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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】作業機の防振装置および作業機
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20230310BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20230310BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
F16F15/04 F
F16F15/02 D
H05K13/04 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019070590
(22)【出願日】2019-04-02
(65)【公開番号】P2020169668
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】中西 智昭
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-272345(JP,A)
【文献】国際公開第2017/085840(WO,A1)
【文献】特開2005-321105(JP,A)
【文献】特開2011-007323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/04
F16F 15/02
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業部を備える基台が脚部によって床面上に支持されている作業機の防振装置であって、
前記脚部と前記床面との間に設置されるベース部と、
前記基台の前記床面と対向する基台下面から下方に張り出して設けられた基台側ガイドと、
前記ベース部から上方に張り出して設けられ、前記基台側ガイドに横方向から接触した状態で前記基台側ガイドの前記ベース部に対する横方向への相対移動を規制しつつ、前記基台側ガイドの前記ベース部に対する上下方向への相対移動を許容するベース部側ガイドと
前記ベース部を前記基台側ガイドに対して上下方向に相対移動自在に連結する連結部と、を備え
前記基台側ガイドと前記ベース部側ガイドは、一方に設けられたローラが他方に上下方向に延びて設けられた壁面に対して転動自在に当接しており、これにより前記ベース部側ガイドは、前記基台側ガイドの前記ベース部に対する横方向への相対移動を規制しつつ、前記基台側ガイドの前記ベース部に対する上下方向への相対移動が許容するようになっており、
前記連結部に上下方向に延びて設けられた長孔に、前記ローラの回動軸が挿通されている、作業機の防振装置。
【請求項2】
前記脚部は弾性部材を介して前記ベース部に接触する請求項に記載の作業機の防振装置。
【請求項3】
作業部を備える基台が脚部によって床面上に支持されている作業機であって、
前記脚部と前記床面との間に設置されるベース部と、
前記基台の前記床面と対向する基台下面から下方に張り出して設けられた基台側ガイドと、
前記ベース部から上方に張り出して設けられ、前記基台側ガイドに横方向から接触した状態で前記基台側ガイドの前記ベース部に対する横方向への相対移動を規制しつつ、前記基台側ガイドの前記ベース部に対する上下方向への相対移動を許容するベース部側ガイドと、
前記ベース部を前記基台側ガイドに対して上下方向に相対移動自在に連結する連結部とを備え
前記基台側ガイドと前記ベース部側ガイドは、一方に設けられたローラが他方に上下方向に延びて設けられた壁面に対して転動自在に当接しており、これにより前記ベース部側ガイドは、前記基台側ガイドの前記ベース部に対する横方向への相対移動を規制しつつ、前記基台側ガイドの前記ベース部に対する上下方向への相対移動が許容するようになっており、
前記連結部に上下方向に延びて設けられた長孔に、前記ローラの回動軸が挿通されている、作業機。
【請求項4】
前記脚部は弾性部材を介して前記ベース部に接触する請求項に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品実装機等の作業機の防振装置およびこの防振装置を備えた作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業部により所定の作業を行う作業機のひとつとして、基板に部品を実装する部品実装機が知られている。部品実装機は、脚部によって床面上に支持されている基台に対して作業部である実装ヘッドが移動し、部品供給部が供給する部品をピックアップして基板に実装する動作を繰り返し実行する。このような作業機では作業部が一定の動作を繰り返すため、この作業部の繰返し動作が加振源となって基台に振動が生じ得る。基台に生じた振動は作業機の作業そのものに悪影響を与えるほか、床面に伝達されて作業者に不快感を覚えさせる場合がある。
【0003】
このような振動の問題を解決する手段として、従来、脚部の下面(床面との接触面)に防振ゴムを設置し、その防振ゴムの弾性によって基台側の振動を低減して床面側に伝達する方法が知られている(例えば、下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/085840号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような防振ゴムが比較的軟質である場合には、床面側の振動を低減することができる一方で作業機の振動が大きくなり、防振ゴムが比較的硬質である場合には、作業機の振動が低減できる一方で床側の振動が大きくなるため、防振ゴムを用いた防振対策では、作業機に生ずる振動とこれに起因して床面に生ずる振動との双方を同時に低減できるものではなかった。
【0006】
そこで本発明は、作業機に生ずる振動とこれに起因して床面に生ずる振動との双方を同時に低減することができる作業機の防振装置およびこの防振装置を備えた作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の作業機の防振装置は、作業部を備える基台が脚部によって床面上に支持されている作業機の防振装置であって、前記脚部と前記床面との間に設置されるベース部と、前記基台の前記床面と対向する基台下面から下方に張り出して設けられた基台側ガイドと、前記ベース部から上方に張り出して設けられ、前記基台側ガイドに横方向から接触した状態で前記基台側ガイドの前記ベース部に対する横方向への相対移動を規制しつつ、前記基台側ガイドの前記ベース部に対する上下方向への相対移動を許容するベース部側ガイドと、前記ベース部を前記基台側ガイドに対して上下方向に相対移動自在に連結する連結部と、を備え、前記基台側ガイドと前記ベース部側ガイドは、一方に設けられたローラが他方に上下方向に延びて設けられた壁面に対して転動自在に当接しており、これにより前記ベース部側ガイドは、前記基台側ガイドの前記ベース部に対する横方向への相対移動を規制しつつ、前記基台側ガイドの前記ベース部に対する上下方向への相対移動が許容するようになっており、前記連結部に上下方向に延びて設けられた長孔に、前記ローラの回動軸が挿通されている
【0008】
本発明の作業機は、作業部を備える基台が脚部によって床面上に支持されている作業機であって、前記脚部と前記床面との間に設置されるベース部と、前記基台の前記床面と対向する基台下面から下方に張り出して設けられた基台側ガイドと、前記ベース部から上方に張り出して設けられ、前記基台側ガイドに横方向から接触した状態で前記基台側ガイドの前記ベース部に対する横方向への相対移動を規制しつつ、前記基台側ガイドの前記ベース部に対する上下方向への相対移動を許容するベース部側ガイドと、前記ベース部を前記基台側ガイドに対して上下方向に相対移動自在に連結する連結部とを備え、前記基台側ガイドと前記ベース部側ガイドは、一方に設けられたローラが他方に上下方向に延びて設けられた壁面に対して転動自在に当接しており、これにより前記ベース部側ガイドは、前記基台側ガイドの前記ベース部に対する横方向への相対移動を規制しつつ、前記基台側ガイドの前記ベース部に対する上下方向への相対移動が許容するようになっており、前記連結部に上下方向に延びて設けられた長孔に、前記ローラの回動軸が挿通されている
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業機に生ずる振動とこれに起因して床面に生ずる振動との双方を同時に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1における作業機の側面図
図2】本発明の実施の形態1における作業機が備える防振装置の斜視図
図3】本発明の実施の形態1における防振装置の側面図
図4】本発明の実施の形態1における防振装置の一部分解斜視図
図5】本発明の実施の形態1における防振装置の側面図
図6】本発明の実施の形態2における作業機が備える防振装置の側面図
図7】本発明の実施の形態3における作業機が備える防振装置の斜視図
図8】本発明の実施の形態3における防振装置の一部断面側面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における作業機1を示している。作業機1は、上流工程側から供給された基板KBに部品BHを実装して下流工程側に搬出する部品実装機であり、基台11、基板搬送部12、フィーダ台車13、パーツフィーダ14、ヘッド移動機構15、実装ヘッド16、部品カメラ17、制御装置18等を備えている。実施の形態1では説明の便宜上、基板KBの流れ方向をX軸方向、X軸方向と直交する水平方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とする。また、作業機1のY軸方向に沿った方向の一方側をフロント側とし、他方側をリア側とする。
【0012】
図1および図2において、作業機1の基台11の下部には下方に延びた複数の脚部21が設けられており、基台11はこれら複数の脚部21によって床面FL上に支持されている。各脚部21の下面には弾性部材である防振ゴム21Gが設置されており、基台11は各脚部21の防振ゴム21Gを介して床面FL上に支持された状態となっている。複数の脚部21のそれぞれには防振装置22が取り付けられている。防振装置22の詳細については後述する。
【0013】
基板搬送部12はコンベア装置から構成されており、基台11の上面側をX軸方向に延びて設けられている。基板搬送部12は、上流工程側から供給される基板KBをX軸方向に搬送して所定の作業位置に位置決めする。
【0014】
図1において、フィーダ台車13は基台11のフロント側とリア側のそれぞれに連結されている。フィーダ台車13の上部には水平面内に広がった平板状のフィーダベース部13Bが設けられている。複数のパーツフィーダ14はフィーダ台車13のフィーダベース部13Bに取り付けられており、それぞれ部品供給位置14Kに部品BHを供給する。
【0015】
図1において、ヘッド移動機構15は、基台11の上方をY軸方向に延びて設けられた固定ビーム15aと、X軸方向に延びて一端側が固定ビーム15aに支持された移動ビーム15bと、移動ビーム15bに沿ってX軸方向に移動自在な移動プレート15cから構成されている。実装ヘッド16は移動プレート15cに取り付けられており、固定ビーム15aに対する移動ビーム15bのY軸方向への移動と、移動ビーム15bに対する移動プレート15cのX軸方向への移動とによって水平面内で移動される。
【0016】
図1において、実装ヘッド16には複数のノズル16aが下向きに取り付けられている。複数のノズル16aはそれぞれ、実装ヘッド16に対して上下方向(Z軸方向)への移動とZ軸まわりの回転が可能である。各ノズルの下端には真空吸着力を発生させることができる。
【0017】
図1において、部品カメラ17は基台11上のフロント領域とリア領域のそれぞれに設けられている。各部品カメラ17は撮像視野を上方に向けており、実装ヘッド16がノズル16aによって吸着保持した部品BHを下方から撮像する。
【0018】
制御装置18は作業機1の基台11内に備えられており(図1)、作業機1の各部の動作を制御する。作業機1が基板KBに部品BHを実装する部品実装作業を行うときには先ず、基板搬送部12が作動して上流工程側から送られてきた基板KBを搬入し、所定の作業位置に基板KBを位置決めする。基板搬送部12が基板KBを作業位置に位置決めしたら、各パーツフィーダ14が部品供給位置14Kに部品BHを供給し、その部品BHを実装ヘッド16がノズル16aにより吸着保持する。
【0019】
ノズル16aが部品BHを吸着保持したら、実装ヘッド16は部品カメラ17の上方へ移動し、部品カメラ17は部品BHを撮像する。制御装置18は部品カメラ17で撮像した画像に基づいて部品BHの位置を検出し、その検出結果を利用して実装ヘッド16を移動させ、部品BHを基板KBの目標位置の上方に位置させる。制御装置18は、部品BHを基板KBの目標位置の上方に位置させたらノズル16aを昇降させ、ノズル16aが保持した部品BHを基板KBに実装させる。このように実施の形態1の作業機1において、実装ヘッド16は、基台11上で所定の作業(部品実装作業)を行う作業部となっている。上記のような基板KBへの部品BHの実装動作が繰り返し実行されてその基板KBへの部品BHの実装作業が終了したら、基板搬送部12が作動して、基板KBを下流工程側に搬出する。
【0020】
次に、作業機1の脚部21に取り付けられた防振装置22について説明する。図2図3および図4において、防振装置22は、ベース部31、2つの基台側ガイド32、2つのベース部側ガイド33および4つの連結部材34を備えている。
【0021】
図2図3および図4において、ベース部31は上面と下面がそれぞれ平らな板状の部材から構成されている。ベース部31は床面FL上に設置され、脚部21との間に介装される。前述のように、脚部21の下面には防振ゴム21Gが設置されているので、基台11は防振ゴム21Gを介して、脚部21により、床面FL上に支持された状態となっている。
【0022】
図2図3および図4において、2つの基台側ガイド32はそれぞれ基台11の下面(床面FLと上下に対向する面であり、「基台下面11M」と称する)に取り付けられている。2つの基台側ガイド32は脚部21を横方向から挟む位置に配置されており、それぞれ下方(すなわち床面FL側)に張り出した形状を有している。
【0023】
2つの基台側ガイド32それぞれの下端には、転動部材としてのローラ42が設けられている。2つのローラ42それぞれは水平方向に延びて設けられた回動軸41に取り付けられており、回動軸41の中心軸線である回動軸線41Jまわりに回動自在となっている。2つの基台側ガイド32が有する2つのローラ42は、回動軸線41J同士が互いに平行になるように配置されている(図2および図3)。
【0024】
図2図3および図4において、2つのベース部側ガイド33はそれぞれベース部31に設けられている。2つのベース部側ガイド33は2つの基台側ガイド32を横方向から挟む位置に配置されており、それぞれ上方に張り出した形状を有している。2つのベース部側ガイド33はそれぞれ、2つのベース部側ガイド33を挟んで対向する垂直な壁面33Tを有している。2つのベース部側ガイド33それぞれの壁面33Tにはローラ42が横方向から当接している。
【0025】
図2図3および図4において、4つの連結部材34はそれぞれベース部31の上面に取り付けられている。連結部材34は1つの基台側ガイド32に対応して2つ、その基台側ガイド32が有するローラ42をその回動軸線41Jの延びる方向から挟む位置に設けられている。各連結部材34はその上部に上下方向に延びた長孔35を有しており、基台側ガイド32を挟んで配置された2つの連結部材34が有する2つの長孔35に、その基台側ガイド32が備えるローラ42の回動軸41の両端が挿通されている。このようにベース部31は、2つのローラ42の回動軸41および4つの連結部材34を介して基台11に連結された状態となっている。
【0026】
ここで、各連結部材34の長孔35の下側端部35aは、ベース部31を踏み付けた脚部21によって基台11が床面FL上に支持されている状態(床面設置状態)において、長孔35内の回動軸41が上方から接触しない位置に設けられている(図3)。このため床面設置状態にある基台11の重量は専ら複数の脚部21によって支持され、連結部材34は基台11の重量の支持には寄与しない。
【0027】
床面設置状態にある基台11を工場内のクレーン等によって上方に引き上げていった場合には、複数の脚部21はいずれもベース部31の上面から離間する(この間、2つのローラ42それぞれは、対応する壁面33T上を相対的に上方に移動する)。そして、その後、2つのローラ42の回動軸41それぞれの両端は、対応する2つの連結部材34のそれぞれの長孔35の上側端部35bに当接し、ベース部31は4つの連結部材34および2つの基台側ガイド32の2つのローラ42の回動軸41を介して基台11からぶら下がった状態となる(図5)。このためベース部31は、基台11を上方に引き上げて基台11を移動させるときであっても基台11から分離しない。
【0028】
ここで、各ベース部側ガイド33の壁面33Tの上端33Jは、ベース部31が4つの連結部材34を介して基台11にぶら下がった状態となったときの各ローラ42の回動軸41の高さよりも高い位置に位置している(図5)。このため、上記のように、工場内のクレーン等によって基台11を上方に引き上げた場合であっても、基台側ガイド32のローラ42はベース部側ガイド33の壁面33Tに当接する状態を維持する。よって、基台11を床面FLに下せば、2つの基台側ガイド32と2つのベース部側ガイド33との位置関係はもとの状態に復旧する。
【0029】
次に、防振装置22の作用について説明する。実施の形態1における防振装置22は、その防振装置22を構成する2つの基台側ガイド32が向かい合う横方向(図3中に示す矢印S。「所定の横方向」と称する)への振動に対して防振機能を発揮する。すなわち、2つの基台側ガイド32は、2つのローラ42を介して2つのベース部側ガイド33によって挟まれているので、基台11に上記所定の横方向への振動が生じた場合、2つの基台側ガイド32のベース部31に対する(すなわち床面FLに対する)所定の横方向への相対移動が規制され、基台11の床面FLに対する所定の横方向の振動が抑えられる。このとき基台11に生じた所定の横方向の振動は、基台側ガイド32およびベース部側ガイド33を通じて床面FLに伝達されるが、床面FLはその構造上、横方向(床面FLに平行な方向)には振動しにくいので、基台11は横に振動することなく保持される。
【0030】
一方、基台11に上下方向への振動が生じた場合には、2つの基台側ガイド32の各ローラ42が2つのベース部側ガイド33の壁面33T上を上下方向に転動することによって、基台11がベース部31に対して上下方向に相対移動する。このため、基台11に生じた上下方向の振動は基台側ガイド32およびベース部側ガイド33を通じては床面FLに伝達されず、基台11の脚部21(詳細には防振ゴム21G)を通じて床面FLに伝達される。従って、防振ゴム21Gを振動吸収能力の高いものとしておくことにより、基台11から床面FLに伝達される上下方向の振動を大きく低減することができる。
【0031】
このように、実施の形態1における作業機1の防振装置22は、作業機1の基台11の脚部21と床面FLとの間に設置されるベース部31と、基台11の床面FLと対向する面である基台下面11Mから張り出して設けられた基台側ガイド32と、ベース部31から上方に張り出して設けられたベース部側ガイド33を備えた構成となっている。そして、ベース部側ガイド33は、基台側ガイド32に横方向から接触した状態で、基台側ガイド32のベース部31に対する横方向への相対移動を規制しつつ、基台側ガイド32のベース部31に対する上下方向への相対移動を許容するようになっている。より詳細には、基台側ガイド32とベース部側ガイド33は、基台側ガイド32に設けられた転動部材であるローラ42がベース部側ガイド33に上下方向に延びて設けられた壁面33Tに対して転動自在に当接しており、これによりベース部側ガイド33は、基台側ガイド32のベース部31に対する横方向への相対移動を規制しつつ、基台側ガイド32のベース部31に対する上下方向への相対移動を許容するようになっている。
【0032】
前述したように、1つの防振装置22は、その防振装置22が備える2つの基台側ガイド32が対向する方向の振動のみを抑制する。このため、複数の脚部21それぞれに取り付けられた防振装置22が抑制する振動の方向を、一部の防振装置22についてはX軸方向、他の一部の防振装置22についてはY軸方向、とすることにより、作業機1に生ずるあらゆる横方向への振動を抑制することができる。
【0033】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2における作業機の防振装置122を示している。作業機の構成は、防振装置122を除いて実施の形態1の作業機1と同様である。
【0034】
図6において、防振装置122は、ベース部131、2つの基台側ガイド132、1つのベース部側ガイド133および2つの連結部材134を備えている。実施の形態2におけるベース部131の構成は実施の形態1におけるベース部31と同様であり、実施の形態2におけるベース部側ガイド133および連結部材134の構成は、実施の形態1におけるベース部側ガイド33および連結部材134とほぼ同様である。
【0035】
図6において、実施の形態2における2つの基台側ガイド132は、ベース部側ガイド133を挟む位置に配置されている。ベース部側ガイド133は互いに平行な面となる2つの壁面133Tを有しており、これら2つの壁面133Tには、2つの基台側ガイド132それぞれが備えるローラ142が横方向から当接している。2つの連結部材134は、2つの基台側ガイド132のうちの一方が備えるローラ142の回動軸141をその回動軸線の延びる方向から挟む位置に配置されている。
【0036】
実施の形態2においても、防振装置122は、その防振装置122を構成する2つの基台側ガイド132が向かい合う方向(所定の横方向。図6中に示す矢印S)への振動に対して防振機能を発揮する。すなわち、2つの基台側ガイド132は、2つのローラ142を介して1つのベース部側ガイド133を挟んでいるので、基台11に上記所定の横方向への振動が生じた場合、2つの基台側ガイド132のベース部131に対する(すなわち床面FLに対する)所定の横方向への移動が規制され、基台11の床面FLに対する所定の横方向への振動が抑えられる。このとき基台11に生じた所定の横方向への振動は、基台側ガイド132およびベース部側ガイド133を通じて床面FLに伝達されるが、床面FLは前述したようにその構造上、横方向(床面FLに平行な方向)には振動しにくいので、基台11は横に振動することなく保持される。
【0037】
一方、基台11に上下方向への振動が生じた場合には、2つの基台側ガイド132の各ローラ142はベース部側ガイド133の2つの壁面133Tそれぞれの上を上下方向に転動することによって、基台11がベース部131に対して上下方向に相対移動する。このため、基台11に生じた上下方向の振動は基台側ガイド32およびベース部側ガイド133を通じては床面FLに伝達されず、基台11の脚部21(防振ゴム21G)を通じて床面FLに伝達される。従って、実施の形態1の場合と同様、防振ゴム21Gを比較的軟質のものとしておくことにより、基台11から床面FLに伝達される上下方向の振動を大きく低減することができる。
【0038】
このように、実施の形態2における作業機1の防振装置122は、実施の形態1における作業機1の防振装置22と同様、作業機1の基台11の脚部21と床面FLとの間に設置されるベース部131と、基台下面11Mから張り出して設けられた基台側ガイド132と、ベース部131から上方に張り出して設けられたベース部側ガイド133を備えた構成となっている。そして、ベース部側ガイド133は、基台側ガイド132に横方向から接触した状態で、基台側ガイド132のベース部131に対する横方向への相対移動を規制しつつ、基台側ガイド132のベース部131に対する上下方向への相対移動を許容するようになっている。より詳細には、基台側ガイド132とベース部側ガイド133は、基台側ガイド132に設けられた転動部材であるローラ142がベース部側ガイド133に上下方向に延びて設けられた壁面133Tに対して転動自在に当接しており、これによりベース部側ガイド133は、基台側ガイド132のベース部131に対する横方向への相対移動を規制しつつ、基台側ガイド132のベース部131に対する上下方向への相対移動を許容するようになっている。
【0039】
実施の形態2における防振装置122においても、実施の形態1における防振装置22の場合と同様、1つの防振装置122は、その防振装置122が備える2つの基台側ガイド132が対向する方向の振動のみを抑制する。このため、複数の脚部21それぞれに取り付けられた防振装置122が抑制する振動の方向を、一部の防振装置122についてはX軸方向、他の一部の防振装置122についてはY軸方向、とすることにより、作業機1に生ずるあらゆる横方向への振動を抑制することができる。
【0040】
(実施の形態3)
図7および図8は、本発明の実施の形態3における作業機の防振装置222を示している。作業機の構成は、防振装置222を除いて実施の形態1の作業機1と同様である。
【0041】
図7および図8において、防振装置222は、ベース部231、1つの基台側ガイド232、ベース部側ガイド233および2つの連結部材234を備えている。実施の形態3におけるベース部231の構成は実施の形態1の場合と同様である。基台側ガイド232は基台下面11Mに設けられており、ベース部側ガイド233はベース部231の上面に設けられている。基台側ガイド232は下方に向けて延びた円柱または円筒状の部材から成り、円筒状の外面232Mを有している。ベース部側ガイド233は上方に向けて延びており、円筒状の内面233Mを有する筒状部233Sを内部に有している。基台側ガイド232はベース部側ガイド233(筒状部233S)に上方から嵌入しており、基台側ガイド232はその円筒状の外面232Mをベース部側ガイド233の(筒状部233Sの)円筒状の内面233Mに摺動させながら相対的に上下方向に移動できるようになっている。
【0042】
図7および図8において、2つの連結部材234は基台下面11Mに取り付けられている。2つの連結部材234はベース部側ガイド233を挟む位置に位置しており、それぞれ上下方向に延びた長孔235を有している。これら2つの長孔235には、ベース部側ガイド233の側面から横方向に突出して延びた2つの突起233Bが挿通している。このためベース部231は、2つの連結部材234およびベース部側ガイド233を介して基台11に連結された状態となっている。
【0043】
実施の形態3の防振装置222では、基台側ガイド232の円筒状の外面232Mがベース部側ガイド233の円筒状の内面233Mに接触しており、基台側ガイド232のベース部231に対する(すなわち床面FLに対する)横方向への相対移動が規制される。このため、基台11に生じたあらゆる横方向の振動が抑えられる。このとき基台11に生じた横方向への振動は、基台側ガイド232およびベース部側ガイド233を通じて床面FLに伝達されるが、床面FLは横方向(床面FLに平行な方向)には振動しにくいので、床面FLの横方向への揺れは小さい。
【0044】
一方、基台11に上下方向への振動が生じた場合には、基台側ガイド232がその円筒状の外面232Mをベース部側ガイド233の円筒状の内面233Mに対して摺動させることによって、基台11がベース部231に対して上下方向に相対移動する。このため、基台11に生じた上下方向の振動は基台側ガイド232およびベース部側ガイド233を通じては床面FLに伝達されず、基台11の脚部21(防振ゴム21G)を通じて床面FLに伝達される。従って、実施の形態1および実施の形態2の場合と同様、防振ゴム21Gを比較的軟質のものとしておくことにより、基台11から床面FLに伝達される上下方向の振動を大きく低減することができる。
【0045】
このように、実施の形態3における作業機1の防振装置222は、作業機1の基台11の脚部21と床面FLとの間に設置されるベース部231と、基台下面11Mに設けられた基台側ガイド232と、ベース部231から上方に張り出して設けられたベース部側ガイド233を備えた構成となっている。そして、ベース部側ガイド233は、基台側ガイド232に横方向から接触した状態で、基台側ガイド232のベース部231に対する横方向への相対移動を規制しつつ、基台側ガイド232のベース部231に対する上下方向への相対移動を許容するようになっている。より詳細には、基台側ガイド232とベース部側ガイド233は、双方に上下方向に延びて設けられた摺接面(基台側ガイド232の外面232Mとベース部側ガイド233の内面233M)同士が摺動自在に接触しており、これによりベース部側ガイド233は、基台側ガイド232のベース部231に対する横方向への相対移動を規制しつつ、基台側ガイド232のベース部231に対する上下方向への相対移動を許容するようになっている。
【0046】
なお、上述したように、実施の形態3で示した防振装置222は、作業機1の基台11に生じる水平面内のあらゆる方向(横方向)への振動を抑制することができるが、基台11が備える複数の脚部21のそれぞれに防振装置222を設けることで、基台11の防振効果をより一層高めることができる。
【0047】
以上説明したように、実施の形態1における作業機1では、その防振装置22、122、222が、いずれも、作業機1の基台11の脚部21と床面FLとの間に設置されるベース部31,131,231と、基台11の床面FLと対向する面である基台下面11Mから下方に張り出して設けられた基台側ガイド32,132,232と、ベース部31,131,231から上方に張り出して設けられたベース部側ガイド33,133,233とを備えている。そして、ベース部側ガイド33,133,233は、基台側ガイド32,132,232に横方向から接触した状態で、基台側ガイド32,132,232のベース部31,131,231に対する横方向への相対移動を規制しつつ、基台側ガイド32,132,232のベース部31,131,231に対する上下方向への相対移動を許容する構成となっている。
【0048】
このように、実施の形態1、実施の形態2および実施の形態3では、ベース部側ガイド33,133,233が、基台側ガイド32,132,232に横方向から接触して基台側ガイド32,132,232のベース部31,131,231に対する横方向への相対移動を規制することで、基台11に生じた横方向の振動は小さく抑えられる。このとき、基台11の横方向の振動は床面FL側に伝達されるが、床面FLは一般に横方向(床面FLの面内方向)へは振動しにくいため、床面FLが横方向への振動によって作業者に与える影響は小さい。作業機1に生じた上下方向の振動は、脚部21を通じて床面FLに伝達されるが、脚部21の下面に設けられた防振ゴムを比較的軟質のものとすることにより、床面FL側の上下方向の振動を小さく抑えることができる。このため本実施の形態1、実施の形態2および実施の形態3における作業機1(作業機1の防振装置22,122,222)によれば、作業機1に生ずる振動とこれに起因して床面FLに生ずる振動との双方を同時に低減することができる。
【0049】
これまで本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上述したものに限定されず、種々の変形等が可能である。例えば、上述の実施の形態1および実施の形態2において、基台側ガイド32,132はローラ42,142をベース部側ガイド33,133の壁面33T,133Tに当接させる構成となっていたが、ローラ42,142は転動部材であればよく、ボール部材等であってもよい。また、転動部材(ローラ42,142)は基台側ガイド32,132に設けられていたが、ベース部側ガイド33,133に設けられていてもよい。この場合には、基台側ガイド32,132に、転動部材が当接される壁面が形成される。すなわち、基台側ガイド32,132とベース部側ガイド33,133は、一方に設けられた転動部材が他方に上下方向に延びて設けられた壁面に対して転動自在に当接しており、これにより基台側ガイド32,132はベース部31,131に対する横方向への相対移動が規制され、かつ、ベース部31,131に対する上下方向への相対移動が許容されるようになっていればよい。
【0050】
また、実施の形態3では、基台側ガイド232が下方に向けて延びた円筒または円柱状の部材から成り、ベース部側ガイド233が上方に向けて延びた円筒状の内面を有する部材から成り、基台側ガイド232がベース部側ガイド233に上方から嵌入した構成であったが、これらは反対であってもよい。すなわち、ベース部側ガイド233が上方に向けて延びた円筒または円柱状の部材から成り、基台側ガイド232が下方に向けて延びた円筒状の内面を有する部材から成り、ベース部側ガイド233が基台側ガイド232に下方から嵌入する構成であってもよい。
【0051】
また、前述の実施の形態1、実施の形態2および実施の形態3では、ベース部が連結部である連結部材によって基台側ガイドに対して上下方向に相対移動自在に連結された構成となっていたが、連結部を備えず、ベース部が基台側ガイドに対して分離可能になっていてもよい。この場合、基台を床面に設置するときは、先ず複数のベース部を基台が備える複数の脚の配置に応じて床面上に設置し、そのうえで各脚部が各ベース部を踏み付けるように基台を床面上に設置するようにする。また、防振装置は必ずしも基台が備える複数の脚部の全てに設けられる必要はなく、基台の防振を効果的に行うことができるのであれば、複数の脚部のうちの一部にのみ設けられるのであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
作業機に生ずる振動とこれに起因して床面に生ずる振動との双方を同時に低減することができる作業機の防振装置およびこの防振装置を備えた作業機を提供する。
【符号の説明】
【0053】
1 作業機
11 基台
11M 基台下面
16 実装ヘッド(作業部)
21 脚部
21G 防振ゴム(弾性部材)
22,122,222 防振装置
31,131,231 ベース部
32,132,232 基台側ガイド
232M 外面(摺接面)
33,133,233 ベース部側ガイド
34,134,234 連結部材(連結部)
233M 内面(摺接面)
33T,133T 壁面
42,142 ローラ(転動部材)
FL 床面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8