(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】細胞分離器具およびそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20230310BHJP
C12N 1/02 20060101ALI20230310BHJP
C12M 3/06 20060101ALN20230310BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12N1/02
C12M3/06
(21)【出願番号】P 2021114053
(22)【出願日】2021-07-09
(62)【分割の表示】P 2018532641の分割
【原出願日】2016-12-13
【審査請求日】2021-08-03
(32)【優先日】2015-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー ロジャー マーティン
(72)【発明者】
【氏名】アリソン ジーン タナー
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0081995(US,A1)
【文献】特表2000-517171(JP,A)
【文献】特開昭62-110713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12M 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中のマイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を分離するように構成された細胞分離器具であって、該細胞分離器具は、
第1のポート、第2のポート、および空洞を有する容器;および
前記空洞を第1の区画と第2の区画に分割するために該空洞内に配置された多孔質メッシュを備え、
前記第1のポートは前記空洞の前記第1の区画と連通しており、該第1のポートは前記多孔質メッシュの第一面側に位置しており、
前記第2のポートは前記空洞の前記第2の区画と連通しており、該第2のポートは前記多孔質メッシュの第二面側に位置しており、
前記多孔質メッシュは、該多孔質メッシュを通る液体の流れに対して実質的に垂直な向きまたは傾斜した向きを有するように前記空洞内に配置され、
前記容器が反転または回転するように構成された、細胞分離器具。
【請求項2】
前記第1のポートが前記容器の一方の端部に位置し、前記第2のポートが該容器の反対の端部に位置している、請求項1に記載の細胞分離器具。
【請求項3】
(1)前記第1のポートが実質的に上向きに位置しており、前記第2のポートが実質的に下向きに位置している場合、または(2)前記第1のポートが実質的に下向きに位置し、前記第2のポートが実質的に上向きに位置している場合、前記多孔質メッシュが前記空洞内で実質的に垂直の向きを有するように、該第1のポートおよび該第2のポートが前記容器上で互いからずれている、請求項
2に記載の細胞分離器具。
【請求項4】
(1)前記第1のポートが実質的に上向きに位置しており、前記第2のポートが実質的に下向きに位置している場合、または(2)前記第1のポートが実質的に下向きに位置し、前記第2のポートが実質的に上向きに位置している場合、前記多孔質メッシュが前記空洞内で傾斜した向きを有するように、該第1のポートおよび該第2のポートが前記容器上で互いに一列に並んでいる、請求項2に記載の細胞分離器具。
【請求項5】
前記第1のポートおよび前記第2のポートの両方とも容器の片側に位置しており、(1)該第1のポートおよび該第2のポートが実質的に上向きに位置している場合、または(2)該第1のポートおよび該第2のポートが実質的に下向きに位置している場合、前記多孔質メッシュが前記容器内で実質的に垂直向きを有する、請求項1に記載の細胞分離器具。
【請求項6】
前記多孔質メッシュが、約12マイクロメートルから約200マイクロメートルに及ぶサイズを有する細孔を中に有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の細胞分離器具。
【請求項7】
液体中のマイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を分離する方法において、
細胞分離器具の容器を用意し、前記容器は、空洞を2つの区画に分割するために該空洞内に配置された多孔質メッシュを備え、
前記多孔質メッシュは、該多孔質メッシュを通る液体の流れに対して実質的に垂直な向きまたは傾斜した向きを有するように前記空洞内に配置され、
前記容器は前記空洞の第1の区画と連通する第1のポートを備え、前記第1のポートが前記多孔質メッシュの第一面側に位置しており、
前記容器は前記空洞の第2の区画と連通する第2のポートを備え、前記第2のポートが前記多孔質メッシュの第二面側に位置しており、
前記容器が反転可能または回転可能であり、
前記容器の前記第1のポートを通じて液体を導入する工程;
前記多孔質メッシュを通過する液体を前記第2のポートから排出する工程;
前記多孔質メッシュを通過しない前記マイクロキャリアまたはスフェロイドを処理して、該マイクロキャリアまたはスフェロイドから前記細胞を放出する工程;および
前記細胞を前記第2のポートから排出させる工程;
を有してなる方法。
【請求項8】
前記マイクロキャリアまたはスフェロイドを処理する工程が、前記マイクロキャリアまたはスフェロイドを洗浄し、次いで、該マイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を解離させる各工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記マイクロキャリアまたはスフェロイドを洗浄する工程が、
洗浄液を前記空洞に加え、
前記容器を動かし、
前記洗浄液を前記第2のポートから排出する、
各工程を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を解離させる工程が、
細胞解離試薬を前記空洞に加え、
前記容器を動かす、
各工程を含み、
前記細胞を第2のポートから排出する工程が、前記細胞解離試薬を前記第2のポートから排出する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2015年12月22日に出願された米国仮特許出願第62/270950号の優先権を主張して出願された特願2018-532641号の分割出願である。
【技術分野】
【0002】
本開示は、液体(例えば、細胞培養培地)中のマイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を分離するための細胞分離器具およびその細胞分離器具を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば、微分傾斜(differential gradient)遠心分離、音響共振、接線流濾過、スピンフィルターおよび円錐または傾斜板を使用した沈降を含む、細胞培養培地内にあるマイクロキャリアから細胞を分離するための公知の技術がいくつかある。これら公知の技術のほとんどは、高額な資本設備を必要とするか、または作動させるのが複雑である。細胞培養培地内にあるマイクロキャリアから、そしてことによると、スフェロイドから細胞を分離するための、それほど複雑ではない市販の器具の内の2つに、Steriflip FilterユニットおよびHyQ Harvestainerがある。
【0004】
このSteriflip Filterユニットは、そのユニットを、細胞培養培地(マイクロキャリアを含む)を収容する標準型50ミリリットル遠心分離管に取り付け、そのユニットをひっくり返し、この取り付けられた50ミリリットル遠心分離管内に濾過された細胞が集まるように真空に引くことによって、作動するように設計されている。このSteriflip FilterユニットはEMDMilliporeにより製造されている。
【0005】
Thermo Scientificにより製造されているHyQ Harvestainerは、数百リットルの培地を収容することができ、細胞、マイクロキャリアおよび培地をその装置に灌流させるためにポンプに依存する。より詳しくは、このHyQ Harvestainerは、灌流された培地の出口を有するより大型の構造化液体不透過性バッグ内にメッシュバッグを有する。細胞、マイクロキャリア、および培地の溶液がHyQ Harvestainer中にそこを通して灌流される前に、マイクロキャリアは繰り返し洗浄され、細胞は外部のバイオリアクター内でマイクロキャリアから酵素的に分離される。マイクロキャリアは、HyQ Harvestainerの内側メッシュバッグ内に保持され、細胞および培地は、内側メッシュバッグを通り、次いで、構造化外側バッグから細胞収集容器中に通過する。HyQ Harvestainerを使用するために要求される工程は、やっかいであるのが分かる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの濾過ユニットおよび他の標準型濾過ユニットの全ては、多孔質メッシュを、細胞培養培地の流れに対して垂直であるように、水平配置に位置付ける。それゆえ、標準型濾過ユニットが使用される場合、マイクロキャリアまたはスフェロイドは水平に向けられた多孔質メッシュ上に着地し、その水平に向けられた多孔質メッシュ内の細孔を塞ぐので、水平に向けられた多孔質メッシュを通る細胞培養培地の流れは、遮断されやすい。この問題と他の問題が本開示により対処される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
細胞分離器具、およびその細胞分離器具を使用する方法が、本出願の独立請求項に記載されている。その細胞分離器具およびその細胞分離器具を使用する方法の有利な実施の形態が、従属請求項に記載されている。
【0008】
1つの態様において、本開示は、液体中のマイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を分離するように構成された細胞分離器具を提供する。その細胞分離器具は、第1のポート、第2のポート、および空洞を有する容器を備える。その細胞分離器具は、その空洞を第1の区画と第2の区画に分割するために空洞内に配置された多孔質メッシュをさらに備える。その第1のポートは空洞の第1の区画と連通している。さらに、その第1のポートは多孔質メッシュの第一面側に位置している。第2のポートは空洞の第2の区画と連通している。さらに、その第2のポートは多孔質メッシュの第二面側に位置している。その多孔質メッシュは、多孔質メッシュを通る液体の流れに対して実質的に垂直な向きまたは傾斜した向きを有するように空洞内に配置されている。新たな細胞分離器具が使用される場合、マイクロキャリアまたはスフェロイドは、従来の細胞分離器具の水平の多孔質メッシュにおけるように、重力により垂直なまたは傾斜した多孔質メッシュ内の細孔の大半をもはや塞がないので、垂直なまたは傾斜した多孔質メッシュを通る液体の流れは、従来の細胞分離器具におけるようには、もはや容易には塞がれないという点で、本開示の細胞分離器具は、垂直なまたは傾斜した多孔質メッシュを有することにより、従来の細胞分離器具を上回って著しく改善されている。
【0009】
別の態様において、本開示は、その細胞分離器具を使用して、液体中のマイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を分離する方法を提供する。その方法は、(a)細胞分離器具の容器の第1のポートを通じて液体を導入する工程であって、該容器は第2のポートおよび空洞をさらに有し、多孔質メッシュが、その多孔質メッシュを通る液体の流れに対して実質的に垂直なまたは傾斜した向きを有し、その空洞を第1の区画と第2の区画に分割するように、その空洞内に配置され、第1のポートが多孔質メッシュの第一面側に位置しており、第1のポートは空洞の第1の区画と連通しており、第2のポートは空洞の第2の区画と連通している工程、(b)多孔質メッシュを通過する液体を第2のポートから排出する工程、(c)多孔質メッシュを通過しないマイクロキャリアまたはスフェロイドを処理して、そのマイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を放出する工程、および(d)その細胞を第2のポートから排出させる工程を有してなる。新たな細胞分離器具が使用される場合、マイクロキャリアまたはスフェロイドは、従来の細胞分離器具の水平の多孔質メッシュにおけるように、重力により垂直なまたは傾斜した多孔質メッシュ内の細孔の大半をもはや塞がないので、垂直なまたは傾斜した多孔質メッシュを通る液体の流れは、従来の細胞分離器具におけるようには、もはや容易には塞がれないという点で、本開示の細胞分離器具は、垂直なまたは傾斜した多孔質メッシュを有することにより、従来の細胞分離器具を上回って著しく改善されている。
【0010】
本開示の追加の態様は、一部には、下記の詳細な説明、図面およびいずれかの請求項に述べられており、一部は、その詳細な説明から導かれるか、もしくは本開示の実施によって分かる。先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、例示と説明に過ぎず、本開示を開示されたように制限するものではないことが理解されよう。
【0011】
本開示のより完全な理解は、添付図面と共に解釈されたときに、以下の詳細な説明を参照することにより得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本開示の実施の形態による細胞分離器具の正面図
【
図1B】本開示の実施の形態による細胞分離器具内に配置される多孔質メッシュの側面図
【
図1C】本開示の実施の形態による、
図1Aに示された細胞分離器具を保持し、移動させるために使用できるリング・スタンドの正面図
【
図1D】本開示の実施の形態による、
図1Aに示された細胞分離器具の大部分を取り囲む筐体の斜視図
【
図2A】本開示の実施の形態による細胞分離器具の正面図
【
図2B】本開示の実施の形態による細胞分離器具内に配置される多孔質メッシュの側面図
【
図2C】本開示の実施の形態による、
図2Aに示された細胞分離器具に結合された外部システムの概略図
【
図2D】本開示の実施の形態による、
図2Aに示された細胞分離器具に結合された異なる外部システムの概略図
【
図3A】本開示の実施の形態にしたがって構成された細胞分離器具の概略図
【
図3B】本開示の実施の形態にしたがって構成された細胞分離器具の概略図
【
図3C】本開示の実施の形態にしたがって構成された細胞分離器具の概略図
【
図4A】本開示の実施の形態にしたがって構成された細胞分離器具の概略図
【
図4B】本開示の実施の形態にしたがって構成された細胞分離器具の概略図
【
図4C】本開示の実施の形態にしたがって構成された細胞分離器具の概略図
【
図5A】本開示の実施の形態にしたがって構成された細胞分離器具の概略図
【
図5B】本開示の実施の形態にしたがって構成された細胞分離器具の概略図
【
図5C】本開示の実施の形態にしたがって構成された細胞分離器具の概略図
【
図5D】本開示の実施の形態にしたがって構成された細胞分離器具の概略図
【
図6A】本開示の実施の形態にしたがって構成された細胞分離器具の概略図
【
図6B】本開示の実施の形態による、
図6Aに示された細胞分離器具に結合された外部システムの概略図
【
図7A】本開示の実施の形態にしたがって構成された細胞分離器具の概略図
【
図7B】本開示の実施の形態による、
図6Aに示された細胞分離器具に結合された外部システムの概略図
【
図8】本開示の実施の形態による、液体中のマイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を得るために、
図1~7に示された細胞分離器具を使用する方法の基本工程を示す流れ図
【発明を実施するための形態】
【0013】
液体(例えば、細胞培養培地、緩衝食塩水)中のマイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を分離するように構成された細胞分離器具がここに開示されている。その細胞分離器具は、第1のポート、第2のポート、および空洞を有する容器を備える。その細胞分離器具は、その空洞を第1の区画と第2の区画に分割するために空洞内に配置された多孔質メッシュ(液体透過性膜など)をさらに備える。その第1のポートは空洞の第1の区画と連通している。さらに、その第1のポートは多孔質メッシュの第一面側に位置している。第2のポートは空洞の第2の区画と連通している。さらに、その第2のポートは多孔質メッシュの第二面側に位置している。その多孔質メッシュは、多孔質メッシュを通る液体の流れに対して実質的に垂直な向きまたは水平の向き以外の傾斜した向きを有するように空洞内に配置されている。
【0014】
その新たな細胞分離器具を使用して、液体(例えば、細胞培養培地、緩衝食塩水)中のマイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を分離する方法も、ここに開示されている。その方法は、(a)細胞分離器具の容器の第1のポートに液体を導入する工程であって、該容器は第2のポートおよび空洞をさらに有し、多孔質メッシュが、その多孔質メッシュを通る液体の流れに対して実質的に垂直なまたは傾斜した向きを有し、その空洞を第1の区画と第2の区画に分割するように、その空洞内に配置され、第1のポートが多孔質メッシュの第一面側に位置しており、第1のポートは空洞の第1の区画と連通しており、第2のポートは空洞の第2の区画と連通している工程、(b)多孔質メッシュを通過する液体を第2のポートから排出する工程、(c)多孔質メッシュを通過しないマイクロキャリアまたはスフェロイドを処理して、そのマイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を放出する工程、および(d)その細胞を第2のポートから排出させる工程を有してなる。新たな細胞分離器具が使用される場合、マイクロキャリアまたはスフェロイドは、従来の細胞分離器具の水平の多孔質メッシュにおけるように、重力により垂直なまたは傾斜した多孔質メッシュ内の細孔の大半をもはや塞がないので、垂直なまたは傾斜した多孔質メッシュを通る液体の流れは、従来の細胞分離器具におけるようには、もはや容易には塞がれないという点で、本開示の細胞分離器具は、垂直なまたは傾斜した多孔質メッシュを有することにより、従来の細胞分離器具を上回って著しく改善されている。
【0015】
本開示の実施の形態は、本開示の非限定的な実施の形態による様々な細胞分離器具およびその様々な細胞分離器具を使用する方法を図解する、
図1~8を参照して論じられる。以下の説明は、新たな細胞分離器具を実現するための説明を与えることを目的としており、その新たな細胞分離器具の様々な態様は、その非限定的な実施の形態に関して本開示全体に亘り詳しく具体的に述べられており、これらの実施の形態は、本開示の文脈において互いに交換できる。ここに記載された様々な細胞分離器具は、液体中のマイクロキャリアまたはスフェロイドからの細胞の分離に関して役立つが、(例えば)互いにくっついた細胞の染色などの他の用途に使用できることを認識すべきである。
【0016】
図1A~1Bを参照すると、本開示の実施の形態による細胞分離器具100の正面図および細胞分離器具100内に配置される多孔質メッシュ102の側面図が、それぞれ示されている。図のように、細胞分離器具100は、第1のポート106、第2のポート108、および空洞110を有する容器104を備えている。その細胞分離器具100は、その空洞110を第1の区画112と第2の区画114に分割するように空洞110内に配置された多孔質メッシュ102をさらに備えている。その第1のポート106は空洞110の第1の区画112と連通している。さらに、その第1のポート106は多孔質メッシュ102の第一面116側に位置している。第2のポート108は空洞110の第2の区画114と連通している。さらに、その第2のポート108は多孔質メッシュ102の第二面118側に位置している。その上、第1のポート106は容器104の一方の端部120に位置しており、第2のポート108は容器104の反対の端部122に位置している。また、(1)第1のポート106が実質的に上向きに位置しており、第2のポート108が実質的に下向きに位置している場合(
図1Aに示されるように)、または(2)第1のポート106が実質的に下向きに位置し、第2のポート108が実質的に上向きに位置している場合、多孔質メッシュ102が空洞110内で実質的に垂直の向きを有するように、第1のポート106および第2のポート108は容器104上で互いからずれている。
【0017】
この例において、細胞分離器具100は、バイオリアクター、真空ポンプなどの外部装置に直接的に接続されていないので、開放系細胞分離器具100であるように構成されている。この構成において、細胞分離器具100は、第1のポート106に取り付けられる第1のキャップ124を有する(すなわち、第1のキャップ124は、第1のポート106に締め付けたり、第1のポート106から取り外したりすることができる)。さらに、細胞分離器具100は、第2のポート108に取り付けられる第2のキャップ126を有する(すなわち、第2のキャップ126は、第2のポート108に締め付けたり、第2のポート108から取り外したりすることができる)。
【0018】
図1Cに示されるように、液体(例えば、細胞培養培地、緩衝食塩水)中のマイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を分離するときに、所望であれば、リング・スタンド128または類似の器具を使用して、細胞分離器具100を保持し、多数の位置のいずれか1つに動かしても差し支えない。また、
図1Dは、第1のポート106および第2のポート108を除いて細胞分離器具100の大部分を取り囲む、所望であれば、使用できる筐体130を示す。筐体130は、細胞分離器具100(可撓性容器104を有することがある)の回転を可能にし、一般に、細胞分離器具100の取扱いに役立つ。
【0019】
1つの例示の用途において、細胞分離器具100を使用して、以下の工程を行うことによって、液体内のマイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を得ることができる:
1)上向きの細胞分離器具100の上部にある第1のポート106から第1のキャップ124を取り外す。
2)マイクロキャリアまたはスフェロイドを含む液体を、第1のポート106を通じて細胞分離器具100中に注ぎ入れる。
3)細胞分離器具100の上部にある第1のポート106に第1のキャップ124を戻す。次に、例えば、上述したリング・スタンド128を使用することにより、第1のキャップ124が今では下向きであり、第2のキャップ126が今では上向きであるように、細胞分離器具100を反転させる。
4)細胞分離器具100の第2のポート108から第2のキャップ126を取り外す。次に、細胞分離器具100の第2のポート108から、多孔質メッシュ102を通過した液体を注ぎ出す。この注ぎ出し工程中、多孔質メッシュ102は、細胞分離器具100の内部にマイクロキャリアまたはスフェロイドを保持していることに留意のこと。
5)細胞分離器具100の第2のポート108に第2のキャップ126を配置する。次に、例えば、上述したリング・スタンド128を使用することにより、第1のキャップ124が今では上向きであり、第2のキャップ126が今では下向きであるように、細胞分離器具100を反転させる。
6)細胞分離器具100の第1のポート106から第1のキャップ124を取り外す。次に、洗浄液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS))を、第1のポート106を通じて細胞分離器具100中に注ぎ入れる。
7)細胞分離器具100の第1のポート106に第1のキャップ124を戻す。細胞分離器具100を動かす。次に、例えば、上述したリング・スタンド128を使用することにより、第1のキャップ124が今では下向きであり、第2のキャップ126が今では上向きであるように、細胞分離器具100を反転させる。
8)細胞分離器具100の第2のポート108から第2のキャップ126を取り外す。次に、細胞分離器具100の第2のポート108から、多孔質メッシュ102を通過した液体を注ぎ出す。工程6、7および8は、多数回繰り返しても差し支えないことに留意のこと。あるいは、工程6、7および8を省略しても差し支えない。
9)細胞分離器具100の第2のポート108に第2のキャップ126を配置する。次に、例えば、上述したリング・スタンド128を使用することにより、第1のキャップ124が今では上向きであり、第2のキャップ126が今では下向きであるように、細胞分離器具100を反転させる。
10)細胞分離器具100の第1のポート106から第1のキャップ124を取り外す。次に、細胞解離試薬(例えば、トリプシン)を、第1のポート106を通じて細胞分離器具100中に注ぎ入れる。
11)細胞分離器具100の第1のポート106に第1のキャップ124を配置する。細胞分離器具100を水平位置に動かして、マイクロキャリアまたはスフェロイドを細胞解離試薬中でインキュベートさせる。細胞が解離した後、例えば、上述したリング・スタンド128を使用することにより、第1のキャップ124が今では下向きであり、第2のキャップ126が今では上向きであるように、細胞分離器具100を反転させる。
12)細胞分離器具100の第2のポート108から第2のキャップ126を取り外す。次に、細胞分離器具100の第2のポート108から、多孔質メッシュ102を通過した細胞解離試薬および細胞(マイクロキャリアから放出されたまたはスフェロイドから溶解した)を注ぎ出す。
【0020】
図2A~2Bを参照すると、本開示の実施の形態による、細胞分離器具200の正面図および細胞分離器具200内に配置された多孔質メッシュ202の側面図が、それぞれ示されている。この実施の形態において、細胞分離器具200は、第1のポート206、第2のポート208、および空洞210を有する容器204を備える。細胞分離器具200は、空洞210を第1の区画212と第2の区画214に分割するために空洞210内に配置された多孔質メッシュ202をさらに備える。第1のポート206は空洞210の第1の区画212と連通している。さらに、その第1のポート206は多孔質メッシュ202の第一面216側に位置している。第2のポート208は空洞210の第2の区画214と連通している。さらに、その第2のポート208は多孔質メッシュ202の第二面218側に位置している。その上、第1のポート206は容器204の一方の端部220に位置しており、第2のポート208は容器204の反対の端部222に位置している。また、(1)第1のポート206が実質的に上向きに位置しており、第2のポート208が実質的に下向きに位置している場合(
図2Aに示されるように)、または(2)第1のポート206が実質的に下向きに位置し、第2のポート208が実質的に上向きに位置している場合、多孔質メッシュ202が空洞210内で傾斜した向きを有するように、第1のポート206および第2のポート208は容器204上で互いに一列に並んでいる。この例示の実施の形態において、細胞分離器具200は、第1のポート206および第2のポート208を除いて、細胞分離器具200の大部分を取り囲む筐体(図示せず)も有していて差し支えない(細胞分離器具200に使用できるであろう例示の筐体130について、
図1Aを参照のこと)。使用される場合、その筐体は、細胞分離器具200(可撓性容器204を有することがある)の回転を可能にし、一般に、細胞分離器具200の取扱いに役立つ。
【0021】
この例において、細胞分離器具200は、
図2C~2Dに関して次により詳しく論じられるように、バイオリアクター、真空ポンプなどの外部装置に直接接続できるので、閉鎖系細胞分離器具200であるように構成されている。この構成において、細胞分離器具200は、第1のポート206に取り付けられた第1の流量制御システム232、および第2のポート208に取り付けられた第2の流量制御システム234を有する。この例において、第1の流量制御システム232は、管を通じて第1のポート206に接続された一方の端部およびY字管を通じて、(1)第1のクランプ238(またはバルブ)とベント・フィルタ240、および(2)多目的コネクタ244(または無菌コネクタ244)に接続された別の端部を有するバルブ236を有する。第2の流量制御システム234は、管を通じて第2のポート208に接続された一方の端部およびY字管を通じて、(1)第2のクランプ248(またはバルブ)とベント・フィルタ250、および(2)多目的コネクタ252(または無菌コネクタ252)に接続された別の端部を有するバルブ246を有する。ベント・フィルタ240および250は、空気が細胞分離器具200から抜けられるように開くことができる。
【0022】
外部装置との閉鎖系細胞分離器具200(筐体なし)の例示の統合が、
図2C~2Dに示されている。
図2Cにおいて、そのプロセスの開始時の細胞分離器具200は、スフェロイド灌流バイオリアクター260の出力口と直列に接続されている。スフェロイド灌流バイオリアクター260は、酸素供給器262の出力口に接続された入力口を有する。酸素供給器262は、ポンプ264の出力口に接続された入力口を有する。ポンプ264は、新鮮な液体(例えば、新鮮な細胞培養培地)を受け入れる入力口を有する。制御装置265、およびスフェロイド灌流バイオリアクター260の出力口とポンプ264の入力口に接続された廃液送り管およびバルブの網目構造266もある。この例示の設定において、細胞分離器具200は、スフェロイドがスフェロイド灌流バイオリアクター260から取り出され、細胞分離器具200内に収集されるまで、スフェロイド灌流バイオリアクター260と直列のままである。スフェロイドが細胞分離器具200内に収集された後、細胞分離器具200は、スフェロイド灌流バイオリアクター260から外され、
図2Dに示されるような、細胞解離試薬容器270、洗浄液容器272(例えば、PBS容器272)、廃液容器274および細胞収集容器276に接続される。
【0023】
この時点で、細胞分離器具200を使用して、以下の例示の工程を行うことによって、中にあるスフェロイドから細胞を得ることができる:
1)多孔質メッシュ202がほぼ水平の向きにあるように細胞分離器具200を配置する。
図2に示されたクランプおよびバルブの全てが閉じられているものとする。
2)PBS容器272から細胞分離器具200へのクランプ267およびバルブ236を開く。それに加え、細胞分離器具200に関連するクランプ238およびベント・フィルタ240を開く。PBSが重力によって細胞分離器具200中に流入し、細胞分離器具200中のどの空気も、ベント・フィルタ240を通って外に出る。
3)要求されるような多くのPBSが細胞分離器具200に入った後、PBS管のクランプ267およびバルブ236を閉じる。
4)細胞分離器具200を左右に傾けて、収集したPBS中でスフェロイドを洗浄する。
5)細胞分離器具200から廃液容器274へのバルブ246およびクランプ269と271を開く。それに加え、廃液容器274のクランプ273(もしあれば)およびベント・フィルタ275(もしあれば)を開く。
6)多孔質メッシュ202が実質的に垂直向きになり、PBSが重力によって廃液容器274に流れ出るように、細胞分離器具200を位置付ける。
7)廃液容器274へのクランプ271を閉じ。細胞分離器具200に関連するバルブ246を閉じる。細胞解離試薬容器270から細胞分離器具200への管路にあるクランプ277およびバルブ236を開く。細胞解離試薬が重力によって細胞分離器具200中に流れ込む。
8)多孔質メッシュ202が水平であるような面に、細胞分離器具200を位置付ける。細胞がスフェロイドから解離できるように、細胞分離器具200を穏やかに揺り動かす。
9)細胞が一旦解離したら、多孔質メッシュ202が実質的に垂直向きになるように、細胞分離器具200を垂直に向ける。
10)細胞収集容器276へのバルブ246およびクランプ269と279を開く。それに加え、細胞収集容器276に取り付けられたベント・フィルタ283(もしあれば)へのクランプ281(もしあれば)を開く。解離した細胞は、重力により細胞収集容器276中に流れ込む。
【0024】
廃液容器274および細胞収集容器276が袋である場合、ひいては、最初に使用する際に袋内には空気が存在しないので、ベント・フィルタ275および283は不要であることに留意のこと。対照的に、規定の形状を有する硬質側面の廃液容器274および硬質側面の細胞収集容器276には、ベント275および283が使用されるであろう。何故ならば、それらの容器274および276中に空気が存在し、流体が硬質側面の廃液容器274および硬質側面の細胞収集容器276中に流入するために、空気が抜ける必要があるからである。
【0025】
第1の流量制御システム232および第2の流量制御システム234をキャップと交換する場合、細胞分離器具200は、開放系の細胞分離器具200であるように構成しても差し支えないことを認識すべきである。同様に、細胞分離器具100は、キャップ124および126を第1の流量制御システムおよび第2の流量制御システムと交換すれば、閉鎖系の細胞分離器具100であるように構成できるであろう。このことは、ここに記載された細胞分離器具の全てに当てはまる。
【0026】
図3Aを参照すると、本開示の実施の形態にしたがって構成された細胞分離器具300の正面図がある。この実施の形態において、細胞分離器具300は、第1のポート306、第2のポート308、および空洞310を有する容器304を備える。その細胞分離器具300は、その空洞310を第1の区画312と第2の区画314に分割するために空洞310内に配置された多孔質メッシュ302をさらに備える。その第1のポート306は空洞310の第1の区画312と連通している。さらに、その第1のポート306は多孔質メッシュ302の第一面316側に位置している。第2のポート308は空洞310の第2の区画314と連通している。さらに、その第2のポート308は多孔質メッシュ302の第二面318側に位置している。その上、第1のポート306は容器304の一方の端部320に位置しており、第2のポート308は容器304の反対の端部322に位置している。また、(1)第1のポート306が実質的に上向きに位置しており、第2のポート308が実質的に下向きに位置している場合(
図3Aに示されるように)、または(2)第1のポート306が実質的に下向きに位置し、第2のポート308が実質的に上向きに位置している場合、多孔質メッシュ302が空洞310内で傾斜した向きを有するように、第1のポート306および第2のポート308は容器304上で互いに一列に並んでいる。この例示の実施の形態において、細胞分離器具300は、第1のポート306および第2のポート308を除いて、細胞分離器具300の大部分を取り囲む筐体(図示せず)も有していて差し支えない(細胞分離器具300に使用できるであろう例示の筐体130について、
図1Aを参照のこと)。使用される場合、その筐体は、細胞分離器具300(可撓性容器304を有することがある)の回転を可能にし、一般に、細胞分離器具300の取扱いに役立つ。
【0027】
この例において、細胞分離器具300は、バイオリアクター、真空ポンプなどの外部装置に直接的に接続されていないので、開放系細胞分離器具300であるように構成されている。この構成において、細胞分離器具300は、第1のポート306に取り付けられる第1のキャップ324を有する(すなわち、第1のキャップ324は、第1のポート306に締め付けたり、第1のポート306から取り外したりすることができる)。さらに、細胞分離器具300は、第2のポート308に取り付けられる第2のキャップ326を有する(すなわち、第2のキャップ326は、第2のポート308に締め付けたり、第2のポート308から取り外したりすることができる)。
【0028】
以下は、細胞分離器具300をどのように使用して、マイクロキャリアから細胞を得ることができるかについての説明である。この例示のプロセス中、細胞の汚染を避けるために、細胞分離器具300は、安全キャビネット内に置き、その中で操作すべきである。マイクロキャリアから細胞を得るために細胞分離器具300を配置する位置が2つある。位置1において、細胞分離器具300は、キャップ324/第1のポート306を上向きにし、キャップ326/第2のポート308を下向きにして、垂直の向きにある(
図3B参照)。位置2において、細胞分離器具300は、キャップ324/第1のポート306を右向きにし、キャップ326/第2のポート308を左向きにして、水平の向きにある(
図3C参照)。以下の工程を行うことができる:
1)細胞分離器具300が位置1にある状態で、キャップ324および326を取り外す。
2)細胞分離器具300の第2のポート308を含む下端を空の廃液収集容器中に入れる。
3)培養容器からの細胞で覆われたマイクロキャリアおよび培地を細胞分離器具300の第1のポート306に注ぎ入れる。培地は細胞分離器具300内の多孔質メッシュ302を通り第2のポート308から廃液収集容器中に流れ込むが、細胞で覆われたマイクロキャリアは、細胞分離器具300内の多孔質メッシュ302により保持される(保持されたマイクロキャリアは、画像において斜線の三角形303により示されている)。
4)廃液収集容器から細胞分離器具300を持ち上げ、細胞分離器具300を位置2(水平の向き)に置く。
5)多量の洗浄液(例えば、PBS)を加え、細胞分離器具300をわずかに左右に揺り動かすことにより、細胞で覆われたマイクロキャリアを洗浄する。
6)廃液収集容器上に細胞分離器具300を保持し、細胞分離器具300を位置1に保持することによって、PBS洗浄液をそこから出す。所望であれば、洗浄工程4~6を繰り返す。
7)細胞分離器具300を位置2に置き、細胞分離器具300の第1のポート306中に細胞解離試薬を加える。細胞をマイクロキャリアから解離させるのに必要なインキュベーション期間中、細胞分離器具300を時折左右に穏やかに揺り動かす。
8)細胞がマイクロキャリアから解離した後、細胞収集容器上で細胞分離器具300を位置1に置くことにより、細胞および解離試薬(例えば、トリプシン)を収集する。
9)細胞分離器具300を位置2に置く。多量の細胞収集溶液(例えば、新たな培地)を細胞分離器具300に加え、細胞分離器具300を左右に穏やかに揺り動かして、残留する細胞をマイクロキャリアから洗い落とす。
10)細胞分離器具300を位置1に置くことによって、細胞収集容器内の細胞に細胞収集溶液を加える。マイクロキャリアは細胞分離器具300内に残され、細胞は細胞収集容器中にある。
【0029】
以下は、細胞分離器具300をどのように使用して、細胞-スフェロイドから細胞を得ることができるかについての説明である。この例示のプロセス中、細胞の汚染を避けるために、細胞分離器具300は、安全キャビネット内に置き、その中で操作すべきである。細胞-スフェロイドから細胞を取り去るために細胞分離器具300を配置する位置が2つある。位置1において、細胞分離器具300は、キャップ324/第1のポート306を上向きにし、キャップ326/第2のポート308を下向きにして、垂直の向きにある(
図3B参照)。位置2において、細胞分離器具300は、キャップ324/第1のポート306を右向きにし、キャップ326/第2のポート308を左向きにして、水平の向きにある(
図3C参照)。以下の工程を行うことができる:
1)細胞分離器具300が位置1にある状態で、キャップ324および326を取り外す。
2)細胞分離器具300の第2のポート308を含む下端を空の廃液収集容器中に入れる。
3)培養容器からの細胞-スフェロイドおよび培地を細胞分離器具300の第1のポート306に注ぎ入れる。培地は細胞分離器具300の多孔質メッシュ302を通り第2のポート308から廃液収集容器中に流れ込むが、細胞-スフェロイドは、細胞分離器具300内に保持される(保持されたスフェロイドは、画像において斜線の三角形303により示されている)。
4)廃液収集容器から細胞分離器具300を持ち上げ、細胞分離器具300を位置2(水平の向き)に置く。
5)多量の洗浄液(例えば、PBS)を加え、細胞分離器具300をわずかに左右に揺り動かすことにより、細胞-スフェロイドを洗浄する。
6)廃液収集容器上で細胞分離器具300を位置1に保持し、PBS洗浄液を細胞分離器具300から出す。所望であれば、洗浄工程4~6を繰り返す。
7)細胞分離器具300を位置2に置き、第1のポート306を通して細胞分離器具300中に細胞解離試薬(例えば、トリプシン)を加える。単細胞をスフェロイドから解離させるのに必要なインキュベーション期間中、細胞分離器具300を時折左右に穏やかに揺り動かす。細胞分離器具300をインキュベーター内に入れて、細胞をスフェロイドから完全に解離させる必要があることがある。そうであれば、細胞分離器具300を安全キャビネットから移す前に、細胞分離器具300に再びキャップをする。
8)細胞が単細胞懸濁液を形成した後、細胞収集容器上で細胞分離器具300を、特に第2のポート308を位置1に置くことにより、細胞および解離試薬を収集する。細胞分離器具300は、この工程後に細胞を持っていないはずである。
【0030】
図4Aを参照すると、本開示の実施の形態により構成された、細胞分離器具400の正面図が示されている。図のように、細胞分離器具400は、第1のポート406、第2のポート408、および空洞410を有する容器404を備える。細胞分離器具400は、空洞410を第1の区画412と第2の区画414に分割するように空洞410内に配置された多孔質メッシュ402をさらに備える。第1のポート406は空洞410の第1の区画412と連通している。さらに、その第1のポート406は多孔質メッシュ402の第一面416側に位置している。第2のポート408は空洞410の第2の区画414と連通している。さらに、その第2のポート408は多孔質メッシュ402の第二面418側に位置している。その上、第1のポート406は容器404の一方の端部420に位置しており、第2のポート408は容器404の反対の端部422に位置している。また、(1)第1のポート406が実質的に上向きに位置しており、第2のポート408が実質的に下向きに位置している場合(
図4Aに示されるように)、または(2)第1のポート406が実質的に下向きに位置し、第2のポート408が実質的に上向きに位置している場合、多孔質メッシュ402が空洞410内で実質的に垂直の向きを有するように、第1のポート406および第2のポート408は容器404上で互いからずれている。この例示の実施の形態において、細胞分離器具400は、第1のポート406および第2のポート408を除いて、細胞分離器具400の大部分を取り囲む筐体(図示せず)も有していて差し支えない(細胞分離器具400に使用できるであろう例示の筐体130について、
図1Aを参照のこと)。使用される場合、その筐体は、細胞分離器具400(可撓性容器404を有することがある)の回転を可能にし、一般に、細胞分離器具400の取扱いに役立つ。
【0031】
この例において、細胞分離器具400は、バイオリアクター、真空ポンプなどの外部装置に直接的に接続されていないので、開放系細胞分離器具400であるように構成されている。この構成において、細胞分離器具400は、第1のポート406に取り付けられる第1のキャップ424を有する(すなわち、第1のキャップ424は、第1のポート406に締め付けたり、第1のポート406から取り外したりすることができる)。さらに、細胞分離器具400は、第2のポート408に取り付けられる第2のキャップ426を有する(すなわち、第2のキャップ426は、第2のポート408に締め付けたり、第2のポート408から取り外したりすることができる)。
【0032】
以下は、細胞分離器具400をどのように使用して、マイクロキャリアから細胞を得ることができるかについての説明である。この例示のプロセス中、細胞の汚染を避けるために、細胞分離器具400は、安全キャビネット内に置き、その中で操作すべきである。マイクロキャリアから細胞を取り去るために細胞分離器具400を配置する位置が2つある。位置1において、細胞分離器具400は、キャップ424/第1のポート406を上向きにし、キャップ426/第2のポート408を下向きにして、垂直の向きにある(
図4B参照)。位置2において、細胞分離器具400は、キャップ424/第1のポート406を右向きにし、キャップ426/第2のポート408を左向きにして、水平の向きにある(
図4C参照)。以下の工程を行うことができる:
1)細胞分離器具400が位置1にある状態で、キャップ424および426を取り外す。
2)細胞分離器具400の第2のポート408を含む下端を空の廃液収集容器中に入れる。
3)培養容器からの細胞で覆われたマイクロキャリアおよび培地を細胞分離器具400の第1のポート406に注ぎ入れる。培地は細胞分離器具400内の多孔質メッシュ402を通り第2のポート408から廃液収集容器中に流れ込むが、細胞で覆われたマイクロキャリアは、細胞分離器具400内の多孔質メッシュ402により保持される(保持されたマイクロキャリアは、画像において斜線の三角形403により示されている)。
4)廃液収集容器から細胞分離器具400を持ち上げ、細胞分離器具400を位置2(水平の向き)に置く。
5)多量の洗浄液(例えば、PBS)を加え、細胞分離器具400をわずかに左右に揺り動かすことにより、細胞で覆われたマイクロキャリアを洗浄する。
6)廃液収集容器上に細胞分離器具400を保持し、細胞分離器具400を位置1に保持することによって、PBS洗浄液をそこから出す。所望であれば、洗浄工程4~6を繰り返す。
7)細胞分離器具400を位置2に置き、細胞分離器具400の第1のポート406中に細胞解離試薬(例えば、トリプシン)を加える。細胞をマイクロキャリアから解離させるのに必要なインキュベーション期間中、細胞分離器具400を時折左右に穏やかに揺り動かす。
8)細胞がマイクロキャリアから解離した後、無菌容器上で細胞分離器具400を位置1に置くことにより、細胞および細胞解離試薬を収集する。
9)細胞分離器具400を位置2に置く。多量の細胞収集溶液(例えば、新たな培地)を細胞分離器具400に加え、細胞分離器具400を左右に穏やかに揺り動かして、残留する細胞をマイクロキャリアから洗い落とす。
10)細胞分離器具400を位置1に置くことによって、細胞収集容器内の細胞に細胞収集溶液を加える。マイクロキャリアは細胞分離器具400内に残され、細胞は細胞収集容器中にある。
【0033】
以下は、細胞分離器具400をどのように使用して、細胞-スフェロイドから細胞を得ることができるかについての説明である。この例示のプロセス中、細胞の汚染を避けるために、細胞分離器具400は、安全キャビネット内に置き、その中で操作すべきである。細胞-スフェロイドから細胞を取り去るために細胞分離器具400を配置する位置が2つある。位置1において、細胞分離器具400は、キャップ424/第1のポート406を上向きにし、キャップ426/第2のポート408を下向きにして、垂直の向きにある(
図4B参照)。位置2において、細胞分離器具400は、キャップ424/第1のポート406を右向きにし、キャップ426/第2のポート408を左向きにして、水平の向きにある(
図4C参照)。以下の工程を行うことができる:
1)細胞分離器具400が位置1にある状態で、キャップ424および426を取り外す。
2)細胞分離器具400の第2のポート408を含む下端を空の廃液収集容器中に入れる。
3)培養容器からの細胞-スフェロイドおよび培地を細胞分離器具400の第1のポート406に注ぎ入れる。培地は細胞分離器具400の多孔質メッシュ402を通り第2のポート408から廃液収集容器中に流れ込むが、細胞-スフェロイドは、細胞分離器具400内に保持される(保持されたスフェロイドは、画像において斜線の三角形403により示されている)。
4)廃液収集容器から細胞分離器具400を持ち上げ、細胞分離器具400を位置2(水平の向き)に置く。
5)多量の洗浄液(例えば、PBS)を加え、細胞分離器具400をわずかに左右に揺り動かすことにより、細胞-スフェロイドを洗浄する。
6)廃液収集容器上で細胞分離器具400を位置1に保持し、PBS洗浄液を細胞分離器具400から出す。所望であれば、洗浄工程4~6を繰り返す。
7)細胞分離器具400を位置2に置き、第1のポート406を通して細胞分離器具400中に細胞解離試薬(例えば、トリプシン)を加える。単細胞をスフェロイドから解離させるのに必要なインキュベーション期間中、細胞分離器具400を時折左右に穏やかに揺り動かす。細胞分離器具400をインキュベーター内に入れて、細胞をスフェロイドから完全に解離させる必要があることがある。そうであれば、細胞分離器具400を安全キャビネットから移す前に、細胞分離器具400に再びキャップをする。
8)細胞が単細胞懸濁液を形成した後、無菌細胞収集容器上で細胞分離器具400を、特に第2のポート408を位置1に置くことにより、細胞および細胞解離試薬を収集する。細胞分離器具400は、この工程後に細胞を持っていないはずである。
【0034】
図5Aを参照すると、本開示の実施の形態により構成された、細胞分離器具500の正面図が示されている。図のように、細胞分離器具500は、第1のポート506、第2のポート508、および空洞510を有する容器504を備える。細胞分離器具500は、空洞510を第1の区画512と第2の区画514に分割するように空洞510内に配置された多孔質メッシュ502をさらに備える。第1のポート506は空洞510の第1の区画512と連通している。さらに、その第1のポート506は多孔質メッシュ502の第一面516側に位置している。第2のポート508は空洞510の第2の区画514と連通している。さらに、その第2のポート508は多孔質メッシュ502の第二面518側に位置している。その上、(1)第1のポート506および第2のポート508が実質的に上向きに位置している場合(
図5Aに示されるように)、または(2)第1のポート506および第2のポート508が実質的に下向きに位置している場合(図示せず)、多孔質メッシュ502が空洞510内で実質的に垂直の向きを有するように、第1のポート506および第2のポート508の両方とも容器504の一方の側520に位置している。この例示の実施の形態において、細胞分離器具500は、第1のポート506および第2のポート508を除いて、細胞分離器具500の大部分を取り囲む筐体(図示せず)も有していて差し支えない。使用される場合、その筐体は、細胞分離器具500(可撓性容器504を有することがある)の回転を可能にし、一般に、細胞分離器具500の取扱いに役立つ。
【0035】
この例において、細胞分離器具500は、バイオリアクター、真空ポンプなどの外部装置に直接的に接続されていないので、開放系細胞分離器具500であるように構成されている。この構成において、細胞分離器具500は、第1のポート506に取り付けられる第1のキャップ524を有する(すなわち、第1のキャップ524は、第1のポート506に締め付けたり、第1のポート506から取り外したりすることができる)。さらに、細胞分離器具500は、第2のポート508に取り付けられる第2のキャップ526を有する(すなわち、第2のキャップ526は、第2のポート508に締め付けたり、第2のポート508から取り外したりすることができる)。
【0036】
以下は、細胞分離器具500をどのように使用して、マイクロキャリアから細胞を得ることができるかについての説明である。この例示のプロセス中、細胞の汚染を避けるために、細胞分離器具500は、安全キャビネット内に置き、その中で操作すべきである。マイクロキャリアから細胞を取り去るために細胞分離器具500を配置する位置が3つある。位置1において、細胞分離器具500は、キャップ524/第1のポート506が左手にあり、他方のキャップ526/第2のポート508が直立状態にあるように位置付けられている(
図5B参照)。位置2において、細胞分離器具500のキャップ524と526/ポート506と508は、角度が付けられて直立状態にある(
図5C参照)。位置3において、キャップ526/第2のポート508が右手にあり、他方のキャップ524/第1のポート506が直立状態にある(
図5D参照)。以下の工程を行うことができる:
1)細胞分離器具500が位置2にある状態で、キャップ524および526を取り外す。
2)培養容器からの細胞で覆われたマイクロキャリアおよび培地を細胞分離器具500の第1のポート506に注ぎ入れる。
3)右手に廃液収集容器を配置し、細胞分離器具500を位置3に傾けて、細胞分離器具500の第2のポート508から廃液培地を廃液収集容器中に取り出して空にする。培地は細胞分離器具500の多孔質メッシュ502を通り第2のポート508を通じて廃液収集容器中に流れ込むが、細胞で覆われたマイクロキャリアは、細胞分離器具500内に保持される(保持された細胞で覆われたマイクロキャリアは、画像において斜線の三角形503により示されている)。
4)再び細胞分離器具500を位置2に傾け、第1のポート506中に多量の洗浄液(例えば、PBS)を加える。
5)細胞分離器具500をわずかに左右に揺り動かすことにより、細胞で覆われたマイクロキャリアを洗浄する。
6)廃液収集容器上で細胞分離器具500を位置3に保持し、細胞分離器具500の第2のポート508からPBS洗浄液を排出する。所望であれば、洗浄工程4~6を繰り返す。
7)細胞分離器具500を位置1に置き、第1のポート506を通して細胞分離器具500中に細胞解離試薬(例えば、トリプシン)を加える。細胞をマイクロキャリアから解離させるのに必要なインキュベーション期間中、細胞分離器具500を時折左右に傾ける。細胞分離器具500をインキュベーター内に入れて、細胞を完全に解離させる必要があることがある。そうであれば、細胞分離器具500を安全キャビネットから移す前に、細胞分離器具500に再びキャップをし、インキュベーション中にそれを位置1に配置する。
8)全ての細胞がマイクロキャリアから解離した後、無菌細胞収集容器上で細胞分離器具500の第2のポート508を位置3に置くことにより、細胞および細胞解離試薬を収集する。
9)細胞分離器具500を位置2に置く。多量の細胞収集溶液(例えば、新たな培地)を細胞分離器具500に加え、細胞分離器具500を左右に穏やかに揺り動かして、残留する細胞をマイクロキャリアから洗い落とす。
10)細胞分離器具500を位置3に置くことによって、無菌細胞収集容器内の細胞に細胞収集溶液を加える。マイクロキャリアは細胞分離器具500内に残され、細胞は無菌細胞収集容器中にある。
【0037】
以下は、細胞分離器具500をどのように使用して、細胞-スフェロイドから細胞を得ることができるかについての説明である。この例示のプロセス中、細胞の汚染を避けるために、細胞分離器具500は、安全キャビネット内に置き、その中で操作すべきである。細胞-スフェロイドから細胞を取り去るために細胞分離器具500を配置する位置が3つある。位置1において、細胞分離器具500は、キャップ524/第1のポート506が左手にあり、他方のキャップ526/第2のポート508が直立状態にあるように位置付けられている(
図5B参照)。位置2において、細胞分離器具500のキャップ524と526(ポート506と508)は、角度が付けられて直立状態にある(
図5C参照)。位置3において、キャップ526/第2のポート508が右手にあり、他方のキャップ524/第1のポート506が直立状態にある(
図5D参照)。以下の工程を行うことができる:
1)細胞分離器具500が位置2にある状態で、キャップ524および526を取り外す。
2)培養容器からの細胞-スフェロイドおよび培地を細胞分離器具500の第1のポート506に注ぎ入れる。
3)右手に廃液収集容器を配置し、細胞分離器具500を位置3に傾けて、細胞分離器具500の多孔質メッシュ502および第2のポート508を通過した廃液培地を廃液収集容器中に取り出して空にする。培地は細胞分離器具500を通り廃液収集容器中に流れ込むが、細胞-スフェロイドは、細胞分離器具500内に保持される(保持されたスフェロイドは、画像において斜線の三角形503により示されている)。
4)再び細胞分離器具500を位置2に傾け、第1のポート506中に多量の洗浄液(例えば、PBS)を加える。
5)細胞分離器具500をわずかに左右に揺り動かすことにより、細胞-スフェロイドを洗浄する。
6)廃液収集容器上で細胞分離器具500を位置3に保持し、第2のポート508を通じて細胞分離器具500からPBS洗浄液を排出する。所望であれば、洗浄工程4~6を繰り返す。
7)細胞分離器具500を位置1に置き、細胞分離器具500の第1のポート506に細胞解離試薬(例えば、トリプシン)を加える。単細胞をスフェロイドから解離させるのに必要なインキュベーション期間中、細胞分離器具500を時折左右に傾ける。細胞分離器具500をインキュベーター内に入れて、細胞を完全に解離させる必要があることがある。そうであれば、細胞分離器具500を安全キャビネットから移す前に、細胞分離器具500に再びキャップをし、それを位置1に配置する。
8)細胞が単細胞懸濁液を形成した後、無菌細胞収集容器上で細胞分離器具500の第2のポート508を位置3に置くことにより、細胞および細胞解離試薬を収集する。細胞分離器具500は、この工程後に細胞を持っていないはずである。
【0038】
図6Aを参照すると、本開示の実施の形態により構成された細胞分離器具600の正面図が示されている。この実施の形態において、細胞分離器具600は、第1のポート606、第2のポート608、および空洞610を有する容器604を備える。細胞分離器具600は、空洞610を第1の区画612と第2の区画614に分割するために空洞610内に配置された多孔質メッシュ602をさらに備える。第1のポート606は空洞610の第1の区画612と連通している。さらに、その第1のポート606は多孔質メッシュ602の第一面616側に位置している。第2のポート608は空洞610の第2の区画614と連通している。さらに、その第2のポート608は多孔質メッシュ602の第二面618側に位置している。その上、第1のポート606は容器604の一方の端部620に位置しており、第2のポート608は容器604の反対の端部622に位置している。また、(1)第1のポート606が実質的に上向きに位置しており、第2のポート608が実質的に下向きに位置している場合(
図6Aに示されるように)、または(2)第1のポート606が実質的に下向きに位置し、第2のポート608が実質的に上向きに位置している場合、多孔質メッシュ602が空洞610内で傾斜した向きを有するように、第1のポート606および第2のポート608は容器604上で互いに一列に並んでいる。細胞分離器具600は、細胞分離器具600の取扱いに役立つように容器604に形成された開口611aおよび611bを有する。この例示の実施の形態において、細胞分離器具600は、第1のポート606および第2のポート608を除いて、細胞分離器具600の大部分を取り囲む筐体(図示せず)も有していて差し支えない(細胞分離器具600に使用できるであろう例示の筐体130について、
図1Aを参照のこと)。使用される場合、その筐体は、細胞分離器具600(可撓性容器604を有することがある)の回転を可能にし、一般に、細胞分離器具600の取扱いに役立つ。
【0039】
この例において、細胞分離器具600は、
図6Bに関して次により詳しく論じられるように、バイオリアクター、真空ポンプなどの外部装置に直接接続できるので、閉鎖系細胞分離器具600であるように構成されている。図示された例示の構成において、細胞分離器具600は、第1のポート606に取り付けられる第1のキャップ624を有する(すなわち、第1のキャップ624は、第1のポート606に締め付けたり、第1のポート606から取り外したりすることができる)。さらに、細胞分離器具600は、第2のポート608に取り付けられる第2のキャップ626を有する(すなわち、第2のキャップ626は、第2のポート608に締め付けたり、第2のポート608から取り外したりすることができる)。図示された例において、第1のキャップ624は、(1)それに接続されたクランプ636および別の端部に取り付けられたベント・フィルタ640を有する第1の管631および(2)それに接続されたクランプ638および例えば、
図6Bに示されるように、外部装置に接続された別の端部を有する第2の管633を受け入れるように構成されている。同様に、第2のキャップ626は、(1)それに接続されたクランプ644および例えば、
図6Bに示されるように外部装置に接続された別の端部を有する第1の管635、および(2)それに接続されたクランプ646および例えば、
図6Bに示されるように外部装置に接続された別の端部を有する第2の管637を受け入れるように構成されている。
【0040】
外部装置との閉鎖系細胞分離器具600(筐体なし)の例示の統合が、
図6Bに示されている。
図6Bに示されるように、細胞分離器具600は、管およびクランプの網目構造を介して、細胞解離試薬容器670、洗浄液容器672(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)容器672)、廃液容器674、細胞収集容器676、スピナーフラスコ678(液体中の細胞で覆われたマイクロキャリアを収容する)、および加圧ポンプ680に接続されている。細胞分離器具600は、以下の工程を行うことによって、マイクロキャリアから細胞を得るために使用することができる:
1)細胞をスピナーフラスコ678内のマイクロキャリア上で増殖させ、下記に述べられているように、そのマイクロキャリアから解離させ、収集する必要がある。
2)加圧ポンプ680にある管クランプ601、並びにスピナーフラスコ678から細胞分離器具600を通して廃液容器674までの管クランプ603、644、および638を開く。他のクランプは全て、閉じたまま、すなわち閉じられている。
3)加圧ポンプ680を作動させる。細胞、マイクロキャリア、および培地は、浸漬管639を上昇させられ、スピナーフラスコ678から細胞分離器具600へと流れ、そこで、培地が廃液容器674へと流れている間、細胞分離器具600のメッシュが、細胞で覆われたマイクロキャリアを止める。廃液容器674は、この時には開いており、管を通じてベント・フィルタ613に接続されているクランプ611を有することがある。
4)加圧ポンプ680を停止させ、スピナーフラスコ678に付随するベント・フィルタ617へのクランプ615を開き、また、PBS容器672からスピナーフラスコ678への流体管路に沿った管クランプ603および619を開く。他のクランプは閉じている。PBSは、管を通って重力によりスピナーフラスコ678に流れ込む。
5)スピナーフラスコ678を旋回させて、どのような残留する細胞で覆われたマイクロキャリアも再懸濁させる。
6)ベント・フィルタ613および617のクランプ611、615を閉じ、スピナーフラスコ678から細胞分離器具600への管路のためにクランプ603および638を開く。他のクランプは閉じている。
7)クランプ601を開き、加圧ポンプ680を作動させて、スピナーフラスコ678から細胞分離器具600への流れを開始させる。PBSおよび細胞で覆われたマイクロキャリアは、スピナーフラスコ678から細胞分離器具600へと流れる。
8)加圧ポンプ680を停止させ、細胞分離器具600上のベント・フィルタ640へのクランプ636を開く。キャップ624および626が水平であるように細胞分離器具600を位置付け、細胞分離器具600を左右に傾けて、収集されたPBS中のマイクロキャリアを洗浄する。
9)廃液容器674へのクランプ644を開き、キャップ624が上であり、キャップ626が下であるように細胞分離器具600を垂直に位置付け、PBSを廃液容器674へと排出させる(重力により)。
10)クランプ603、644、および619を閉じ、細胞解離試薬容器670から細胞分離器具600への管路にあるクランプ621および638を開く。細胞解離試薬は、重力によって細胞分離器具600に流れ込む。ベントクランプ636を閉じる。
11)キャップ624および626が水平であるような面に細胞分離器具600を位置付ける。細胞がマイクロキャリアから解離できるように、細胞分離器具600を穏やかに揺り動かす。
12)キャップ624が上であり、キャップ626が下であるように細胞分離器具600を垂直に向ける。ベント・フィルタ625へのクランプ623および細胞収集容器676へのクランプ646を開く。解離した細胞は、重力によって、細胞収集容器676に流れ、マイクロキャリアを細胞分離器具600中に残す。
【0041】
図7Aを参照すると、本開示の実施の形態により構成された細胞分離器具700の正面図が示されている。この実施の形態において、細胞分離器具700は、第1のポート706、第2のポート708、および空洞710を有する容器704を備える。細胞分離器具700は、空洞710を第1の区画712と第2の区画714に分割するために空洞710内に配置された多孔質メッシュ702をさらに備える。第1のポート706は空洞710の第1の区画712と連通している。さらに、その第1のポート706は多孔質メッシュ702の第一面716側に位置している。第2のポート708は空洞710の第2の区画714と連通している。さらに、その第2のポート708は多孔質メッシュ702の第二面718側に位置している。その上、第1のポート706は容器704の一方の端部720に位置しており、第2のポート708は容器704の反対の端部722に位置している。また、(1)第1のポート706が実質的に上向きに位置しており、第2のポート708が実質的に下向きに位置している場合(
図7Aに示されるように)、または(2)第1のポート706が実質的に下向きに位置し、第2のポート708が実質的に上向きに位置している場合、多孔質メッシュ702が空洞710内で傾斜した向きを有するように、第1のポート706および第2のポート708は容器704上で互いに一列に並んでいる。細胞分離器具700は、細胞分離器具700の取扱いに役立つように容器704に形成された開口711aおよび711bを有する。この例示の実施の形態において、細胞分離器具700は、第1のポート706および第2のポート708を除いて、細胞分離器具700の大部分を取り囲む筐体(図示せず)も有していて差し支えない(細胞分離器具700に使用できるであろう例示の筐体130について、
図1Aを参照のこと)。使用される場合、その筐体は、細胞分離器具700(可撓性容器704を有することがある)の回転を可能にし、一般に、細胞分離器具700の取扱いに役立つ。
【0042】
この例において、細胞分離器具700は、
図7Bに関して次により詳しく論じられるように、バイオリアクター、真空ポンプなどの外部装置に直接接続できるので、閉鎖系細胞分離器具700であるように構成されている。図示された例示の構成において、細胞分離器具700は、第1のポート706に取り付けられる第1のキャップ724を有する(すなわち、第1のキャップ724は、第1のポート706に締め付けたり、第1のポート706から取り外したりすることができる)。さらに、細胞分離器具700は、第2のポート708に取り付けられる第2のキャップ726を有する(すなわち、第2のキャップ726は、第2のポート708に締め付けたり、第2のポート708から取り外したりすることができる)。図示された例において、第1のキャップ724は、(1)それに接続されたクランプ736および別の端部に取り付けられたベント・フィルタ740を有する第1の管731および(2)それに接続されたクランプ738および例えば、
図7Bに示されるように、外部装置に接続された別の端部を有する第2の管733を受け入れるように構成されている。同様に、第2のキャップ726は、(1)それに接続されたクランプ744および例えば、
図7Bに示されるように外部装置に接続された別の端部を有する第1の管735、および(2)それに接続されたクランプ746および例えば、
図7Bに示されるように外部装置に接続された別の端部を有する第2の管737を受け入れるように構成されている。
【0043】
外部装置との閉鎖系細胞分離器具700(筐体なし)の例示の統合が、
図7Bに示されている。
図7Bに示されるように、細胞分離器具700は、管およびクランプの網目構造を介して、細胞解離試薬容器770、洗浄液容器772(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)容器772)、廃液容器774、細胞収集容器776、スピナーフラスコ778(液体中のスフェロイドを収容する)、および真空ポンプ780に接続されている。細胞分離器具700は、以下の工程を行うことによって、スフェロイドから細胞を得るために使用することができる:
1)スピナーフラスコ778から細胞分離器具700を通して廃液容器774までの流体管路にある管クランプ703、705、738および744を開く。他のクランプは全て、閉じている、すなわち閉じたままである。
2)クランプ746を開き、真空ポンプ780を作動させる。スフェロイドおよび培地は、浸漬管739に吸い上げられ、スピナーフラスコ778から細胞分離器具700へと流れ、そこで、培地が廃液容器774へと流れている間、多孔質メッシュ702がスフェロイドを止める。廃液容器774は、この時には開いており、管を通じてベント・フィルタ713に接続されているクランプ711を有することがある。
3)真空ポンプ780を停止させ、次に、スピナーフラスコ778に付随するベント・フィルタ717へのクランプ715を開き、また、PBS容器772からスピナーフラスコ778への流体管路に沿った管クランプ703および719を開く。他のクランプは閉じている。PBSは、管を通って重力によりスピナーフラスコ778に流れ込む。
4)スピナーフラスコ778を旋回させて、どのような残留するスフェロイドも再懸濁させる。
5)ベント・フィルタ713および717のクランプ711、715を閉じ、スピナーフラスコ778から細胞分離器具700への管路のためにクランプ703および738を開く。他のクランプは閉じている。
6)クランプ746を開き、真空ポンプ780を作動させて、スピナーフラスコ778から細胞分離器具700への流れを開始させる。PBSおよびスフェロイドは、スピナーフラスコ778から細胞分離器具700へと流れる。
7)真空ポンプ780を停止させ、細胞分離器具700上のベント・フィルタ740へのクランプ736を開く。キャップ724および726が水平であるように細胞分離器具700を位置付け、細胞分離器具700を左右に傾けて、収集されたPBS中のマイクロキャリアを洗浄する。
8)廃液容器774へのクランプ705および744を開き、キャップ724が上であり、キャップ726が下であるように細胞分離器具700を垂直に位置付け、PBSを廃液容器774へと排出させる(重力により)。
9)クランプ703、705、719および744を閉じ、細胞解離試薬容器770から細胞分離器具700への管路にあるクランプ721および738を開く。細胞解離試薬は、重力によって細胞分離器具700に流れ込む。ベントクランプ736を閉じる。
10)キャップ724および726が水平であるような面に細胞分離器具700を位置付ける。細胞がスフェロイドから解離できるように、細胞分離器具700を穏やかに揺り動かす。
11)キャップ724が上であり、キャップ726が下であるように細胞分離器具700を垂直に向ける。ベント・フィルタ725へのクランプ723および細胞収集容器776へのクランプ727を開く。解離した細胞は、重力によって、細胞分離器具700から細胞収集容器776に流れる。
【0044】
図6A~6Bおよび7A~7Bに関する説明に鑑みて、細胞を培養するために使用される容器、およびその系全体で流体を動かすために加圧または真空が好ましい方法であるか否かに応じて、「閉鎖系」細胞分離器具600および700に使用できる方法がいくつかあることを認識すべきである。上述した細胞分離器具100、200、300、400、500、600および700、またはその同等物のいずれも、液体中のマイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を分離するために「開放」系(例えば、
図3B~3C、4B~4Cおよび5B~5Dを参照のこと)または「閉鎖」系(例えば、
図2C~2D、6Bおよび7Bを参照のこと)のいずれかに使用するために構成できることも認識すべきである。上述した細胞分離器具100、200、300、400、500、600および700、またはその同等物のいずれも、
図8に関して下記に述べられるように、液体から細胞を分離するために使用できることも認識すべきである。
【0045】
図8を参照すると、細胞分離器具100、200、300、400、500、600および700を使用して、液体(例えば、細胞培養培地、緩衝食塩水)中のマイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を分離する方法800が示されている。工程802で、細胞分離器具100、200、300、400、500、600および700を提供する。工程804で、細胞分離器具100、200、300、400、500、600および700の空洞110、210、310、410、510、610および710の第1の区画112、212、312、412、512、612および712中に第1のポート106、206、306、406、506、606および706を通じて液体(マイクロキャリアまたはスフェロイドを含む)を導入する。工程806で、細胞分離器具100、200、300、400、500、600および700の第2のポート108、208、308、408、508、608および708から、傾斜したまたは垂直な多孔質メッシュ102、202、302、402、502、602および702を通過した液体を排出する。工程806の後、マイクロキャリアまたはスフェロイドは、垂直なまたは傾斜した多孔質メッシュ102、202、302、402、502、602および702のために、細胞分離器具100、200、300、400、500、600および700内に残っている。工程808で、垂直なまたは傾斜した多孔質メッシュ102、202、302、402、502、602および702を通過して、第2のポート108、208、308、408、508、608および708から出なかったマイクロキャリアまたはスフェロイドを処理して(例えば、洗浄工程および細胞塊離工程)、マイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を放出させる。工程810で、細胞分離器具100、200、300、400、500、600および700の第2のポート108、208、308、408、508、608および708から細胞を排出させる。新たな細胞分離器具100、200、300、400、500、600および700が使用される場合、マイクロキャリアまたはスフェロイドは、従来の細胞分離器具の水平の多孔質メッシュにおけるように、重力により垂直なまたは傾斜した多孔質メッシュ102、202、302、402、502、602および702内の細孔の大半をもはや塞がないので、垂直なまたは傾斜した多孔質メッシュ102、202、302、402、502、602および702を通る液体の流れは、従来の細胞分離器具におけるようには、もはや容易には塞がれないという点で、細胞分離器具100、200、300、400、500、600および700は、垂直なまたは傾斜した多孔質メッシュ102、202、302、402、502、602および702を有することによって、従来の細胞分離器具を上回って著しく改善されている。
【0046】
以下は、試作の「開放系」細胞分離器具300、400および500(
図3A、4Aおよび5A参照)および試作の「閉鎖系」細胞分離器具600(
図6A~6B参照)を使用して行った収穫実験についての議論である。以下の議論において、マイクロキャリアという用語はMCと省略され、ミリリットルはmLと省略され、遠心分離管はCTと省略されている。全ての実験は、安全キャビネット内で行った。細胞は、マイクロキャリアの全表面積の平方センチメートル当たり50,000細胞の初期密度で播種した。マイクロキャリアをCorning(登録商標)Spinner Flask内で培養した。対照方法(細胞分離器具を使用しない)、および試作の「開放系」細胞分離器具300、400および500の全てに関する収穫を評価するために1つのスピナーフラスコを使用した。培地中のマイクロキャリアをよく混合し、次いで、各細胞分離器具300、400および500の各々に使用するために、個々の遠心分離管中に計り取った。試作の「閉鎖系」細胞分離器具600に関する収穫を行うために、別のスピナーフラスコ培養を使用した。収穫する方法は、対照について、および試験した試作の細胞分離器具300、400、500および600の各々について、下記に記載されている。
【0047】
対照:対照の収穫には、分離器具を使用しない標準方法を利用した。工程1)50mLの培地中のMCをCTに加え、5分間に亘り静置して、MCを沈降させた。工程2)培地をMCから吸引して除いた。CTに10mLのPBS(洗浄液)を加え、MCを再懸濁させ、次いで、沈降させた。工程3)沈降したMCからPBSを吸引して除き、次いで、工程2に述べたように、もう一度PBS洗浄を行った。工程4)沈降したMCからPBSを吸引して除き、5mLのトリプシン(細胞解離試薬)を加え、MCを再懸濁させ、次いで、5分間に亘りインキュベーションした。沈降したMCからトリプシン/細胞溶液を吸引して除き、無菌CT内に入れた。工程5)工程2に述べたように、各回で5mLを使用して、さらに2回、PBS洗浄を行ったが、先に吸引した細胞とトリプシンを収容するCTに、吸引したPBSと細胞を加えた。工程6)トリプシンを不活性化させるために、ウシ胎児血清(FBS)を含む培地を使用して、MCの最後の洗浄を行った。これを細胞溶液試験管に加えて、20mLの総容積にした。MCからの細胞分離を行うのに要した総時間は、約40分であった。細胞を沈降させる代わりに、各操作後に、CTを遠心分離しても差し支えないが、それにより、分離を行うための総時間は減少しなかったであろう。
【0048】
試作の細胞分離器具300:工程1)キャップ324および326を細胞分離器具300から取り外し、第2のポート308(位置1-
図3B)を空の遠心分離管(廃液CT)に入れた。ストリペット(stripette)を使用して、MC含有遠心分離管から25mLのMCおよび培地を吸引した。この体積を第1のポート306を通じて、傾斜した多孔質メッシュ302が側壁に接触する、細胞分離器具300の角に分配した。培地は、細胞分離器具300を通って、それが配置された廃液CT中に流れ込み、MCを、それらが置かれた多孔質メッシュ302の隣の細胞分離器具300の角に残した。工程2)細胞分離器具300を廃液CTから持ち上げ、MCを収容する細胞分離器具300がその面上で静止する(位置2-
図3C)ように卓上に置いた。第1のポート306を通じて10mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加え、MCをPBS中に再懸濁させて、洗浄した。細胞分離器具300を廃液CT上で直立状態に(位置1)保持し、PBSを、多孔質メッシュ302を通して廃液CT中に流し込ませ、MCを残した。洗浄を繰り返した(工程2を繰り返す)。工程3)細胞分離器具300を再び、卓上にその面で置いた(位置2)。5mLのトリプシンを加え、MCを再懸濁させた。MCを有する細胞分離器具300を放置して、MCを再懸濁させるために定期的に撹拌しながら、5分間に亘りトリプシン中でインキュベーションさせた。5分間のインキュベーション後、第2のポート308を新たなCT中に置き、細胞分離器具300を直立(位置1)させることによって、トリプシンおよび細胞を多孔質メッシュ302に通して流した。工程4)その流体および細胞を細胞分離器具300からCT中に排出させた後、細胞分離器具300を持ち上げ、MCを有する側に置いた(位置2)。5mLのPBSを加え、MCを洗浄した。細胞を含有するCTにPBSを加えた。5mLのPBSを使用し、次いで、トリプシンを不活性化させるためにウシ胎児血清(FBS)を含有する5mLの培地を使用して、洗浄を繰り返した。これらの体積を両方とも、細胞含有CTに加えた(全細胞体積=20mL)。あるいは、トリプシンの代わりに、不活性化させる必要のない試薬(TrypLE(商標)など)を使用して、MCから細胞を取り去って、FBS含有培地の必要性をなくしても差し支えない。分離を行うのに要した総時間は約12分であった。
【0049】
試作の細胞分離器具400:工程1)キャップ424および426を細胞分離器具400から取り外した。細胞分離器具400をその面で卓上に置いた(位置2-
図4C)。流体が2つの区画412と414の間に位置する多孔質メッシュ402を通って自由に移動するように、細胞分離器具400を位置1(
図4B)に傾けながら、ストリペットを使用して、25mLの培地中のMCを、第1のポート406を通じて細胞分離器具400に入れた。培地を第2のポート408を通じて廃液容器へと吸引した。工程2)細胞分離器具400を位置1にした状態で、第1のポート406を通じて10mLのPBSを加え、細胞分離器具400を左右に傾けて流体を動かして、MCを洗浄し、次いで、位置2に傾けて、流体を多孔質メッシュ402に通して次の区画414に排出させた。流体を第2のポート408を通じて廃液容器へと吸引した。この洗浄を繰り返した。工程3)細胞分離器具400を位置1にした状態で、第1のポート406を通じて5mLのトリプシンを加え、MCを再懸濁させた。MCを再懸濁させるために定期的に撹拌しながら、MCを5分間に亘りトリプシン中でインキュベーションするように放置した。5分間のインキュベーション後、細胞分離器具400を傾け、トリプシンと細胞を、多孔質メッシュ402を通して次の区画414に流し込ませ、そこで、それらを、第2のポート408を通じた吸引により収集した。この細胞と流体を無菌CTに入れた。工程4)5mLのPBSを、位置1にある細胞分離器具400に加え、その器具を左右に傾けることによって、MCを洗浄した。細胞分離器具400を位置2に傾け、PBSと細胞を、多孔質メッシュを通して次の区画414に流れ込ませ、そこで、それらを、第2のポート408を通じた吸引により収集した。PBSと細胞を細胞含有CTに加えた。5mLのPBSを使用し、次いで、トリプシンを不活性化させるためにウシ胎児血清を含有する5mLの培地を使用して、先に述べたように洗浄を繰り返した。これらの体積を両方とも、細胞含有CTに加えた(全細胞体積=20mL)。分離を行うのに要した総時間は約12分であった。
【0050】
試作の細胞分離器具500:工程1)キャップ524および526を、位置2(
図5C)にある細胞分離器具500から取り外し、ストリペットを使用して、25mLの培地中のMCを、第1のポート506を通じて細胞分離器具500に入れた。流体が多孔質メッシュ502を通り第2の区画514に移動するように、細胞分離器具500を位置3(
図5D)に傾け、そこで、吸引して第2のポート508を通して廃棄することができる。工程2)追加の25mLの培地中のMCを、細胞分離器具500が位置2にある状態で、第1のポート506を通じて加え、次いで、流体を吸引して、第2のポート508を通して廃棄できるように、位置3に傾けた。工程3)細胞分離器具500を位置2にした状態で、10mLのPBSを、第1のポート506を通じて加え、細胞分離器具500を左右に傾けて、流体を動かして、MCを洗浄し、次いで、位置3に傾けて、流体を多孔質メッシュ502に通して、次の区画514へと吸引した。流体を第2のポート508を通じて、廃液容器へと吸引した。この洗浄を繰り返した。工程4)細胞分離器具500が位置2にある状態で、5mLのトリプシンを加えて、MCを再懸濁させ、次いで、MCを再懸濁させるために度々撹拌しながら、位置1において5分間インキュベーションした。インキュベーション後、細胞分離器具500を位置3に傾け、細胞と流体を、第2のポート508から吸引し、無菌CTに入れた。工程5)工程3に述べたように、3回のMC洗浄を行った;2回は、5mLのPBSを使用し、次いで、FBSを含有する5mLの培地で1回。全ての洗浄液と細胞を同じCTに収集した(全細胞体積=20mL)。分離を行うのに要した総時間は約15分であった。
【0051】
試作の細胞分離器具400(この実験は、試作の細胞分離器具400を使用した先の実験とは異なる):工程1)キャップ424および426を細胞分離器具400から取り外した。細胞分離器具400をその面で卓上に置いた(位置2-
図4C)。ストリペットを使用して、25mLの培地中のMCを、第1のポートを通じて細胞分離器具400の上部区画412に入れた。注射器を第2のポート408に適用するときに真空が生じるように、これによりエアロックを作り出し、よって、流体は、2つの区画412と414の間に位置する多孔質メッシュ402を通り、下側区画414中に自由に移動した。培地を第2のポート408を通じて廃液容器へと吸引した。工程2)細胞分離器具400を位置1(
図4B)にした状態で、第1のポート406を通じて10mLのPBSを加え、細胞分離器具400を左右に傾けて流体を動かして、MCを洗浄し、次いで、位置2に傾けて、流体を多孔質メッシュ402に通して次の区画414に排出させた。流体を第2のポート408を通じて廃液容器へと吸引した。この洗浄を繰り返した。工程3)細胞分離器具400を位置1にした状態で、第1のポート406を通じて5mLのトリプシンを加え、MCを再懸濁させた。MCを再懸濁させるために定期的に撹拌しながら、MCを5分間に亘りトリプシン中でインキュベーションするように放置した。5分間のインキュベーション後、細胞分離器具400を傾け、トリプシンと細胞を、多孔質メッシュ402を通して次の区画414に流し込ませ、そこで、それらを、第2のポート408を通じた吸引により収集した。この細胞と流体を無菌CTに入れた。工程4)5mLのPBSを、位置1にある細胞分離器具400に加え、細胞分離器具400を左右に傾けることによって、MCを洗浄した。細胞分離器具400を位置2に傾け、PBSと細胞を、多孔質メッシュ402を通して次の区画414に流れ込ませ、そこで、それらを、第2のポート408を通じた吸引により収集した。PBSと細胞を細胞含有CTに加えた。5mLのPBSを使用し、次いで、トリプシンを不活性化させるためにウシ胎児血清を含有する5mLの培地を使用して、先に述べたように洗浄を繰り返した。これらの体積を両方とも、細胞含有CTに加えた(全細胞体積=20mL)。分離を行うのに要した総時間は、形成したエアロックのために、約13分であった。
【0052】
試作の閉鎖系細胞分離器具600:工程1)細胞分離器具600を位置1(
図6Bに示されるような直立)にした状態で、クランプを開いて、スピナーフラスコ678から細胞分離器具600を通して廃液容器674へと流体を流した。他のクランプは閉じたままであった。MCと培地を、加圧によって、浸漬管に上昇させて、その系を通して細胞分離器具600の多孔質メッシュ602に流した。多孔質メッシュ602はMCを留まらせ、一方で、培地を廃液容器674へと流れた。工程2)ベントからクランプを外し、PBS容器672からスピナーフラスコ678への流体管路も同様にした。他のクランプを閉じた。PBSは、浸漬管を通じて、重力によりスピナーフラスコ678中に流れた。スピナーフラスコ678を旋回させて、残留するMCを再懸濁させた。クランプは、ベントのものを閉じ、スピナーフラスコ678から細胞分離器具600(今では、横向きの位置にある)への管路のものを開いた。再び加圧を開始して、PBS/MCをスピナーフラスコ678から細胞分離器具600に押し出した。PBSとMCが細胞分離器具600に進んだので、圧力をオフにした。ベントのクランプを開いた。細胞分離器具600を左右に傾けて、収集したPBS中のMCを洗浄した。工程2を繰り返して、MCの全てを捕捉し、濯いだ。細胞分離器具600を位置1(
図6Bに示されるような直立)に動かし、細胞分離器具600から廃液容器674へのクランプを開いた。細胞分離器具600中のPBSは廃液容器674に送った。工程3)細胞分離器具600を位置2(横向き)に置いた。ベントのクランプを開き、「TrypLE」容器670から細胞分離器具600への流体管路を同様に開いた。他のクランプは閉じた。「TrypLE」は重力により細胞分離器具600に流れ込んだ。細胞分離器具600を左右に傾けて、「TrypLE」中にMCを再懸濁させ、次いで、時折撹拌しながら、5分間に亘りインキュベーションするように放置した。細胞分離器具600から細胞収集容器676への流体管路を開き、細胞分離器具600を位置1(
図6Bに示されるような直立)に置き、細胞と「TrypLE」を細胞収集容器676中に流れ込ませた。工程4)細胞分離器具600を位置2(横向き)に置いた。ベントのクランプは開いたままであり、PBS容器672から細胞分離器具600への流体管路を同様に開いたままにした。他のクランプは閉じた。PBSは重力により細胞分離器具600に流れ込んだ。MCをPBS中に再懸濁させ、洗浄した。細胞分離器具600から細胞収集容器676への流体管路を開き、細胞分離器具600を位置1に置き、細胞とPBSを細胞収集容器676中に流れ込ませた。この工程を繰り返して、200mLの全細胞体積にした。分離を行うのに要した総時間は約20分であった。
【0053】
実験の結果:対照並びに試作の分離器具300、400、500および600の各々から得た0.2mLの細胞懸濁液をNucleoCounter(登録商標)カセットに装填して、mL当たりの収集細胞数、細胞生存率、および塊(細胞の群)で残留する細胞%を決定した。対照並びに試作の分離器具300、400、500および600の各々からの結果が、下記の表1に与えられている。
【0054】
【0055】
注釈:これらの実験において、試作の細胞分離器具300、400、500および600の各々は、最初に培地からマイクロキャリアを分離し、次いで、マイクロキャリアから細胞を分離するために使用される手法において、わずかな変更が必要であった。スフェロイドはマイクロキャリアのサイズと同程度であるので、培地からスフェロイドを分離し、次いで、スフェロイドを単細胞に縮小させるための結果は、マイクロキャリアと同様の様式で行われるであろうことも想定される。
【0056】
結論:全ての細胞生存率は非常に良好であった。開放系細胞分離器具300および500が、取扱いが最も容易であり、これらの分離器具で最多数の細胞が収穫されたので、流体貯留が最低であるようであった。細胞分離器具300は実際に、対照よりも多い数の細胞を収穫した。対照プロトコル後の各吸引工程中にMCの損失があり得るので、このことが可能である。細胞を収穫するのに要する時間が、対照と、試験した分離器具300、400、500および600との間で最大の違いであった。閉鎖系細胞分離器具600に関連する系を流体が自動的に流れるのを妨げるエアロックが時折あったが、これは、ベントを閉じ、瞬時に加圧を行うことによって克服した。閉鎖系細胞分離器具600に関連する系は、加圧の代わりに流体を系に引き込むために真空を使用するように構成することもできる(
図7B参照)。メッシュを中間に有する並んだ区画など、分離器具にとって有用であろう設計が、潜在的に他にもある。
【0057】
先に鑑みて、容器内のマイクロキャリアまたはスフェロイドを捕捉するために垂直のまたは傾斜した多孔質メッシュであって、マイクロキャリアから細胞を取り出すか、またはスフェロイドを単細胞懸濁液に転化させるかのために、容易に洗浄し、処理できる多孔質メッシュを使用する細胞分離器具が開示されている。その器具は、開放系または閉鎖系として製造できる。その器具は、注ぐ、重力、灌流、真空または供給源容器の加圧によって、充填できる。その器具は、灌流式バイオリアクターシステムに容易に組み込まれるように構造化することができる。その器具内の多孔質メッシュの傾斜したまたは垂直な配置により、マイクロキャリアまたはスフェロイドが、メッシュの細孔を塞ぐのを防いで、流体の流れおよび細胞分離を向上させる。その器具の設計により、マイクロキャリアまたはスフェロイドがメッシュから離れ、それでも器具内に維持できるように、液体(例えば、細胞培養培地、緩衝食塩水)が傾斜したまたは垂直なメッシュを越えて流れることができる。その器具は、内蔵式であり、マイクロキャリアまたはスフェロイドを多孔質メッシュの片側に隔離した後、器具を逆にして、さらに別の操作が可能になる。細胞は、その器具内で洗浄され、マイクロキャリアから放出され、次いで、それらを器具から出るように灌流することによって収集することができる。その器具内のスフェロイドから単細胞懸濁液を作り出すことができ、次いで、その細胞を器具内に保持するか、そこから放出することができる。その器具は、内蔵式であり、潜在的に、投与の部位に治療のための細胞を輸送するために使用できる。その器具は、必要に応じて、多くの形状が可能であり、サイズを拡大・縮小することができる。その器具は、剛性容器であっても、可撓性容器であってもよい。その器具は、安定化のために外側筐体を有してもよく、または必要に応じて、外側筐体がなく製造することもできる。その器具は、プラスチック材料または他の種類の材料から器具を形成し、組み立てる従来の方法の全てを使用して製造できる。所望の属性を向上させるために、その器具に被覆しても、処理してもよい。多孔質メッシュまたは膜は、高分子、金属またはガラスもしくはその複合体から製造することができ、その細孔径は、例えば、約12から200マイクロメートルに及び得る。
【0058】
本開示の態様(1)によれば、液体中のマイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を分離するように構成された細胞分離器具が提供される。その細胞分離器具は、第1のポート、第2のポート、および空洞を有する容器;および、その空洞を第1の区画と第2の区画に分割するために空洞内に配置された多孔質メッシュを備え、その第1のポートは空洞の第1の区画と連通しており、その第1のポートは多孔質メッシュの第一面側に位置しており、第2のポートは空洞の第2の区画と連通しており、その第2のポートは多孔質メッシュの第二面側に位置しており、その多孔質メッシュは、多孔質メッシュを通る液体の流れに対して実質的に垂直な向きまたは傾斜した向きを有するように空洞内に配置されている。
【0059】
本開示の別の態様(2)によれば、第1のポートが容器の一方の端部に位置し、第2のポートが容器の反対の端部に位置している、態様(1)の細胞分離器具が提供される。
【0060】
本開示の別の態様(3)によれば、(1)第1のポートが実質的に上向きに位置しており、第2のポートが実質的に下向きに位置している場合、または(2)第1のポートが実質的に下向きに位置し、第2のポートが実質的に上向きに位置している場合、多孔質メッシュが空洞内で実質的に垂直の向きを有するように、第1のポートおよび第2のポートが容器上で互いからずれている、態様(2)の細胞分離器具が提供される。
【0061】
本開示の別の態様(4)によれば、(1)第1のポートが実質的に上向きに位置しており、第2のポートが実質的に下向きに位置している場合、または(2)第1のポートが実質的に下向きに位置し、第2のポートが実質的に上向きに位置している場合、多孔質メッシュが空洞内で傾斜した向きを有するように、第1のポートおよび第2のポートが容器上で互いに一列に並んでいる、態様(2)の細胞分離器具が提供される。
【0062】
本開示の別の態様(5)によれば、第1のポートおよび第2のポートの両方とも容器の片側に位置しており、(1)第1のポートおよび第2のポートが実質的に上向きに位置している場合、または(2)第1のポートおよび第2のポートが実質的に下向きに位置している場合、多孔質メッシュが容器内で実質的に垂直向きを有する、態様(1)の細胞分離器具が提供される。
【0063】
本開示の別の態様(6)によれば、第1のポートに取り付けられる第1のキャップ、および第2のポートに取り付けられる第2のキャップをさらに備える、態様(1)~(5)のいずれかの細胞分離器具が提供される。
【0064】
本開示の別の態様(7)によれば、第1のポートと外部装置に取り付けられた第1の流量制御システム、および第2のポートと外部装置に取り付けられた第2の流量制御システムをさらに備える、態様(1)~(6)のいずれかの細胞分離器具が提供される。
【0065】
本開示の別の態様(8)によれば、多孔質メッシュが、約12マイクロメートルから約200マイクロメートルに及ぶサイズを有する細孔を中に有する、態様(1)~(7)のいずれかの細胞分離器具が提供される。
【0066】
本開示の別の態様(9)によれば、容器の少なくとも一部を取り囲む外側筐体をさらに備える、態様(1)~(8)のいずれかの細胞分離器具が提供される。
【0067】
本開示の別の態様(10)によれば、容器に連結されたリング・スタンドであって、容器の動きと回転を容易にするように構成されたリング・スタンドをさらに備える、態様(1)~(9)のいずれかの細胞分離器具が提供される。
【0068】
本開示の別の態様(11)によれば、液体中のマイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を分離する方法が提供される。その方法は、細胞分離器具の容器の第1のポートを通じて液体を導入する工程であって、その容器は第2のポートおよび空洞をさらに有し、多孔質メッシュが、その多孔質メッシュを通る液体の流れに対して実質的に垂直なまたは傾斜した向きを有し、その空洞を第1の区画と第2の区画に分割するようにその空洞内に配置され、第1のポートが多孔質メッシュの第一面側に位置しており、第1のポートは空洞の第1の区画と連通しており、第2のポートは空洞の第2の区画と連通している工程;多孔質メッシュを通過する液体を第2のポートから排出する工程;多孔質メッシュを通過しないマイクロキャリアまたはスフェロイドを処理して、そのマイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を放出する工程;およびその細胞を第2のポートから排出させる工程を有してなる。
【0069】
本開示の別の態様(12)によれば、マイクロキャリアまたはスフェロイドを処理する工程が、マイクロキャリアまたはスフェロイドを洗浄し、次いで、そのマイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を解離させる各工程をさらに含む、態様(11)の方法が提供される。
【0070】
本開示の別の態様(13)によれば、マイクロキャリアまたはスフェロイドを洗浄する工程が、洗浄液を空洞に加え、容器を動かし、洗浄液を第2のポートから排出する各工程を含む、態様(12)の方法が提供される。
【0071】
本開示の別の態様(14)によれば、マイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を解離させる工程が、細胞解離試薬を空洞に加え、容器を動かす各工程を含み、細胞を第2のポートから排出する工程が、細胞解離試薬を第2のポートから排出する工程をさらに含む、態様(12)の方法が提供される。
【0072】
本開示の別の態様(15)によれば、分離器具は、外部装置に直接的に接続されていない開放系細胞分離器具である、態様(11)~(14)のいずれかの方法が提供される。
【0073】
本開示の別の態様(16)によれば、分離器具が、外部装置に直接接続された閉鎖系細胞分離器具である、態様(11)~(14)のいずれかの方法が提供される。
【0074】
本開示の別の態様(17)によれば、第1のポートが容器の一方の端部に位置しており、第2のポートが容器の反対の端部に位置している、態様(11)~(16)のいずれかの方法が提供される。
【0075】
本開示の別の態様(18)によれば、(1)第1のポートが実質的に上向きに位置しており、第2のポートが実質的に下向きに位置している場合、または(2)第1のポートが実質的に下向きに位置し、第2のポートが実質的に上向きに位置している場合、多孔質メッシュが空洞内で実質的に垂直の向きを有するように、第1のポートおよび第2のポートが容器上で互いからずれている、態様(17)の方法が提供される。
【0076】
本開示の別の態様(19)によれば、(1)第1のポートが実質的に上向きに位置しており、第2のポートが実質的に下向きに位置している場合、または(2)第1のポートが実質的に下向きに位置し、第2のポートが実質的に上向きに位置している場合、多孔質メッシュが空洞内で傾斜した向きを有するように、第1のポートおよび第2のポートが容器上で互いに一列に並んでいる、態様(17)の方法が提供される。
【0077】
本開示の別の態様(20)によれば、第1のポートおよび第2のポートの両方とも容器の片側に位置しており、(1)第1のポートおよび第2のポートが実質的に上向きに位置している場合、または(2)第1のポートおよび第2のポートが実質的に下向きに位置している場合、多孔質メッシュが容器内で実質的に垂直向きを有する、態様(11)~(16)のいずれかの方法が提供される。
【0078】
開示された様々な実施の形態は、その特定の実施の形態に関して記載された特定の特徴、要素または工程を含むことがあることが認識されよう。特定の特徴、要素または工程は、ある特定の実施の形態に関して記載されているが、説明されていない様々な組合せまたは順序で代わりの実施の形態と交換しても、組み合わせてもよいこと認識されよう。
【0079】
ここに用いたように、名詞は、「少なくとも1つ」の対象を指し、特に明記のない限り、「ただ1つ」の対象に制限されるべきではないことも理解されよう。それゆえ、例えば、「開口」に対する言及は、特に明記のない限り、そのような「開口」を2つ以上有する例を含む。
【0080】
範囲は、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値まで、としてここに表現することができる。そのような範囲が表現された場合、例は、その1つの特定の値から、および/または他方の特定の値まで、を含む。同様に、値が、先行詞「約」を用いて、近似として表現されている場合、特定の値は別の態様を形成することが理解されよう。複数の範囲の各々の端点は、他方の端点に関してと、他方の端点とは関係なくの両方で有意であることがさらに理解されよう。
【0081】
ここに表現された全ての数値は、特に明記のない限り、そのように述べられていなくても、「約」を含むと解釈すべきである。しかしながら、列挙された各数値は、「約」その値と表現されているか否かにかかわらず、同様に正確に意図されることがさらに理解されよう。それゆえ、「10mm未満の寸法」および「約10mm未満の寸法」の両方とも、「約10mm未満の寸法」並びに「10mm未満の寸法」の実施の形態を含む。
【0082】
特に明記のない限り、ここに述べられたどの方法も、その工程が特定の順序で行われることを必要とするものと解釈されることは決して意図されていない。したがって、方法の請求項が、その工程がしたがうべき順序を実際に列挙していない場合、またはその工程が特定の順序に制限されることが請求項または説明に他の様式で具体的に述べられていない場合、どの特定の順序も推測されることは決して意図されていない。
【0083】
特定の実施の形態の様々な特徴、要素または工程が、移行句「含む」を使用して開示されることがあるが、移行句「からなる」または「から実質的になる」を使用して記載されることがある実施の形態を含む代わりの実施の形態が暗示されることを理解すべきである。それゆえ、例えば、A+B+Cを含む方法に対して暗示される代わりの実施の形態は、方法がA+B+Cからなる実施の形態、および方法がA+B+Cから実質的になる実施の形態を含む。
【0084】
本開示の多数の実施の形態が、添付図面に示され、先の発明を実施するための形態に記載されているが、付随の特許請求の範囲に述べられ、定義されたような開示から逸脱せずに、様々な再構成、改変および置換が可能であることを理解すべきである。
【0085】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0086】
実施形態1
液体中のマイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を分離するように構成された細胞分離器具であって、該細胞分離器具は、
第1のポート、第2のポート、および空洞を有する容器;および
前記空洞を第1の区画と第2の区画に分割するために該空洞内に配置された多孔質メッシュ、
を備え、
前記第1のポートは前記空洞の前記第1の区画と連通しており、該第1のポートは前記多孔質メッシュの第一面側に位置しており、
前記第2のポートは前記空洞の前記第2の区画と連通しており、該第2のポートは前記多孔質メッシュの第二面側に位置しており、
前記多孔質メッシュは、該多孔質メッシュを通る液体の流れに対して実質的に垂直な向きまたは傾斜した向きを有するように前記空洞内に配置されている、細胞分離器具。
【0087】
実施形態2
前記第1のポートが前記容器の一方の端部に位置し、前記第2のポートが該容器の反対の端部に位置している、実施形態1に記載の細胞分離器具。
【0088】
実施形態3
(1)前記第1のポートが実質的に上向きに位置しており、前記第2のポートが実質的に下向きに位置している場合、または(2)前記第1のポートが実質的に下向きに位置し、前記第2のポートが実質的に上向きに位置している場合、前記多孔質メッシュが前記空洞内で実質的に垂直の向きを有するように、該第1のポートおよび該第2のポートが前記容器上で互いからずれている、実施形態2に記載の細胞分離器具。
【0089】
実施形態4
(1)前記第1のポートが実質的に上向きに位置しており、前記第2のポートが実質的に下向きに位置している場合、または(2)前記第1のポートが実質的に下向きに位置し、前記第2のポートが実質的に上向きに位置している場合、前記多孔質メッシュが前記空洞内で傾斜した向きを有するように、該第1のポートおよび該第2のポートが前記容器上で互いに一列に並んでいる、実施形態2に記載の細胞分離器具。
【0090】
実施形態5
前記第1のポートおよび前記第2のポートの両方とも容器の片側に位置しており、(1)該第1のポートおよび該第2のポートが実質的に上向きに位置している場合、または(2)該第1のポートおよび該第2のポートが実質的に下向きに位置している場合、前記多孔質メッシュが前記容器内で実質的に垂直向きを有する、実施形態1に記載の細胞分離器具。
【0091】
実施形態6
前記第1のポートに取り付けられる第1のキャップ、および
先記第2のポートに取り付けられる第2のキャップ、
をさらに備える、実施形態1から5いずれか1つに記載の細胞分離器具。
【0092】
実施形態7
前記第1のポートと外部装置に取り付けられた第1の流量制御システム、および
前記第2のポートと外部装置に取り付けられた第2の流量制御システム、
をさらに備える、実施形態1から6いずれか1つに記載の細胞分離器具。
【0093】
実施形態8
前記多孔質メッシュが、約12マイクロメートルから約200マイクロメートルに及ぶサイズを有する細孔を中に有する、実施形態1から7いずれか1つに記載の細胞分離器具。
【0094】
実施形態9
前記容器の少なくとも一部を取り囲む外側筐体をさらに備える、実施形態1から8いずれか1つに記載の細胞分離器具。
【0095】
実施形態10
前記容器に連結されたリング・スタンドであって、該容器の動きと回転を容易にするように構成されたリング・スタンドをさらに備える、実施形態1から9いずれか1つに記載の細胞分離器具。
【0096】
実施形態11
液体中のマイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を分離する方法において、
細胞分離器具の容器の第1のポートを通じて液体を導入する工程であって、該容器は第2のポートおよび空洞をさらに有し、
多孔質メッシュが、該多孔質メッシュを通る液体の流れに対して実質的に垂直なまたは傾斜した向きを有し、前記空洞を第1の区画と第2の区画に分割するように、該空洞内に配置され、
前記第1のポートが前記多孔質メッシュの第一面側に位置しており、
前記第1のポートは前記空洞の第1の区画と連通しており、前記第2のポートは該空洞の第2の区画と連通している工程;
前記多孔質メッシュを通過する液体を前記第2のポートから排出する工程;
前記多孔質メッシュを通過しない前記マイクロキャリアまたはスフェロイドを処理して、該マイクロキャリアまたはスフェロイドから前記細胞を放出する工程;および
前記細胞を前記第2のポートから排出させる工程;
を有してなる方法。
【0097】
実施形態12
前記マイクロキャリアまたはスフェロイドを処理する工程が、前記マイクロキャリアまたはスフェロイドを洗浄し、次いで、該マイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を解離させる各工程をさらに含む、実施形態11に記載の方法。
【0098】
実施形態13
前記マイクロキャリアまたはスフェロイドを洗浄する工程が、
洗浄液を前記空洞に加え、
前記容器を動かし、
前記洗浄液を前記第2のポートから排出する、
各工程を含む、実施形態12に記載の方法。
【0099】
実施形態14
前記マイクロキャリアまたはスフェロイドから細胞を解離させる工程が、
細胞解離試薬を前記空洞に加え、
前記容器を動かす、
各工程を含み、
前記細胞を第2のポートから排出する工程が、前記細胞解離試薬を前記第2のポートから排出する工程をさらに含む、実施形態12に記載の方法。
【0100】
実施形態15
前記分離器具が、外部装置に直接的に接続されていない開放系細胞分離器具である、実施形態11から14いずれか1つに記載の方法。
【0101】
実施形態16
前記分離器具が、外部装置に直接接続された閉鎖系細胞分離器具である、実施形態11から14いずれか1つに記載の方法。
【0102】
実施形態17
前記第1のポートが前記容器の一方の端部に位置しており、前記第2のポートが該容器の反対の端部に位置している、実施形態11から16いずれか1つに記載の方法。
【0103】
実施形態18
(1)前記第1のポートが実質的に上向きに位置しており、前記第2のポートが実質的に下向きに位置している場合、または(2)前記第1のポートが実質的に下向きに位置し、前記第2のポートが実質的に上向きに位置している場合、前記多孔質メッシュが前記空洞内で実質的に垂直の向きを有するように、該第1のポートおよび該第2のポートが前記容器上で互いからずれている、実施形態17に記載の方法。
【0104】
実施形態19
(1)前記第1のポートが実質的に上向きに位置しており、前記第2のポートが実質的に下向きに位置している場合、または(2)前記第1のポートが実質的に下向きに位置し、前記第2のポートが実質的に上向きに位置している場合、前記多孔質メッシュが前記空洞内で傾斜した向きを有するように、該第1のポートおよび該第2のポートが前記容器上で互いに一列に並んでいる、実施形態17に記載の方法。
【0105】
実施形態20
前記第1のポートおよび前記第2のポートの両方とも容器の片側に位置しており、(1)該第1のポートおよび該第2のポートが実質的に上向きに位置している場合、または(2)該第1のポートおよび該第2のポートが実質的に下向きに位置している場合、前記多孔質メッシュが前記容器内で実質的に垂直向きを有する、実施形態11から16いずれか1つに記載の方法。
【符号の説明】
【0106】
100、200、300、400、500、600、700 細胞分離器具
102、202、302、402、502、602、702 多孔質メッシュ
104、204、304、404、504、604、704 容器
106、206、306、406、506、606、706 第1のポート
108、208、308、408、508、608、708 第2のポート
110、210、310、410、510、610、710 空洞
112、212、312、412、512、612、712 第1の区画
114、214、214、414、514、614、714 第2の区画
124、324、424、524、624、724 第1のキャップ
126、326、426、526、626、726 第2のキャップ
128 リング・スタンド
130 筐体
232 第1の流量制御システム
234 第2の流量制御システム
238、248、636、638、736、738 クランプ
240、250、640、740 ベント・フィルタ
244、252 多目的コネクタまたは無菌コネクタ
303、403、503 保持されたマイクロキャリアまたはスフェロイド
611a、611b、711a、711b 開口
633、637、731、733、735、737 管