(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】2線式通信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 3/50 20060101AFI20230310BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20230310BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
H04B3/50
B60R16/023 P
B60R11/02 M
(21)【出願番号】P 2019048275
(22)【出願日】2019-03-15
【審査請求日】2021-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 誠
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-085271(JP,A)
【文献】特表2014-534686(JP,A)
【文献】特開2011-019160(JP,A)
【文献】国際公開第2016/088189(WO,A1)
【文献】特開2016-034075(JP,A)
【文献】国際公開第2018/039344(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/76-3/44
H04B 3/50-3/60
H04B 7/00-7/015
B60R 9/00-11/06
B60R 16/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スレーブボードに設けられるスレーブチップを具備し、
マスタチップと
前記スレーブチップとを2線式バスで接続し、アナログのマイクロホンカプセルを備えるマイクロホンモジュールのアナログ音声信号を、アナログデジタル変換して前記スレーブチップに入力し
、
前記スレーブチップは、汎用入出力ポートを具備し、
前記スレーブチップの前記汎用入出力ポートは、プルアップ電源でプルアップされた入力ポートであり、
前記スレーブボードは、第1のグランド端子を具備し、
前記マイクロホンモジュールは、第2のグランド端子及びセンス端子を具備し、
前記スレーブボードの前記第1のグランド端子は、前記マイクロホンモジュールの前記第2のグランド端子と接続され、
前記マイクロホンモジュールの前記センス端子は、前記スレーブチップの前記汎用入出力ポートの前記入力ポートに接続され、
前記マイクロホンモジュールが前記スレーブチップと接続状態である場合、前記スレーブチップの前記入力ポートの電位は前記第1のグランド端子及び前記第2のグランド端子と同電位であり、
前記マイクロホンモジュールが前記スレーブボードと断線状態である場合、前記スレーブチップの前記入力ポートの電位は前記プルアップ電源と同電位である、
2線式通信システム。
【請求項2】
前記アナログ音声信号を前記アナログデジタル変換するコーデックを含む
、請求項
1に記載の2線式通信システム。
【請求項3】
前記アナログ音声信号を前記アナログデジタル変換するADコンバータと、ファントム給電用の抵抗とコンデンサを含む
、請求項
1または2に記載の2線式通信システム。
【請求項4】
前記マイクロホンモジュールは、電源線と前記アナログ音声信号の出力線が同一線
である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の2線式通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2線式通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、A2B(Automotive Audio Bus)(登録商標)に代表される2線式通信システムが車両に適用され、マイクロホン、スピーカ等の音響機器が2線式通信システムを介して配置されている。
図6は、従来の2線式通信システム100の構成を示す図であり、
図7は従来の2線式通信システム100を車両200に搭載した状態を示す図である。
【0003】
従来の2線式通信システム100は、マスタボード10、スレーブボード20から構成されている。マスタボード10にはマスタチップ11が搭載されている。スレーブボード20には、スレーブチップ21とPDM(Pulse Density Modulation)インターフェースのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)マイクロホンモジュール25が搭載されている。マスタボード10にはマスタチップ11が搭載されている。マスタボード10に搭載されるマスタチップ11と、2枚のスレーブボード20a、20bに搭載されるスレーブチップ21a、21bはバスラインにより接続され、各スレーブボード20に搭載されるMEMSマイクロホンモジュール22で集音された音声データは、各スレーブチップ21によりマスタチップ11へ伝送される。また、従来の2線式通信システムの故障検知の方法として、2線式通信システムのバスラインにおいて開放、短絡等を検知する方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マイクロホンの性能は、マイクロホンモジュールの性能に影響されるところが大きいが、PDMインターフェースのMEMSマイクロホンモジュール22のようなデジタルマイクロホンでは、アナログマイクロホンに比べて周波数特性が低域まで伸びていない等により、周波数特性における要求性能を満たすことが出来ない場合がある。
【0006】
また、スレーブボード20を構成する部品の部品コストとして、スレーブチップ21のコストが他の部品のコストと比較して高価である。したがって、従来の2線式通信システム100では、スレーブボード20を複数枚適用することによって、トータルコストが高価になるという課題があった。
【0007】
本開示は、上記課題に鑑み、安価な2線式通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本開示の2線式通信システムは、マスタチップとスレーブチップとを2線式バスで接続し、アナログのマイクロホンカプセルを備えるマイクロホンモジュールのアナログ音声信号を、アナログデジタル変換して前記スレーブチップに入力したことを特徴とする。
【0009】
また、本開示の2線式通信システムは、前記スレーブチップは、汎用入出力ポートを具備し、前記汎用入出力ポートは、プルアップ電源でプルアップされた入力ポートであることを特徴とする。
【0010】
また、本開示の2線式通信システムは、前記マイクロホンモジュールは、グランドと接続されるセンス端子を具備し、前記センス端子を前記汎用入出力ポートに接続したことを特徴とする。
【0011】
また、本開示の2線式通信システムは、前記マイクロホンモジュールの音声信号をアナログデジタル変換するコーデックを含むことを特徴とする。
【0012】
また、本開示の2線式通信システムは、前記アナログ音声信号を前記アナログデジタル変換するADコンバータと、ファントム給電用の抵抗とコンデンサを含むことを特徴とする。
【0013】
また、本開示の2線式通信システムは、前記マイクロホンモジュールは、電源線と前記アナログ音声信号の出力線を同一線にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、安価な2線式通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の第1の実施形態に係る2線式通信システムを示す図である。
【
図2】本開示の第1の実施形態に係る2線式通信システムを車両に搭載した状態を示す図である。
【
図3】本開示の第2の実施形態に係る2線式通信システムを示す図である。
【
図4】本開示の第3の実施形態に係る2線式通信システムを示す図である。
【
図5】本開示の第4の実施形態に係る2線式通信システムを示す図である。
【
図6】従来の2線式通信システムの構成を示す図である。
【
図7】従来の2線式通信システムを車両に搭載した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の実施形態では、A2B(Automotive Audio Bus)(登録商標)の技術は公知の技術であるため、詳細な説明は省略する。
【0017】
(第1の実施形態)
まず、本開示の第1の実施形態について、
図1と
図2を参照しながら説明する。
図1は本開示の第1の実施形態に係る2線式通信システム1を示す図である。また、
図2は本開示の第1の実施形態における2線式通信システム1を車両200に搭載した状態を示す図である。
【0018】
図1および
図2において、10はマスタボード、20はスレーブボード、30はマイクロホンモジュール、200は車両である。マスタボード10と、スレーブボード20と、マイクロホンモジュール30はそれぞれ別の筐体に格納される。マスタボード10とスレーブボード20は、バスラインで接続される。また、スレーブボード20とマイクロホンモジュール30は、ワイヤーハーネスで接続される。
【0019】
マスタボード10には、マスタチップ11が設けられている。スレーブボード20には、スレーブチップ21と、ADコンバータ22a、22bが設けられている。マスタチップ11は、バスラインを通じてスレーブチップ21に動作電力を供給する。マスタチップ11は、バスラインの開放、短絡等を検知することでバスラインの断線等を検知する。
【0020】
マイクロホンモジュール30には、アナログのマイクロホンカプセル31(以下、マイクロホンカプセル31、という)が設けられている。
【0021】
スレーブボード20から各マイクロホンモジュール30に対して、電源電圧が供給される。マイクロホンモジュール30aの音声出力端子から出力されたアナログ音声信号は、ADコンバータ22aのLチャンネル端子(Lch)に入力される。マイクロホンモジュール30bの音声出力端子から出力されたアナログ音声信号は、ADコンバータ22aのRチャンネル端子(Rch)に入力される。マイクロホンモジュール30cの音声出力端子から出力されたアナログ音声信号は、ADコンバータ22bのLチャンネル端子に入力される。マイクロホンモジュール30dの音声出力端子から出力されたアナログ音声信号は、ADコンバータ22bのRチャンネル端子に入力される。
【0022】
各ADコンバータ22は、入力されたアナログ音声信号をデジタル信号に変換してスレーブチップ21に出力する。出力されるデジタル信号は、例えば、時分割多重信号として出力される。
【0023】
よって、各マイクロホンモジュール30の各マイクロホンカプセル31で集音されたアナログ音声信号は、ADコンバータ22、スレーブチップ21を介してマスタチップ11へ伝送される。また、各マイクロホンモジュール30をスレーブボード20と分離することにより、マイクロホンモジュール30における設計自由度が増す。
【0024】
(第2の実施形態)
次に、本開示の第2の実施形態について、
図3を参照しながら説明する。
図3は本開示の第2の実施形態に係る2線式通信システム2を示す図である。なお、
図1と同一の符号を付したものについて、同じ説明は繰り返さない。
【0025】
上述した第1の実施形態では、マスタチップ11とスレーブチップ21との間の断線を検知することは出来るが、各マイクロホンモジュール30とスレーブチップ21との間の断線を検知することは出来なかった。
【0026】
第2の実施形態では、
図3に示すように、各マイクロホンモジュール30には、グランド(GND)と接続されたセンス端子(SENS)が設けられている。各マイクロホンモジュール30のグランドはスレーブボード20のグランドと接続されている。したがって、各マイクロホンモジュール30のグランドとスレーブボード20のグランドは同電位である。
【0027】
マイクロホンモジュール30aのセンス端子は、スレーブチップ21の汎用入出力ポート0(GPIO0)に接続されている。マイクロホンモジュール30bのセンス端子は、スレーブチップ21の汎用入出力ポート1(GPIO1)に接続されている。マイクロホンモジュール30cのセンス端子は、スレーブチップ21の汎用入出力ポート2(GPIO2)に接続されている。マイクロホンモジュール30dのセンス端子は、スレーブチップ21の汎用入出力ポート3(GPIO3)に接続されている。
【0028】
各汎用入出力ポートは、抵抗を介して電源電圧Vddによりプルアップされている。なお、各汎用入出力ポートは入力ポートに設定される。
【0029】
よって、マイクロホンモジュール30がスレーブチップ21と接続されている場合は、スレーブボード20のグランドと接続されたセンス端子の作用により、汎用入出力ポートはグランドと同電位(LOW)となる。一方、マイクロホンモジュール30がスレーブボード20と断線状態にある場合は、汎用入出力ポートは電源電圧Vddと同電位(HIGH)となる。スレーブチップ21により、各汎用入出力ポートの状態をマスタチップ11に通知することで、各マイクロホンモジュール30の断線を検知することが出来る。
【0030】
(第3の実施形態)
次に、本開示の第3の実施形態について、
図4を参照しながら説明する。
図4は本開示の第3の実施形態に係る2線式通信システム3を示す図である。なお、
図1と同一の符号を付したものについて、同じ説明は繰り返さない。
【0031】
この第3の実施形態が上述した第2の実施形態と異なる点は、第2の実施形態ではADコンバータ22を用いていたが、第3の実施形態ではADコンバータ22に替えてコーデック(CODEC)23を用いている点である。断線検知の方法は第2の実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0032】
スレーブボード20から各マイクロホンモジュール30に対して電源電圧Powが供給される。各マイクロホンモジュール30の各音声出力端子からはアナログ音声信号が出力される。
【0033】
マイクロホンモジュール30aの音声出力端子(Mic out)から出力されたアナログ音声信号は、コーデック23のチャンネル1端子(ch1)に入力される。マイクロホンモジュール30bの音声出力端子から出力されたアナログ音声信号は、コーデック23のチャンネル2端子(ch2)に入力される。マイクロホンモジュール30cの音声出力端子から出力されたアナログ音声信号は、コーデック23のチャンネル3端子(ch3)に入力される。マイクロホンモジュール30dの音声出力端子から出力されたアナログ音声信号は、コーデック23のチャンネル4端子(ch4)に入力される。
【0034】
コーデック23は、各チャンネル端子から入力されたアナログ音声信号をデジタル信号に変換してスレーブチップ21に出力する。出力されるデジタル信号は、例えば、時分割多重信号として出力される。よって、各マイクロホンモジュール30に設けられた各マイクロホンカプセル31で集音された音声データは、コーデック23、スレーブチップ21を介してマスタチップ11へ伝送される。
【0035】
(第4の実施形態)
次に、本開示の第4の実施形態について、
図5を参照しながら説明する。
図5は本開示の第4の実施形態に係る2線式通信システム4を示す図である。なお、
図1と同一の符号を付したものについて、同じ説明は繰り返さない。
【0036】
この第4の実施形態が上述した第2の実施形態と異なる点は、第2の実施形態ではマイクロホンモジュール30の電源電圧Pow端子と音声出力端子を別々に設けていたが、第4の実施形態ではマイクロホンモジュール30の電源電圧Powと音声出力を同一ラインした点である。この第4の実施形態では、ファントム給電により信号ラインから電力を供給する。なお、断線検知の方法は第2の実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0037】
マイクロホンモジュール30の電源電圧Powと音声出力を同一ラインとし、ファントム給電にしたことにより、マイクロホンモジュール30へのワイヤーハーネスの本数を3本にすることが出来る。
【0038】
各マイクロホンモジュール30の電源/音声出力端子(Pow/Mic out)には、スレーブボード20から、抵抗を介して電源電圧Powが供給される。また、各ADコンバータ22のLチャンネル入力端子とRチャンネル入力端子の信号ラインには、コンデンサが設けられる。
【0039】
マイクロホンモジュール30aの電源/音声出力端子から出力されたアナログ音声信号は、ADコンバータ22aのLチャンネル端子に入力される。マイクロホンモジュール30bの電源/音声出力端子から出力されたアナログ音声信号は、ADコンバータ22aのRチャンネル端子に入力される。マイクロホンモジュール30cの電源/音声出力端子から出力されたアナログ音声信号は、ADコンバータ22bのLチャンネル端子に入力される。マイクロホンモジュール30dの電源/音声出力端子から出力されたアナログ音声信号は、ADコンバータ22bのRチャンネル端子に入力される。
【0040】
各ADコンバータ22は、入力されたアナログ音声信号をデジタル信号に変換してスレーブチップ21に出力する。出力されるデジタル信号は、例えば、時分割多重信号として出力される。よって、各マイクロホンモジュール30に設けられた各マイクロホンカプセル31で集音された音声データは、ADコンバータ22、スレーブチップ21を介してマスタチップ11へ伝送される。
【0041】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【0042】
(付記事項)
マスタチップとスレーブチップとを2線式バスで接続し、アナログのマイクロホンカプセルを備えるマイクロホンモジュールのアナログ音声信号を、アナログデジタル変換してスレーブチップに入力し、スレーブチップは、汎用入出力ポートを具備し、マイクロホンモジュールのセンス端子をスレーブチップの汎用入出力ポートと接続し、汎用入出力ポートを、プルアップ電源でプルアップされた入力ポートにすることで、スレーブチップによりマイクロホンモジュールの断線を検知することが出来るようにした2線式通信システムの故障検知方法。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本開示によれば、マスタチップとスレーブチップとを2線式バスで接続し、アナログのマイクロホンカプセルからなるマイクロホンモジュールの音声信号をアナログデジタル変換してスレーブチップに入力したので、安価な2線式通信システムを提供することが出来る。
【符号の説明】
【0044】
1 第1の実施形態に係る2線式通信システム
2 第2の実施形態に係る2線式通信システム
3 第3の実施形態に係る2線式通信システム
4 第4の実施形態に係る2線式通信システム
10 マスタボード
11 マスタチップ
20(20a、20b) スレーブボード
21(21a、21b) スレーブチップ
22(22a、22b) ADコンバータ
23 コーデック
25(25a~25d) MEMSマイクロホンモジュール
30(30a~30d) マイクロホンモジュール
31(31a~31d) アナログのマイクロホンカプセル
100 従来の2線式通信システム
200 車両