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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】車両用情報伝達装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20230308BHJP
   B60Q 3/217 20170101ALI20230308BHJP
   B60Q 3/14 20170101ALI20230308BHJP
   B60Q 3/80 20170101ALI20230308BHJP
   B60Q 3/16 20170101ALI20230308BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
B60R16/02 630Z
B60Q3/217
B60Q3/14
B60Q3/80
B60Q3/16
G06F3/01 510
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019178633
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021054245
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】野倉 邦裕
(72)【発明者】
【氏名】荒川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】花井 栄司
(72)【発明者】
【氏名】八木 絢香
(72)【発明者】
【氏名】山田 高寛
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-060268(JP,A)
【文献】特開2003-045207(JP,A)
【文献】特開2015-151032(JP,A)
【文献】特開2019-127139(JP,A)
【文献】特開2018-002118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60Q 3/217
B60Q 3/14
B60Q 3/80
B60Q 3/16
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状変更可能な弾力性を有して車両の利用者に視認される意匠面を形成する意匠面形成部材と、
車両状態を監視する車両状態監視装置と通信することにより前記利用者に伝達する情報がある場合に前記意匠面形成部材を駆動して前記意匠面を変形させる意匠面変形部と、を備え、
前記情報の内容が、前記利用者の応答を要求するものであると判定された場合には、前記意匠面を変形させるとともに前記利用者の操作入力を促す操作案内音声を出力する車両用情報伝達装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用情報伝達装置において、
前記意匠面変形部は、前記情報の内容に対応する位置の前記意匠面を変形させること、
を特徴とする車両用情報伝達装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用情報伝達装置において、
前記意匠面変形部は、前記情報の内容に対応する変形パターンで前記意匠面を変形させること、を特徴とする車両用情報伝達装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の車両用情報伝達装置において、
前記意匠面変形部は、前記意匠面形成部材を内側から押圧することにより前記意匠面を変形させること、を特徴とする車両用情報伝達装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか一項に記載の車両用情報伝達装置において、
前記意匠面形成部材は、透光性を有するものであって、
前記意匠面形成部材の内側に設けられた発光体と、
前記意匠面が変形した位置において前記発光体を発光させる発光制御部と、
を備えること、を特徴とする車両用情報伝達装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用情報伝達装置において、
前記発光制御部は、前記情報の内容に対応する発光パターンで前記発光体を発光させること、を特徴とする車両用情報伝達装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れか一項に記載の車両用情報伝達装置において、
前記意匠面が変形した位置に対する利用者の操作入力を検出可能な操作入力センサを備えること、を特徴とする車両用情報伝達装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用情報伝達装置において、
前記意匠面の変形にあわせて前記操作入力を促す音声出力を実行する操作案内制御部を備えること、を特徴とする車両用情報伝達装置。
【請求項9】
請求項1~請求項8の何れか一項に記載の車両用情報伝達装置において、
前記意匠面変形部は、前記車両の外装部材に設けられた前記意匠面形成部材を駆動することにより、車外の前記利用者に視認される前記意匠面を変形させること、
を特徴とする車両用情報伝達装置。
【請求項10】
請求項1~請求項9の何れか一項に記載の車両用情報伝達装置において、
前記意匠面変形部は、前記車両の内装部材に設けられた前記意匠面形成部材を駆動することにより、車内の前記利用者に視認される前記意匠面を変形させること、
を特徴とする車両用情報伝達装置。
【請求項11】
請求項1~請求項10の何れか一項に記載の車両用情報伝達装置において、
前記利用者に伝達する情報を選定する情報選定部を備えること、
を特徴とする車両用情報伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用情報伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光出力や音出力等を通じて、車両の利用者に情報の伝達を行う情報伝達装置がある。そして、例えば、特許文献1等には、利用者に伝達すべき情報の内容に応じて、その光出力や音出力の形態を変化させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-102664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両においては、あらゆる構成要素について、その改善が進められている。そして、上記従来技術の情報伝達装置についてもまた、このような日々進化する車両の要求水準に応え続け得るとは必ずしも言い切れないことから、その更なる改善が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、より効果的に、車両の利用者に情報を伝達することのできる車両用情報伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両用情報伝達装置は、形状変更可能な弾力性を有して車両の利用者に視認される意匠面を形成する意匠面形成部材と、前記利用者に伝達する情報がある場合に前記意匠面形成部材を駆動して前記意匠面を変形させる意匠面変形部と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、意匠面に形成される立体的な変形形状によって、視覚的に、その利用者に伝達する情報を表現することができる。そして、これにより、利用者の注意を引くことで、より効果的に、情報を伝達することができる。
【0008】
上記課題を解決する車両用情報伝達装置において、前記意匠面変形部は、前記情報の内容に対応する位置の前記意匠面を変形させることが好ましい。
上記構成によれば、利用者に伝達する情報の内容と意匠面の変形位置とを関連付けて表現することができる。例えば、情報の対象物やその方向性を示すことができる。そして、これにより、より効果的に、その車両の利用者に情報を伝達することができる。
【0009】
上記課題を解決する車両用情報伝達装置において、前記意匠面変形部は、前記情報の内容に対応する変形パターンで前記意匠面を変形させることが好ましい。
上記構成によれば、利用者に伝達する情報の内容と意匠面の変形パターンとを関連付けて表現することができる。例えば、その変形速度や大きさ等によって緊急性を表すことができる。そして、これにより、より効果的に、その車両の利用者に情報を伝達することができる。
【0010】
上記課題を解決する車両用情報伝達装置において、前記意匠面変形部は、前記意匠面形成部材を内側から押圧することにより前記意匠面を変形させることが好ましい。
上記構成によれば、簡素な構成にて、立体的な意匠面の変形形状を形成することができる。
【0011】
上記課題を解決する車両用情報伝達装置において、前記意匠面形成部材は、透光性を有するものであって、前記意匠面形成部材の内側に設けられた発光体と、前記意匠面が変形した位置において前記発光体を発光させる発光制御部と、を備えることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、意匠面に形成された立体的な変形形状の内側で発光体が発光する光出力によって、より多様な情報表現を行うことができる。そして、これにより、より効果的に、その車両の利用者に情報を伝達することができる。
【0013】
上記課題を解決する車両用情報伝達装置において、前記発光制御部は、前記情報の内容に対応する発光パターンで前記発光体を発光させることが好ましい。
上記構成によれば、利用者に伝達する情報の内容と発光体を用いた光出力の発光パターンとを関連付けて表現することができる。例えば、その点灯及び消灯の速度や色合い等によって緊急性を表すことができる。そして、これにより、より効果的に、その車両の利用者に情報を伝達することができる。
【0014】
上記課題を解決する車両用情報伝達装置において、前記意匠面が変形した位置に対する利用者の操作入力を検出可能な操作入力センサを備えることが好ましい。
上記構成によれば、その意匠面の変形に利用者が応答する双方向の情報伝達を行うことができる。
【0015】
上記課題を解決する車両用情報伝達装置において、前記意匠面の変形にあわせて前記操作入力を促す音声出力を実行する操作案内制御部を備えることが好ましい。
上記構成によれば、より効果的に、その意匠面の変形に利用者が応答する双方向の情報伝達を行うことができる。
【0016】
上記課題を解決する車両用情報伝達装置において、前記意匠面変形部は、前記車両の外装部材に設けられた前記意匠面形成部材を駆動することにより、車外の前記利用者に視認される前記意匠面を変形させることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、車外の利用者に対して、より効果的に、情報を伝達することができる。
上記課題を解決する車両用情報伝達装置において、前記意匠面変形部は、前記車両の内装部材に設けられた前記意匠面形成部材を駆動することにより、車内の前記利用者に視認される前記意匠面を変形させることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、車内の利用者に対して、より効果的に、情報を伝達することができる。
上記課題を解決する車両用情報伝達装置は、前記利用者に伝達する情報を選定する情報選定部を備えることが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、車両の乗員に対して適切な情報を伝達することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、より効果的に、車両の利用者に情報を伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】情報伝達装置が搭載された車両の斜視図。
図2】ドアに設けられた意匠面形成部材及び情報伝達ユニットを示す図。
図3】ダッシュボード及びインナートリムに設けられた意匠面形成部材及び情報伝達ユニットを示す図。
図4】意匠面形成部材の内側に設けられた情報伝達ユニット近傍の断面図。
図5】意匠面形成部材の内側に設けられた情報伝達ユニット近傍の断面図。
図6】情報伝達装置の概略構成を示すブロック図。
図7】情報伝達制御の処理手順を示すフローチャート。
図8】情報伝達制御に用いられる制御テーブルの概略構成図。
図9】情報伝達装置の作用説明図。
図10】情報伝達装置の作用説明図。
図11】情報伝達装置の作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、車両用情報伝達装置を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両1は、車体2の側面2sに形成されたドア開口部3を開閉するドア4を備えている。また、この車両1は、その車室の上方を覆うドーム型のキャノピー6を備えている。尚、本実施形態の車両1におけるドア4は、その前端部を支点に回動する所謂スイングドアとしての構成を有している。更に、キャノピー6は、透明素材を用いて構成されるとともに、その後端部分に支点を有して上下方向に開閉動作する。そして、本実施形態の車両1は、これらのドア4及びキャノピー6が連動することで、その利用者が容易に乗降することのできる構成となっている。
【0023】
また、図2に示すように、本実施形態の車両1は、そのドア4に設けられたシート状の意匠面形成部材20aを備えている。具体的には、この意匠面形成部材20aは、例えば、シリコンゴム等、形状変更可能な弾力性を有する素材を用いて構成されている。更に、本実施形態の車両1において、この意匠面形成部材20aは、車両1の外装部材21を構成するドア4の車外側を覆う状態で設けられている。そして、本実施形態の車両1は、これにより、その車外の利用者に視認される意匠面Soが形成される構成となっている。
【0024】
更に、図3に示すように、本実施形態の車両1は、車内に配置されたインナートリム25及びダッシュボード26に設けられたシート状の意匠面形成部材20b,20cを有している。具体的には、これらの各意匠面形成部材20b,20cもまた、ドア4に設けられた意匠面形成部材20aと同様、形状変更可能な弾力性を有している。尚、本実施形態の車両1においては、外装部材21用の意匠面形成部材20aよりも、これら内装部材22用の意匠面形成部材20b,20cの方が、より軟質な素材を用いて構成されている。更に、これらの各意匠面形成部材20b,20cは、それぞれ、そのインナートリム25及びダッシュボード26の車内側を覆う状態で設けられている。そして、本実施形態の車両1は、これにより、その車内の利用者に視認される意匠面Siが形成される構成となっている。
【0025】
また、図4に示すように、本実施形態の車両1は、上記各意匠面形成部材20の内側に設けられた情報伝達ユニット30を備えている。
具体的には、図2に示すように、本実施形態の車両1は、ドア4の後端部4r近傍、詳しくは、所謂ベルトラインに相当する上端付近において、その意匠面形成部材20aの内側に設けられた情報伝達ユニット31を備えている。また、図3に示すように、本実施形態の車両1は、車内の乗員が車両シート(図示略)に着座した状態のまま手が届く位置において、そのインナートリム25に設けられた意匠面形成部材20bの内側に配置された情報伝達ユニット35を備えている。尚、本実施形態の車両1において、これらの情報伝達ユニット31,35は、左右のドア4及びインナートリム25に対して、それぞれ、一つずつ設けられている。更に、本実施形態のダッシュボード26は、その車幅方向中央位置から左右に回り込む態様で車両前方側から後方側に向かって延びている。そして、本実施形態の車両1は、この略U字状に湾曲したダッシュボード26の中央位置及び左右両側の側方位置において、その意匠面形成部材20cの内側に配置された3つの情報伝達ユニット36を備えている。
【0026】
また、図5に示すように、本実施形態の車両1においては、利用者に対して伝達すべき情報がある場合に、これらの各情報伝達ユニット30が、その意匠面形成部材20を内側から押圧する。そして、これにより、意匠面形成部材20が形成する意匠面Sを変形させることで、その利用者に対する情報の伝達を行う情報伝達装置40が形成されている。
【0027】
詳述すると、図4及び図5に示すように、本実施形態の情報伝達ユニット30は、略ドーム状の外形を有した押圧部材41と、この押圧部材41に駆動力を付与するアクチュエータ42と、を備えている。本実施形態のアクチュエータ42は、図示しないモータを駆動源として伸縮する構成となっている。また、本実施形態の押圧部材41は、このアクチュエータ42の一端に固定されている。更に、本実施形態の車両1において、その意匠面形成部材20に覆われた基材43には、それぞれ、貫通孔44が設けられている。そして、本実施形態の情報伝達ユニット30は、これらの貫通孔44を介することにより、そのアクチュエータ42に駆動された押圧部材41が意匠面形成部材20を押圧する構成になっている。
【0028】
即ち、図5に示すように、本実施形態の情報伝達ユニット30は、アクチュエータ42が伸長することにより、このアクチュエータ42の一端に固定された押圧部材41が、その貫通孔44に挿通されるかたちで基材43の内側から外側(図5中、下側から上側)に向かって移動する。また、これにより、そのドーム形状を押し当てる態様で押圧部材41が意匠面形成部材20を押圧する。そして、本実施形態の情報伝達ユニット30は、これにより、その意匠面形成部材20が形成する意匠面Sを隆起させる構成になっている。
【0029】
また、図4に示すように、本実施形態の情報伝達ユニット30は、アクチュエータ42が収縮することにより、その貫通孔44を介して基材43の外側に突出した押圧部材41が没入する。そして、本実施形態の情報伝達装置40は、これにより、その意匠面Sの形状が平坦な状態に回復する構成になっている。
【0030】
ここで、本実施形態の押圧部材41は、透明素材を用いて構成されている。更に、本実施形態の情報伝達ユニット30は、そのドーム形状をなす押圧部材41の内側に設けられた発光体45を備えている。そして、本実施形態の車両1においては、意匠面形成部材20もまた、透光性を有するものとなっている。
【0031】
即ち、本実施形態の情報伝達ユニット30は、押圧部材41に設けられた発光体45を発光させることにより、その押圧部材41が意匠面Sを変形させる位置において光出力を実行する機能を有している。そして、本実施形態の情報伝達装置40は、この発光体45による光出力と意匠面Sの変形とを組み合わせることで、より多様な情報伝達を行うことが可能となっている。
【0032】
また、本実施形態の情報伝達ユニット30は、近接式の操作入力センサ50を備えている。具体的には、本実施形態の情報伝達ユニット30において、この操作入力センサ50は、例えば、静電容量センサを用いて構成される。そして、本実施形態の情報伝達装置40は、これにより、情報伝達ユニット30の作動により隆起した意匠面Sの変形形状に、利用者が手を触れる、或いは手を近づける等の操作入力を検出することが可能となっている。
【0033】
さらに詳述すると、図6に示すように、本実施形態の車両1において、上記のように構成された各情報伝達ユニット30は、情報伝達ECU60によって、それぞれ独立に、その作動が制御されている。また、本実施形態の車両1には、車両ネットワーク61を介して各種の車載センサ62や、認証ECU63及び車両ECU64、並びに外部通信装置65等と通信することにより、車両1の走行状態や周囲の環境、及び搭乗者の状況等といった車両状態を監視する車両状態監視装置70が設けられている。更に、本実施形態の情報伝達ECU60は、この車両状態監視装置70と通信することにより、車両1の利用者に伝達すべき情報を選定する。そして、本実施形態の情報伝達装置40は、この選定された情報の内容に対応する予め定められた位置及び制御形態で、その情報伝達ECU60が情報伝達ユニット30の作動、即ち意匠面形成部材20を駆動することによる意匠面Sの変形及び発光体45を用いた光出力を実行する構成になっている。
【0034】
即ち、図7のフローチャートに示すように、本実施形態の情報伝達ECU60は、車両状態監視装置70と通信することにより、車両1の利用者に伝達すべき情報を選定した場合、つまりは利用者に伝達する情報がある場合(ステップ101:YES)、その情報の内容に対応する意匠面Sの変形位置及び制御パターンを決定する(ステップ102)。そして、このステップ102における決定に基づいて情報伝達ユニット30の作動を制御することにより、その利用者に伝達する情報に応じた意匠面Sの変形及び光出力を実行する(ステップ103)。
【0035】
また、本実施形態の情報伝達ECU60は、車載のスピーカー67(図6参照)を用いた音出力機能を有している。そして、上記ステップ103における意匠面Sの変形及び光出力とともに、その情報の内容に対応する音出力を実行する構成になっている(ステップ104)。
【0036】
さらに詳述すると、図6及び図8に示すように、本実施形態の情報伝達ECU60は、その記憶領域60mに、車両1の利用者に伝達すべき情報Iの内容と、その内容に対応する意匠面Sの変形位置X、変形パターンα、発光パターンβ、及び音出力γの内容が規定された制御テーブル75を備えている。更に、この情報伝達ECU60は、車両状態監視装置70との通信により、その車両状態が、利用者に伝達すべき情報Iとして予め制御テーブル75に規定された内容に該当するか否かを判定する。即ち、本実施形態の情報伝達ECU60は、制御テーブル75を参照することにより、その車両1の利用者に伝達すべき情報Iを選定する。そして、利用者に伝達する情報Iがある場合には、その情報Iの内容に対応する意匠面Sの変形位置X、変形パターンα、発光パターンβ及び音出力γの内容を制御テーブル75から読み出す構成になっている。
【0037】
また、図7に示すように、本実施形態の情報伝達ECU60は、上記ステップ103における意匠面Sの変形及び光出力、並び上記ステップ104における音出力を通じて利用者に伝達した情報の内容が、この利用者の応答を要求するもの、つまりは、操作入力の待機を伴うものであるか否かを判定する(ステップ105)。更に、情報伝達ECU60は、操作入力の待機を伴う場合(ステップ105:YES)には、続いて、その利用者の操作入力を促す操作案内音声出力を実行する(ステップ106)。具体的には、その情報伝達ユニット30の作動により意匠面Sが変形した位置に、利用者が手を伸ばす、或いは、その変形形状Mに触れるように促す。そして、本実施形態の情報伝達ECU60は、その後、その作動により意匠面Sを変形させた情報伝達ユニット30の操作入力センサ50を用いて、利用者による操作入力の発生を検出した場合(ステップ107:YES)には、その操作入力を受け付けた旨の音声出力を実行する構成になっている(ステップ108)。
【0038】
さらに詳述すると、図8及び図9に示すように、本実施形態の情報伝達ECU60は、例えば、車両状態監視装置70との通信により車両1のドア4近傍に利用者Uがいることを検知した場合には、このドア4に設けられた情報伝達ユニット31の作動を制御する。そして、これにより、車両1の外装部材21を構成するドア4に設けられた意匠面形成部材20aが形成する意匠面S、つまりは車外の利用者Uに視認される意匠面Soを隆起させる態様で変形させるとともに、その情報伝達ユニット31に設けられた発光体45を発光させる。
【0039】
更に、本実施形態の情報伝達ECU60は、その意匠面Soの変形及び光出力に合わせて、その隆起した意匠面Soの変形形状Mに触れるように促す音声案内を実行する。そして、その後、利用者Uによる操作入力が検出された場合に、その意匠面Soの変形及び光出力の実行を終了する構成になっている。
【0040】
尚、本実施形態の情報伝達装置40においては、情報伝達ユニット30による意匠面形成部材20の駆動停止により意匠面Sが略平坦な状態に復帰した後、その光出力が停止される。そして、本実施形態の車両1は、上記のような車外に臨む意匠面Soの変形形状Mに対する利用者Uの操作入力を検出した場合に、所定のセキュリティ条件を満たすことを条件として、そのドアロックが解除される構成になっている。
【0041】
また、図8及び図10に示すように、本実施形態の情報伝達ECU60は、車両状態監視装置70との通信により運転モードの変更、例えば、自動運転モードの解除エリアが近づいてきたことを検知した場合には、そのインナートリム25に設けられた情報伝達ユニット35の作動を制御する。そして、これにより、車両1の内装部材22を構成するインナートリム25に設けられた意匠面形成部材20bが形成する意匠面S、つまりは車内の利用者Uに視認される意匠面Siを隆起させる態様で変形させるとともに、その情報伝達ユニット35に設けられた発光体45を発光させる。
【0042】
更に、本実施形態の情報伝達ECU60は、この場合もまた、その意匠面Siの変形及び光出力に合わせて、運転モードの変更について音声出力による内容説明を実行するとともに、その隆起した意匠面Siの変形形状Mに触れるように促す音声案内を実行する。尚、本実施形態の情報伝達ECU60は、この場合においてもまた、意匠面Siの変形形状Mに対する利用者Uの操作入力が検出されることにより、その意匠面Siの変形及び光出力の実行を終了する。そして、本実施形態の車両1は、その利用者Uの操作入力が検出されることを条件として、その運転モードが自動運転モードから手動操作モードに切り替わる構成になっている。
【0043】
また、図8及び図11に示すように、本実施形態の情報伝達ECU60は、車両状態監視装置70との通信により、車両1の円滑な走行を妨げる障害となりうる事象を検知した場合には、そのダッシュボード26に設けられた情報伝達ユニット36の作動を制御する。そして、これにより、車両1の内装部材22を構成するダッシュボード26に設けられた意匠面形成部材20cが形成する意匠面S、つまりは車内の利用者Uに視認される意匠面Siを隆起させる態様で変形させるとともに、その情報伝達ユニット36に設けられた発光体45を発光させる。
【0044】
具体的には、本実施形態の情報伝達ECU60は、例えば、前方車両(図示略)の急制動等、その検知された走行障害が、車両1の前方にある場合には、そのダッシュボード26に設けられた3つの情報伝達ユニット36のうち、中央の情報伝達ユニット36を作動させる。そして、例えば、前方車両の急な車線変更等、検知された走行障害が左右何れかの方向性を有している場合、その走行障害の方向性に対応する左右何れかの情報伝達ユニット36を作動させる構成にとなっている。
【0045】
ここで、本実施形態の情報伝達装置40においては、利用者Uに伝達する情報Iの緊急性に応じて、その意匠面Sの変形パターンα及び発光パターンβが設定されている。具体的には、本実施形態の情報伝達ECU60は、その緊急性が高いほど、意匠面Sを高速で変化させる。また、その緊急性が高いほど、その発光体45を高速で点滅させる。そして、その緊急性が高い場合には、その意匠面Sの変形及び光出力に合せて警報音を出力する構成となっている。
【0046】
即ち、図8図11に示すように、本実施形態の情報伝達装置40においては、ドア4近傍の利用者Uを検知した場合に対応する変形パターンα1よりも運転モードの変更に対応する変形パターンα2、更に、この変形パターンα2よりも走行障害を検知した場合に対応する変形パターンα3の方が高速で意匠面Sが変形する。加えて、この走行障害に対応する変形パターンα3には、その変形形状Mの振動が含まれている。そして、本実施形態の情報伝達装置40は、これにより、車両1の利用者Uに対して、効果的に情報Iを伝達することが可能になっている。
【0047】
また、発光パターンβについても同様に、ドア4近傍の利用者検知に対応する発光パターンβ1よりも運転モードの変更に対応する発光パターンβ2、更に、この発光パターンβ2よりも走行障害の検知に対応する発光パターンβ3の方が、高速で発光体45が点滅する。更に、利用者Uの検知及び運転モードの変更に対する各音声出力γ1,γ2には、操作入力を促す音声案内、つまりは利用者Uに対する応答要求を含むのに対し、走行障害の検知に対応する音声出力γ3には、含まれない。そして、これにより、その検知された走行障害が排除されるまで、利用者Uの注意喚起を続ける構成になっている。
【0048】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)情報伝達装置40は、形状変更可能な弾力性を有して車両1の利用者Uに視認される意匠面Sを形成する意匠面形成部材20を備える。また、情報伝達装置40は、意匠面形成部材20の内側に設けられた情報伝達ユニット30と、この情報伝達ユニット30の作動を制御する情報伝達ECU60と、を備える。そして、これらの情報伝達ユニット30及び情報伝達ECU60によって、利用者Uに伝達する情報Iがある場合に、その意匠面形成部材20を駆動して意匠面Sを変形させる意匠面変形部80が形成される。
【0049】
上記構成によれば、意匠面Sに形成される立体的な変形形状Mによって、視覚的に、その利用者Uに伝達する情報Iを表現することができる。そして、これにより、利用者Uの注意を引くことで、より効果的に、情報Iを伝達することができる。
【0050】
(2)情報伝達装置40は、車両1の異なる位置に配置された複数の情報伝達ユニット30を備える。そして、情報伝達ECU60は、これらの各情報伝達ユニット30のうち、その利用者Uに伝達する情報Iの内容に対応する位置に配置された情報伝達ユニット30を用いて意匠面Sを変形させる。
【0051】
上記構成によれば、利用者Uに伝達する情報Iの内容と意匠面Sの変形位置Xとを関連付けて表現することができる。例えば、情報Iの対象物やその方向性を示すことができる。そして、これにより、より効果的に、その車両1の利用者Uに情報Iを伝達することができる。
【0052】
(3)情報伝達ECU60は、利用者Uに伝達する情報Iの内容に対応する変形パターンαで意匠面Sを変形させるべく、情報伝達ユニット30の作動を制御する。
上記構成によれば、利用者Uに伝達する情報Iの内容と意匠面Sの変形パターンαとを関連付けて表現することができる。例えば、その変形速度や大きさ等によって緊急性を表すことができる。そして、これにより、より効果的に、その車両1の利用者Uに情報Iを伝達することができる。
【0053】
(4)情報伝達ユニット30は、意匠面形成部材20を内側から押圧することにより、その意匠面形成部材20が形成する意匠面Sを変形させる。これにより、簡素な構成にて、立体的な意匠面Sの変形形状Mを形成することができる。
【0054】
(5)意匠面形成部材20は、透光性を有する素材を用いて構成される。更に、情報伝達ユニット30は、意匠面形成部材20の内側に配置される発光体45を備える。そして、情報伝達ECU60は、情報伝達ユニット30の作動により意匠面Sが変形した位置において、その発光体45を発光させる発光制御部81としての機能を有する。
【0055】
上記構成によれば、意匠面Sに形成された立体的な変形形状Mの内側で発光体45が発光する光出力によって、より多様な情報表現を行うことができる。そして、これにより、より効果的に、その車両1の利用者Uに情報Iを伝達することができる。
【0056】
(6)情報伝達ECU60は、利用者Uに伝達する情報Iの内容に対応する発光パターンβで発光体45を発光させる。
上記構成によれば、利用者Uに伝達する情報Iの内容と発光体45を用いた光出力の発光パターンβとを関連付けて表現することができる。例えば、その点灯及び消灯の速度や色合い等によって緊急性を表すことができる。そして、これにより、より効果的に、その車両1の利用者Uに情報Iを伝達することができる。
【0057】
(7)情報伝達ユニット30には、この情報伝達ユニット30の作動により意匠面Sが変形した位置に対する利用者Uの操作入力を検出可能な操作入力センサ50が設けられる。これにより、その意匠面Sの変形に利用者Uが応答する双方向の情報伝達を行うことができる。
【0058】
(8)情報伝達ECU60は、意匠面Sの変形にあわせて、その意匠面Sが変形した位置に対する利用者Uの操作入力を促す音声出力を実行する操作案内制御部82としての機能を有する。これにより、より効果的に、その意匠面Sの変形に利用者Uが応答する双方向の情報伝達を行うことができる。
【0059】
(9)情報伝達ECU60は、車両1の外装部材21を構成するドア4に設けられた情報伝達ユニット30の作動を制御して、その意匠面形成部材20aを駆動することにより、車外の利用者Uに視認される意匠面Soを変形させる。これにより、車外の利用者Uに対して、より効果的に、情報Iを伝達することができる。
【0060】
(10)情報伝達ECU60は、車両1の内装部材22を構成するインナートリム25及びダッシュボード26に設けられた情報伝達ユニット35,36の作動を制御して、その意匠面形成部材20b,20cを駆動することにより、車内の利用者Uに視認される意匠面Siを変形させる。これにより、車内の利用者Uに対して、より効果的に、情報Iを伝達することができる。
【0061】
(11)情報伝達ECU60は、車両1の利用者Uに伝達すべき情報Iの内容を保持する制御テーブル75を備える。そして、この制御テーブル75に基づいて、その利用者Uに伝達する情報Iを選定する情報選定部83としての機能を有する。これにより、車両1の乗員に対して適切な情報Iを伝達することができる。
【0062】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0063】
・上記実施形態では、車両1の外装部材21を構成するドア4、並びに車両1の内装部材22を構成するインナートリム25及びダッシュボード26に対し、それぞれ、独立した情報伝達ユニット30を設ける。そして、これら各情報伝達ユニット30の作動を制御して、意匠面形成部材20を駆動することにより、その意匠面Sを変形させることとした。しかし、これに限らず、意匠面Sの変形位置X、及びその数については任意に変更してもよい。そして、一つの情報伝達ユニット30が、複数箇所の意匠面Sを変形させる構成であってもよい。
【0064】
・また、例えば、バンパーやフロントグリル、或いはボンネット等、その他の外装部材21に設けられた意匠面形成部材20を駆動することにより、その車外の利用者Uに視認される意匠面Soを変形させる構成であってもよい。そして、例えば、ダッシュボードやセンターコンソール、或いは天井パネル等、その他の内装部材22に設けられた意匠面形成部材20を駆動することにより、その車内の利用者Uに視認される意匠面Siを変形させる構成であってもよい。
【0065】
・上記実施形態では、情報伝達ECU60により各情報伝達ユニット30の作動が制御されることとした。しかし、これに限らず、情報伝達ユニット30と情報伝達ECU60とが一体化された構成であってもよい。更に、情報伝達ECU60は、車両状態監視装置70と通信することにより、車両1の利用者Uに伝達すべき情報Iを選定することとしたが、情報伝達ECU60が車両状態監視装置70としての機能を有する構成であってもよい。そして、情報伝達ECU60及び車両状態監視装置70としての機能の少なくとも何れかが外部通信装置を用いて車外に実装された構成であってもよい。
【0066】
・上記実施形態では、情報伝達ユニット30が意匠面形成部材20を内側から押圧することにより、その意匠面Sが隆起する態様で、この意匠面Sを変形させることとした。しかし、これに限らず、意匠面Sを変形させるべく行う意匠面形成部材20の駆動方法については、任意に変更してもよい。即ち、意匠面変形部80の構成は、任意に変更してもよい。例えば、意匠面形成部材20を内側から引張することにより、その意匠面Sが陥没する態様で、この意匠面Sを変形させる構成であってもよい。更に、意匠面形成部材20内に埋設されたアクチュエータ等を用いて意匠面Sを変形させる等としてもよい。そして、通電により変形する素材を用いて意匠面形成部材20を形成することにより、この意匠面形成部材20を直接駆動する構成であってもよい。
【0067】
・上記実施形態では、情報伝達装置40による意匠面Sの変形が行われる状況として、ドア近傍の利用者U、運転モードの変更、及び車両1の走行障害、を検知した場合を例示したが、その他、車両1の利用者Uに伝達すべき情報Iの内容は、任意に設定してもよい。
【0068】
・意匠面Sの変形パターンαについては、任意に変更してもよい。例えば、上下動作のみならず、横方向動作や変形形状Mの回転動作等を組み合わせてもよい。また、変形速度や変形形状Mの大きさ等を変化させてもよい。更に、発光体45を用いた光出力の発光パターンβについても、任意に変更してもよい。例えば、緊急性の高い場合ほど、高速で点滅する、或いは所謂警戒色に近い色合いで発光する等としてもよい。そして、これら意匠面Sの変形及び光出力とともに行う音出力の態様についてもまた任意に変更してもよい。
【0069】
・上記実施形態では、情報伝達ユニット30は、近接式の操作入力センサ50が設けられることとした。しかし、これに限らず、例えば、タッチセンサやカメラ等を用いることにより、利用者Uが、その意匠面Sに形成された立体的な変形形状Mに触れたことを検知可能な操作入力センサ50を構成してもよい。
【0070】
・上記実施形態では、意匠面Sの変形に、光出力及び音出力を組み合わせて行うこととしたが、光出力及び音出力の少なくとも何れかを伴うことなく、その意匠面Sの変形を行う構成であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…車両、2…車体、2s…側面、3…ドア開口部、4…ドア、4r…後端部、6…キャノピー、20,20a,20b,20c…意匠面形成部材、21…外装部材、22…内装部材、25…インナートリム、26…ダッシュボード、30,31,35,36…情報伝達ユニット、40…情報伝達装置、41…押圧部材、42…アクチュエータ、43…基材、44…貫通孔、45…発光体、50…操作入力センサ、60…情報伝達ECU、60m…記憶領域、61…車両ネットワーク、62…車載センサ、63…認証ECU、64…車両ECU、65…外部通信装置、67…スピーカー、70…車両状態監視装置、75…制御テーブル、80…意匠面変形部、81…発光制御部、82…操作案内制御部、83…情報選定部、S,Si,So…意匠面、X…変形位置、M…変形形状、U…利用者、I…情報、α,α1,α2,α3…変形パターン、β,β1,β2,β3…発光パターン、γ,γ1,γ2,γ3…音声出力。
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図11