(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】エレベータ駆動装置用の自動救助及び充電システム
(51)【国際特許分類】
B66B 5/02 20060101AFI20230310BHJP
B66B 1/34 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
B66B5/02 L
B66B1/34 A
(21)【出願番号】P 2018158814
(22)【出願日】2018-08-28
【審査請求日】2021-08-18
(32)【優先日】2017-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591020353
【氏名又は名称】オーチス エレベータ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Otis Elevator Company
【住所又は居所原語表記】One Carrier Place,Farmington,Connecticut,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】イスマイル アギルマン
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-338151(JP,A)
【文献】国際公開第2010/059139(WO,A1)
【文献】特開2001-240325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-1/52;5/00-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータかごを駆動する方法であって、
主電源の電圧レベルをモニタすることと、
前記主電源の前記電圧レベルが第1の所定閾値を下回っているという判定に基づいて、絶縁型双方向dc/dcコンバータに命令を出して、バッテリからの電圧入力を前記エレベータかごを救助モードで駆動するのに十分なレベルまで昇圧することであって、前記救助モードは、重力によって助けられる方向に前記エレベータを低速で駆動する、前記昇圧することと、
前記バッテリの電圧レベルをモニタすることと、
前記バッテリの前記電圧レベルが第2の所定閾値を下回っているという判定と、前記主電源の前記電圧レベルが第1の所定閾値を上回っているという判定とに基づいて、前記バッテリを前記絶縁型双方向dc/dcコンバータを介して充電することと、
前記バッテリの温度をモニタすることと、を含み、
前記バッテリを充電することは、
前記バッテリの前記電圧レベルと、前記バッテリの前記温度と、前記バッテリが充電されている時間とを用いて前記バッテリの充電電圧を変えることを含む、方法。
【請求項2】
前記エレベータかごを前記救助モードで駆動するのに十分なレベルは約70~300ボルトの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バッテリを充電することは、
前記主電源からの電力を用いて前記バッテリを充電することを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記バッテリを充電することは、
回生モードで動作するエレベータホイストモータからの電力を用いて前記バッテリを充電することを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記絶縁型双方向dc/dcコンバータは、
線間電圧を入力として受け取り、前記バッテリを充電するのに最適な電圧を出力するように構成されている、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記バッテリは48ボルトバッテリであり、前記バッテリを充電するのに最適な電圧は50~55ボルトの範囲である、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記線間電圧は約380~480ボルトである、請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
エレベータ電力システムであって、
主電源に結合された入力と、
前記入力に結合され、交流と直流との間で変換するように構成された電力コンバータと、
前記電力コンバータに結合され、交流と直流との間で変換するように構成された電力インバータと、
前記電力インバータに結合され、回生モードを有するように構成されたホイストモータと、
前記電力コンバータと前記電力インバータとの間で結合された絶縁型双方向dc/dcコンバータと、
前記絶縁型双方向dc/dcコンバータに結合されたバッテリと、
前記絶縁型双方向dc/dcコンバータに結合されたプロセッサであって、前記プロセッサは、前記電力コンバータから検知された電圧及び前記バッテリから検知された電圧に応じて、前記絶縁型双方向dc/dcコンバータの動作モードを変えるように構成されている、前記プロセッサと、を含
み、
前記プロセッサはさらに、
前記バッテリの電圧レベルをモニタすることと、
前記バッテリの前記電圧レベルが第2の所定閾値を下回っているという判定と、前記主電源の前記電圧レベルが第1の所定閾値を上回っているという判定とに基づいて、前記バッテリを前記絶縁型双方向dc/dcコンバータを介して充電することと、
前記バッテリの温度をモニタすることと、を行なうように構成されており、
前記バッテリを充電することは、
前記バッテリの前記電圧レベルと、前記バッテリの前記温度と、前記バッテリが充電されている時間とを用いて前記バッテリの充電電圧を変えることを含む、システム。
【請求項9】
前記プロセッサは、
第1の所定閾値は前記主電源の前記電圧レベルを下回っているという判定に基づいて、絶縁型双方向dc/dcコンバータに命令を出して、バッテリからの電圧入力を、前記ホイストモータを救助モードで、重力によって助けられる方向に駆動するのに十分なレベルまで昇圧するように構成されている、請求項
8に記載のシステム。
【請求項10】
前記ホイストモータを前記救助モードで駆動するのに十分な前記レベルは70~300ボルトの範囲である、請求項
9に記載のシステム。
【請求項11】
前記バッテリを充電することは、
前記主電源からの電力を用いて前記バッテリを充電することを含む、請求項
8に記載のシステム。
【請求項12】
前記バッテリを充電することは、
回生モードで動作する前記ホイストモータからの電力を用いて前記バッテリを充電することを含む、請求項
8に記載のシステ
ム。
【請求項13】
前記絶縁型双方向dc/dcコンバータは、
線間電圧を入力として受け取り、前記バッテリを充電するのに最適な電圧を出力するように構成されている、請求項
8に記載のシステム。
【請求項14】
前記バッテリは48ボルトバッテリであり、前記バッテリを充電するのに最適な前記電圧は50~55ボルトの範囲である、請求項
13に記載のシステム。
【請求項15】
前記線間電圧は約380~480ボルトである、請求項
13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
典型的な実施形態は電力システムの技術に関する。詳細には、本開示は、エレベータシステムとともに用いて、通常及び電源異常状態の間にバッテリベースの電力を与えるための電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ駆動システムは典型的に、電源からの特定の入力電圧の範囲に渡って動作するようにデザインされている。駆動装置の部品の電圧及び定格電流は、電源が指定された入力電圧範囲内に留まる間は、駆動装置が連続的に動作できるようになっている。しかし、電圧低下、電圧低減状態(すなわち、電圧条件が駆動装置の許容帯を下回る)及び/または電力損失が起こると、問題が生じる可能性がある。商用電圧の低下が起こると、駆動装置は、ホイストモータに対して一定電力を維持するために電源からより多くの電流を消費する。従来のシステムでは、電源から過電流が流れているときは、駆動装置は停止して駆動装置の部品に損傷を与えることを回避する。
【0003】
電力垂下または電力損失が起こると、電源が公称上の動作電圧範囲に戻るまで、エレベータかごはエレベータ昇降路内のフロアの間で失速する場合がある。従来のシステムでは、保守作業者がブレーキをゆるめてキャブの動きを上方または下方に制御してエレベータが最も近いフロアまで移動できるようになるまで、エレベータ内の乗客が閉じ込められる場合がある。最近になって、自動救助システムを用いるエレベータシステムが導入されている。これらのエレベータシステムは、電源異常の後に乗客を下車させるためにエレベータを次のフロアまで動かすために電力を与えるように制御される電気エネルギー貯蔵装置(たとえば1つ以上のバッテリ)を含む。しかし、多くの現在の自動救助作業システムは複雑で導入に費用がかかり、電源異常後にエレベータ駆動装置に与える電力は信頼性が低い場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態によれば、エレベータを駆動する方法が、電源の電圧レベルをモニタすることを含む。主電源の電圧レベルが第1の所定閾値を下回っているという判定に基づいて、絶縁型双方向dc/dcコンバータに命令を出して、バッテリからの電圧入力を、エレベータかごを救助モードで駆動するのに十分なレベルまで昇圧する。
【0005】
前述した1つ以上の特徴に加えて、または代替案として、さらなる実施形態は、エレベータかごを救助モードで駆動するのに十分なレベルは70~300ボルトの範囲であるということを含んでいてもよい。
【0006】
前述した特徴に加えて、または代替案として、さらなる実施形態は、バッテリの電圧レベルをモニタすることと、バッテリの電圧レベルが第2の所定閾値を下回っているという判定と、主電源の電圧レベルが第1の所定閾値を上回っているという判定とに基づいて、バッテリを絶縁型双方向dc/dcコンバータを介して充電することと、を含んでいてもよい。
【0007】
前述した特徴に加えて、または代替案として、さらなる実施形態は、バッテリの温度をモニタすることを含んでいてもよく、バッテリを充電することは、バッテリの電圧レベルとバッテリの温度とを用いてバッテリに対する最適な充電サイクルを決定することと、最適な充電サイクルをバッテリに適用することと、を含んでいる。
【0008】
前述した特徴に加えて、または代替案として、さらなる実施形態は、バッテリを充電することが、主電源からの電力を用いてバッテリを充電することを含むことを含んでいてもよい。
【0009】
前述した特徴に加えて、または代替案として、さらなる実施形態は、バッテリを充電することが、回生モードで動作するエレベータホイストモータからの電力を用いてバッテリを充電することを含むことを含んでいてもよい。
【0010】
前述した特徴に加えて、または代替案として、さらなる実施形態は、絶縁型双方向dc/dcコンバータが、線間電圧を入力として受け取り、バッテリを充電するのに最適な電圧を出力するように構成されていることを含んでいてもよい。
【0011】
前述した特徴に加えて、または代替案として、さらなる実施形態は、バッテリが48ボルトバッテリであり、バッテリを充電するのに最適な電圧が50~55ボルトの範囲であることを含んでいてもよい。
【0012】
前述した特徴に加えて、または代替案として、さらなる実施形態は、線間電圧が約480ボルトであることを含んでいてもよい。
【0013】
一実施形態によれば、エレベータ電力システムは、主電源に結合された入力と、入力に結合され、交流と直流との間で変換するように構成された電力コンバータと、電力コンバータに結合され、交流と直流との間で変換するように構成された電力インバータと、電力インバータに結合され、回生モードを有するように構成されたホイストモータと、電力コンバータと電力インバータとの間で結合された絶縁型双方向dc/dcコンバータと、絶縁型双方向dc/dcコンバータに結合されたバッテリと、絶縁型双方向dc/dcコンバータに結合されたプロセッサであって、プロセッサは、電力コンバータから検知された電圧とバッテリから検知された電圧とに応じて、絶縁型双方向dc/dcコンバータの動作モードを変えるように構成されている、プロセッサと、を含むことができる。
【0014】
前述した特徴に加えて、または代替案として、さらなる実施形態は、プロセッサが、主電源の電圧レベルが第1の所定閾値を下回っているという判定に基づいて、絶縁型双方向dc/dcコンバータに命令を出して、バッテリからの電圧入力を、ホイストモータを救助モードで駆動するのに十分なレベルまで昇圧するように構成されているということを含んでいてもよい。
【0015】
前述した特徴に加えて、または代替案として、さらなる実施形態は、ホイストモータを救助モードで駆動するのに十分なレベルが70~300ボルトの範囲であることを含んでいてもよい。
【0016】
前述した特徴に加えて、または代替案として、さらなる実施形態は、プロセッサがさらに、バッテリの電圧レベルをモニタすることと、バッテリの電圧レベルが第2の所定閾値を下回っているという判定と、主電源の電圧レベルが第1の所定閾値を上回っているという判定とに基づいて、バッテリを、絶縁型双方向dc/dcコンバータを介して充電することとを行うように構成されているということを含んでいてもよい。
【0017】
前述した特徴に加えて、または代替案として、さらなる実施形態は、プロセッサがさらにバッテリの温度をモニタするように構成され、バッテリを充電することは、バッテリの電圧レベルとバッテリの温度とを用いてバッテリに対する最適な充電サイクルを決定することと、最適な充電サイクルをバッテリに適用することと、を含むということを含んでいてもよい。
【0018】
前述した特徴に加えて、または代替案として、さらなる実施形態は、バッテリを充電することが、主電源からの電力を用いてバッテリを充電することを含むことを含んでいてもよい。
【0019】
前述した特徴に加えて、または代替案として、さらなる実施形態は、バッテリを充電することが、回生モードで動作するホイストモータからの電力を用いてバッテリを充電することを含むことを含んでいてもよい。
【0020】
前述した特徴に加えて、または代替案として、さらなる実施形態は、絶縁型双方向dc/dcコンバータが、線間電圧を入力として受け取り、バッテリを充電するのに最適な電圧を出力するように構成されていることを含んでいてもよい。
【0021】
前述した特徴に加えて、または代替案として、さらなる実施形態は、バッテリが48ボルトバッテリであり、バッテリを充電するのに最適な電圧が50~55ボルトの範囲であることを含んでいてもよい。
【0022】
前述した特徴に加えて、または代替案として、さらなる実施形態は、線間電圧が約480ボルトであることを含んでいてもよい。
【0023】
以下の説明は、いかなる場合も限定的と見なすべきではない。添付図面を参照して、同様の要素は同様に番号付けされている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】エレベータホイストモータを駆動するための電力システムの概略図である。
【
図2】1つ以上の実施形態を取り入れた電力システムの概略図である。
【
図3】1つ以上の実施形態の動作を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
開示した装置及び方法のうちの1つ以上の実施形態の発明を実施するための形態を、図を参照して限定ではなく例示を目的として本明細書に示す。
【0026】
用語「約」は、本出願の出願時に利用可能な機器に基づいて特定の量の測定に付随する誤差の程度を含むことが意図されている。
【0027】
本明細書で用いる専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本開示を限定することは意図していない。本明細書で用いる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他の意味を示す場合を除いて、複数形も含むことを意図している。さらに当然のことながら、用語「含む」及び/または「含んでいる」は、本明細書で用いる場合、述べた特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/または部品の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素部品、及び/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。
【0028】
図1は、エレベータ197のホイストモータ190を駆動するための回生駆動システム100の概略図である。システム100が主電源102に結合されている。主電源102は、電気事業(たとえば商用電源)によって電力供給してもよい。エレベータ197は、エレベータかご194とカウンターウェイト192とを含み、これらはホイストモータ190までケーブルを引くことによって互いに結合されている。
【0029】
主電源102からの電力を三相回路として例示している。しかし当然のことながら、いくつかの実施形態では、主電源102を任意のタイプの電源、たとえば単相AC電源及びDC電源とすることができる。電源102は電力コンバータ126、電力インバータ132に結合されている。
【0030】
電力コンバータ126及び電力インバータ132は電力バス128によって接続されている。平滑コンデンサ130が電力バス128に渡って接続されている。電力コンバータ126は、主電源102からの三相AC電力をDC電力に変換する働きをする三相電力インバータであってもよい。いくつかの実施形態では、電力コンバータ126は、並列に接続されたトランジスタ及びダイオードを含む、複数のパワートランジスタ回路を含む。DC出力電力は、DC電力バス128上の電力コンバータ126によって与えられる。平滑コンデンサ130は、電力コンバータ126及びDC電力バス128によって与えられる電力を平滑化する。電力コンバータ126はまた、主電源102に戻すべき電力バス128上の電力を反転させる働きをする。この回生駆動装置構成によって主電源102に対する要求が減る。
【0031】
電力インバータ132は、電力バス128からのDC電力を反転させて三相AC電力にする働きをする三相電力インバータであってもよい。電力インバータ132は、並列に接続されたトランジスタ及びダイオードを含む、複数のパワートランジスタ回路を含んでいてもよい。電力インバータ132は、電力インバータ132の出力におけるホイストモータに三相電力を送出する。加えて、電力インバータ132は、エレベータ194がホイストモータ190を回生モードで駆動するときに発生する電力を処理する働きをする。たとえば、ホイストモータ190が電力を発生させる場合、電力インバータ132は発生電力を変換して、それを電力バス128に送る。平滑コンデンサ130は、電力インバータ132によって電力バス128に与えられた変換された電力を平滑化する。1つ以上の代替的な実施形態では、電力インバータ132は単相電力インバータであり、電力バス128からのDC電力を反転させて単相AC電力にして、ホイストモータ190に送出する働きをする。
【0032】
ホイストモータ190は、エレベータかご194及びカウンターウェイト192の動きの速度及び方向を制御する。ホイストモータ190を駆動するのに必要な電力は、エレベータかご194の加速度及び方向とともに変化する。たとえば、エレベータかご194が加速されていて、カウンターウェイト192の重量よりも大きい負荷(「軽」負荷)を伴って上向き方向に走行するか、またはカウンターウェイト192の重量よりも大きい負荷(「重」負荷)を伴って下向き方向に走行する場合、最大の電力量を用いてホイストモータ190を駆動している。エレベータかご194がレベリングしているかまたは平衡負荷を伴って固定速度で進んでいる場合、より小さい電力量を用いている場合がある。エレベータかご194が減速していて、重負荷を伴って下向き方向に進んでいるか、または軽負荷を伴って上向き方向に進んでいる場合、エレベータかご194はホイストモータ190を駆動する。この場合、ホイストモータ190が発生させる電力は、電力インバータ132によってDC電力に変換される。変換されたDC電力は主電源102に戻してもよい。いくつかの実施形態では、変換されたDC電力は、電力バス128に渡って接続された動的なブレーキ抵抗器(図示せず)において散逸されてもよい。したがって、ホイストモータ190が電力を発生させて、ある状況の間に主電源102に戻す場合があるため、システム100の設定を回生駆動装置と言うことができる。
【0033】
単一のホイストモータ190のみを
図1に例示しているが、当然のことながら、主電源102を用いて、複数のホイストモータに電力供給することができ、そのそれぞれはエレベータかご及びカウンターウェイトを駆動するために用いる。たとえば、複数の電力インバータを、電力バス128に渡って並列に結合して複数のホイストモータに電力を与えてもよい。
【0034】
ある状況では、主電源102に対するバックアップとして働くバッテリを有することが有用となる可能性がある。前述したように、主電源102が十分な電力を与えることを停止した場合、エレベータかご194内に人々が閉じ込められる可能性がある。これは乗客にとって外傷体験となる可能性がある。バッテリバックアップによって、エレベータかご194を安全な場所まで移動させて乗客を下車させることができる。その後、エレベータかご194を停止して、電源102が再び動作可能となるまで他の人たちがエレベータかご内に閉じ込められることを防止することができる。
【0035】
1つ以上の実施形態では、バッテリシステムは、緊急バックアップ電力を与えるためにエレベータシステムに結合されている。1つ以上の構成では、絶縁型双方向dc/dcコンバータを用いてバッテリシステムを電力バスに結合することができる。絶縁型双方向dc/dcコンバータを、主電源が動作中の間はバッテリシステムを充電し、主電源が動作中でないときはバッテリをホイストモータに結合して救助動作を行うように構成することができる。
【0036】
図2は、エレベータ297のホイストモータ290を駆動するための回生システムの概略図である。主電源202は、たとえば商用電源などの電気事業によって供給される電力を含んでいてもよい。エレベータ297は、エレベータかご294とカウンターウェイト292とを含み、これらはホイストモータ290までケーブルを引くことによって互いに結合されている。
【0037】
主電源202からの電力を三相回路として例示している。しかし当然のことながら、いくつかの実施形態では、主電源202を任意のタイプの電源、たとえば単相AC電源及びDC電源とすることができる。電源202は電力コンバータ226及び電力インバータ232に結合されている。
【0038】
電力コンバータ226及び電力インバータ232は電力バス228によって互いに結合されている。平滑コンデンサ230が電力バス228に渡って接続されている。電力コンバータ226は、主電源202からの三相AC電力をDC電力に変換する働きをする三相電力インバータであってもよい。いくつかの実施形態では、電力コンバータ226は、複数のパワートランジスタ回路を含み、パワートランジスタ回路は、電流を平滑にして低い高調波歪みを実現する働きをする1つ以上の並列に接続されたトランジスタ及びダイオードを含んでいる。DC出力電力は、DC電力バス228上の電力コンバータ226によって与えられる。平滑コンデンサ230は、電力コンバータ226及びDC電力バス228によって与えられたものを平滑化する。電力コンバータ226はまた、主電源202に戻すべき電力バス228上の電力を反転させる働きをする。この回生構成によって主電源202に対する要求が減る。
【0039】
電力インバータ232は、電力バス228からのDC電力を反転させて三相AC電力にする働きをする三相電力インバータであってもよい。電力インバータ232は、並列に接続されたトランジスタとダイオードとを含む、1つ以上のパワートランジスタ回路を含んでいてもよい。電力インバータ232は、電力インバータ232の出力におけるホイストモータに三相電力を送出する。加えて、電力インバータ232は、エレベータ294がホイストモータ290を回生モードで駆動するときに発生する電力を処理する働きをする。たとえば、ホイストモータ290が電力を発生させる場合、電力インバータ232は発生電力をDC電力に変換して、それを電力バス228に送る。平滑コンデンサ230は、電力インバータ232によって電力バス228に与えられた変換されたDC電力を平滑化する。1つ以上の代替的な実施形態では、電力インバータ232は単相電力インバータであり、電力バス228からのDC電力を反転させて単相AC電力にして、ホイストモータ290に送出する働きをする。
【0040】
ホイストモータ290は、エレベータかご294とカウンターウェイト292との間の動きの速度及び方向を制御する。ホイストモータ290を駆動するのに必要な電力は、エレベータかご294の加速度及び方向とともに変化する。たとえば、エレベータかご294が加速されていて、カウンターウェイト292の重量よりも大きい負荷(「重」負荷)を伴って上方に走行するか、またはカウンターウェイト292の重量よりも小さい負荷(「軽」負荷)を伴って下方に走行する場合、最大の電力量を用いてホイストモータ290を駆動する。エレベータがレベリングしているかまたは平衡負荷を伴って固定速度で進んでいる場合、より小さい電力量を用いている場合がある。エレベータかご294が減速していて、重負荷を伴って下方に進んでいるか、または軽負荷を伴って上方に進んでいる場合、エレベータかご294はホイストモータ290を駆動する。この場合、ホイストモータ290が発生させる電力は、電力インバータ232によってDC電力に変換される。変換されたDC電力は主電源202に戻してもよい。いくつかの実施形態では、変換されたDC電力は、電力バス228に渡って接続された動的なブレーキ抵抗器(図示せず)において散逸されてもよい。したがって、ホイストモータ290が電力を発生させて、ある状況の間に主電源202に戻す場合があるため、
図2のシステムの設定を回生駆動装置と言うことができる。
【0041】
絶縁型双方向dc/dcコンバータ260が電力バス228に渡って結合されている。絶縁型双方向dc/dcコンバータ260は、バッテリ270とドライブデジタルシグナルプロセッサ(DSP)265とに結合されている。
【0042】
バッテリ270は緊急事態が起きた場合に電力を供給する。いくつかの実施形態では、バッテリ270は48ボルトの電圧を供給することができる。いくつかの実施形態では、たとえば24ボルトまたは12ボルトなど、他の電圧レベルを用いることができる。いくつかの実施形態では、バッテリ270は充電式バッテリであり、充電モードで動作するようにDSP265によって構成されたとき、主電源202を介して、DCリンク及び絶縁型双方向dc/dcコンバータ260を通して、充電することができる。なお、双方向dc/dcコンバータ260は二重機能を有している。通常の商用電力モードがある場合、それはバッテリ270に対する充電器であるが、救助モードでは、双方向dc/dcコンバータ260は、DSP265によって、電力バス228と双方向dc/dcコンバータ260との間のDCリンクに対する接続部を介してホイストモータ290に対する電源となるように構成されている。
【0043】
ドライブDSP265は、絶縁型双方向dc/dcコンバータ260の動作を制御する。たとえば、バッテリ270の電圧及びバッテリの温度270など、種々の要因に基づいて、バッテリ270の充電をドライブDSP265によって制御することができる。ドライブDSP265は絶縁型双方向dc/dcコンバータ260に結合され、絶縁型双方向dc/dcコンバータ260を種々のモード間で切り換えることができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、バッテリ270及び絶縁型双方向dc/dcコンバータ260のいくつかの動作モードが存在する可能性がある。充電モード及び救助モードが存在する可能性がある。
【0045】
充電モードでは、主電源202がホイストモータ290に電力供給するように用いられている間、電力の一部は、絶縁型双方向dc/dcコンバータ260によって流用されて、バッテリ270を充電するために用いられる。これは、絶縁型双方向dc/dcコンバータ260の種々の切り換え能力を通して行なうことができる。これについては後に詳細に説明する。全般的に、充電モードの間、DSP265はバッテリ270の温度と電圧とをモニタする。温度及び電圧情報を用いて、DSPは、最適な充電電圧及びデューティ時間を決定し、バッテリ270の温度及び電圧に基づいて、適切な充電デューティサイクル及び/または充電電圧を選択することができる。たとえば、48ボルトバッテリを用いた場合、最適な充電電圧は50~55ボルトの範囲であってもよい(12Vまたは24ボルトバッテリの場合、これらの値は充電要求に従って調整される)。したがって、種々の異なる充電アルゴリズムのうち、バッテリ270の温度及び電圧とバッテリが充電されている時間とに基づいて充電電圧を変える1つを用いることができる。いくつかの実施形態では、DSP265を回生走行でのみ充電するように設定して、電力が主電源202から引き出されるようにすることができる。いくつかの実施形態では、DSP265を、バッテリ270を充電する必要がある任意の時点でバッテリ270を充電するように設定することができる。
【0046】
救助モードでは、DSP265は、主電源202が十分な電力を与えていないことを検出することができる。このような場合、バッテリ270を用いてホイストモータ290に電力を供給して、ホイストモータがエレベータかご294を乗客が下車するのに安全な目的地までガイドできるようにする。DSP265は絶縁型双方向dc/dcコンバータ260を昇圧モードに切り換える。昇圧モードでは、バッテリの電圧レベル(いくつかの実施形態では12~48ボルト)が絶縁型双方向dc/dcコンバータ260によって昇圧されて、ホイストモータ290を駆動するのに十分な電圧レベルになる。いくつかの実施形態では、そのレベルは70~300ボルトである。これが主電源202が与える380~480ボルトを下回る間は、エレベータかご294が安全なレベルまで移動できるようにホイストモータ290を駆動することが十分でなければならない。エレベータかご294を、重力によって助けられる方向または克服すべき主要な力が摩擦力である方向に移動させることができる。言い換えれば、車両の負荷に応じて、ドライブホイストモータ290は、モータから必要となる助けが最少となる方向に向けられる。救助モードでは、ドライブホイストモータ290は、通常動作よりも遅い速度で動作してもよく、これは電圧がより低いためである。バッテリ270の容量に応じて、必要に応じて、さらなる走行をもたらすのに十分な電力が存在してもよい。
【0047】
他の状況では、絶縁型双方向dc/dcコンバータ260は、
図2のシステムに対する効果がないように構成されている。言い換えれば、絶縁型双方向dc/dcコンバータ260は、電力が存在して、バッテリ270が完全に充填されているか、そうでなければさらなる充電を受け入れられない(たとえば、バッテリ270がある温度にある)ときには、ホイストモータ290の動作に対する効果は最小である。
【0048】
方法300を例示するフローチャートを
図3に示す。方法300は単に典型であり、本明細書で示した実施形態に限定されない。方法300は、本明細書で具体的に図示も説明もしていない多くの異なる実施形態または例で用いることができる。いくつかの実施形態では、方法300の手順、プロセス、及び/または行為を、示した順番で行なうことができる。他の実施形態では、方法300の手順、プロセス、及び/または行為のうちの1つ以上を組み合わせたり、または省略したりすることもできる。1つ以上の実施形態では、方法300はプロセッサが命令を実行しているときに行われる。
【0049】
DSP265は主電源からの電圧をモニタする(ブロック302)。主電源が十分な電圧を与えている場合(ブロック304)、バッテリを充電する必要があると判定される(ブロック306)。
【0050】
DSP265はまた、たとえばバッテリの電圧及びバッテリの温度など、バッテリの種々の状態をモニタする。バッテリの状態が充電を必要とするような場合、DSP265は双方向DC/DCコンバータに命令を出して主電源からバッテリに電力を送らせる。種々の異なるアルゴリズムのうちの1つを用いて、バッテリの充電をバッテリの電圧及びバッテリの温度に基づいて行うことができる。種々の異なるアルゴリズムを用いることができる。たとえば、バッテリの寿命を最大にするアルゴリズムを選ぶことができ、またはできるだけ速くバッテリを充電するアルゴリズムである(たとえば、バッテリは救助モードで用いたために空状態である)。
【0051】
いくつかの実施形態では、DSP265はバス上の電流の方向もモニタする。電流が電源に送られている場合(たとえば回生モード)、その場合にのみバッテリが充電されている。
【0052】
主電源が、エレベータホイストモータを駆動するのに十分な電圧を与えない場合(たとえば、電圧低下または停電がある)、DSP265は、双方向DC/DCコンバータに命令を出して、バッテリパワーを、エレベータホイストモータを救助モードで駆動するのに十分な電圧に変換させる(ブロック308)。いくつかの実施形態では、このような電圧レベルは70~300ボルトの範囲とすることができる。その後、双方向DC/DCコンバータを、ある時間の間、救助モードで用いる(ブロック310)。いくつかの実施形態では、救助モードを所定のトリップ数に対して用いることができる。たとえば、エレベータかごを、エレベータかご内に乗客がいないことが確実になる所定のレベルまで安全に運んでもよい。いくつかの実施形態では、エレベータかごを所定の停止数まで用いることができる。その後、主電源が再び動作状態になるまでエレベータかごをパワーダウンすることができる(ブロック312)。
【0053】
本開示を、典型的な実施形態または実施形態(複数)を参照して説明してきたが、当業者であれば分かるように、種々の変形を行ってもよく、本開示の範囲から逸脱することなく均等物をその要素の代わりに用いてもよい。加えて、その本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を本開示の教示に適応させるように、多くの変更を施してもよい。したがって、本開示は、この本開示を行なうために企図された最良の形態として開示した特定の実施形態に限定されないが、本開示は、特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を含むことが意図されている。