(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】認知機能検査システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20230310BHJP
G09F 19/00 20060101ALI20230310BHJP
G16H 10/20 20180101ALI20230310BHJP
【FI】
A61B10/00 H
G09F19/00 Z
G16H10/20
(21)【出願番号】P 2021508165
(86)(22)【出願日】2020-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2020003859
(87)【国際公開番号】W WO2020195165
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】P 2019059469
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019136338
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南雲 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】細川 満春
(72)【発明者】
【氏名】小川 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】角 貞幸
(72)【発明者】
【氏名】張 亜明
(72)【発明者】
【氏名】岡田 崇志
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-083403(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0365101(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0105666(US,A1)
【文献】特開2016-071897(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0187359(US,A1)
【文献】特許第6337362(JP,B1)
【文献】特開2010-017420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 9/00-10/06
A61B 5/00- 5/01
A61B 5/06- 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部に画像を表示させながら前記画像に関連する発話を被験者に行わせる第1検査
を行い、前記第1検査を行ってからインターバル期間が経過した後に、前記表示部に前記画像を表示させないで前記画像に関連する発話を前記被験者に行わせる第2検査
を行う検査部と、
前記第1検査の検査結果である第1検査結果、及び前記第2検査の検査結果である第2検査結果
それぞれの検査結果ごとに前記被験者の
認知機能の評価を行う
評価部と、を備え、
前記第1検査結果は、前記第1検査における前記被験者の語彙力、及び前記表示部に前記画像を表示させてから前記被験者の発話が終了するまでの時間の少なくとも1つを含み、
前記第2検査結果は、前記第2検査における前記被験者の語彙力、文章の構成能力、一文の長さ、及び前記被験者の音声パワーの少なくとも1つを含む、
認知機能検査
システム。
【請求項2】
前記第1検査は、前記画像と共に前記表示部に表示され前記画像に関連する文章の一部を空欄にした穴あき文による穴あき検査を含む、
請求項1に記載の認知機能検査
システム。
【請求項3】
前記インターバル期間に、前記被験者にコンテンツを提示する、
請求項1又は2に記載の認知機能検査
システム。
【請求項4】
前記コンテンツは、前記被験者に応じて選択される、
請求項3に記載の認知機能検査
システム。
【請求項5】
前記コンテンツは、前記被験者によって手動で選択される、
請求項4に記載の認知機能検査
システム。
【請求項6】
前記コンテンツは、前記コンテンツに対する前記被験者の関心度に応じて自動的に切り替えられる、
請求項4に記載の認知機能検査
システム。
【請求項7】
前記コンテンツは、広告である、
請求項3~6のいずれか1項に記載の認知機能検査
システム。
【請求項8】
前記インターバル期間に、前記被験者に対するレコメンド情報を提示し、
前記被験者に対する次の前記第1検査及び前記第2検査の少なくとも一方に前記レコメンド情報を利用する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の認知機能検査
システム。
【請求項9】
前記検査部は、前記インターバル期間に、前記第1検査を行った後の前記被験者に
前記第1検査に関する記憶の干渉を起こさせるための第3検査を行い、
前記評価部は、前記第1検査結果、前記第2検査結果、及び前記第3検査の検査結果である第3検査結果
それぞれの検査結果ごとに前記被験者の認知機能の評価を行
い、
前記第3検査結果は、前記第3検査にて取得した音声データから抽出される特徴量を含む、
請求項1~8のいずれか1項に記載の認知機能検査
システム。
【請求項10】
前記第3検査は、一定時間の発話を前記被験者に行わせる検査である、
請求項9に記載の認知機能検査
システム。
【請求項11】
前記第3検査は、前記被験者の体験談を前記被験者に発話させる検査である、
請求項10に記載の認知機能検査
システム。
【請求項12】
前記第3検査は、前記被験者が前記第1検査、前記第2検査及び前記第3検査を含む認知機能検査を受ける前に体験した出来事を前記被験者に発話させる検査である、
請求項10に記載の認知機能検査
システム。
【請求項13】
前記第3検査は、閉鎖子音を用いた特定発話を前記被験者に行わせる検査である、
請求項9に記載の認知機能検査
システム。
【請求項14】
前記特定発話では、少なくとも閉鎖子音と母音とで構成される音節が連続している、
請求項13に記載の認知機能検査
システム。
【請求項15】
前記第3検査の前、又は前記第3検査の実施中に、前記第3検査における発話方法が提示される、
請求項13又は14に記載の認知機能検査
システム。
【請求項16】
前記第3検査では、前記被験者の発話量を提示部に提示させる、
請求項9~15のいずれか1項に記載の認知機能検査
システム。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の認知機能検査
システムとして、コンピュータシステムを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、認知機能検査システム、及びプログラムに関する。より詳細には、本開示は、認知機能を検査するための認知機能検査システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被験者の認知症診断に用いられる認知症診断システム(認知機能検査システム)が記載されている。特許文献1に記載の認知症診断システムは、認知症診断装置と、端末装置と、を備える。端末装置は、被験者と質問者の会話を録音する。認知症診断装置は、端末装置で録音された音声データから被験者の認知症レベルを算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
特許文献1に記載のような認知症診断システムでは、認知機能の評価精度の向上が望まれている。
【0005】
本開示の目的は、認知機能の評価精度の向上を図ることができる認知機能検査システム、及びプログラムを提供することにある。
【0006】
本開示の一態様に係る認知機能検査システムは、検査部と、評価部と、を備える。前記検査部は、表示部に画像を表示させながら前記画像に関連する発話を被験者に行わせる第1検査を行い、前記第1検査を行ってからインターバル期間が経過した後に、前記表示部に前記画像を表示させないで前記画像に関連する発話を前記被験者に行わせる第2検査を行う。前記評価部は、前記第1検査の検査結果である第1検査結果、及び前記第2検査の検査結果である第2検査結果それぞれの検査結果ごとに前記被験者の認知機能の評価を行う。前記第1検査結果は、前記第1検査における前記被験者の語彙力、及び前記表示部に前記画像を表示させてから前記被験者の発話が終了するまでの時間の少なくとも1つを含む。前記第2検査結果は、前記第2検査における前記被験者の語彙力、文章の構成能力、一文の長さ、及び前記被験者の音声パワーの少なくとも1つを含む。
【0007】
本開示の一態様に係るプログラムは、上述の認知機能検査システムとして、コンピュータシステムを実行させるためのプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る認知機能検査システムによる検査状況を説明するための説明図である。
【
図2】
図2は、同上の認知機能検査システムの構成を示すブロック図である。
【
図3A】
図3Aは、同上の認知機能検査システムの第1検査における表示例を示す概略図である。
【
図3B】
図3Bは、同上の認知機能検査システムの第1検査における表示例を示す概略図である。
【
図4A】
図4Aは、同上の認知機能検査システムの第2検査における表示例を示す概略図である。
【
図4B】
図4Bは、同上の認知機能検査システムの第2検査における表示例を示す概略図である。
【
図5】
図5は、同上の認知機能検査システムの第1検査と第2検査との間に表示部に表示させる画像の表示例を示す概略図である。
【
図6】
図6は、同上の認知機能検査システムの一連の動作を示すフローチャートである。
【
図7A】
図7Aは、実施形態2に係る認知機能検査システムの第3検査における第1表示例を示す概略図である。
【
図7B】
図7Bは、同上の認知機能検査システムの第3検査における別の第1表示例を示す概略図である。
【
図8A】
図8Aは、同上の認知機能検査システムの第3検査における第2表示例を示す概略図である。
【
図8B】
図8Bは、同上の認知機能検査システムの第3検査における別の第2表示例を示す概略図である。
【
図9】
図9は、同上の認知機能検査システムの第3検査における練習用の表示例を示す概略図である。
【
図10】
図10は、同上の認知機能検査システムの一連の動作を示すフローチャートである。
【
図11A】
図11Aは、実施形態2の変形例1に係る認知機能検査システムの表示部に表示されるアバターを示す概略図である。
【
図11B】
図11Bは、同上の認知機能検査システムの表示部に表示される別のアバターを示す概略図である。
【
図12】
図12は、実施形態3に係る認知機能検査システムの第3検査における表示例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
(1)概要
本実施形態に係る認知機能検査方法は、
図1に示すように、検査者101と被験者102との間で認知機能検査システム1を用いて認知機能を検査するための方法であり、認知機能検査システム1にて実現される。認知機能検査システム1は、例えば、タブレット、スマートフォン等の携帯端末、又はパーソナルコンピュータ(PC)等である。本実施形態では一例として、認知機能検査システム1は、
図1に示すように、タブレットである。認知機能検査システム1は、
図2に示すように、表示部121と、検査部112と、評価部111と、を備えている。
【0011】
表示部121は、例えば、タブレットの画面であり、少なくとも第1画像(画像)I1を表示する。検査部112は、第1検査を行い、第1検査を行なってからインターバル期間が経過した後に第2検査を行う。インターバル期間は、例えば数分~数十分であり、本実施形態では一例として5分である。第1検査は、表示部121に第1画像I1を表示させながら第1画像I1に関連する発話を被験者102(
図1参照)に行わせる検査である。つまり、第1検査では、被験者102は、表示部121に表示させた第1画像I1を見ながら第1画像I1に関する発話を行う。第2検査は、第1画像I1に関連する発話を被験者102に行わせる検査である。被験者102は、例えば、高齢者である。評価部111は、第1検査の検査結果である第1検査結果、及び第2検査の検査結果である第2検査結果に基づいて被験者102の評価を行う。
【0012】
本開示でいう「認知機能」とは、物事を正しく理解して適切に実行するための機能をいい、例えば、記憶機能、注意機能、情報処理機能、及び遂行機能等に分類される。「記憶機能」とは、過去の経験を頭の中に残しておき、ときに応じてそれらを思い起こしたり使用したりする働きをいう。「注意機能」とは、周囲の事物、事象の特定部分や複雑な心的活動の特定の側面に対して、選択的に反応したり注目したりするようにしむける意識の働きをいう。「情報処理機能」とは、外界から入力される情報(例えば、視覚情報、聴覚情報等)に対して処理を行う機能をいう。「遂行機能」とは、目的を持った一連の活動を効果的に成し遂げるために必要な機能をいう。また、本開示でいう「被験者102の評価」とは、被験者102の認知機能の状態、すなわち被験者102の認知機能が低下しているか否かを判断することをいう。
【0013】
近年では高齢化社会の到来に伴い、認知症患者の増加が問題になっている。また、認知症に対する特効薬は未だ発見されていないことから、認知症の前段階である軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)に注目が集まっている。軽度認知機能障害は、正常な状態(健常)と認知症との中間の状態である。
【0014】
認知機能を簡易的に検査する方法として、例えば、改訂長谷川式簡易機能評価スケール(HDS-R)、MMSE(Mini-Mental State Examination)、MoCA(Montreal Cognitive Assessment)等がある。これらの検査方法は、対話型の検査であり、訓練を受けた医療従事者等が行う検査である。そのため、医療従事者以外の人が簡単に検査を行なうことができず、検査機会を拡充することができていない。本実施形態に係る認知機能検査方法では、医療従事者以外の人であっても認知機能に関する検査を行うことができ、これにより検査機会の拡充を図ることができるように、以下の構成を採用している。
【0015】
本実施形態に係る認知機能検査方法は、第1検査と、第2検査と、を有する。第1検査は、表示部121に第1画像(画像)I1を表示させながら第1画像I1に関連する発話を被験者102に行わせる検査である。第2検査は、第1検査を行ってからインターバル期間が経過した後に、第1画像I1に関連する発話を被験者102に行わせる検査である。本実施形態に係る認知機能検査方法では、第1検査の検査結果である第1検査結果、及び第2検査の検査結果である第2検査結果に基づいて被験者102の評価を行う。
【0016】
本実施形態に係る認知機能検査方法では、第1検査を行ってからインターバル期間が経過した後に第2検査を行っている。つまり、本実施形態に係る認知機能検査方法では、認知機能を評価するために2つの検査を行なっており、1つの検査で認知機能を評価する場合に比べて認知機能の評価精度の向上を図ることができる。また、第1検査及び第2検査の各々において、第1画像I1に関連する発話を被験者102に行わせるだけでよく、医療従事者以外の人であっても簡単に検査を行うことができるので、検査機会の拡充を図ることができる。
【0017】
(2)構成
以下、本実施形態に係る認知機能検査システム1の構成について、
図1及び
図2を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係る認知機能検査システム1は、
図2に示すように、制御部11と、提示部12と、記憶部13と、操作部14と、設定部15と、を備えている。認知機能検査システム1は、
図1に示すように、例えば、タブレットである。
【0019】
制御部11は、例えば、プロセッサ及びメモリを有するマイクロコンピュータで構成されている。つまり、制御部11は、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムで実現されている。そして、プロセッサが適宜のプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが制御部11(後述の評価部111、検査部112及び解析部113を含む)として機能する。プログラムは、メモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0020】
制御部11は、評価部111と、検査部112と、解析部113と、を有している。
【0021】
評価部111は、第1検査の検査結果である第1検査結果、及び第2検査の検査結果である第2検査結果に基づいて被験者102の評価を行う。言い換えると、評価部111は、2つの検査結果に基づいて被験者102の認知機能の状態、すなわち被験者102の認知機能が低下しているか否かを判断する。
【0022】
評価部111は、例えば、第1検査における被験者102の語彙力、及び課題遂行時間等を特徴量とし、これらの特徴量に基づいて被験者102の認知機能(注意機能、及び遂行機能)を評価する。被験者102の語彙力には、後述する穴あき文S1の穴あき部分に対する単語のセレクトが含まれる。課題遂行時間は、例えば、表示部121に第1画像I1及び穴あき文S1を表示させてから被験者102の発話が終了するまでの時間である。また、評価部111は、例えば、第2検査における被験者102の語彙力、文章の構成能力、及び一文の長さ等を特徴量とし、これらの特徴量に基づいて被験者102の認知機能(記憶機能)を評価する。なお、評価部111は、第2検査においては、被験者102の音声パワー(音量)の変化から被験者102の認知機能を評価してもよい。例えば、認知機能が低下した被験者102では、最初のうちはスムーズに話すことができるため音声パワーが大きいが、時間の経過と共に言葉が出なくなることで音声パワーが小さくなる。このような音声パワーの変化から、被験者102の認知機能が低下していると判断することができる。なお、本明細書における「音量」とは、いわゆるラウドネスレベルと称される音の大きさのレベル(単位:phon(フォン))であってもよいし、音圧レベル(単位:デシベル)であってもよい。
【0023】
検査部112は、第1検査及び第2検査を行うように構成されている。具体的には、検査部112は、第1検査においては、第1画像I1及び穴あき文S1を表示させるための第1制御信号を表示部121に出力することにより、第1画像I1及び穴あき文S1を表示部121に表示させる。また、検査部112は、第2検査においては、ガイド情報G1を表示させるための第2制御信号を表示部121に出力することにより、ガイド情報G1を表示部121に表示させる。ガイド情報G1は、例えば、第2画像I2と文章S2との少なくとも一方である。第2画像I2は、例えば、第1画像I1の部分画像である(
図4A参照)。文章S2は、例えば、発話についての示唆を被験者102に与えるような文章である。第2検査において、ガイド情報G1を表示部121に表示する場合には、第2画像I2のみを表示してもよいし、文章S2のみを表示してもよいし、第2画像I2と文章S2との両方を表示してもよい。また、第2画像I2と文章S2とを順番に表示してもよい。この場合、第2画像I2を表示した後に文章S2を表示してもよいし、文章S2を表示した後に第2画像I2を表示してもよい。
【0024】
解析部113は、音声入出力部122を介して入力される音声について音声認識を行う。本開示でいう「音声認識」は、上記音声を文字列に変換する処理だけでなく、意味解析及び文脈解析等の自然言語処理を含む。解析部113は、記憶部13に記憶されている音響モデル及び認識辞書等を用いて、上記音声の認識(音声認識)を行う。すなわち、解析部113は、音響モデルを参照して上記音声を分析することにより音響特徴量を抽出し、認識辞書を参照して音声認識を行う。
【0025】
提示部12は、表示部121と、音声入出力部122と、を有している。提示部12は、被験者102に対して情報を提示するように構成されている。提示部12が提示する情報は、例えば、画像情報(第1画像I1、第2画像I2、第3画像I3)、及び音声情報等である。
【0026】
表示部121は、例えば、液晶ディスプレイである。表示部121は、第1検査においては、第1画像I1及び穴あき文S1を表示するように構成されている。また、表示部121は、第2検査においては、ガイド情報G1としての第2画像I2及び文章S2の少なくとも一方を表示するように構成されている。また、表示部121は、第1検査と第2検査との間のインターバル期間においては、第3画像I3を表示するように構成されている。なお、認知機能検査システム1がタッチパネルディスプレイを備えている場合には、タッチパネルディスプレイが表示部121と操作部14とを兼ねてもよい。
【0027】
音声入出力部122は、例えば、マイクロホン及びスピーカを有している。音声入出力部122には、マイクロホンを介して、第1検査、第2検査、及びインターバル期間における被験者102の発話音声が入力される。また、音声入出力部122は、スピーカを介して、第1検査、第2検査、及びインターバル期間における認知機能検査システム1からの音声(例えば、検査のガイダンス音声等)を出力する。音声入出力部122は、マイクロホンを介して入力されたアナログの音声信号をデジタルの音声信号に変換し、変換後の音声データを制御部11に出力する。
【0028】
記憶部13は、読み書き可能なメモリで構成されている。記憶部13は、例えば、フラッシュメモリである。記憶部13は、第1検査、第2検査、及びインターバル期間に表示部121に表示する第1画像I1、第2画像I2、及び第3画像I3を記憶する。ここで、第1画像I1には、第1画像I1に関連する複数の穴あき文S1が設定されており、記憶部13は、第1画像I1と複数の穴あき文S1とを紐付けて記憶する。また、第1画像I1には、第2検査におけるガイド情報G1としての複数の第2画像I2が設定されており、記憶部13は、第1画像I1と複数の第2画像I2とを紐付けて記憶する。また、第1画像I1には、第2検査におけるガイド情報G1としての複数の文章S2が設定されており、記憶部13は、第1画像I1と複数の文章S2とを紐付けて記憶する。つまり、本実施形態に係る認知機能検査システム1では、1つの第1画像I1に対して複数の穴あき文S1、複数の第2画像I2、及び複数の文章S2が紐付けられている。
【0029】
さらに、記憶部13は、被験者102の属性情報を記憶する。被験者102の属性情報は、例えば、被験者102の年齢、性別、趣味、出身地等を含む。これらの属性情報は、例えば、検査者101又は被験者102が操作部14にて入力してもよいし、被験者102の過去の検査データが記憶部13に記憶されている場合には、過去の発話データ等に基づいて自動的に設定してもよい。また、記憶部13は、第1検査、第2検査、及びインターバル期間における被験者102の発話データ、検査者101と被験者102の会話データ等を記憶する。さらに、記憶部13は、解析部113が音声認識を行う際に参照する音響モデル及び認識辞書等を記憶する。
【0030】
操作部14は、検査者101及び被験者102の操作を受け付けるように構成されている。操作部14は、例えば、テンキーを含む複数の押しボタンを有している。そして、複数の押しボタンのうち少なくとも1つの押しボタンを押すことにより、被験者102の属性情報を登録したり、インターバル期間に表示部121に表示させるコンテンツ(第3画像I3)を選択したりすることができる。複数の押しボタンは、メカニカルスイッチであってもよいし、表示部121がタッチパネルであればタッチパネルを構成するタッチパッドであってもよい。なお、穴あき文S1の穴あき部分の位置が操作部14により変更可能であってもよい。
【0031】
設定部15は、第1画像I1のエリアごとにガイド情報G1を設定するように構成されている。設定部15は、例えば、お父さんが含まれているエリアに対しては、お父さんに関する発話を被験者102に促すようなガイド情報G1を設定する。また、設定部15は、例えば、お母さんが含まれているエリアに対しては、お母さんに関する発話を被験者102に促すようなガイド情報G1を設定する。
【0032】
(3)検査内容
以下、認知機能検査システム1の検査内容について説明する。
【0033】
(3.1)第1検査
第1検査は、認知機能検査システム1の表示部121に第1画像I1を表示させながら、第1画像I1に関する発話を被験者102に行わせる検査である。第1検査は、
図1、
図3A、及び
図3Bに示すように、例えば、穴あき検査である。穴あき検査は、第1画像I1、及び第1画像I1に関連する穴あき文S1を表示部121に表示させて、穴あき文S1を被験者102に発話させる検査である。穴あき文S1は、その一部を空欄にした文章である。言い換えると、第1検査は、第1画像I1と共に表示部121に表示され第1画像I1に関連する文章の一部を空欄にした穴あき文S1による穴あき検査を含む。
図3Aに示す例では、穴あき文S1における穴あき部分は文頭にあり、穴あき部分には、例えば、「お父さん」との主語が入る。
図3Bに示す例では、穴あき文S1の穴あき部分は文末にあり、穴あき部分には、例えば、「飲んでいます」との述語が入る。なお、次の穴あき文S1に移行するためのトリガとして穴あき文S1の文末を利用する場合には、穴あき文S1における穴あき部分の位置は、文頭もしくは文中が好ましいが、
図3Bに示すように、文末にあってもよい。なお、
図3Aに示す例では、「お父さんがたばこを吸っています(Father is smoking a cigarette)」が正解であり、
図3Bに示す例では、「お母さんがお茶を飲んでいます(Mother is drinking tea)」が正解となる。
【0034】
被験者102は、第1検査においては、第1画像I1と穴あき文S1とを見比べながら、穴あき部分を埋めつつ穴あき文S1を発話する。第1検査は、認知機能に含まれる上述の4つの機能のうち、主に、注意機能、及び遂行機能について評価することができる。さらに、第1検査では、表示部121に表示させた第1画像I1と穴あき文S1とを見比べる動作が必要であるため、注意機能の中でも特に選択性注意機能が必要になる。これにより、単に表示部121に表示させた第1画像I1を見ながら第1画像I1について発話するよりも大きな負荷を被験者102に与えることができ、結果として認知機能の低下を予測する予測精度の向上につながる。
【0035】
ところで、第1検査では、1つの第1画像I1に対して複数(例えば、10個程度)の穴あき文S1が用意されており、1つの穴あき文S1の発話が完了した時点で次の穴あき文S1に移行させる操作が必要である。例えば、本実施形態のように、認知機能検査システム1が操作部14を備えている場合には、検査者101又は被験者102が操作部14にて次の穴あき文S1に移行させることができる。しかしながら、この場合には、操作ミスによって1以上の穴あき文S1を飛ばしてしまう可能性がある。また、1つの穴あき文S1に対する回答時間を予め設定し、この回答時間が経過すると自動的に次の穴あき文S1に移行させることもできる。しかしながら、この場合には、穴あき文S1に対する被験者102の発話が終わっていないにもかかわらず、次の穴あき文S1に移行する可能性がある。また、回答時間に対して被験者102の発話時間が短く、発話終了後の残り時間に不要な雑音が録音されて音声解析の障害となる可能性もある。
【0036】
本実施形態に係る認知機能検査システム1では、検査者101又は被験者102の操作負担、操作ミス、及び検査ミスを低減するために、解析部113による音声認識を利用して次の穴あき文S1に自動的に移行するように構成されている。以下、具体的に説明する。
【0037】
まず、
図3Aに示すように、「( )がたばこを吸っています」との穴あき文S1を表示部121に表示している場合を想定する。この場合、穴あき部分が文頭にあるため、文末は予め決められた文言(ここでは、「吸っています」)になっている。そのため、解析部113の音声認識によって文末の「吸っています」との文言を検出した時点で、被験者102の発話が完了したと判断でき、次の穴あき文S1に移行させるためのトリガにすることができる。言い換えると、本実施形態に係る認知機能検査方法では、被験者102の発話に含まれる部分音声(「吸っています」との音声)に基づいて穴あき文S1に対する回答の有無を検知する。そして、
図3Aに示す例では、上記部分音声は、穴あき文S1における末尾の発話音声(「吸っています」との音声)である。被験者102からの回答があった場合には、表示部121は、第1画像I1と次の穴あき文S1とを表示する。言い換えると、被験者102からの回答があった場合に、第1画像I1と次の穴あき文S1とを表示部121に表示させる。このように、被験者102の発話に含まれる部分音声、特に穴あき文S1の末尾の発話音声を次の穴あき文S1に移行させるためのトリガにすることにより、次の穴あき文S1への移行を確実に行うことができる。しかも、被験者102の発話音声に基づいて自動的に移行させるので、検査者101又は被験者102の操作負担、操作ミス、及び検査ミスを低減することができる。また、穴あき文S1の末尾の発話音声を検出した時点で録音を停止することにより、音声解析の障害となり得る不要な雑音が録音されにくくなるという利点もある。
【0038】
次に、
図3Bに示すように、「お母さんがお茶を( )」との穴あき文S1を表示部121に表示している場合を想定する。この場合、穴あき文S1の文末、つまり穴あき文S1の末尾が穴あき部分になっており、この穴あき部分には、「飲んでいます」、「すすっています(sipping)」等の複数の文言が入り得る。つまり、この場合には、被験者102の発話に含まれる部分音声は、穴あき文S1における穴あき部分の発話音声である。例えば、穴あき部分の回答として「飲んでいます」との文言が設定されている場合、次の穴あき文S1に移行させるためのトリガは、「飲んでいます」との文言である。そのため、例えば、被験者102が「すすっています」と発話した場合には、次の穴あき文S1に移行させることができない。しかしながら、このような場合でも、穴あき部分に入り得る文言の文字数に閾値を設けることにより対応可能である。例えば、
図3Bに示す例において、穴あき文S1の穴あき部分に入り得る文言の文字数を6文字と仮定する。この場合、穴あき部分に入り得る文言は、「飲んでいます」であっても「すすっています」であっても同じ6文字であり、いずれの文言であってもトリガにすることができる。また、この場合には、穴あき部分に入り得る文言の選択、及び穴あき部分を発話するまでの時間等によって、本来の目的である認知機能(特に遂行機能)の評価に有効である。このように、穴あき部分に入り得る文言の文字数に閾値を設けることにより、例えば「飲んで・・・い・・・ます」のように、穴あき部分の回答に時間がかかっていたとしても、次の穴あき文S1へのトリガにすることができる。
【0039】
ところで、第1検査において、穴あき文S1の内容によっては被験者102が回答できない場合もあり、この場合被験者102が回答できるまで同じ穴あき文S1を表示し続けることで検査時間が長くなるという問題がある。そのため、このような場合には、被験者102が発した特定ワード(スキップワード)により、次の穴あき文S1に移行させることが好ましい。言い換えると、本実施形態に係る認知機能検査方法では、被験者102が特定ワードを発した場合に、第1画像I1と次の穴あき文S1とを表示部121に表示させることが好ましい。特定ワードは、例えば、「パス」、「次」、「分かりません」等を含む。その結果、被験者102の回答の有無にかかわらず、次の穴あき文S1に移行させることができ、検査時間が長くなることを抑制できる。
【0040】
また、第1画像I1及び穴あき文S1を表示部121に表示してから規定時間が経過しても被験者102の回答がない場合には、次の穴あき文S1に移行させることが好ましい(タイムアウト)。言い換えると、本実施形態に係る認知機能検査方法では、予め設定された規定時間が経過した場合に、第1画像I1と次の穴あき文S1とを表示部121に表示させることが好ましい。規定時間は、例えば、30秒程度に設定することが好ましい。その結果、被験者102の回答の有無にかかわらず、次の穴あき文S1に移行させることができ、検査時間が長くなることを抑制できる。
【0041】
さらに、表示部121に表示させる次の穴あき文S1は、前の穴あき文S1に対する回答に応じて変化させることが好ましい。例えば、穴あき文S1における穴あき部分の回答が間違っている場合、又は穴あき部分の回答に要する時間が長い場合には、前の穴あき文S1よりも難易度を下げた穴あき文S1を次の穴あき文S1にすることが好ましい。一方、穴あき文S1における穴あき部分の回答が正しく、かつ穴あき部分の回答に要する時間が短い場合には、前の穴あき文S1よりも難易度を上げた穴あき文S1を次の穴あき文S1にすることが好ましい。このように、表示部121に表示させる次の穴あき文S1を、前の穴あき文S1に対する被験者102の回答に応じて変化させることにより、被験者102の認知機能の状態をより多段階に判別することができる。
【0042】
(3.2)第2検査
第2検査は、第1検査を行ってからインターバル期間が経過した後に、第1画像I1に関連する発話を被験者102に行わせる検査である。第2検査は、基本的には、第1検査において表示部121に表示させた第1画像I1を表示部121に表示させないで(被験者102に第1画像I1を見せないで)、第1画像I1に関連する発話を被験者102に行わせる検査である。つまり、第2検査は、第1画像I1の内容を被験者102に覚えてもらい、インターバル期間経過後に第1画像I1の内容について被験者102に発話してもらう遅延再生検査である。インターバル期間は、例えば数分~数十分に設定することが好ましく、本実施形態では一例として5分である。第2検査において、検査者101は、例えば、「第1画像I1について話してください」等の課題を被験者102に与える。被験者102は、第1画像I1を見ていない状態で第1画像I1について発話する。ここで、認知機能(特に記憶機能)が低下していない被験者102は、第1画像I1の内容(お父さんがたばこを吸っています、お母さんがお茶を飲んでいます等)についてスムーズに発話することができる。一方、認知機能が低下している被験者102は、第1画像I1についての発話開始直後(例えば数十秒間)はスムーズに話すことができるが、検査時間がある程度経ったのちには発話が止まることが知られている。第2検査は、認知機能に含まれる4つの機能のうち、主に、記憶機能(短期記憶機能)について評価することができる。
【0043】
このような遅延再生検査によれば、MCIを含む認知機能の低下を精度よく評価することはできるが、認知機能が大幅に低下した被験者102にとっては非常に難しく、全く答えられない事態が発生することも報告されている。そのため、現状の遅延再生検査では、遅延再生ができたか否かの二択であり、記憶機能がどの程度低下したかを評価することができない。本実施形態に係る認知機能検査方法では、被験者102の記憶機能がどの程度低下したかを評価できるように、第2検査において被験者102に対してガイド情報G1を提示するように構成されている。以下、具体的に説明する。
【0044】
第2検査中に被験者102の発話が停止した場合を想定する。例えば、それまでの被験者102の発話において「お父さん」、もしくはこれに類する語句を発していない場合、お父さんに関する情報を思い出せていない可能性がある。この場合、お父さんに関する発話を促進させるために、お父さんに関するガイド情報G1を被験者102に提示する。例えば、
図4Aに示すように、お父さんの一部(
図4Aでは顔)を含む第2画像I2を表示部121に表示してもよいし、
図4Bに示すように、発話についての示唆を被験者102に与えるような文字情報(文章S2)を表示部121に表示してもよい。第2画像I2は、第1画像I1に基づく部分画像である。言い換えると、第2画像I2は、第1画像I1の少なくとも一部を隠した画像である。また、ガイド情報G1は、発話についての示唆を被験者102に与える情報(第2画像I2、文章S2)を含む。さらに、ガイド情報G1として、第2画像I2と文章S2との両方を表示部121に表示してもよいし、第2画像I2と文章S2とを順番に表示部121に表示してもよい。第2画像I2と文章S2とを表示する順番は、第2画像I2が先であってもよいし、文章S2が先であってもよい。なお、
図4Aでは、第1画像I1のうち第2画像I2を除く残りの部分が見えているが、実際には第2画像I2のみが見えており、残りの部分については見えていないものとする。
【0045】
ここで、第2検査中に被験者102が発話した内容については、音声入出力部122に入力された音声を元に解析部113がリアルタイムに音声認識を行い、音声データを文字データ(文字列)に変換すればよい。また、単語の表記揺れ(例えば、お父さん、父親、旦那等)については、予め辞書等を作成して記憶部13に記憶しておけばよい。これにより、様々な表現形式に対応しつつ被験者102の発話内容を記憶することができ、被験者102が発話していない事象についてのみガイド情報G1を提示することができる。
【0046】
ところで、ガイド情報G1は、被験者102の発話にキーワードが含まれているか否かによって決定されることが好ましい。ここで、第1画像I1におけるキーワードは、例えば、「お父さん」、「お母さん」、「お姉ちゃん」、「弟」、「たばこ」、「お茶」、「吸っています」、「飲んでいます」等である。例えば、お父さんに関するキーワードである「お父さん」、「たばこ」、「吸っています」のいずれもが被験者102の発話に含まれていない場合、お父さんに関する発話を促すように第2画像I2と文章S2との少なくとも一方を表示部121に表示する。これにより、被験者102が、お父さんについて思い出していない場合であっても、ガイド情報G1を提示することによりお父さんに関する発話を被験者102に促すことができる。
【0047】
また、ガイド情報G1は、第1画像I1のエリアごとに決定されることが好ましい。例えば、第1画像I1のエリアを、お父さんを含む第1エリア、お母さんを含む第2エリア、お姉ちゃんを含む第3エリア、及び弟を含む第4エリアに分割し、エリアごとにガイド情報G1を決定(設定)する。この場合において、第1画像I1におけるキーワードは、エリアごとにグループ化されていることが好ましい。例えば、お父さんを含む第1エリアに対しては、お父さんに関するキーワードである「お父さん」、「たばこ」、「吸っています」を紐付ける。また、お母さんを含む第2エリアに対しては、お母さんに関するキーワードである「お母さん」、「お茶」、「飲んでいます」を紐付ける。この場合において、各エリアにおけるキーワードが1つでも出れば認知機能に問題がないと判断してもよいし、すべてのキーワードが出なければ認知機能に問題があると判断してもよい。
【0048】
さらに、ガイド情報G1は、被験者102の認知機能(特に記憶機能)を多段階に評価できるように、階層的(段階的)に表示させることが好ましい。例えば、お父さんについての発話を被験者102に促す場合を想定する。第1段階では、例えば、「第1画像I1の左下には誰がいましたか?」とのガイド情報G1を表示部121に表示する。このとき、被験者102が「お父さんがいました」と回答した場合には、次の段階のガイド情報G1を表示部121に表示する。第2段階のガイド情報G1は、例えば、「第1画像I1の左下にお父さんがいましたが、何をしていましたか?」である。このように、ガイド情報G1を階層的(段階的)に提示することにより、被験者102の認知機能の状態、つまり被験者102の認知機能がどの程度低下しているかを段階的に評価することができる。なお、ガイド情報G1として第2画像I2を表示部121に表示させる場合には、第2画像I2の大きさを段階的に大きくしてもよいし、第1画像I1における第2画像I2の位置、つまり第2画像I2によって表示される領域を変えてもよい。
【0049】
(3.3)インターバル期間
第1検査と第2検査との間のインターバル期間には、
図5に示すように、第3画像I3を表示部121に表示させることが好ましい。言い換えると、インターバル期間に、被験者102にコンテンツを提示することが好ましい。第3画像I3は、例えば、キャットフードの広告である。つまり、認知機能検査システム1が提示しているコンテンツは広告である。なお、コンテンツは、画像に限らず、動画であってもよい。この場合、コマーシャル動画を提示することが可能であり、このコマーシャル動画は、レコメンド機能により被験者102に最適化された動画であることが好ましい。これにより、コマーシャルによる収入が見込まれるため、検査に要する費用を低減することができる。その結果、検査機会の拡充も見込まれる。なお、インターバル期間に提示するコンテンツは、被験者102が興味のあるコンテンツを事前に聞いてもよい。
【0050】
ここで、インターバル期間に提示するコンテンツは、被験者102に応じて選択されることが好ましい。例えば、インターバル期間に表示可能な複数のコンテンツを表示部121に表示して、複数のコンテンツの中から被験者102に選択させる。言い換えると、コンテンツは、被験者102によって手動で選択される。その結果、被験者102が興味のあるコンテンツを表示部121に表示させることができる。また、インターバル期間に被験者102が選択したコンテンツを、次の第2検査、又は次以降の第1検査と第2検査との少なくとも一方に利用してもよい。これにより、その後に行われる検査に対して被験者102を集中させることができる。
【0051】
また、例えば、被験者102の属性情報に応じて表示部121に表示させるコンテンツを選択してもよい。例えば、被験者102の属性情報から被験者102が猫好きであれば、
図5に示すように、猫に関連するような第3画像I3を表示部121に表示させる。
【0052】
さらに、コンテンツは、コンテンツに対する被験者102の関心度に応じて自動的に切り替えられてもよい。例えば、表示部121に表示している第3画像I3について被験者102が40秒継続して話し続けたとする。この場合における閾値を30秒に設定しておけば、この閾値を超えて被験者102が話し続けているので、第3画像I3に対する被験者102の関心度が高いと判断することができる。一方、被験者102が第3画像I3について20秒しか話さなかった場合には、上記閾値を下回っていることから、第3画像I3に対する被験者102の関心度が低いと判断することができる。そして、第3画像I3に対する被験者102の関心度が高い場合には、第3画像I3を表示し続けてもよいし、第3画像I3と同じ種類の画像を連続的に表示してもよい。また、第3画像I3に対する被験者102の関心度が低い場合には、第3画像I3とは異なる種類の画像を表示すればよい。
【0053】
なお、コンテンツに対する被験者102の関心度を判断するための閾値は1つに限らず、複数であってもよい。つまり、コンテンツに対する被験者102の関心度が複数段階に分けられてもよい。この場合においても、被験者102の関心度に応じたコンテンツを表示部121に表示することで、その後に行われる検査に対して被験者102を集中させることができる。
【0054】
ここで、被験者102の属性情報を説明変数(独立変数)、被験者102の関心度を目的変数(従属変数)として、機械学習によるレコメンドシステムを構築可能である。例えば、新しい被験者が登録された場合に、この被験者の属性情報から画像(コンテンツ)に対する関心度を予測することで、被験者の関心度の高そうな画像を表示部121に表示することができる。これにより、画像に対する被験者の発話を促すことができる。
【0055】
(4)動作
次に、本実施形態に係る認知機能検査システム1の一連の動作について、
図6を参照して説明する。
【0056】
制御部11の検査部112は、表示部121に対して第1制御信号を出力し、表示部121に第1画像I1及び穴あき文S1を表示させる。被験者102は、表示部121に表示した第1画像I1及び穴あき文S1を見ながら、穴あき文S1について発話する(ステップST1)。制御部11は、第1検査が終了すると、インターバル期間の計測を開始する(ステップST2)。制御部11は、インターバル期間が経過するまでは(ステップST2:No)、表示部121に第3画像I3(コンテンツ)を表示(提示)させる(ステップST3)。
【0057】
制御部11は、インターバル期間が経過していれば(ステップST2:Yes)、検査部112に第2検査を行わせる(ステップST4)。このとき、例えば、「第1画像I1について話してください」等の文章を表示部121に表示してもよい。ここで、被験者102の発話が途中で停止した場合には、制御部11の検査部112は、表示部121に対して第2制御信号を出力し、発話を促すためのガイド情報G1を表示部121に表示させる。
【0058】
制御部11の評価部111は、第2検査が終了すると、第1検査の検査結果である第1検査結果、及び第2検査の検査結果である第2検査結果に基づいて、被験者102の認知機能の状態、つまり被験者102の認知機能が低下しているか否かを評価する(ステップST5)。そして、制御部11は、評価部111の評価結果を表示部121に表示させる(ステップST6)。
【0059】
本実施形態に係る認知機能検査方法及び認知機能検査システム1では、上述のように、2つの検査結果に基づいて被験者102の認知機能の状態を評価している。そのため、1つの検査結果に基づいて被験者102の認知機能の状態を評価する場合に比べて、認知機能の評価精度の向上を図ることができる。また、第1検査及び第2検査の各々において、第1画像I1に関連する発話を被験者102に行わせるだけでよく、専門的な訓練等も必要ないため、医療従事者以外の人でも検査を行うことができ、検査機会の拡充を図ることができる。
【0060】
本実施形態では、ステップST1が第1検査ステップであり、ステップST4が第2検査ステップであり、ステップST5が評価ステップである。
【0061】
(5)効果
本実施形態に係る認知機能検査方法及び認知機能検査システム1では、第1検査の検査結果である第1検査結果、及び第2検査の検査結果である第2検査結果に基づいて被験者102の評価(認知機能の状態判別)を行っている。つまり、認知機能検査方法及び認知機能検査システム1では、2つの検査結果に基づいて被験者102を評価している。そのため、例えば第1検査だけを行う場合のように、1つの検査結果に基づいて被験者を評価する場合に比べて、認知機能の評価精度の向上を図ることができる。また、第1検査及び第2検査の各々において、表示部121に表示させた第1画像I1に関連する発話を被験者102に行わせるだけでよく、専門的な訓練等も必要ないため、医療従事者以外の人でも検査を行うことができ、検査機会の拡充を図ることができる。
【0062】
さらに、認知機能検査システム1が携帯端末の場合には、検査を行う場所が制限されないため、MCIの早期発見から改善へとつなげることができる。また、本実施形態に係る認知機能検査方法及び認知機能検査システム1のように、正解が決まっていない会話型の検査であれば、被験者102が検査内容を記憶することで正確に検査が行えなくなる不具合を低減することができる。
【0063】
また、本実施形態に係る認知機能検査方法では、第1検査として穴あき検査を行っている。そのため、第1検査によって、認知機能のうち、主に、注意機能及び遂行機能について評価することができる。
【0064】
また、本実施形態に係る認知機能検査方法では、第1検査と第2検査との間のインターバル期間に、被験者102にコンテンツ(第3画像I3)を提示している。そのため、インターバル期間に被験者102が興味のあるコンテンツを提示することにより、その後に行われる第2検査に対して被験者102を集中させることができる。
【0065】
また、本実施形態に係る認知機能検査方法では、被験者102に応じてコンテンツが選択されるように構成されている。そのため、被験者102に応じてコンテンツを変えることができる。
【0066】
また、本実施形態に係る認知機能検査方法では、コンテンツに対する被験者102の関心度に応じてコンテンツが自動的に切り替えられるように構成されている。そのため、被験者102の関心度の高いコンテンツを提示することにより、その後に行われる第2検査に対して被験者102を集中させることができる。
【0067】
また、本実施形態に係る認知機能検査方法では、コンテンツが広告である。そのため、広告による収入によって検査に要する費用を低減することができる。その結果、検査機会の拡充も見込まれる。
【0068】
(6)変形例
実施形態1は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、実施形態1に係る認知機能検査方法、及び認知機能検査システム1と同様の機能は、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。一態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに上述の認知機能検査方法を実行させるためのプログラムである。
【0069】
以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0070】
本開示における認知機能検査システム1において、制御部11は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における制御部11としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。更に、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0071】
また、認知機能検査システム1における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは、認知機能検査システム1に必須の構成ではない。つまり、認知機能検査システム1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、認知機能検査システム1の少なくとも一部の機能、例えば、制御部11の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0072】
実施形態1では、検査者101と被験者102との間で認知機能検査システム1を用いて検査を行っているが、検査者101は省略されてもよい。認知機能検査システム1では、第1検査及び第2検査の内容が表示部121に表示される構造であるため、被験者102がいればよく、認知機能検査システム1を用いて被験者102が一人で検査を行ってもよい。
【0073】
実施形態1では、インターバル期間に表示部121に表示させるコンテンツとして、広告に関する第3画像I3を表示しているが、例えば、被験者102に対するレコメンド情報を表示部121に表示してもよい。例えば、レコメンド情報は、被験者102が過去に購入したインターネットショップの購入履歴に基づく情報である。例えば、被験者102がインターネットショップにて車のタイヤを購入していれば、レコメンド情報として車に関する情報を表示部121に表示する。このレコメンド情報は、その後の第2検査、又は次回以降の第1検査と第2検査との少なくとも一方に利用してもよい。これにより、被験者102に特化させた第1検査又は第2検査を行うことができる。
【0074】
また、インターバル期間に表示部121に表示させるコンテンツは、第1検査で表示部121に表示させるような画像又は動画であってもよいし、最近のニュース、昔の出来事等であってもよい。そして、これらのコンテンツを表示部121に表示させた状態で、被験者にコンテンツについて話をしてもらえばよい。つまり、インターバル期間に表示部121に表示させるコンテンツは広告に限らず、いろいろなバリエーションが考えられる。
【0075】
実施形態1では、穴あき文S1の穴あき部分が文頭に位置する主語、又は文末に位置する熟語であるが、例えば、穴あき部分が文中に位置する目的語であってもよい。この場合、
図3Aに示す例では目的語である「たばこ」が穴あき部分になる。
【0076】
実施形態1では、課題遂行時間が、表示部121に第1画像I1及び穴あき文S1を表示させてから被験者102の発話が完了するまでの時間である。これに対して、課題遂行時間は、例えば、表示部121に第1画像I1及び穴あき文S1を表示させてから被験者102が発話を開始するまでの時間であってもよいし、被験者102が発話を開始してから発話を終了するまでの時間であってもよい。
【0077】
実施形態1では、第1画像I1のエリアごとにガイド情報G1を決定しているが、例えば、第1画像I1内に含まれる主体(お父さん、お母さん、お姉ちゃん、弟)ごとにガイド情報G1を決定してもよい。この場合、第1画像I1におけるキーワードは、主体ごとにグループ化されていることが好ましく、例えば、主体がお父さんであれば、「お父さん」、「たばこ」、「吸っています」とのキーワードをお父さんに紐付ける。また、主体がお母さんであれば、「お母さん」、「お茶」、「飲んでいます」とのキーワードをお母さんに紐付ける。この構成によれば、主体ごとにガイド情報G1を変えるので、いずれの主体についても被験者102に発話を促すことができる。
【0078】
実施形態1では、コンテンツに対する被験者102の発話時間から被験者102の関心度を判断しているが、例えば、被験者102の音声の感情分析の結果から被験者102の関心度を判断してもよい。この場合、例えば、感情分析の結果から「うれしい」という感情が30秒以上続いていれば、被験者102の関心度が高いと判断する。
【0079】
実施形態1では、制御部11の解析部113にて音声認識を行っているが、例えば、認知機能検査システム1が外部に設けられたサーバ装置と通信可能であれば、サーバ装置にて音声認識を行ってもよい。この場合、認知機能検査システム1は、音声入出力部122を介して入力された被験者102の音声データをサーバ装置に送信する。サーバ装置は、認知機能検査システム1からの音声データに対して音声認識を行い、音声認識の結果を認知機能検査システム1に向けて送信する。この構成によれば、サーバ装置にて音声認識を行うことにより、制御部11の処理負担を軽減することができる。また、音響モデル及び認識辞書等を記憶部13に記憶させなくてもよく、記憶部13のメモリ容量を小さくすることができる。
【0080】
実施形態1では、第2画像I2が第1画像I1の部分画像であるが、第2画像I2は、例えば、第1画像I1にモザイクをかけたモザイク画像であってもよい。この場合において、第1画像I1全体にモザイクがかけられていてもよいし、第1画像I1のうちガイド情報G1として提示したい部分のみにモザイクがかけられていてもよい。
【0081】
実施形態1で説明した穴あき部分に入る語句は一例であり、例えば、色、数字等であってもよい。
【0082】
実施形態1では、第1画像I1に含まれている主体を人物としているが、主体は人物に限らず、例えば、第1画像I1に含まれている掛け時計、及び出窓等であってもよい。
【0083】
実施形態1では、第1検査及び第2検査の検査結果を認知機能の評価に用いているが、例えば、インターバル期間における被験者の音声データを認知機能の評価に用いてもよい。これにより、認知機能の評価精度の更なる向上が見込まれるという利点がある。
【0084】
(実施形態2)
実施形態2に係る認知機能検査方法及び認知機能検査システム1について、
図7A~
図11Bを参照して説明する。また、認知機能検査システム1の構成については実施形態1と同様であり、必要に応じて
図2を参照する。実施形態2に係る認知機能検査方法では、第1検査と第2検査との間のインターバル期間に第3検査を行う点で実施形態1に係る認知機能検査方法と異なっている。それ以外の構成については実施形態1に係る認知機能検査方法と同様であり、同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0085】
(1)構成
本実施形態に係る認知機能検査方法は、
図2に示す認知機能検査システム1にて実現される。認知機能検査システム1は、制御部11と、提示部12と、記憶部13と、操作部14と、設定部15と、を備えている。認知機能検査システム1は、例えば、タブレット(
図1参照)であるが、スマートフォン、又はパーソナルコンピュータ等であってもよい。なお、操作部14及び設定部15については実施形態1と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0086】
制御部11は、
図2に示すように、評価部111と、検査部112と、解析部113と、を有している。
【0087】
検査部112は、第1検査、第2検査及び第3検査を行うように構成されている。第1検査及び第2検査については実施形態1と同様であり、ここでは説明を省略する。第3検査は、第1検査を行った後の被験者102(
図1参照)に記憶の干渉を起こさせるための検査であり、例えば、一定時間(例えば、20秒)の発話を被験者102に行わせる検査である。検査部112は、第3検査においては、例えば
図7Aに示すように、被験者102に第3検査を行わせるための第4画像I41を表示部121に表示させる。
【0088】
第4画像I41は、イラスト123と、問題文124,125と、タイムバーB1と、を含む。タイムバーB1は、第3検査の検査時間を表示する。また、本実施形態では、検査部112は、被験者102の発話量に応じてタイムバーB1の表示色を変化させる。例えば、被験者102の発話量が所定値を超えていない場合にはタイムバーB1の表示色を赤色とし、被験者102の発話量が所定値を超えている時間が所定時間以上である場合にはタイムバーB1の表示色を緑色とする。つまり、本実施形態では、タイムバーB1の表示色によって被験者102の発話量を提示することができ、タイムバーB1により提示部が構成されている。本開示でいう「発話量」は、被験者102の発話音声の音量(音声パワー)であってもよいし、発話音声のデータ量であってもよい。本実施形態では、発話量は、被験者102の発話音声の音量である。なお、第3検査の詳細については、「(2)検査内容」にて詳しく説明する。
【0089】
解析部113は、第3検査にて取得した被験者102の音声データに対して、言語分析及び音響分析を行う。解析部113は、言語分析では、品詞の出現回数、一文の長さ(構文複雑性)、語彙力、類似性の高い文章の反復回数、及び特定の単語(キーワード)等の特徴量を音声データから抽出する。また、解析部113は、音響分析では、発話速度、音圧変化、及び周波数変化等の特徴量を音声データから抽出する。
【0090】
評価部111は、第1検査の検査結果である第1検査結果、第2検査の検査結果である第2検査結果、及び第3検査の検査結果である第3検査結果に基づいて被験者102の評価を行う。言い換えると、評価部111は、3つの検査結果に基づいて被験者102の認知機能の状態、すなわち被験者102の認知機能が低下しているか否かを判断する。評価部111は、第3検査においては、解析部113にて抽出された上記特徴量に基づいて被験者102の認知機能、特に記憶機能及び実行機能を評価する。
【0091】
記憶機能が低下した被験者102では、後述する自身の体験談について部分的にしか思い出せず、健常者に比べて発話する一文の長さが短くなる傾向にある。そのため、評価部111は、例えば、音声データに含まれる一文の長さの平均値が基準値よりも小さければ、記憶機能が低下していると判断する。基準値は、例えば、文字数であってもよいし、時間であってもよい。また、記憶機能が低下した被験者102では、自身の体験談について部分的にしか思い出せず、健常者に比べて同じ単語を何度も発話する傾向にある。そのため、評価部111は、音声データに含まれる同一単語の出現回数が基準回数以上であれば、記憶機能が低下していると判断する。
【0092】
さらに、記憶機能が低下した被験者102では、自身の体験談について部分的にしか思い出せず、健常者に比べて発話速度が遅くなる傾向にある。そのため、評価部111は、発話速度が基準速度以下であれば、記憶機能が低下していると判断する。また、記憶機能が低下した被験者102では、自身の体験談について部分的にしか思い出せず、いわゆる棒読みの状態となって、音圧変化及び周波数変化が小さくなる傾向にある。そのため、評価部111は、音圧変化及び周波数変化の少なくとも一方が基準値以下であれば、記憶機能が低下していると判断する。
【0093】
提示部12は、
図2に示すように、表示部121と、音声入出力部122と、を有している。第1検査及び第2検査における表示部121及び音声入出力部122の動作については実施形態1と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0094】
表示部121は、例えば、液晶ディスプレイである。表示部121は、第3検査においては、第4画像I41,I42、第5画像I51,I52及び第6画像I61を表示するように構成されている。認知機能検査システム1がタッチパネルディスプレイを備えている場合には、タッチパネルディスプレイが表示部121と操作部14とを兼ねてもよい。
【0095】
音声入出力部122は、例えば、マイクロホン及びスピーカを有している。音声入出力部122には、マイクロホンを介して、第1検査、第2検査及び第3検査における被験者102の発話音声が入力される。また、音声入出力部122は、スピーカを介して、第1検査、第2検査及び第3検査における認知機能検査システム1からの音声(例えば、検査のガイダンス音声等)を出力する。音声入出力部122は、マイクロホンを介して入力されたアナログの音声信号をデジタルの音声信号に変換し、変換後の音声データを制御部11に出力する。
【0096】
記憶部13は、読み書き可能なメモリで構成されている。記憶部13は、例えば、フラッシュメモリである。記憶部13は、第1画像I1及び第2画像I2に加えて、第4画像I41,I42、第5画像I51、I52及び第6画像I61を記憶する。さらに、記憶部13は、被験者102の属性情報を記憶する。被験者102の属性情報は、例えば、被験者102の年齢、性別、趣味、出身地等を含む。また、記憶部13は、第1検査、第2検査及び第3検査における被験者102の発話データ、検査者101(
図1参照)と被験者102の会話データ等を記憶する。
【0097】
(2)検査内容
以下、認知機能検査システム1の検査内容について説明する。なお、第1検査及び第2検査については実施形態1と同様であり、ここでは第3検査についてのみ説明する。
【0098】
第3検査は、第1検査に関する被験者102の記憶に対して記憶の干渉を起こさせるための検査である。本実施形態では、特に、第3検査は、第1検査に関する被験者102の記憶を妨げる(抑制する)ように作用する検査であり、記憶機能が低下した被験者102ほど第3検査の影響を受けやすい。第3検査は、第1検査と第2検査との間のインターバル期間に行われる。第3検査では、例えば、一定時間(例えば、20秒)の発話を被験者102に行わせる。具体的には、第3検査では、被験者102の体験談を被験者102に発話させる。また、第3検査では、被験者102が第1検査、第2検査及び第3検査を含む認知機能検査を受ける前に体験した出来事を被験者102に発話させる。
【0099】
(2.1)第1表示例
まず、第3検査における第1表示例について、
図7A及び
図7Bを参照して説明する。第3検査において表示部121に表示される第4画像I41,I42は、被験者102がこれまでに体験した体験談を被験者102に発話させるための画像である。したがって、この場合には、被験者102の記憶機能のうち、特に遠隔記憶について評価することができる。
【0100】
第3検査では、まず、第4画像I41が表示部121に表示される。第4画像I41は、イラスト123と、問題文124,125と、タイムバーB1と、を含む。
図7Aでは、イラスト123は、運動会で行われる競技を表した情景画であり、例えば、徒競走の情景画及び組体操の情景画である。なお、問題文124,125については、表示部121に表示させる代わりに、音声入出力部122のスピーカから音声にて出力してもよいし、表示部121への表示とスピーカからの音声出力とを併用してもよい。
【0101】
被験者102は、表示部121に表示された第4画像I41のイラスト123を参考にして、自身の小学校の運動会を思い出しながら運動会の思い出について発話する。このとき、被験者102は、第4画像I41に含まれているタイムバーB1にて表示される検査時間内に発話することになる。また、被験者102は、タイムバーB1の表示色を見ることで、自身の発話量(ここでは音量)が所定値を超えているか否かを知ることができる。被験者102は、例えば、タイムバーB1の表示色が赤色であれば、自身の発話量が所定値を超えるように今よりも大きな声で発話する。また、被験者102は、タイムバーB1の表示色が緑色であれば、発話量を維持できるように同程度の声で発話する。本開示でいう「所定値」は、被験者102の発話データ(音声データ)から上記特徴量を抽出可能な大きさであればよい。
【0102】
ここで、記憶機能が低下した被験者102では、自身の運動会について部分的にしか思い出せないため、例えば、一文の長さが短くなったり、同じ単語を何度も発話したりする。また、記憶機能が低下した被験者102では、自身の運動会について部分的にしか思い出せないため、表示部121に表示されたイラスト123について話し始める場合もある。そのため、第3検査において被験者102が問題なく発話したとしても、被験者102の発話内容がイラスト123と同じであれば、被験者102の記憶機能が低下していると判断してもよい。
【0103】
また、第3検査において、例えば、表示部121に表示させた第4画像I41にて抽出した上記特徴量では被験者102の記憶機能及び実行機能を評価できない場合、
図7Bに示す別の第4画像I42にて追検査を行うことが好ましい。第4画像I42は、イラスト123Aと、問題文124,125Aと、を含む。イラスト123Aは、例えば、玉入れの情景画及び綱引きの情景画であり、第4画像I41のイラスト123と異なるイラストである。問題文124,125Aは、第4画像I41の問題文124,125と同じである。
図7Bでは、タイムバーB1が第4画像I42に含まれていないが、含まれていてもよい。追検査では、1回目の検査よりも多くの発話データを取得できる可能性があり、1回目の検査にて被験者102を評価する場合に比べて、評価精度を向上させることができる。
【0104】
(2.2)第2表示例
次に、第3検査における第2表示例について、
図8A及び
図8Bを参照して説明する。第3検査において表示部121に表示される第5画像I51,I52は、被験者102が認知機能検査を受ける前に体験した出来事を被験者102に発話させるための画像である。本開示でいう「認知機能検査を受ける前」とは、認知機能検査を受ける数か月前から数分前をいう。したがって、この場合には、被験者102の記憶機能のうち、特に近時記憶について評価することができる。
【0105】
第3検査では、まず、第5画像I51が表示部121に表示される。第5画像I51は、イラスト123Bと、問題文124,125Bと、タイムバーB1と、を含む。
図8Aでは、イラスト123Bは、昨日の行動を表した情景画であり、例えば、食事中の情景画及び買物中の情景画である。なお、問題文124,125Bについては、表示部121に表示させる代わりに、音声入出力部122のスピーカから音声にて出力してもよいし、表示部121への表示とスピーカからの音声出力とを併用してもよい。
【0106】
被験者102は、表示部121に表示された第5画像I51のイラスト123Bを参考にして、自身の昨日の行動を思い出しながら昨日の行動について発話する。このとき、被験者102は、第5画像I51に含まれているタイムバーB1にて表示される検査時間内に発話することになる。また、被験者102は、タイムバーB1の表示色を見ることで、自身の発話量(ここでは音量)が所定値を超えているか否かを知ることができる。被験者102は、例えば、タイムバーB1の表示色が赤色であれば、自身の発話量が所定値を超えるように今よりも大きな声で発話する。また、被験者102は、タイムバーB1の表示色が緑色であれば、発話量を維持できるように同程度の声で発話する。
【0107】
ここで、記憶機能が低下した被験者102では、自身の昨日の行動を部分的にしか思い出せないため、例えば、一文の長さが短くなったり、同じ単語を何度も発話したりする。また、記憶機能が低下した被験者102では、自身の昨日の行動を部分的にしか思い出せないため、表示部121に表示されたイラスト123Bについて話し始める場合もある。そのため、第3検査において被験者102が問題なく発話したとしても、被験者102の発話内容がイラスト123Bと同じであれば、被験者102の記憶機能が低下していると判断してもよい。
【0108】
また、第3検査において、例えば、表示部121に表示させた第5画像I51にて抽出した上記特徴量では被験者102の記憶機能及び実行機能を評価できない場合、
図8Bに示す別の第5画像I52にて追検査を行うことが好ましい。第5画像I52は、イラスト123Cと、問題文124,125Cと、を含む。イラスト123Cは、例えば、散歩中の情景画及び洗濯中の情景画であり、イラスト123Bと異なるイラストである。問題文124,125Cは、第5画像I51における問題文124,125Bと同じである。
図8Bでは、タイムバーB1が第5画像I52に含まれていないが、含まれていてもよい。追検査では、1回目の検査よりも多くの発話データを取得できる可能性があり、1回目の検査にて被験者102を評価する場合に比べて、評価精度を向上させることができる。
【0109】
ここで、上述のように、第4画像I41,I42は、被検者102の遠隔記憶を検査するための画像であり、第5画像I51,I52は、被験者102の近時記憶を評価するための画像である。そのため、第3検査では、第4画像I41,I42による検査と、第5画像I51,I52による検査と、の両方を行うことが好ましいが、第4画像I41,I42による検査のみを行ってもよいし、第5画像I51,I52による検査のみを行ってもよい。
【0110】
また、第3検査において、第4画像I41又は第5画像I51を表示部121に表示させる前に、
図9に示すように、練習用の第6画像I61を表示部121に表示させてもよい。第6画像I61は、
図9に示すように、イラスト123Dと、問題文124,125Dと、を含む。
図9では、イラスト123Dは、小学校の放課後の遊びを表した情景画であり、例えば、ちゃんばらの情景画及びままごとの情景画である。このように、第3検査において、練習用の第6画像I61を表示部121に表示させて被験者102に練習させることで、第4画像I41又は第5画像I51による検査をスムーズに行うことができる。
【0111】
(3)動作
次に、本実施形態に係る認知機能検査システム1の一連の動作について、
図10を参照して説明する。ここでは、第4画像I41,I42にて第3検査を行う場合について説明する。
【0112】
制御部11の検査部112は、表示部121に対して第1制御信号を出力し、表示部121に第1画像I1及び穴あき文S1(
図3A参照)を表示させる。被験者102は、表示部121に表示された第1画像I1及び穴あき文S1を見ながら、穴あき文S1について発話する(ステップST11)。検査部112は、第1検査が終了すると、第1検査と第2検査との間のインターバル期間において第3検査を行う(ステップST12)。第3検査では、検査部112は、第4画像I41を表示部121に表示させる。被験者102は、表示部121に表示された第4画像I41を見ながら、一定時間(例えば、20秒)発話を行う。
【0113】
検査部112は、第4画像I41による検査にて抽出した上記特徴量では被験者102を評価できない場合には(ステップST13:No)、別の第4画像I42にて追検査を行う(ステップST12)。
【0114】
検査部112は、第4画像I41による検査にて抽出した上記特徴量で被験者102を評価できる場合には(ステップST13:Yes)、第3検査を終了して第2検査を行う(ステップST14)。このとき、例えば、「第1画像I1について話してください」等の文章を表示部121に表示してもよい。ここで、被験者102の発話が途中で停止した場合には、検査部112は、表示部121に対して第2制御信号を出力し、発話を促すためのガイド情報G1を表示部121に表示させる。
【0115】
制御部11の評価部111は、第2検査が終了すると、第1検査結果、第2検査結果及び第3検査結果に基づいて、被験者102の認知機能の状態、つまり被験者102の認知機能が低下しているか否かを評価する(ステップST15)。そして、制御部11は、評価部111の評価結果を表示部121に表示させる(ステップST16)。
【0116】
本実施形態に係る認知機能検査方法及び認知機能検査システム1では、上述のように、3つの検査結果に基づいて被験者102の認知機能の状態を評価している。そのため、1つ又は2つの検査結果に基づいて被験者102の認知機能の状態を評価する場合に比べて、認知機能の評価精度の向上を図ることができる。
【0117】
本実施形態では、ステップST11が第1検査ステップであり、ステップST14が第2検査ステップであり、ステップST12,ST13が第3検査ステップであり、ステップST15が評価ステップである。
【0118】
(4)効果
本実施形態に係る認知機能検査方法及び認知機能検査システム1では、インターバル期間に、第1検査を行った後の被験者102に記憶の干渉を起こさせるための第3検査を行っている。そのため、特に認知機能が低下した被験者102の認知機能について評価精度を向上させることができる。
【0119】
また、本実施形態に係る認知機能検査方法及び認知機能検査システム1では、第1検査結果、第2検査結果及び第3検査結果に基づいて被験者102の評価(認知機能の状態判別)を行っている。つまり、認知機能検査方法及び認知機能検査システム1では、3つの検査結果に基づいて被験者102を評価している。そのため、1つ又は2つの検査結果に基づいて被験者102を評価する場合に比べて、認知機能の評価精度の向上を図ることができる。
【0120】
さらに、本実施形態に係る認知機能検査方法及び認知機能検査システム1では、第3検査において一定時間の発話を被験者102に行わせている。これにより、認知機能のうち、特に記憶機能及び実行機能について評価することができる。この場合において、被験者102の体験談を被験者102に発話させることで、記憶機能のうち、特に遠隔記憶について評価することができる。また、被験者102が認知機能検査を受ける前の出来事を被験者102に発話させることで、記憶機能のうち、特に近時記憶について評価することができる。
【0121】
また、本実施形態に係る認知機能検査方法及び認知機能検査システム1では、被験者102の発話量を提示部(タイムバーB1)に提示させている。これにより、第3検査中において、被験者102に対して被験者102の発話量を提示することができる。
【0122】
(5)変形例
以下、実施形態2の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0123】
実施形態2では、表示部121に表示させたタイムバーB1の表示色にて被験者102の発話量(音量)を提示しているが、例えば、
図11A及び
図11Bに示すように、第1アバター126A及び第2アバター126Bにて被験者102の発話量を提示してもよい。つまり、この場合には、第1アバター126A及び第2アバター126Bが提示部として機能する。
【0124】
第1アバター126Aは、例えば、被験者102の発話量が所定値を超えていない場合のアバターである。第1アバター126Aは、
図11Aに示すように、ノート型パーソナルコンピュータの表示画面に表示させた睡眠中の顔により、被験者102の発話量が所定値を超えていないことを表している。第2アバター126Bは、例えば、被験者102の発話量が所定値を超えている時間が所定時間以上である場合のアバターである。第2アバター126Bは、
図11Bに示すように、ノート型パーソナルコンピュータの表示画面に表示させた笑顔により、被験者102の発話量が所定値を超えている時間が所定時間以上であることを表している。このように、被験者102の発話量に応じて第1アバター126A又は第2アバター126Bを表示部121に表示させることにより、被験者102に対して被験者102の発話量を提示することができる。また、第1アバター126Aを表示部121に表示させることで、被験者102に対して発話量を促進させる効果もある。
【0125】
また、第1アバター126A及び第2アバター126Bの代わりに、カラーバーを表示部121に表示させてもよい。カラーバーは、例えば、2つの領域(第1領域及び第2領域)に2分割されている。第1領域は、例えば、被験者102の発話量(音量)が所定値を超えていない場合の領域であり、第1領域の表示色は例えば赤色である。第2領域は、例えば、被験者102の発話量が所定値を超えている場合の領域であり、第2領域の表示色は例えば緑色である。そして、被験者102の発話量(音量)に応じて、カラーバーに対して目盛りを移動させることにより、被験者102に対して被験者102の発話量を提示することができる。
【0126】
例えば、目盛りが第1領域内にある場合には被験者102の発話量が所定値を超えておらず、さらに目盛りが第1領域と第2領域との間の境界から離れるにしたがって発話量は小さくなる。また、目盛りが第2領域内にある場合には被験者102の発話量が所定値を超えており、さらに目盛りが上記境界から離れるにしたがって発話量は大きくなる。
【0127】
実施形態2では、第3検査の検査時間である一定時間が20秒であるが、一定時間は20秒に限定されない。一定時間は、例えば、10秒であってもよいし、30秒であってもよいし、それ以外であってもよい。
【0128】
実施形態2では、第4画像I41,I42、第5画像I51,I52及び第6画像I61の各々に含まれるイラストが2つであるが、イラストは、例えば、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0129】
実施形態2では、被験者102の体験談が小学校の運動会の思い出であるが、被験者102の体験談は誰もが体験するような内容であればよく、小学校の運動会の思い出に限定されない。
【0130】
実施形態2では、被験者102が認知機能検査を受ける前に体験した出来事が昨日の行動であるが、被験者102が認知機能検査を受ける前に体験した出来事であればよく、昨日の行動に限定されない。
【0131】
実施形態2では、タイムバーB1の表示色を変えることで、被験者102の発話量を視覚的に提示しているが、例えば、触覚的、嗅覚的、又は聴覚的に提示してもよい。
【0132】
(実施形態3)
実施形態3に係る認知機能検査方法及び認知機能検査システム1について、
図12を参照して説明する。また、認知機能検査システム1の構成については実施形態1と同様であり、必要に応じて
図2を参照する。実施形態3に係る認知機能検査方法では、第3検査において、閉鎖子音を用いた特定発話を被験者102に行わせる点で実施形態2に係る認知機能検査方法と異なっている。それ以外の構成については実施形態1,2に係る認知機能検査方法と同様であり、同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0133】
(1)構成
本実施形態に係る認知機能検査方法は、
図2に示す認知機能検査システム1にて実行される。認知機能検査システム1は、制御部11と、提示部12と、記憶部13と、操作部14と、設定部15と、を備えている。認知機能検査システム1は、例えば、タブレット(
図1参照)であるが、スマートフォン、又はパーソナルコンピュータ等であってもよい。なお、操作部14及び設定部15については実施形態1と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0134】
制御部11は、
図2に示すように、評価部111と、検査部112と、解析部113と、を有している。
【0135】
検査部112は、第1検査、第2検査及び第3検査を行うように構成されている。第1検査及び第2検査については実施形態1と同様であり、ここでは説明を省略する。第3検査は、第1検査を行った後の被験者102(
図1参照)に記憶の干渉を起こさせるための検査であり、例えば、閉鎖子音を用いた特定発話を被験者102に行わせる検査である。検査部112は、第3検査においては、例えば
図12に示すように、被験者102に第3検査を行わせるための第7画像I71を表示部121に表示させる。第7画像I71は、特定発話の発話内容127と、問題文128と、タイムバーB2と、を含む。タイムバーB2は、第3検査の検査時間を表示する。また、実施形態2に係る認知機能検査方法と同様に、タイムバーB2の表示色を変えることで、被験者102の発話量(音量又はデータ量)を表示してもよい。
【0136】
本実施形態では、被験者102は、
図12に示すように、例えば、表示部121に表示された問題文128に従って、表示部121に表示された発話内容127をできるだけ早く言い続ける。つまり、本実施形態では、第3検査の実施中に、第3検査における発話方法(問題文128)が提示される。また、本実施形態では、特定発話の発話内容127は、例えば、「ぱたか」である。つまり、被験者102は、第3検査において、「ぱたか」を繰り返し発話することになる。これらの「ぱ」、「た」、「か」は、閉鎖子音と母音とで構成される音節である。つまり、第3検査における特定発話では、少なくとも閉鎖子音と母音とで構成される音節が連続している。第3検査の検査時間は、例えば、5秒であり、被験者102は、5秒間の間、できるだけ早く「ぱたか」を言い続ける。なお、第3検査の詳細については、「(2)検査内容」にて詳しく説明する。
【0137】
解析部113は、第3検査にて取得した被験者102の音声データに対して、音響分析を行う。解析部113は、音響分析において、例えば、被験者102の発声回数及び発声時間等の特徴量を音声データから抽出する。解析部113は、発声回数については、例えば、音圧レベルが所定値以上である音節をカウントする。また、解析部113は、上述の実施形態2と同様に、発話速度、音圧変化及び周波数変化等の特徴量を音声データから抽出してもよい。
【0138】
評価部111は、第1検査の検査結果である第1検査結果、第2検査の検査結果である第2検査結果、及び第3検査の検査結果である第3検査結果に基づいて被験者102の評価を行う。言い換えると、評価部111は、3つの検査結果に基づいて被験者102の認知機能の状態、すなわち被験者102の認知機能が低下しているか否かを判断する。評価部111は、第3検査においては、解析部113にて抽出された上記特徴量に基づいて被験者102の認知機能、特に実行機能及び情報処理機能を評価する。
【0139】
実行機能及び情報処理機能が低下した被験者102では、健常者に比べて発声回数が少なくなる。そのため、評価部111は、発声回数が基準回数以下であれば、実行機能及び情報処理機能が低下していると判断する。また、実行機能及び情報処理機能が低下した被験者102では、健常者に比べて発声時間が短くなる。そのため、評価部111は、発声時間が基準時間以下であれば、実行機能及び情報処理機能が低下していると判断する。
【0140】
提示部12は、
図2に示すように、表示部121と、音声入出力部122と、を有している。第1検査及び第2検査における表示部121及び音声入出力部122の動作については実施形態1と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0141】
表示部121は、例えば、液晶ディスプレイである。表示部121は、第3検査においては、第7画像I71を表示するように構成されている。なお、認知機能検査システム1がタッチパネルディスプレイを備えている場合には、タッチパネルディスプレイが表示部121と操作部14とを兼ねてもよい。
【0142】
音声入出力部122は、例えば、マイクロホン及びスピーカを有している。音声入出力部122には、マイクロホンを介して、第1検査、第2検査及び第3検査における被験者102の発話音声が入力される。また、音声入出力部122は、スピーカを介して、第1検査、第2検査及び第3検査における認知機能検査システム1からの音声(例えば、検査のガイダンス音声等)を出力する。音声入出力部122は、マイクロホンを介して入力されたアナログの音声信号をデジタルの音声信号に変換し、変換後の音声データを制御部11に出力する。
【0143】
記憶部13は、読み書き可能なメモリで構成されている。記憶部13は、例えば、フラッシュメモリである。記憶部13は、第1画像I1及び第2画像I2に加えて、第3検査における第7画像I71を記憶する。さらに、記憶部13は、被験者102の属性情報を記憶する。被験者102の属性情報は、例えば、被験者102の年齢、性別、趣味、出身地等を含む。また、記憶部13は、第1検査、第2検査及び第3検査における被験者102の発話データ、検査者101(
図1参照)と被験者102の会話データ等を記憶する。
【0144】
(2)検査内容
以下、認知機能検査システム1の検査内容について説明する。なお、第1検査及び第2検査については実施形態1と同様であり、ここでは第3検査についてのみ説明する。
【0145】
第3検査は、第1検査に関する被験者102の記憶に対して記憶の干渉を起こさせるための検査である。本実施形態では、特に、第3検査は、第1検査に関する被験者102の記憶を妨げる(抑制する)ように作用する検査であり、記憶機能が低下した被験者102ほど第3検査の影響を受けやすい。第3検査は、第1検査と第2検査との間のインターバル期間に行われる。第3検査では、例えば、閉鎖子音を用いた特定発話を被験者102に行わせる。本実施形態に係る特定発話では、
図12に示すように、少なくとも閉鎖子音と母音とで構成される音節(「ぱ」、「た」、「か」)が連続している。
【0146】
被験者102は、第3検査において、表示部121に表示された問題文128に従って、表示部121に表示された発話内容127(ここでは「ぱたか」)をできるだけ早く5秒間言い続ける。実行機能及び情報処理機能が低下した被験者102では、5秒間での発声回数が健常者に比べて少なくなる。そのため、被験者102の発声回数を基準回数と比較することで、被験者102の実行機能及び情報処理機能を評価することができる。また、実行機能及び情報処理機能が低下した被験者102では、特定発話での発声時間が健常者に比べて短くなる。そのため、被験者102の発声時間を基準時間と比較することで、被験者102の実行機能及び情報処理機能を評価することができる。
【0147】
なお、認知機能検査システム1の動作については、実施形態2に係る認知機能検査システム1に比べて、第3検査の検査内容が異なるだけであり、ここでは説明を省略する。
【0148】
ところで、特定発話での音声データから抽出される上記特徴量が、被験者102の実行機能及び情報処理機能を評価できる量に達していれば、検査部112は、第3検査を終了して第2検査を行うように構成されていることが好ましい。
【0149】
(3)効果
本実施形態に係る認知機能検査方法及び認知機能検査システム1では、インターバル期間に、第1検査を行った後の被験者102に記憶の干渉を起こさせるための第3検査を行っている。そのため、特に認知機能が低下した被験者102の認知機能について評価精度を向上させることができる。
【0150】
また、本実施形態に係る認知機能検査方法及び認知機能検査システム1では、第1検査結果、第2検査結果及び第3検査結果に基づいて被験者102の評価(認知機能の状態判別)を行っている。つまり、認知機能検査方法及び認知機能検査システム1では、3つの検査結果に基づいて被験者102を評価している。そのため、1つ又は2つの検査結果に基づいて被験者102を評価する場合に比べて、認知機能の評価精度の向上を図ることができる。
【0151】
さらに、本実施形態に係る認知機能検査方法及び認知機能検査システム1では、第3検査において閉鎖子音を用いた特定発話を被験者102に行わせている。これにより、認知機能のうち、特に実行機能及び情報処理機能について評価することができる。
【0152】
また、本実施形態に係る認知機能検査方法及び認知機能検査システム1では、第3検査の実施中に、第3検査における発話方法(本実施形態では問題文128)を提示している。そのため、被験者102が、表示部121にて表示(提示)された発話方法に従うことで、第3検査を正しく行うことができる。その結果、被験者102の認知機能の評価精度を向上させることができる。
【0153】
(4)変形例
以下、実施形態3の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0154】
実施形態3では、第3検査の検査中に、第3検査における発話方法(問題文128)を提示しているが、例えば、第3検査の前に、第3検査における発話方法を提示してもよい。この場合において、第3検査における発話方法を表示部121に表示してもよいし、音声入出力部122のスピーカから音声にて出力してもよいし、両方でもよい。
【0155】
実施形態3では、発話内容127が「ぱたか」であるが、発話内容127は、閉鎖子音を用いていればよく、例えば、「ぱ」のみであってもよい。さらに、特定発話に含まれる音節は、少なくとも閉鎖子音と母音とで構成されていればよく、「ぱ」、「た」、「か」以外の音節であってもよい。
【0156】
実施形態3では、第3検査において被験者102が発話する内容を文字にて表示部121に表示しているが、例えば、被験者102が発話する内容をイラスト等で表示部121に表示してもよい。
【0157】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る認知機能検査方法は、第1検査と、第2検査と、を有する。第1検査は、表示部(121)に画像(I1)を表示させながら画像(I1)に関連する発話を被験者(102)に行わせる検査である。第2検査は、第1検査を行ってからインターバル期間が経過した後に、画像(I1)に関連する発話を被験者(102)に行わせる検査である。認知機能検査方法では、第1検査の検査結果である第1検査結果、及び第2検査の検査結果である第2検査結果に基づいて被験者(102)の評価を行う。
【0158】
この態様によれば、2つの検査結果に基づいて被験者(102)の評価を行うので、1つの検査結果に基づいて被験者(102)の評価を行う場合に比べて認知機能の評価精度の向上を図ることができる。
【0159】
第2の態様に係る認知機能検査方法では、第1の態様において、第1検査は、穴あき文(S1)による穴あき検査を含む。穴あき文(S1)は、画像(I1)と共に表示部(121)に表示され、画像(I1)に関連する文章の一部を空欄にした文章である。
【0160】
この態様によれば、特に、注意機能、及び遂行機能について評価することができる。
【0161】
第3の態様に係る認知機能検査方法では、第1又は2の態様において、インターバル期間に、被験者(102)にコンテンツ(例えば、第3画像I3)を提示する。
【0162】
この態様によれば、被験者(102)が興味のあるコンテンツを提示することにより、その後に行われる検査に対して被験者(102)を集中させることができる。
【0163】
第4の態様に係る認知機能検査方法では、第3の態様において、コンテンツは、被験者(102)に応じて選択される。
【0164】
この態様によれば、被験者(102)に応じてコンテンツを変えることができる。
【0165】
第5の態様に係る認知機能検査方法では、第4の態様において、コンテンツは、被験者(102)によって手動で選択される。
【0166】
この態様によれば、被験者(102)の意思でコンテンツを選択することができる。
【0167】
第6の態様に係る認知機能検査方法では、第4の態様において、コンテンツは、コンテンツに対する被験者(102)の関心度に応じて自動的に切り替えられる。
【0168】
この態様によれば、被験者(102)の関心度の高いコンテンツを自動的に提示することができる。
【0169】
第7の態様に係る認知機能検査方法では、第3~6のいずれかの態様において、コンテンツは、広告である。
【0170】
この態様によれば、広告による収入によって検査に要する費用を低減することができる。
【0171】
第8の態様に係る認知機能検査方法では、第1~7のいずれかの態様において、インターバル期間に、被験者(102)に対するレコメンド情報を提示する。認知機能検査方法では、被験者(102)に対する次の第1検査及び第2検査の少なくとも一方にレコメンド情報を利用する。
【0172】
この態様によれば、第1検査及び第2検査の少なくとも一方にレコメンド情報を利用することにより、被験者(102)に特化させた第1検査又は第2検査を行うことができる。
【0173】
第9の態様に係る認知機能検査方法では、第1~8のいずれかの態様において、インターバル期間に、第1検査を行った後の被験者(102)に記憶の干渉を起こさせるための第3検査を行う。認知機能検査方法では、第1検査結果、第2検査結果、及び第3検査の検査結果である第3検査結果に基づいて被験者(102)の評価を行う。
【0174】
この態様によれば、インターバル期間に第3検査を行うことで第1検査に関する被験者(102)の記憶に対して記憶の干渉を起こさせることができ、その結果、被験者(102)の認知機能の評価精度を向上させることができる。
【0175】
第10の態様に係る認知機能検査方法では、第9の態様において、第3検査は、一定時間の発話を被験者(102)に行わせる検査である。
【0176】
この態様によれば、特に、記憶機能及び実行機能について評価することができる。
【0177】
第11の態様に係る認知機能検査方法では、第10の態様において、第3検査は、被験者(102)の体験談を被験者(102)に発話させる検査である。
【0178】
この態様によれば、記憶機能のうち、遠隔記憶について評価することができる。
【0179】
第12の態様に係る認知機能検査方法では、第10の態様において、第3検査は、被験者(102)が第1検査、第2検査及び第3検査を含む認知機能検査を受ける前に体験した出来事を被験者(102)に発話させる検査である。
【0180】
この態様によれば、記憶機能のうち、近時記憶について評価することができる。
【0181】
第13の態様に係る認知機能検査方法では、第9の態様において、第3検査は、閉鎖子音を用いた特定発話を被験者(102)に行わせる検査である。
【0182】
この態様によれば、特に、実行機能及び情報処理機能について評価することができる。
【0183】
第14の態様に係る認知機能検査方法では、第13の態様において、特定発話では、少なくとも閉鎖子音と母音とで構成される音節が連続している。
【0184】
第15の態様に係る認知機能検査方法では、第13又は14の態様において、第3検査の前、又は第3検査の実施中に、第3検査における発話方法が提示される。
【0185】
この態様によれば、提示された発話方法に被験者(102)が従うことで、被験者(102)に第3検査を正しく行わせることができる。
【0186】
第16の態様に係る認知機能検査方法では、第9~15のいずれかの態様において、第3検査では、被験者(102)の発話量を提示部(例えば、表示部121)に提示させる。
【0187】
この態様によれば、第3検査中に、被験者(102)に対して被験者(102)の発話量を提示することができる。
【0188】
第17の態様に係るプログラムは、第1~16のいずれかの態様に係る認知機能検査方法を1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0189】
この態様によれば、2つの検査結果に基づいて被験者(102)の評価を行うので、1つの検査結果に基づいて被験者(102)の評価を行う場合に比べて認知機能の評価精度の向上を図ることができる。
【0190】
第18の態様に係る認知機能検査システム(1)は、表示部(121)と、検査部(112)と、評価部(111)と、を備える。検査部(112)は、第1検査及び第2検査を行う。第1検査は、表示部(121)に画像(I1)を表示させながら画像(I1)に関連する発話を被験者(102)に行わせる検査である。第2検査は、第1検査を行ってからインターバル期間が経過した後に、画像(I1)に関連する発話を被験者(102)に行わせる検査である。評価部(111)は、第1検査の検査結果である第1検査結果、及び第2検査の検査結果である第2検査結果に基づいて被験者(102)の評価を行う。
【0191】
この態様によれば、2つの検査結果に基づいて被験者(102)の評価を行うので、1つの検査結果に基づいて被験者(102)の評価を行う場合に比べて認知機能の評価精度の向上を図ることができる。
【0192】
第2~16の態様に係る構成については、認知機能検査方法に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0193】
1 認知機能検査システム
111 評価部
112 検査部
121 表示部
102 被験者
I1 第1画像(画像)
S1 穴あき文