(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】波力利用装置および波力利用装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
F03B 13/24 20060101AFI20230310BHJP
【FI】
F03B13/24
(21)【出願番号】P 2020175277
(22)【出願日】2020-10-19
【審査請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【氏名又は名称】和田 充夫
(72)【発明者】
【氏名】岸下 健介
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 彰継
(72)【発明者】
【氏名】高見 文宣
(72)【発明者】
【氏名】青倉 勇
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第4345270(DE,A1)
【文献】実開平1-139088(JP,U)
【文献】特開2013-29087(JP,A)
【文献】特開昭61-190171(JP,A)
【文献】特開2012-2218(JP,A)
【文献】特開2015-40540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/24
F03B 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水の波の押し引きを受ける波受け箱入口部を備え、前記波受け箱入口部から流入する前記海水が充填される空間を備える波受け箱と、
前記波受け箱内に連通するように接続され、下部開口が上部開口よりも流路断面積が広く設定され、前記下部開口と前記上部開口とをテーパ状に接続する絞り部を備え、前記波受け箱内に引き込まれた前記波を前記絞り部を介して引き込む波引き込み部と前記引き込んだ波により空気を圧縮する空気圧縮部とを備える中空の圧縮管と、
前記波引き込み部の上部に接続され、開動作時に空気または海水が流入出可能とする気液導入開閉弁と、
前記空気圧縮部の上部に接続され、前記空気圧縮部からの下流側の方向のみの空気の流れを許容する逆止弁を備える空気排出管と、
前記空気排出管の流路の下流側に接続されて、前記空気圧縮部で圧縮された空気が充填される圧縮空気貯蔵タンクと、
前記空気圧縮部に空気を導入する空気導入手段と、
前記空気導入手段と前記空気圧縮部とを接続する空気導入配管と、
前記空気導入配管の途中に備えられ、開動作時に前記空気導入手段から前記空気圧縮部に空気導入可能な空気導入開閉弁と、
前記圧縮空気貯蔵タンクの下流側の流路に設けられ、圧縮空気を活用する圧縮空気活用部と、を有する波力利用装置。
【請求項2】
前記圧縮管において前記波引き込み部と前記空気圧縮部とは壁で仕切られて隣接し、
前記波引き込み部と前記空気圧縮部とは前記圧縮管の下部側でのみ互いに連通している、請求項1に記載の波力利用装置。
【請求項3】
前記圧縮管は、内管および外管を有する二重管で構成され、
前記内管および前記外管のいずれか一方が前記波引き込み部であり、他方が前記空気圧縮部であるとともに、
前記波引き込み部と前記空気圧縮部とは前記内管の管壁で仕切られて隣接し、
前記波引き込み部と前記空気圧縮部とは前記圧縮管の下部側でのみ互いに連通している、請求項1に記載の波力利用装置。
【請求項4】
前記気液導入開閉弁は、前記波引き込み部内に引き込まれた空気または海水の圧力により開閉動作すると弁体を有して、前記弁体の開動作時に空気または海水が流入出可能とする、請求項1~3のいずれか1つに記載の波力利用装置。
【請求項5】
海水の波の押し引きを受ける波受け箱入口部を備え、前記波受け箱入口部から流入する前記海水が充填される空間を備える波受け箱と、
前記波受け箱内に連通するように接続され、下部開口が上部開口よりも流路断面積が広く設定され、前記下部開口と前記上部開口とをテーパ状に接続する絞り部を備え、前記波受け箱内に引き込まれた前記波を前記絞り部を介して引き込む波引き込み部と前記引き込んだ波により空気を圧縮する空気圧縮部とを備える中空の圧縮管と、
前記波引き込み部の上部に接続され、開動作時に空気または海水が流入出可能とする気液導入開閉弁と、
前記空気圧縮部の上部に接続され、前記空気圧縮部からの下流側の方向のみの空気の流れを許容する逆止弁を備える空気排出管と、
前記空気排出管の流路の下流側に接続されて、前記空気圧縮部で圧縮された空気が充填される圧縮空気貯蔵タンクと、
前記空気圧縮部に空気を導入する空気導入手段と、
前記空気導入手段と前記空気圧縮部とを接続する空気導入配管と、
前記空気導入配管の途中に備えられ、開動作時に前記空気導入手段から前記空気圧縮部に空気導入可能な空気導入開閉弁と、
前記圧縮空気貯蔵タンクの下流側の流路に設けられ、圧縮空気を活用する圧縮空気活用部と、を有する波力利用装置の制御方法であって、
引き波の際に前記気液導入開閉弁から空気もしくは海水が前記圧縮管の外部から前記圧縮管の内部に吸入され、押し波の際に前記波受け箱に速度を持った波が流入し、
流入した波が前記空気圧縮部の空気を押し込む際に前記気液導入開閉弁を閉じて前記空気圧縮部で前記空気を圧縮する、波力利用装置の制御方法。
【請求項6】
前記空気圧縮部に、前記空気圧縮部内の圧力を検知する圧力検知手段が設置され、
前記圧力検知手段によって検知された前記空気圧縮部内の圧力により、前記気液導入開閉弁および前記空気導入開閉弁の開閉を制御する、請求項5に記載の波力利用装置の制御方法。
【請求項7】
前記空気圧縮部に水位を検知する水位検知手段が設置され、
前記水位検知手段によって検知された水位により、前記気液導入開閉弁および前記空気導入開閉弁の開閉を制御する、請求項5に記載の波力利用装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押し寄せる波のエネルギーを広く活用するため、波のエネルギーから圧縮空気を生成及び貯蔵する波力利用装置および波力利用装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
世界のエネルギー消費量は年々増え続けている。そして、石油、石炭、及び天然ガスといった化石燃料の利用が増大したことによるCO2排出量の増加に伴う、地球温暖化が問題となっている。一方で、これらの化石燃料は、枯渇による不足が懸念されている。このような状況の中で、世界では再生可能エネルギーの活用が積極的に推進されている。その再生可能エネルギーの中でも、自然現象から得られる自然エネルギーには、太陽光及び熱、風力、潮力、波力、並びに、地熱などがあり、枯渇の心配のないクリーンなエネルギー資源として期待されている。
【0003】
自然エネルギーの中でも、太陽光発電及び風力発電は、外部要因でその発電量が大きく左右されるのに対し、波力発電は比較的安定性に優れ、面積効率が数倍から数十倍といわれている。また、島国である日本は、その海洋エネルギー活用に高いポテンシャルがある。
【0004】
しかしながら、海洋に設置するための設置コスト、海水に常時触れていることによる腐食、貝又はフジツボ又はゴミなどの異物付着の定期的なメンテナンスといった長期信頼性確保に伴う維持管理コスト、及び、台風などの異常気象に対しての安全性に課題がある。
【0005】
従来の打ち寄せる波の力を利用して発電するシステムとしては、ケーシングを用いて波の上下動によってケーシング内の空気を圧縮させて空気流を発生し、その空気流を用いてタービンを回すことで、発電するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
図6は、特許文献1に記載された従来の波力利用の発電方法を示す図である。
【0007】
波力エネルギー導入部601は、水上で下面が開口しているケーシング602および通気ライン603で構成されている。通気ライン603の先にはバッファタンク604が配置され、さらにタービン605、発電機606と連結されている。
【0008】
波力エネルギー導入部601に波が押し寄せ、ケーシング602内において海水面が上下動することにより、ケーシング602内の空気を押し込み、押し込まれて圧縮された空気は通気ライン603を通過してタービン605に吹き付けられ、タービン605を回転させることで発電機606が発電する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記従来の構成では、押し寄せる波によって発生するケーシング602内の海水面の上下動を利用して、ケーシング602内の空気を圧縮して空気の流れを発生している。
【0011】
しかしながら、海水面の上下動によりケーシング602の内圧が上昇するため、ケーシング602内に波を十分に引き込むことができず、波の持つ運動エネルギーを空気の圧縮に活用することができないという課題を有する。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、波の持つ運動エネルギーを活用することで圧縮効果を高め、圧縮空気を生成することを可能とする波力利用装置および波力利用装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の1つの態様にかかる波力利用装置は、
海水の波の押し引きを受ける波受け箱入口部を備え、前記波受け箱入口部から流入する前記海水が充填される空間を備える波受け箱と、
前記波受け箱内に連通するように接続され、下部開口が上部開口よりも流路断面積が広く設定され、前記下部開口と前記上部開口とをテーパ状に接続する絞り部を備え、前記波受け箱内に引き込まれた前記波を前記絞り部を介して引き込む波引き込み部と前記引き込んだ波により空気を圧縮する空気圧縮部とを備える中空の圧縮管と、
前記波引き込み部の上部に接続され、開動作時に空気または海水が流入出可能とする気液導入開閉弁と、
前記空気圧縮部の上部に接続され、前記空気圧縮部からの下流側の方向のみの空気の流れを許容する逆止弁を備える空気排出管と、
前記空気排出管の流路の下流側に接続されて、前記空気圧縮部で圧縮された空気が充填される圧縮空気貯蔵タンクと、
前記空気圧縮部に空気を導入する空気導入手段と、
前記空気導入手段と前記空気圧縮部とを接続する空気導入配管と、
前記空気導入配管の途中に備えられ、開動作時に前記空気導入手段から前記空気圧縮部に空気導入可能な空気導入開閉弁と、
前記圧縮空気貯蔵タンクの下流側の流路に設けられ、圧縮空気を活用する圧縮空気活用部と、を有する波力利用装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の前記態様にかかる波力利用装置および波力利用装置の制御方法によれば、波の持つ運動エネルギーを活用することで、運動エネルギーを活用しない場合に比べて高圧の圧縮空気を波力から生成および貯蔵し、活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態における波力利用装置を示す図
【
図2A】本発明の実施の形態における押し波時の波の挙動を示す図
【
図2B】本発明の実施の形態における押し波時の波の挙動を示す図
【
図2C】本発明の実施の形態における押し波時の波の挙動を示す図
【
図2D】本発明の実施の形態における押し波時の波の挙動を示す図
【
図3A】本発明の実施の形態における押し波時の波の挙動を示す図
【
図3B】本発明の実施の形態における押し波時の波の挙動を示す図
【
図3C】本発明の実施の形態における押し波時の波の挙動を示す図
【
図3D】本発明の実施の形態における押し波時の波の挙動を示す図
【
図4A】(a)は本発明の実施の形態における引き波時の気液導入開閉弁の構成を示す図、(b)は本発明の実施の形態における押し波時の気液導入開閉弁の構成を示す図
【
図4B】本発明の実施の形態における気液導入開閉弁の構成を示す図
【
図4C】本発明の実施の形態における気液導入開閉弁の構成を示す図
【
図5A】(a)は本発明の実施の形態における圧縮管の構成を示す平面図、(b)は本発明の実施の形態における圧縮管の構成を示す正面断面図
【
図5B】(a)は本発明の実施の形態における圧縮管の構成を示す平面図、(b)は本発明の実施の形態における圧縮管の構成を示す正面断面図
【
図6】特許文献1に記載された従来の波力利用装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態における波力利用装置の構成を示した図である。
【0017】
波力利用装置は、波受け箱101と、絞り部103と、圧縮管104と、気液導入開閉弁107と、空気排出管108と、圧縮空気貯蔵タンク110と、空気導入手段111と、空気導入配管112と、空気導入開閉弁113と、圧縮空気活用部114と、を備えている。
【0018】
図1において、波受け箱101は、波の押し引きを受ける波受け箱入口部102を備え、波受け箱入口部102から流入する海水202が充填される空間101aを備えている。具体的には、波受け箱101は、海中または波打ち際など、波201が受けられる場所に設置され、波201に対向する少なくとも側面の一部が開口して波201の押し引きを受ける波受け箱入口部102を備えている。波受け箱101は、波受け箱入口部102から奥に(
図1では右方向に)向かって海水202が充填される空間101aを備えている。
【0019】
波受け箱101の上部には、例えば上下方向沿いに配置された圧縮管104が連通して接続されている。圧縮管104は、中空の管で、その上部は、壁104cを介して互いに隔離されつつ隣接する波引き込み部105と空気圧縮部106とを有する。波引き込み部105と空気圧縮部106とは圧縮管104の下部側(例えば下部または上部の下部近傍)でのみ互いに連通している。圧縮管104の上部に続く下部は、下向きに広がったテーパ状の絞り部103で構成されている。絞り部103は、波受け箱101の上面に接続される絞り部103の下端開口の流路断面積よりも絞り部103の上端開口の流路断面積が小さく設定されている。よって、絞り部103は、下部開口が上部開口よりも流路断面積が広く設定され、下部開口と上部開口とを接続するテーパ状の管で構成している。
【0020】
波引き込み部105の上部の例えば上端には、開動作時に空気または海水が流入出可能とする気液導入開閉弁107が設けられている。気液導入開閉弁107の開閉動作は、
図4A~
図4Cなどで後述するように、波引き込み部105内の海水または空気により開閉することができる。
【0021】
空気圧縮部106には、空気圧縮部106内の圧力を検知するための圧力センサなどの圧力検知手段115が備えられている。圧力検知手段115で検知された結果を基に、空気導入開閉弁113の開閉動作させることができる。
【0022】
空気圧縮部106の上部の上端には、空気排出管108が接続されている。空気排出管108には逆止弁109が備えられ、下流側向けの一方向にしか空気は流れない。
【0023】
空気排出管108の流路の下流側には圧縮空気貯蔵タンク110が備えられ、空気圧縮部106にて圧縮された空気が、圧縮空気貯蔵タンク110に充填される。圧縮空気貯蔵タンク110に蓄えられた圧縮空気は、圧縮空気貯蔵タンク110の下流側の流路に設けられた圧縮空気活用部114にて発電などに活用される。
【0024】
また、空気圧縮部106には、空気圧縮部106に空気を導入するための空気導入手段111が接続されている。すなわち、空気圧縮部106と空気導入手段111とは、空気導入配管112で接続され、空気導入配管112には、空気導入開閉弁113が備えられている。空気導入手段111は、空気圧縮部106に空気を導入するための装置であり、ポンプ、または、圧縮空気の戻し流路などで構成することができる。空気導入開閉弁113は、空気導入開閉弁113の開動作時に空気圧縮部106に空気導入可能としている。 ここで、図中に示していないが、波受け箱101の外側の海水面202aの高さは、海水面検知手段により把握している。海水面検知手段の例としては、波高計、水面センサ、又はフロートセンサなどを使用することができる。
図2A、
図2B、
図2C、
図2Dは本発明の実施の形態における、波201が押し寄せた際の海水202の挙動を示した図であり、圧縮管104の上部が海水面202aより高い位置にある場合である。
図1と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。ここで、圧縮管104の上部が海水面202aより高い位置にある場合とは、圧縮管104の上部下端であって波引き込み部105と空気圧縮部106とが互いに連通する部分が、海水面202aより上側に位置する場合を意味している。
図2Aにおいて、波201に押された海水202が、波受け箱入口部102より波受け箱101内に流入し始める。この際、気液導入開閉弁107は開いており、圧縮管104内の圧力は大気圧である。
【0025】
次いで、
図2Bにおいて、更に、波201に押された海水202が、波受け箱入口部102から波受け箱101内に
図2Aの状態よりも多く流入することで、
図2Aの状態よりも波受け箱101内の海水面202bが押し上げられる。この際、気液導入開閉弁107は開いているため、海水面202bが押し上げられることにより押しのけられた空気は、気液導入開閉弁107を通じて圧縮管104外に押し出される。
【0026】
次いで、
図2Cにおいて、海水202が波受け箱101内に、
図2Bの状態よりも多く、十分に流入すると同時に気液導入開閉弁107を閉じると、波201の持つ慣性により、海水202は、速度を保ったまま波受け箱101内に流入を続け、圧縮管104内の上部まで海水面202bが上昇する。
【0027】
次いで、
図2Dにおいて、速度を保ったまま波受け箱101内に流入した海水202は、圧縮管104内で勢いよく海水面202bを上昇させることにより、空気圧縮部106で空気を圧縮することができる。圧縮された空気は空気圧縮部106から排出され、空気排出管108および逆止弁109を通じて圧縮空気貯蔵タンク110に充填される。
【0028】
図2A、
図2B、
図2C、
図2Dの押し波の後の引き波で、波201により海水202が、波受け箱入口部102より波受け箱101から出ていき、押し波によって押し上げられた海水面202bを引き下げる。その際、圧縮管104内の空気は膨張し、圧縮管104内は負圧になる。この際に、気液導入開閉弁107を再度開くことにより、圧縮管104内に空気が流入し、圧縮管104内は大気圧となる。
【0029】
以上のように、波201の押し引きに合わせて気液導入開閉弁107の開閉制御を繰り返すことにより、圧縮空気貯蔵タンク110に圧縮空気が充填される。
【0030】
図3A、
図3B、
図3C、
図3Dは本発明の実施の形態における、波201が押し寄せた際の海水202の挙動を示した図であり、潮の満ち引きにより圧縮管104が海水面より低い位置にある場合である。
図1および
図2と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0031】
図3Aにおいて、波201に押された海水202が、波受け箱入口部102より波受け箱101内に流入し始める。
【0032】
次いで、
図3Bにおいて、更に、波201に押された海水202が、波受け箱入口部102から波受け箱101内に
図3Aの状態よりも多く流入することで、
図3Aの状態よりも海水面が押し上げられる。このとき、気液導入開閉弁107は開いているため、海水202が波受け箱101内に流入することにより押しのけられた波引き込み部105内の海水は、気液導入開閉弁107を通じて圧縮管104外に押し出される。
【0033】
次いで、
図3Cにおいて、海水202が波受け箱101内に、
図3Bの状態よりも多く、十分に流入すると同時に気液導入開閉弁107を閉じると、波201の持つ慣性により、海水202は速度を保ったまま波受け箱101内に流入を続け、空気圧縮部106内で海水面202cが上昇する。
【0034】
次いで、
図3Dにおいて、速度を保ったまま波受け箱101内に流入した海水202は、空気圧縮部106内で勢いよく海水面202cを上昇させることにより、空気圧縮部106で空気を圧縮することができる。圧縮された空気は空気圧縮部106から排出され、空気排出管108および逆止弁109を通じて圧縮空気貯蔵タンク110に充填される。
【0035】
図3A、
図3B、
図3C、
図3Dの押し波の後の引き波で、波201により海水202が、波受け箱入口部102より波受け箱101から出ていき、押し波によって押し上げられた空気圧縮部106内の海水面202cを引き下げる。その際、空気圧縮部106内の空気は膨張し、空気圧縮部106内は負圧になる。この際に、空気導入開閉弁113を圧力検知手段115により検知した圧力により制御し、空気導入手段111から空気導入配管112を通じて空気圧縮部106内に空気を導入することで、空気圧縮部106内の海水面202cを押し下げる。例えば、圧力検知手段115により検知した圧力が所定圧力より低いとき、空気導入開閉弁113を開いて、空気導入手段111から空気導入配管112を通じて空気圧縮部106内に空気を導入する。また、この際に気液導入開閉弁107を再度開く。これらの空気導入開閉弁113および/または気液導入開閉弁107の弁の開閉動作は、制御部141で動作制御するようにしてもよい。
【0036】
この状態で
図3A、
図3B、
図3C、
図3Dにおける押し波を受けることにより、再び、空気圧縮部106内の空気は圧縮空気に変換され、圧縮空気貯蔵タンク110に貯蔵され、発電などに活用することができる。
【0037】
すなわち、前記構成によれば、圧縮管104を波引き込み部105および空気圧縮部106で構成し、波引き込み部105に気液導入開閉弁107を配置し、押し波初期には気液導入開閉弁107を開放し、その後、速度を保った波201が波受け箱101に流入するとき気液導入開閉弁107を閉鎖することにより、波201を空気圧縮部106に引き込み、波201の運動エネルギーを圧縮空気に変換して圧縮空気貯蔵タンク110に貯蔵し、発電などに活用することが出来る。
なお、本実施の形態において、空気導入手段111による空気の導入を圧力検知手段115の検知結果に基づいて制御部141によって判定することができるが、空気圧縮部106内に水位検知センサなどの水位検知手段140を設置し、水位検知手段140で海水面202cの水位を検知して制御部141で空気の導入を判定してもよい。
【0038】
図4A、
図4B、
図4Cは本発明の実施の形態における波力利用装置の気液導入開閉弁107の構成例を示した図である。
【0039】
図4Aの(a)において、気液導入開閉弁107は、波引き込み部105の上部に配置される開口で構成される開放部404に、栓をして閉鎖することが可能な板403を下端に備えるバネ402と、バネ402の上端を波引き込み部105に対して固定する固定部401とで構成される。板403は弁体として機能する。
【0040】
引き波時には、板403の自重によりバネ402が下方に伸び、開放部404は開放しており、波引き込み部105内外で空気または海水の流入出が可能である。押し波時には、波受け箱101内に流入する海水により、波引き込み部105内の空気もしくは海水が押し込まれ、上向きの空気の流れもしくは海水の流れが生成する。生成した空気もしくは海水の流れにより、板403が上向きの力を受け、
図4Aの(b)のようにバネ402が収縮して、開放部404は板403により完全に栓をされて閉鎖されることにより、空気圧縮部106において空気が圧縮される。このとき、比重が海水202よりも大きい板403を用いることにより、海中においても板403は自重で下降し、引き波時に開放部404を開放することが可能となる。
【0041】
気液導入開閉弁107の別の例としては、
図4Bのように、回転固定部405に板403を固定し、板403の回転運動により開放部404を開閉してもよい。板403は弁体として機能する。
【0042】
または、気液導入開閉弁107のさらに別の例としては、
図4Cのように、波引き込み部105の上面から開放部404までをテーパ状に絞った形状の絞りストッパー406で構成し、その内部に開放部404の径より大きく、波引き込み部の径より小さい直径を有する球状栓407を設置することにより、開放部404を開閉してもよい。球状栓407は弁体として機能し、波引き込み部105の上部に、海水または空気は通過可能な例えば網状の保持部408で落下しないように保持されている。
【0043】
気液導入開閉弁107は、押し波時の空気もしくは海水の流れにより波引き込み部105が密閉され、引き波時に波引き込み部105が開放されるような機構を有する構成であれば、
図4A、
図4B、
図4Cに示した構成に限定されるものではない。
【0044】
例えば、空気圧縮部106内に圧力検知手段もしくは水位検知手段140を設置し、所定の圧力もしくは水位を検知することにより、気液導入開閉弁107の開閉を電子的に制御してもよい。
図5Aおよび
図5Bは、本発明の実施形態における波力利用装置の圧縮管104の平面図および正面断面図を示している。
【0045】
圧縮管104は内管104aと外管104bとの二重管で構成され、
図5Aにおいては二重管の内管104a側に波引き込み部105が配置され、外管104b側に空気圧縮部106が配置されている。
図5Bにおいては、圧縮管104の二重管の内管104a側に空気圧縮部106が配置され、外管104b側に波引き込み部105が配置されている。内管104aの管壁が壁104cとして機能するとともに、波引き込み部105と空気圧縮部106とは圧縮管104の下部側(例えば下部または上部の下部近傍)でのみ互いに連通している。
【0046】
図5Aのように、二重管の内管104a側に波引き込み部105を配置することにより、気液導入開閉弁107は複雑な形状になることなく構成することができる。また、
図5Bのように、二重管の内管104a側に空気圧縮部106を配置することにより、空気圧縮部106に海水202が流入する際の圧力損失が小さくなり、圧縮空気を効率良く得ることができる。
【0047】
二重管での波引き込み部105および空気圧縮部106の配置は、波の条件または設置場所により選択される。
【0048】
ここで、本発明の実施の形態では、波引き込み部105および空気圧縮部106は二重管構造の管壁により区分したが、平板などの壁により区分する構成としてもよい。
【0049】
なお、圧縮管104は波引き込み部105および空気圧縮部106で構成されているが、潮の満ち引きによる潮位差以上の長さに圧縮管を構成することにより、波引き込み部105および空気圧縮部106をそれぞれ設ける必要がなく、圧縮管の上部に気液導入開閉弁107を備えることにより、潮の満ち引きの影響を受けることなく圧縮空気を生成することが可能である。
【0050】
しかしながら、圧縮管を長くすることにより、圧縮管内の空気の体積が大きくなり、圧縮効率が低くなってしまう。
【0051】
これに対して、本発明の実施の形態においては、波力利用装置が海面上もしくは海中いずれに存在していても、空気圧縮部106内の空気を、圧縮効率が低くなり過ぎず、効率良く圧縮することができる。
【0052】
前記実施形態によれば、波201に押された海水202が波受け箱101に入るとき、気液導入開閉弁107を開いて、海水面202bまたは202cの上昇による波受け箱101の内圧の上昇を防止し、波受け箱101内に波201を十分に引き込むことができ、十分に引き込んだのちに気液導入開閉弁107を閉じ、さらなる波201の引き込みにより波受け箱101に連通する圧縮管104内の空気を圧縮して、波201の持つ運動エネルギーを空気の圧縮に活用することができる。よって、波201の持つ運動エネルギーを活用することで、運動エネルギーを活用しない場合に比べて高圧の圧縮空気を波力から生成および貯蔵し、活用することができる。
【0053】
なお、前記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせ又は実施例同士の組み合わせ又は実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態又は実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の前記態様にかかる波力利用装置および波力利用装置の制御方法は、簡素な構成でありながらも、高い圧縮効率で波力を圧縮空気として貯め、発電等に活用することができ、クリーンなエネルギー資源としての用途に適用できる。
【符号の説明】
【0055】
101 波受け箱
101a 空間
102 波受け箱入口部
103 絞り部
104 圧縮管
104a 内管
104b 外管
104c 壁
105 波引き込み部
106 空気圧縮部
107 気液導入開閉弁
108 空気排出管
109 逆止弁
110 圧縮空気貯蔵タンク
111 空気導入手段
112 空気導入配管
113 空気導入開閉弁
114 圧縮空気活用部
115 圧力検知手段
140 水位検知手段
141 制御部
201 波
202 海水
202a,202b 海水面
401 固定部
402 バネ
403 板
404 開放部
405 回転固定部
406 絞りストッパー
407 球状栓
408 保持部