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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】医療用四肢ベルト
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/022 20060101AFI20230308BHJP
【FI】
A61B5/022 300G
A61B5/022 100A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017181562
(22)【出願日】2017-09-21
(65)【公開番号】P2019055048
(43)【公開日】2019-04-11
【審査請求日】2020-07-10
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保木 英成
【合議体】
【審判長】石井 哲
【審判官】井上 香緒梨
【審判官】渡戸 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-4322(JP,A)
【文献】特開2007-144138(JP,A)
【文献】実開昭60-23015(JP,U)
【文献】特開平8-150010(JP,A)
【文献】実公昭37-19732(JP,Y1)
【文献】特開2010-159793(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0215891(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/02-5/03
A61B5/05-5/0538
A61B5/24-5/398
A61B17/132
F16B2/00-2/26
B65D67/00-79/02
F16G11/00-11/14
H01R13/46-13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺形状で変形可能であり、孔を有する帯部と、
前記孔を通過可能な太さの複数の通過部と、前記通過部の太さより太くかつ前記孔の縁部に係止可能な複数の膨らみ部と、を有する紐部を備え、
前記膨らみ部の直径は、前記孔の直径よりも大きく、
前記帯部は弾性を有し、
前記帯部は、一端が前記孔と連通し前記帯部の長尺方向に延びる切り欠き部を有し、
前記切り欠き部は、前記長尺方向及び前記帯部の厚み方向に直交する幅が前記通過部の太さよりも細く、かつ、前記孔から前記長尺方向に延びる直線状のスリットである、医療用四肢ベルト。
【請求項2】
記膨らみ部と前記通過部が交互に前記紐部に配置されている請求項1に記載の医療用四肢ベルト。
【請求項3】
前記帯部及び前記膨らみ部は、弾性を有する請求項1または請求項2に記載の医療用四肢ベルト。
【請求項4】
前記帯部及び前記紐部は、弾性を有する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の医療用四肢ベルト。
【請求項5】
前記膨らみ部は、側面視でテーパー形状に形成されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の医療用四肢ベルト。
【請求項6】
前記通過部は、断面が円形に形成されている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の医療用四肢ベルト。
【請求項7】
前記紐部は、前記通過部を複数有し、
複数の前記通過部のうち前記帯部から最も遠い通過部は、前記帯部から二番目に遠い通過部よりも長くなるように構成されている請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の医療用四肢ベルト。
【請求項8】
前記孔の一部を端部とし、前記帯部の幅方向に前記紐部を通過可能な切り込み部を備え、
前記切り込み部の少なくとも一部を含む第一領域の前記帯部の厚みは、前記第一領域以外の前記帯部の厚みよりも厚く形成されている請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の医療用四肢ベルト。
【請求項9】
前記帯部は、前記切り込み部が形成された帯部本体と、前記帯部本体とつながるように構成された基端部を有する覆い部と、を有し、
前記覆い部は、前記基端部から前記切り込み部を覆う方向に延長される自由端部と、前記切り込み部よりも前記自由端部の側となる位置において、前記帯部本体に係合する係合部とを有する請求項8に記載の医療用四肢ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用四肢ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
心電図測定用の電極を四肢に取り付けるため、クリップなどが用いられる(例えば、特許文献1)。特許文献1の四肢電極用クリップは、支軸により連結される一対の挟持板と、支軸よりも基端側の各挟持板に設けられる一対の把持部と、一対の把持部を近接する方向に押圧付勢するばねと、一方の挟持板の先端側に固定される測定用電極と、を備える。測定時には、クリップの一対の挟持板を四肢に固定し、クリップを面状ファスナーで覆って、測定用電極を四肢に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平6-86704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のクリップは、一対の挟持板を装着者に装着した状態において、支軸と挟持板との間及び挟持板の先端側(支軸と反対側)が、装着者の皮膚から浮いた状態となり易かった。このため、面状ファスナーを用いてクリップを固定しても、クリップ全体が装着者の皮膚に完全に密着した状態となりにくく、改善の余地があった。
【0005】
本開示は、装着者に密着させた状態で固定可能な医療用四肢ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の医療用四肢ベルトは、
長尺形状で変形可能であり、孔を有する帯部と、
前記孔を通過可能な太さの通過部と、前記通過部の太さより太くかつ前記孔の縁部に係止可能な少なくとも一つの膨らみ部と、を有する紐部を備え、
前記帯部と前記膨らみ部の少なくとも一方が弾性を有する。
【0007】
上記構成によれば、変形可能な帯部を備えるので、医療用四肢ベルトを装着者の皮膚に密着(フィット)させることができる。また、帯部と膨らみ部の少なくとも一方が弾性を有するので、医療用四肢ベルトを装着者に密着させた状態で容易に固定できる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、装着者に密着させた状態で固定可能な医療用四肢ベルトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る医療用四肢ベルトの一例を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は下面図、(c)は側面図、(d)は平面図の一部拡大図、(e)は側面図の一部拡大図、(f)は紐部を(a)のA方向から見た図である。
図2図1に示す医療用四肢ベルトの使用例の説明図である。
図3】医療用四肢ベルト(変形例1)を説明する説明図であり、(a)は平面図、(b)は下面図、(c)は側面図である。
図4】覆い部を備える医療用四肢ベルト(変形例2)の説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図5】非観血血圧測定装置に用いる医療用四肢ベルト(変形例3)の説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は紐部を(a)のA方向から見た図である。
図6】医療用四肢ベルト(変形例4)の説明図であり、(a)は平面図、(b)は下面図、(c)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る医療用四肢ベルトの実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本開示の実施形態に係る医療用四肢ベルト1の一例を説明する図である。図1に示すように、医療用四肢ベルト1は、帯部2と、膨らみ部3及び通過部4を備える紐部5と、を有している。
【0012】
帯部2は、長尺形状で変形可能な帯部材である。ここでいう変形とは、帯部2が腕等の装着箇所に合わせて変形することを指す。帯部2は、皮膚に接する裏面21と、裏面21の反対面である表面22とを有している。帯部2は、装着者の装着箇所に合わせた任意の長さで形成することができる。帯部2は、任意の幅で形成することができる。帯部2は、帯部2の裏面21のうち、装着者に直接接する部位を平坦に形成してもよい。平坦に形成された帯部2の裏面21には、測定用電極等を設置してもよい。
【0013】
帯部2は、表面22における長尺方向の任意の位置に、紐部5の一端を接合させる接合部23を有している。接合部23は、図1に示す帯部2の長尺方向における端部でもよく、帯部2の長尺方向における中間付近(不図示)であってもよい。また、接合部23は、帯部2の側面(不図示)であってもよい。
【0014】
帯部2は、表面22及び裏面21を貫通する孔24を有している。孔24の形状は、図1では円形状としているが、この形状に限らない。孔24の形状は、楕円でもよく、矩形でもよい。また、孔24の形状は、後述する膨らみ部3の形状に相似する形状で形成してもよい。
【0015】
帯部2は、切り込み部25を有する構成とすることができる。切り込み部25は、図1に示すように、孔24の一部を端部とし、この孔24の一部と帯部2の幅方向の長辺のいずれか一辺とをつなぐ直線状の切れ目で構成することができる。
【0016】
帯部2は、所定の厚みで構成することができる。帯部2は、均一の厚みで構成してもよく、不均一の厚みで構成してもよい。不均一の厚みで構成される帯部2は、切り込み部25の少なくとも一部を含む領域(図1に示す第一領域26)の帯部2の厚みを、第一領域26以外(例えば接合部23付近)の帯部2の厚みよりも厚くすることにより形成してもよい。
【0017】
紐部5は、図1に示すように、全体として紐状に形成されている。紐部5は、通過部4の太さより太くかつ孔24の縁部27に係止可能な膨らみ部3と、帯部2の孔24を通過可能な太さを有する通過部4とを有している。すなわち通過部4の太さ(図1(a)における帯部2の短辺方向の長さ)は、帯部2の孔24の直径よりも小さい。帯部2の長さ(長辺の長さ)は、一般的な医療用四肢ベルトの装着箇所の周囲径よりも短い。また帯部2の長さ(長辺の長さ)と紐部5の長さの合計は、一般的な医療用四肢ベルトの装着箇所の周囲径よりも長い。
【0018】
膨らみ部3は、帯部2の孔24を通過することにより装着者における医療用四肢ベルト1の装着長さを変更可能に構成されている。膨らみ部3は、例えば、側面視でテーパー形状に形成される側面と、孔24の縁に係止する底面とを有する錐体で構成することができる。また、膨らみ部3は、平面視で半楕円形状(図5参照)としてもよい。また、紐部5が複数の膨らみ部3を有する場合、複数の膨らみ部3の大きさは、均一であってもよく、ばらつきがあってもよい。
【0019】
膨らみ部3は、孔24の縁に係止する係止面31を有している。例えば、図1の(a)から(c)に示す、紐部5の長尺方向における帯部2側の膨らみ部3の側面を、膨らみ部3の係止面31とすることができる。係止面31は、押圧されたときには弾性変形して、孔24を通過するように構成することができる。
【0020】
通過部4は、孔24を通過可能な太さで構成されている。通過部4は、孔24を通過可能な太さであればよく、各種の構成とすることができる。通過部4は、例えば、図1(f)に示すように、円柱形状で構成してもよく、断面が楕円形状の扁平な形状(図5(c)参照)で構成してもよい。
【0021】
紐部5は、少なくとも一つの膨らみ部3と、膨らみ部3と隣接する少なくとも一つの通過部4で構成することができる。紐部5は、複数の膨らみ部3と複数の通過部4とを交互に配置して任意の長さに形成してもよい。
【0022】
膨らみ部3と交互に配置される通過部4は、異なる長さで形成される複数の通過部4により構成することができる。紐部5は、図1の(c)に示す、第一通過部41、第二通過部42、第三通過部43、第四通過部44、第五通過部45、第六通過部46、第七通過部47からなる複数の通過部4を有する構成とすることができる。複数の通過部4のうち帯部2から最も近い通過部である第一通過部41の長さ(図1の左右方向の長さ)は、第二通過部42、第三通過部43、第四通過部44、第五通過部45、第六通過部46、第七通過部47の各長さよりも長い構成とすることができる。また、第二通過部42、第三通過部43、第四通過部44、第五通過部45、第六通過部46を同じ長さで形成し、第一通過部41及び第七通過部47の長さを、第二通過部42から第六通過部46のそれぞれの長さよりも長い構成としてもよい。
図1では、帯部2から最も遠い第七通過部47の長さを、帯部2から二番目に遠い第六通過部46の長さよりも長い構成としている。第七通過部47は、手で持ちやすい程度に十分な長さで構成することができる。第一通過部41、第二通過部42、第三通過部43、第四通過部44、第五通過部45、第六通過部46は、帯部2に対する紐部5の位置調整を細かく行い易い長さ、例えば、帯部2の厚みとほぼ等しい長さで構成することができる。
【0023】
上記構成の医療用四肢ベルト1において、帯部2と膨らみ部3の少なくとも一方は、弾性を有する。すなわち、帯部2と膨らみ部3の少なくとも一方は、弾性変形するように構成されている。
【0024】
帯部2が弾性を有する場合、帯部2の全体が弾性を有してもよく、帯部2の一部が弾性を有してもよい。
帯部2の全体が弾性を有する場合、帯部2の長尺方向の長さが装着者の装着箇所に適した長さに変化し、かつ、孔24の内径が大きくなるように変化する。このため、医療用四肢ベルト1を装着するときに装着者にフィットさせやすくなり、医療用四肢ベルト1を外すときに外しやすくなる。
帯部2の一部が弾性を有する場合、孔24を含む帯部2の一部が弾性を有する構成としてもよい。孔24を含む帯部2の一部が有する弾性により、孔24の縁部27は変形し、孔24の内径が大きくなるように変化する。
また、帯部2の一部が弾性を有する場合、孔24を含まない帯部2の一部が弾性を有する構成としてもよい。孔24を含まない帯部2の一部が有する弾性により、帯部2の長尺方向の長さが変化して、装着者の装着箇所に適した長さに変形する。
【0025】
膨らみ部3が弾性を有する場合、膨らみ部3の全体が弾性を有してもよく、膨らみ部3の係止面31が弾性を有してもよい。
膨らみ部3の全体が弾性を有する場合、膨らみ部3の全体形状が弾性変形して孔24の内径よりも小さくなり、孔24を通過する。
また、膨らみ部3の係止面31が弾性を有する場合、膨らみ部3の係止面31が弾性変形して孔24の内径よりも小さくなり、孔24を通過する。
【0026】
また、帯部2及び膨らみ部3が弾性を有するように構成されてもよい。帯部2及び膨らみ部3が弾性変形することにより、孔24を膨らみ部3が通過する。帯部2が変形可能であり、帯部2及び膨らみ部3の両方が弾性を有することにより、医療用四肢ベルト1を装着するときに、装着者の装着箇所によりフィットさせやすくなり、医療用四肢ベルト1を外すときに、より外しやすくなる。
【0027】
また、帯部2と膨らみ部3と通過部4が弾性を有しても良い。すなわち、帯部2及び紐部5が弾性変形するように構成されてもよい。帯部2が変形可能であり、帯部2及び紐部5の両方が弾性を有することにより、医療用四肢ベルト1を装着するときに、装着者の装着箇所によりフィットさせやすくなり、医療用四肢ベルト1を外すときにより外しやすくなる。
【0028】
帯部2、膨らみ部3、膨らみ部3の係止面31、通過部4、紐部5の少なくとも一つが有する弾性は、材質による弾性とすることもできる。例えば、弾性変形が可能なシリコーンで構成してもよく、その他のゴム等の各種の弾性変形が可能な材料で構成してもよい。
【0029】
次に、本開示の医療用四肢ベルト1の使用例について、図1及び図2を用いて説明する。図2は、腕に固定する医療器具6に、本開示の医療用四肢ベルト1を用いる例である。医療器具6は、被検者の生体信号を取得するセンサの一態様であり、例えば金属電極である。
【0030】
図2に示すように、医療器具6を、装着者の右腕の皮膚に当てて、右腕に帯部2を巻きつける。孔24以外の帯部2の裏面21が医療器具6を覆う位置になるように、帯部2の位置を調整する。帯部2の裏面21が医療器具6を覆って固定した状態で、切り込み部25に沿って紐部5を通過させて、紐部5を帯部2の孔24に通し、孔24内に紐部5を配置した状態で、帯部2の裏面21が右腕の皮膚に密着するまで、紐部5を腕から離れる方向に引っ張る。帯部2の裏面21が右腕の皮膚に密着した状態で、複数の膨らみ部3から最適な位置の膨らみ部3を選んで、膨らみ部3の係止面31を孔24の縁部27に係止させて、紐部5を孔24の縁部27に係止する。
【0031】
以上説明したように、本実施形態の医療用四肢ベルト1によれば、変形可能な帯部2を備えるので、医療用四肢ベルト1を装着者の皮膚に密着(フィット)させることができる。また、帯部2と膨らみ部3の少なくとも一方が弾性を有するので、医療用四肢ベルト1を装着者に密着させた状態で容易に固定できる。
【0032】
また、本実施形態の医療用四肢ベルト1によれば、膨らみ部3と通過部4とが交互に紐部5に配置されるので、最適な位置の膨らみ部3を孔24の縁部27に係止することができ、医療用四肢ベルト1を固定することができる。
【0033】
また、本実施形態の医療用四肢ベルト1によれば、帯部2及び膨らみ部3の両方が弾性を有することにより、医療用四肢ベルト1を装着するときに、装着者の装着箇所によりフィットさせやすくなり、医療用四肢ベルト1を外すときにより外しやすくなる。
【0034】
また、本実施形態の医療用四肢ベルト1によれば、帯部2及び紐部5の両方が弾性を有することにより、医療用四肢ベルト1を装着するときに、装着者の装着箇所によりフィットさせやすくなり、医療用四肢ベルト1を外すときにより外しやすくなる。
【0035】
また、本実施形態の医療用四肢ベルト1によれば、膨らみ部3が側面視でテーパー形状に形成されているので、膨らみ部3が孔24の縁部27に確実に係止される。
【0036】
また、本実施形態の医療用四肢ベルト1によれば、通過部4は円柱形状に形成されているので、医療用四肢ベルト1の装着位置を調整する際に通過部4がスムーズに通過し易いと共に、装着後には通過部4が孔24をより容易に通過することができる。
【0037】
また、帯部2から最も遠い通過部47は、手で持ちやすい程度に十分な長さであることが好ましい。帯部2から最も遠い通過部47を手で持つことにより、紐部5を持ちやすくなるとともに、切り込み部25に紐部5を通過させやすくなり、孔24に紐部5をより入れやすくなる。
帯部2から二番目に遠い通過部46、その他の通過部45、44、43、42、41は、紐部5の位置調整を細かく行うために、短いことが好ましい。
すなわち、本実施形態の医療用四肢ベルト1のように、帯部2から最も遠い通過部47は、帯部から二番目に遠い通過部46よりも長くなるように構成されていることが好ましい。
【0038】
また、本実施形態の医療用四肢ベルト1によれば、帯部2の幅方向に紐部5を通過可能な切り込み部25を備えるので、医療用四肢ベルト1を容易に着脱できる。
【0039】
また、本実施形態の医療用四肢ベルト1によれば、切り込み部25の少なくとも一部を含む第一領域26の帯部2の厚みは、第一領域26以外の帯部2の厚みよりも厚く形成されているので、切り込み部25の強度が向上する。このため、紐部5が、切り込み部25の通過を繰り返しても、孔24の縁部27から帯部2が破けることを防止することができる。
【0040】
本開示の医療用四肢ベルト1は、図1及び図2に示す例に限らない。本開示の医療用四肢ベルト1は、装着者の四肢に固定可能な各種の医療用機器に用いることができる。一例として、本開示の医療用四肢ベルト1Aに医療器具を差し込んで設置する例(変形例1)を、図3を用いて説明する。なお、図1及び図2と共通する構成については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0041】
<変形例1>
帯部2Aは、表面22から裏面21に貫通する挿通部61を有している。帯部2Aの表面22に、挿通部61を覆う筒部62が設けられている。筒部62の内側には貫通孔63が設けられている。貫通孔63の一端側(帯部2Aの裏面21側)は、医療器具挿入部64を嵌め込み可能な空間を構成している。貫通孔63の他端側(帯部2Aの表面22側)は、医療器具を差し込み可能な空間を構成している。医療器具挿入部64の一端には、電極板65が接合されている。
【0042】
図3に示す医療用四肢ベルト1Aの使用方法を説明する。使用に先立ち、図3の(c)に示すように、帯部2Aの裏面21側から筒部62の内側に医療器具挿入部64が挿入される。医療器具挿入部64は、不図示の固定構造により、筒部62に固定される。医療器具挿入部64が筒部62に固定されることにより、電極板65は帯部2Aの裏面21に設置される。電極板65を設けた帯部2Aの裏面21を装着者の皮膚に当てて、医療用四肢ベルト1Aを装着者に装着する。装着の詳細については図2の使用例1と重複するので、説明を省略する。
【0043】
<変形例2>
次に、帯部2の変形例2である帯部2Bについて、図4を用いて説明する。なお、図1図3と共通する構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
図3に示す医療用四肢ベルト1Bの帯部2Bは、帯部本体7と、覆い部8を備えている。
【0045】
帯部本体7は、帯部2Bの一部であり、切り込み部25が形成される部分である。
【0046】
覆い部8は、帯部2Bの一部であり、基端部81と、自由端部82を有する。基端部81は、帯部本体7とつながるように構成されている。自由端部82は、基端部81から切り込み部25を覆う方向に延長されるように構成されている。図4の覆い部8は、帯部2Bの表面22側に設けられているが、覆い部8はこの構成に限らない。覆い部8は、帯部2Bの裏面21側に設けてもよい。
【0047】
覆い部8は、切り込み部25よりも自由端部82の側となる位置において、帯部本体7に係合する係合部83を有している。帯部本体7には、係合部83が嵌め込まれる凹部71が形成されている。
【0048】
次に、図4に示す医療用四肢ベルト1Bの使用例を説明する。
【0049】
紐部5の膨らみ部3を孔24の縁部27に係止する前において、覆い部8は帯部2Bの表面22側で開放されており、凹部71と係合部83とは離れている。
切り込み部25を通過させた紐部5を孔24に挿通して、膨らみ部3を孔24の縁部27に係止した後に、覆い部8の係合部83を、帯部本体7の凹部71に係合する。係合部83が凹部71に係合すると、覆い部8の自由端部82から基端部81までが帯部本体7の表面22の上に重なる。
【0050】
本変形例の医療用四肢ベルト1Bによれば、覆い部8が帯部本体7に係合するので、紐部5が切り込み部25を通って外れることを防止することができる。また、覆い部8が帯部本体7に係合するので、膨らみ部3による孔24の縁部27における係止を補強することができる。
【0051】
<変形例3>
本開示の医療用四肢ベルトは、非観血血圧(NIBP、Non-invasive Blood Pressure)の測定装置に用いることもできる。図5に示すように、非観血血圧(NIBP)の測定装置に用いる医療用四肢ベルト1Cは、帯部2Cの裏面21側に加圧部66を備えている。なお、図1から図4と同様の構成については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0052】
図5に示す医療用四肢ベルト1Cは、帯部2Cが変形可能であり、帯部2Cの全体及び紐部5の全体が弾性を有している。帯部2C及び紐部5はシリコーンにより一体的に成形されている。膨らみ部3は、平面視で楕円形状に形成されている。通過部4は、扁平な幅広形状に形成されている。帯部2Cの端部には、帯部2Bと同様に、係合部83及び凹部71が形成されている。
【0053】
帯部2Cの裏面21には、加圧部66が着脱可能に装着されている。加圧部66は、不図示の医療用電源を介して加圧され、膨張および収縮が可能な部材であり、生体情報の測定に用いられる部材である。加圧部66の膨張及び収縮の程度を予め調整することにより、加圧部66の剛性を調整可能に構成されている。加圧部66は、一例として、非観血血圧(NIBP、Non-invasive Blood Pressure)に用いる空気袋(測定用バルーン)とすることができる。
【0054】
図5に示す医療用四肢ベルト1Cの使用において、加圧部66を装着者の皮膚に直接当てて、切り込み部25を通過させた紐部5を孔24に挿通して、膨らみ部3を孔24の縁部27に係止した後に、係合部83を凹部71に係合する。
【0055】
上記した医療用四肢ベルト1Cによれば、変形可能な帯部2Cを備えるので、医療用四肢ベルト1Cを装着者の皮膚に密着(フィット)させることができる。また、帯部2Cと膨らみ部3が弾性を有するので、医療用四肢ベルト1Cを装着者に密着させた状態で容易に固定できる。また、係合部83が凹部71に係合するので、紐部5が切り込み部25を通って外れることを防止し、紐部5の膨らみ部3による係止を補強することができる。
【0056】
ところで、従来、非観血血圧(NIBP)の測定装置は、測定用バルーンを装着者に固定する帯部材を含んで構成されていた。帯部材は、帯部材の扁平な一面の一端側に面状ファスナーと、測定用バルーンと、測定用バルーンを被う布と、を含んで構成されていた。この従来の測定装置を用いるときは、装着者の四肢に面状ファスナーで測定用バルーンを固定し、測定装置本体の電源を入れて非観血血圧(NIBP)の測定を行っていた。
しかし、従来の測定装置は、測定用バルーンの加圧時に、布が装着者の皮膚に直接接触して、この布の剛性(ごわごわ感、布の硬さ)が装着者に直接伝わり、装着者によってはストレスを感じる者もいたため、改善の余地があった。
これに対し、本変形例の医療用四肢ベルト1Cによれば、帯部2Cが変形可能であり、装着箇所に沿って帯部2Cが変形する。このため、従来の布の強度によるストレスを装着者に与えることが無い。また、本変形例の医療用四肢ベルト1Cによれば、帯部2Cと膨らみ部3が弾性を有するので、装着者の皮膚への負担も少なく、装着者に医療用四肢ベルト1Cを密着させた状態で容易に固定できる。
【0057】
また、本変形例の加圧部66を装着した医療用四肢ベルト1Cによれば、従来と同様の手順(四肢に巻いて固定)により、生体情報の測定を行うことができる。
また、本変形例の医療用四肢ベルト1Cによれば、帯部2Cから加圧部を着脱可能に構成したので、加圧部を帯部2Cから外して医療用四肢ベルト1Cの全体を洗うことにより、清潔な状態を保つことができる。
【0058】
また、従来、布及び面状ファスナーの材質によっては、ノイズを発生させてしまい、測定値や測定波形に影響を及ぼす場合もあった。
これに対し、本変形例の医療用四肢ベルト1Cは、帯部2Cをシリコーンで形成したので、測定値等に影響を与えることがない。
【0059】
また、従来、帯部材の布や面状ファスナーに、測定用のペーストが付着する場合もあった。従来においても、付着したペーストを拭き取ることはできるものの、布と測定用バルーンとの分離や面状ファスナーと帯部材との分離は想定されていなかった。このため、従来の帯部材の布及び面状ファスナーをより清潔に保つには、改善の余地があった。特許文献1のクリップにおいても同様に、付着したペーストの除去に関して、改善の余地があった。
これに対し、本変形例の医療用四肢ベルト1Cによれば、帯部2Cの材質をシリコーンで形成し、加圧部66(測定用バルーン)と帯部2Cを着脱可能に構成したので、加圧部66を帯部2Cから外して、帯部2Cを洗うことが出来る。これにより、医療用四肢ベルト1Cの全体を清潔に保つことができる。医療用四肢ベルト1、1A、1Bについても、シリコーンで形成することにより、医療用四肢ベルト1Cと同様の効果が得られる。
【0060】
<変形例4>
次に、変形例4である医療用四肢ベルト1Dについて、図6を用いて説明する。なお、図1図5と共通する構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0061】
図6に示す医療用四肢ベルト1Dは、帯部2Dと、紐部50とを有している。帯部2Dは、表面22及び裏面21を貫通する孔24Aを有している。また、帯部2Dは、孔24Aを一端とする切り欠き部28を有している。切り欠き部28は、紐部50を孔24Aに通すときに、紐部50の太さや厚みに合わせて拡張可能な弾性を有している。図6(a)では、切り欠き部28は、切り欠き部28の右端を孔24Aと連通させた長尺な切り欠きで構成されている。
【0062】
紐部50は、テーパー部51により構成されている。図6に示す紐部50は、複数のテーパー部51を一体成形することにより形成されている。
テーパー部51は、孔24Aを通過可能な太さの通過部4Aと、通過部4Aの太さより太くかつ孔24の縁部27に係止可能な膨らみ部3Aとを有している。通過部4Aと膨らみ部3Aとは、太さが連続的に変化する一部材として構成されていてもよい。すなわち、通過部4Aと膨らみ部3Aとは、明確な境界線を設けずに、徐々に太さが異なるように構成されていてもよい。
膨らみ部3Aは、孔24Aの縁部27に係止可能な係止面31Aを有している。
【0063】
帯部2Dと膨らみ部3Aの少なくとも一方は、弾性を有する。また、通過部4Aが弾性を有しても良い。帯部2D、膨らみ部3A及び通過部4Aの弾性については帯部2、2A、2B、2C、膨らみ部3、通過部4の記載と重複するので説明を省略する。
【0064】
次に、図6に示す医療用四肢ベルト1Dの使用例を説明する。
帯部2Dの切り込み部25を通過させた紐部50のテーパー部51を、孔24Aに挿通していく。この紐部50を孔24Aに挿入しようとする力により、孔24Aの縁部27を拡張する力がかかる。このとき、縁部27を拡張する力は、孔24Aと連通している切り欠き部28に逃がされる。
【0065】
本変形例の医療用四肢ベルト1Dによれば、切り欠き部28を有するので、孔24Aの強度が向上する。このため、紐部50を孔24Aに繰り返し挿入し外したとしても、孔24Aの縁部27から帯部2Dが破けることを防止することができる。
医療用四肢ベルト1、1A、1B、1Cについても、医療用四肢ベルト1Dと同様に、切り欠き部28を有する構成とすることができ、同様の効果を得ることができる。
【0066】
本開示の帯部2、2A、2B、2C、2Dは、上記した形状に限らない。帯部2、2A、2B、2C、2Dの材質が十分に弾性変形できる程度に柔らかくて、容易に孔24、24Aに紐部5、50を抜き差しできる場合には、切り込み部25を設けない形状としてもよい。
紐部5、50の膨らみ部3、3Aの材質が十分に弾性変形できる程度に柔らかくて、容易に孔24、24Aに紐部5,50を抜き差しできる場合も、帯部2、2A、2B、2C、2Dは、切り込み部25を設けない構成とすることができる。
また、本開示の医療用四肢ベルト1、1A、1B、1C、1Dは、各種サイズで構成することができる。帯部2、2A、2B、2C、2Dが変形可能に構成されているので、本開示の医療用四肢ベルト1、1A、1B、1C、1Dは大人にも新生児にも好適に使用し得る。
【0067】
本開示は、上述した実施形態や変形例に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、形態、数、配置場所等は、本開示を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0068】
1、1A、1B、1C、1D 医療用四肢ベルト、 2,2A,2B、2C、2D 帯部、 3、3A 膨らみ部、 4、4A 通過部、 5、50 紐部、 6 医療器具、 7 帯部本体、 8 覆い部、 21 裏面、 22 表面、 23 接合部、 24、24A 孔、 25 切り込み部、 26 第一領域、 27 縁部、 28 切り欠き部、 31、31A 係止面、 41 第一通過部、 42 第二通過部、 43 第三通過部、 44 第四通過部、 45 第五通過部、 46 第六通過部、 47 第七通過部、 51 テーパー部、 61 挿通部、 62 筒部、 63 貫通孔、 64 医療器具挿入部、 65 電極板、 66 加圧部、 71 凹部、 81 基端部、 82 自由端部、 83 係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6