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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】麺体の白色化抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20230309BHJP
【FI】
A23L7/109 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019065441
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020162467
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】黒田 裕
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-232742(JP,A)
【文献】特開平11-276105(JP,A)
【文献】特開2017-023127(JP,A)
【文献】特開2003-038114(JP,A)
【文献】特開2011-030501(JP,A)
【文献】米国特許第05395639(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/
インターネット(Google)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
麺体の主原料粉に対して2~20重量%の全粒粉を含む生の麺体に蒸煮庫内で過熱蒸気を吹き付ける工程を有する麺類の製造方法において、前記蒸煮庫内で過熱蒸気を吹き付ける工程の直前に前記生の麺体に水を付与することを特徴とする麺体の白色化抑制方法。
【請求項2】
前記生の麺体に付与する水の量が前記生の麺体100gに対して1.0~5.0gであることを特徴とする請求項1載の麺体の白色化抑制方法。
【請求項3】
前記生の麺体に蒸気庫内で過熱蒸気を吹き付ける工程における蒸気庫内の温度が150~280℃であることを特徴とする請求項1または2記載の麺体の白色化抑制方法。
【請求項4】
前記生の麺体に蒸気庫内で過熱蒸気を吹き付ける工程における1回の過熱蒸気の処理時間が20~60秒であることを特徴とする請求項1~何れか一項記載の麺体の白色化抑制方法。
【請求項5】
前記麺体が麺線であり、前記麺類が即席麺であることを特徴とする請求項1~何れか一項記載の麺体の白色化抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全粒粉を含む麺体に過熱蒸気処理する際に発生する麺体の白色化を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
健康志向の高まりから、栄養素を多く含む全粒粉を含む麺が開発されている(例えば、特許文献1または2参照)。しかしながら、全粒粉を多く配合した麺は、小麦の表皮や胚芽を含むため、ふすま臭などがあり、食感も全粒粉を含まないものと比べ悪く、製麺性も悪い。
【0003】
一方で過熱蒸気を用いた製造技術としては特許文献3~6などに記載された技術がある。
【0004】
特許文献3では、水分含量が高い生麺線を過熱蒸気によりα化と共に乾燥し、この時の水分蒸散量を調整することで、ヒビ割れや火脹れがなく均一で膨化度の高い乾燥麺が得られることが記載されている。
【0005】
特許文献4では、生麺線を過熱蒸気によりα化と共に膨化させた後、冷却し、熱風により乾燥することで、乾燥時間が短縮でき、保存性がよく、復元性がよい乾燥麺が得られることが記載されている。
【0006】
特許文献5では飽和蒸気を雰囲気中で加熱した蒸気で生麺線を蒸煮することで、湯戻し時間が短縮でき、なめらかで弾力性を持った麺質となり、火脹れ、発泡等の麺線の肌荒れを招くことなく、透明感のある外観を持ち、更にのびが遅く、調理後の麺質を相当時間保持できる油揚げ麺、熱風乾燥麺等の即席麺が得られることが記載されている。
【0007】
特許文献6では、生麺線に過熱蒸気流を直接吹付けて蒸煮する工程と、水分を補給する工程と、その後再び過熱蒸気及び/又は非過熱蒸気で蒸煮する工程の後、乾燥することで生麺様の食感及び風味を有し、厚みのある太めの麺であっても復元性に優れた即席麺が得られることが記載されている。
【0008】
発明者らは、高温の過熱蒸気を全粒粉入りの麺に吹き付けて処理したところ、全粒粉由来のふすま臭などの悪臭がなくなり、風味がよくなるだけでなく、食感も調理感が出て良くなることを見出した。しかしながら、一方で、全粒粉を配合した麺は、麺自体がくすんだ色となるため、過熱蒸気処理により麺が膨化した部分が目立ち白色化するといった新たな課題が発生した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2011-4685号公報
【文献】特開2015-195759号公報
【文献】特公昭63-56787号公報
【文献】特公昭62-62138号公報
【文献】特開2003-174853号公報
【文献】特許第4438969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、全粒粉を使用した麺体を過熱蒸気で処理した際の麺線の白色化を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、全粒粉を使用した麺体を過熱蒸気で処理した際の麺線の白色化を抑制する方法を鋭意研究の結果、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、全粒粉を含む生の麺体に蒸煮庫内で過熱蒸気を吹き付ける工程を有する麺類の製造方法において、前記蒸煮庫内で過熱蒸気を吹き付ける工程の直前に前記生の麺体に水を付与することを特徴とする麺体の白色化抑制方法である。
【0013】
本発明に係る全粒粉の配合量としては、麺体の主原料粉の重量に対して2~20重量%であることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る麺体に付与する水の量が麺体100gに対して1.0~5.0gであることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る過熱蒸気処理に用いる蒸煮庫内の温度が150~280℃であることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る過熱蒸気処理の1回の処理時間が20~60秒が好ましい。
【0017】
また、本発明に係る麺体が麺線であり、麺類としては、即席麺が好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、全粒粉を使用した麺体を過熱蒸気で処理した際の麺線の白色化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る方法を具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
1.麺体の原料配合
本実施形態では、まず、常法により生の麺体を準備する。麺体とは、いわゆる麺線とよばれるような中華麺、スパゲッティなどの線状やひも状の形状や、ショートパスタ、マカロニ、餃子の皮などの麺皮なども麺体に含む。
【0021】
また、本発明における麺類とは、生麺、蒸麺、茹で麺、乾麺、半乾麺、即席麺、冷凍麺、餃子などの麺皮類が挙げられる。
【0022】
本発明の麺体の原料は、全粒粉を含む小麦粉等の主原料粉に、副原料、練り水を加えて混練した後、複合、圧延、切出して生の麺体とするか、エクストルーダー等で押し出して生の麺体としてもよい。
【0023】
本発明に係る麺体の主原料粉は、全粒粉を含む。全粒粉とは小麦粉の一種で、通常の小麦粉は、小麦の表皮や胚芽を除いた胚乳部分を挽いて粉としたものであるが、全粒粉は、小麦の表皮、胚芽、胚乳をすべて粉にしたものである。本発明においては、グラハム粉も全粒粉に含む。グラハム粉とは、通常通り胚乳を挽き、表皮や胚芽を粗挽きした粉とを混ぜ合わせた粉である。見た目の面でグラハム粉の方が好ましい。本発明においては、全粒粉を麺体の主原料粉の重量に対して2~20重量添加する。全粒粉の添加量が少ないと全粒粉を含んでいてもあまり見た目が変わらず、そもそも白色化が目立たない。逆に多すぎると製麺性が悪くなり、麺体が千切れやすくなるだけでなく、麺体自体の色調がくすみ、ふすま臭が増え、風味が悪く、食感も悪化する。より好ましくは、主原料粉の重量に対して2~10重量%の範囲となるように添加することが好ましい。
【0024】
全粒粉以外の麺体の主原料粉としては、一般的な小麦粉、デュラム粉、大麦粉、米粉、トウモロコシ粉などの穀物粉や馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、ワキシーコーンスターチ、コーンスターチ、小麦澱粉などの澱粉及びこれらの澱粉を加工した澱粉が挙げられる。
【0025】
また、本発明では、副原料として麺体の製造において一般に使用されている食塩やアルカリ剤、食用油脂、各種増粘剤、グルテンや全卵粉、卵白粉等の麺質改良剤、カロチン色素等の各種色素及び保存料等を添加することができる。これらは、主原料粉と一緒に粉体で添加しても、練り水に溶かすか懸濁させて添加してもよい。
【0026】
2.生の麺体作製
常法に従って、前記麺体原料を混練することによって麺生地を製造する。より具体的には、前記主原料粉に練り水を加え、ついでミキサーを用いて各種材料が均一に混ざるように良く混練して麺生地を製造する。
【0027】
作製した麺生地から生の麺体を作製する方法は、公知の何れかの手段を使用してよい。例えば、作製した麺生地を圧延して麺帯とし、複合、圧延して切出して麺状や麺皮状の麺体を作製すればよい。また、麺生地を圧延した麺帯を3枚以上重ね合わせてさらに圧延し、多層構造の麺帯とした後、圧延して切出してもよい。また、麺生地をエクストルーダー等で押し出して、麺体を作製するか、麺生地をエクストルーダー等で押し出して小塊とした後、圧延して麺帯とし、複合、圧延して切出す方法をとってもよい。スパゲッティやショートパスタ、マカロニに関しては、エクストルーダーから麺生地を押し出す際のダイスの形状を変えることで様々な形の生の麺体を作製することができる。
【0028】
3.水付与
次に、上記のようにして作製した生の麺体に対して過熱蒸気を処理する前に水を付与する。水の付与方法としては、特に限定はなく、水又はお湯をスプレーするか、水又はお湯に麺線を浸漬すること等により行うことができる。細かな水の付与量を調整するにおいてはスプレーにて付与する方法が好ましい。付与量としては、生の麺体100gあたり1.0~5.0gとなるように水を付与することが好ましい。少なすぎると白色化を抑制できず、多すぎると麺線が結着したり、食感が悪くなる。
【0029】
4.過熱蒸気処理
次いで、生の麺体に過熱蒸気を処理する。過熱蒸気を処理することで全粒粉を含む麺体において、ふすま臭を低減し、調理感のある麺体を得ることができる。処理方法としては、過熱蒸気を生の麺体に直接吹付けて接触させる方法又は過熱蒸気を間接的に吹き付けて生の麺体に接触させる方法が挙げられる。
【0030】
過熱蒸気を生の麺体に直接吹付けて接触させる方法とは、過熱蒸気を直接噴出口から蒸煮庫内に吐き出される過熱蒸気の流れが、麺体に接触するまで他の固形物に触れることなく、しかも、失速して完全に拡散してしまう前に、生の麺体の表面にあたるようにする方法を意味する。また、蒸気庫内において過熱蒸気流を吹付ける方法は特に限定されないが、麺体全体に均一に吹付けられるような複数の噴出口を設けることが好ましい。蒸気庫内部をネットコンベアが水平方向に移送するトンネル型の蒸気庫の場合には、過熱蒸気流は麺体の上下方向から同時に吹付けることが好ましい。
【0031】
過熱蒸気を間接的に生麺線に接触させる方法とは、過熱蒸気の流れが、麺線に接触するまでに他の固形物に触れ、過熱蒸気の流れが弱まって拡散した状態で生麺線に接触する方法を意味する。
【0032】
過熱蒸気を生の麺体に直接吹付けて接触させる方法のメリットとしては、短時間の処理で目的とする効果を得られ、蒸気庫や処理装置等がコンパクト化できることが挙げられる。一方、間接的に吹き付けて生麺線に過熱蒸気を接触させる方法のメリットとしては、過熱蒸気による処理が直接吹付ける方法に比べ均一に行われることが挙げられる。
【0033】
この過熱蒸気処理では、麺体表面及び内部にできるだけ高い熱量を与えるため、例えば、麺線が触れる過熱蒸気の温度が好ましくは150~280℃、更に好ましくは180~250℃程度となるように過熱蒸気を処理するとよい。150℃未満では、そもそも白色化が起こりにくくなる代わりに風味や食感が悪くなる。逆に280℃よりも高い場合には、焦げ臭が発生したり、食感が硬くなり、また水付与を行っても白色化を防ぐことが困難となる。
【0034】
また、過熱蒸気処理工程の後にさらに水分補給工程を加えてもよい。水分補給工程は、特に限定はされないが、過熱蒸気処理庫内、もしくは庫外で麺線に水又はお湯をシャワーするか、水又はお湯に麺線を浸漬すること等により行うことができる。
【0035】
具体的には、特許文献6に記載されている、過熱蒸気を吹付けた後、水分補給工程を行い、再び過熱蒸気及び/又は非過熱蒸気で蒸煮する工程や、過熱蒸気を吹付けた後、水分補給工程と過熱蒸気及び/又は非過熱蒸気で蒸煮する工程を繰り返す工程のような方法が挙げられる。
【0036】
過熱蒸気処理の1回の処理時間は、20~60秒が好ましい。20秒未満であると、白色化は起こりにくくなるが過熱蒸気による十分な加熱効果が得られず、60秒を超えると水分付与を行っても白色化を防ぐことが困難となる。上述したように過熱蒸気処理を複数回行う場合も1回あたりの過熱蒸気処理の時間は、20~60秒が好ましい。
【0037】
5.その他工程
以上のような過熱蒸気処理工程を行った麺体を生麺として使用することもでき、餃子の皮などの麺皮類として使用することもできる。また、茹で処理や蒸処理を行うことで茹麺や蒸麺とすることもできる。また、乾燥工程に付すことで麺線の水分を除去して、乾麺や半乾麺、即席麺とすることもできる。また、冷凍することで冷凍麺とすることもできる。
【0038】
即席麺を製造する場合、乾燥工程の種類は特に限定されず、即席麺の製造において一般的に使用されている乾燥処理を適用することができる。具体的には、フライ(油揚げ)乾燥処理のほか、熱風乾燥処理、高温熱風乾燥処理、過熱蒸気乾燥処理、凍結乾燥処理、マイクロ波乾燥処理、低温での送風乾燥処理といったノンフライ乾燥処理が挙げられる。また、これらを組み合わせて乾燥工程を実施することもできる。具体的な条件は特に限定されないが、フライ乾燥処理の場合は通常130~160℃で1~3分間、熱風乾燥処理の場合は通常60~120℃で15~180分程度の処理を実施する。乾燥処理後の水分量としては、フライ乾燥処理の場合で1~5重量%、熱風乾燥処理の場合で5~10重量%程度とすればよい。
【0039】
また、過熱蒸気処理工程の後、乾燥工程を経ずに、pH調整、密封、加熱殺菌することにより得られる、低温殺菌したチルド麺や生タイプ即席麺としてもよい。
【0040】
以上の方法により、全粒粉を含む麺体に蒸煮庫内で過熱蒸気を吹き付ける製造工程を有する麺の製造方法において、蒸煮庫内で過熱蒸気を吹き付ける製造工程の直前に麺体に水を付与することにより、全粒粉を含む生の麺体を過熱蒸気で処理する際に発生する麺体の白色化を抑制することができる。
【実施例
【0041】
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
【0042】
<試験1:全粒粉の添加量>
(試験例1)
中力粉870g、アセチル化タピオカ澱粉130gからなる主原料粉1kgに、食塩20g、かん水7g、重合リン酸塩1g、リン酸3ナトリウム1.5gを水380mlに溶解した練り水を加え、常圧ミキサーで15分間混捏し、麺生地を作製した。
【0043】
作製した麺生地を整形ロールにて素麺帯を作製し、さらに複合して麺帯を作製した。作製した麺帯を、圧延ロールにて1.2mmまで圧延し18番の丸刃の切刃ロールで切断して麺線を作製した。
【0044】
作製した麺線に対して過熱蒸気を処理した。過熱蒸気の処理方法は、蒸気庫内部をネットコンベアが移送するトンネル型の蒸気庫内でネットコンベアの上下からコンベア上を移送する麺線に向って直接過熱蒸気流を吹付ける噴出口を有し、これをコンベアの進行方向に多数有する構造となっており、この噴出口から過熱蒸気流を麺線に向けて直接吹付けることで麺線をα化処理した。
【0045】
蒸気庫内の温度の測定方法としては、蒸気庫の中央部でコンベア上から3cm上に温度計を載置して過熱蒸気の温度をモニターした。過熱蒸気による処理工程における前記モニターの温度は220℃とし、蒸煮時間は30秒とした。
【0046】
上記のように過熱蒸気処理した麺線に対して生の麺線100gあたり45gとなるようにシャワーを行い、過熱蒸気の庫内温度を200℃に設定した蒸気庫内を30秒間かけて通過させて再加熱を行った。
【0047】
再加熱した麺線に1L当たり食塩10g、クエン酸0.2gを溶解した着味液に1秒間浸漬し、5%アラビアガム水溶液を生の麺線100g当たり3gとなるようにスプレーして、約35cmとなるように切断し、1食145gとなるようにリテーナーと呼ばれる乾燥用容器に入れ95℃で35分、80℃で35分乾燥し、ノンフライ中華麺サンプル(水分8重量%)を作製した。
【0048】
(試験例2)
主原料粉を中力粉860g、アセチル化タピオカ澱粉130g全粒粉を10gとする以外は、試験例1の方法に従ってノンフライ中華麺サンプルを作製した。
【0049】
(試験例3)
主原料粉を中力粉840g、アセチル化タピオカ澱粉130g全粒粉を20gとする以外は、試験例1の方法に従ってノンフライ中華麺サンプルを作製した。
【0050】
(試験例4)
主原料粉を中力粉820g、アセチル化タピオカ澱粉130g全粒粉を50gとする以外は、試験例1の方法に従ってノンフライ中華麺サンプルを作製した。
【0051】
(試験例5)
主原料粉を中力粉670g、アセチル化タピオカ澱粉130g全粒粉を100gとする以外は、試験例1の方法に従ってノンフライ中華麺サンプルを作製した。
【0052】
(試験例6)
主原料粉を中力粉670g、アセチル化タピオカ澱粉130g全粒粉を200gとする以外は、試験例1の方法に従ってノンフライ中華麺サンプルを作製した。
【0053】
試験1で作製したノンフライ中華麺サンプルを容器に入れ500mlの熱湯を注ぎ5分間静置し、醤油味の液体スープを入れて喫食し、評価を行った。評価方法は、ベテランのパネラー5人で行い風味については、ふすま臭に着目して評価した。食感については、調理感(粘り、弾力、粉っぽさのなさ)に着目して評価した。外観については、麺の色調や表皮の割合及び麺線状の白化部分の目立ち具合に着目して評価した。評価は5段階で行い、5点が非常に良好、4点が良好、3点が商品として可、2点悪い、1点が非常に悪いとした。また、同様にノンフライ中華麺サンプルを1食ずつ調理し、麺線1本ずつ調べて白色化した部分の数を数えた。評価結果について、表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
試験1で示すように全粒粉の添加量が増えるほどに、麺の色調がくすんだ茶褐色となり、表皮の割合が多くなり、調理後の麺線が白色化した部分が目立つようになる。また、ふすま臭が強くなり、食感がべちゃついていくだけでなく、製麺性についても悪くなり、麺線が切れやすくなる。ふすまの添加量としては少なすぎると添加したことに気づきにくく、全粒粉の割合が主原料粉に対して2重量%以上であれば全粒粉を添加したことに気づき良好な見た目となる。また、多すぎても見た目が良くなることはなく、製麺性や食感が悪くなり、麺切れなどが発生することから主原料粉の重量に対して2~20重量%となるように添加することが好ましくより好ましくは2~10重量%の範囲が好ましい。
【0056】
<試験2:水付与の検討>
(試験例7)
作製した生の麺線を過熱蒸気処理前に生の麺線100gあたり1.0gとなるようにスプレーにて水を満遍なく散布する以外は試験例4の方法に従ってノンフライ中華麺サンプルを作製した。
【0057】
(試験例8)
作製した生の麺線を過熱蒸気処理前に生の麺線100gあたり2.5gとなるようにスプレーにて水を満遍なく散布する以外は試験例4の方法に従ってノンフライ中華麺サンプルを作製した。
【0058】
(試験例9)
作製した生の麺線に対して1回目の過熱蒸気処理前に生の麺線100gあたり3.5gとなるようにスプレーにて水を満遍なく散布する以外は試験例4の方法に従ってノンフライ中華麺サンプルを作製した。
【0059】
(試験例10)
作製した生の麺線に対して1回目の過熱蒸気処理前に生の麺線100gあたり5.0gとなるようにスプレーにて水を満遍なく散布する以外は試験例4の方法に従ってノンフライ中華麺サンプルを作製した。
【0060】
(試験例11)
作製した生の麺線に対して1回目の過熱蒸気処理前に生の麺線100gあたり10.0gとなるようにスプレーにて水を満遍なく散布する以外は試験例4の方法に従ってノンフライ中華麺サンプルを作製した。
【0061】
試験2で作製したノンフライ中華麺サンプルを容器に入れ500mlの熱湯を注ぎ5分間静置し、醤油味の液体スープを入れて喫食し、評価を行った。評価方法は、ベテランのパネラー5人で行い風味については、ふすま臭に着目して評価した。食感については、調理感(粘り、弾力、粉っぽさのなさ)に着目して評価した。外観については、麺線状の白化部分の目立ち具合に着目して評価した。評価は5段階で行い、5点が非常に良好、4点が良好、3点が商品として可、2点悪い、1点が非常に悪いとした。また、同様にノンフライ中華麺サンプルを1食ずつ調理し、麺線1本ずつ調べて白色化した部分の数を数えた。評価結果について、表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
試験2で示すように過熱蒸気処理前に生の麺線に水を付与することで麺線の白色化を防止することができるが、水の付与量を多くすると過熱蒸気処理において麺線が結着し、食感も表面が溶けたような柔らかい食感となる傾向が認められた。よって水付与量としては、生の麺体100gに対して1.0~5.0重量%水を付与することが好ましい。
【0064】
<試験3:過熱蒸気処理条件>
(試験例12)
一回目の過熱蒸気処理の過熱蒸気庫の温度を150℃とする以外は試験例9の方法に従ってノンフライ中華麺サンプルを作製した。
【0065】
(試験例13)
一回目の過熱蒸気処理の過熱蒸気庫の温度を180℃とする以外は試験例9の方法に従ってノンフライ中華麺サンプルを作製した。
【0066】
(試験例14)
一回目の過熱蒸気処理の過熱蒸気庫の温度を250℃とする以外は試験例9の方法に従ってノンフライ中華麺サンプルを作製した。
【0067】
(試験例15)
一回目の過熱蒸気処理の過熱蒸気庫の温度を280℃とする以外は試験例9の方法に従ってノンフライ中華麺サンプルを作製した。
【0068】
(試験例16)
過熱蒸気処理の1回目の処理時間を20秒とする以外は試験例9の方法に従ってノンフライ中華麺サンプルを作製した。
【0069】
(試験例17)
過熱蒸気処理の1回目の処理時間を45秒とする以外は試験例9の方法に従ってノンフライ中華麺サンプルを作製した。
【0070】
(試験例18)
過熱蒸気処理の1回目の処理時間を60秒とする以外は試験例9の方法に従ってノンフライ中華麺サンプルを作製した。
【0071】
試験3で作製したノンフライ中華麺サンプルを試験2と同様に評価を行った。評価結果について、表3に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
過熱蒸気庫の温度については、低くなると白色化は抑えられるがふすま臭が強くなり、食感も調理感がなく、粉っぽさが出てくる。逆に過熱蒸気温度が高くなりすぎると、焦げ臭や表面がずるけて芯が硬い食感となる。よって、150~280℃、より好ましくは180~250℃の範囲が好ましい。
【0074】
過熱蒸気庫での処理時間が短いほど白色化は抑えられるが、ふすま臭が強くなり、食感も調理感がなく、粉っぽさがでてくる。逆に過熱蒸気温度が高くなりすぎると、焦げ臭や表面がずるけて芯が硬い食感となる。よって、処理時間としては20~60秒間が好ましい。