストレプトコッカス・アガラクティエ、ストレプトコッカス・カバリイ、ストレプトコッカス・エクイナス、ストレプトコッカス亜種oral taxon、ストレプトコッカ・ミチス、ストレプトコッカス・ガロリティカス、ストレプトコッカス・ゴルドニイ、若しくはストレプトコッカス・パステウリアヌス、又はそれらの変異体に由来する。かかる変異体は、Kleinstiver et al,2016 Nature,529,490-495に記載される、D10AニッカーゼであるSpy Cas9-HF1を含んでいてもよい。追加実施の形態では、Cas9ヌクレアーゼはスタフィロコッカスに由来する。更に追加の実施の形態では、Cas9ヌクレアーゼは、スタフィロコッカス・アウレウス、S.シミエ、S.アウリクラーリス、S.カルノーサス、S.コンジメンティ、S.マシリエンシス、S.ピスシフェルメンタンス、S.シミュランス、S.カピティス、S.カプラエ、S.エピデルミディス、S.サッカロリティカス、S.デブリエセイ、S.ヘモリティカス、S.ホミニス、S.アグネティス、S.クロモゲネス、S.フェリス、S.デルフィニ、S.ヒイカス、S.インターメディウス、S.ルトラエ、S.ミクロティ、S.ムスカエ、S.シュードインターメディウス、S.ロスツリ(rostri)、S.シュライフェリ、S.ルグドゥネンシス、S.アーレッタエ、S.コーニイ、S.エクオルム、S.ガリナルム、S.クルーシイ、S.レエイ、S.ネパレンシス、S.サプロフィティカス、S.サクシヌス、S.キシローサス、S.フレウレッティイ、S.レンタス、S.シウリS.ステパノビキイ、S.ビツリヌス、S.シミュランス、S.パステウリ、S.ワーネリ、又はそれらの変異体に由来する。
【0094】
追加実施の形態では、Cas9ヌクレアーゼは、配列番号4又は配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも約60%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。また更なる実施の形態では、ヌクレオチド分子をコードするCas9ヌクレアーゼは、配列番号3又は配列番号7からなる群から選択されるヌクレオチド配列と、少なくとも約60%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0095】
或る実施の形態では、CRISPR/Cas9システム及び本明細書に記載されるCRISPR/Cas9システムを使用する方法がNHEJによってDNA塩基配列を変更する。追加実施の形態では、CRISPR/Cas9システム又は本明細書に記載される少なくとも1つのベクターは、修復ヌクレオチド分子を含まない。或る実施の形態では、本明細書に記載される方法は、本明細書に記載されるHDRによってDNA塩基配列を変更する。追加実施の形態では、MECDにおける遺伝子治療に対するex vivoアプローチにおいて、このHDRアプローチを使用してもよい。更なる実施の形態では、このアプローチは対立遺伝子特異的でなくてもよく、KRT12コドン129、130、132、133及び135中の突然変異を修復するために使用されてもよい。
【0096】
或る実施の形態では、操作されたCRISPR/Cas9システムは、(a)本明細書に記載される標的配列とハイブリダイズするsgRNAに制御可能に連結された第1の調節性要素と、(b)Cas9ヌクレオチドをコードするヌクレオチド分子に制御可能に連結された第2の調節性の要素とを含み、ここで、成分(a)及び成分(b)は該システムの同じベクター又は異なるベクターに位置し、sgRNAは、標的配列を標的とし(例えば、それとハイブリダイズする)、Cas9ヌクレアーゼはDNA分子を切断する。標的配列は、PAMの5’端部に隣接する16個~25個のヌクレオチドに相補的なヌクレオチド配列であってもよい。本明細書において「隣接する」は、「直接隣接すること」を含む、参照部位の2個又は3個のヌクレオチド内にあることを意味し、これは、直接隣接するヌクレオチド配列間にヌクレオチドが介在せず、直接隣接するヌクレオチド配列は互いに1個のヌクレオチド内に存在することを意味する。追加実施の形態では、細胞は真核細胞、又は哺乳動物若しくはヒト細胞であり、調節要素は真核生物の調節因子である。更なる実施の形態では、細胞は本明細書に記載される幹細胞である。或る実施の形態では、Cas9ヌクレアーゼは、真核細胞における発現に対してコドン最適化される。
【0097】
或る実施の形態では、第1の調節要素はポリメラーゼIIIプロモーターである。或る実施の形態では、第2の調節要素はポリメラーゼIIプロモーターである。「調節要素」用語は、プロモーター、エンハンサー、内部リボソーム導入部位(IRES)、及び他の発現調節要素(例えば転写終止コドン、ポリアデニル化シグナル及びポリウリジル酸配列)を含むことが意図される。かかる調節要素は、例えば、Goeddel,GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)に記載される。調節要素として、多くの種類の宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現を指揮するもの、及び特定の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を指揮するもの(例えば組織特異的調節配列)が挙げられる。組織特異的プロモーターは、主として目的の所望の組織、筋肉、神経単位、硬骨、皮膚、血液、特定の臓器(例え
ば肝臓、膵臓)、又は特定の細胞型(例えばリンパ球)等において発現を指揮してもよい。また、調節要素は、これもまた組織又は細胞型に特異的であってもよく、又はそうでなくてもよい、細胞周期依存性、又は発生段階依存性の方法等の経時的に依存する方法で発現を指揮してもよい。或る実施の形態では、ベクターは1以上のpolIIIプロモーター(例えば1個、2個、3個、4個又は5個以上polIプロモーター)、1以上のpolIIプロモーター(例えば1個、2個、3個、4個又は5個以上のpolIIプロモーター)、1以上のpolIプロモーター(例えば1個、2個、3個、4個、又は5個以上のpolIプロモーター)、又はそれらの組み合わせを含む。polIIIプロモーターの例として、限定されないが、U6及びH1のプロモーターが挙げられる。polIIプロモーターの例として、限定されないが、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(任意にRSVエンハンサーを含む)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(任意にCMVエンハンサーを含む)[例えば、Boshart et
al,Cell,41:521-530(1985)を参照されたい]、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸還元酵素プロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスフォグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、及びEF1αプロモーターが挙げられる。また、「調節要素」の用語によって、WPRE、CMVエンハンサー、HTLVのLTR中のR-U5’セグメント(Mol.Cell.Biol.,Vol.8(1),p.466-472,1988)、SV40エンハンサー、及びウサギβ-グロビンのエクソン2とエクソン3の間のイントロン配列(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,Vol.78(3),p.1527-31,1981)等のエンハンサー要素が包含される。
【0098】
或る実施の形態では、本明細書に提供されるCas9ヌクレアーゼは、経時的又は細胞型依存性の方法で発現されるように最適化される、誘導可能なCas9ヌクレアーゼである。第1の調節要素は、Cas9ヌクレアーゼに連結することができる誘導性プロモーターであってもよく、限定されないが、テトラサイクリン誘導性プロモーター(メタロチオネインプロモーター)、テトラサイクリン誘導性プロモーター、メチオニン誘導性プロモーター(例えばMET25及びMET3プロモーター)、及びガラクトース誘導性プロモーター(GAL1、GAL7及びGAL10プロモーター)が挙げられる。他の好適なプロモーターとして、ADH1及びADH2のアルコール脱水素酵素プロモーター(グルコース中で抑制され、グルコースが使い尽くされ、エタノールが作製される際に誘導される)、CUP1メタロチオネインプロモーター(Cu2+、Zn2+の存在下で誘導される)、PHO5プロモーター、CYC1プロモーター、HIS3プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、ADC1プロモーター、TRP1プロモーター、URA3プロモーター、LEU2プロモーター、ENOプロモーター、TP1プロモーター及びAOX1プロモーターが挙げられる。
【0099】
発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞、所望の発現レベル等の因子に依存することが当業者に明らかであろう。ベクターを宿主細胞に導入することにより、本明細書に記載される核酸によってコードされる、融合タンパク質又はペプチドを含む、転写物、タンパク質、又はペプチド(例えば、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)転写物、タンパク質、酵素、その突然変異体形態、その融合タンパク質等)を産生することができる。
【0100】
「ベクター」の用語は、それが連結される別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。ベクターとして、限定されないが、一本鎖、二本鎖又は部分的に二本鎖の核酸分子、1以上の遊離末端を含む、又は遊離末端を含まない(例えば環状)を含む核酸分子、DNA、RNA又はそれらの両方を含む核酸分子、及び当該技術分野において知られている他の種類のポリヌクレオチドが挙げられる。ベクターの1種は「プラスミド」であり、標準的な分子クローニング技術等により追加のDNAセグメントを挿入することができる環
状二本鎖DNAループを指す。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、ここでは、ウイルス由来のDNA又はRNAの配列がウイルス(例えばレトロウイルス、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、複製欠損アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)へのパッケージング用のベクター中に存在する。また、ウイルスベクターは、宿主細胞へのトランスフェクション用ウイルスによって保持されるポリヌクレオチドを含む。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞において自律複製をすることができる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター、及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入に際して宿主細胞のゲノムへと統合され、それにより、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターは、それらが制御可能に連結される遺伝子の発現を指揮することができる。本明細書では、かかるベクターを「発現ベクター」と呼ぶ。組み換えDNA技術において有用な一般的な発現ベクターは、プラスミドの形をしていることが多い。組み換え発現ベクターは、宿主細胞において核酸の発現に適した形態で本発明の核酸を含むことができ、それは組み換え発現ベクターが、幾つかの場合には、発現に使用される宿主細胞に基づいて選択される、1以上の調節要素を含む、すなわち、発現される核酸配列に制御可能に連結されることを意味する。組み換えの発現ベクターにおいて、「制御可能に連結された」は、目的のヌクレオチド配列が(例えば、in vitro転写/翻訳系、又はベクターが宿主細胞へ導入される場合の宿主細胞において)該ヌクレオチド配列の発現を可能とする方法で調節要素(複数の場合がある)に連結されることを意味することが意図される。有利なベクターとして、レンチウイルス及びアデノ随伴ウイルスが挙げられ、またかかるベクターの種類を特定の種類の細胞の標的化に対して選択することができる。
【0101】
核酸操作の現象を経た幹細胞(すなわち、「操作された」幹細胞)を、任意の好適な方法を使用して単離することができる。或る実施の形態では、修復核酸は、選択可能なマーカーをコードする核酸を更に含む。これらの実施の形態では、宿主幹細胞ゲノムへの修復核酸の相同組み換えの成功もまた、選択可能なマーカーの統合による。したがって、かかる実施の形態では、陽性マーカーを、操作された幹細胞の選択に使用する。或る実施の形態では、選択可能なマーカーは、操作された幹細胞を、その選択マーカーが無ければ細胞を殺傷し得る薬物の存在下での生存を可能とする。かかる選択マーカーとして、限定されないが、ネオマイシン、ピューロマイシン、又はハイグロマイシンBに対する耐性を与える陽性選択マーカーが挙げられる。さらに、選択可能なマーカーは、操作された幹細胞が幹細胞の集団において視覚的に識別されることを可能とする製品であってもよく、それらのうちの幾つかは選択可能なマーカーを含まない。かかる選択マーカーの例として、限定されないが、その蛍光によって可視化することができる緑色蛍光タンパク質(GFP)、その基質ルシフェリンに暴露された場合にその発光によって可視化することができるルシフェラーゼ遺伝子、及びその基質と接触した場合に特徴的な色を生じるβ-ガラクトシダーゼ(β-gal)が挙げられる。かかる選択マーカーは、当該技術分野においてよく知られており、これらのマーカーをコードする核酸配列を商業的に入手可能である。(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press 1989を参照されたい)。蛍光によって可視化することができる選択マーカーを使用する方法は、蛍光標識細胞分取(FACS)技術を使用して更に選別されてもよい。
【0102】
或る実施の形態では、単離した操作された幹細胞を使用して、移植のための細胞株を樹立した。単離した操作された細胞は、任意の好適な方法を使用して培養し、安定した細胞株を産生することができる。例えば、培養を、フィーダー細胞として線維芽細胞細胞(例えば3T3)の存在下、又は不在下で維持することができる。他の例では、ヒト羊膜上皮細胞又はヒト胚線維芽細胞をフィーダー層として培養に使用する。或る実施の形態では、操作された幹細胞を、補足ホルモン上皮培地(SHEM)中で線維芽細胞(例えば3T3
株細胞)のフィーダー細胞層上で培養する。特定の実施の形態では、対照の操作された幹細胞の培養に適した培地は、下記成分の1以上を含む:ウシ胎児血清、患者の自己由来血清、EGF、インスリン、トランスフェリン、亜セレン酸ナトリウム、ヒドロコルチゾン、コレラ毒素サブユニットA、DMSO、トリヨードチロニン、抗生物質(例えばペニシリン/ストレプトマイシン及びゲンタマイシン)、抗菌剤(例えばアンホテリシンB)。LESCの培養に対する好適な技術は、全ての目的、特にLESCの培養に関する全ての教示に対して、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす、Takacs
et al.Cytometry A 75:54-66(2009)、Shortt
et al.,Surv Opthalmol Vis Sci 52:483-502(2007)、及びCauchi et al.Am J Ophthalmol 146:251-259(2008),に更に記載される。樹立細胞株の所望の核酸操作の検証を、例えば、本明細書で検討される選択可能なマーカー、及び所望の核酸操作の配列を確認する核酸配列の選択を含む、任意の好適な方法を使用して行うことができる。
【0103】
V.移植
或る一つの態様では、操作された幹細胞、及び該操作された幹細胞からの細胞株の任意の樹立又は培養に続いて、操作された幹細胞を、その治療を必要とする対象へ移植する。操作された幹細胞を、任意の好適な方法を使用して、対象に移植することができる。
【0104】
或る実施の形態では、移植に対する外科移植片を操作された細胞から発生させ、その後対象に移植する。特定の実施の形態では、大きさが移植に適切な大きさの面積まで拡張するように操作された幹細胞を十分な期間、羊膜上で培養する。生育の確認は、直接観察、ホールマウント染色調製物、組織病理学、免疫組織化学、チミジン取り込み、及び細胞周期に対するマーカーを使用するフローサイトメトリーによるもの、を含む様々な方法によって行うことができる。その後、培養された操作された幹細胞を、羊膜と共に直接移植することができる。他の実施の形態では、操作された幹細胞は、羊膜から分離され、非羊膜担体上に移植されて外科移植片を得る。好適な担体として、限定されないが、パラフィンガーゼ、コンタクトレンズ、コラージュシールド(collage shield)、生体高分子、フィブリンゲル、及び水晶体前嚢が挙げられる。
【0105】
移植に続いて、限定されないが、非矯正視力(UCVA)、最高矯正視力(BCVA)、及び輝度視力検査(BAT)の評価を含む、当該技術分野で知られている任意の好適な検査を使用して、対象の視覚機能の評価を行ってもよい。例えば、全ての目的、特に、視力の評価に対する基準に関する全ての教示に対して、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす、Awaad et al.,Am J Ophthalmol.145(4):656-661(2008)、及びSharhan et al.,Br
J Ophthalmol 84:837-841(2000)を参照されたい。特定の実施の形態では、治療を受ける前と比較して、対象の視力が、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%改善する。
【0106】
或る実施の形態では、上記方法は、1以上の所定頻度(例えば、毎週、毎月、3ヶ月毎、半年毎、毎年等)で対象に1以上の操作された幹細胞を移植することを繰り替えることを更に含む。
【0107】
VI.キット
別の態様では、本明細書において、角膜ジストロフィーの治療に対する核酸操作試薬を備えるキットが提供される。或る実施の形態では、キットはCRISPR試薬、例えば目的の核酸を標的とする1以上のガイドRNAと、ヌクレアーゼ(例えば、II型ヌクレアーゼ)を備える。また、追加の実施の形態では、キットは、本明細書に記載される修復さ
れる突然変異の野生型対立遺伝子を含む修復核酸を備える。或る実施の形態では、キットは、細胞、例えばトランスフェクション剤、又は電気穿孔バッファーによって核酸操作の取り込みを促進する薬剤を備える。或る実施の形態では、本明細書に提供される主題のキットは、幹細胞の検出又は単離に対する1以上の試薬、例えばFACSと合わせて使用可能な1以上の陽性幹細胞マーカーに対する標識化抗体を備える。
【実施例
【0108】
以下の実施例を提示して、本発明の様々な実施の形態を説明する。かかる実施例は、排他的な実施の形態を表す、又はそれを表すことを意図するものではなく、かかる実施例は、単に本発明の実施を例証する役割を果たすに過ぎないことが理解される。
【0109】
突然変異分析:
様々な角膜ジストロフィーに関連する突然変異を分析して、どれが単独でミスセンス突然変異又はインフレームインデルであるか判定した。この分析は、大多数のK12及びTGFBI疾患については、ナンセンス又はフレームシフトインデル突然変異が疾患に関係していないことを示す。さらに、これらの遺伝子で発見されるいかなる天然起源のナンセンス、フレームシフトインデル、又はスプライス部位突然変異も、これらの個体で疾患と関連しないと報告されている。
【0110】
突然変異分析は、以下の角膜ジストロフィー遺伝子が標的化ヌクレアーゼ遺伝子治療に適していることを明らかにした(表1)。
【0111】
【表1】
【0112】
PAM特異的アプローチ又はガイド対立遺伝子特異的アプローチのいずれかによって標的化可能な突然変異の数を決定するため好適な角膜ジストロフィー遺伝子の調査をこの報告に対して行った。PAM特異的なアプローチは新規なPAMを生成するため疾患を引き起こすSNPを必要とするのに対し、対立遺伝子特異的アプローチは、疾患を引き起こすSNPを含むガイドの設計を含む。
【0113】
10%超のマイナー対立遺伝子頻度(MAF)でPAMを生成するTGFBI中の疾患を引き起こさないSNPの全てを同定した。10%超のMAFによるSNPの選択は、新規PAMにおいて生じるSNPが疾患を引き起こす突然変異を伴ってcisに見出される合理的な機会を提供し得る。全てのTGFBI内の変異体を分析して、新規のPAMを生成したかどうかを判断した(表2)。先の報告は、このアプローチを使用して、突然変異対立遺伝子の永久的な不活性化を実証する(Shin et al.,2016.Hum
an Molecular Genetics)。
【0114】
【表2】
【0115】
表2中、「b/w」は、2つのエクソン間に変異(例えば、突然変異)が位置することを示す。例えば、「b/w 1 & 2」は、図3に示されるように、エクソン1及びエクソン2の間に変異が位置する(例えば、変異がイントロンに位置する)ことを意味する。図3中、番号が付された四角は、TGFBI内のエクソンを示す。複数の疾患を引き起こす突然変異が発見される、TGFBI中のホットスポットを赤色四角によって示す。青い矢印はそれぞれ、新規なPAMを生成するSNPの位置を示す。新規のPAMは、各矢印で示され、必要な変異体は赤で協調される。
【0116】
コンストラクト:
Cas9及びsgRNAを発現する3種類のプラスミドを全ての実験を通して使用した。使用した非ターゲッティングプラスミドは、pSpCas9(BB)-2A-Puro(PX459)であった(Broad Institute,MIT;Addgene plasmid 48139;図4)。公開されたプロトコル(Ran FA, et al.,Nat Protoc 2013;8:2281-2308)に従い、K12-L132P対立遺伝子に特異的なsgRNAを含むプラスミドを、以下の2つのプライマーをアニールしクローンニングすることにより設計した(英国ペーズリーのLife Technologies):pSpCas9(BB)-2A-Puroへの5’-CACCGTAGGAAGCTAATCTATCATT-3’、及び5’-AAACAATGATAGATTAGCTTCCTAC-3’。このsgRNAは、以下sgK12LPと呼ばれる、K12-L132P対立遺伝子上に見られる対立遺伝子特異的PAMの直接の3’の20個のヌクレオチドに相当する(図5、赤色)。野生型及び突然変異体の両方のK12配列を標的とするCas9/sgRNAプラスミドを構築し(英国ジリンガムのSigma)、陽性対照(図5、緑色)として使用した。
【0117】
以前に記載される追加のK12発現コンストラクトを、対立遺伝子特異性及び効能を評価するために使用した。以下、それぞれK12WT-Luc及びK12LP-Lucと呼ばれる、停止コドンの3’に挿入されたK12-WT又はK12-L132Pのいずれかに対する全mRNA配列を含むホタルルシフェラーゼプラスミド(Liao H, et
al.PLoS One 2011;6:e28582.)、並びに以下、それぞれK12WT-HA及びK12LP-HAとして知られるプラスミドによる、成熟した赤血球凝集素(HA)タグ付のK12-WT及びK12-L132Pのタンパク質(Courtney DG,et al.Invest Ophthalmol Vis Sci 2014;55:3352-3360.)に対する発現プラスミドを使用した。ウミシイタケルシフェラーゼ(pRL-CMV、英国サザンプトンのPromega)に対する発現コンストラクトをデュアルルシフェラーゼアッセイに対して使用し、トランスフェクション効率を正規化した。
【0118】
デュアルルシフェラーゼアッセイ:
先に記載さる通り適合させた方法(Courtney DG,et al.Invest Ophthalmol Vis Sci2014;55:977-985;Allen EHA, et al.Invest Ophthalmol Vis Sci 2013;54:494-502;Atkinson SD,et al.J Invest Dermatol 2011;131:2079-2086)を使用して、デュアルルシフェラーゼのアッセイを使用し、外因性コンストラクト中の3の試験sgRNAsの効能及び対立遺伝子特異性を定量した。つまり、HEK AD293細胞(Life Technologies)をLipofectamine 2000(Life Technologies)を使用し、1:4の比率のK12WT-Luc又はK12LP-Lucの両方の発現コンストラクトと、sgNSC、sgK12又はsgK12LPのコンストラクトによりトランスフェクトした。細胞を、溶解する前に72時間インキュベート
し、ホタル及びウミシイタケの両方のルシフェラーゼの活性を定量した。全てにおいて、各トランスフェクション条件に対して8回再現を行った。
【0119】
ウェスタンブロッティング:
以前に記載されるのと同様の方法(Courtney DG,et al.Invest Ophthalmol Vis Sci 2014;55:977-985;Allen EHA,et al.Invest Ophthalmol Vis Sci 2013;54:494-502)を使用し、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を使用して、HAタグ付けされた野生型(K12WT-HA)及び突然変異体(K12LP-HA)の発現コンストラクト(Liao H,et al.PLoS One 2011;6:e28582.)を、1:4の比率で、HEK AD293細胞に一時的に各sgRNAsと共に重複してコトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を72時間インキュベートした。標準的な方法(Courtney DG,et al.Invest Ophthalmol Vis Sci 2014;55:977-985;Allen EHA, et al.Invest Ophthalmol Vis Sci 2013;54:494-502)を使用し、HAに対するウサギポリクローナル抗体(英国ケンブリッジのAbcam;ab9110、1:2000)、及びヒトβ-アクチンに対するマウスモノクローナル抗体(Sigma、1:15000)を使用して、HAタグ付K12及びβ-アクチンの発現を分析した。メンブレンを二次ホースラディッシュペルオキシダーゼ複合化ポリクローナルブタ抗ウサギ抗体(英国エリーのDakoCytomation)、又はホースラディッシュペルオキシダーゼ複合化ヤギ抗マウス抗体(DakoCytomation)と共にそれぞれインキュベートした。タンパク質結合を標準的な化学発光(Life Technologies)によって検出した。デンシトメトリーを、ImageJ(Schneider CA,Rasband WS,Eliceiri KW.Nat Methods 2012;9:671-675)を使用して行い、HAタグ付K12(n=4)のバンド強度を定量した。これをβ-アクチンのバンド強度に対して正規化した。
【0120】
定量的リアルタイムPCR:
トランスフェクションを、ウエスタンブロットについて記載されるのと同じ方法で行ったが、K12WT-HAとK12LP-HAの両方を細胞に同時にトランスフェクトした。全てのトランスフェクションを3回繰り返し行った。トランスフェクションに続いて、48時間インキュベートし、細胞をRNAeasy Plusキット(オランダ国ヴェンローのQiagen)を使用してRNAを抽出した。500ngのRNA(Life Technologies)のcDNA転換の後、定量的リアルタイムPCRを行ってKRT12 mRNAレベルを定量した。KRT12アッセイ(アッセイId 140679;英国ウェストサセックスのRoche)を、HPRTアッセイ(アッセイID 102079;Roche)及びGAPDHアッセイ(アッセイID 141139;Roche)と共に使用した。各試料を各アッセイに対して3回繰り返して実行し、遺伝子の相対的な発現を、ΔΔCT法を使用して計算した(Livak KJ,Schmittgen
TD.Methods 2001;25:402-408)。KRT12発現レベルをHPRT及びGAPDHに対して標準化し、両方の参照遺伝子の発現を、BestKeeperソフトウェアツールを使用して、治療群にわたって「安定していること」した(Pfaffl MW,Tichopad A,Prgomet C,Neuvians TP.Biotechnol Lett 2004;26:509-515)。
【0121】
ピロシーケンス:
定量的逆転写酵素-PCRによって評価された同じcDNA試料を使用して、正確に先に記載される通りに(Courtney DG,et al.Invest Ophthalmol Vis Sci 2014;55:3352-3360)、ピロシーケンス
を使用してK12-WT mRNAに対する残りのK12-L132P mRNAの比率を特定した。
【0122】
KRT12トランスジェニックマウス:
内因性マウスKrt12コード配列を置き換えるためヒトK12-L132P対立遺伝子をノックインしたC57マウスモデルを得た。これは対立遺伝子特異的なsgRNA及びCas9によってKRT12-L132Pのin-vivoのターゲティングを可能とする。ヒトK12-L132P対立遺伝子の1つのコピー及びネズミ科Krt12の1つのコピーが存在する、24週齢の雌性ヘテロ接合マウスを使用した。標準PCR及びサンガーのジデオキシヌクレオチドシーケンシングを使用して、マウスの遺伝子型を同定し、K12-L132P対立遺伝子の異型接合性を確認した。本研究は1つの角膜に対する治療効果を調査したため、動物の無作為化は必要ではなく、他方で、同じ動物の別の角膜を陰性対照として使用した。研究者は本研究で盲検化されていない。全て実験は倫理規則に従い、地域倫理委員会によって承認された。
【0123】
in vivo眼実質内注射:
対立遺伝子特異的sgRNA及びCas9の一時的発現を達成するため、以前に記載されるプロトコルに従って(Moore JE,McMullen CBT,Mahon G,Adamis AP.DNA Cell Biol 21:443-451)、眼実質内注射によってsgK12LPプラスミドをヘテロ接合ノックインマウスの角膜実質に導入した。この送達方法を評価するために、野生型マウスに最初に4μgのCas9-GFPプラスミド(pCas9D10A_GFP)(Addgeneプラスミド44720)を注入した。マウスを24時間、48時間、及び72時間に選別し、角膜を4%パラホルムアルデヒドで固定し、標準的な組織学の手順を使用して処理した。5-マイクロメートル厚の切片に切断し、再水和し、蛍光顕微鏡によって画像処理した。マウスに全身麻酔、及び角膜に対する局所麻酔薬を投与した。合計3μlのリン酸緩衝生理食塩水で希釈したsgK12LP又はsgNSCのプラスミド4μgを、資格を有する眼科医が、4匹のマウスの右眼と左眼の角膜にそれぞれ注入した。マウスを処理後48時間に選別した。
【0124】
NHEJのシーケンシング及び決定:
一旦マウスを選別して、眼を摘出し、角膜を解剖した。DNA抽出キット(Qiagen)を使用してgDNAを抽出し、試料をsgK12LP及びsgNSCの2つの治療群に貯蔵した。試料は、K12-L132P突然変異の周辺領域を増幅するための次の2つのプライマー:5’-ACACCCATCTTGCAGCCTAT-3’及び5’-AAAATTCCCAAAGCGCCTC-3’を使用して、PCR増幅を経た。PCR産物をゲル精製し、CloneJetクローニングベクター(Life Technologies)に連結し、DH5αコンピテント細胞(Life Technologies)を形質転換するために使用した。合計13個のクローンを選択し、製造業者の手順に従い、miniprepキット(Qiagen)を使用して、プラスミドDNAを作製した。その後、13個のクローンに由来するDNAをCloneJetベクターと共に提供されるシーケンシングプライマーを使用して配列決定した(オクスフォード大学動物学部)。各予測されたオフターゲットに対する分析に10個のコロニーが選択され、Zhang研究室のオンラインツール(crispr.mit.edu)によって予測されたマウスゲノム中のsgK12LPに対する2つの最も可能性のあるエクソンのオフターゲット部位を同じ方法で評価した。予測されたオフターゲット部位は、5’-TAAGTAGCTGATCTATCAGTGGG-3’(Gon4l)及び5’-TGGGAAGCATATCTGTCATTTGG-3’(Asphd1)であった。これらの2つの部位のみが、計算された0.1超のオフターゲットスコアを有したため、これらを選択した。
【0125】
統計:
全てのエラーバーは、別段の記載が無い限り、s.e.mを表す。全て試料が同じ分布を実証したことから、独立t検定を使用して有意性を計算した。統計学的有意差を0.05%に設定した。分散を群間で計算し、類似するとみなした。
【0126】
KRT12特異的sgRNAの構築:
MECDを引き起こすKRT12ミスセンス突然変異に起因する配列変化の分析は、重篤な形態のMECDを引き起こすL132P突然変異が、偶然にも新規のPAM部位(AAG>AGG)の生成をもたらすことを明らかにした。KRT12 L132P突然変異によって生成された新規のPAM部位の5’末端に隣接する配列20ヌクレオチドに対し相補的なsgRNA(sgK12LP)を設計し、’Optimized CRISPR
Design Tool’ provided online by the Zhang lab,MIT 2013を使用して可能性のあるオフターゲットについて評価した(図5、赤色)。このシステムを使用して、sgRNAは66%のスコアを有すると計算され、ここで、50%超のスコアは、限られた数の予測される可能性のあるオフターゲットを含み、高品質であるとされる。
【0127】
sgK12LP対立遺伝子特異性及びin vitroでの効能の評価:
sgK12LPの対立遺伝子特異性及び効能を、野生型及び突然変異体のK12に対する外因性発現コンストラクトを使用して、HEK AD293細胞においてin vitroで評価した。最初に、デュアルルシフェラーゼレポーターアッセイ(図6、項a)を使用して、対立遺伝子特異性を特定した。K12WT-Luc又はK12LP-Lucのいずれかを発現し、sgK12で処理した細胞において、ホタルルシフェラーゼ活性は有意に減少することがわかった。ホタルルシフェラーゼ活性の強力で、対立遺伝子特異的な減少が、sgK12LPで処理した細胞で観察された。K12LP-Lucを発現する細胞では、73.4±2.7%(P<0.001)の減少が観察された(図6、項a)。また、この対立遺伝子に特異的で強力なノックダウンは、K12WT-HA又はK12LP-HAのいずれかを発現する細胞においてウエスタンブロットによって観察され(図6、項b;4つのブロットの代表画像)、デンシトメトリーによる定量は、K12WT-HAタンパク質と比較して、sgK12LPによるK12LP-HAタンパク質の32%の有意な減少(P<0.05)を明らかにした。sgK12で処理した細胞において、野生型と突然変異体の両方のK12タンパク質が減少したのがわかったのに対し、sgK12LPで処理したものでは、野生型タンパク質の発現に対して効果は無いようであったが、突然変異体K12タンパク質の有意なノックダウンがあるように見えた(図6、項b)。
【0128】
タンパク質レベルで観察されるこのデータを支持するため、定量的逆転写酵素-PCR及びピロシーケンスを行って、mRNAのレベルでの対立遺伝子特異性及び効能を特定した。野生型及び突然変異体の両方のK12を同時に(1:1の発現比率で)発現し、そして3つの試験Cas9/sgRNA発現コンストラクト(NSC、K12及びK12LP)の各々で処理した細胞において、定量的逆転写酵素-PCRを使用して全K12 mRNAのノックダウンを判断した(図6、項c)。全K12 mRNAの73.1±4.2%の強力な減少(P<0.001)は、sgK12LP処理細胞では測定された52.6±7.0%(P<0.01)のより少ない減少と共に、sgK12に処理した細胞で観察された(図6、項c)。ピロシーケンスを使用して、これらのsgRNAで処理した後に残留する成熟mRNA種の細胞内の割合を特定した(図6、項d)。mRNAの割合を、「K12-L132Pのパーセンテージ/K12-WTのパーセンテージ」として計算した。sgNSCで処理した細胞を1に正規化し、突然変異体と野生型のK12 mRNA間の比率を1:1とした。sgK12を用いて試験した細胞では、0.89±0.03のK12突然変異体mRNAの割合が観察されたが、NSC対照に対する差は有意ではなかった(P<0.14)。sgK12LPで処理したそれらの細胞では、0.28±0.02のK12突然変異体mRNAの割合が検出され、sgNSC処理細胞と比較して、有意
に変更された(P<0.001)(図6、項d)。
【0129】
in vivoでのsgRNA-K12LPの効能の判定:
Cas9-GFPコンストラクトの実質内注射は、注射から24時間後の角膜上皮中の緑色蛍光タンパク質(GFP)タンパク質の存在をもたらした(図7、項a)。GFPの一時的発現は、注射から48時間後まで見られた。K12-L132Pヒト化ヘテロ接合マウスへのsgK12LP又はsgNSCの発現コンストラクトのいずれかの基質内の注射、及び48時間のインキュベーション期間の後、マウスを安楽死させ、ゲノムDNA(gDNA)を角膜から作製した。4匹のsgK12LP又はsgNSCで処理した動物の角膜に由来するgDNAを貯蔵し、ヒト化K12-L132P遺伝子のエクソン1のPCR増幅、クローニング及びシーケンシングを行った。sgNSCで処理した眼のgDNAから樹立した10個のクローンのうち、K12-L132P配列は10個全てにおいて無傷のままであった。sgK12LPで処理した眼に由来する13個の個々のクローンをシーケンシングしたところ、8個は変化していないKRT12 L132Pヒト配列を含むことがわかったが、5個のクローンはCas9/sgK12LP複合体の予測された切断部位周辺のNHEJを実証した(図7、項b)。1個のクローン(1)では、1個のヌクレオチドの挿入が、32個のヌクレオチドの欠失と共に見出された。最大53個のヌクレオチドの大きな欠失が、in vivoで観察された(クローン5)。これらの5個のクローンのうち、4個(クローン1、及びクローン3~5)は、初期の停止コドンの発生に結び付く可能性のあるフレームシフトをもたらすと予想される欠失を含んだ。また、マウス中のsgK12LPの上位2個の予測されるエクソンのオフターゲット部位もこの方法を使用して評価した。10個のクローンを各標的に対してシーケンシングし、いずれも非特異的な切断を経なかったことがわかった。
【0130】
R514P、L518R及びL509Rにおける突然変異によって作製されたPAM部位に関連するTGFBI突然変異:
シングルガイドRNAを、これらの突然変異の各々をターゲットとするように設計し、sgRNA/Cas9発現プラスミドへとクローニングした。さらに、天然起源の近くのPAMを利用する陽性対照ガイドRNAを各突然変異に対して設計した。野生型及び突然変異体の標的配列をルシフェラーゼレポータープラスミドへとクローニングし、本発明者らが、WTの発現及びMUT発現に対する遺伝子エディティングの効果をモニターすることを可能とした。両方のプラスミドを使用してAD293細胞をトランスフェクトし、本発明者らのハイスループットレポーター遺伝子アッセイを使用してCRISPR Cas9処理の48時間後にルシフェラーゼ発現を測定し、細胞中に存在するMUT及びWTのDNA量の測定を得た。
【0131】
図8は、SNP由来PAMアプローチを使用して評価した3つのTGFBI突然変異(R514P、L518R及びL509R)について、顕著な対立遺伝子特異性が達成されたことを示す。CRISPR Cas9システムによって切断された突然変異対立遺伝子、及びガイドのうちの幾つか対してある程度切断されたWT DNAを伴って達成された。
【0132】
PAM部位に隣接する標的部位内に位置するSNP突然変異と関連するTGFBI突然変異:
シングルガイドRNAをこれらの突然変異を標的とするように設計し、sgRNA/Cas9発現プラスミドにクローニングした。野生型及び突然変異体の標的配列をルシフェラーゼレポータープラスミドにクローニングし、本発明者らのハイスループットレポーター遺伝子アッセイで評価した。両方のプラスミドを使用してAD293細胞をトランスフェクトし、2日後にルシフェラーゼ発現を測定した。最初に、20bp標的特異的配列を含むsgRNAを試験した。しかしながら、これらは十分な対立遺伝子特異性を提供しな
かった。その後、標的配列を18bpに減じた、トランケートsgRNA(TRUガイド)を設計した。改善された対立遺伝子特異性が認められた(図9、項a~項f)。
【0133】
Ex Vivo遺伝子修正:
ルシフェラーゼレポーターマウスに由来する角膜において、遺伝子サイレンシングを達成する能力を実証した。Luc2に対するヘテロ接合マウスを選別し、それらの角膜を解剖した後、細胞培養培地に移した。解剖した角膜を、Lipofectamine 2000を使用してルシフェラーゼレポーター遺伝子に対して標的化した非特異的対照sgRNA又はsgRNAのいずれかでトランスフェクトした。角膜を3日間培養で維持し、ルシフェラーゼ発現を測定した。
【0134】
Luc2標的とするsgRNAでトランスフェクトした角膜において、ex vivoでの標的遺伝子のCRISPR遺伝子エディティングの成功を表す、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の強力なサイレンシングが観察された(図10)。Luc2に対するヘテロ接合のマウスに由来する角膜を解剖し、CRISPR遺伝子エディティングをex vivoで行った。角膜上皮幹細胞は角膜縁領域に限定されないことから、本発明者らは、図10に示される全上皮にわたって遺伝子エディティングを示す必要があった。治療の後の右図の濃い色は、完全な遺伝子エディティング、及びこのマウス角膜全体中のex vivoでのLuc遺伝子のノックアウトを実証した(Moore JE,McMullen
CBT,Mahon G,Adamis AP(2002).The Corneal
Epithelial Stem Cell.DNA&Cell Biology,21(5-6)pp.443-451.)。
【0135】
顆粒状角膜ジストロフィーII型の治療に対する外科移植
【0136】
細胞を顆粒状角膜ジストロフィーII型に対する治療を受けている患者から得られた角膜縁の生検試料から培養する。治療を受けている患者は、次のアミノ酸置換のうちの1つをコードするTGFBI遺伝子中の突然変異を保持する:R124C、R124H、R124L、R555W、R555Q及びH626P。細胞を洗浄し、角膜縁上皮幹細胞(LESC)を次のマーカーの1以上に基づいて選別する:転写因子p63、ABCG2、C/EBPδ又はBmi-1。3T3フィーダー細胞の存在下で、単離したLESCからA細胞株を樹立する。その後、樹立したLESC株を、次の陽性マーカー:転写因子p63、ABCG2、C/EBPδ又はBmi-1の1以上の存在、及び次の陰性マーカー:サイトケラチン3(CK3)、サイトケラチン12(CK12)、コネキシン43又はインボルクリンの1以上不在によって確認する。
【0137】
CRISPRシステム試薬を、Shalem et al.,Nature Reviews Genetics 16:299-311(2013);Zhang et al.,Human Molecular Genetics 23(R1):R40-6(2014);Zetsche et al.dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.09.038 (2015)、及びZhu et al.Cell 157:1262-1278(2014)に従って作製する。CRISPRシステムの試薬は、同じベクター上に含まれる1以上のガイドRNA(gRNAs)、II型ヌクレアーゼ(例えばCas9又はCpf1)、及びおよそ150bp長の修復核酸を含む。修復核酸は、位置相同組み換え現象の選択を可能とする選択可能なGFPマーカーと同様に、R124、R555又はH626の野生型対立遺伝子を含む。CRISPRシステムの試薬は、標準ポリマー系(DEAEデキストラン)トランスフェクション技術を使用して、LESC細胞株に導入される。LESCに核酸操作現象を経させ、かかる減少に対して陽性の細胞をGFPマーカー及びFACSを使用して単離する。所望の相同組み換え減少を、FACS選別LESCにおいて目的のTGFBI領域をシーケンシングすること
により更に確認する。
【0138】
所望の野生型TGFBI対立遺伝子を含む操作されたLESCを、操作されたLESCに十分な期間の羊膜上で培養して、移植に対して適切な領域サイズに拡大させる。一旦所望のサイズを達成すると、担体として羊膜を使用して操作されたLESCを移植することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図10
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図11-4】
図11-5】
【配列表】
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