(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】作業機械管理システムおよび作業機械管理装置
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20230310BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
E02F9/26 A
E02F9/20 M
E02F9/20 N
(21)【出願番号】P 2020000653
(22)【出願日】2020-01-07
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 知弘
(72)【発明者】
【氏名】猪瀬 聡志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智宏
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 史十
(72)【発明者】
【氏名】奥村 崇
(72)【発明者】
【氏名】金野 浩之
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-180024(JP,A)
【文献】特開2014-153929(JP,A)
【文献】特開2012-225004(JP,A)
【文献】特開2015-214838(JP,A)
【文献】特開2018-112065(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0237657(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の位置情報および稼働情報を前記作業機械から受信するとともに、前記位置情報に基づいて前記作業機械が作業する地域の地質情報を地理情報システムサーバから受信する入出力装置と、
前記稼働情報および前記地質情報に基づいて前記作業機械のメンテナンス時期を予測する処理装置と、を備え、
前記稼働情報は、前記作業機械の燃費、前記作業機械が特定の動作を行った累積時間である実働時間、および前記作業機械の部品の交換履歴を含み、
前記地質情報は、前記作業機械が作業する前記地域の弾性波速度の分布を含み、
前記処理装置は、前記燃費に基づいて前記作業機械の負荷を算出し、前記位置情報に対応する前記弾性波速度および前記負荷の大小に応じた複数のカテゴリを設定し、前記交換履歴に基づいて前記部品の使用開始から交換までの前記実働時間を耐用期間として算出し、前記カテゴリごとに複数の前記作業機械の前記耐用期間の中央値を算出し、前記弾性波速度および前記負荷が最大の前記カテゴリの前記中央値をそれぞれの前記カテゴリの前記中央値で除して前記カテゴリごとの前記部品の寿命係数を算出し、前記作業機械の前記カテゴリごとの前記実働時間と前記寿命係数の積の総和を前記部品の累積損傷時間として算出し、前記累積損傷時間に基づいて前記作業機械のメンテナンス時期を予測し、
前記入出力装置は、外部の携帯端末からの要求に応じて、前記処理装置で予測した前記作業機械のメンテナンス時期に基づく警告に関するデータを前記携帯端末に出力することを特徴とする作業機械管理システム。
【請求項2】
前記処理装置は、各々の前記作業機械の稼働時間に対する前記実働時間の割合が所定の割合以上である前記作業機械の前記稼働情報を抽出して、抽出した前記稼働情報の前記交換履歴に基づいて前記耐用期間を算出することを特徴とする請求項
1に記載の作業機械管理システム。
【請求項3】
前記処理装置は、前記弾性波速度および前記負荷が最大の前記カテゴリの前記中央値を使用限界時間に設定し、前記使用限界時間に対する前記累積損傷時間の百分率を前記部品の損耗率として算出し、前記損耗率に基づいて前記メンテナンス時期を予測することを特徴とする請求項
1または請求項
2に記載の作業機械管理システム。
【請求項4】
前記地質情報は、前記地域における地質名称の分布を含み、
前記処理装置は、前記負荷および前記地質名称に基づいて、前記メンテナンス時期を予測することを特徴とする請求項
1に記載の作業機械管理システム。
【請求項5】
作業機械の位置情報および稼働情報を前記作業機械から受信するとともに、前記位置情報に基づいて前記作業機械が作業する地域の地質情報を地理情報システムサーバから受信する入出力装置と、
前記稼働情報および前記地質情報に基づいて前記作業機械のメンテナンス時期を予測する処理装置と、
前記処理装置で予測した前記作業機械のメンテナンス時期に基づく警告を表示する表示装置と、
を備え
、
前記稼働情報は、前記作業機械の燃費、前記作業機械が特定の動作を行った累積時間である実働時間、および前記作業機械の部品の交換履歴を含み、
前記地質情報は、前記作業機械が作業する前記地域の弾性波速度の分布を含み、
前記処理装置は、前記燃費に基づいて前記作業機械の負荷を算出し、前記位置情報に対応する前記弾性波速度および前記負荷の大小に応じた複数のカテゴリを設定し、前記交換履歴に基づいて前記部品の使用開始から交換までの前記実働時間を耐用期間として算出し、前記カテゴリごとに複数の前記作業機械の前記耐用期間の中央値を算出し、前記弾性波速度および前記負荷が最大の前記カテゴリの前記中央値をそれぞれの前記カテゴリの前記中央値で除して前記カテゴリごとの前記部品の寿命係数を算出し、前記作業機械の前記カテゴリごとの前記実働時間と前記寿命係数の積の総和を前記部品の累積損傷時間として算出し、前記累積損傷時間に基づいて前記作業機械のメンテナンス時期を予測することを特徴とする作業機械管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械管理システムおよび作業機械管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から複数のショベルの作業現場への配置計画の立案に有益な情報を提供するショベル支援装置に関する発明が知られている(下記特許文献1を参照)。特許文献1に記載されたショベル支援装置は、画像を表示する表示画面と、通信機能を有する送受信回路と、前記送受信回路を通して受信された情報に基づいて、前記表示画面に画像を表示する処理装置とを有している。このショベル支援装置において、前記処理装置は、地盤の硬さに関する情報を、前記送受信回路を通して受信し、受信した情報に基づいて地盤の硬さ情報を求め、地盤の硬さの分布を前記表示画面に表示する(同文献、請求項1および第0008段落等を参照)。
【0003】
地盤の硬さや作業内容ごとの作業時間に基づいて、メンテナンス時期を決定する方法では、稼働時間のみに基づく場合に比べて、より適切なメンテナンス時期を決定することができる(同文献、第0006段落等を参照)。上記従来のショベル支援装置によれば、外部要因を表示することができ、作業現場への配置計画の立案に有益な情報を提供することも可能になる(同文献、第0010段落等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のショベル支援装置において、前記地盤の硬さ情報は、過去に作業が行われた箇所の地盤の硬さを示す情報を含む(特許文献1、請求項2等を参照)。しかし、この従来のショベル支援装置は、過去に作業が行われたことのない地点でショベルが作業する場合、ショベルに加わる負荷を予測することができない。そのため、この従来のショベル支援装置は、ショベルに加わる負荷に基づくメンテナンス時期の予測精度に課題がある。
【0006】
本開示は、従来よりも作業機械のメンテナンス時期を高精度に予測可能な作業機械管理システムおよび作業機械管理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、作業機械の位置情報および稼働情報を前記作業機械から受信するとともに、前記位置情報に基づいて前記作業機械が作業する地域の地質情報を地理情報システムサーバから取得する入出力装置と、前記稼働情報および前記地質情報に基づいて前記作業機械のメンテナンス時期を予測する処理装置と、を備え、前記入出力装置は、外部の携帯端末からの要求に応じて、前記処理装置で予測した前記作業機械のメンテナンス時期に基づく警告に関するデータを前記携帯端末に出力することを特徴とする作業機械管理システムである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、従来よりも作業機械のメンテナンス時期を高精度に予測可能な作業機械管理システムおよび作業機械管理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の作業機械管理システムの一実施形態を示すブロック図。
【
図3】
図1の作業機械の稼働情報と位置情報に基づくテーブルの一例。
【
図4】
図1の作業機械管理システムの処理の流れを示すフロー図。
【
図6】
図4の耐用期間の中央値を算出する処理の詳細を示すフロー図。
【
図7】
図6のデータをカテゴリに分類する処理と中央値を算出する処理の説明図。
【
図8】
図4の損耗率を算出する処理の詳細を示すフロー図。
【
図10】
図4の損耗率を算出する処理の後の各処理の説明図。
【
図11】
図4の警告を通知する処理および情報を表示する処理の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示の作業機械管理システムおよび作業機械管理装置の実施形態を説明する。
【0011】
図1は、本開示に係る作業機械管理システムの一実施形態を示すブロック図である。詳細については後述するが、本実施形態の作業機械管理システム100および作業機械管理装置は、主に、次の構成を特徴としている。作業機械管理システム100は、入出力装置121と、処理装置122とを備えている。入出力装置121は、作業機械200の位置情報PIおよび稼働情報OIを作業機械200から受信するとともに、位置情報PIに基づいて作業機械200が作業する地域の地質情報GIを地理情報システムサーバ300から受信する。処理装置122は、作業機械200の稼働情報OIおよび地質情報GIに基づいて、作業機械200のメンテナンス時期を予測する。そして、入出力装置121は、携帯端末130からの要求に応じて、処理装置122で予測した作業機械200のメンテナンス時期に基づく警告に関するデータを携帯端末130に出力する。
【0012】
まず、
図2を参照して、本実施形態の作業機械管理システム100および作業機械管理装置の管理対象である作業機械200の一例を説明する。
図2は、
図1の作業機械200の一例を示す側面図である。作業機械200は、たとえば、油圧ショベルである。なお、作業機械管理システム100および作業機械管理装置の管理対象である作業機械200は、油圧ショベルに限定されず、たとえば、ホイールローダ、解体・破砕機、金属リサイクル機、林業機、リジッドダンプトラック、クレーンおよび基礎工事用機械、ならびに双腕作業機など、他の作業機械であってもよい。
【0013】
作業機械200は、たとえば、コントローラ210と、表示装置220と、通信装置230と、位置情報取得装置240と、稼働情報取得装置250と、走行装置260と、旋回体270と、フロント作業機280と、を備えている。
【0014】
コントローラ210は、たとえば、入出力装置211と、CPUなどの処理装置212と、ROM、RAMおよびハードディスクなどの記憶装置213と、記憶装置213に記憶されたプログラムを備えたマイクロコントローラによって構成されている。コントローラ210は、入出力装置211を介して作業機械200の各装置へ制御信号を出力して各装置を制御する。また、コントローラ210には、各装置から出力される各種の情報が、入出力装置211を介して入力される。
【0015】
表示装置220は、たとえば、旋回体270のキャビン271内に配置され、コントローラ210から出力された制御信号に基づく画像や文字などの情報を表示する。通信装置230は、旋回体270に収容され、外部との通信を行う。より具体的には、通信装置230は、たとえば、無線通信によってインターネット回線400に接続され、作業機械管理システム100との通信を行う。
【0016】
位置情報取得装置240は、たとえば、旋回体270に搭載され、作業機械200の位置情報PIを取得する。位置情報取得装置240は、たとえば、GPSやGNSSなどの衛星測位システムによって構成されている。稼働情報取得装置250は、たとえば、マイクロコントローラと、図示を省略する各種のセンサとによって構成され、作業機械200の稼働情報OIを取得する。なお、稼働情報取得装置250は、たとえば、コントローラ210と、図示を省略する各種のセンサとによって代用することも可能である。
【0017】
稼働情報取得装置250は、たとえば、作業機械200の走行速度を計測する速度センサ、フロント作業機280の関節の角度を計測する角度センサ、走行装置260に対する旋回体270の旋回角度を計測する旋回角度センサを含む。また、稼働情報取得装置250は、たとえば、作業機械200の稼働時間、作業機械200が特定の動作を行った実働時間、旋回体270の旋回時間などを測定するタイマーを含む。さらに、稼働情報取得装置250は、たとえば、作業機械200の燃料の残量を測定する燃料計を含む。
【0018】
また、稼働情報取得装置250は、たとえば、作業機械200の部品の交換履歴や顧客情報を入力するためのキーボードやタッチパネルなどの入力装置を含んでもよい。また、稼働情報取得装置250は、たとえば、作業機械管理システム100を構成する管理サーバ110、ユーザサーバ120、または携帯端末130から、入出力装置211または通信装置230を介して、作業機械200の部品の交換履歴や顧客情報を取得してもよい。
【0019】
走行装置260は、たとえば、スプロケット261と、アイドラ262と、リンクアッセンブリ263と、上部ローラ264と、下部ローラ265と、シュープレート266とを備えたクローラ式の走行装置である。スプロケット261は、たとえば、油圧装置によって駆動される油圧モータに動力伝達機構を介して接続されている。リンクアッセンブリ263は、スプロケット261、アイドラ262、上部ローラ264および下部ローラ265に架け渡されている。
【0020】
複数のシュープレート266は、環状のリンクアッセンブリ263の外側に取り付けられ、下方側に位置する複数のシュープレート266が接地する。このような構成により、コントローラ210から制御信号が出力されて油圧装置が油圧モータを回転させると、スプロケット261が回転する。これにより、外側に複数のシュープレート266が取り付けられた環状のリンクアッセンブリ263が、アイドラ262、上部ローラ264および下部ローラ265の周りを回転して作業機械200を走行させる。
【0021】
旋回体270は、走行装置260の上に、たとえば油圧モータまたは電動モータを備えた旋回機構を介して、旋回可能に設けられている。旋回体270は、前部の一側にオペレータが搭乗するキャビン271を備え、前部の中央にフロント作業機280が上下方向に回動可能に取り付けられ、後部にカウンタウエイト272が設けられている。旋回体270は、たとえば、コントローラ210からの制御信号に基づいて旋回機構が駆動されることで、作業機械200の前後方向および左右方向に垂直な上下方向に沿う回転軸を中心に、走行装置260の上で旋回する。
【0022】
フロント作業機280は、たとえば、ブーム281とアーム282とバケット283とが、それぞれ、関節を介して連結されたリンク機構を有している。バケット283の先端には、ツース283Tが取り付けられている。また、フロント作業機280は、旋回体270に収容された油圧装置から供給される作動油の油圧によって伸縮する油圧シリンダであるブームシリンダ281Sと、アームシリンダ282Sと、バケットシリンダ283Sとを備えている。
【0023】
フロント作業機280は、たとえば、コントローラ210から出力された制御信号に基づいて、油圧装置からブームシリンダ281Sと、アームシリンダ282Sと、バケットシリンダ283Sに作動油が供給される。これにより、ブームシリンダ281Sと、アームシリンダ282Sと、バケットシリンダ283Sが伸縮し、それぞれ、ブーム281と、アーム282と、バケット283を駆動させることで、掘削作業やならし作業など、所望の作業を行うことができる。
【0024】
作業機械200の特定の部品は、たとえば、作業機械200が作業を行う地域の地質の影響により、作業機械200の実働時間の増加とともに損耗が進行する。ここで、地質の影響による損耗としては、たとえば、地表の土砂や岩石との接触にともなう衝撃や摩擦による損耗、または、部品間に入り込んだ土砂と部品との間の摩擦による損耗などを例示することができる。
【0025】
また、地表の土砂や岩石との接触にともなう衝撃や摩擦によって損耗が進行する作業機械200の部品としては、たとえば、フロント作業機280のバケット283の先端のツース283Tや、走行装置260のシュープレート266を例示することができる。また、部品間に入り込んだ土砂と部品との間の摩擦によって損耗が進行する作業機械200の部品としては、たとえば、走行装置260のスプロケット261、アイドラ262、リンクアッセンブリ263、上部ローラ264、下部ローラ265などを例示することができる。
【0026】
また、作業機械200の実働時間は、作業機械200が特定の動作を行った時間の総和、すなわち作業機械200が特定の動作を行った累積時間である。作業機械200の特定の動作、すなわち、地質の影響による部品の損耗を進行させる作業機械200の動作としては、たとえば、フロント作業機280による掘削作業やならし作業、走行装置260による走行動作、または、旋回機構による旋回体270の旋回動作などを例示することができる。
【0027】
以下、本実施形態の作業機械管理システム100の構成の一例を詳細に説明する。本実施形態の作業機械管理システム100は、たとえば、複数の作業機械200の情報を管理して、個々の作業機械200のメンテナンス時期を予測し、予測したメンテナンス時期をユーザに通知するシステムである。
【0028】
図1に示す例において、作業機械管理システム100は、たとえば、管理サーバ110と、ユーザサーバ120と、携帯端末130とを備えている。なお、作業機械管理システム100は、たとえば、管理サーバ110と、ユーザサーバ120と、携帯端末130とのうち、いずれか一以上によって構成することも可能である。すなわち、管理サーバ110、ユーザサーバ120、および携帯端末130は、それぞれ、単体で作業機械管理装置として機能することも可能である。
【0029】
管理サーバ110は、たとえば、作業機械200の製造者が所有する情報処理装置であり、入出力装置111と、CPUなどの処理装置112と、RAM、ROM、およびハードディスクなどの記憶装置113と、表示装置114と、を備えている。入出力装置111は、たとえば、インターネット回線400に接続されている。記憶装置113は、たとえば、作業機械200の各種のデータや、処理装置112によって実行される各種のプログラムが記録されている。
【0030】
処理装置112は、たとえば、記憶装置113に記憶された各種のプログラムを実行する。これにより、処理装置112は、たとえば、複数の作業機械200の各々から、識別情報とともに送信された位置情報PIおよび稼働情報OIを、インターネット回線400および入出力装置111を介して取得する。さらに、処理装置112は、取得した個々の作業機械200の位置情報PIおよび稼働情報OIに基づいてテーブルを作成して、記憶装置113に記憶させる。
【0031】
図3は、作業機械200の位置情報PIおよび稼働情報OIに基づく、稼働日報テーブルTBL1、部品交換履歴テーブルTBL2、および顧客情報テーブルTBL3の各テーブルの一例である。これらの各テーブルは、前述のように、たとえば、作業機械管理システム100の処理装置112によって作成され、記憶装置113に記憶されている。これらの各テーブルにおいて、識別情報は、個々の作業機械200を識別するための情報である。
【0032】
稼働日報テーブルTBL1は、たとえば、作業機械200の識別情報ごとに、稼働情報OIとして、稼働日、稼働時間、掘削時間、旋回時間および燃費を含み、位置情報PIとして緯度および経度を含む。部品交換履歴テーブルTBL2は、たとえば、作業機械200の識別情報ごとに、作業機械200の稼働情報OIとして、部品の交換日、部品番号、および部品の交換個数を含む。顧客情報テーブルTBL3は、たとえば、作業機械200の識別情報ごとに、ユーザの業種、および、ユーザ名、すなわち顧客名を含む。
【0033】
図1に示すユーザサーバ120は、たとえば、製造者から購入した作業機械200を使用するユーザが所有する情報処理装置であり、作業機械管理装置としても機能する。ユーザサーバ120は、管理サーバ110と同様に、入出力装置121と、処理装置122と、記憶装置123と、表示装置124と、を備えている。本実施形態の作業機械管理システム100において、ユーザサーバ120は、作業機械200の部品のメンテナンス時期を予測する機能を有している。このメンテナンス時期の予測機能は、ユーザサーバ120に限定されず、管理サーバ110または携帯端末130が有してもよい。このメンテナンス時期を予測する機能については、後で
図4を参照して詳細に説明する。
【0034】
携帯端末130は、たとえば、作業機械200の製造者のメンテナンス担当者、または作業機械200のユーザのオペレータが所持する、スマートフォン、タブレット型PC、ノート型PCなどの携帯式の情報処理装置である。携帯端末130は、管理サーバ110およびユーザサーバ120と同様に、入出力装置131と、処理装置132と、記憶装置133と、表示装置134と、を備えている。また、携帯端末130は、たとえば、無線通信によってインターネット回線400に接続可能な通信装置135を備えている。携帯端末130は、たとえば入出力装置131を介して、ユーザサーバ120に対して作業機械200のメンテナンス時期に基づく警告に関するデータを要求する。
【0035】
地理情報システムサーバ300は、たとえば、公的な機関が所有するサーバであり、入出力装置301と、CPUなどの処理装置302と、ハードディスクなどの記憶装置303とを備えている。地理情報システムサーバ300は、入出力装置301を介してインターネット回線400に接続されている。処理装置302は、入出力装置301を介して入力された情報に基づいて、記憶装置303に記憶された情報を、入出力装置301およびインターネット回線400を介して送信する。
【0036】
地理情報システムサーバ300の記憶装置303には、地理情報が記憶されている。地理情報は、たとえば、全国各地または世界各地の地質情報GIを含む地質情報データベースである。地質情報GIは、たとえば、各地点の第四紀の地層の地質名称を含む。地質名称は、たとえば、土質と岩盤に大別される。土質は、たとえば、礫、砂礫、砂、シルト、粘土などの地質名称を含む。
【0037】
岩盤は、たとえば、未固結堆積物、堆積岩、火成岩、溶岩類および火砕岩、変成岩、鉱物脈などに分類される。未固結堆積物は、たとえば、段丘堆積物などの地質名称を含む。堆積岩は、たとえば、れき岩、砂岩、シルト岩などの地質名称を含む。岩盤のその他の分類も同様に複数の地質名称を含むが、ここでは例示を省略する。また、地質情報GIは、硬さを示す指標として用いられる弾性波速度を含んでもよい。
【0038】
次に、
図4を参照して本実施形態の作業機械管理システム100の動作を説明する。
図4は、本実施形態の作業機械管理システム100の処理の流れを示すフロー図である。作業機械管理システム100は、たとえば、作業機械管理装置としてのユーザサーバ120により、複数の作業機械200の位置情報PIと稼働情報OIを取得する処理P1を実行する。より具体的には、ユーザサーバ120は、たとえば、次のように動作する。
【0039】
処理P1において、ユーザサーバ120の処理装置122は、入出力装置121およびインターネット回線400を介して管理サーバ110の記憶装置113に記憶された作業機械200の位置情報PIおよび稼働情報OIを受信し、記憶装置123に記憶させる。ここで、作業機械200の位置情報PIおよび稼働情報OIは、たとえば、
図3に示す稼働日報テーブルTBL1、部品交換履歴テーブルTBL2、および顧客情報テーブルTBL3として、ユーザサーバ120の記憶装置123に記憶される。
【0040】
次に、作業機械管理システム100は、たとえば、ユーザサーバ120により、地理情報システムサーバ300から地質情報GIを取得する処理P2を実行する。より具体的には、この処理P2において、ユーザサーバ120は、たとえば、次のように動作する。処理装置122は、たとえば、前の処理P1で取得した位置情報PIに基づいて、複数の作業機械200が作業を行う地域の地質情報GIを、入出力装置121を介して、地理情報システムサーバ300から取得する。
【0041】
図5は、
図4の地質情報GIを取得する処理P2の説明図である。処理装置122は、たとえば、作業機械200の位置情報PIに含まれる緯度および経度に基づき、複数の作業機械200が作業を行う地域の地質情報GIを、入出力装置121を介して地理情報システムサーバ300から取得する。より具体的には、処理装置122は、たとえば、各々の作業機械200の識別情報と、緯度および経度との組み合わせごとに、地質情報GIとして弾性波速度と地質名称とを取得する。なお、弾性波速度は、たとえば、地質名称に対応する弾性波速度平均である。
【0042】
次に、作業機械管理システム100は、たとえば、ユーザサーバ120により、
図4に示すように、各々の作業機械200の部品の耐用期間の中央値を算出する処理P3を実行する。ここでは、耐用期間の中央値を算出する作業機械200の部品として、フロント作業機280のバケット283の先端に取り付けられるツース283Tを例に挙げて説明するが、走行装置260の部品についても同様に、耐用期間の中央値を算出することができる。以下、
図6および
図7を参照して、この処理P3をより詳細に説明する。
【0043】
図6は、作業機械200の部品の耐用期間の中央値を算出する処理P3の詳細を示すフロー図である。作業機械管理システム100は、作業機械200の部品の耐用期間の中央値を算出する処理P3を開始すると、まず、データを抽出する処理P31を実行する。この処理P31において、たとえば、ユーザサーバ120の処理装置122は、
図4に示す処理P1で取得した
図3に示すような稼働情報OIに基づいて、特定の動作を行った累積時間である実働時間が、稼働時間に対して所定の割合以上である作業機械200のデータを抽出する。
【0044】
より具体的には、耐用期間の中央値を算出する作業機械200の部品がバケット283のツース283Tである場合、処理装置122は、特定の動作を掘削作業に設定する。さらに、処理装置122は、掘削作業の実働時間、すなわち掘削時間が、稼働時間に対して所定の割合以上である作業機械200のデータを抽出する。ここで、処理装置122は、たとえば、稼働時間に対する掘削時間の割合が80[%]以上の作業機械200のデータを抽出する。なお、作業機械200の稼働時間に対する実働時間の所定の割合としては、たとえば、50[%]、60[%]、70[%]、80[%]、90[%]など、状況に応じて適宜設定することができる。
【0045】
このデータを抽出する処理P31において、処理装置122は、たとえば、一つの地質名称に対する実働時間が、実働時間の総和すなわち総実働時間に対して所定の割合以上である作業機械200のデータを抽出してもよい。より具体的には、処理装置122は、たとえば、掘削時間の80[%]以上を砂礫など一つの特定の地質名称において行った作業機械200のデータを抽出してもよい。なお、一つの地質名称に対する実働時間の総実働時間に対する所定の割合としては、たとえば、50[%]、60[%]、70[%]、80[%]、90[%]など、状況に応じて適宜設定することができる。
【0046】
次に、作業機械管理システム100は、抽出したデータをカテゴリに分類する処理P32を実行する。具体的には、たとえば、ユーザサーバ120の処理装置122は、
図3の稼働日報テーブルTBL1に示すように、作業機械200の稼働情報OIに含まれる燃費に基づいて作業機械200の負荷を算出する。処理装置122は、たとえば、稼働情報OIに含まれる燃費と、記憶装置123に記憶されたプログラムおよびしきい値などのデータに基づいて、作業機械200の負荷を、高負荷、標準、低負荷のような負荷レベルとして算出する。一例として、処理装置122は、負荷レベルを、燃費が24[l/h]以上の場合に「高負荷」、24[l/h]未満かつ21[l/h]以上の場合に「標準」、21[l/h]未満の場合に「低負荷」と算出する。
【0047】
さらに、この処理P32において、処理装置122は、地質情報GIに含まれる弾性波速度に基づいて、作業機械200が作業する地点の表層地盤の硬さを算出する。処理装置122は、たとえば、稼働情報OIに含まれる燃費と、記憶装置123に記憶されたプログラムおよびしきい値などのデータに基づいて、表層地盤の硬さを、硬、中、軟のような硬さレベルとして算出する。一例として、処理装置122は、硬さレベルを、弾性波速度平均が、4.0[km/s]以上の場合に「硬」、4.0[km/s]未満かつ2.0[km/s]以上の場合に「中」、2.0[km/s]未満の場合に「軟」と算出する。
【0048】
図7は、
図6に示すデータをカテゴリに分類する処理P32と、部品の耐用期間の中央値を算出する処理P33を説明するグラフである。処理P32において、処理装置122は、弾性波速度および負荷の大小に応じた複数のカテゴリを設定する。具体的には、処理装置122は、たとえば、算出した作業機械200の負荷レベルと表層地盤の硬さレベルに応じた複数のカテゴリを設定する。
図7に示す例において、処理装置122は、作業機械200の負荷レベルと表層地盤の硬さレベルに応じた四つのカテゴリを設定している。
【0049】
より具体的には、第1のカテゴリCA1は、表層地盤の硬さが「硬」で作業機械200の負荷が「高負荷」のカテゴリである。第2のカテゴリCA2は、表層地盤の硬さが「硬」で作業機械200の負荷が「標準」または「低負荷」のカテゴリである。第3のカテゴリCA3は、表層地盤の硬さが「中」または「軟」で作業機械200の負荷が「高負荷」のカテゴリである。第4のカテゴリCA4は、表層地盤の硬さが「中」または「軟」で作業機械200の負荷が「標準」または「低負荷」のカテゴリである。処理P32において、処理装置122は、設定したカテゴリCA1,CA2,CA3,CA4ごとに、複数の作業機械200のデータをまとめる。
【0050】
次に、作業機械管理システム100は、カテゴリCA1,CA2,CA3,CA4ごとに、複数の作業機械200の部品の耐用期間の中央値を算出する処理P33を実行する。より具体的には、この処理P33において、ユーザサーバ120の処理装置122は、稼働情報OIに含まれる部品の交換履歴に基づいて、たとえばツース283Tなどの部品の使用開始から交換までの実働時間を耐用期間として算出する。ここで、実働時間は、前述のように作業機械200が特定の作業を行った累積時間であり、ツース283Tの場合は掘削時間である。さらに、この処理P33において、処理装置122は、
図7に示すように、カテゴリCA1,CA2,CA3,CA4ごとに、複数の作業機械200の部品の耐用期間の中央値T1,T2,T3,T4を算出する。次に、処理P34において、処理装置122は、算出した部品の耐用期間の中央値T1,T2,T3,T4を記憶装置123に記憶させ、
図6に示す処理P3を終了する。
【0051】
次に、作業機械管理システム100は、
図4に示す損耗率を算出する処理P4を実行する。以下、
図8および
図9を参照して、損耗率を算出する処理P4の詳細を説明する。
図8は、損耗率を算出する処理P4の詳細を示すフロー図である。
図9は、寿命係数の一例を示すグラフである。作業機械管理システム100は、損耗率を算出する処理P4を開始すると、まず、カテゴリCA1,CA2,CA3,CA4ごとの寿命係数T1/T1,T1/T2,T1/T3,T1/T4を算出する処理P41を実行する。
【0052】
この処理P41において、作業機械管理システム100は、たとえばユーザサーバ120の処理装置122により、弾性波速度および負荷が最大のカテゴリCA1の耐用期間の中央値T1をそれぞれのカテゴリの耐用期間の中央値T1,T2,T3,T4で除した値をそれぞれのカテゴリの寿命係数T1/T1,T1/T2,T1/T3,T1/T4として算出する。換言すると、処理装置122は、弾性波速度に基づく硬さレベルが最大の「硬」で負荷レベルが最大の「高負荷」であるカテゴリCA1の耐用期間の中央値T1と、それぞれのカテゴリの耐用期間の中央値T1,T2,T3,T4との比を、それぞれのカテゴリの寿命係数T1/T1,T1/T2,T1/T3,T1/T4として算出する。
【0053】
次に、作業機械管理システム100は、各々の作業機械200の部品の累積損傷時間を算出する処理P42を実行する。この処理P42において、作業機械管理システム100は、たとえばユーザサーバ120の処理装置122により、各々の作業機械200のカテゴリCA1,CA2,CA3,CA4ごとの実働時間と寿命係数の積の総和を部品の累積損傷時間として算出する。具体的には、処理装置122は、たとえば、各々の作業機械200のカテゴリCA1,CA2,CA3,CA4ごとに、掘削時間と寿命係数T1/T1,T1/T2,T1/T3,T1/T4との積を算出し、算出した値の総和を算出してツース283Tの累積損傷時間とする。
【0054】
次に、作業機械管理システム100は、作業機械200の各々の部品の使用限界時間を設定する処理P43を実行する。この処理P43において、作業機械管理システム100は、たとえばユーザサーバ120の処理装置122により、弾性波速度および負荷が最大のカテゴリCA1の部品の耐用期間の中央値T1を使用限界時間に設定する。具体的には、処理装置122は、たとえば、硬さレベルおよび負荷レベルが最大のカテゴリCA1における複数の作業機械200のツース283Tの耐用期間の中央値T1を、ツース283Tの使用限界時間に設定する。
【0055】
次に、作業機械管理システム100は、各々の作業機械200の部品の損耗率を算出する処理P44を実行する。この処理P44において、作業機械管理システム100は、たとえばユーザサーバ120の処理装置122により、各部品の使用限界時間に対する累積損傷時間の百分率を部品の損耗率として算出する。
【0056】
図10は、各々の作業機械200の部品の損耗率を算出する処理P44の結果の一例を示すグラフである。弾性波速度および負荷が最大のカテゴリCA1の部品の耐用期間の中央値T1を使用限界時間に設定した場合、実働時間が耐用期間の中央値T1に達したときの損耗率が100[%]となる。
図10に示す例では、実働時間が0からTaまでの間は、寿命係数がT1/T2のカテゴリCA2で作業機械200の特定の作業が行われ、実働時間がTaからT1までの間は、寿命係数がT1/T3のカテゴリCA3で作業機械200の特定の作業が行われている。
【0057】
この場合、実働時間Taと寿命係数T1/T2との積と、実働時間(T1-Ta)と寿命係数T1/T3との積の和が、累積損傷時間となる。そして、部品の使用限界時間である耐用期間の中央値T1に対する累積損傷時間の百分率AR[%]が、実働時間T1における部品の損耗率となる。このようにして、処理P44において、処理装置122は、作業機械200の各部品、たとえば、ツース283Tおよび走行装置260の各部品などの損耗率を算出し、
図8に示す処理P4を終了する。
【0058】
次に、作業機械管理システム100は、
図4に示すように、処理P4で算出した各々の作業機械200の各々の部品の損耗率がしきい値以上であるか否かを判定する処理P5を実行する。この処理P5において、ユーザサーバ120の処理装置122は、たとえば、
図10に示すように、算出した損耗率ARが、しきい値SAR以上であるか否かを判定する。この作業機械200の各部品の損耗率のしきい値は、たとえばユーザサーバ120の記憶装置123に記憶されている。
【0059】
処理P5において、処理装置122によって損耗率ARがしきい値SAR未満である(NO)と判定されると、作業機械管理システム100は、
図4に示す処理P1から処理P5までを繰り返し実行する。一方、処理P5において、処理装置122によって損耗率ARがしきい値SAR以上である(YES)と判定されると、作業機械管理システム100は、
図4に示す警告を通知する処理P6を実行する。この処理P6において、ユーザサーバ120の処理装置122は、たとえば、入出力装置121およびインターネット回線400を介して、管理サーバ110、作業機械200および携帯端末130に警告情報を送信する。すなわち、ユーザサーバ120の入出力装置121は、外部の携帯端末130からの要求に応じて、処理装置122で予測した作業機械200のメンテナンス時期に基づく警告に関するデータを携帯端末130に出力する。
【0060】
管理サーバ110は、たとえば、入出力装置111を介して警告情報を受信し、処理装置112によって表示装置114に警告を表示する。作業機械200は、たとえば、通信装置230および入出力装置211を介して警告情報を受信し、処理装置212によって表示装置220に警告を表示させる。携帯端末130は、たとえば、通信装置135および入出力装置131を介して警告情報を受信し、処理装置132によって表示装置134に警告を表示させる。
【0061】
図11は、携帯端末130の表示装置134に表示された警告の一例を示す画像図である。
図11に示す例において、表示装置134は、フロントアタッチメントのバケット/リンクの損耗の項目に、損耗率が90%以上であることを示す警告を表示している。なお、携帯端末130は、表示装置134に警告を表示するのと同時に、スピーカから警告音を発するようにしてもよい。
【0062】
次に、作業機械管理システム100は、
図4に示すように、各々の作業機械200の各々の部品のメンテナンス時期を予測する処理P7を実行する。作業機械管理システム100は、たとえば、ユーザサーバ120の処理装置122により、
図10に示す損耗率ARに基づいてメンテナンス時期を予測する。具体的には、
図10に示す例において、処理装置122は、現在の部品の損耗率ARと、現在の作業機械200の寿命係数T1/T3に基づいて、損耗率が100[%]に到達する実働時間Txを算出し、現在までの実働時間T1と、算出した実働時間Txに基づいて部品のメンテナンス時期を予測する。
【0063】
次に、作業機械管理システム100は、
図4に示すように、情報を表示する処理P8を実行する。この処理P8において、作業機械管理システム100は、たとえば、ユーザサーバ120の処理装置122により、入出力装置121およびインターネット回線400を介して、管理サーバ110、作業機械200および携帯端末130に予測したメンテナンス時期の情報を送信する。
【0064】
管理サーバ110は、たとえば、表示装置114を介してメンテナンス時期の情報を受信し、処理装置112によって表示装置114に表示する。作業機械200は、たとえば、通信装置230および入出力装置211を介してメンテナンス時期の情報を受信し、処理装置212によって表示装置220に表示させる。携帯端末130は、たとえば、通信装置135および入出力装置131を介してメンテナンス時期の情報を受信し、処理装置132によって表示装置134に表示させる。
【0065】
図11に、携帯端末130の表示装置134に表示されたメンテナンス情報の一例を示す。
図11に示す例において、表示装置134は、フロントアタッチメントのバケット/リンクの損耗の項目に、メンテナンス時期が、実働時間として残り20時間であり、稼働日数として残り20日であることを表示している。以上により、作業機械管理システム100は、
図4に示す処理を終了する。
【0066】
以下、本実施形態の作業機械管理システム100および作業機械管理装置の作用を説明する。
【0067】
前述のように、本実施形態の作業機械管理システム100は、入出力装置121と、処理装置122と、を備えている。入出力装置121は、作業機械200の位置情報PIおよび稼働情報OIを作業機械200から受信するとともに、位置情報PIに基づいて作業機械200が作業する地域の地質情報GIを地理情報システムサーバ300から受信する。処理装置122は、稼働情報OIおよび地質情報GIに基づいて作業機械200のメンテナンス時期を予測する。
【0068】
なお、本実施形態において、ユーザサーバ120は、単体でも、作業機械管理装置として機能する。作業機械管理装置としてのユーザサーバ120は、入出力装置121と、処理装置122とを備える。入出力装置121は、作業機械200の位置情報PIおよび稼働情報OIを作業機械200から受信するとともに、位置情報PIに基づいて作業機械200が作業する地域の地質情報GIを地理情報システムサーバ300から受信する。また、処理装置122は、稼働情報OIおよび地質情報GIに基づいて作業機械200のメンテナンス時期を予測する。
【0069】
このような構成により、本実施形態の作業機械管理システム100、および、作業機械管理装置としてのユーザサーバ120は、従来よりも作業機械200のメンテナンス時期を高精度に予測することができる。たとえば、前述の特許文献1に記載された従来のショベル支援装置は、過去に作業が行われたことのない地点でショベルが作業する場合、ショベルに加わる負荷を予測することができない。これに対し、本実施形態の作業機械管理システム100、および、作業機械管理装置としてのユーザサーバ120は、作業機械200の位置情報PIおよび稼働情報OIと、地理情報システムサーバ300から取得した地質情報GIに基づいて作業機械200のメンテナンス時期を予測することができる。
【0070】
したがって、本実施形態の作業機械管理システム100、および、作業機械管理装置としてのユーザサーバ120は、過去に作業が行われたことがない地点で作業機械200が作業する場合であっても、作業機械200の部品に作用する負荷を予測し、従来よりも作業機械200のメンテナンス時期を高精度に予測することができる。また、本実施形態の作業機械管理システム100、および、作業機械管理装置としてのユーザサーバ120は、作業機械200の位置情報PIに基づいて地理情報システムサーバ300から地質情報GIを取得するため、作業機械200が作業する地点の表層地盤の硬さを含む地質情報GIを測定する必要がないという利点がある。
【0071】
なお、前述のように、管理サーバ110単体で、作業機械管理装置を構成することも可能である。この場合、作業機械管理装置としての管理サーバ110は、入出力装置111と、処理装置112とを備える。入出力装置111は、作業機械200の位置情報PIおよび稼働情報OIを作業機械200から受信するとともに、位置情報PIに基づいて作業機械200が作業する地域の地質情報GIを地理情報システムサーバ300から受信する。処理装置112は、稼働情報OIおよび地質情報GIに基づいて作業機械200のメンテナンス時期を予測する。この場合も、前述の作業機械管理システム100と同様の効果を奏することができる。
【0072】
また、前述のように、携帯端末130単体で、作業機械管理装置を構成することも可能である。この場合、作業機械管理装置としての携帯端末130は、入出力装置131と、処理装置132と、表示装置134と、を備える。入出力装置131は、作業機械200の位置情報PIおよび稼働情報OIを作業機械200から受信するとともに、位置情報PIに基づいて作業機械200が作業する地域の地質情報GIを地理情報システムサーバ300から受信する。処理装置132は、稼働情報OIおよび地質情報GIに基づいて作業機械200のメンテナンス時期を予測する。表示装置134は、処理装置132で予測した作業機械200のメンテナンス時期に基づく警告を表示する。この場合も、前述の作業機械管理システム100と同様の効果を奏することができる。
【0073】
また、本実施形態の作業機械管理システム100および作業機械管理装置において、作業機械200の稼働情報OIは、各々の作業機械200の燃費の情報を含んでいる。また、処理装置122は、各々の作業機械200の燃費に基づいて各々の作業機械200の負荷を算出し、各々の作業機械200の負荷および地質情報GIに基づいて、各々の作業機械200の部品のメンテナンス時期を予測する。
【0074】
この構成により、本実施形態の作業機械管理システム100および作業機械管理装置は、各々の作業機械200の部品のメンテナンス時期を予測するために、各部品に作用する力を測定する必要がない。したがって、作業機械200に特殊なセンサを設ける必要がなく、作業機械管理システム100および作業機械管理装置の構成を簡潔にすることができ、作業機械管理システム100および作業機械管理装置の導入を容易にすることができる。
【0075】
また、本実施形態の作業機械管理システム100および作業機械管理装置において、地質情報GIは、作業機械200が作業する地域の弾性波速度の分布を含んでいる。そして、処理装置122は、各々の作業機械200の負荷と、位置情報PIに対応する弾性波速度とに基づいて、各々の作業機械200の部品のメンテナンス時期を予測する。
【0076】
この構成により、本実施形態の作業機械管理システム100および作業機械管理装置は、各々の作業機械200の負荷と、各々の作業機械200が作業を行う地点の表層地盤の硬さの指標である弾性波速度に基づいて、各々の作業機械200の部品のメンテナンス時期を予測することができる。これにより、たとえば、バケット283のツース283Tなど、作業機械200の負荷と表層地盤の硬さに応じて損耗の進行速度が変化する部品のメンテナンス時期を、より高精度に予測することが可能になる。
【0077】
また、本実施形態の作業機械管理システム100および作業機械管理装置において、作業機械200の稼働情報OIは、各々の作業機械200が特定の動作を行った累積時間である実働時間を含んでいる。そして、処理装置122は、弾性波速度および負荷の大小に応じた複数のカテゴリCA1,CA2,CA3,CA4を設定し、作業機械200の部品の寿命係数T1/T1,T1/T2,T1/T3,T1/T4を、設定したカテゴリごとに算出する。さらに、処理装置122は、作業機械200のカテゴリCA1,CA2,CA3,CA4ごとの実働時間と寿命係数の積の総和を、部品の累積損傷時間として算出し、その累積損傷時間に基づいてメンテナンス時期を予測する。
【0078】
この構成により、本実施形態の作業機械管理システム100および作業機械管理装置は、作業機械200が作業する地点の表層地盤の弾性波速度および作業機械200の負荷の大小に応じて変化する作業機械200の部品のメンテナンス時期をより高精度に予測することが可能になる。また、複数の作業機械200のデータをカテゴリCA1,CA2,CA3,CA4に分類し、カテゴリごとに部品の累積損傷時間を算出することで、処理装置122の処理量を削減し、部品のメンテナンス時期の予測を容易にすることができる。
【0079】
また、本実施形態の作業機械管理システム100および作業機械管理装置において、作業機械200の稼働情報OIは、各々の作業機械200の部品の交換履歴を含んでいる。そして、処理装置122は、各々の作業機械200の部品の交換履歴に基づいて、部品の使用開始から交換までの実働時間を耐用期間として算出し、カテゴリCA1,CA2,CA3,CA4ごとに複数の作業機械200の部品の耐用期間の中央値T1,T2,T3,T4を算出する。さらに、処理装置122は、弾性波速度および負荷が最大のカテゴリCA1の中央値T1をそれぞれのカテゴリCA1,CA2,CA3,CA4の中央値T1,T2,T3,T4で除した値をそれぞれのカテゴリの寿命係数T1/T1,T1/T2,T1/T3,T1/T4として算出する。
【0080】
この構成により、本実施形態の作業機械管理システム100および作業機械管理装置は、作業機械200の作業を、いくつかのカテゴリCA1,CA2,CA3,CA4に分類し、各々のカテゴリの寿命係数T1/T1,T1/T2,T1/T3,T1/T4に基づいて、部品のメンテナンス時期を予測することができる。これにより、作業機械200の部品の損耗の進行速度が異なるカテゴリCA1,CA2,CA3,CA4に応じて、作業機械200の部品のメンテナンス時期を高精度に予測することができる。
【0081】
また、本実施形態の作業機械管理システム100および作業機械管理装置において、処理装置122は、各々の作業機械200の稼働時間に対する実働時間の割合が所定の割合以上である作業機械200の稼働情報OIを抽出する。そして、処理装置122は、抽出した稼働情報OIに含まれる複数の作業機械200の部品の交換履歴に基づいて、部品の耐用期間を算出する。
【0082】
この構成により、本実施形態の作業機械管理システム100および作業機械管理装置は、作業機械200が部品の損耗に対する影響が少ない動作を行っている時間を除外して、部品の耐用期間を算出することができる。したがって、本実施形態の作業機械管理システム100および作業機械管理装置によれば、作業機械200の部品の耐用期間をより高精度に算出することができ、作業機械200の部品のメンテナンス時期をより高精度に予測することが可能になる。
【0083】
また、本実施形態の作業機械管理システム100および作業機械管理装置において、処理装置122は、弾性波速度および負荷が最大のカテゴリCA1における部品の耐用期間の中央値T1を使用限界時間に設定する。そして、処理装置122は、使用限界時間に対する累積損傷時間の百分率を各々の部品の損耗率ARとして算出し、その損耗率ARに基づいて各々の作業機械200の部品のメンテナンス時期を予測する。
【0084】
この構成により、本実施形態の作業機械管理システム100および作業機械管理装置は、作業機械200の部品の損耗が最も早期に進行するカテゴリ、すなわち弾性波速度および負荷が最大のカテゴリCA1における部品の耐用期間の中央値T1を基準として、作業機械200の部品の損耗率ARを算出することができる。したがって、本実施形態の作業機械管理システム100および作業機械管理装置によれば、作業機械200の部品のメンテナンス時期をより高精度に予測することが可能になる。
【0085】
また、本実施形態の作業機械管理システム100および作業機械管理装置において、地質情報GIは、作業機械200が作業する地域の地域における地質名称の分布を含む。処理装置122は、作業機械200の負荷および地質名称に基づいて、各々の200の部品のメンテナンス時期を予測する。
【0086】
この構成により、本実施形態の作業機械管理システム100および作業機械管理装置は、たとえば作業機械200が作業する地点の土質や岩質に起因する部品の損耗によるメンテナンス時期をより高精度に予測することが可能になる。具体的には、たとえば、特定の地質名称の地点で作業する作業機械200の走行装置260の部品の間に入り込んだ粒子による損耗の影響などに基づいて、スプロケット261、アイドラ262、リンクアッセンブリ263、上部ローラ264、下部ローラ265、シュープレート266などのメンテナンス時期を高精度に予測することが可能になる。
【0087】
以上、図面を用いて本開示に係る作業機械管理システムおよび作業機械管理装置の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【符号の説明】
【0088】
100 作業機械管理システム;110 管理サーバ(作業機械管理装置);111 入出力装置;112 処理装置;120 ユーザサーバ(作業機械管理装置);121 入出力装置;122 処理装置;130 携帯端末(作業機械管理装置);131 入出力装置;132 処理装置;134 表示装置;200 作業機械;300 地理情報システムサーバ;CA1 カテゴリ;CA2 カテゴリ;CA3 カテゴリ;CA4 カテゴリ;GI 地質情報;OI 稼働情報;PI 位置情報;AR 損耗率;T1 中央値;T2 中央値;T3 中央値;T4 中央値;T1/T1 寿命係数;T1/T2 寿命係数;T1/T3 寿命係数;T1/T4 寿命係数