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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   F15B 21/045 20190101AFI20230308BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
F15B21/045
E02F9/22 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022509931
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2021010147
(87)【国際公開番号】W WO2021193157
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2020058802
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 賢人
(72)【発明者】
【氏名】井村 進也
(72)【発明者】
【氏名】釣賀 靖貴
(72)【発明者】
【氏名】千葉 孝昭
(72)【発明者】
【氏名】天野 裕昭
(72)【発明者】
【氏名】西川 真司
(72)【発明者】
【氏名】楢▲崎▼ 昭広
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-247504(JP,A)
【文献】特開2019-215009(JP,A)
【文献】特開平2-190604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 21/045
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に取り付けられた作業装置と、
前記車体または前記作業装置を駆動するアクチュエータと、
油圧ポンプと、
前記油圧ポンプの吐出ラインにパラレルに接続されており、前記油圧ポンプから前記アクチュエータに供給される圧油の流れを調整する流量制御装置と、
前記アクチュエータの動作を指示するための操作レバーと、
パイロットポンプと、
前記パイロットポンプから供給される圧油を減圧し、前記流量制御装置の操作圧として出力する電磁比例減圧弁と、
前記操作レバーからの動作指示量に応じて前記電磁比例減圧弁へ指令電気信号を出力するコントローラとを備えた作業機械において、
前記流量制御装置は、
前記吐出ラインと前記アクチュエータの1つとを接続するメイン油路に配置された、前記電磁比例減圧弁からの操作圧に応じて移動する弁体と、
前記メイン油路から分岐したサンプリング油路と、
前記サンプリング油路に設置された温度センサとを有し、
前記コントローラは、前記温度センサからの信号に応じて前記指令電気信号を補正する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記弁体は、シート弁体であり、
前記流量制御装置は、
前記シート弁体を収容するメインハウジングと、
前記シート弁体を前記メインハウジングに封入するパイロットハウジングと、
前記シート弁体と前記パイロットハウジングとの間に形成される油室と、
前記シート弁体の下流側と前記油室とを接続し、通過流量に応じて前記シート弁体の移動量を決定するパイロットラインと、
前記パイロットラインに配置され、前記電磁比例減圧弁からの操作圧に応じて開口面積を変化させるパイロット可変絞りとを更に有し、
前記シート弁体には、前記メイン油路のうち前記油圧ポンプと前記シート弁体とを接続する油路部分と前記油室とを接続し、前記シート弁体の移動量に応じて開口面積を変化させる制御可変絞りが形成され、
前記サンプリング油路は、前記パイロットラインで構成される
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記弁体は、スプール弁体であり、
前記流量制御装置は、
前記メイン油路のうち前記油圧ポンプと前記スプール弁体とを接続する油路部分に配置されたチェック弁体と、
前記スプール弁体および前記チェック弁体を収容するメインハウジングと、
前記チェック弁体を前記メインハウジングに封入するキャップと、
前記チェック弁体と前記キャップとの間に形成される油室と、
前記チェック弁体の下流側と前記油室とを連通する連通油路とを更に有し、
前記サンプリング油路は、前記連通油路で構成される
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機械は、一般的に油圧ポンプから供給される圧油がバルブを介して油圧アクチュエータへ送られることで、アクチュエータが駆動し、仕事を行う。この時、アクチュエータに送られる作動油の流量は、操作装置による操作指示量に応じたバルブ開口量によって制御されており、バルブの流量制御性能がアクチュエータの制御精度を決定づけているといえる。ゆえに、バルブには高い流量制御性とその性能を安定して発揮する高いロバスト性が求められる。
【0003】
しかし、様々な環境で稼働する作業機械では、車体の周囲温度や作動油の温度が稼働地域や稼働状態によって大きく異なるもしくは変化することが少なくない。作動油は温度によって粘性などの特性が変化するため、それを制御するバルブの性能も変化してしまう。そのため、油温の変化に対してバルブ性能のロバスト性の確保する技術が必要とされる。
【0004】
そこで、このような課題を解決する技術の一つとして特許文献1に示す技術が提案されている。特許文献1に記載のパイロット作動型電気油圧バルブ向けの位置制御装置によると、流量制御バルブのコントローラは、スプールの位置制御機構、速度変換機構、および、動的オフセット機構を含む、制御装置を備え、制御装置が試験処理を実行するように、かつ、温度に応じて変化する作動油の粘度を、試験処理中に獲得したデータに基づいて補完するように構成されている。このような構成によると、作動油温に応じてバルブ制御特性を変更することで、油温の変化に対するバルブの流量制御性能の変化を小さくすることができる。
【0005】
しかしながら、作業機械では、一般的に作動油タンクに設置された温度センサで油温を取得しているため、温度センサの出力値と制御対象のバルブ周辺の温度または絞り部を通過する作動油の温度との間に乖離が生じてしまい、結果、コントローラでバルブ制御特性を補正しきれず、バルブの流量制御性能を維持できない恐れがある。
【0006】
このような課題を解決する技術の一つとして特許文献2に示す技術が提案されている。特許文献2に記載の建設機械では、温度センサがバルブハウジングに設けられており、この構成により、バルブハウジングの温度を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2014-534381号公報
【文献】特開2014-126176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の作業機械では、温度センサと作動油が直接接して温度を計測していないため、温度センサの設置位置とバルブの絞り部との間の距離、またはハウジングから大気への放熱量によっては、計測温度と作動油温度とに大きな乖離が生じる可能性がある。また、ハウジング温度と温度差がある作動油が急に流れてきた場合に、その温度変化に即座に追従できず、正確な油温を測定できない可能性がある。そのため、制御対象のバルブ周辺の温度または絞り部を通過する作動油の温度に適したバルブ制御特性の補正が行えず、結果としてバルブの流量制御性能が低下し、アクチュエータ制御精度の低下を招く恐れがある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、アクチュエータへの供給流量を制御する流量制御装置を通過する作動油の温度変動に関わらず、アクチュエータの制御精度を維持することが可能な作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、車体と、前記車体に取り付けられた作業装置と、前記車体または前記作業装置を駆動するアクチュエータと、油圧ポンプと、前記油圧ポンプの吐出ラインにパラレルに接続されており、前記油圧ポンプから前記アクチュエータに供給される圧油の流れを調整する流量制御装置と、前記アクチュエータの動作を指示するための操作レバーと、パイロットポンプと、前記パイロットポンプから供給される圧油を減圧し、前記流量制御装置の操作圧として出力する電磁比例減圧弁と、前記操作レバーからの動作指示量に応じて前記電磁比例減圧弁へ指令電気信号を出力するコントローラとを備えた作業機械において、前記流量制御装置は、前記吐出ラインと前記アクチュエータの1つとを接続するメイン油路に配置された、前記電磁比例減圧弁からの操作圧に応じて移動する弁体と、前記メイン油路から分岐したサンプリング油路と、前記サンプリング油路に設置された温度センサとを有し、前記コントローラは、前記温度センサからの信号に応じて前記指令電気信号を補正するものとする。
【0011】
以上のように構成した本発明によれば、アクチュエータへの供給流量を制御する流量制御装置を通過する作動油の温度を計測し、その計測値に応じて流量制御装置に対する指令電気信号を補正することにより、アクチュエータへの供給流量をより目標流量に近づけることができる。これにより、流量制御装置を通過する作動油の温度変動に関わらず、アクチュエータの制御精度を維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る作業機械によれば、アクチュエータへの供給流量を制御する流量制御装置を通過する作動油の温度変動に関わらず、アクチュエータの制御精度を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る油圧ショベルの側面図である。
図2A】本発明の第1の実施例における油圧駆動装置の回路図(1/2)である。
図2B】本発明の第1の実施例における油圧駆動装置の回路図(2/2)である。
図3】本発明の第1の実施例におけるコントローラの機能ブロック図である。
図4】本発明の第1の実施例における補助流量制御弁の開口-指令電気信号マップを示す図である。
図5】本発明の第1の実施例におけるコントローラの演算処理を示すフロー図である。
図6】本発明の第1の実施例における補助流量制御装置の断面図である。
図7】本発明の第1の実施例における温度センサの設置方法の変形例1である。
図8】本発明の第1の実施例における温度センサの設置方法の変形例2である。
図9】本発明の第1の実施例における温度センサの設置方法の変形例3である。
図10】本発明の第1の実施例における温度センサの変形例1である。
図11】本発明の第1の実施例における温度センサの変形例2である。
図12A】本発明の第2の実施例における油圧駆動装置の回路図(1/2)である。
図12B】本発明の第2の実施例における油圧駆動装置の回路図(1/2)である。
図13】本発明の第2の実施例におけるコントローラの演算処理を示すフロー図である。
図14】本発明の第2の実施例における方向制御弁およびチェック弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る作業機械として油圧ショベルを例に挙げ、図面を参照して説明する。なお、各図中、同等の部材には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る油圧ショベルの側面図である。
【0016】
図1に示すように、油圧ショベル300は、走行体201と、走行体201上に旋回可能に配置され、車体を構成する旋回体202と、旋回体202に上下方向に回動可能に取り付けられ、土砂の掘削作業等を行う作業装置203とを備えている。旋回体202は、旋回モータ211によって駆動される。
【0017】
作業装置203は、旋回体202に上下方向に回動可能に取り付けられるブーム204と、ブーム204の先端に上下方向に回動可能に取り付けられるアーム205と、アーム205の先端に上下方向に回動可能に取り付けられるバケット206とを含んでいる。ブーム204はブームシリンダ204aによって駆動され、アーム205はアームシリンダ205aによって駆動され、バケット206はバケットシリンダ206aによって駆動される。
【0018】
旋回体202上の前側位置には運転室207を設けてあり、後側位置には重量バランスを確保するカウンタウエイト209を設けてある。運転室207とカウンタウエイト209の間にはエンジンおよび油圧ポンプ等が収容される機械室208を設けてあり、機械室208にはコントロールバルブ210が設置されている。
【0019】
本実施の形態に係る油圧ショベル300には、以下の各実施例で説明する油圧駆動装置が搭載される。
【実施例1】
【0020】
図2Aおよび図2Bは、本発明の第1の実施例における油圧駆動装置の回路図である。
【0021】
(1)構成
第1の実施例における油圧駆動装置400は、図示しないエンジンによって駆動される3つの主油圧ポンプ、例えばそれぞれ可変容量形油圧ポンプからなる第1油圧ポンプ1、第2油圧ポンプ2、および第3油圧ポンプ3を備えている。また、図示しないエンジンによって駆動されるパイロットポンプ4を備えると共に、第1~第3油圧ポンプ1~3、およびパイロットポンプ4に油を供給する作動油タンク5を備えている。
【0022】
第1油圧ポンプ1の傾転角は、第1油圧ポンプ1に付設したレギュレータによって制御される。第1油圧ポンプ1のレギュレータは、流量制御指令圧ポート1a、第1油圧ポンプ自己圧ポート1b、および第2油圧ポンプ自己圧ポート1cを含んでいる。第2油圧ポンプ2の傾転角は、第2油圧ポンプ2に付設したレギュレータによって制御される。第2油圧ポンプ2のレギュレータは、流量制御指令圧ポート2a、第2油圧ポンプ自己圧ポート2b、および第1油圧ポンプ自己圧ポート2cを含んでいる。第3油圧ポンプ3の傾転角は、第3油圧ポンプ3に付設したレギュレータによって制御される。第3油圧ポンプ3のレギュレータは、流量制御指令圧ポート3aおよび第3油圧ポンプ自己圧ポート3bを含んでいる。
【0023】
第1油圧ポンプ1の吐出ライン40は、センターバイパスライン41を介して作動油タンク5へ接続される。センターバイパスライン41には、上流側から順に、走行体201を駆動する一対の走行モータのうちの図示しない右走行モータの駆動を制御する右走行用方向制御弁6、バケットシリンダ206aへ供給される圧油の流れを制御するバケット用方向制御弁7、アームシリンダ205aに供給される圧油の流れを制御する第2アーム用方向制御弁8、およびブームシリンダ204aに供給される圧油の流れを制御する第1ブーム用方向制御弁9が配置される。バケット用方向制御弁7、第2アーム用方向制御弁8、および第1ブーム用方向制御弁9の各供給ポートは、右走行用方向制御弁6とバケット用方向制御弁7とを接続するセンターバイパスライン41の一部に、それぞれ油路42,43、油路44,45、および油路46,47を介してパラレルに接続される。油路42,43、油路44,45、および油路46,47は、それぞれ、第1油圧ポンプ2の吐出ライン40と各アクチュエータとを接続するメイン油路を構成している。
【0024】
第2油圧ポンプ2の吐出ライン50は、センターバイパスライン51を介して作動油タンク5へ接続されると共に、合流弁17を介して第1油圧ポンプ1の吐出ライン40へ接続される。センターバイパスライン51には、上流側から順に、ブームシリンダ204aに供給される圧油の流れを制御する第2ブーム用方向制御弁10、アームシリンダ205aに供給される圧油の流れを制御する第1アーム用方向制御弁11、例えばバケット206に代えて設けられる小割機等の第1特殊アタッチメントを駆動する図示しない第1アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する第1アタッチメント用方向制御弁12、および走行体201を駆動する一対の走行モータのうちの図示しない左走行モータの駆動を制御する左走行用方向制御弁13が配置される。第2ブーム用方向制御弁10、第1アーム用方向制御弁11、第1アタッチメント用方向制御弁12、および左走行用方向制御弁13の各供給ポートは、第2油圧ポンプ2の吐出ライン50に、それぞれ油路52,53、油路54,55、油路56,57、および油路58を介してパラレルに接続される。油路52,53、油路54,55、油路56,57、および油路58は、それぞれ、第2油圧ポンプ2の吐出ライン50と各アクチュエータとを接続するメイン油路を構成している。
【0025】
第3油圧ポンプ3の吐出ライン60は、センターバイパスライン61を介して作動油タンク5へ接続される。センターバイパスライン61には、上流側から順に、旋回体202を駆動する旋回モータ211に供給される圧油の流れを制御する旋回用方向制御弁14、ブームシリンダ204aに供給される圧油の流れを制御する第3ブーム用方向制御弁15、および第2アタッチメント用方向制御弁16が配置される。第2アタッチメント用方向制御弁16は、第1特殊アタッチメントに加えて第2アクチュエータを備えた第2特殊アタッチメントが装着された際、または、第1特殊アクチュエータに代えて第1アクチュエータと第2アクチュエータの2つのアクチュエータを備えた第2特殊アタッチメントが装着された際に、第2アクチュエータに供給される圧油の流れを制御するために使用される。旋回用方向制御弁14、第3ブーム用方向制御弁15、および第2アタッチメント用方向制御弁16の各供給ポートは、第3油圧ポンプ3の吐出ライン60に、それぞれ油路62,63、油路64,65、および油路66,67を介してパラレルに接続される。油路62,63、油路64,65、および油路66,67、それぞれ、第3油圧ポンプ3の吐出ライン60と各アクチュエータとを接続するメイン油路を構成している。
【0026】
ブームシリンダ204a、アームシリンダ205a、およびバケットシリンダ206aには、油圧ショベル300の動作状態を取得することを目的として、ストローク量を検出するストロークセンサ94,95,96がそれぞれ設けられる。なお、油圧ショベル300の動作状態を取得する手段は傾斜センサ、回転角センサ、IMUなど多様であり、上述したストロークセンサに限られない。
【0027】
バケット用方向制御弁7へ接続される油路42,43、第2アーム用方向制御弁8へ接続される油路44,45、および第1ブーム用方向制御弁9へ接続される油路46,47には、複合操作時に第1油圧ポンプ1から各方向制御弁に供給される圧油の流量を制限する補助流量制御装置21,22,23がそれぞれ設けられる。
【0028】
第2ブーム用方向制御弁10の供給ポートへ接続される油路52,53、第1アーム用方向制御弁11の供給ポートへ接続される油路54,55、および第1アタッチメント用方向制御弁12の供給ポートへ接続される油路56,57には、複合操作時に第2油圧ポンプ2から各方向制御弁に供給される圧油の流量を制限する補助流量制御装置24,25,26がそれぞれ設けられる。
【0029】
旋回用方向制御弁14の供給ポートへ接続される油路62,63、第3ブーム用方向制御弁15の供給ポートへ接続される油路64,65、および第2アタッチメント用方向制御弁16の供給ポートへ接続される油路66,67には、複合操作時に第3油圧ポンプ3から各方向制御弁に供給される圧油の流量を制限する補助流量制御装置27,28,29がそれぞれ設けられる。
【0030】
パイロットポンプ4の吐出ポートは、パイロット1次圧生成用のパイロットリリーフ弁18を介して作動油タンク5へ接続されると共に、油路71を介して電磁弁ユニット83へ接続される。電磁弁ユニット83は、電磁比例減圧弁83a,83b,83c,83d,83eを内蔵している。電磁比例減圧弁83a~83eの一方の入力ポートは油路71へ接続され、他方の入力ポートは作動油タンク5へ接続される。電磁比例減圧弁83aの出力ポートは第2油圧ポンプ2のレギュレータの流量制御指令圧ポート2aへ接続され、電磁比例減圧弁83b,83cの出力ポートは第2ブーム用方向制御弁10のパイロットポートへ接続され、電磁比例減圧弁83d,83eの出力ポートは第1アーム用方向制御弁11のパイロットポートへ接続される。電磁比例減圧弁83a~83eは、それぞれ、コントローラ82からの指令電気信号に応じてパイロット1次圧を減圧し、パイロット指令圧として出力する。
【0031】
なお、説明を簡略化するため、第1油圧ポンプ1および第3油圧ポンプ3のレギュレータの流量制御指令圧ポート1a,3a用の電磁比例減圧弁、右走行用方向制御弁6用の電磁比例減圧弁、バケット用方向制御弁7用の電磁比例減圧弁、第2アーム用方向制御弁8用の電磁比例減圧弁、第1ブーム用方向制御弁9用の電磁比例減圧弁、第1アタッチメント用方向制御弁12用の電磁比例減圧弁、左走行用方向制御弁13用の電磁比例減圧弁、旋回用方向制御弁14用の電磁比例減圧弁、第3ブーム用方向制御弁15用の電磁比例減圧弁、および第2アタッチメント用方向制御弁16用の電磁比例減圧弁については、図示を省略してある。
【0032】
補助流量制御装置24は、補助可変絞りを形成するシート形の主弁31と、主弁31の弁体31aに設けられ、弁体31aの移動量に応じて開口面積を変化させる制御可変絞り31bと、パイロット可変絞り32とで構成される。主弁31が内蔵されるハウジングは、主弁31と油路52の接続部に形成された第1圧力室31cと、主弁31と油路53の接続部に形成された第2圧力室31dと、第1圧力室31cと制御可変絞り31bを介して連通するように形成された第3圧力室31eとを有する。第3圧力室31eとパイロット可変絞り32とは油路68aで接続され、パイロット可変絞り32と第2圧力室31dとは油路68bで接続され、油路68a,68bはパイロットライン68を形成する。パイロットライン68には、パイロットライン68を流れる作動油の温度(油温)を検出する温度センサ97が設けられる。第1圧力室31cはメイン油路52の一部を構成し、第2圧力室31dはメイン油路53の一部を構成している。パイロットライン68は、弁体31aを通過する作動油の一部を抽出するための油路(以下、サンプリング油路)を構成している。本実施例におけるサンプリング油路68は、メイン油路52,53のうち弁体31aと第1アーム用方向制御弁11とを接続する油路部分(油路53)から分岐させているが、第2油圧ポンプ2の吐出ライン50と弁体31aとを接続する油路部分(油路52)から分岐させてもよい。
【0033】
パイロット可変絞り32のパイロットポート32aは、電磁比例減圧弁35の出力ポートと接続される。電磁比例減圧弁35の供給ポートはパイロットポンプ4の吐出ポートと接続され、タンクポートは作動油タンク5と接続される。
【0034】
第2油圧ポンプ2の吐出ライン50には圧力センサ91が設けられ、第2ブーム用方向制御弁10と補助流量制御装置24とを接続する油路53には圧力センサ92が設けられる。
【0035】
なお、説明を簡便にするため一部図示を省略しているが、補助流量制御装置21~29および周辺の機器、配管、配線は全て同じ構成である。
【0036】
油圧駆動装置400は、第1ブーム用方向制御弁9、第2ブーム用方向制御弁10、および第3ブーム用方向制御弁15を切り換え操作可能な操作レバー81aと、第1アーム用方向制御弁11および第2アーム用方向制御弁8を切り換え操作可能な操作レバー81bとを備えている。なお、説明を簡略化するため、右走行用方向制御弁6を切り換え操作する右走行用操作レバー、バケット用方向制御弁7切り換え操作するバケット用操作レバー、第1アタッチメント用方向制御弁12を切り換え操作する第1アタッチメント用操作レバー、左走行用方向制御弁13を切り換え操作する左走行用操作レバー、旋回用方向制御弁14を切り換え操作する旋回用操作レバー、第2アタッチメント用方向制御弁16を切り換え操作する第2アタッチメント用操作レバーについては、図示を省略してある。
【0037】
油圧駆動装置400は、コントローラ82を備え、操作レバー81a,81bの出力値、圧力センサ91~93の出力値、ストロークセンサ94~96の出力値、および温度センサ97,98の出力値はコントローラ82へ入力される。また、コントローラ82は、電磁弁ユニット83に備えられる各電磁比例減圧弁と、電磁比例減圧弁35,36(および図示されない電磁比例減圧弁)へ指令電気信号を出力する。
【0038】
図3は、コントローラ82の機能ブロック図である。図3において、コントローラ82は、入力部82aと、車体姿勢演算部82bと、要求流量演算部82cと、マップ選択部82dと、目標流量演算部82eと、指令電気信号演算部82fと、出力部82gとを有する。
【0039】
入力部82aは、操作レバー入力量および各センサの出力値を取得する。車体姿勢演算部82bは、センサ出力値を基に車体202および作業装置203の姿勢を演算する。要求流量演算部82cは、操作レバー入力量を基にアクチュエータの要求流量を演算する。マップ選択部82dは、温度センサ出力値(油温)を基に、指令電気信号の算出に用いる開口-指令電気信号マップを選択する。
【0040】
図4は、補助流量制御装置24の開口-指令電気信号マップを示す図であり、主弁31の開口面積と電磁比例減圧弁35の指令電気信号との相関を示す。図4において、温度T1,T2,T3はT1<T2<T3の関係にあり、主弁31の開口面積を同一に調整する場合であっても、油温が低下するに従って指令電気信号を大きくする必要がある。
【0041】
図3に戻り、目標流量演算部82eは、車体202および作業装置203の姿勢とアクチュエータの要求流量とを基にアクチュエータの目標流量を演算する。指令電気信号演算部82fは、目標流量演算部82eからの目標流量と、マップ選択部82dからの開口-指令電気信号マップと、入力部82aからの圧力センサ出力値とを基に指令電気信号を演算する。出力部82gは、指令電気信号演算部82fからの結果を基に指令電気信号を生成し、各電磁比例減圧弁へ出力する。
【0042】
図5は、第1の実施例におけるコントローラ82の演算処理を示すフロー図である。図5に示す演算処理は、全ての方向制御弁に関して実行されるが、以下では第2ブーム用方向制御弁10に関わる部分のみを説明する。
【0043】
コントローラ82は、まず、操作レバー81aの入力が無いか否かを判定する(ステップS101)。ステップS101で操作レバー81aの入力が無い(YES)と判定した場合は、当該フローを終了する。
【0044】
ステップS101で操作レバー81aの入力が有る(NO)と判定した場合は、電磁弁ユニット83の電磁比例減圧弁83b,83cで操作レバー入力量に応じたパイロット指令圧Pi_ms(PiBm2U,PiBm2D)を生成し(ステップS102)、パイロット指令圧Pi_msに応じて方向制御弁10を開口させる(ステップS103)。
【0045】
ステップS103に続き、コントローラ82の目標流量演算部82eにてアクチュエータの目標流量を算出し(ステップS104)、コントローラ82のマップ選択部82dにて油温に応じた開口-指令電気信号マップを選択し(ステップS105)、コントローラ82の指令電気信号演算部82fにて目標流量と圧力センサ出力値とを基に主弁31の目標開口面積を算出し(ステップS106)、目標開口面積と開口-指令電気信号マップとを基に目標指令電気信号を算出し(ステップS107)、コントローラ82の出力部82gにて電磁比例減圧弁35へ指令電気信号を出力する(ステップS108)。
【0046】
ステップS108に続き、コントローラ82から出力された指令電気信号を受けて電磁比例減圧弁35はパイロット指令圧Pi_fcvを生成し(ステップS109)、電磁比例減圧弁35からの指令圧Pi_fcvに応じてパイロット可変絞り32のパイロットスプール112を変位させ(ステップS110)、パイロット可変絞り32の開口量に応じて補助流量制御装置24の主弁31を開口させ(ステップS111)、アクチュエータへの供給流量を補助流量制御装置24で制御し(ステップS112)、当該フローを終了する。
【0047】
図6は、第1の実施例における補助流量制御装置24の断面図である。なお、他の補助流量制御装置もこれと同様の構成である。
【0048】
シート形の主弁31の弁体31aは、メインハウジング110に摺動自在に設置される。弁体31aの上流側に位置する第1圧力室31cと下流側に位置する第2圧力室31dとは、メインハウジング110と弁体31aとの間に形成される補助可変絞りを介して連通する。この補助可変絞りの開口特性は、弁体31aに形成されたノッチ102の形状により定まる。弁体31aは、第3圧力室31eに設置されたばね101によって、第1圧力室31cと第2圧力室31dとを連通する開口部に着座する。第1圧力室31cと第3圧力室31eは、弁体31a内部に形成された油路103を介して連通する。油路103の第3圧力室31e側出口とメインハウジング110との間には、制御可変絞り31bが形成される。
【0049】
弁体31aが設置されるメインハウジング110の端部と面合わせに、パイロット可変絞り32が取り付けられる。パイロット可変絞り32は、パイロットハウジング111、パイロットスプール112、ばね107、およびプラグ106によって構成される。ばね107は、パイロットスプール112の一端側に設置され、パイロットスプール112を他端側へ押し付ける。パイロットスプール112の他端側には、パイロットハウジング111と接触することでパイロットスプール112の位置を保持するロッド109が設けられる。
【0050】
パイロットスプール112とパイロットハウジング111の間には、油室104と油室105が形成されている。油室104と油室105とは、パイロットスプール112とパイロットハウジング111の間に形成される絞りによって連通する。この絞り部の開口特性は、パイロットスプール112に形成されるノッチ108の形状により定まる。油室104と第3圧力室31eとは油路68aを介して連通し、油室105と第2圧力室31dとは油路68bを介して連通する。
【0051】
なお、ノッチ102、制御可変絞り31b、およびノッチ108には、設計者が所望する開口特性を得るために、図示した形状以外にも様々な形状およびそれらの組合せが用いられる。
【0052】
パイロットハウジング111には、油路68aを流れる作動油の温度を検出する温度センサ97が設けられる。なお、温度センサ97の配置は図6に示すものに限られず、図7に示すように油路68bに配置したり、図8に示すように油室105に配置したり、図9に示すように油室104に配置しても良い。また、温度センサ97は、図6図9に示すように作動油に直接曝す形態のものに限られず、図10または図11に示すように、熱伝導率の高い素材で作られたプラグ151を油路68aを流れる作動油に曝し、プラグ151の温度を非接触式の温度センサ97(図10に示す)または埋め込み式の温度センサ97(図11に示す)で検出しても良い。本実施例におけるサンプリング油路68は、パイロットライン68(油路68a,68b)で構成されるため、パイロットハウジング111に設けられている。
【0053】
(2)動作
このように構成した第1の実施例における油圧駆動装置400にあっては、以下に述べるような操作および制御が可能である。なお、ここでは説明を簡単に説明するために、第2油圧ポンプ2に対してパラレルに配置される第2ブーム用方向制御弁10と第1アーム用方向制御弁11で分流が必要となった場合の動作を説明する。
【0054】
コントローラ82は、操作レバー81a,81bから入力されるレバー操作量と各ストロークセンサ94~96から取得された車体動作状態を基にアクチュエータ204a,205aの目標流量を演算し、同時に温度センサ97,98から取得された作動油温に応じて補助流量制御装置24,25の開口―指令電気信号マップを選択する。
【0055】
続いて、コントローラ82は、アクチュエータ204a,205aの各目標流量と圧力センサ91~93で取得した主弁31,33の各前後差圧とを基に、以下の式を用いて主弁31,33の各目標開口面積を算出する。
【0056】
【数1】
【0057】
次に、開口―指令電気信号マップを参照し、目標開口面積Arefに対応する指令電気信号を算出し、電磁比例減圧弁35,36へ出力する。電磁比例減圧弁35,36は、コントローラ82からの指令電気指令に応じてパイロット指令圧Pi_fcvを生成し、パイロット可変絞り32,34のパイロットポート32a,34aへ作用させる。
【0058】
パイロット可変絞り32,34は、パイロット指令圧Pi_fcvに応じてパイロットスプール112を変位させることにより、開口面積aPSを変化させる。パイロット可変絞り32,34の開口面積aPSが変化すると、それに応じて制御可変絞り31b,33bの開口面積aFBも変化する。このとき、制御可変絞り31b,33bの開口面積aFBとパイロット可変絞り32,34の開口面積aPSの関係は下記の通りとなる。
【0059】
【数2】
【0060】
制御可変絞り31b,33bの開口面積aFBは主弁31,33の変位に応じて変化するため、パイロット可変絞り32,34の開口面積aPSが変化すると弁体31a,33aが変位し、制御可変絞り31b,33bの開口面積aFBとパイロット可変絞り32,34の開口面積aPSの比率が一定に保たれる。このとき、主弁31,33の開口面積aMPも弁体31a,33aの変位に応じて変化するため、主弁31,33の開口面積aMPはパイロット指令圧Pi_fcv応じて変化する。
【0061】
以上、補助流量制御装置24,25の動作を説明したが、他の補助流量制御装置の動作も同様である。
【0062】
(3)効果
本実施例では、車体202と、車体202に取り付けられた作業装置203と、車体202または作業装置203を駆動するアクチュエータ204a,205a,206a,211と、油圧ポンプ1~3と、油圧ポンプ1~3の吐出ライン40,50,60にパラレルに接続されており、油圧ポンプ1~3からアクチュエータ204a,205a,206a,211に供給される圧油の流れを調整する流量制御装置21~29と、アクチュエータ204a,205a,206a,211の動作を指示するための操作レバー81a,81bと、パイロットポンプ4と、パイロットポンプ4から供給される圧油を減圧し、流量制御装置24,25の操作圧として出力する電磁比例減圧弁35,36と、操作レバー81a,81bからの動作指示量に応じて電磁比例減圧弁35,36へ指令電気信号を出力するコントローラ82とを備えた作業機械300において、流量制御装置24は、吐出ライン50とアクチュエータ204a,205aの1つとを接続するメイン油路52,53に配置された、電磁比例減圧弁35からの操作圧に応じて移動する弁体31aと、メイン油路52,53から分岐したサンプリング油路68と、サンプリング油路68に設置された温度センサ97とを有し、コントローラ82は、温度センサ97からの信号に応じて前記指令電気信号を補正する。
【0063】
また、本実施例では、流量制御装置としての補助流量制御装置24は、油圧ポンプ2の吐出ライン50とアクチュエータ205aとを接続するメイン油路52,53に配置され、電磁比例減圧弁35からの操作圧に応じて移動する弁体としてのシート弁体31aと、シート弁体31aを収容するメインハウジング110と、シート弁体31aをメインハウジング110に封入するパイロットハウジング111と、シート弁体31aとパイロットハウジング111との間に形成される油室31eと、シート弁体31aの下流側と油室31eとを接続し、通過流量に応じてシート弁体31aの移動量を決定するパイロットライン68と、パイロットライン68に配置され、電磁比例減圧弁35からの操作圧に応じて開口面積を変化させるパイロット可変絞り32とを有し、シート弁体31aには、メイン油路52,53のうち油圧ポンプ2とシート弁体31aとを接続する油路部分52と油室31eとを接続し、シート弁体31aの移動量に応じて開口面積を変化させる制御可変絞り31bが形成され、サンプリング油路68は、パイロットライン68で構成される。
【0064】
以上のように構成した第1の実施例によれば、アクチュエータ204a,205a,206a,211への供給流量を制御する流量制御装置21~29を通過する作動油の温度を計測し、その計測値に応じて流量制御装置21~29に対する指令電気信号を補正することにより、アクチュエータ204a,205a,206a,211への供給流量をより目標流量に近づけることができる。これにより、流量制御装置21~29を通過する作動油の温度変動に関わらず、アクチュエータ204a,205a,206a,211の制御精度を維持することが可能となる。
【0065】
また、アクチュエータ204aに供給する作動油が流れる油路に比べてパイロットライン68を流れる作動油の流量は少ないため、流れが温度センサ97へ与える負荷が少なく、温度センサ97の故障リスクを低減することができる。さらに、メインハウジング110とは別体で構成されるパイロットハウジング111に温度センサ97を設置することで、温度センサ97が故障した場合に容易に温度センサ97を交換することが可能となる。
【実施例2】
【0066】
本発明の第2の実施例について、第1の実施例との相違点を中心に説明する。
【0067】
(1)構成
本発明の第1実施例の応用における油圧駆動装置の構成は、第1の実施例における油圧駆動装置400(図2Aおよび図2Bに示す)とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0068】
第1の実施例では、全ての補助流量制御装置1~29に温度センサを設けているが、同一の吐出ラインに接続された各補助流量制御装置を通過する作動油の温度は同程度であるため、一の補助流量制御装置を通過する作動油の温度は他の補助流量制御装置を通過する作動油の温度で近似することができる。そこで、第2の実施例では、第1油圧ポンプ1の吐出ライン40に接続された補助流量制御装置21~23のいずれか1つ、第2油圧ポンプ2の吐出ライン50に接続された補助流量制御装置24~26のいずれか1つ、および第3油圧ポンプ3の吐出ライン60に接続された補助流量制御装置27~29のいずれか1つに温度センサを設け、その他の補助流量制御装置には温度センサを設けない。
【0069】
(2)動作
本発明の第1実施例の応用における油圧駆動装置の動作は、第1の実施例における油圧駆動装置400(図2Aおよび図2Bに示す)とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0070】
コントローラ82は、温度センサを設けていない補助流量制御装置を制御する際は、制御対象の補助流量制御装置と同一の吐出ラインに接続された他の補助流量制御装置の温度センサの出力値を用いて演算処理を行う。
【0071】
(3)効果
以上のように構成した第2の実施例においても、第1の実施例1と同様の効果が得られる。また、補助流量制御装置1~29に設ける温度センサの数を少なくすることができるため、油圧駆動装置400の製造コストを削減することができる。
【実施例3】
【0072】
図12Aおよび図12Bは、本発明の第3の実施例における油圧駆動装置の回路図である。
【0073】
(1)構成
第3の実施例における油圧駆動装置の構成は、第1の実施例における油圧駆動装置400(図2Aおよび図2Bに示す)とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0074】
バケット用方向制御弁7へ接続される油路42,43、第2アーム用方向制御弁8へ接続される油路44,45、および第1ブーム用方向制御弁9へ接続される油路46,47には、アクチュエータ側からポンプ側への逆流を防止するチェック弁412,413,414がそれぞれ設けられる。
【0075】
第2ブーム用方向制御弁10の供給ポートへ接続される油路52,53、第1アーム用方向制御弁11の供給ポートへ接続される油路54,55、および第1アタッチメント用方向制御弁12の供給ポートへ接続される油路56,57には、アクチュエータ側からポンプ側への逆流を防止するチェック弁415,416,417がそれぞれ設けられる。
【0076】
旋回用方向制御弁14の供給ポートへ接続される油路62,63、第3ブーム用方向制御弁15の供給ポートへ接続される油路64,65、および第2アタッチメント用方向制御弁16の供給ポートへ接続される油路66,67には、アクチュエータ側からポンプ側への逆流を防止するチェック弁418,419,420がそれぞれ設けられる。
【0077】
チェック弁416は、シート形のチェック弁体421を有する。チェック弁体421を収容するハウジングは、チェック弁体421と油路54との接続部に形成された第1油室447と、チェック弁体421と油路55との接続部に形成された第2油室443と、チェック弁体421に形成された連通油路441を介して第2油室443と連通するように形成された第3油室442とを有する。チェック弁体421は、第3油室442に設置されたばね422によって、第1油室447と第2油室443とを連通する開口部に着座する。第3油室442は、連通油路423を介して第2油室443と連通している。連通油路423には、作動油の温度(油温)を計測する温度センサ424が設けられる。
【0078】
第2アーム用方向制御弁11とアームシリンダ205aのボトム側とを接続するメイン油路427には圧力センサ429が設けられ、第2アーム用方向制御弁11とアームシリンダ205aのロッド側とを接続するメイン油路428には圧力センサ430が設けられる。
【0079】
なお、説明を簡便にするため一部図示を省略しているが、各アクチュエータ、各方向制御弁、チェック弁412~420、および周辺の機器、配管、配線は全て同じ構成である。
【0080】
図13は、第3の実施例におけるコントローラ82の演算処理を示すフロー図である。なお、図13に示す演算処理は、全ての方向制御弁に関して実行されるが、以下では第1アーム用方向制御弁11に関わる部分のみを説明する。
【0081】
コントローラ82は、まず、操作レバー81bの入力が無いか否かを判断する(ステップS201)ステップS201で操作レバー81bの入力が無い(YES)と判定した場合は、当該フローを終了する。
【0082】
ステップS201で操作レバー81bの入力が有る(NO)と判定した場合は、コントローラ82の目標流量演算部432eにてアクチュエータ205aの目標流量を算出し(ステップS202)、コントローラ82のマップ選択部82dにて油温に応じた開口-指令電気信号マップを選択し(ステップS203)、コントローラ82の指令電気信号演算部82fにて目標流量と圧力センサ出力値とを基に方向制御弁11の目標開口面積を算出し(ステップS204)、目標開口面積と開口-指令電気信号マップとを基に目標指令電気信号を算出し(ステップS205)、コントローラ82の出力部82gにて電磁弁ユニット83の電磁比例減圧弁83d,83eへ指令電気信号を出力する(ステップS206)。
【0083】
ステップS206に続き、コントローラ82から出力された指令電気信号を受けて電磁比例減圧弁83d,83eはパイロット指令圧Pi_ms(PiAm1U,PiAm1D)を生成し(ステップS207)、電磁比例減圧弁83d,83eからのパイロット指令圧Pi_msに応じて方向制御弁11を開口させ(ステップS208)、アクチュエータ205aへの供給流量を方向制御弁11で制御し(ステップS209)、当該フローを終了する。
【0084】
図14は、第3の実施例における第1アーム用方向制御弁11およびチェック弁416の断面図である。なお、他の方向制御弁およびチェック弁もこれと同様の構成である。
【0085】
第1アーム用方向制御弁11は、スプール弁体406を有する。スプール弁体406は、電磁比例減圧弁83d,83eからの操作圧に応じて移動し、メイン油路55とメイン油路427(428)とを連通または遮断する。
【0086】
シート形のチェック弁体421は、メインハウジング444に摺動自在に設置される。第1油室447と第2油室443は、メインハウジング444に形成されるチェック弁体開口部を介して連通する。チェック弁体421は、第3油室442に設置されたばね422によってチェック弁体開口部に着座する。第2油室443と第3油室442は、チェック弁体421内部に設けられた連通油路441を介して連通する。
【0087】
メインハウジング444には、チェック弁体421をメインハウジング444に封入すると共に、チェック弁体421との間に第3油室442を形成するキャップ445が取り付けられる。第3油室442は、キャップ445に設けられた油路423aとメインハウジング444に設けられた油路423bからなる連通油路423を介して第2油室443と連通する。キャップ445には、油路423aを流れる作動油の油温を計測する温度センサ424が設けられる。
【0088】
(2)動作
本発明の第2実施例における油圧駆動装置の動作は、第1の実施例における油圧駆動装置400(図2Aおよび図2Bに示す)とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0089】
コントローラ82は、操作レバー81bから入力されるアクチュエータ205aの操作量とストロークセンサ94~96から取得された車体動作状態を基にアクチュエータ205aの目標流量を演算し、同時に温度センサ424から取得された作動油温度を基に方向制御弁11の開口-指令電気信号マップを選択する。
【0090】
続いて、コントローラ82は、アクチュエータ205aの目標流量と、圧力センサ91,490,430で取得した方向制御弁11の前後差圧とを基に、以下の式を用いて方向制御弁11の目標開口面積を算出する。
【0091】
【数3】
【0092】
次に、開口―指令電気信号マップを参照し、目標開口面積Arefに対応する指令電気信号を算出し、電磁比例減圧弁83d,83eへ出力する。電磁比例減圧弁83d,83eは、コントローラ82からの指令電気指令に応じてパイロット指令圧Pi_ms(PiAm1U,PiAm1D)を生成し、方向制御弁11のパイロットポートへ作用させる。方向制御弁11はパイロット指令圧Pi_ms対して変位し、開口する。
【0093】
(3)効果
本実施例では、方向制御弁11とチェック弁416とで構成される流量制御装置は、油圧ポンプ2の吐出ライン50とアクチュエータ205aとを接続するメイン油路54,55,427,428に配置された、電磁比例減圧弁83d,83eからの操作圧に応じて移動する弁体としてのスプール弁体406と、メイン油路54,55,427,428のうち油圧ポンプ2とスプール弁体406とを接続する油路部分54,55に配置されたチェック弁体421と、スプール弁体406およびチェック弁体421を収容するメインハウジング444と、チェック弁体421をメインハウジング444に封入するキャップ445と、チェック弁体421とキャップ445との間に形成される油室442と、チェック弁体421の下流側と油室442とを連通する連通油路423とを有し、サンプリング油路423は、連通油路423で構成される。
【0094】
以上のように構成した第3の実施例によれば、アクチュエータ204a,205a,206a,211への供給流量を制御する方向制御弁7~12,14~16を通過する作動油の温度を計測し、その計測値に応じて方向制御弁7~12,14~16に対する指令電気信号を補正することにより、アクチュエータ204a,205a,206a,211への供給流量をより目標流量に近づけることができる。これにより、方向制御弁7~12,14~16を通過する作動油の温度変動に関わらず、アクチュエータ204a,205a,206a,211の制御精度を維持することが可能となる。
【0095】
また、アクチュエータ205aに供給する作動油が流れる油路に比べて連通油路423を流れる作動油の流量は少ないため、流れが温度センサ98へ与える負荷が少なく、温度センサ98の故障リスクを低減することができる。さらに、メインハウジング444とは別体で構成されるキャップ445に温度センサ98を設置することで、温度センサ98が故障した場合に容易に温度センサ98を交換することが可能となる。
【0096】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施例の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施例の一部と置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0097】
1…第1油圧ポンプ、1a…流量制御指令圧ポート(レギュレータ)、1b…第1油圧ポンプ自己圧ポート(レギュレータ)、1c…第2油圧ポンプ自己圧ポート(レギュレータ)、2…第2油圧ポンプ、2a…流量制御指令圧ポート(レギュレータ)、2b…第2油圧ポンプ自己圧ポート(レギュレータ)、2c…第1油圧ポンプ自己圧ポート(レギュレータ)、3…第3油圧ポンプ、3a…流量制御指令圧ポート(レギュレータ)、3b…第3油圧ポンプ自己圧ポート(レギュレータ)、4…パイロットポンプ、5…作動油タンク、6…右走行用方向制御弁(流量制御装置)、7…バケット用方向制御弁(流量制御装置)、8…第2アーム用方向制御弁(流量制御装置)、9…第1ブーム用方向制御弁(流量制御装置)、10…第2ブーム用方向制御弁(流量制御装置)、11…第1アーム用方向制御弁(流量制御装置)、12…第1アタッチメント用方向制御弁(流量制御装置)、13…左走行用方向制御弁(流量制御装置)、14…旋回用方向制御弁(流量制御装置)、15…第3ブーム用方向制御弁(流量制御装置)、16…第2アタッチメント用方向制御弁(流量制御装置)、17…合流弁、18…パイロットリリーフ弁、21~29…補助流量制御装置(流量制御装置)、31…主弁、31a…シート弁体(弁体)、31b…制御可変絞り、31c…第1圧力室、31d…第2圧力室、31e…第3圧力室(油室)、32…パイロット可変絞り、32a…パイロットポート、33…主弁、33a…シート弁体(弁体)、33b…制御可変絞り、33c…第1圧力室、33d…第2圧力室、33e…第3圧力室(油室)、34…パイロット可変絞り、34a…パイロットポート、35,36…電磁比例減圧弁、40…吐出ライン、41…センターバイパスライン、42~47…油路(メイン油路)、50…吐出ライン、51…センターバイパスライン、52~58…油路(メイン油路)、60…吐出ライン、61…センターバイパスライン、62~67…油路(メイン油路)、68…パイロットライン(サンプリング油路)、68a,68b…油路、69…パイロットライン(サンプリング油路)、69a,69b…油路、71~74…油路、81a,81b…操作レバー、82…コントローラ、82a…入力部、82b…車体姿勢演算部、82c…要求流量演算部、82d…マップ選択部、82e…目標流量演算部、82f…指令電気信号演算部、82g…出力部、83…電磁弁ユニット、83a~83e…電磁比例減圧弁、91~93…圧力センサ、94~96…ストロークセンサ、97…温度センサ、101…ばね、102…ノッチ、103…油路、104,105…油室、106…プラグ、107…ばね、108…ノッチ、109…ロッド、110…メインハウジング、111…パイロットハウジング、112…パイロットスプール、151…プラグ、201…走行体、202…旋回体(車体)、203…作業装置、204…ブーム、204a…ブームシリンダ(アクチュエータ)、205…アーム、205a…アームシリンダ(アクチュエータ)、206…バケット、206a…バケットシリンダ(アクチュエータ)、207…運転室、208…機械室、209…カウンタウエイト、210…コントロールバルブ、211…旋回モータ(アクチュエータ)、300…油圧ショベル(作業機械)、400…油圧駆動装置、406…スプール弁体(弁体)、412~420…チェック弁(流量制御装置)、421…チェック弁体、422…ばね、423…連通油路(サンプリング油路)、423a,423b…油路、424…温度センサ、427,428…油路(メイン油路)、429,430…圧力センサ、441…連通油路、442…第3油室、443…第2油室、444…メインハウジング、445…キャップ、447…第1油室。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14