(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】振動を減衰させる内側壁形状を有する燃焼室及び該燃焼室の製造方法
(51)【国際特許分類】
F02K 9/52 20060101AFI20230308BHJP
F02K 9/64 20060101ALI20230308BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230308BHJP
【FI】
F02K9/52
F02K9/64
B33Y10/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021149221
(22)【出願日】2021-09-14
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】10 2020 124 542.4
(32)【優先日】2020-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519171642
【氏名又は名称】アリアーネグループ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】クリス ウド メーディング
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-226586(JP,A)
【文献】米国特許第02968918(US,A)
【文献】米国特許第02476185(US,A)
【文献】特表2019-534409(JP,A)
【文献】特開平04-301168(JP,A)
【文献】米国特許第2977754(US,A)
【文献】仏国特許出願公開第2945580(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B33Y 10/00
F02K 9/52
F02K 9/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロケットエンジン(10)用の燃焼室(100)であって、前記燃焼室(100)は、
燃焼室容積部を包囲する燃焼室本体(120)と、
前記燃焼室(100)の長手方向に先細りしかつ前記燃焼室本体(120)に隣接する、ノズル部(112)とを備え
、
前記燃焼室本体(120)は、少なくとも1つの第1部分(121)と第2部分(122)とを備える、ロケットエンジン(10)用の燃焼室(100)において、
前記燃焼室本体(120)の前記第2部分(122)は、前記燃焼室本体(120)の筒状の基本体の少なくとも一部分を形成し、
前記燃焼室容積部に面する前記少なくとも1つの第1部分(121)の内側は、前記燃焼室本体(120)の前記第2部分(122)の内側よりも前記燃焼室本体(120)の断面中心に近接して
おり、
前記燃焼室本体(120)の前記少なくとも1つの第1部分(121)及び前記第2部分(122)において、複数の冷却材流路(130)が、前記燃焼室本体(120)の長手方向に延びているように配置されており、
前記複数の冷却材流路(130)の各々が前記少なくとも1つの第1部分(121)及び前記第2部分(122)の前記内側に追従していることを特徴とするロケットエンジン(10)用の燃焼室(100)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1部分(121)の前記内側の前記燃焼室本体(120)の断面中心(Z)までの距離(A1)は、最小部(M)から、前記燃焼室本体(120)の前記第2部分(122)の前記内側の前記燃焼室本体(120)の断面中心(Z)までの距離(A2)まで、前記燃焼室本体(120)の長手方向及び/又は周方向に連続的に増加する、請求項1に記載のロケットエンジン(10)用の燃焼室(100)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1部分(121)の前記内側の前記燃焼室本体(120)の前記断面中心(Z)までの距離(A1)の前記最小部(M)が、前記燃焼室本体(120)の長手方向及び/又は周方向に延びる線に沿って配置されている、請求項2に記載のロケットエンジン(10)用の燃焼室(100)。
【請求項4】
前記燃焼室本体(120)の少なくとも1つの断面は回転対称であり、前記燃焼室本体(120)の断面中心(Z)は前記回転対称の回転中心である、請求項1~3のいずれか1項に記載のロケットエンジン(10)用の燃焼室(100)。
【請求項5】
前記燃焼室本体(120)の前記少なくとも1つの第1部分(121)が、前記燃焼室本体(120)の長手方向において、前記燃焼室本体(120)のヘッド端部を形成するか、前記ノズル部(112)に隣接して前記燃焼室本体(120)のノズル端部を形成するか、又は、前記燃焼室本体(120)の前記ヘッド端部と前記ノズル端部との間の中間領域を形成する、前記燃焼室本体(120)の領域内に位置し、又は、
前記燃焼室本体(120)の前記少なくとも1つの第1部分(121)が、前記燃焼室本体(120)の長手方向において、前記燃焼室本体(120)にわたって延びている、請求項1~4のいずれかに記載のロケットエンジン(10)用の燃焼室(100)。
【請求項6】
前記燃焼室本体(120)は、偶数個の第1部分(121)を備え、かつ/又は、少なくとも2つの前記第1部分(121)が、前記燃焼室本体(120)内で前記燃焼室本体(120)の長手方向に配置される、請求項1~5のいずれか一項に記載のロケットエンジン(10)用の燃焼室(100)。
【請求項7】
前記燃焼室(100)は、
前記燃焼室(100)の長手方向に延びている筒状部(110)
をさらに備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の燃焼室(100)。
【請求項8】
前記燃焼室(100)は、
前記燃焼室(100)の長手方向において前記ノズル部(112)に隣接するノズル超音速セグメント(114)をさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の燃焼室(100)。
【請求項9】
前記燃焼室本体(120)内の前記複数の冷却材流路(130)の各々は、冷却材出口(138)を有し、
前記燃焼室本体(120)内の隣接する冷却材流路(130)の別の冷却材出口(138)が、前記燃焼室本体(120)の断面に沿って周方向において複数の前記冷却材出口(138)の1つに隣接して配置される、請求項
1に記載の燃焼室(100)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の燃焼室(100)を備えたロケットエンジン(10)。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の燃焼室(100)の製造方法において、
前記燃焼室(100)が付加層製造方法を用いて構築される、燃焼室(100)の製造方法。
【請求項12】
前記製造方法は、請求項
1又は9に記載の燃焼室(100)の製造方法であり、前記燃焼室本体(120)の複数の冷却材流路(130)が位置する位置において、付加層製造方法によって材料が接合されていない、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
プロセッサ上で実行されるときに装置に請求項11又は12に記載の付加層製造方法を実施させる命令を備えるコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動を減衰させる内側壁形状を有する燃焼室、該燃焼室を有するロケットエンジン、該燃焼室の製造方法、並びに、該製造方法を実施するための命令を有するコンピュータ可読媒体に関する。特に、本発明は、内側が燃焼室本体の他の部分よりも燃焼室本体の断面中心に近接している少なくとも1つの部分を有する燃焼室本体を備える燃焼室に関する。更に、該燃焼室を有するロケットエンジン、該燃焼室を作製するための付加層製造方法、並びに、付加層製造方法を実施するための命令を有するコンピュータ可読媒体についても説明する。
【背景技術】
【0002】
液体ロケットエンジンの燃焼室は、酸化剤と燃料からなるそれぞれの燃料の組み合わせの効率的な燃焼のために使用される。このため、燃料成分は特別な噴射システムを介して燃焼室内に供給される。燃焼室内では、それぞれの運転条件、蒸発、混合、化学変換、運動エネルギーへの初期変換に応じて、その主な増加は、亜音速及び超音速ノズル領域の領域にある。燃焼室の領域の流れは、乱流混合で特徴づけられる。ロケットエンジンの確実な作動のためには、高い燃焼安定性が望ましい。
【0003】
さらに、特に高温ガス壁(燃焼室及びスラストノズルの内側壁)の領域で冷却が必要である。例えば、再生冷却の場合、高熱の発生は、少なくとも1つの燃料成分が流れる高温ガス壁内の冷却材流路を介して減衰させることができる。
【0004】
球形、ナシ形、円錐形、筒形、又は、環状燃焼室の形態などの燃焼室の種々の形状から、筒形の燃焼室形態が確立されている。筒形の燃焼室は、特に製造においていくつかの利点を有する。しかし、丸い断面を有する燃焼室は、これらの設計の固有振動数に対応する、特に横振動モードなどの高周波振動の影響をより受けやすい。これらの横振動、即ち、丸い燃焼室の半径方向への振動伝播によって、関連する過熱に伴う燃焼室内での付加的なエネルギー放出をもたらす。さらに、強い圧力変動がある。
【0005】
これらの振動を打ち消したり回避したりするために、燃焼室の面板(又は噴射板)上にバッフルが配置されている。特許文献1(独国特許出願公開第102016209650号明細書)では、バッフルの代わりに、面板から他の噴射要素よりも燃焼室の内部にさらに突出する中央スリーブ本体を備えた面板上に、一定数の同軸噴射要素を設けることが提案されている。このようにして達成された燃焼室内の火炎前面の軸線方向の千鳥状配置は、バッフルと同様の方法で振動の形成及び/又は伝播を低減又は防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許出願公開第102016209650号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような背景から、本発明の目的は、燃焼安定性を向上させた燃焼室を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、請求項1に記載の特徴を有する燃焼室、請求項10に記載の特徴を有するロケットエンジン、請求項11に記載の特徴を有する方法、並びに、請求項13に記載の命令を有する対応するデータ媒体によって解決される。
【0009】
本開示をより良く理解するための第1の態様によれば、ロケットエンジン用の燃焼室は、燃焼室容積部を包囲する燃焼室本体と、燃焼室の長手方向に先細りしかつ燃焼室本体に隣接するノズル部とを備える。例えば、燃焼室本体は、ノズル部とは反対側において噴射ヘッドに隣接している。したがって、燃焼室容積部は、燃料成分の混合及び燃焼のために主に使用される。
【0010】
燃焼室本体は、少なくとも1つの第1部分を備え、第2部分をさらに備え、燃焼室容積部に面する少なくとも1つの第1部分の内側は、燃焼室本体の第2部分の内側よりも、燃焼室本体の断面中心に近接している。換言すると、少なくとも1つの第1部分の内側表面は、第2部分の内側表面よりも燃焼室容積部のさらに内側にあり、それによって、燃焼室本体のその領域における燃焼室容積部を低減する。少なくとも1つの第1部分は、第2部分の領域よりも小さな燃焼室容積部を局所的に画定する燃焼室本体の任意の数の部分又は領域としうる。第2部分は、少なくとも1つの第1部分に含まれない、燃焼室本体の任意の残りの部分又は領域としうる。また、第2部分は、少なくとも1つの第1部分の領域のそれぞれにおいて、燃焼室容積部に面する内側上で(燃焼室容積部内に延びる)膨張部を有する均一に整形された本体としうる。
【0011】
燃焼室本体の内側のこの特殊な形状により、燃焼室容積部を異なる領域に分割する。この細分化により、特に横振動などの振動の生成及び/又は伝搬に対抗する。噴射ヘッド上に配置されたバッフルと同様に、燃焼室容積部は、特に燃焼室本体の断面を見るときに細分化されるため、振動の伝播が減衰又は防止される。これにより、ロケットエンジンの燃焼安定性が増す。
【0012】
例えば、燃焼室本体のいくつかの第1部分を設け、それぞれバッフルが通常配置される場所に配置することができる。燃焼室本体の特殊な形状により、燃焼室はいかなる好ましい固有振動数を有さないので、振動問題は発生しないか、少なくとも大幅に低減される。
【0013】
変形実施形態では、少なくとも1つの第1部分の内側の燃焼室本体の断面中心までの距離は、最小部から、燃焼室本体の第2部分の内側の燃焼室本体の断面中心までの距離まで、燃焼室本体の長手方向及び/又は周方向において連続的に増加しうる。例えば、少なくとも1つの第1部分の内側表面は、丸い三次元形状を採用しうる。バッフルの場合と同様に、鋭い縁部を回避することによって、流れの中の強い温度勾配及び/又は渦を回避することができ、したがって、燃焼室本体内の温度ピークを有する領域を回避することができる。
【0014】
また、少なくとも1つの第1部分の内側の連続した表面形状により、燃焼ガスの流れに最適化された燃焼室容積部を提供することができる。このように、バッフルの利点は、燃焼室本体内で直接的に実現できつつ、燃焼室本体の長手方向(燃焼ガスの流れ方向)の流れが改善されることである。例えば、乱流は、バッフルの縁領域において発生し得るが、本明細書に開示される燃焼室本体において発生しない又は非常に小さな程度しか発生しない。
【0015】
燃焼室本体の断面中心は、燃焼室本体の断面の重心に対応しうる。燃焼室本体の断面は、燃焼ガスの流れ方向に対応する燃焼室の長手方向に実質的に垂直な(断面)平面内に存在する。少なくとも1つの第1部分又は第2部分の内側の断面中心までの距離は、断面平面内で測定される。したがって、最小値は、断面中心と、第1部分の内側と平面との交線上の任意の点との間の最短距離である。
【0016】
さらなる変形実施形態では、少なくとも1つの第1部分の内側の燃焼室本体の断面中心への距離の最小部は、燃焼室本体の長手方向及び/又は周方向に延びている線に沿って配置されうる。好ましくは断面平面内における周方向で見た場合、最小部は、したがって、単一点に限定されるものではなく、断面中心への等しい距離を有する円弧線を表しうる。燃焼室本体の長手方向から見ると、第1部分は、断面中心から等距離にある複数の隣接する断面平面のそれぞれにおいて点又は線を有しうる。したがって、最小部は、点や線としうるが、第1部分の内側壁又は内側表面が断面中心に最も近い領域とすることができ、したがって、燃焼室容積部を最も低減する。この線又は領域は、直線である必要はないが、燃焼室本体の長手方向及び/又は周方向に延びることができる。
【0017】
燃焼室本体の第1部分のこの特殊な形状により、燃焼室容積部を燃焼ガスの流れに対して最適化することができる。特に、燃焼室本体の長手方向及び/又は周方向における第1部分の寸法は、使用される燃焼ガス、ひいては、化学反応、並びに、最適な混合に適合させることができる。本明細書では、燃焼室容積部のそれぞれの領域内の平均局所マッハ数も、第1部分の寸法の選択及び/又は最小部の寸法の選択において考慮することができる。また、燃焼室本体の長手方向における振動(長手方向振動)を減衰又は防止することができる。
【0018】
さらに別の実施形態では、燃焼室本体の少なくとも1つの断面は、回転対称とすることができ、燃焼室本体の断面中心は、回転対称の回転中心とすることができる。回転対称とは、本明細書では円の特殊な場合を意味するのではなく、(周方向から見て)複数の第1部分と、これら第1部分の間の第2部分の配置を意味し、各第1部分は、断面内で回転対称の回転中心を中心として一定の角度で繰り返す。したがって、N回回転対称性があり、Nは断面における第1部分の数である。
【0019】
別の変形実施形態では、燃焼室本体の少なくとも1つの第1部分は、燃焼室本体の長手方向において、燃焼室本体のヘッド端部を形成する燃焼室本体の領域内に位置しうる。燃焼室本体のヘッド端部は、噴射ヘッドが燃焼室に接続される端部である。したがって、少なくとも1つの第1部分の配置は、従来の燃焼室内のバッフルの位置にほぼ対応する。
【0020】
代替的又は付加的に、燃焼室本体の少なくとも1つの第1部分は、燃焼室本体の長手方向において、ノズル部に隣接して燃焼室本体のノズル端部を形成する燃焼室本体の領域に位置しうる。燃焼室本体のノズル端部は、(燃焼室本体の長手方向から見て)ヘッド端部と反対にある。
【0021】
代替的又は付加的に、燃焼室本体の少なくとも1つの第1部分は、燃焼室本体の長手方向において、燃焼室本体のヘッド端部とノズル端部との間の中間領域を形成する燃焼室本体の領域に位置しうる。したがって、燃焼室本体のヘッド端部及びノズル端部は、燃焼室の通常の形状(特に通常の断面)を取ることができつつ、燃焼室本体の長手方向で見ると、少なくとも1つの第1部分による燃焼室容積部の絞り部は、中央領域に配置される。
【0022】
さらに代替的に、燃焼室本体の少なくとも1つの第1部分は、燃焼室本体にわたって燃焼室本体の長手方向に延在しうる。
【0023】
さらなる変形実施形態では、燃焼室本体は、偶数個の第1部分を備えうる。これにより、特に対称で、ひいては安定した燃焼室本体が得られる。
【0024】
代替的に又は付加的に、少なくとも2つの第1部分が、燃焼室本体内に燃焼室本体の長手方向において配置されうる。また、2つの第1部分又は複数の第1部分は、燃焼室本体の長手方向に平行な直線に沿って配置されうる。代替的に、複数の第1部分は、第2部分によって画定される燃焼室本体の基本体の想像上の内側に沿って延びている、湾曲した経路に沿って配置されうる。
【0025】
さらに別の変形実施形態では、燃焼室は、燃焼室の長手方向に延びている筒状部をさらに備えうる。特に、燃焼室の内側表面は、筒状部において筒形状を有する。換言すると、燃焼室の一部分は、従来の形状(筒状)で作ることができつつ、特定の部分のみを、燃焼室の長手方向から見て、少なくとも1つの第1部分及び第2部分によって画定される特定の形状を有する燃焼室本体で作ることができる。例えば、筒状部は、ノズル部に隣接させることができ、それによって、燃焼室を通る効率的な流れを提供する。
【0026】
代替的又は追加的に、燃焼室は、燃焼室の長手方向においてノズル部に隣接するノズル超音速セグメントを備えうる。該ノズル超音速セグメントは、従来の燃焼室又はスラスト室にも見出される。
【0027】
別の変形実施形態では、複数の冷却材流路を、燃焼室本体、特に燃焼室本体の長手方向に延びている燃焼室本体の少なくとも1つの第1部分及び第2部分に配置することができる。この場合、燃焼ガスによって加熱された燃焼室本体の内側を十分に冷却するために、冷却材流路を燃焼室本体の内側に可能な限り近接して配置する。いくつかの燃料成分の1つを冷却材流路に通すことができ、それによってその後の燃焼に有利に加熱することができる。
【0028】
さらなる変形実施形態では、燃焼室本体内の複数の冷却材流路の各々は、冷却材出口を有しうる。この場合、燃焼室本体内の隣接する冷却材流路の別の冷却材出口側を、燃焼室本体の断面に沿って周方向においていくつかの冷却材出口の1つに隣接して配置することができる。換言すると、冷却材出口(冷却材流路出口)は、燃焼室本体の断面の外周に沿って鎖を形成する。これらは周方向の集合空間(マニホールド)に通じることができる。
【0029】
さらに別の変形実施形態では、燃焼室本体は、全体にわたって実質的に均一な肉厚を有しうる。換言すると、燃焼室本体の外側表面又は外側壁は、少なくとも1つの第1部分の領域に凹部又はへこみ部を形成する。代替的に、燃焼室本体の少なくとも特定の部分では、壁厚は、燃焼室本体の外側表面又は外側壁が、燃焼室本体の第2部分と同一平面を形成するように、少なくとも1つの第1部分の領域で増しうる。
【0030】
別の変形実施形態では、燃焼室本体は、一片で形成され得る。一片で形成されるということは、本明細書では、内側壁や、外側壁や、内側壁と外側壁の間の冷却材流路を分離するウェブなどの、燃焼室本体の少なくともほとんどの部分が連続した粘性材料(cohesive material)からなることを意味する。例えば、燃焼室本体又は燃焼室全体は、(3D印刷又はALMとも呼ばれる)付加層製造方法(additive layer manufacturing method)を用いて製造することができる。また、燃焼室本体の一部分のみが付加層製造方法を用いて製造され、他の場所で製造された燃焼室本体の一部の上部に構築され得る。付加層製造方法においても、異なる材料を使用することができる。例えば、燃焼室本体の外側にある場合よりも燃焼室本体の内側において、より耐熱性の高い材料を用いることができる。
【0031】
本開示をより良く理解するための第2の態様によれば、ロケットエンジンは、第1の態様又はそれに関して記載される変形実施形態のいずれかによる燃焼室を備える。
【0032】
本開示をより良く理解するための第3の態様によれば、第1の態様又はその変形実施形態による燃焼室の製造方法は、付加層製造方法を備える。燃焼室本体内に冷却材流路が存在する場合、燃焼室本体の冷却材流路が配置されている位置では、付加層製造方法によって材料を接合することはできない。
【0033】
本開示をより良く理解するための第4の態様によれば、コンピュータ可読媒体は、プロセッサ上で実行されるときに装置に第3の態様による付加層製造方法を実施させる命令を備える。これらの命令は、特に装置が燃焼室部及び/又は燃焼室を層毎に形成することができるように、第1の態様による燃焼室又は燃焼室本体の形状を記述又は定義するCADデータ又は同様のデータとしうる。
【0034】
上述の変形実施形態及び実施例は、当然のことながら、これを明示的に説明することなく組み合わせることができる。従って、記載された変形実施形態の各々は、任意の変形実施形態又は既にそれらの組み合わせに対して選択的である。したがって、本開示は、記載される順序における個々の変形実施形態及び実施例や、態様及び変形実施形態の任意の特定の組み合わせに限定されない。
【0035】
以下、本発明の好ましい実施形態を、添付の模式図を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図3】
図3は、燃焼室本体の別の部分を概略的に示す。
【
図4】
図4は、燃焼室の斜視図及び上面図を概略的に示す。
【
図5】
図5は、異なるように設計された燃焼室の斜視図及び上面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、例えばロケットエンジン10に使用できる燃焼室100の概略斜視図を示す。ロケットエンジン10のノズルは、
図1の右側において破線のみによって示されている。燃焼室100は、
図1で単純化されているように、推進剤の成分の混合及び燃焼の大部分が行われる燃焼室容積部を包囲する燃焼室本体120を有している。燃焼室本体120の(燃焼ガスの流れ方向における)下流側には、選択的な燃焼室部110と、燃焼ガスが加速される亜音速ノズル部112があり、ノズル超音速セグメント114が追従する。
【0038】
ノズル超音速セグメント114の領域には、(分配マニホールドとも呼ばれる)分配リング132に通じている冷却材用の接続部131がある。分配リング132は、周方向に延びており、連続した環状容積部を形成する。
【0039】
冷却材流路130は、この容積部内に通じているか、又は、(
図1の破線矢印で示す)冷却材の流れ方向から見ると、複数の冷却材流路130が分配リング132内で始まる。また、ノズル超音速セグメント114の冷却材流路130が燃焼室100のヘッド端部(
図1の燃焼室100の左端部)まで続くように、冷却材流路130が燃焼室部110及び燃焼室本体120内に配置される。分かりやすくするために、冷却材流路130の一部のみが
図1に露出されて示されており、分配リング132から離間した領域にのみ示されている。当然のことながら、冷却材流路130は、ノズル超音速セグメント114の領域で分配リング132まで延びている。
【0040】
燃焼ガスの流れ方向から見て燃焼室部110の上流側端部には、フランジ125が設けられている。このフランジ125は、燃焼室ヘッド(図示せず)を接続するために使用される。
図2及び3の詳細図に示すように、複数の冷却材出口138がフランジ125の領域に配置されており、燃焼室本体120内の冷却材流路130の各々は、1つの冷却材出口138を有する。複数の冷却材出口138は、燃焼室本体120の断面に沿って周方向に互いに隣接して配置されている。冷却材出口138は、燃焼室100の他端において分配リング132に対応して設けられた図示しない分配リング又はコレクタリング(マニホールド)に通じていてもよい。
【0041】
図1に筒状に示されている燃焼室部110は、燃料成分を効率的に燃焼させる役割を果たす任意の断面形状を取ることができる。燃焼室部110は、特に、燃焼室100の可能な基本体を図示するために
図1に示されている。燃焼室100のこの可能な(想像上の)基本体も、少なくともある領域では、燃焼室本体120内に見出される。
【0042】
この燃焼室本体から逸脱して、燃焼室本体120は、少なくとも第1部分121及び第2部分122を有する。これら2つの第1部分121、第2部分122は、
図2及び
図3の詳細図において明確に見える。少なくとも1つの第1部分121の燃焼室容積部に面する内側は、燃焼室本体120の第2部分122の内側よりも、燃焼室本体120の断面中心に近接している。
図1には、合計6つの第1部分121を有する燃焼室本体120が示されている。しかしながら、第1部分121の数は任意の数であり得、偶数又は奇数としうる。
【0043】
図1に示す第1部分121は、燃焼室本体120の断面中心までの最小距離M(最小部)を有する。この最小部Mから、少なくとも1つの第1部分121の内側から燃焼室本体120の断面中心までの距離が、燃焼室本体120の第2部分122の内側から断面中心までの距離まで、長手方向及び周方向において連続的に変化する。これにより、この内側から断面中心までの距離は連続的に増す。その結果、燃焼室容積部は、いくつかの特定の領域に分割され、第1部分121は絞り部を表す。これらの絞り領域は、噴射ヘッド(図示せず)上に配置されたバッフルと同様の役割を果たす。しかしながら、流れが最適化された表面は、燃焼室本体120の内側の連続的なコースによって生成される。
【0044】
燃料の種類によっては、異なるパラメータを有する振動が燃焼室容積部内で発生する場合がある。これらの振動を打ち消すために、少なくとも1つの第1部分121及び第2部分122は、さもなければ発生するであろう振動が減衰又は抑制されるように、燃焼室本体120の長手方向及び/又は周方向に寸法決めされる。
【0045】
燃焼室本体120の長手方向から見ると、冷却材流路130は、第1部分121及び第2部分122の両方を通過しうる。第1部分121と第2部分122との間の内側表面の変化に起因して、冷却材流路130は、また、異なる断面形状を有しうる。例えば、第1部分121内の冷却材流路130は、増加する表面積を収容するために周方向に見るとより広くすることができる(周方向に見ることもできる)。有利には、各冷却材流路130の断面積は、ノズル端部(
図1の右側)からヘッド端部(
図1の左側)まで変化しない又は僅かに変化するだけである。
【0046】
燃焼室本体120(又は、燃焼室100全体)は、層毎の工程で又は付加層製造方法(3D印刷又はALM)を使用して、極めて迅速かつ容易に作製することができる。少なくとも1つの第1部分121及び第2部分122を形成する材料は、層状に塗布することができ、燃焼室100全体を層状に作製することができる。この点に関し、全ての冷却材流路130は、材料の接合を省略してキャビティを形成することによって作製することができる。
【0047】
付加層製造方法により、冷却材流路130を形成するキャビティを簡単な方法で製造することができる。その結果、複雑な構造も実現することができ、特に、他の製造工程では不可能であろう、燃焼室部110と燃焼室本体120との間の遷移領域、及び/又は、燃焼室本体120の少なくとも1つの第1部分121及び第2部分122の領域内の内側表面の連続的変化の領域内で実現することができる。したがって、良好に冷却されかつ流れを最適化することができる燃焼室本体120は、簡単な工程で提供することができ、それによって、冷却材流路130の変化するコースにかかわらず、良好な振動減衰に特に注意を払うことができる。
【0048】
図4及び
図5は、2つの燃焼室100の斜視図及び立面図を概略的に示す。
図4に示す例では、燃焼室本体120の第1部分121は、燃焼室100のヘッド端部に設けられている。第1部分121の内側から断面中心Zまでの距離A1の最小部Mは、例えば燃焼室100のヘッド端部に位置している。(A1から始まる)距離は、燃焼室本体120の長手方向及び周方向に沿って、第2部分122の内側から断面中心Zまでの距離A2に達するまで、連続的に増す。当然のことながら、最小部Mは、点だけでなく、(例えば、長手方向に延びる)線に沿って、又は、領域内に存在しうる。
【0049】
図4及び
図5(それぞれの燃焼室100の長手方向において)見ると、燃焼室容積部は、ノズル部112の領域で先細りすることがさらに分かり、特に、燃焼室100の断面は、ノズル部直径Dまで先細りする。
【0050】
図5の例では、燃焼室容積部の減少を引き起こす第1部分121も設けられている。しかしながら、これらの第1部分121は、燃焼室100の長手方向において中央領域、すなわち、燃焼室本体120のヘッド端部(
図5の左)とノズル端部(
図5の右)との間に位置している。第1部分121を包囲する燃焼室本体120の残りの領域は、第2部分122の形態の基本体を表す。したがって、ノズル側領域と同様にヘッド側領域においても、従来の燃焼室の形状(本明細書では筒状の燃焼室の形状)を有する燃焼室部110と言うこともできる。
【0051】
図4及び
図5に示される少なくとも1つの第1部分121の配置は、単に例示的である。
図5では、第1部分121は1つのリングに沿って配置されているが、いくつかの第1部分121は、当然のことながら、燃焼室本体120内の2つのリングに沿って配置されうる。この場合、1つのリングに沿った第1部分121が、燃焼室本体120の周方向から見て別のリングの第1部分121に対して回転して配置されうる。同様に、第1部分は、例えば
図4及び
図5の場合のように、燃焼室本体120の長手方向に沿って延在しないことが考えられる。むしろ、第1部分121は、曲線に沿って延在しうる。これにより、例えば、回転成分を燃焼ガスの流れに含めることができ、又は、低減させることができる。
【0052】
また、
図4及び
図5に示すように、燃焼室本体120の外側表面は、第1部分121及び第2部分122の両方における内側表面の経路に追従することができる。これにより、燃焼室本体120の壁が実質的に同じ厚さを有することができる。代替的に、より多くの材料を使用して、燃焼室本体120の外側表面を滑らかで連続にしうる。
【0053】
最後に、本明細書に記載される実施形態のいずれにおいても、少なくとも1つの第1部分121の形態のへこみ部だけでなく、膨張部123(
図5にのみ示される)も存在し得る。また、膨張部123は、第2部分122を置換することもできる。このような1つ又は複数の膨張部によって、燃焼室本体120及び燃焼室部110の領域に同じマッハ数が存在させることができる。