(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】継手装置、継手構造及び継手構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 47/02 20060101AFI20230309BHJP
【FI】
F16L47/02
(21)【出願番号】P 2020532335
(86)(22)【出願日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 JP2019028228
(87)【国際公開番号】W WO2020022178
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2020-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2018137858
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518095091
【氏名又は名称】株式会社アクシス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】金山 貞亮
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-214251(JP,A)
【文献】特表2009-536295(JP,A)
【文献】特表2001-505287(JP,A)
【文献】実開平04-107596(JP,U)
【文献】特開2005-188643(JP,A)
【文献】特表2000-513074(JP,A)
【文献】特開2004-156734(JP,A)
【文献】特開平11-201363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管が接続される接続端部を有し、前記管が前記接続端部の外周に重なるように接続される継手と、
前記継手の接続端部の外周に設けられ、前記継手の接続端部の外周と前記管との間に介在され、電磁誘導により発熱する導電性部材と、
前記継手の接続端部と前記管との重なり部分を覆うカバー部材と、
前記導電性部材を前記継手の接続端部に位置決めする位置決め機構と、備え、
前記位置決め機構は、前記継手の接続端部に設けられ、前記導電性部材をはめ込み可能な溝部を有し、
前記導電性部材は、外周側に配置された第1の環状部と、内周側に配置された第2の環状部を有し、前記第1の環状部と前記第2の環状部が前記継手の軸方向の一部で互いに接続されている、継手装置。
【請求項2】
前記導電性部材は、前記管と接触する接触面を有し、
前記導電性部材の前記管との接触面は、前記継手の軸方向の少なくともいずれかの端部に、その端部の最端側が低くなる傾斜面を有する、
請求項1に記載の継手装置。
【請求項3】
前記導電性部材は、前記管との接触面に突起部を有する、
請求項1又は2に記載の継手装置。
【請求項4】
前記継手の接続端部は、先端から離れるにつれて次第に拡径する傾斜部と、前記傾斜部と継手本体部とを接続する基部と、を有し、
前記導電性部材は、前記基部に設けられている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の継手装置。
【請求項5】
前記管の溶融の程度を指標する指標部をさらに備えた、
請求項1から4のいずれか一項に記載の継手装置。
【請求項6】
前記指標部の基準となる基準部をさらに備えた、
請求項5に記載の継手装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の継手装置と、
管と、を備え、
前記管が前記継手の接続端部に接続された、継手構造。
【請求項8】
請求項7に記載の継手構造の製造方法であって、
継手の接続端部と管との重なり部分に導電性部材を配置する工程と、
電磁誘導により前記導電性部材を発熱させて、前記継手の接続端部と前記管を溶着させる工程と、を備えた、継手構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継手装置、継手構造及び継手構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置等の配管に用いられる継手は、一般的に、管とねじ機構などを用いて機械的に連結される。例えば継手に管を差し込んだ状態で、継手と管路の外側に設けられたねじ機構を締め付けて継手と管を互いに連結させている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上述の機械的な方法を用いて継手と管路を連結する場合には、ねじの締め付け応力に耐えるため、継手の肉厚を厚くしなければならならず、継手と管の接続構造が大型化する。また、配管の使用中に振動や内部圧力等により、継手と管の連結部分に緩みが発生する可能性があるため、液漏れ防止のために増し締め作業が必要になる。
【0004】
そこで、継手と管とを自己発熱式の溶着機を用いて加熱し溶着する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-115154号公報
【文献】特開2007-239973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の溶着方法によれば、継手に管をはめ込み、そのはめ込み部分を外側から溶着機で挟み、溶着機から継手と管のはめ込み部分に熱を加えて、継手と管を互いに溶着させている。このため、溶着作業には、溶着機が昇温するまでの時間、また溶着機の熱が継手と管の接触部分(溶着部分)に伝わりその接触部分が溶融し溶着するまでの時間、さらに継手と管の溶着部分が冷却されるまでの時間がかかる。このように継手と管の接続作業に時間がかかっている。
【0007】
本出願はかかる点に鑑みてなされたものであり、溶着方法を用いて行われる継手と管の接続作業にかかる時間を短縮することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る継手装置は、管が接続される接続端部を有する継手と、前記継手の接続端部に設けられた導電性部材と、を備えている。
【0009】
本態様によれば、継手の接続端部と管との重なり部分に導電性部材を配置した状態で、電磁誘導により導電性部材を発熱させて、継手の接続端部と管を溶着させることができる。この場合、継手の接続端部と管との重なり部分の導電性部材の熱によりその周りが溶着するので、溶着するまでに時間がかからない。また、電磁誘導により導電性部材が発熱するまでの時間もかからない。その結果、継手と管の接続作業にかかる時間を短縮することができる。
【0010】
上記継手装置は、前記導電性部材を前記継手の接続端部に位置決めする位置決め機構を、さらに備えていてもよい。
【0011】
前記位置決め機構は、前記継手の接続端部に設けられ、前記導電性部材をはめ込み可能な溝部を有していてもよい。
【0012】
前記導電性部材は、外周側に配置された第1の環状部と、内周側に配置された第2の環状部を有し、前記第1の環状部と前記第2の環状が前記継手の軸方向の一部で互いに接続されていてもよい。
【0013】
前記位置決め機構は、前記継手の接続端部に設けられた凸部と、前記導電性部材に設けられ前記凸部が嵌合可能な穴部と、を有していてもよい。
【0014】
前記凸部及び前記穴部は、前記継手の接続端部の周方向に断続的に形成されていてもよい。
【0015】
前記凸部は、前記継手の接続端部の径方向に弾性を有していてもよい。
【0016】
前記位置決め機構は、前記継手の接続端部に設けられ、前記導電性部材を係止可能な爪部を有していてもよい。
【0017】
前記導電性部材の前記管との接触面は、前記継手の軸方向の少なくともいずれかの端部に、その端部の最端側が低くなる傾斜面を有していてもよい。
【0018】
前記導電性部材は、前記管との接触面に突起部を有していてもよい。
【0019】
前記継手の接続端部は、先端から離れるにつれて次第に拡径する傾斜部と、前記傾斜部と継手本体部とを接続する基部と、を有し、前記導電性部材は、前記基部に設けられていてもよい。
【0020】
上記継手装置は、前記継手の接続端部と前記管との重なり部分を覆うカバー部材を、さらに備えていてもよい。
【0021】
上記継手装置は、前記管の溶融の程度を指標する指標部をさらに備えていてもよい。
【0022】
上記継手装置は、前記指標部の基準となる基準部をさらに備えていてもよい。
【0023】
本発明の別の態様に係る継手構造は、上記継手装置と管とを備え、前記管が前記継手の接続端部に接続されている。
【0024】
本発明の別の態様に係る継手構造の製造方法は、継手と、その継手の接続端部に接続される管とを有する継手構造の製造方法であって、継手の接続端部と管との重なり部分に導電性部材を配置する工程と、電磁誘導により前記導電性部材を発熱させて、前記継手の接続端部と前記管を溶着させる工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、溶着方法を用いて行われる継手と管の接続作業にかかる時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】継手構造の構成の一例を示す分解斜視図である。
【
図5】溶着機が配置された継手構造の断面図である。
【
図6】継手の接続端部に凸部のある継手構造の他の構成を示す分解斜視図である。
【
図8】継手の接続端部の凸部がばね板である継手構造の他の構成を示す分解斜視図である。
【
図10】継手の接続端部に爪部のある継手構造の他の構成を示す分解斜視図である。
【
図12】導電性部材の表面に突起部がある継手構造の他の構成を示す断面図である。
【
図13】指標部及び基準部を有する継手構造の断面図である。
【
図14】カバー部材に切り欠きを設けた場合の継手構造の外観図である。
【
図15】継手の接続端部の内側に管がはめ込まれる場合の継手構造の一例を示す断面図である。
【
図16】継手の接続端部の内側に管がはめ込まれる場合の継手構造の一例を示す断面図である。
【
図17】継手構造の構成の一例を示す分解斜視図である。
【
図18】継手構造の構成の一例を示す分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
【0028】
図1は、本実施の形態に係る継手構造1の構成の一例を示すための継手構造1の分解斜視図である。
図2は継手構造1の断面図である。
図1及び
図2に示すように継手構造1は、例えば継手装置10と、継手装置10に接続される管11とを備えている。
【0029】
管11は、例えばフッ素系(PFA)の樹脂から形成されている。管11は、軟質で変形自在である。例えば管11は、
図1に示すように径が一定の円管である。また、管11は、
図2に示すように継手構造1として組み立てられた状態では、管本体部20と、管本体部20よりも拡径した管端部21を備えている。管端部21は、例えば管端部21の最端(先端)に位置する拡径部30と、拡径部30と管本体部20を接続し、管本体部20から拡径部30に向けて次第に径が大きくなる傾斜部31を備えている。なお、管11の材質は、フッ素系の樹脂に特に限定されるものではなく、例えばPPなどの他の可塑性樹脂でもよい。
【0030】
継手装置10は、例えば管11が接続される接続端部41を有する継手40と、継手40の接続端部41の外周面に取り付けられる導電性部材42と、継手40の接続端部41と管11との重なり部分を覆うカバー部材43とを備えている。
【0031】
継手40は、例えば円管状に形成されている。接続端部41は、継手40の他の部分(継手本体部44)に比べて縮径している。接続端部41は、例えば、継手40の軸方向(図 のX方向)の先端側に配置され先端から離れるにつれて次第に拡径する傾斜部50と、傾斜部50と継手本体部44を接続する基部51を有している。基部51の外径は、組み立て前の状態の管11の内径よりも大きい。基部51の外周面には、導電性部材42がはめ込まれる溝部52が形成されている。よって、接続端部41の外周面は、先端から継手本体部44側に向けて次第に径が大きくなる傾斜部50の傾斜面60と、溝部52と、径が一定の基部51の基部面61とを、この順で連続的に備えている。
【0032】
溝部52は、継手40の軸周りの外周面に沿って環状に形成されている。溝部52は、継手40を継手40の軸を含む面で切断したときの断面形状が方形の凹状になるように形成されている。本実施の形態において、溝部52は、導電性部材42を継手40の接続端部41の所定位置に位置決めする位置決め機構を構成している。
【0033】
導電性部材42は、例えばステンレス鋼材(SUS430)、鉄鋼材(SS400)、プリハードン鋼(NAK55)などの金属により形成されている。導電性部材42の材質は、これに限られず、ばね材(SUS304WPB、SUS316WPA)などであってもよい。
【0034】
図1及び
図3に示すように導電性部材42は、略環状に形成されている。導電性部材42の外径は、組み立て前の状態の管11の内径よりも大きい。
図3に示すように導電性部材42は、外周側に配置された板状の第1の環状部70と、内周側に配置された板状の第2の環状部71を有している。第1の環状部70と第2の環状部71は、継手40の軸方向の一方の端部で互いに接続されている。これにより、導電性部材42は、継手40の軸を含む面で切断した断面形状が略V字状になるように形成されている。
【0035】
例えば第1の環状部70の板厚は、第2の環状部71に比べて厚い。第1の環状部70における第2の環状部71との接続端部付近には、第2の環状部71側(内側)に開口する環状の溝72が形成されている。第1の環状部70に外側から外力が加わると、第1の環状部70と第2の環状部71が互いに近づく方向に弾性変形し、第1の環状部70と第2の環状部71が互いに離れる方向に弾性力が働く。すなわち、導電性部材42は、径方向に弾性を有している。
図2に示すように導電性部材42の厚さは、溝部52の深さよりも大きく、導電性部材42が溝部52にはめ込まれたときには、導電性部材42の外側部分(第1の環状部70)が溝部52の外側に突出する。
【0036】
導電性部材42の外周面は、継手40の軸方向Xの先端側の端部にその先端側が低くなる傾斜面73を有している。導電性部材42が継手40の溝部52にはめ込まれたときには、傾斜面73は継手40の接続端部41の傾斜面60に滑らかに連続する。
【0037】
管端部21は、継手40の接続端部41の外周面に対し導電性部材42を覆うように接続可能である。このとき、導電性部材42は、継手40の接続端部41と管端部21との間に配置される。
【0038】
カバー部材43は、例えばフッ素系の樹脂(例えばPTFE)により形成されている。カバー部材43の材質は、これに限られず、シリコンなどであってもよい。カバー部材43は、例えば管11よりも高い融点を有している材質や熱を加えても溶けない樹脂であってもよい。カバー部材43は、軟質で変形可能である。
【0039】
カバー部材43は、
図1に示すように径が一定の円管状に形成され、その先端部に内側の縮径したフランジ部83(
図2に示す)を備えている。また、カバー部材43は、
図2に示すように継手構造1として組み立てられた状態では、管端部21付近の形状に合うように変形する。すなわち、カバー部材43は、例えば管本体部20の外周面を覆う縮径部80と、管端部21の傾斜部31の外周面を覆う傾斜部81と、管端部21の拡径部30の外周面を覆う拡径部82と、管端部21の先端面32を覆うフランジ部83とを有している。
【0040】
次に、以上のように構成された継手構造1の製造方法の一例について説明する。先ず、
図1に示したように管11、継手40、導電性部材42及びカバー部材43が用意される。次に、例えばカバー部材43が管11に取り付けられた状態で、冶具を用いて、
図2に示すように管11の内側の所定位置に導電性部材42が押し込まれる。このとき、管11及びカバー部材43の一部が拡径する。次に、管端部21の内側に継手40の接続端部41が差し込まれる。このとき、継手40の接続端部41の溝部52に導電性部材42がはめ込まれる。導電性部材42は、第1の環状部70と第2の環状部71の接続端部が継手40の継手本体部44側に位置している。こうして、導電性部材42が継手40の接続端部41の軸方向Xの所定位置に位置決めされる。
【0041】
また、導電性部材42は、継手40の接続端部41と管端部21との間に挟まれる。導電性部材42の周囲は、継手40の接続端部41と管端部21とで覆われ、導電性部材42の前後には、継手40の接続端部41と管端部21とが直接接触した接触面Aが形成される。カバー部材43は継手40の接続端部41と管端部21との重なり部分に被せられている。
図4は、このときの継手構造1の外観を示す。なお、上記継手40、導電性部材42、管11及びカバー部材43の組み立ての順番はこれに限られない。
【0042】
次に、
図5に示すように電磁誘導式の溶着機90により、カバー部材43の外周が覆われる。溶着機90を作動させ、溶着機90のコイル91による電磁誘導により、導電性部材42を発熱させる。導電性部材42の熱により、導電性部材42の周囲の継手40の接続端部41と管11を溶融させ溶着させる。その後、溶着機90を停止させ、継手40と管11の接続作業が終了する。なお、溶着機90は、この例に限られず、電磁誘導により導電性部材42を発熱させるものであれば他の構成を有するものであってもよい。
【0043】
本実施の形態によれば、継手40の接続端部41を管11にはめ込み、継手40の接続端部41と管11との重なり部分に導電性部材42を配置した状態で、電磁誘導により導電性部材42を発熱させて、継手40の接続端部41と管11を溶着させることができる。これにより、継手40の接続端部41と管11の重なり部分にある導電性部材42の熱によりその周囲が溶着するので、溶着の時間がかからない。また、電磁誘導により導電性部材42が発熱するまでの時間もかからない。よって継手40と管11の接続作業にかかる時間を短縮することができる。特に、本実施の形態によれば、継手40の接続端部41と管11の間にある導電性部材42の熱によりその周囲が溶着するので、溶着の時間を著しく短縮することができる。また、導電性部材42が熱源となるので、導電性部材42を所望の位置に設置することで、溶着したい部分にのみ熱を与えることができる。
【0044】
継手装置10は、導電性部材42を継手40の接続端部41に位置決めする溝部52を備えているので、導電性部材42の位置、すなわち溶着の熱源となる位置を接続端部41上の適切な位置に固定することができる。この結果、継手40と管11との溶着を安定的かつ効果的に行うことができる。
【0045】
導電性部材42は、外周側に配置された第1の環状部70と、内周側に配置された第2の環状部71を有し、第1の環状部70と第2の環状部71が継手40の軸方向の端部で互いに接続されている。これによれば、導電性部材42が管端部21と接続端部41の間に設置された際に、導電性部材42に径方向の反発力が生じ、管11と継手40を押す。これにより、導電性部材42が十分に位置決めされる。また、導電性部材42と、管11及び継手40との間の密着性が向上し、導電性部材42の熱が効率的に管11と継手40に伝わり、溶着が好適に行われる。さらに導電性部材42の体積や重量を減らすことができる。
【0046】
導電性部材42は、管11との接触面における継手40の軸方向Xの少なくともいずれかの端部に、その端部の終端側が低くなる傾斜面73を有している。これにより、導電性部材42の継手40の軸方向Xの端部において、導電性部材42と管11との密着性が向上し、導電性部材42と管11との間の熱伝導が効率的に行われる。
【0047】
継手40の接続端部41は、先端から離れるにつれて次第に拡径する傾斜部50と、傾斜部50と継手本体部44とを接続する基部51を有し、導電性部材42は基部51に設けられている。これにより、接続端部41と管11との接触面積が十分に確保され、継手40と管11との溶着が十分に行われる。また、導電性部材42が接続端部41の先端から離れるので、導電性部材42が管11や継手40の内部領域に露出することがない。また、導電性部材42が継手40の先端部分(管11や継手40の流路領域に露出する部分)までの距離が確保され、継手40の先端部分に溶着によるビード(盛り上がり)ができることを抑制することができる。
【0048】
継手装置10は、継手40の接続端部41と管11との重なり部分を覆うカバー部材43を備えているので、溶着後直ちに継手構造1を手で取り扱うことができ、接続作業にかかる時間をさらに短縮することができる。また、溶着時に管11の一部が溶融しても、継手構造1の綺麗な外観が保たれる。
【0049】
導電性部材42と継手40の接続端部41の位置決め機構は、上記実施の形態のものに限られない。例えば
図6に示すように導電性部材42が継手40の軸方向Xに幅のある管状に形成され、継手40の接続端部41の外周面に凸部100が設けられ、導電性部材42に凸部100が嵌合する穴部101が設けられていてもよい。かかる場合、凸部100は、例えば継手40の接続端部41の周方向に沿って複数個所に等間隔で設けられている。凸部100は、平坦な上面100aを有している。凸部100は、導電性部材42の厚みよりも大きい高さを有している。穴部101は、導電性部材42の周方向に沿って、凸部100と同じ数の複数個所に等間隔で設けられている。穴部101は、導電性部材42の厚み方向に貫通している。また、
図7に示すように導電性部材42の外周面の軸方向Xの両端には、最端側が低くなる傾斜面110、111が形成されている。導電性部材42における継手40の先端側に近い傾斜面110は、導電性部材42が継手40の接続端部41にはめ込まれたときに、継手40の接続端部41の傾斜面60に滑らかに連続する。
【0050】
かかる場合、
図7に示すように導電性部材42が継手40の接続端部41にはめ込まれたときに、凸部100が穴部101に嵌合し、導電性部材42が継手40の接続端部41に位置決めされる。また継手40の凸部100の上面100aは管11と直接接触する。そして、電磁誘導式の溶着機90により導電性部材42が発熱し、その周囲の継手40の接続端部41と管11が溶着する。
【0051】
この例によれば、導電性部材42と継手40の接続端部41の位置決めを適切に行うことができ、この結果、継手40の接続端部41と管11の溶着を適切に行うことができる。また、導電性部材42に凸部100が貫通する穴部101があるので、凸部100においても溶着が行われ、継手40の接続端部41と管11の接触面積が増えて、継手40の接続端部41と管11の溶着強度が向上する。
【0052】
前記実施の形態における凸部100は、
図8に示すように径方向に弾性を有する例えばばね板であってもよい。ばね板の形状は、特に限定されるものではないが、上に凸のアーチ状に形成されていてもよい。かかる場合、
図9に示すように導電性部材42が継手40の接続端部41にはめ込まれ、凸部100が穴部101に嵌合した際には、凸部100がその弾性力により管11を押す。
【0053】
この例によれば、継手40の接続端部41の凸部100がばねの力で管11を押すので、継手40の接続端部41と管11との密着性が向上し、この結果継手40の接続端部41と管11の溶着強度がさらに上がる。
【0054】
さらに、導電性部材42と継手40の接続端部41の位置決め機構は、
図10に示すように継手40の接続端部41の外周面に設けられた、導電性部材42を係止可能な爪部(係止部)120を有するものであってもよい。この場合、例えば爪部120は、継手40の接続端部41の外周面の周方向に沿って複数個所に設けられている。爪部120の上面は、継手40の接続端部41の先端側から継手本体部44側に向かって次第に高くなる傾斜面121を有している。導電性部材42は、例えば穴部がない厚みのある環状に形成されている。
図11に示すように例えば導電性部材42の上面は、導電性部材42が継手40の接続端部41にはめ込まれた際に、爪部120の傾斜面121に連続的に繋がる平坦面130と、継手本体部44側に端面に向かって次第に低くなる傾斜面131を備えている。
【0055】
そして、導電性部材42は、継手40の接続端部41にはめ込まれ、爪部120に係止され、管11と継手40の接続端部41との間に配置される。その後、電磁誘導式の溶着機90により導電性部材42が発熱し、継手40の接続端部41と管11が溶着する。
【0056】
かかる例によれば、継手40の接続端部41と管11の接触面積が大きく確保されるので、継手40の接続端部41と管11との溶着強度が向上する。
【0057】
前記実施の形態において、
図12に示すように導電性部材42は、管11との接触面に突起部140を備えていてもよい。かかる場合、導電性部材42と管11との接触面積が大きくなるので、電磁誘導により発熱した導電性部材42の熱が管11に伝わりやすくなる。この結果、継手40の接続端部41と管11との溶着がより適切に行われる。また、溶着前に管11が継手40接続端部41から抜けることを防止することができる。なお、以上の実施の形態で記載したすべての導電性部材42は、突起部140を備えていてもよい。そのときの突起部104の形や位置、数はこれに限られない。
【0058】
図13に示すように継手装置10は、管11の溶融の程度を指標する指標部150を備えていてもよい。指標部150は、例えばカバー部材43や継手本体部44の外周面に設けられている。指標部150は、例えば突起151を有する。突起151は、電磁誘導時に導電性部材42の熱により溶融し、この突起151の溶融の程度は、継手40と管11の溶着の程度に対応する。これにより、作業者が突起151の溶融を目視することにより、管11の溶融の程度を指標できる。また、継手装置10は、指標部150の基準となる基準部152を備えていてもよい。基準部152は、例えば継手本体部44やカバー部材43の外周面に設けられている。基準部152は、例えば指標部150と同じ形状を有し、突起153を有している。基準部152は、指標部150よりも導電性部材42から遠い位置に設けられる。これにより、基準部152を見ながら指標部150を指標することができる。よって、電磁誘導により導電性部材42を発熱させる時間を適切に判断することができる。なお、指標部150と基準部152を両方とも継手本体部44の外周面に設ける場合には、指標部150及び基準部152を継手本体部44の外周面の軸方向Xに並べて配置してもよい。また、指標部150及び基準部152がカバー部材43と干渉する場合には、
図14に示すようにカバー部材43に切り欠き43aを設け、その切り欠き43aにより露出した継手本体部44の表面に指標部150や基準部152を設けてもよい。また、指標部150は、継手40と管11の溶着が適切に行われるタイミングで突起151が溶融するような位置に設定されてもよい。また、基準部152は、過剰の溶着によりビードが発生するタイミングで突起153が溶融するような位置に設定されていてもよい。
【0059】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0060】
例えば以上の実施の形態において、導電性部材42の外周面の軸方向の一方又は両方の端部に傾斜面73、110、111、131を備えているものがあったが、かかる傾斜面はあってもなくてもよい。また、導電性部材42の形状や数は上記実施の形態のものに限られず、例えば導電性部材42は環状に形成されていなくてもよいし、複数設けられていてもよい。環状の導電性部材42は、接続端部41の外周面に巻かれるコイル状のものであってもよい。コイルはコイルバネであってもよい。
【0061】
以上の実施の形態において、継手構造1は、管11が継手40の接続端部41の外周面にはめ込まれるものであったが、例えば
図15に示すように管11が継手40の接続端部41の内周面にはめ込まれるものであってもよい。この場合、例えば導電性部材42は、管11と継手40の接続端部41との間(管11の外周面と接続端部41の内周面の間)に配置される。また、
図16に示すように導電性部材42は、継手40の接続端部41と管11との重なり部分の外周面に設けられていてもよい。
【0062】
図17から
図19に示すように継手構造1は、管11と継手40の接続端部41とが互いに嵌合し、その嵌合した下管11と継手40の接続端部41との重なり部分における継手40の接続端部41の外周面に導電性部材42が設けられていてもよい。この場合、例えば継手40の接続端部41の端面に、環状に凹んだ嵌合部160が設けられ、この嵌合部160に管11の先端部が嵌め込まれる。接続端部41の外周面には、環状の導電性部材42が嵌め込まれている。接続端部41の外周面には、嵌め込まれた導電性部材42の軸方向Xの継手40側の端面が当接するストッパ161が設けられている。このストッパ161により導電性部材42を位置決めすることができる。管11と継手40の接続端部41との重なり部分には、導電性部材42を覆う環状のカバー部材162が設けられている。カバー部材162は、その管11側の端部に縮径したフランジ部163を備えている。フランジ部163は、
図19に示すように導電性部材42の管11側の端面と接続端部41の管11側の端面とを覆っている。これにより、導電性部材42の上下面と軸方向Xの両端面が、接続端部41及びカバー部材162により覆われている。なお、カバー部材162の材質は、例えば上述のカバー部材43と同じであってもよい。
【0063】
上記例において電磁誘導により導電性部材42を発熱させることにより、導電性部材42の周囲の継手40の接続端部41と管11を溶融させ溶着させることができる。
【0064】
導電性部材42は、継手40の接続端部41にはめ込まれるものであったが、予め継手40の接続端部41に固定されたものであってもよい。導電性部材42と継手40の接続端部41との位置決め機構は、上記実施の形態のものに限られない。また、この位置決め機構は、無くてもよい。カバー部材43の形状等は上記実施の形態のものに限られない。またカバー部材43は、無くてもよい。継手40は、上記実施の形態のものに限られず、L字型、T字型等のあらゆる公知の継手に本発明は適用できる。継手40の接続端部41の数も一つに限られず、複数あってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、溶着方法を用いて行われる継手と管の接続作業にかかる時間を短縮する際に有用である。
【符号の説明】
【0066】
1 継手構造
10 継手装置
11 管
21 管端部
40 継手
41 接続端部
42 導電性部材
43 カバー部材
52 溝部