(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】電解質組成物、電解質膜、電極、電池及び電解質組成物の評価方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0565 20100101AFI20230308BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230308BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20230308BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20230308BHJP
H01M 50/429 20210101ALI20230308BHJP
H01M 50/437 20210101ALI20230308BHJP
H01M 50/44 20210101ALI20230308BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01M10/052
H01M50/414
H01M50/417
H01M50/429
H01M50/437
H01M50/44
(21)【出願番号】P 2021156769
(22)【出願日】2021-09-27
(62)【分割の表示】P 2019526827の分割
【原出願日】2018-06-19
【審査請求日】2021-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2017125319
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 慎弥
(72)【発明者】
【氏名】荒川 元博
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/071798(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/147811(WO,A1)
【文献】特開2000-243133(JP,A)
【文献】特許第6952777(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/0565
H01M10/052
H01M4/62
H01M50/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属塩を含む電解質組成物
を含む電解質膜であって、
該組成物は、更にエチレンオキシド由来の構造単位を有するポリエーテル系重合体と、イオン解離促進剤とを含み、
該アルカリ金属塩濃度が2.5mol/kg以上4.6mol/kg以下であり、
前記イオン解離促進剤は、カーボネート化合物を含
み、
前記電解質膜が、セパレーターを含み、
前記セパレーターが、セルロース不織布、PET不織布、ガラス不織布、ポリオレフィン不織布、ポリオレフィン微多孔膜及びポリイミド多孔膜からなる群より選択される少なくとも1種からなることを特徴とする
電解質膜。
【請求項2】
前記アルカリ金属塩は、下記式(1);
MN(SO
2R
1)(SO
2R
2) (1)
(式中、Mはアルカリ金属イオンを表す。R
1、R
2は、同一又は異なって、フッ素原子又は炭素数1~3のフルオロアルキル基を表す。)で表されることを特徴とする請求項1に記載の
電解質膜。
【請求項3】
前記イオン解離促進剤は、エチレンカーボネートであることを特徴とする請求項1又は2に記載の
電解質膜。
【請求項4】
請求項
1~
3のいずれかに記載の電解質
膜を用いて構成されることを特徴とするアルカリ金属電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質組成物、電解質膜、電極、電池及び電解質組成物の評価方法に関する。より詳しくは、リチウムイオン電池等の電池用材料として好適に用いることができる電解質組成物、これを含有する電解質膜、電極、及び、これらを用いて構成される電池、並びに、電解質組成物の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりを背景に、石油や石炭等の化石燃料からのエネルギー資源の転換が進んでおり、それとともに電池の重要性が高まり、需要増大が見込まれるところである。中でも、繰り返し充放電を行うことができる二次電池は、携帯電話やノートパソコン等の電子機器だけでなく、自動車や航空機等、様々な分野においても使用がすすんでおり、各種二次電池や二次電池に用いられる材料について、研究、開発が行われている。特に、容量が大きく、軽量のリチウムイオン電池については、今後の利用の拡大が最も期待される二次電池であり、最も研究、開発が活発に行われている電池である。
【0003】
このような電池の研究、開発において、全固体電池に用いられる電解質のイオン伝導度を向上させる技術が開発されている。例えば、特許文献1、2には、リチウム塩と、エーテル系重合体とを含む電解質が開示されている。また、特許文献3には、所定の構造で表される構成単位を有する脂肪族ポリカーボネートと、電解質塩化合物としてリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドとを含有する高分子電解質材料が開示されている。さらに非特許文献1には、ポリエチレンオキシド、サクシノニトリル、及び、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含む組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭63-193954号公報
【文献】特開2006-318674号公報
【文献】特開2014-185195号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】M エチェベリ(M.Echeverri)外2名「マクロモレキュールズ(Macromolecules)」、(米国)2012年、第45巻、p6068-6077
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、種々の電解質及び電解質組成物が開発されている。しかし、従来の電解質及び電解質組成物は、電池に用いた際の充放電性能において充分ではなかった。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、従来の電解質組成物よりも、電池に用いた際の充放電性能に優れる電解質組成物を提供することを目的とする。本発明はまた、このような電解質組成物を用いた電解質膜、電極及び電池を提供することも目的とする。本発明は更に、電解質組成物の上記充放電性能を簡便に評価する評価方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、電解質組成物について種々検討したところ、アルカリ金属塩と特定の種類の重合体とイオン解離促進剤とを含み、アルカリ金属塩の濃度が1.8mol/kg以上である電解質組成物が、従来の電解質組成物よりも電池に用いた際の充放電性能に優れることを見いだした。また、従来、電解質組成物の性能評価において、電解質のイオン伝導度が指標として用いられてきた。これに対して、本発明者は、電解質組成物を2つのアルカリ金属で挟み、直流電流を印加したときの電圧上昇値と電流値から算出される抵抗値により表されるイオンの伝導性が、従来の指標であるイオン伝導度よりも電池の充放電性能との相関性が高いことを見出した。このように上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0009】
すなわち本発明は、アルカリ金属塩を含む電解質組成物であって、該組成物は、更にポリエーテル系重合体、(メタ)アクリル系重合体、ニトリル系重合体、フッ素系重合体、からなる群より選択される少なくとも1種の重合体と、イオン解離促進剤とを含み、上記アルカリ金属塩濃度が1.8mol/kg以上である電解質組成物である。
【0010】
上記アルカリ金属塩は、下記式(1);
MN(SO2R1)(SO2R2) (1)
(式中、Mはアルカリ金属イオンを表す。 R1、R2は、同一又は異なって、フッ素原子又は炭素数1~3のフルオロアルキル基を表す。)で表されることが好ましい。
【0011】
上記重合体は、エチレンオキシド由来の構造単位を有するポリエーテル系重合体を含むことが好ましい。
上記イオン解離促進剤は、ニトリル化合物及び/又はスルホニル化合物を含むことが好ましい。
【0012】
上記ニトリル化合物は、下記式(2);
【化1】
(式中、R
3は、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数6~10のアリール基を表す。)
で表されるジニトリル化合物であることが好ましい。
【0013】
上記イオン解離促進剤は、エチレンカーボネートであることが好ましい。
【0014】
本発明または、上記電解質組成物を含む電解質膜でもある。
上記電解質膜は、セパレーターを含むことが好ましい。
上記セパレーターは、セルロース不織布、PET不織布、ガラス不織布、ポリオレフィン不織布、ポリオレフィン微多孔膜及びポリイミド多孔膜からなる群より選択される少なくとも1種からなることが好ましい。
【0015】
本発明または、上記電解質組成物を含む電極でもある。
本発明は更に、上記電解質膜及び/又は電極を用いて構成されるアルカリ金属電池でもある。
【0016】
本発明は更に、アルカリ金属塩を含む電解質組成物を評価する方法であって、上記評価方法は、電解質組成物を2つのアルカリ金属で挟み、直流電流を印加したときの電圧上昇値と電流値から抵抗値を算出することを特徴とする電解質組成物の評価方法でもある。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電解質組成物は、上述の構成よりなり、従来の電解質組成物よりも、電池に用いた際の充放電性能に優れるため、リチウムイオン電池等の電池用材料等に好適に用いることができる。更に、本発明の電解質組成物の評価方法は、上述の構成よりなり、電解質組成物の上記充放電性能を簡便に評価することができ、電解質組成物の製造等において、好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例1~11及び比較例1~4で製造した電解質膜について、イオン伝導性を測定した結果を示した図である。
【
図2】実施例12、13及び比較例5で製造したコイン型リチウムイオン2次電池について、充放電試験を行った結果、得られた放電曲線を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態に該当する。
【0020】
[電解質組成物]
本発明の電解質組成物は、アルカリ金属塩とポリエーテル系重合体、(メタ)アクリル系重合体、ニトリル系重合体、フッ素系重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体と、イオン解離促進剤とを含み、該組成物1kg当たりのアルカリ金属塩濃度が1.8mol/kg以上である。本発明の電解質組成物は、このような特定の化合物を含むことと、アルカリ金属塩濃度が1.8mol/kg以上であることとの相乗効果により、優れたイオン伝導性を発揮することができる。このように電解質組成物におけるアルカリ金属塩濃度が高い場合には、アニオンが形成する伝導パスがアルカリ金属イオンの伝導性に大きく関与すると考えられるため、本発明は、組成物中のアルカリ金属塩濃度が1.8mol/kg以上であって、組成物がイオン解離促進剤を含み、組成物中でアルカリ金属イオンとアニオンとを解離させることに特に技術的意義を有する。
更に、従来、電解質組成物におけるアルカリ金属塩濃度が高いと、製膜性に劣ることが知られていたが、本発明の電解質組成物は、上記特定の構成であることにより製膜性にも優れる。
上記アルカリ金属塩濃度は、好ましくは2.0mol/kg以上であり、更に好ましくは2.2mol/kg以上であり、特に好ましくは2.5mol/kg以上である。また、上記アルカリ金属塩濃度は、好ましくは5.3mol/kg以下であり、より好ましくは5.0mol/kg以下であり、更に好ましくは4.6mol/kg以下である。
【0021】
上記電解質組成物におけるアルカリ金属塩の含有量は、電解質組成物100質量%に対して、51~99質量%であることが好ましい。より好ましくは52~98質量%であり、更に好ましくは55~95質量%である。
【0022】
上記電解質組成物におけるポリエーテル系重合体、(メタ)アクリル系重合体、ニトリル系重合体、フッ素系重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体の含有量は、特に制限されないが、電解質組成物100質量%に対して、0.5~45質量%であることが好ましい。より好ましくは1~45質量%であり、更に好ましくは3~40質量%であり、特に好ましくは5~30質量%である。なお、上記重合体が、2種以上の重合体を含む場合、重合体の含有量は、2種以上の重合体の合計の含有量を表す。
【0023】
上記電解質組成物におけるイオン解離促進剤の含有量は、特に制限されないが、電解質組成物100質量%に対して、0.5~45質量%であることが好ましい。これによりアルカリ金属塩濃度が高濃度であっても、より充分にイオンが解離し、イオン伝導性がより向上する。より好ましくは1~45質量%であり、更に好ましくは3~40質量%であり、特に好ましくは5~30質量%である。
【0024】
上記電解質組成物は、アルカリ金属塩、重合体、イオン解離促進剤以外のその他の成分を含んでいてもよく、その他の成分の含有量は、電解質組成物100質量%に対して、0~20質量%であることが好ましい。より好ましくは0~15質量%であり、更に好ましくは0~10質量%である。
【0025】
以下では、本発明の電解質成物に含まれる必須成分及び任意成分について更に説明する。
<アルカリ金属塩>
上記アルカリ金属塩は、特に制限されず、アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムが挙げられる。好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウムであり、より好ましくはリチウムである。
上記アルカリ金属塩としては、例えば、LiFSO3等のフルオロスルホン酸のアルカリ金属塩;LiCF3SO3等のトリフロロメタンスルホン酸のアルカリ金属塩;LiN(FSO2)2等のイミド系アルカリ金属塩;LiC(CF3SO2)3等のパーフルオロアルカンスルホニルメチドのアルカリ金属塩;LiPFa(CmF2m+1)6-a(0≦a≦6、1≦m≦2)等のフルオロリン酸塩;LiClO4等の過塩素酸アルカリ金属塩;LiBFb(CnF2n+1)4-b(0≦b≦4、1≦n≦2)等のフルオロホウ酸塩;LiBOB等のオキサラトボレートのアルカリ金属塩;リチウムテトラシアノボレート等のシアノホウ酸塩;LiAsF6、LiI、LiSbF6等のアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0026】
中でも好ましくは下記式(1);
MN(SO2R1)(SO2R2) (1)
(式中、Mはアルカリ金属イオンを表す。 R1、R2は、同一又は異なって、フッ素原子又は炭素数1~3のフルオロアルキル基を表す。)で表される化合物である。
上記Mにおけるアルカリ金属は上述のとおりである。
上記R1、R2における炭素数1~3のフルオロアルキル基は、炭素数1~3の炭化水素基が有する水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換されたものであればよい。具体的には、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。R1、R2として好ましくは、フッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基であり、より好ましくは、フッ素原子、トリフルオロメチル基であり、最も好ましくはフッ素原子である。
上記電解質組成物がLiN(FSO2)2を含む場合、LiN(FSO2)2の含有量は、電解質組成物100質量%に対して、51~98質量%であることが好ましい。より好ましくは55~95質量%であり、更に好ましくは60~90質量%である。
【0027】
<重合体>
上記重合体は、ポリエーテル系重合体、(メタ)アクリル系重合体、ニトリル系重合体、フッ素系重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体である。
上記(メタ)アクリル系重合体としては、特に制限されないが、例えば(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルのホモポリマー、これらの単量体やその他の単量体との共重合体等が挙げられる。
【0028】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2-(アセトアセトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ポリオキシアルキレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリアルキレングリコール、(メタ)アクリル酸フェノキシポリアルキレングリコール、(メタ)アクリル酸シアノエチル等が挙げられる。
【0029】
上記その他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、メチル(α-ヒドロキシメチル)アクリレート、エチル(α-ヒドロキシメチル)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類;マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、カルボキシル基末端カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸スルホエチル、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート等の酸性官能基含有重合性単量体類;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のビニル化合物類;ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン等の珪素含有重合性単量体類;(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフルオロペンチル、(メタ)アクリル酸ヘプタドデカフルオロデシル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル等のハロゲン含有(メタ)アクリル酸エステル類;
【0030】
(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸N,N’-ジメチルアミノエチル、N-メチル-N-ビニルホルムアミド、N-ビニルピリジン、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルピロリドン、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、アクリロニトリル等の窒素原子含有重合性単量体類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ビニロキシエチル(メタ)アクリレート、ビニロキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等の多官能性重合性単量体類;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸α-メチルグリシジル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有重合性単量体類;2-(メタ)アクロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクロイルイソシアネート、m-イソプロペニル-α,αジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアネート基含有重合性単量体類;4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン;
【0031】
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、n-ノニルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル等の単官能ビニルエーテル類;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸アリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等の単官能ビニル化合物類;等が挙げられる。
【0032】
上記ニトリル系重合体としては、特に制限されないが、例えばアクリロニトリルのホモポリマーや、その他の単量体との共重合体等が挙げられる。
その他の単量体は、上記(メタ)アクリル系重合体において述べたとおりである。
上記ニトリル系重合体は、アクリロニトリル由来の構造単位の割合が、全構造単位100質量%に対して30~100質量%であることが好ましい。より好ましくは50~100質量%であり、更に好ましくは70~100質量%である。
【0033】
フッ素系重合体としては、特に制限されないが、例えばフッ化ビニリデン(VdF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)等のホモポリマー、これらの単量体やその他の単量体との共重合体等が挙げられる。
その他の単量体は、上記(メタ)アクリル系重合体において述べたものの他、上記(メタ)アクリル酸エステル、エチレン、プロピレン、ビニルエーテル、ビニルエステル等が挙げられる。
上記フッ素系重合体は、上記VdF、HFP、TFE由来の構造単位の合計の割合が、全構造単位100質量%に対して30~100質量%であることが好ましい。より好ましくは50~100質量%であり、更に好ましくは70~100質量%であり、特に好ましくは90~100質量%である。
【0034】
上記ポリエーテル系重合体は、アルキレンオキシド由来の構造単位を有するものであれば特に制限されないが、エチレンオキシド由来の構造単位(以下、構造単位(a)ともいう。)を有することが好ましい。
上記ポリエーテル系重合体は、更に下記式(3);
【0035】
【0036】
(式中、R4は、同一又は異なって、炭素数1~3の炭化水素基を表す。)で表される構造単位(b)及び/又は下記式(4);
【0037】
【0038】
(式中、R5は、同一又は異なって、炭素数1~8の直鎖又は分岐鎖を有する炭化水素基を表す。R6は、同一又は異なって、官能基を有していてもよい、炭素数1~12の炭化水素基を表す。nは、0~12の整数を表す。mは0又は1である。)で表される構造単位(c)を有していてもよい。
ポリエーテル系重合体は、好ましくは上記構造単位(a)及び構造単位(b)を有するものである。
ポリエーテル系重合体に、エーテル結合を有する側鎖官能基を導入することで、ポリマーの運動性が向上し、イオン伝導性、特にLiイオンの伝導性を向上させることができる。
【0039】
上記ポリエーテル系重合体における構造単位(a)の割合は、全構造単位100モル%に対して40~100モル%であることが好ましい。より好ましくは70~100モル%であり、更に好ましくは90~100モル%である。
【0040】
上記ポリエーテル系重合体における構造単位(b)の割合は、全構造単位100モル%に対して0~30モル%であることが好ましい。より好ましくは0~20モル%であり、更に好ましくは0~10モル%である。
【0041】
上記ポリエーテル系重合体における構造単位(c)の割合は、全構造単位100モル%に対して0~30モル%であることが好ましい。より好ましくは0~20モル%であり、更に好ましくは0~10モル%である。
【0042】
上記式(3)におけるR4は、同一又は異なって、炭素数1~3の炭化水素基である。炭素数1~3の炭化水素基としては、メチル基、エチル基等が挙げられ、R4として好ましくはエチル基である。
ここで、「同一又は異なって」とは、上記ポリエーテル系重合体が式(3)で表される構造単位を複数有する場合に、それぞれのR4が、同一であっても異なっていてもよいことを意味する。
【0043】
上記ポリエーテル系重合体に、式(3)で表される構造単位を導入するための原料単量体としては、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられる。これらの中でも、ブチレンオキシドが好ましい。
【0044】
上記式(4)におけるR5は、同一又は異なって、炭素数1~8の直鎖又は分岐鎖を有する炭化水素基である。R5の炭素数として、好ましくは1~6であり、より好ましくは1~4である。炭素数1~8の直鎖又は分岐鎖を有する炭化水素基としては、メチレン(-CH2-)、エチレン(-CH2CH2-)、トリメチレン(-CH2CH2CH2-)、テトラメチレン(-CH2CH2CH2CH2-)等の、直鎖のアルキレン基;エチリデン[-CH(CH3)-]、プロピレン[-CH(CH3)CH2-]、プロピリデン[-CH(CH2CH3)-]、イソプロピリデン[-C(CH3)2-]、ブチレン[-CH(CH2CH3)CH2-]、イソブチレン[-C(CH3)2CH2-]、ブチリデン[-CH(CH2CH2CH3)-]、イソブチリデン[-CH(CH(CH3)2)-]等の分岐鎖のアルキレン基等が挙げられる。
これらの中でも、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン等の直鎖アルキレン基、プロピレン、プロピリデン、ブチレン、ブチリデン等の分岐鎖アルキレン基が高いイオン伝導度を示すという点で好ましい。より好ましくは、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、プロピレン、プロピリデン、ブチレンであり、更に好ましくは、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンである。
上記式(4)において、R5は1種であっても2種以上であってもよい。R5が2種以上である場合、-(R5-O)-で表されるオキシアルキレン基の付加形態は、ブロック状、ランダム状等のいずれの形態であってもよい。
【0045】
上記式(4)におけるR5Oで表される基の平均付加モル数を表すnは、0~12の整数であり、R5Oで表されるオキシアルキレン基の種類によっても異なるが、1~8の範囲であることが好ましい。上記ポリエーテル系重合体は、側鎖にオキシアルキレン基を有することにより、イオン伝導性がより優れたものとなる。nは、より好ましくは1~6であり、更に好ましくは1~4である。
式(4)におけるmは、0又は1であるが、nが0のとき、mとしては1が好ましい。
【0046】
上記式(4)におけるR6は、同一又は異なって、官能基を有していてもよい、炭素数1~12の炭化水素基である。上記炭化水素基としては、特に制限されないが、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基等が挙げられる。
上記炭化水素基がアリール基の場合、炭素数としては、6~12であることが好ましく、より好ましくは、6~8である。上記炭化水素基がアリール基以外の場合、炭素数としては、より好ましくは1~8であり、更に好ましくは1~4である。
炭化水素基としてはアルキル基が好ましく、中でもメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、n-ヘキシル、n-オクチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルがより好ましい。更に好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチルである。
【0047】
上記ポリエーテル系重合体に、上記式(4)で表される構造単位を導入するための原料単量体としては、メトキシエチルグリシジルエーエル、プロポキシエチルグリシジルエーテル、ブトキシエチルグシリジルエーテル、メトキシエトキシエチルグリシジルエーテル、プロポキシエトキシエチルグリシジルエーテル、ブトキシエトキシエチルグシリジルエーテル、トリエチレングリコールメチルグリシジルエーテル、トリエチレングリコールプロピルグリシジルエーテル、トリエチレングリコールブチルグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールメチルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0048】
上記ポリエーテル系重合体は、上記構造単位(a)、(b)、(c)以外のその他の構造単位を有していてもよい。その他の構造単位としては、特に制限されないが、例えば、側鎖に架橋性官能基を有する構造単位が挙げられる。
上記ポリエーテル系重合体が側鎖に架橋性官能基を有する構造単位を有する場合には、セパレーターを使用せずに、電解質膜を形成することが容易になる。
上記ポリエーテル系重合体に、側鎖に架橋性官能基を有する構造単位を導入するための原料単量体としては、エポキシブテン、3,4-エポキシ-1-ペンテン、1,2-エポキシ-5,9-シクロドデカジエン、3,4-エポキシ-1-ビニルシクロへキセン、1,2-エポキシ-5-シクロオクテン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ソルビン酸グリシジル、グリシジル-4-ヘキサノエート、又は、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、4-ビニルシクロヘキシルグリシジルエーテル、α-テルペニルグリシジルエーテル、シクロヘキセニルメチルグリシジルエーテル、4-ビニルベンジルグリシジルエーテル、4-アリルベンジルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、エチレングリコールアリルグリシジルエーテル、エチレングリコールビニルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールアリルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールビニルグリシジルエーテル、トリエチレングリコールアリルグリシジルエーテル、トリエチレングリコールビニルグリシジルエーテル、オリゴエチレングリコールアリルグリシジルエーテル、オリゴエチレングリコールビニルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、エポキシブテン、アリルグリシジルエーテルが好ましく、アリルグリシジルエーテルがより好ましい。
【0049】
上記ポリエーテル系重合体は、ポリエーテル系重合体を形成する全構造単位の総量100モル%に対して、上記その他の構造単位の割合が0~10モル%であることが好ましい。
ポリエーテル系重合体が側鎖に架橋性官能基を有する構造単位を有する場合、その割合が、10モル%以下であれば、電解質組成物を用いて膜を形成する際に、膜が固くなることをより充分に抑制することができ、イオン伝導性に優れることとなる。
ポリエーテル系重合体における上記その他の構造単位の割合として、より好ましくは0.1~7モル%、更に好ましくは0.5~5モル%である。
【0050】
上記ポリエーテル系重合体は、重量平均分子量が1万~30万であることが好ましい。重量平均分子量が1万以上であれば、電解質組成物を用いて膜を形成する際の製膜性により優れることとなる。また、30万以下であれば、膜が固くなることをより充分に抑制することができ、イオン伝導性に優れることとなる。
より好ましくは3万~20万であり、更に好ましくは5万~15万である。
上記重量平均分子量は、後述する実施例と同様の方法により測定することができる。
【0051】
<イオン解離促進剤>
上記イオン解離促進剤は、アルカリ金属塩のイオンへの解離を促進するものであれば特に制限されないが、ヘテロ元素を有する化合物が好ましい。
上記ヘテロ元素を有する化合物としては、スルホニル化合物、ニトリル化合物、カーボネート化合物、カルボン酸無水物、硫酸エステル化合物、チオエーテル化合物、亜硫酸エステル化合物、含窒素環状化合物等が挙げられる。
これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でもスルホニル化合物、ニトリル化合物、カーボネート化合物が好ましい。上記イオン解離促進剤がスルホニル化合物、ニトリル化合物及びカーボネート化合物のいずれかを含むことにより、アルカリ金属塩のイオンへの解離がより促進され、組成物のイオン伝導性がより向上する。
イオン解離促進剤としてより好ましくはニトリル化合物又はカーボネート化合物である。
【0052】
スルホニル化合物としては、例えば、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n-プロピルメチルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、n-ブチルメチルスルホン、tert-ブチルメチルスルホン等のスルホン類;スルホラン(テトラメチレンスルホン)、2-メチルスルホラン、3-メチルスルホラン、2,4-ジメチルスルホラン等のスルホラン類;スルトン、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン等のスルトン類;ブスルファン、スルホレン等が挙げられる。スルホニル化合物として好ましくはスルホラン類であり、この中でもスルホランが好ましい。
【0053】
ニトリル化合物としては、例えば、モノニトリル化合物やジニトリル化合物が挙げられる。
モノニトリル化合物としては、例えば、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ペンタンニトリル、ヘキサンニトリル、ヘプタンニトリル、オクタンニトリル、ペラルゴノニトリル、デカンニトリル、ウンデカンニトリル、ドデカンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトノニトリル、3-メチルクロトノニトリル、2-メチル-2-ブテン二トリル、2-ペンテンニトリル、2-メチル-2-ペンテンニトリル、3-メチル-2-ペンテンニトリル及び2-ヘキセンニトリル等が挙げられる。
【0054】
ジニトリル化合物としては、例えば、マロノニトリル、スクシノニトリル(サクシノニトリル)、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、メチルマロノニトリル、エチルマロノニトリル、イソプロピルマロノニトリル、tert-ブチルマロノニトリル、メチルスクシノニトリル、2,2-ジメチルスクシノニトリル、2,3-ジメチルスクシノニトリル、2,3,3-トリメチルスクシノニトリル、2,2,3,3-テトラメチルスクシノニトリル、2,3-ジエチル-2,3-ジメチルスクシノニトリル、2,2-ジエチル-3,3-ジメチルスクシノニトリル、ビシクロヘキシル-1,1-ジカルボニトリル、ビシクロヘキシル-2,2-ジカルボニトリル、ビシクロヘキシル-3,3-ジカルボニトリル、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジカルボニトリル、2,3-ジイソブチル-2,3-ジメチルスクシノニトリル、2,2-ジイソブチル-3,3-ジメチルスクシノニトリル、2-メチルグルタロニトリル、2,3-ジメチルグルタロニトリル、2,4-ジメチルグルタロニトリル、2,2,3,3-テトラメチルグルタロニトリル、2,2,4,4-テトラメチルグルタロニトリル、2,2,3,4-テトラメチルグルタロニトリル、2,3,3,4-テトラメチルグルタロニトリル、マレオニトリル、フマロニトリル、1,4-ジシアノペンタン、2,6-ジシアノヘプタン、2,7-ジシアノオクタン、2,8-ジシアノノナン、1,6-ジシアノデカン、1,2-ジジアノベンゼン、1,3-ジシアノベンゼン、1,4-ジシアノベンゼン、3,3’-(エチレンジオキシ)ジプロピオニトリル、3,3’-(エチレンジチオ)ジプロピオニトリル及び3,9-ビス(2-シアノエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
【0055】
ニトリル化合物として好ましくは、ジニトリル化合物であり、より好ましくは下記式(2);
【0056】
【0057】
(式中、R3は、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数6~10のアリール基を表す。)
で表される化合物である。
上記R3としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。炭素数1~6のアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル等が挙げられる。
ジニトリル化合物として好ましくは、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリルであり、より好ましくはマロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリルである。
【0058】
カーボネート化合物としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、メチルビニレンカーボネート(MVC)、エチルビニレンカーボネート(EVC)等の環状カーボネート;フルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等のフッ素化環状カーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状カーボネートが挙げられる。これらの中でもエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが好ましく、より好ましくはエチレンカーボネートである。
【0059】
カルボン酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、フェニルコハク酸無水物等が挙げられる。
【0060】
硫酸エステル化合物としては、例えば、メタンスルホン酸メチル、トリメチレングリコール硫酸エステル等が挙げられる。
チオエーテル化合物としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド等が挙げられる。
亜硫酸エステル化合物としては、例えば、エチレンサルファイト等が挙げられる。
【0061】
含窒素環状化合物としては、例えば、1-メチル-2-ピロリジノン、1-メチル-2-ピペリドン、3-メチル-2-オキサゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルスクシンイミド等が挙げられる。
【0062】
イオン解離促進剤としては、より好ましくはマロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、スルホランであり、更に好ましくはマロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートであり、最も好ましくはスクシノニトリル、エチレンカーボネートである。
【0063】
<その他の成分>
本発明の電解質組成物は、アルカリ金属塩、重合体、イオン解離促進剤以外のその他の成分を含んでいてもよく、その他の成分としては、例えば、ヘプタン、オクタン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素化合物;重合体の製造時に用いられる重合禁止剤、連鎖移動剤、溶媒や未反応の反応原料、反応原料が分解してできる副生成物;等が挙げられる。
【0064】
[電池用材料]
本発明の電解質組成物は、電解質膜、電極等の各種電池用材料として好適に用いることができる。
このように、本発明の電解質組成物を用いる電池用材料もまた、本発明の1つである。
【0065】
<電解質膜>
本発明の電解質組成物は、電池用の電解質膜の材料として好適に用いることができる。本発明の電解質組成物を含む電解質膜もまた本発明の1つである。
上記電解質膜は、セパレーター(以下、支持体ともいう。)を含んでいてもよい。これにより電解質膜の機械的強度を向上させることができる。
電解質膜がセパレーターを含む形態もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0066】
上記セパレーターとしては、特に制限されないが、織布、不織布、(微)多孔質膜及びガラス成形体等が挙げられる。
上記織布及び不織布としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリパラフェニレンテレフタルアミド等のアラミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂(セルロース系繊維)等;アルミナ繊維、セラミックス繊維、ガラス繊維等からなるものが挙げられる。
上記(微)多孔質膜としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、四フッ化エチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体等のフッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド系樹脂、ポリイミド等からなるものが挙げられる。
上記ガラス成形体としては、例えば、ガラスクロス等が挙げられる。
これらのセパレーターとしては、更に親水性を向上させるために、界面活性剤を付与する方法、発煙硫酸、クロルスルホン酸等の化学薬品によるスルホン化、フッ素化、グラフト化処理等の方法、又は、コロナ放電やプラズマ放電等による方法によって親水化処理したものを用いても良い。
上記セパレーターとしては、セルロース不織布、PET不織布、ガラス不織布、ポリオレフィン不織布、ポリオレフィン微多孔膜及びポリイミド多孔膜からなる群より選択される少なくとも1種からなるものが好ましい。より好ましくはセルロース不織布、ポリオレフィン微多孔膜である。
【0067】
本発明の電解質組成物により電解質膜を形成する場合、膜厚(上記支持体も含めた厚さ)が5~300μmとなるように形成することが好ましい。より好ましくは、10~250μmであり、更に好ましくは、15~200μmである。
また、本発明の電解質膜における上記支持体を含めた膜厚(α)と、支持体の膜厚(β)の比率(α/β)が、1.1~20となるように形成することが好ましい。支持体を含む電解質の膜厚が、支持体のみの厚みと同じ(=電解質成分が支持体中に全て吸収され、電解質成分が表面に出てこない状態)であると、電解質としての性能を充分に発揮できないおそれがある。また、支持体を含む電解質の膜厚が、支持体のみの厚みの20倍を超えると、イオンの伝導距離が長くなり、十分な電池性能が得られない恐れがある。本発明の電解質膜における上記支持体を含めた膜厚(α)と、支持体の膜厚(β)の比率(α/β)は、より好ましくは、1.1~10であり、更に好ましくは、1.1~8である。
【0068】
上記電解質膜の製造方法は特に制限されないが、電解質膜が支持体を含む場合には、上記電解質組成物を含む電解質溶液を支持体に塗布又は含浸させ、乾燥させることが好ましい。
上記乾燥方法は、特に制限されないが、加熱乾燥及び/又は減圧乾燥を行うことが好ましい。
【0069】
乾燥時の温度は使用する溶媒の沸点に応じて設定する必要があるが、乾燥温度は100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。乾燥温度が100℃以下であればアルカリ金属塩や重合体の分解が生じることをより充分に抑制することができる。
【0070】
上記電解質膜が支持体を含まない場合には、上記電解質組成物を含む電解質溶液をテフロン(登録商標)シート等のシートに塗布し、乾燥させることが好ましい。乾燥方法は上述のとおりである。
上記電解質組成物に含まれる重合体が架橋性官能基を有する場合等には、乾燥後、架橋反応を行うことが好ましい。
上記架橋反応は、架橋性官能基の種類等にもよるが、例えば、熱、光等により行うことができる。好ましくは光により重合反応を行うことである。
【0071】
<電極>
本発明の電解質組成物は、電池用の電極の材料として好適に用いることができる。
本発明の電解質組成物を含む電極もまた本発明の1つである。本発明の電解質組成物は、正極、負極のいずれに用いてもよい。
【0072】
正極は、正極活物質、導電助剤、結着剤および分散用溶媒等を含む正極活物質組成物が正極集電体に担持されているものであり、通常、シート状に成形されている。
【0073】
正極の製造方法としては、例えば、正極集電体に正極活物質組成物をドクターブレード法等で塗工したり、正極集電体を正極活物質組成物に浸漬した後に、乾燥する方法;正極活物質組成物を混練成形し乾燥して得たシートを正極集電体に導電性接着剤を介して接合し、プレス、乾燥する方法;液状潤滑剤を添加した正極活物質組成物を正極集電体上に塗布または流延して、所望の形状に成形した後、液状潤滑剤を除去し、次いで、一軸または多軸方向に延伸する方法;等が挙げられる。
【0074】
正極集電体の材料としては特に限定されず、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、SUS(ステンレス鋼)、チタン等の導電性金属が使用できる。中でも、薄膜に加工し易く、安価であるという観点からは、アルミニウムが好ましい。
【0075】
正極活物質としては、イオンを吸蔵・放出可能であれば良く、従来公知の正極活物質が用いられる。具体的には、MCoO2、MNiO2、MMnO2、MNi1-x-yCoxMnyO2やMNi1-x-yCoxAlyO2(0≦x≦1、0≦y≦1)で表される三元系酸化物等の遷移金属酸化物、MxNiyMn(2-y)O4(0.9≦x≦1.1、0<y<1)で表されるニッケルマンガン酸、MAPO4(A=Fe、Mn、Ni、Co)等のオリビン構造を有する化合物、遷移金属を複数取り入れた固溶材料(電気化学的に不活性な層状のM2MnO3と、電気化学的に活性な層状のMM”O([M”=Co、Ni等の遷移金属]との固溶体)(Mはアルカリ金属イオンを表す)等が正極活物質として例示できる。これらの正極活物質は、1種を単独で使用してもよく、または、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0076】
導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、金属粉末材料、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、気相法炭素繊維等が挙げられる。
【0077】
結着剤としては、ポリビニリデンフロライド、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;スチレン-ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム等の合成ゴム;ポリアミドイミド等のポリアミド系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ(メタ)アクリル系樹脂;ポリアクリル酸;カルボキシメチルセルロース等のセルロース系樹脂;等が挙げられる。これらの結着剤は単独で使用してもよく、複数種を混合して使用してもよい。また、これらの結着剤は、使用の際に溶媒に溶けた状態であっても、溶媒に分散した状態であっても構わない。
【0078】
導電助剤および結着剤の配合量は、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性等を考慮して適宜調整することができる。
【0079】
正極を製造するに際して、正極活物質組成物に用いられる溶媒としては、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、エタノール、酢酸エチル、水等が挙げられる。
これらの溶媒は組み合わせて使用してもよい。溶媒の使用量は特に限定されず、製造方法や、使用する材料に応じて適宜決定すればよい。
【0080】
負極活物質としては、電池で使用される従来公知の負極活物質を用いることができ、イオンを吸蔵・放出可能なものであればよい。具体的には、アルカリ金属、アルカリ金属-アルミニウム合金等の金属合金、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛材料、石炭、石油ピッチから作られるメソフェーズ焼成体、難黒鉛化性炭素等の炭素材料、Si、Si合金、SiO等のSi系負極材料、Sn合金等のSn系負極材料を用いることができる。
【0081】
負極の製造方法としては、正極の製造方法と同様の方法を採用することができる。また、負極の製造時に使用する導電助剤、結着剤、材料分散用の溶媒も、正極で用いられるものと同様のものが用いられる。
【0082】
本発明の電解質組成物は、バインダーとして正極又は負極材料スラリーに混合したうえで基板上に塗布しても、正極又は負極材料スラリーを基板上に塗布し、乾燥させたうえで、本発明の電解質組成物を含む電解質溶液をさらに塗布して乾燥させてもよい。
【0083】
上記電解質としては、本発明の電解質組成物の他、高分子固体電解質、無機固体電解質、溶融塩等を併用することができる。これらの中でも、本発明の電解質組成物を用いることが好ましい。
【0084】
<電池>
本発明は、本発明の電解質膜及び/又は電極を用いて構成される電池でもある。
本発明の電池は、セパレーターとして、上記本発明の電解質膜を備えることが好ましい。
より詳細には、正極と負極とを備えた二次電池であり、正極と負極との間には電解質膜が設けられ、正極、負極等と共に外装ケースに収容されていることが好ましい。
【0085】
本発明に係る電池の形状は特に限定されず、円筒型、角型、ラミネート型、コイン型、大型等、電池の形状として従来公知の形状はいずれも使用することができる。また、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に搭載するための高電圧電源(数10V~数100V)として使用する場合には、個々の電池を直列に接続して構成される電池モジュールとすることもできる。
【0086】
上記電池としては、アルカリ金属電池であることが好ましく、本発明の電解質膜及び/又は電極を用いて構成されるアルカリ金属電池もまた、本発明の1つである。また、上述の本発明の電解質組成物を含む電解質膜又は電極が、アルカリ金属電池用電解質膜又は電極であることは、本発明の好ましい実施形態の1つである。
上記電池としては、二次電池であることがより好ましく、上記電池が、リチウムイオン二次電池である形態は、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0087】
[電解質組成物の評価方法]
本発明はまた、アルカリ金属塩を含む電解質組成物を評価する方法であって、上記評価方法は、電解質組成物を2つのアルカリ金属で挟み、直流電流を印加したときの電圧上昇値と電流値から抵抗値を算出する電解質組成物の評価方法でもある。
上記評価方法では、アルカリ金属イオンが一方のアルカリ金属から電解質組成物を介してもう一方のアルカリ金属まで伝導する、全過程におけるイオン伝導性を、直流イオン伝導度として求めることができる。よって、本発明の評価方法により、上記電解質組成物をアルカリ金属電池等に用いた際の電池性能を簡便に評価することができる。すなわち、上記評価方法は、アルカリ金属電池用電解質組成物の評価方法であることも本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0088】
本発明の評価方法の対象となる電解質組成物は、アルカリ金属塩を含むものであれば、特に制限されない。
上記アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムが挙げられ、好ましくは、リチウム、ナトリウムであり、より好ましくはリチウムである。電解質組成物としては、本発明の電解質組成物の他、通常電池に用いられる電解質組成物を評価の対象とすることができる。
上記電解質組成物の形態は、上記アルカリ金属で挟むことができれば、特に制限されないが、電解質組成物のみ、又は、電解質組成物と支持体とにより電解質膜等の電解質組成物を含む測定検体を形成することが好ましい。
測定検体として好ましくは電解質膜である。
上記電解質膜の形成に用いることができる支持体としては、特に制限されないが、例えば、上述のセパレーターが挙げられる。電解質膜の製造方法は特に制限されないが、例えば上述の方法が挙げられる。
【0089】
本発明の評価方法におけるイオンの伝導性は、具体的には、測定検体の厚さをT(cm)、アルカリ金属で挟む測定検体の面積をA(cm2)、印加する直流電流をI(A)、印加時間0分からt分後の電圧の差を電圧上昇値ΔE(V)としたときの直流イオン伝導度ΔσDC(S/cm)として、下記式(6);
ΔσDC=T/A/(ΔE/I) (6)
により求めることができる。
【実施例】
【0090】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を、「Mw」は「重量平均分子量」を意味するものとする。また、「リットル」を単に「L」、「モル/リットル」を「M」と記すことがある。
【0091】
<重合平均分子量の測定条件>
GPC装置(東ソー社製、製品名;HLC-8320 GPC、カラム:TSKgel G5000PW、TSKgel G4000PW、TSKgel G3000PW、TSKgel G2500PW(いずれも東ソー社製)、溶離液:「アセトニトリル/0.08M酢酸ナトリウム水溶液(体積比:50/50)」の混合液)により、ポリエチレンオキシドの標準分子量サンプルを用いて検量線を作成した。そして、反応後に得られた重合反応液(ポリマーを含む)を所定の溶媒に溶解させて測定し、Mwを求めた。
【0092】
<合成例1>ポリエチレンオキシド重合体(A)の合成
攪拌機、添加口および温度センサーを備えた1Lオートクレーブ反応器を窒素により置換後、モレキュラーシーブで脱水処理を施したトルエン335.3部と、t-ブトキシカリウム(1.0Mテトラヒドロフラン溶液)1.61部とを順次投入し、反応器内の圧力がゲージ圧で0.3MPaになるまで窒素で加圧した。
オイルバスで反応器の内温を95℃まで昇温した後、エチレンオキシドの供給を1.12部/分の供給速度で開始し、重合熱による内温上昇および内圧上昇を監視・制御しながら適宜供給速度を調整し、エチレンオキシド223.6部を100℃±5℃で350分かけて連続供給した。供給終了後、さらに100℃±5℃で2時間保持して熟成させた。熟成終了後、減圧脱揮によって反応混合物から溶媒を留去し、Mw11万のポリエチレンオキシド重合体(A)を得た。
【0093】
<合成例2>ポリアルキレンオキシド共重合体(B)の合成
攪拌機、添加口および温度センサーを備えた1Lオートクレーブ反応器を窒素により置換後、モレキュラーシーブで脱水処理を施したトルエン315部と、t-ブトキシカリウム(1.0Mテトラヒドロフラン溶液)0.97部とを順次投入し、反応器内の圧力がゲージ圧で0.3MPaになるまで窒素で加圧した。
オイルバスで反応器の内温を90℃まで昇温した後、エチレンオキシドの供給を1.16部/分の供給速度で開始し、40分間定量的に供給した。エチレンオキシドの供給開始から20分後、モレキュラーシーブにより脱水処理を施したブチレンオキシドの供給を0.26部/分の供給速度で開始し、20分間定量的に供給した。エチレンオキシドの供給開始から40分後、エチレンオキシドについては0.77部/分、ブチレンオキシドについては0.17部/分の供給速度で、それぞれ更に1時間定量的に供給した。エチレンオキシドの供給開始から1時間40分後、エチレンオキシドについては0.58部/分、ブチレンオキシドについては0.13部/分の供給速度で、それぞれ更に1時間20分定量的に供給した。エチレンオキシドの供給開始から3時間後、エチレンオキシドについて0.39部/分の供給速度で、更に2時間定量的に供給した。エチレンオキシドの供給開始から5時間後、エチレンオキシドについて0.31部/分の供給速度で、更に2.5時間定量的に供給した(エチレンオキシドの供給量:計232.1部、ブチレンオキシドの供給量:計25.8部)。供給中、重合熱による内温上昇および内圧上昇を監視・制御しながら100℃±5℃で反応を行った。供給終了後、さらに100℃±5℃で2時間保持して熟成させた。熟成終了後、減圧脱揮によって反応混合物から溶媒を留去し、Mw11.5万のポリアルキレンオキシド共重合体(B)を得た。
【0094】
<合成例3>架橋基含有ポリアルキレンオキシド共重合体(C)の合成
攪拌機、添加口および温度センサーを備えた1Lオートクレーブ反応器を窒素により置換後、モレキュラーシーブで脱水処理を施したトルエン286.5部と、t-ブトキシカリウム(1.0Mテトラヒドロフラン溶液)0.85部とを順次投入し、反応器内の圧力がゲージ圧で0.3MPaになるまで窒素で加圧した。
オイルバスで反応器の内温を90℃まで昇温した後、エチレンオキシドの供給を0.85部/分の供給速度で開始し、エチレンオキシドの供給開始から30分経過してから、単量体混合物(重量比:ブチレンオキシド/アリルグリシジルエーテル=8/3)を0.131部/分の供給速度で供給を開始した。更にエチレンオキシドの供給開始2.5時間経過後、供給速度をそれぞれ0.43部/分、0.053部/分に低下させ更に5時間定量的に供給した(エチレンオキシドの供給量:計255部、単量体混合物の供給量:計31.5部)。供給中、重合熱による内温上昇および内圧上昇を監視・制御しながら100℃±5℃で反応を行った。供給終了後、さらに100℃±5℃で2時間保持して熟成させた。
熟成終了後、減圧脱揮によって反応混合物から溶媒を留去し、Mw10.4万の架橋基含有ポリアルキレンオキシド共重合体(C)を得た。
【0095】
<実施例1>電解質膜(1)の製造
電解質塩として、0.8gのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(以下、LiFSIと記す)(株式会社日本触媒製)と、0.1gの重合体(A)と、0.1gのサクシノニトリル(LBGグレード、キシダ化学株式会社製)をPPバイアル(10mL)に計量し、1.6mLのアセトニトリル(LBGグレード、キシダ化学株式会社製)を混合した後、恒温槽を用いて70℃で30分間加熱溶解させて、所望の溶液(電解質溶液)を得た。作製した電解質溶液を、テフロン(登録商標)シート上に設置したセルロースセパレーター(TF4425、ニッポン高度紙工業株式会社製、厚み25μm)に均一に塗布した後、熱風乾燥機を用いて、40℃で1時間の加熱乾燥後、減圧乾燥機を用いて、絶対圧で真空度-0.1MPa、70℃で2時間の減圧乾燥を行うことで、膜厚55μmの電解質組成物とセパレーターとの複合電解質膜を得た。
【0096】
<実施例2>電解質膜(2)の製造
配合比を0.8gのLiFSIと、0.1gの重合体(A)と、0.1gのスルホラン(LBGグレード、キシダ化学株式会社製)と、1.6mLのアセトニトリルとしたこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚52μmの複合電解質膜を得た。
【0097】
<実施例3>電解質膜(3)の製造
配合比を0.8gのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(以下、LiTFSIと記す)(LGBグレード、キシダ化学株式会社製)と、0.1gの重合体(A)と、0.1gのサクシノニトリルと、1.0mLのアセトニトリルとしたこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚71μmの複合電解質膜を得た。
【0098】
<実施例4>電解質膜(4)の製造
配合比を0.6gのLiFSIと、0.3gの重合体(A)と、0.1gのサクシノニトリルと、1.6mLのアセトニトリルとしたこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚61μmの複合電解質膜を得た。
【0099】
<実施例5>電解質膜(5)の製造
配合比を0.6gのLiFSIと、0.2gの重合体(A)と、0.2gのサクシノニトリルと、1.6mLのアセトニトリルとしたこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚50μmの複合電解質膜を得た。
【0100】
<実施例6>電解質膜(6)の製造
配合比を0.6gのLiFSIと、0.2gの重合体(B)と、0.2gのサクシノニトリルと、1.0mLのアセトニトリルとしたこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚50μmの複合電解質膜を得た。
【0101】
<実施例7>電解質膜(7)の製造
0.6gのLiFSIと、0.3gの重合体(C)と、0.1gのサクシノニトリルと、0.015gの重合開始剤(ESACURE KTO46、DKSHジャパン株式会社製)をPPバイアル(10mL)に計量し、1.6mLのアセトニトリルを混合した後、恒温槽を用いて、70℃で30分間加熱溶解させて、所望の電解質溶液を得た。作製した電解質溶液を、テフロン(登録商標)シート上に塗布した後、熱風乾燥機を用いて、40℃で30分間の加熱乾燥後、減圧乾燥機を用いて、絶対圧で真空度-0.1MPa、40℃で24時間の減圧乾燥を行うことで、溶媒を除去した。乾燥後の膜上面にテフロン(登録商標)シートを被せた後、超高圧水銀ランプ(4.2mW/cm2(365nm)テフロン(登録商標)シート透過後)を用いて、両面から各々60秒間UV光を照射して光重合反応を行い、膜厚110μmの光硬化膜を得た。
【0102】
<実施例8>電解質膜(8)の製造
配合比を0.8gのLiFSIと、0.1gの重合体(A)と、0.1gのエチレンカーボネート(LBGグレード、キシダ化学株式会社製)と、1.6mLのアセトニトリルとしたこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚47μmの複合電解質膜を得た。
【0103】
<実施例9>電解質膜(9)の製造
配合比を0.7gのLiFSIと、0.2gの重合体(A)と、0.1gのエチレンカーボネートと、1.6mLのアセトニトリルとしたこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚61μmの複合電解質膜を得た。
【0104】
<実施例10>電解質膜(10)の製造
配合比を0.7gのLiFSIと、0.15gの重合体(A)と、0.15gのエチレンカーボネートと、1.6mLのアセトニトリルとしたこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚60μmの複合電解質膜を得た。
【0105】
<実施例11>電解質膜(11)の製造
配合比を0.6gのLiFSIと、0.2gの重合体(A)と、0.2gのエチレンカーボネートと、1.4mLのアセトニトリルとしたこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚55μmの複合電解質膜を得た。
【0106】
<比較例1>比較電解質膜(1)の製造
配合比を0.5gのLiTFSIと、0.25gの重合体(A)と、0.25gのサクシノニトリルと、1.0mLのアセトニトリルとしたこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚61μmの複合電解質膜を得た。
【0107】
<比較例2>比較電解質膜(2)の製造
配合比を0.6gのLiFSIと、0.4gの重合体(A)と、1.6mLのアセトニトリルとしたこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚69μmの複合電解質膜を得た。
【0108】
<比較例3>比較電解質膜(3)の製造
配合比を0.2gのLiTFSIと、0.8gの重合体(A)と、1.6mLのアセトニトリルとしたこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚38μmの複合電解質膜を得た。
【0109】
<比較例4>比較電解質膜(4)の製造
配合比を0.2gのLiTFSIと、0.8gの重合体(C)と、0.008gの重合開始剤と、1.6mLのアセトニトリルとしたこと以外は、実施例7と同様にして、膜厚30μmの光硬化膜を得た。
【0110】
上記実施例1~11及び比較例1~4で製造した電解質膜の組成を表1に示した。
【0111】
【0112】
<イオン伝導度及びイオン伝導性評価>
ポテンショガルバノスタット(VSP-300、Biologic社製)を用いて定電流印加試験を行った。実施例1~11及び比較例1~4で作製した電解質膜をφ11mmのポンチで打ち抜き、φ10mmのリチウム箔(0.2mm厚、本城金属株式会社製)2枚で挟んだものを、SUS316L製スペーサー(0.5mm厚、φ15.5mm、宝泉株式会社製)2枚で挟み込んで、測定装置の治具に固定した。温度60℃の環境下、電流値IS=+0.0785mA(0.1mA/cm2)で5分、IS=-0.0785mAで5分の通電処理を実施してから、同一装置を用いてインピーダンス解析を実施し、Cole-coleプロットから得られたバルク抵抗値をRb(Ω)とした。測定検体の厚さをT(cm)、電解質膜がリチウム箔と接触する面積を測定検体の面積A(cm2)とし、下記式(7)に従いイオン伝導度σ(S/cm)を算出した。
σ=T/A/Rb (7)
【0113】
次いで、I=0.157mAで定電流印加試験を行い、5分後の電圧上昇値ΔE(V)を得た。リチウムイオンが、リチウム箔から電解質膜を介して対向面のリチウム箔まで伝導する全過程におけるイオン伝導性の指標を、直流イオン伝導度Δσ
DC(S/cm)とし、下記式(6)に従い算出した。
Δσ
DC=T/A/(ΔE/I) (6)
上記式(6)より得られた結果を
図1に示す。
【0114】
<実施例12>リチウムイオン2次電池(1)の作製
正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(Umicore社製)100部と、導電助剤としてアセチレンブラック(粉状品、電気化学工業株式会社製)3部と、黒鉛粉末(J-SP、日本黒鉛工業株式会社製)3部、及び結着剤としてポリフッ化ビニリデン(#7200、株式会社クレハ製)3部を、N-メチルピロリドン(LBGグレード、キシダ化学株式会社製)に分散させて正極合剤スラリーを得た。正極集電体として、カーボンコートアルミニウム箔(SDX-PM、昭和電工パッケージング株式会社製)を用い、上記正極スラリーを均一に塗工したのち、熱風乾燥機を用いて70℃で30分間の加熱乾燥と、減圧乾燥機を用いて、絶対圧で真空度-0.1MPa、110℃で2時間の減圧乾燥をして溶媒を除去し、正極重量7.6mg/cm2(アルミニウム箔除く)の正極シートを得た。
上記正極シート上に、実施例1で作製した電解質溶液を均一に塗布した後、熱風乾燥機を用いて40℃で30分間の加熱乾燥と、減圧乾燥機を用いて、絶対圧で真空度-0.1MPa、70℃で2時間の減圧乾燥をして溶媒を除去し、組成物を含浸させた複合正極シートを得た。
得られた複合正極シートをφ14mmで打ち抜いたものを電池の正極とし、実施例1で作製した複合電解質膜をφ16mmで打ち抜いたシートを電解質膜とし、φ15mmで打ち抜いた0.5mm厚のリチウム箔を負極として、リチウム箔、電解質膜2枚、正極の順に重ね合わせた。CR2032型コインセル部材(宝泉株式会社製)の正極ケース、負極キャップ、0.5mm厚のSUS製スペーサー、ウェーブワッシャー、ガスケットを用い、自動コインカシメ機(宝泉株式会社製)でかしめることでコイン型リチウムイオン2次電池を作製した。
【0115】
<実施例13>リチウムイオン2次電池(2)の作製
実施例5で作製した溶液と、実施例5で得られた複合電解質膜を用いた以外は、実施例12と同様にして、コイン型リチウムイオン2次電池を作製した。
【0116】
<比較例5>比較リチウムイオン2次電池(1)の作製
比較例3で作製した溶液と、比較例3で得られた複合電解質膜を用いた以外は、実施例12と同様にして、コイン型リチウムイオン2次電池を作製した。
【0117】
<リチウムイオン二次電池評価>
実施例12、13及び比較例5で得られたコイン型リチウムイオン2次電池について、充放電試験装置(ACD-01、アスカ電子株式会社製)を用いて充放電試験を行った。温度60℃の環境下、充電条件C/48(正極容量160mAh/gとした場合に、1時間で満充電される電流値を1Cとする)で4.1Vまで充電したのち、15分間休止し、放電条件C/12で3Vまで放電を行った。次いで、充電条件C/48で4.1Vまで充電した後、15分間休止し、放電条件C/4で3Vまで放電したときの放電曲線と、放電容量を得た。得られた放電曲線を
図2に、放電容量と、Δσ
DCと、σとの関係を表2に示す。
【0118】
【0119】
図2及び表2より、本発明の電解質組成物を用いたリチウムイオン2次電池は、比較例5と比較して、高い放電電圧と、高い放電容量を示した。さらに、放電容量は、従来から電解質膜の性能指標として用いられているσではなく、新たに導入したΔσ
DCに相関する結果を得た。すなわち、電池の充放電性能は、高周波領域における抵抗値から算出されるσ値よりも、直流印加時のリチウムイオンの伝導性から算出されるΔσ
DCとの相関が強く、Δσ
DCで評価することの重要性が明らかとなった。
【0120】
実施例12及び比較例5と同様にして得られたコイン型リチウムイオン2次電池について、温度60℃の環境下、充電条件C/48で4.1Vまで充電したのち、15分間休止し、放電条件C/12で3Vまで放電を行った。次いで、充電条件C/48で4.1Vまで充電した後、25℃に冷却してから3時間休止し、放電条件C/48で3Vまで放電して得られた放電容量を表3に示す。
【0121】
【0122】
表3より、本発明の電解質組成物を用いたリチウムイオン2次電池は、25℃環境下においても、優れた放電性能を示すことが判明した。