(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】光学系の組立て方法および光学アセンブリでのリターダンスによる歪みを最小にする方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20230308BHJP
【FI】
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2019541706
(86)(22)【出願日】2018-02-02
(86)【国際出願番号】 US2018016629
(87)【国際公開番号】W WO2018144851
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2021-02-02
(32)【優先日】2017-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】デワ,ポール ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】グレジダ,ロバート デニス
(72)【発明者】
【氏名】マック,ステファン カール
(72)【発明者】
【氏名】マイケルズ,ロバート ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ミハロスキ,ポール フランシス
(72)【発明者】
【氏名】スポールディング,ダンカン クリストファー
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-214454(JP,A)
【文献】特開2011-118269(JP,A)
【文献】特表2004-525527(JP,A)
【文献】特開2008-268466(JP,A)
【文献】特開2015-141280(JP,A)
【文献】特開2008-256591(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102005022459(DE,A1)
【文献】特表2005-521227(JP,A)
【文献】特表2005-535939(JP,A)
【文献】特開2003-297729(JP,A)
【文献】米国特許第05247176(US,A)
【文献】特開2003-295021(JP,A)
【文献】特開2004-133168(JP,A)
【文献】特表2016-520862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02B 7/00- 7/16
G03F 7/20- 7/24
G01N21/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光学素子を含む光学系の組立て方法において、
(a)少なくとも2つの回転する光学偏光素
子の間に位置する複数の光学素子のリターダンスのプロファイルを測定する工程であって、
前記少なくとも2つの光学偏光素子の下流に位置する、回転検光子を含む検出器を含み、
(i)前記複数の光学素子に、特定の複数の位置で、特定の入射角で入射する光ビームを提供
する工程であって、前記光ビームが、前記複数の光学素子
および前記少なくとも2つの光学偏光素子を通って伝播し、前記検出器により検出されるようにする工程と、
(ii)前記少なくとも2つの光学偏光素子の少なくとも1つを回転する工程と、
(iii)前記少なくとも2つの光学偏光素子の少なくとも1つを回転する時に、検出された前記光ビームに関する光ビーム強度データを収集する工程と、
(iv)前記複数の光学素子についてのリターダンス方位プロファイルを、前記複数の光学素子及び前記少なくとも2つの光学偏光素子を通って伝播し検出された前記光ビームの偏光状態を、前記光ビーム強度データに基づいて特定することによって、特定する工程と、
(v)前記複数の光学素子の少なくとも1つを回転させ、工程(i)~(iv)を繰り返す工程と、
により、前記複数の光学素子のリターダンスのプロファイルを測定する工程と、
(b)前記複数の光学素子の少なくともいくつかを、該光学素子
のリターダンスのプロファイル間の相補性を高める相対的向きに、互いに相対的に配置して、このように相対的に向いた光学素子の組合せを形成し、更に、前記相対的に向いた光学素子の組合せを、積み重ねた光学素子として共に固定して、前記光学系を形成する前記積み重ねた光学素子の組み合わせたリターダンスを制御または最小にする工程と
を含む方法。
【請求項2】
(i)前記複数の光学素子のリターダンスのプロファイルを測定する工程は、
前記複数の光学素子のリターダンス方位プロファイルを、
(a)光源、前記光源の下流に位置する前記少なくとも2つの光学偏光素子、および
、関心波長での偏光変化を検出可能な、前記検出器を有する偏光計を用いて、
(b)前記少なくとも2つの光学偏光素子の2つを、前記複数の光学素
子に対して回転することによって、
測定する工程を含むものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定工程は、前記少なくとも2つの光学偏光素子の2つを回転する工程と、前記複数の光学素子の少なくとも1つを回転する工程とを含むものである、請求項2に記載の光学系の組立て方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、米国特許法第119条の下、2017年2月2日出願の米国仮特許出願第62/453,844号、および、2017年8月31日出願の米国仮特許出願第62/552,810号の優先権の利益を主張し、その両方の内容は依拠され、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、光学系アセンブリに関し、特に、相補的な光学素子の選択、および、光学素子をリターダンスに基づいて互いに積み重ねることに関し、特に、光学系のリターダンスに基づく組立てに関する。
【背景技術】
【0003】
多くの光学系アセンブリは、透過率が高いこと、瞳の非均一性が低いこと、RMS波面誤差が小さいこと、透過波面の非対称性が低いことなど、光学性能について、厳しい要求条件を有する。波面性能の要求条件を満たすには、設計および許容誤差を検討することが重要な役割を果たす。例えば、設計形状を、光学素子の製造に付随し予想される種類の光学収差(波面誤差)に対する感度を低下させるように選択することが多く、更に、その設計感度についての光学素子の許容誤差を、製造のばらつきが系レベルでの性能に大きく影響しないように選択する。それでも、光学素子の組立て中に、適切に設計されて製造された光学素子でさえ、積み重ねる際に更なる波面誤差を生じて、光学アセンブリ全体としての性能を低下させうる。
【0004】
撮像または照明に偏光を用いる光学系について、通常、光学素子の透過特性により、光学系アセンブリの材料、設計、および、許容誤差が決定される。例えば、光学材料を、屈折率および光透過特性について選択して、基本的な撮像要求条件を満たすようにしうる。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に記載の実施形態によれば、複数の光学素子を含む光学系の組立て方法は、以下の工程を含む:
(a)複数の光学素子のリターダンスのプロファイルを測定する工程と、
(b)複数の光学素子の少なくともいくつかを、光学素子のリターダンスのプロファイル間の相補性を高める相対的向きに、互いに相対的に配置して、このように相対的に向いた光学素子の組合せを形成する工程と、
(c)相対的に向いた光学素子の組合せを、積み重ねた光学素子として共に固定して、複合光学系を形成する積み重ねた光学素子の組み合わせたリターダンスを制御または最小にする工程。
【0006】
いくつかの実施形態によれば、複数の光学素子のリターダンスのプロファイルを測定する工程は、複数の光学素子のリターダンス方位プロファイルを、
(a)光源、少なくとも2つの光学偏光素子、および、関心波長での偏光変化を検出可能な検出器を有する偏光計を用いて、
(b)少なくとも2つの光学偏光素子の2つを、複数の光学素子の少なくとも1つに対して回転することによって、
測定する工程を含むものである。
いくつかの実施形態によれば、光学素子を互いに相対的に配置する工程は、光学素子を、光学素子のリターダンス方位プロファイル間の相補性を高める相対的向きに、相対的に配置する工程を含むものである。
【0007】
本明細書に記載のいくつかの実施形態によれば、複数の光学素子を含む光学系の組立て方法は、以下の工程を含む:
a)複数の光学素子のリターダンス方位プロファイルを、光源、少なくとも2つの光学偏光素子、および、関心波長での偏光変化を検出可能な検出器を有する偏光計を用いて、少なくとも2つの光学偏光素子の2つを、複数の光学素子の少なくとも1つに対して回転することによって、測定する工程と、
b)光学素子を、光学素子のリターダンスのプロファイル間の相補性を高める相対的向きに、相対的に配置する工程と、
c)相対的に向いた光学素子の組合せを、積み重ねた光学素子として共に固定して、積み重ねた光学素子の組み合わせたリターダンスを制御または最小にする工程。
【0008】
いくつかの実施形態において、測定工程は、複数の光学素子の少なくとも1つを回転する工程を更に含むものである。
【0009】
本明細書に記載の実施形態のいくつかによれば、複数の光学素子を含む光学系の組立て方法は、以下の工程を含む:
a)少なくとも1つの光学素子を、2つの光学偏光素子の間に配置する工程と、
b)少なくとも1つの光学素子に、特定の複数の位置で、特定の入射角で入射する光ビームを提供して、光ビームが、少なくとも1つの光学素子を通り、更に、2つの光学偏光素子を通って伝播し、光検出器によって検出されるようにする工程と、
c)2つの光学偏光素子の少なくとも1つを回転する工程と、
d)2つの光学偏光素子の少なくとも1つを回転する時に、検出された光ビームに関する光ビーム強度データを収集する工程と、
e)少なくとも1つの光学素子についてのリターダンス方位プロファイルを、少なくとも1つの光学素子および2つの光学偏光素子を通って伝播し検出された光ビームの偏光状態を光ビーム強度データに基づいて特定することによって、特定する工程と、
f)他の光学素子を、2つの光学偏光素子の間に配置する工程と、
g)提供工程、回転工程、収集工程、および、他の光学素子についてのリターダンス方位プロファイルを特定する工程(bからe)を、繰り返す工程と、
h)少なくとも1つの光学素子と他の光学素子とを、少なくとも1つの光学素子のリターダンス方位プロファイルと他の光学素子のリターダンス方位プロファイル間の相補性を高める相対的向きに、相対的に配置して、このように相対的に向いた光学素子の組合せを形成し、更に、相対的に向いた光学素子の組合せを、積み重ねた光学素子として、共に固定して、光学系を形成する積み重ねた光学素子の組み合わせたリターダンスを制御または最小にする工程。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの光学素子は、他の光学素子についてリターダンス方位プロファイルを特定する工程の間に、2つの光学偏光素子の間に位置しないものである。他の実施形態によれば、少なくとも1つの光学素子、および、他の光学素子は、少なくとも1つの光学素子、および、他の光学素子について組み合わせたリターダンス方位プロファイルを特定する工程の間に、2つの光学偏光素子の間に位置するものである。
【0011】
いくつかの実施形態において、複数の光学素子を含む光学系の組立て方法は、以下の工程を含む:
a)少なくとも1つの光学素子を、2つの光学偏光素子の間に配置する工程と、
b)少なくとも1つの光学素子に、特定の複数の位置で、特定の入射角で入射する光ビームを提供して、光ビームが、少なくとも1つの光学素子を通り、更に、2つの光学偏光素子を通って伝播し、光検出器によって検出されるようにする工程と、
c)2つの光学偏光素子の少なくとも1つを回転する工程と、
d)2つの光学偏光素子の少なくとも1つを回転する時に、検出された光ビームに関する光ビーム強度データを収集する工程と、
e)少なくとも1つの光学素子および2つの光学偏光素子を通って伝播し検出された光ビームの偏光状態を、光ビーム強度データに基づいて特定する工程と、
f)更なる光学素子を、少なくとも1つの光学素子に隣接して、2つの光学偏光素子の間に配置する工程と、
g)提供工程、回転工程、収集工程、および、少なくとも1つの光学素子と更なる光学素子の組合せについての組み合わせたリターダンス方位プロファイルを特定する工程を、繰り返す工程と、
h)少なくとも1つの光学素子と更なる光学素子とを、少なくとも1つの光学素子のリターダンス方位プロファイルと更なる光学素子のリターダンス方位プロファイル間の相補性を高める相対的向きに、相対的に配置して、このように相対的に向いた光学素子の組合せを形成する工程と、
相対的に向いた光学素子の組合せを共に固定して、光学系を形成する積み重ねた光学素子のリターダンスを制御または最小にする工程。
【発明の効果】
【0012】
本明細書に記載の例示的な実施形態によれば、本明細書で開示する例示的方法を、そうでない場合には、光学アセンブリにおいて、適切に設計され、許容誤差を与えられ、製造された光学素子の間で生じうる誤差の原因を、これらの光学素子を積み重ねながらリターダンスを制御して最適化することによって、減らすために用いうる。他の光学素子と共に使用することを意図して、光学素子のリターダンス特性(例えば、リターダンスのプロファイル)を、組立て前に、および/または、組立て中に測定しうる。リターダンス特性の測定値を用いて、組立て中に、積み重ねる光学素子(つまり、積み重ねている光学素子)を配列するか、または、最終的に組み立てる前に、積み重ねる素子を、適切な向きに予め配列しうる。光学素子を積み重ねる間に累積する誤差を減らす目的で、組立て中の光学素子のリターダンス特性のin situ(その場での)測定値(例えば、測定したリターダンスのプロファイル)を、組立て前の光学素子の測定値と組み合わせて用いうる。
【0013】
ここまでの概略的記載および次の詳細な記載の両方が、例示的なものに過ぎず、請求項の本質および特徴を理解するための概観または枠組みを提供することを意図すると、理解すべきである。
【0014】
添付の図面は、更なる理解のために含められたものであり、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、1つ以上の実施形態を示し、明細書の記載と共に、様々な実施形態の原理および動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態による光学素子のリターダンスのプロファイルを測定するための回転検光子および偏光子の概略図である。
【
図2A】1つ以上の実施形態による偏光計の機械的詳細を示している。
【
図2B】1つ以上の実施形態による偏光計の機械的詳細を示している。
【
図2C】1つ以上の実施形態による偏光計の機械的詳細を示している。
【
図3A】本明細書に記載の一実施形態による例示的な検光子および偏光子によって収集した例示的なデータを示す。
【
図3B】本明細書に記載の一実施形態による例示的な検光子および偏光子によって収集した例示的なデータを示す。
【
図4】一実施形態による例示的なリターダンスのプロファイルを示す。
【
図5】異なる光学素子について、方位によるリターダンスのプロファイルの比較を示す。
【
図6A】デカルト座標系において、光学素子の2つのサブアセンブリについてのリターダンスの測定値の最適化を示している。
【
図6B】
図6Aに対応するが、極座標系において、2つの光学サブアセンブリについてのリターダンスの測定値の最適化を示している。
【
図7A】デカルト座標系において、光学素子の2つの光学サブアセンブリの他の組についてのリターダンスの測定値の最適化を示している。
【
図7B】
図7Aに対応するが、極座標系において、2つの光学サブアセンブリについてのリターダンスの測定値の最適化を示している。
【
図8】光学系アセンブリを、リターダンス測定値を用いて構築する工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
レンズまたは光学素子の「リターダンスのプロファイル」とは、その光軸からの半径方向距離(または、x-y位置)と、その半径方向距離での方位(または、回転)位置(または、X-Y位置)の関数としての光学素子のリターダンスである。
【0017】
リターダンスのプロファイル間の「相補性」とは、2つ以上の光学素子が、光学素子のリターダンスのプロファイル内の最大位置同士が実質的に重ならないように、好ましくは、光学素子のうちの1つのリターダンスのプロファイル内の最大位置が、他の光学素子のリターダンスのプロファイル内の最小位置に実質的に対応して、光学系全体としてのリターダンスを最小にするように、互いに相対的に向けられることを意味する。
【0018】
「積み重ねた光学素子」とは、指定された向きで、指定された距離で、互いに離間して、互いに隣接して位置する複数の光学素子である。
【0019】
「組み合わせたリターダンス性能」または「組み合わせたリターダンス」とは、積み重ねた光学素子、または、光学系を形成する複数の光学素子のリターダンス性能(つまり、全体としてのリターダンス)である。
【0020】
本明細書で用いる「レンズ」という用語は、以下のいずれかを含む:光学アセンブリ、光学サブアセンブリ(つまり、それより大きい光学アセンブリの一部を形成する光学素子群)、光学素子(例えば、単レンズ素子、または、接合レンズ要素(例えば、ダブレット))、ビームスプリッタ、コーティングされたレンズ素子またはレンズ要素、反射性または部分反射性の光学要素、光学プレート、若しくは、ガラス窓。
【0021】
複屈折は、多くの光学材料に固有の特性であり、材料に加えられる外力によって生じうる。リタデーションまたはリターデンスは、光学材料の試料を横切る光ビームの光路に沿って作用する複屈折の統合した効果を表す。入射光ビームが直線偏光の場合には、偏光した光の2つの直交成分は、リターダンスと称される位相差で、試料を出る。リターダンスの基本単位は、ナノメートル(nm)などの長さである。しかしながら、リターダンスを、位相角(波、ラジアン、または、度)の単位で表すと好都合なことが多く、それは、リターダンス(nm)を光の波長(nm)で除したものに比例する。
【0022】
いくつかの光学材料は、製造または取付け工程からの応力の存在下で、様々な範囲の複屈折または様々な程度のリターダンスを示し、これらの材料から作製された光学素子を積み重ね合わせた場合、光学アセンブリ全体としての性能を低下させる更なる波面誤差を生じうる。更に、光学素子または光学素子アセンブリの偏光特性は、光学材料に固有の特性だけではなく、光学素子の製造処理、取付け処理により生じた応力、および、光学素子上に存在する光学コーティングによっても影響を受ける。本明細書に記載の方法は、コーティング、および/または、取付け、および/または、組立て(つまり、光学素子を、共に、または、互いに相対的に、いかに組み立てるか)のリターダンスに対する影響を理解する方法を有利に提供し、したがって、それらの影響を最小に抑えること、および/または、光学サブアセンブリのリターダンスを特性評価して、光学系の性能の最適化を可能にする。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、光学素子、光学サブアセンブリなどのリターダンスを、偏光計を用いて、予め測定する。より具体的には、偏光計は、本明細書で、光学材料のリターダンスを測定するのに用いる装置である。複屈折は、加えられた応力に関係するので、光学素子のリターダンスのプロファイルは、光学素子に生じる応力分布に関係し、例えば、コーティング、または、光学保持部によって、若しくは、光学素子が製造された方法によって生じる応力に関係する。このような応力は、累積して、光学系全体としての性能に影響を与えうる。レンズ光学素子のリターダンスの測定値を、適切な光学素子、および/または、それらの互いに相対的向きを選択するのに有利に利用して、組み立てた光学系のリターダンス性能を改善しうる。本明細書に記載の実施形態では、偏光計を用いて、レンズ、光学系、光学素子、または、光学サブアセンブリのリターダンスを測定する。偏光計は、例えば、回転検光子を利用しうる。偏光計の例は、回転検光子ストークス偏光計、例えば、回転波長板ストークス偏光計である。
【0024】
本明細書に記載のいくつかの実施形態によれば、方法は、光学素子、若しくは、光学サブアセンブリまたはアセンブリの光学リターダンスを測定する工程と、次に、リターダンスの測定結果に基づいて、積み重ねた光学素子または光学系の性能を最適化する工程とを含む。本明細書では、例えば、回転検光子ストークス偏光計を用いて、特定の関心波長(例えば、動作波長)のレーザ光源からのレーザビームを、光学素子、光学サブアセンブリ、または、全体としての光学アセンブリに送る。本明細書に記載の例示的な実施形態によれば、偏光計は、既知または特性評価された偏光状態の小径レーザ(光)ビームを、光学素子、若しくは、光学サブアセンブリまたはアセンブリに、「使用時の」入射角で送って、素子、若しくは、光学サブアセンブリまたはアセンブリを介して、リターダンスを、指定された位置で特性評価する。「使用時の」角度は、光が、最終光学系内の光学素子に入射する角度であり、光学素子または光学素子アセンブリを、複数の方位位置に回転して、光学素子、サブアセンブリ、または、アセンブリの方位によるリターダンスのプロファイルを生じるリターダンスを、特性評価しうる。光学素子のリターダンス方位プロファイルを用いて、光学素子を回転した時の組み合わせたリターダンスが最小となるように、光学素子の回転を互いに相対的に最適化しうる。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、複数の光学素子を含む光学系の組立て方法は、以下の工程を含む。
(a)複数の光学素子のリターダンスのプロファイルを測定する工程と、
(b)光学素子を、光学素子のリターダンスのプロファイル間の相補性を高める相対的向きに、相対的に配置する工程と、
(c)相対的に向いた光学素子の組合せを共に固定して、積み重ねた光学素子の組み合わせたリターダンスを制御または最小にする工程。
例えば、光学素子を、1つ以上の光学素子のリターダンスのプロファイル内の最大値が、少なくとも1つの他の光学素子のリターダンスのプロファイル内の最小値に対応するように、配置しうる。
【0026】
本明細書に記載の実施形態のいくつかによれば、リターダンスについて評価または特性評価される光学素子または光学サブアセンブリは、光学系に適した光学材料から作製された、凹状、凸状、平面、非球面、または、自由形状のレンズ素子を有する光学素子を含みうる。本明細書に記載の実施形態によれば、特性評価は、以下を決定することを含む。
a)例えば、リターダンスの特性評価で用いる光学素子、若しくは、光学サブアセンブリまたはアセンブリの前面における半径方向位置を決定する、レンズについての関心開口領域と、
b)その領域での入射角(AOI)と、
c)レンズの第2の(または、最終)面、例えば、光学素子または光学サブアセンブリの最終または後方を向いた面(検出器に向いた面)からの屈折角(AOR)。
【0027】
偏光計10は、レーザ光ビーム(測定ビーム)を、評価で必要なように、レンズ12の要求される開口領域およびAOI(入射角)で、配置することが可能である。偏光計は、(a)検査対象のレンズ(つまり、特性評価を行っているレンズ12)に入射する測定光ビームを方向付けると共に、その大きさを調整する(または、平行光にする)調整光学部を有するレーザ光源と、(b)レンズ12に入射する光ビームの偏光状態を調整するための1つ以上の偏光素子(例えば、直線偏光子、および、4分の1(1/4)波長板)を含む偏光光学部とを備える。
【0028】
図1は、回転検光子偏光計10の例示的な実施形態の概略図である。本実施形態において、光ビーム18は、調整光学部14aによって、大きさを調整されるか、および/または、平行光化され、次に、線形移動ステージ10A’および回転ステージ10Aの移動によって、特定の入射位置(半径方向および方位位置、特定の入射角)でレンズ12に送られる。
図1の実施形態では、レンズ12は、光学素子12iであり、より具体的には、単レンズ素子12’である。本明細書に記載の実施形態では、レンズ12は、例えば、光学アセンブリ、光学サブアセンブリ(つまり、それより大きい光学アセンブリの一部を形成する光学素子群)、光学素子12i(例えば、単レンズ素子、または、接合レンズ要素(例えば、ダブレット)、ビームスプリッタ、光学プレート、または、ガラス窓)であってもよい。本実施形態では、光学素子12i(例えば、例示的なメニスカスレンズ素子12’)に入射する入射光ビームの偏光は、2つの光学偏光素子、つまり、直線偏光子22A、および、4分の1波長板22B(本明細書では、1/4波長板22Bとも称する)によって制御される。直線偏光子22Aおよび1/4波長板22Bは互いに協働して、円偏光ビームを生成する。本実施形態では、他の組の線形移動および回転ステージ10B’、10Bが、回転検光子23および検出器25を位置決めして、それらが、検光子23を通るレーザ光ビーム18の強度を検出/測定するのを可能にする。収集および測定したビーム強度を用いて、評価中のレンズ12(例えば、光学素子12’)、光学サブアセンブリ、または、光学アセンブリの電界ベクトルの振幅およびリターダンスを、計算する。この測定を繰り返して、レンズ12の他の半径方向および方位位置についてのリターダンス性能をマッピングしうる。
【0029】
上記のように、
図1は、光源14からのビームを、一連の線形移動および回転ステージを用いて、評価中のレンズ12に向ける装置を、概略的に示している。光源14は、例えば、連続波、準連続波、または、パルス波でありうるレーザである。光源14は、任意の関心波長で、例えば、DUV波長(193nm<λ<400nm)でありうる。
図1の実施形態では、線形移動ステージ10A’および回転ステージ10Aは互いに協働して、光ビーム18を、レンズ12のリターダンスを特性評価しうるレンズ12上の位置へ、動かして向けるのを可能にする。上記のように、
図1に示した回転検光子偏光計10を用いて、単一の光学素子12’のリターダンス、若しくは、光学サブアセンブリ、または、光学素子アセンブリのリターダンスを測定しうる。例えば、単一の光学素子12’の代わりに、複数の光学素子を含むアセンブリ全体またはサブアセンブリを、レンズ保持部12Aに配置して、更に、光ビーム18を、レンズアセンブリ全体(または、光学サブアセンブリ)を通って、回転検光子23、および、検出器25に向けて、レンズアセンブリ、または、光学サブアセンブリを通った光ビームの強度の測定を可能にする。
【0030】
ステージ10A、10A’は、レンズ12に入いる入射ビーム18の偏光を調整する偏光素子についての位置決めも行う。例えば、偏光素子20Aは、光ビーム18の偏光を所定の偏光に変化させ、例えば、1つ以上の直線偏光子、1/2波長板、および/または、1/4波長板を含みうる。
図1の実施形態では、偏光素子20Aは、直線偏光子22A、および、直線偏光子の光軸に対して45°に向いた速軸を有する1/4波長板22Bを含み、円偏光を生成する。
図1の実施形態では、ステージ10A、10A’は、レンズ12の上流側に位置する。
【0031】
レンズ12(例えば、光学素子12’、光学サブアセンブリ、または、レンズアセンブリ)は、レンズ12(例えば、光学素子12i)を、その光軸OAを中心に回転する回転ステージ10Cに載置される。これにより、軸外で(つまり、光軸上ではなく)行われる測定について、回転ステージ10Cを、インデキシング送り、または、回転することによって、レンズ12の方位位置の測定が可能になる。透過した光ビーム18(つまり、光学素子、光学サブアセンブリ、または、レンズアセンブリを通った光ビーム)は、少なくとも1つの偏光素子23を通り、次に、検出器25によって収集される。
図1に示す実施形態では、少なくとも偏光素子23および検出器25は、線形移動および回転ステージ10B、10B’に載置されている。線形移動および回転ステージ10B’、10Bは、線形移動および回転ステージ10A’、10Aの下流側に配置され、レンズ12に対する偏光素子23および検出器25の並進および回転を可能にする。
【0032】
検光子23は、光学偏光素子である。例えば、いくつかの実施形態では、検光子23は直線偏光子であるが、他の実施形態では、他の偏光素子を含みうる。いくつかの実施形態によれば、直線検光子23は、ビーム軸を中心に回転する回転ステージに載置される。検出器25は、回転検光子23を通る光の強度の変化を感知するものであり、これらの変化を検出して、強度の変化を、検光子の位置と共に記録しうる(つまり、強度と検光子の位置を記録している)。
【0033】
図1に示した回転検光子偏光計10は、レンズ12のリターダンス特性(例えば、リターダンス方位プロファイル)を取得するのに使用しうる器具の例であり、より具体的には、指定された光路に沿って、レンズ12のリターダンス特性を提供しうる。レーザダイオードなどの光源14は、コヒーレント光の光ビーム18を出射し、(本明細書では、偏光子回転ステージとも称される)回転ステージ10A上に位置する回転または走査折り曲げミラー15によって、光ビーム18の光路に位置する光学素子12iのようなレンズ12に向かって反射される。
【0034】
ビーム18の偏光ビーム部分は、保持部12Aのようなレンズ保持部に位置するレンズ12を通って(例えば、レンズ素子12’のような光学素子12iを通って)伝播する。保持部12Aは、レンズ12を、所定の位置に支持し、回転自在である。本実施形態では、偏光ビームは、光学素子12iを出た後に、偏光計10の線形移動ステージ10Bに入る。偏光ビーム18は、他の(第2の)偏光素子20C(本実施形態では、回転検光子23)を通って伝播し、検出器25によって検出される。
【0035】
図2Aおよび
図2Bは、偏光計10の例示的な実施形態の機械的モデルを詳細に示し、レンズ12上の異なる測定位置について、入射ビーム18の位置および方向を制御するのに用いるビーム操作性を示している。より具体的には、
図2Aおよび
図2Bは、光学素子または光学素子アセンブリ(例えば、レンズ、または、レンズアセンブリ)に入射するビーム18の「軸上」および「軸外」の位置決めを示している。
図2Aは、「軸外」測定を示し、
図2Bは、光学素子12iの「軸上」測定を示している。
図2Aは、光ビーム18が、ステージ10A、10A’上に位置する走査ミラー15から反射され、次に、反射ビームが、垂直入射ではなく、法線Nに対して角度Θで、レンズ12に入射するのを示している。更に、
図2Aは、検光子23および検出器25が、入射ビーム18に対して垂直に配置されたのも示している。
図2Bは、光ビーム18がステージ上に配置された走査ミラー15から反射され、反射光ビーム18が、次に、垂直入射角で、レンズ12に入射するのを示している。更に、
図2Bは、検光子23および検出器25が、入射ビーム18に対して垂直に配置されたのも示している。
図2Cは、
図2Aおよび2Bの偏光計10の斜視図である。
図2A~2Cに示すように、光学素子12iを回転するために、レンズ12(例えば、光学素子12i)は、(その光軸を中心に回転する)回転ステージ上に配置され、光学素子上の任意の半径方向または方位位置について、リターダンスの特性評価/評価を行うのを可能にする。
【0036】
最初のリターダンス測定は、入射ビーム18の偏光を、特性評価光学部を用いて、特性評価するために、光学素子を配置せずに(つまり、レンズ12を配置しないか、または、保持部12Aに光学素子12iを配置せずに)行いうる。このような最初の測定値を、例えば、検光子偏光計10の較正のために用いて、例えば、検光子偏光計10の座標系を較正しうる。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、個々の光学素子12iの代わりに、いくつかの光学素子(例えば、光学サブアセンブリ、または、レンズアセンブリ)も、保持部12Aに配置しうる。保持部12Aは、評価中の光学サブアセンブリまたはレンズアセンブリの回転を可能にし、サブアセンブリ全体または光学要素アセンブリについて、任意の半径方向または方位位置で、リターダンスを特性評価するのを可能にする。
【0038】
検出器から収集されたデータ(つまり、強度)および検光子の位置を用いて、検査されている光学サブアセンブリまたはレンズアセンブリの偏光性能を特定しうる。特定の偏光子/検光子配列について収集されたデータを取得し、ストークス係数を計算するための周知の関係があり、本明細書に記載の実施形態によれば、これらの関係を有利に利用して、光学素子または光学サブアセンブリに存在するレーザビーム18の偏光状態を表しうる。その情報を、光学素子が測定キャビティ内に存在しない(つまり、保持部12Aにない)状態で行われた偏光状態の最初の測定値と組み合わせて用いて、レンズ素子、光学サブアセンブリ、または、レンズアセンブリによって生じる偏光の変化量を特定しうる。(本明細書で用いるように、「測定キャビティ」とは、偏光素子20Aと回転検光子23の間の空間を意味する。)光学素子が測定キャビティに存在しない状態で行われた偏光状態の最初の測定(最初のリターダンスの測定)を用いて、偏光計10が適切に設定されているかを確認しうる。更に、レンズ12の「絶対的」リターダンス性能を計算するには、レンズ素子が測定キャビティ内に配置された時に取得した測定値から、測定キャビティ内にレンズ素子がない状態で行われた測定値を減算しうる。
【0039】
図3Aおよび
図3Bは、本明細書に記載の一実施形態による、回転検光子23が検出器25と協働で収集した例示的なデータを示す。
図3Aは、直線検光子23の6回転に対応する検出ビーム強度(信号強度)を示している。より具体的には、
図3Aでは、検光子23の完全な一回転毎の強度を、細い灰色の曲線として示している。6回転に対応する強度の平均値を求め、平均強度を、濃く太い(実線の)曲線で、
図3Aに示している。
図3Bでは、(
図3Aでは、濃く太い実線の曲線で示し、
図3Bでは破線の曲線で示した)収集されたデータに対応する平均強度に、(
図3Bでは、細い正弦曲線で示した)3項正弦曲線を当てはめてフィッティングを行い、電界ベクトル振幅(E
x、E
y)およびリターダンスを計算するのに用いうる最初の3つのストークス係数(S
0、S
1、および、S
2)を表している。つまり、
図3Aおよび
図3Bは、生データの例を示しており、多数回の回転(この例では、検光子23を、6回完全に回転)が平均され、次に、検光子23が回転する間に検出器25によって検出された信号を表すバイアス項および2つの正弦曲線係数を特定するために、正弦曲線に合わせてフィッティングを行う。これらの係数を用いて、測定値について、電界振幅およびリターダンスを計算しうる。測定中に、光学素子12iを異なる方位位置に回転して、同じ測定サイクルを繰り返しうる(検光子を回転し、次に、検光子の位置および検出した信号強度を記録する)。この方法は、光学素子12i上の異なる位置について、リターダンスのデータを提供する。同様の測定を、光学アセンブリ全体、または、レンズサブアセンブリについて行い、レンズ保持部12Aに位置する光学アセンブリ全体、または、光学サブアセンブリ(または、レンズ12)を通して、異なる位置について、リターダンスのデータを特定または提供しうる。この方法によって取得したリターダンスのデータ(度で表し、波長λ=266nmを有するレーザを用いて測定)の例示的な結果を、多数の方位位置について、
図4に示している。
【0040】
より具体的には、
図4は、レンズ12(本実施形態では、その上にコーティングを有する光学素子を含む光学サブアセンブリ)のリターダンスの測定結果(リターダンスのプロファイル)を示している。縦軸は、リターダンスを、度の単位で表している。リターダンスを、(本実施形態では、組み立てた光学系の動作波長である)266nmの波長を有するレーザビーム18を用いて測定したものである。横軸は、レンズ12の方位位置(その光軸を中心とした回転角度)を表している。本実施形態では、コーティングされた光学素子12i、12’を、そのレンズ保持部12Aに載置し、更に、リターダンスを、15°の方位間隔で、半径方向にCA(開口)の90%の位置で、光学素子が光学アセンブリ全体の中に配置された時に光学素子が受ける光ビームの入射角(AOI)で、測定している。
図4のプロットは、方位によるリターダンスを示し、「菱形の」印は、光学素子12i、12’上の指定された各位置で測定したリターダンスに対応する。この光学素子のリターダンスのプロファイルを、光学アセンブリ内の他の光学素子12iの測定された方位のリターダンスと比較して、適切な光学素子を選択するか、および/または、光学素子を回転して、光学素子を互いに最適な向きに配置することによって、光学アセンブリ全体の偏光性能を最適化して、リターダンスを最小に抑え、光学アセンブリ全体の偏光性能を改良しうる。
【0041】
系レベルでの偏光性能に制約があるのが知られているため、リターダンス特性について検査または評価を行う光学素子12iの位置(または、領域)を、選択しうる。更に、光学素子上の測定光ビーム18の入射角は、光学素子が完成したアセンブリの中で動作する時の光学素子についての角度と一致する(類似または同じである)べきである。したがって、測定結果を用いて、光学素子12iを完全な光学アセンブリに組み込む前に、(光学素子12iのリターダンスのプロファイルを通して)系に対する要素レベルでの偏光の影響を、特性評価しうる。
【0042】
更に、上記方法の例示的な実施形態は、検光子23が、多数回、回転した時に、光学素子12i(光学サブアセンブリなど)上の離散的な方位位置で取得した強度のばらつきを利用したことも留意すべきである。その代わりに、他の実施形態では、光学素子12iは、回転し、検光子23は、静止状態で保持される。つまり、光学素子(サブアセンブリなど)を、多数回、回転する時に取得される強度データセットを、離散的な検光子位置についても利用しうる。その後に、検光子を、記録された量でインデキシング送り/回転して、データを収集することが必要となりうるもので、その測定値を再び記録しうる(多数回のレンズ回転、強度および部分方位位置の記録)。この方法を用いて、レンズ(例えば、光学素子またはレンズサブアセンブリ)から、高い空間分解能リターダンス特性を獲得しうる。この空間分解能は、レンズを回転する装置(モータ、エンコーダなど)の分解能によって支配されうる。
【0043】
図5は、2つの異なる光学素子について、2つの方位によるリターダンスのプロファイルの比較を示し、分解能、または、例示的なリターダンスの測定システムを示している。正方形で示したデータ点は、菱形で示したデータ点よりも、方位による、ばらつきが小さく、低いリターダンスを示している。
【0044】
より具体的には、
図5は、波長λ=266nmを有するレーザビーム(光ビーム18)で測定した2つの同様の光学素子12i、この例では、2つの凸/凹レンズ素子12’についてのリターダンス特性評価(度)からの典型的な結果を示している(曲線A1、A2に対応する)。
図5は、これら2つのレンズ素子のリターダンスのプロファイルに、大きい違いがあることを示している。方位(または、半径方向)リターダンスのプロファイルを、一連の光学素子、若しくは、光学サブアセンブリまたはアセンブリについて、それらが完成に近づき、最終アセンブリに組み込まれる時に特性評価しうる場合、結果(光学素子のリターダンスのプロファイル)を用いて、以下のいずれかを行いうる。
(1)同様の光学素子(または、光学サブアセンブリ)の中から、ばらつきが小さく、リターダンスのプロファイルが低い値を示す光学素子(または、サブアセンブリ)を選択し、光学系内に組み入れられた時に、それを組み入れた光学系は、アセンブリレベル(光学系レベル)のリターダンス性能目標を満たしうる。
(2)各光学素子(または、光学サブアセンブリ)のリターダンスのプロファイルに基づいて、光学素子(または、光学サブアセンブリ)を、方位角で、クロック式移動(回転)させて、(例えば、完成した(つまり、組み立てた)光学系の)完成したアセンブリ内の光学素子の組み合わせたリターダンス(つまり、リターダンスの和)を、最小または最適にしうる。
【0045】
例えば、
図5で特性評価した光学素子の1つを、光学系で使用するために選択する場合、ばらつきが小さく、リターダンスのプロファイルの値が低い光学素子を選択するのが好まれうる。つまり、この例示的な実施形態では、光学素子12i、12’を光学系で使用するために選択する時には、「菱形」(A2とラベルを付した)を用いたプロットに対応する同様の光学素子ではなく、「正方形」(A1とラベルを付した選択肢#1)を用いたプロットに対応する光学素子12i、12’を、振幅リターダンスが低いので選択し、これにより、光学系全体として、要求される系のリターダンス性能を満たすのが可能になる。
【0046】
更に、例えば、相補的なリターダンスのプロファイルを有する光学素子または光学サブアセンブリを選択して、共に組み立てうる。光学素子(または、光学サブアセンブリ)を、方位角の向きに、互いにクロック式移動(回転)させて、完成したアセンブリ内の光学素子のリターダンスの和(つまり、組み合わせたリターダンス)を最小または最適にしうる。
図6Aおよび6Bは、2つの光学サブアセンブリA、Bについて取得したリターダンスのデータを示している。より具体的には、
図6Aの上から2つの曲線は、2つの異なる光学サブアセンブリ(AおよびB)の方位によるリターダンスのプロファイルを示し、共に組み立てられて光学系を形成するものである。上から2つの曲線は、両方とも、2つの最大値および2つの最小値を示す方位によるリターダンスのプロファイルを示している。
図6Aの一番下のプロットは、2つのサブアセンブリを含む、この光学系の全リターダンスを示している。2つの光学サブアセンブリを互いに相対的に回転して、(
図6Aに示したように)2つのサブアセンブリのリターダンスのプロファイルが主に相補的となるようにした(本実施形態では、1つのプロファイルのピークまたは最大値が、他のプロファイルの谷または最小値に実質的に対応する)場合には、結果として生じる組み立てた光学系全体としてのリターダンスのプロファイルは、(
図6Aの一番下のプロットによって示したように)最小になる。この素子と積み重ね合わせる他の素子またはサブアセンブリも、コーティング、光学的製作残留応力、または、光学的取付け関連応力のために、同様の「2つの最大/最小」リターダンス特性を経験しうる。次に、2つのサブアセンブリの位相関係をクロック式に移動(2つのサブアセンブリを、他方に対して回転)して、(例えば、「2つの最大/最小」プロファイルについて、1つの光学素子またはサブアセンブリを、他方の光学素子またはサブアセンブリに対して、90°回転することによって)2つのリターダンスのプロファイルの合計を最小にするようにしうる。同じことを、より多い数の最大/最小リターダンスのプロファイル(3、4、5など)を有する光学素子またはサブアセンブリについても行って、完成した光学系における複数の光学素子について組み合わせたリターダンス(つまり、全体としてのリターダンス、または、リターダンスの和)を最小にするように選択した向きを用いうる。これにより、
図6Aの一番下のトレースに示したものと同様の、または、
図6Bの濃い極座標プロファイルとしての組み合わせたリターダンスのプロファイル(全体としてのリターダンス)を生じる。組み合わせたリターダンスは、組立て中に、このように最適化されるので、個々の光学素子のリターダンスよりも50%小さくなる。(より具体的には、2つのレンズまたは光学サブアセンブリについてのリターダンスの測定値の最適化を、デカルト座標(
図6A)および極座標(
図6B)上のプロットによって表している。
図6Aにおいて、一番上のプロットは、全開口の90%の半径方向領域で測定したリターダンスのプロファイルであり、光学素子Aの方位位置の関数として示している。中央のプロットは、全開口の90%の半径方向領域で測定したリターダンスのプロファイルであり、同様の光学素子Bの方位位置の関数として示し、それは、好ましいようにクロック式移動(回転)されて、完成したアセンブリでの組み合わせたリターダンス性能を最適化する(一番下のプロット)。これを、
図6B(極プロット形式)にも示し、光学素子Aについてのリターダンスのプロファイルを、プロットAとして示し、光学素子Bについてのリターダンスのプロファイルを、プロットBとして示し、組み合わせた性能(濃いプロット)を、A+Bとして示している。更に、
図6Bは、組み合わせたリターダンス性能(振幅)が、個々の光学素子AおよびBの個々のリターダンス性能より、約50%小さいことを示している。
【0047】
図7Aおよび7Bは、比較例を示している。同じレンズAおよびBを用いるが、レンズ(若しくは、光学素子またはサブアセンブリ)AおよびBの向きは、それらのリターダンスのプロファイルが、もはや相補的でないように互いに向いている。むしろ、
図7Aは、光学素子(または、サブアセンブリ)AおよびBの位置および向き(より具体的には、方位アセンブリ位置)が、それらの方位によるリターダンスのプロファイル(上から2つのプロット)が組み合わさり、個々の光学素子(または、サブアセンブリ)のリターダンスより大きい、全体としてのリターダンスのプロファイルを生じるのを示している。より具体的には、2つの光学素子AおよびBについてのリターダンスの測定値を、デカルト座標(
図7A)または極座標(
図7B)上のプロットに表している。
図7Aにおいて、一番上のプロットは、全開口の90%の半径方向領域で測定したリターダンスのプロファイルであり、光学素子Aの方位位置の関数として示している。中央のプロットは、全開口の90%の半径方向領域で測定したリターダンスのプロファイルで、完成したアセンブリ(一番下のプロット)において、組み合わせたリターダンス性能にマイナスに影響する(または、増加させる)ようにクロック式移動された場合を、光学素子Bの方位位置の関数として示している。
図7Bにおいて、極座標プロット形式で示し、リターダンスのプロファイルを、レンズまたは光学素子Aについて、プロットAとして示し、レンズまたは光学素子Bについて、プロットBとして示し、更に、組み合わせた性能を、プロットA+Bとして示している。
図6Aおよび6Bに示した結果に対して、
図7Aおよび7Bに示したように、レンズAおよびB(または、サブアセンブリ)の組み合わせの組み合わせたリターダンス性能(振幅)は、個々のレンズ(または、個々のサブアセンブリ、または、個々の光学素子)の個々のリターダンス性能の略2倍である。
【0048】
図8は、本発明の一実施形態によるフローチャートを示す。より具体的には、
図8は、光学素子の予め測定、および、組立て途中の光学素子のin situ測定の両方を用いて、光学サブアセンブリ、または、完成したアセンブリ(レンズ系アセンブリ)を構築するための例示的な工程を示している。
工程140:複数の光学素子を予め測定して(つまり、リターダンス方位プロファイルを測定または取得して)、それらのリターダンスのプロファイルを取得する(つまり、複数の光学素子のリターダンス方位プロファイルを測定または取得する)。これらの測定値は、各光学素子の全体としてのリターダンス特性、または、特定の位置または関心領域での光学素子のリターダンス特性を評価する。
工程142:複数の利用可能な光学素子の中から光学素子を選択して、光学アセンブリの要求条件を満たすようにする。工程142では、選択は、対応する光学素子の中でランダムとみなされるが、光学素子のリターダンス特性の予め測定した値に基づいて、利用可能な光学素子の中から、光学素子の最適な組合せを選択しうる。
工程144:光学素子12iを、光学保持部に取り付ける。(工程146は、サブアセンブリ(つまり、組立て途中のアセンブリ)内の積み重ねた光学素子のin situ測定を行う、換言すれば、光学素子を積み重ねて、積み重ねた光学素子のin situ測定を行うサイクルを始める。より具体的には、in situ測定は、サブアセンブリ全体のリターダンス方位プロファイルによって、光学素子の組合せ(サブアセンブリ)を特性評価する。)
工程148:次の隣接する光学素子12
i+1の予め測定した結果を検索して取得する。
工程150:利用可能な選択肢から、次の隣接する光学素子12
i+1の相対的向きを、光学素子12iと光学素子12
i+1(または、光学素子12iを含む光学サブアセンブリと、隣接する光学素子12
i+1の光学サブアセンブリ)のリターダンス方位プロファイルが相補的となるように決定する。しかしながら、他の組み立てた光学素子の対と対の間での相補性の残留偏差も考慮して、組立て途中のアセンブリにおいて累積的にリターダンスが累積するのを回避しうる。
工程152:次の隣接する光学素子12
i+2を、決定したように載置し、次に、更なる隣接する光学素子を方向付けて、載置するために、工程146を繰り返して、望ましい光学アセンブリを完成させる。
【0049】
図1、2A、2B、および、2Cを参照すると、いくつかの実施形態によれば、光学素子または光学素子サブアセンブリの光学リタデーション性能を最適化する方法は、以下の工程を含む。
1.レンズ12(例えば、光学素子または光学サブアセンブリ)を用意し、光学素子またはサブアセンブリの公称形状、並びに、光学素子の屈折率および開口、並びに、入射角、および、光学素子からの屈折角を指定する。
2.光源、並びに、少なくとも2つの偏光素子または要素22A、23、および、関心波長での偏光変化を検出可能な検出器25を有する偏光光学部を含む偏光計10を、用意する。
3.レンズ12(例えば、光学素子、光学サブアセンブリ)を少なくとも2つの偏光素子の間に位置する回転ステージ10Cに載置し、レンズ12の光軸OAを回転ステージ10Cの回転軸に位置合わせする(または、同一直線上にある)ように、レンズ12を位置合わせする。
4.偏光計10を、光源14によって提供された光ビーム18が、レンズ12に、特定の関心領域で、かつ、特定の入射角で入射可能となるように設定する。
5.光ビームがレンズを通って伝播し、レンズを出た後に、更に、少なくとも2つの偏光素子または要素22A、23を通って伝播した後に、光ビームが検出器25によって収集されるように、検出器25を配置する。
6.レンズ12と検出器25の間に位置する偏光素子23(検光子)を、屈折したビームの軸を中心に回転して(最小でも4つの離散位置が好ましいが、もっと多い回数の360°の完全な回転がより好ましい)、偏光素子23を回転した時に、屈折したビーム18に関連する強度データを収集する。収集した強度データは、偏光素子(例えば、検光子23、または、1/4波長板)が回転するにつれて、変化する。
7.レンズ12(光学素子、光学サブアセンブリ、または、レンズアセンブリ)を通る屈折したビーム18の偏光状態を計算する。
8.レンズ12を、上記部分ステージの回転を介して、新たな方位位置に配置し、検出器25に新たに入射するビームを検出する。
9.レンズ12を、関心領域について、十分に特性評価するまで、工程6および7を繰り返す。
10.工程3~9を、光学系全体の他の光学素子(または、光学サブアセンブリ)について繰り返す。
11.例えば、1つ以上の光学素子または光学サブアセンブリを互いに相対的に回転することによって、完成したレンズ系アセンブリについて、全体としての偏光状態の影響を最小にするように、1つ以上の素子またはレンズ素子サブアセンブリの方位位置を最適化する。
12.レンズを配置しない(つまり、レンズが測定キャビティ内に存在しない)状態で、系を通る参照測定を行って、参照強度データを生成する。(次に、この参照強度データを、レンズ12のリターダンス特性評価から、偏光計10自体によって生じたリターダンスを除くために使用しうる。)
いくつかの実施形態によれば、この方法は、以下の工程を含む。
1.例えば、全体としての強度、偏光値/状態、例えば、水平偏光、垂直偏光、直線偏光、±45°直線偏光、および、右/左円偏光についての値を用いて、光ビームを特性評価する光ビーム(測定ビーム)について、ストークスベクトルを計算する。測定ビーム18のこの偏光状態を、光学素子またはサブアセンブリを後で測定/評価するための基準として用いうる。この計算は、レンズなしで、つまり、光学素子が回転ステージ10C上に位置しない状態で行われる。
2.最初の測定ビームの特性評価が完了した後に、評価中のレンズ(例えば、光学素子、レンズアセンブリ、サブアセンブリ、または、レンズを積み重ねたもの)を回転ステージ10Cに載置し、レンズまたはレンズアセンブリの光軸が回転ステージ10Cの回転軸と同軸となるように、光学素子を位置合わせする。
3.ステージ10A、10A’、10B、10B’を位置決めして、(i)光ビーム18が、レンズについて要求される関心開口領域に、その領域で要求される入射角(AOI)で、更に、要求されるAORで、レンズ12に入射し、(ii)検出器25が、光ビームを検出することが可能なように配置する。好ましくは、検光子23および検出器25は、評価中のレンズ12を出る測定ビーム18(本明細書では、屈折した測定ビームまたは屈折したビームとも称される測定ビーム18)の軸に対して垂直に位置する。検出器25を、測定ビーム18の軸に垂直となるように配置することは、検出器25に入射する信号光強度を最大にするのに有利である。つまり、ステージ10Bおよび10B’を、(検光子23を通った後の)屈折した測定ビーム18によって提供され、検出器25に入射する信号データの収集を可能にするように配置する。少なくともいくつかの実施形態では、ステージ10Bおよび10B’を、屈折した測定ビーム18が、屈折した測定ビーム18に対して略垂直に配置された検出器25および回転検光子23の中心になるように配置する。
4.検出したビーム強度を、ステージ10C上のレンズ12の任意の特定方位位置について、検光子の回転位置の関数として記録し、レンズを出る光ビームのストークスベクトルを計算する。これらのストークスベクトルから、工程1で計算した基準ストークスベクトルを減算して、レンズのリターダンス特性を特定する。
5.レンズ12を、異なる方位位置に回転する。
6.工程4および5を、関心開口領域を網羅するのに十分な回数、繰り返す。
7.工程1~6を、アセンブリ内の他の/全ての要素について、繰り返す。
8.全ての光学素子についてのデータ収集が完了すると、光学素子の方位位置を、(例えば、必要に応じて素子を回転することによって)最適化して、全体として最適化された光学系のリターダンスを提供する。その代わりに、全ての光学素子についてのデータ収集が完了すると、光学素子から、互いに相補的である光学素子を選択し、光学系全体としての(つまり、組み合わせた)リターダンスを最小にするために、それらを積み重ね合わせる。
【0050】
したがって、本明細書に記載のいくつかの実施形態によれば、複数の光学素子を含む光学系の組立て方法は、以下の工程を含む:
a)少なくとも1つの光学素子を、2つの光学偏光素子の間に配置する工程と、
b)少なくとも1つの光学素子に、特定の複数の位置で、特定の入射角で入射する光ビームを提供して、光ビームが、少なくとも1つの光学素子を通り、更に、2つの光学偏光素子を通って伝播し、光検出器によって検出されるようにする工程と、
c)2つの光学偏光素子の少なくとも1つを回転する工程と、
d)2つの光学偏光素子の少なくとも1つを回転する時に、検出された光ビームに関する光ビーム強度データを収集する工程と、
e)少なくとも1つの光学素子についてのリターダンス方位プロファイルを、少なくとも1つの光学素子および2つの光学偏光素子を通って伝播し検出された光ビームの偏光状態を光ビーム強度データに基づいて特定することによって、特定する工程と、
f)他の光学素子を、2つの光学偏光素子の間に配置する工程と、
g)提供工程、回転工程、収集工程、および、他の光学素子についてのリターダンス方位プロファイルを特定する工程(bからe)を、繰り返す工程と、
h)少なくとも1つの光学素子と他の光学素子とを、少なくとも1つの光学素子のリターダンス方位プロファイルと他の光学素子のリターダンス方位プロファイル間の相補性を高める相対的向きに、相対的に配置して、このように相対的に向いた光学素子の組合せを形成する工程と、
i)相対的に向いた光学素子の組合せを、積み重ねた光学素子として、共に固定して、光学系を形成する積み重ねた光学素子の組み合わせたリターダンスを制御または最小にする工程。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの光学素子は、他の光学素子についてリターダンス方位プロファイルを特定する工程の間に、2つの光学偏光素子の間に位置しないものである。他の実施形態によれば、少なくとも1つの光学素子、および、他の光学素子は、少なくとも1つの光学素子、および、他の光学素子について組み合わせたリターダンス方位プロファイルを特定する工程の間に、2つの光学偏光素子の間に位置するものである。
【0052】
いくつかの実施形態において、複数の光学素子を含む光学系の組立て方法は、以下の工程を含む:
a)少なくとも1つの光学素子を、2つの光学偏光素子の間に配置する工程と、
b)少なくとも1つの光学素子に、特定の複数の位置で、特定の入射角で入射する光ビームを提供して、光ビームが、少なくとも1つの光学素子を通り、更に、2つの光学偏光素子を通って伝播し、光検出器によって検出されるようにする工程と、
c)2つの光学偏光素子の少なくとも1つを回転する工程と、
d)2つの光学偏光素子の少なくとも1つを回転する時に、検出された光ビームに関する光ビーム強度データを収集する工程と、
e)少なくとも1つの光学素子および2つの光学偏光素子を通って伝播し検出された光ビームの偏光状態を、光ビーム強度データに基づいて特定する工程と、
f)更なる光学素子を、少なくとも1つの光学素子に隣接して、2つの光学偏光素子の間に配置する工程と、
g)提供工程、回転工程、収集工程、および、少なくとも1つの光学素子と更なる光学素子の組合せについての組み合わせたリターダンス方位プロファイルを特定する工程を、繰り返す工程と、
h)少なくとも1つの光学素子と更なる光学素子とを、少なくとも1つの光学素子のリターダンス方位プロファイルと更なる光学素子のリターダンス方位プロファイル間の相補性を高める相対的向きに、相対的に配置して、このように相対的に向いた光学素子の組合せを形成する工程と、
i)相対的に向いた光学素子の組合せを共に固定して、光学系を形成する積み重ねた光学素子のリターダンスを制御または最小にする工程。
【0053】
例示的な実施形態によれば、測定した光学素子を組み合わせて、相対的角度の向きにして、群を形成し、実質的に相補的なリターダンス特性を有する光学素子を同じ群にするようにしうる。つまり、測定した光学素子を、同じ群の、または、積み重ねた光学素子のリターダンスのプロファイル間の相補性を高める相対的向きに配置する。次に、光学素子を固定して、積み重ねた光学素子のリターダンス性能を制御および/または最適化しうる。いくつかの実施形態によれば、積み重ねた光学素子のリターダンスのプロファイル間の相補性を高めることで、積み重ねた光学素子のリターダンスを最小にする。つまり、光学素子を、積み重ねた光学素子の全体としてのリターダンスを最小にするように選択するか、向けるか、および/または、配置する。
【0054】
光学素子に存在する応力または歪みは、それらの光学リターダンス特性(例えば、リターダンスのプロファイル)に影響を与える。したがって、本明細書に記載の例示的な実施形態の少なくともいくつかによれば、光学素子を、組立て前、または、組立て中に光学保持部に載置し、載置された光学素子の組合せを、組合せた中の光学素子のリターダンスのプロファイル間の相補性を高めることによって、付随する応力または歪みを最小に抑えながら、共に組み立てうる。光学素子の組み合わせにおける応力または歪みを減らすことによって、積み重ねた光学素子の望ましい光学性能が最適化される。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、光学素子のリターダンス特性の測定値を、段階的に光学素子を組み立てる(つまり、「構築する」)間に行われるin situ測定値と組み合わせて使用しうる。各光学素子または光学素子群が共に固定されると、リターダンス特性を、in situで測定して、アセンブリ内の累積誤差を監視し、それを、累積リターダンスのプロファイルとしても表しうる。次の(隣接する)光学素子は、そのリターダンス特性を予め測定しうるものであり、それに隣接する(それよりも前に配置された)光学素子に対して、累積誤差を減らすように向けられて、光学素子を共に固定して、望ましい累積リターダンス特性を提供し、例えば、そうでなければ、合わさって、光学系の性能を損ないうる応力または歪みを減らしうる。
【0056】
隣接する光学素子を予め測定し、それらのリターダンス特性に基づいて、組立て前、または、組立て中に、互いに対にしうる。実際、隣接する光学素子間で測定されたリターダンス特性が十分に相補的である限り、個々の積み重ねた素子の機械的許容誤差を緩和しうる。
【0057】
したがって、少なくともいくつかの実施形態によれば、光学系アセンブリのリターダンスまたはリターダンスのばらつきを減らすために、(選択肢がある場合には)光学素子の組み合わせ、および、それらの互いに相対的向きを特定しうる。組立て前に、光学素子のプロファイルを測定して、特定しうる。隣接する光学素子、および/または、それらの互いに相対的向きを、隣接する光学素子または光学素子群が実質的に相補的なリターダンスのプロファイルを有するように選択しうるもので、したがって、例えば、望まない応力または歪みを生じる可能性を減らしうる
いくつかの実施形態によれば、相補性を満たさないままで隣接する光学素子間の累積残留低次関連誤差を、組立て前に推定するか、または、組立て中に測定しうる。対にした光学素子を、更なる光学素子の他の対に対して配置して、1つの対が相補性を満たさないことが、1つ以上の他の対が相補性を満たさないことと相補的となるようにして、そうでなければ、積み重ねた素子の組み合わせ内で偏光を変化させうる対と対の間のリターダンスの蓄積を回避しうる。
【0058】
本明細書に記載の方法の実施形態は、光学素子の表面のコーティングの有無に関わらず、光学素子、若しくは、光学サブアセンブリまたはアセンブリを、(応力および複屈折に影響を与えうる)レンズ保持部に取り付けながら、機能入射角でのリターダンス性能のためのレンズ(例えば、光学素子、光学サブアセンブリ、光学素子サブアセンブリ、レンズ素子アセンブリなど)の特性評価を有利に可能にする。光学素子の載置方法、それらの回転方向、および、光学面がコーティングを有するかどうかは、光学系全体のリターダンス性能に影響を与えうる。光学素子またはサブアセンブリの(特定の半径方向および/または方位位置におけるリターダンスによって記載される)特性評価結果を、リターダンスの影響を最小にして光学素子を選択し、相補的なリターダンス特性を有する光学素子を選択することによって、若しくは、アセンブリまたは光学系全体のリターダンスの影響を最小にするように、ゼロではないリターダンスを有する光学素子をクロック式に回転する(その軸を中心に回転する)ことによって、アセンブリ、または、光学系の性能を最適化するために有利に利用しうる。
【0059】
本発明の実施形態は、本開示の全体的な教示に従って、様々な他の方法で実施しうるものであり、積み重ねた素子における低次表面誤差の測定値を用いて、光学アセンブリにおける応力または歪みを減らしうる。
【0060】
当業者には、本発明の精神も範囲も逸脱することなく、様々な変更および変形が可能なことが明らかだろう。当業者には、本発明の精神および本質を組み込んだ開示した実施形態の変更例、組合せ、部分組合せ、および、変形が可能であり、本発明は、添付の請求項、および、それらの等価物の範囲の全てを含むと解釈されるべきである。
【0061】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0062】
実施形態1
複数の光学素子を含む光学系の組立て方法において、
(a)複数の光学素子のリターダンスのプロファイルを測定する工程と、
(b)前記複数の光学素子の少なくともいくつかを、該光学素子の前記リターダンスのプロファイル間の相補性を高める相対的向きに、互いに相対的に配置して、このように相対的に向いた光学素子の組合せを形成し、更に、前記相対的に向いた光学素子の組合せを、積み重ねた光学素子として共に固定して、前記光学系を形成する前記積み重ねた光学素子の組み合わせたリターダンスを制御または最小にする工程と
を含む方法。
【0063】
実施形態2
(i)前記複数の光学素子のリターダンスのプロファイルを測定する工程は、
前記複数の光学素子のリターダンス方位プロファイルを、
(a)光源、少なくとも2つの光学偏光素子、および、関心波長での偏光変化を検出可能な検出器を有する偏光計を用いて、
(b)前記少なくとも2つの光学偏光素子の2つを、前記複数の光学素子の少なくとも1つに対して回転することによって、
測定する工程を含むものであり、
(ii)前記光学素子を互いに相対的に配置する工程は、
前記光学素子を、該光学素子の前記リターダンス方位プロファイル間の相補性を高める相対的向きに、相対的に配置する工程を含むものである、実施形態1に記載の方法。
【0064】
実施形態3
前記測定工程は、前記少なくとも2つの光学偏光素子の2つを回転する工程と、前記複数の光学素子の少なくとも1つを回転する工程とを含むものである、実施形態2に記載の光学系の組立て方法。
【0065】
実施形態4
複数の光学素子を含む光学系の組立て方法において、
a)少なくとも1つの光学素子を、2つの光学偏光素子の間に配置する工程と、
b)前記少なくとも1つの光学素子に、特定の複数の位置で、特定の入射角で入射する光ビームを提供して、前記光ビームが、前記少なくとも1つの光学素子を通り、更に、前記2つの光学偏光素子を通って伝播し、光検出器によって検出されるようにする工程と、
c)前記2つの光学偏光素子の少なくとも1つを回転する工程と、
d)前記2つの光学偏光素子の少なくとも1つを回転する時に、前記検出された光ビームに関する光ビーム強度データを収集する工程と、
e)前記少なくとも1つの光学素子についてのリターダンス方位プロファイルを、前記少なくとも1つの光学素子および前記2つの光学偏光素子を通って伝播し検出された前記光ビームの偏光状態を前記光ビーム強度データに基づいて特定することによって、特定する工程と、
f)他の光学素子を、前記2つの光学偏光素子の間に配置する工程と、
g)前記提供工程、回転工程、収集工程、および、前記他の光学素子についてのリターダンス方位プロファイルを特定する工程を、繰り返す工程と、
h)前記少なくとも1つの光学素子と前記他の光学素子とを、該少なくとも1つの光学素子の前記リターダンス方位プロファイルと該他の光学素子の前記リターダンス方位プロファイル間の相補性を高める相対的向きに、相対的に配置して、このように相対的に向いた光学素子の組合せを形成し、更に、前記相対的に向いた光学素子の組合せを共に固定して、前記光学系を形成する積み重ねた光学素子の組み合わせたリターダンスを制御または最小にする工程と
を含む方法。
【0066】
実施形態5
前記少なくとも1つの光学素子は、前記他の光学素子について前記リターダンス方位プロファイルを特定する時に、前記2つの光学偏光素子の間に位置しないものである、実施形態4に記載の方法。
【0067】
実施形態6
複数の光学素子を含む光学系の組立て方法において、
i)少なくとも1つの光学素子を、2つの光学偏光素子の間に配置する工程と、
j)前記少なくとも1つの光学素子に、特定の複数の位置で、特定の入射角で入射する光ビームを提供して、前記光ビームが、前記少なくとも1つの光学素子を通り、更に、前記2つの光学偏光素子を通って伝播し、光検出器によって検出されるようにする工程と、
k)前記2つの光学偏光素子の少なくとも1つを回転する工程と、
l)前記2つの光学偏光素子の少なくとも1つを回転する時に、前記検出された光ビームに関する光ビーム強度データを収集する工程と、
m)前記少なくとも1つの光学素子および前記2つの光学偏光素子を通って伝播し検出された前記光ビームの偏光状態を、前記光ビーム強度データに基づいて特定する工程と、
n)更なる光学素子を、前記少なくとも1つの光学素子に隣接して、前記2つの光学偏光素子の間に配置する工程と、
o)前記提供工程、回転工程、収集工程、および、前記少なくとも1つの光学素子と前記更なる光学素子の組合せについての組み合わせたリターダンス方位プロファイルを特定する工程を、繰り返す工程と、
p)前記少なくとも1つの光学素子と前記更なる光学素子とを、該少なくとも1つの光学素子のリターダンス方位プロファイルと該更なる光学素子のリターダンス方位プロファイル間の相補性を高める相対的向きに、相対的に配置して、このように相対的に向いた光学素子の組合せを形成する工程と、
q)前記相対的に向いた光学素子の組合せを共に固定して、前記光学系を形成する積み重ねた光学素子のリターダンスを制御または最小にする工程と
を含む方法。
【0068】
実施形態7
a)少なくとも1つの光学素子を、2つの光学偏光素子の間に配置する工程と、
b)前記少なくとも1つの光学素子に、特定の複数の位置で、特定の入射角で入射する光ビームを提供して、前記光ビームが、前記少なくとも1つの光学素子を通り、更に、前記2つの光学偏光素子を通って伝播し、光検出器によって検出されるようにする工程と、
c)前記2つの光学偏光素子の少なくとも1つを回転する工程と、
d)前記2つの光学偏光素子の少なくとも1つを回転する時に、前記検出された光ビームに関する光ビーム強度データを収集する工程と、
e)前記少なくとも1つの光学素子についてのリターダンス方位プロファイルを、前記少なくとも1つの光学素子および前記2つの光学偏光素子を通って伝播し検出された前記光ビームの偏光状態を前記光ビーム強度データに基づいて特定することによって、特定する工程と、
f)他の光学素子を、前記2つの光学偏光素子の間に配置する工程と、
g)前記提供工程、回転工程、収集工程、および、前記他の光学素子についてのリターダンス方位プロファイルを特定する工程を、繰り返す工程と、
h)前記少なくとも1つの光学素子と前記他の光学素子とを、該少なくとも1つの光学素子の前記リターダンス方位プロファイルと該他の光学素子の前記リターダンス方位プロファイル間の相補性を高める相対的向きに、相対的に配置して、このように相対的に向いた光学素子の組合せを形成し、更に、前記相対的に向いた光学素子の組合せを共に固定して、前記光学系を形成する積み重ねた光学素子の組み合わせたリターダンスを制御または最小にする工程と
を更に含む、実施形態1に記載の方法。
【0069】
実施形態8
前記少なくとも1つの光学素子は、前記他の光学素子について前記リターダンス方位プロファイルを特定する時に、前記2つの光学偏光素子の間に位置しないものである、実施形態7に記載の方法。
【符号の説明】
【0070】
10A、10B、10C 回転ステージ
10A’、10B’ 線形移動ステージ
12A 保持部
12、12i、12’ 光学素子
14 光源
15 ミラー
20C 偏光素子
22A 直線偏光子
23 検光子
25 検出器