(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
H10K 50/15 20230101AFI20230310BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20230310BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20230310BHJP
C07D 209/80 20060101ALI20230310BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20230310BHJP
C07F 7/10 20060101ALN20230310BHJP
【FI】
H10K50/15
H05B33/14 B
H05B33/22 A
C07D209/80
H05B33/22 D
H10K85/60
C07F7/10 C
(21)【出願番号】P 2022028121
(22)【出願日】2022-02-25
(62)【分割の表示】P 2017067528の分割
【原出願日】2017-03-30
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】10-2016-0038593
(32)【優先日】2016-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1, Samsung-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002619
【氏名又は名称】弁理士法人PORT
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悦昌
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 朱里
(72)【発明者】
【氏名】糸井 裕亮
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特許第5848480(JP,B1)
【文献】国際公開第2014/128945(WO,A1)
【文献】特開2015-122459(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0319472(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1493482(KR,B1)
【文献】特開2009-099967(JP,A)
【文献】特開2011-233855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/15
H10K 50/00
H10K 50/16
C07D 209/80
C07F 7/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと、
前記アノード上に設けられた正孔輸送領域と、
前記正孔輸送領域上に設けられた発光層と、
前記発光層上に設けられた電子輸送領域と、
前記電子輸送領域上に設けられたカソードと、を含み、
前記正孔輸送領域は、
下記の化学式(1)で示される第1正孔輸送材料又は下記の化学式(2)で示される第2正孔輸送材料の何れか1つの正孔輸送材料
を含む第1正孔輸送層と、
下記の化学式(3)で示される第3正孔輸送材料又は下記化合物群1から選択される何れか1つの第4正孔輸送材料の何れか1つの正孔輸送材料
を含む第2正孔輸送層と、を含む有機電界発光素子。
【化1】
【化2】
【化3】
[化合物群1]
【化4】
【化5】
(ただし、前記化学式(1)、前記化学式(2)、及び前記化学式(3)で、
Ar
1、Ar
2、Ar
3、Ar
4、及びAr
5は、各々独立に、置換又は無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換又は無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、置換又は無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換又は無置換のシリル基、ハロゲン原子、重水素原子、及び水素原子の中から選択され、
Ar
6及びAr
7は、各々独立に、無置換のナフチル基、無置換のビフェニル基、無置換のジベンゾフラニル基、シリル基で置換されたビフェニル基、又は下記化学式3a及び3bからなる群から選択される1つの置換基であり、Ar
6とAr
7とは互いに異なり、
【化6】
前記化学式3a及び3bにおいて、SGは、無置換のナフチル基、
無置換のジベンゾフラニル基、置換又は無置換の
カルバゾリル基、置換又は無置換のベンゾ[def]カルバゾリル基であり、*は前記化学式(3)のNとの結合位置であり、
R
1、R
2、R
3、及びR
4は各々独立に、置換又は無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換又は無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、置換又は無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換又は無置換のシリル基、ハロゲン原子、重水素原子、及び水素原子の中から選択され、
L
1及びL
2は各々独立に、直接結合、置換又は無置換の炭素数6以上30以下のアルキル基、置換又は無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基、及び置換又は無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリーレン基の中から選択され、
a、b、及びcは各々独立に、0以上4以下の整数であり、
dは0以上3以下の整数である。)
【請求項2】
前記発光層は、
ドナー基及びアクセプタ基を有する発光材料を含み、
前記発光材料は、熱活性遅延蛍光材料である、
請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記第1正孔輸送層が前記第1正孔輸送材料を含むとき、
前記化学式(1)で、
Ar
1及びAr
2は、各々独立に、置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のビフェニル基、置換又は無置換のナフチル基、置換又は無置換のフルオレニル基、及び置換又は無置換のアクリジニル基の中から選択される、
請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記第1正孔輸送層が前記第1正孔輸送材料を含むとき、
前記化学式(1)で、
L
1
は、置換又は無置換のフェニレン基、置換又は無置換のビフェニレン基、及び置換又は無置換のフルオレニレン基の中から選択される、
請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記第1正孔輸送層が前記第1正孔輸送材料を含むとき、
前記第1正孔輸送材料は、下記の化合物1-1から化合物1-20に示される化合物群の中の少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の有機電界発光素子。
【化7】
【化8】
【請求項6】
前記第1正孔輸送層が前記第2正孔輸送材料を含むとき、
前記化学式(2)で、
Ar
3及びAr
4は互いに結合して環を形成する
請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
前記第1正孔輸送層が前記第2正孔輸送材料を含むとき、
前記化学式(2)で、
Ar
3及びAr
4は、各々独立に、置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のビフェニル基、置換又は無置換のナフチル基、置換又は無置換のフルオレニル基、及び置換又は無置換のスピロビフルオレニル基の中から選択される、
請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
前記第1正孔輸送層が前記第2正孔輸送材料を含むとき、
前記化学式(2)で、
Ar
5は置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のジベンゾフリル基、置換又は無置換のピリジリル基の中から選択される、
請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
前記第1正孔輸送層が前記第2正孔輸送材料を含むとき、
前記化学式(2)で、
L
2は直接結合、置換又は無置換のフェニレン基、置換又は無置換のビフェニレン基、及び置換又は無置換のフルオレニレン基の中から選択される、
請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
前記第1正孔輸送層が前記第2正孔輸送材料を含むとき、
前記第2正孔輸送材料は、下記の化合物2-1から2-20に示される化合物群の中の少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の有機電界発光素子。
【化9】
【化10】
【請求項11】
前記第2正孔輸送層が前記第3正孔輸送材料を含むとき、
前記第3正孔輸送材料は、下記化合物の1つを含む、
請求項1に記載の有機電界発光素子。
【化11】
【請求項12】
前記正孔輸送領域は、
前記アノード上に設けられた正孔注入層をさらに含む、
請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項13】
前記電子輸送領域は、
電子輸送層と、
前記電子輸送層上に設けられた電子注入層と、を含む、
請求項1に記載の有機電界発光素子
。
【請求項14】
前記正孔輸送領域は、前記第3正孔輸送材料を含み、前記第4正孔輸送材料を含まない、
請求項1に記載の有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子に係る。
【背景技術】
【0002】
最近、映像表示装置として、有機電界発光表示装置(Organic Light Emitting Display Device)の開発が盛んに成って来た。有機電界発光表示装置は、液晶表示装置等とは異なり、アノード及びカソードから注入された正孔及び電子を発光層において再結合させることにより、発光層において有機化合物を含む発光材料を発光させて表示を実現する、いわゆる自発光型の表示装置である。
【0003】
有機電界発光素子(「有機EL素子」ともいう。)としては、例えば、アノード、アノード上に配置された正孔輸送領域、正孔輸送領域上に配置された発光層、発光層上に配置された電子輸送領域及び電子輸送領域上に配置されたカソードで構成された有機素子が知られている。アノードからは正孔が注入され、注入された正孔は移動して発光層に注入される。一方、カソードからは電子が注入され、注入された電子は移動して発光層に注入される。発光層に注入された正孔と電子とが再結合することによって、発光層内で励起子が生成される。有機電界発光素子はその励起子の輻射失活によって発生する光を利用して発光する。また、有機電界発光素子は以上に説明した構成に限定されず、様々な変更が可能である。有機電界発光素子を表示装置に応用することにおいて、有機電界発光素子の低駆動電圧化、高発光効率化、及び長寿命化が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】韓国特許第10-1370183号明細書
【文献】韓国特許第10-1684979号明細書
【文献】韓国公開特許第10-2015-0006694号明細書
【文献】韓国公開特許第10-2015-0075352号明細書
【文献】国際公開第2015/004875号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は発光効率が高く、長寿命の有機電界発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態による有機電界発光素子は、アノード、正孔輸送領域、発光層、電子輸送領域、及びカソードを含む。正孔輸送領域はアノード上に設けられる。発光層は正孔輸送領域上に設けられる。電子輸送領域は発光層上に設けられる。カソードは電子輸送領域上に設けられる。正孔輸送領域は第1正孔輸送層及び第2正孔輸送層を含む。第1正孔輸送層は下記の化学式(1)にて示される第1正孔輸送材料、又は下記の化学式(2)にて示される第2正孔輸送材料を含む。第2正孔輸送層は第1正孔輸送層上に提供され、下記の化学式(3)にて示される第3正孔輸送材料、又は下記の化学式(4)にて示される第4正孔輸送材料を含む。
[第1正孔輸送材料]
【化1】
[第2正孔輸送材料]
【化2】
[第3正孔輸送材料]
【化3】
[第4正孔輸送材料]
【化4】
【0007】
化学式(1)、化学式(2)、化学式(3)、及び化学式(4)で、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6、Ar7、及びAr8は各々独立に、置換又は無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換又は無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、置換又は無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換又は無置換のシリル基、ハロゲン原子、重水素原子、及び水素原子の中から選択され、Xは直接結合又はCR14R15であり、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、及びR15は各々独立に、置換又は無置換の環形成炭素数6以上30以下
のアリール基、置換又は無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、置換又は無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換又は無置換のシリル基、ハロゲン原子、重水素原子、及び水素原子の中から選択され、L1及びL2は各々独立に、直接結合(direct linkage)、置換又は無置換の炭素数6以上30以下のアルキル基、置換又は無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基、及び置換又は無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリーレン基の中から選択され、a、b、及びcは各々独立に、0以上4以下の整数であり、dは0以上3以下の整数であり、eは0以上
5以下の整数であり、eが2以上である場合、互いに隣接するR1、R2、R3、R4、R5
、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、及びR15は互いに環を形成することができる。発光層はドナー基及びアクセプタ基を有する発光材料を含み、発光材料は熱活性遅延蛍光材料である。
【0008】
化学式(1)で、Ar1及びAr2は各々独立に、置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のビフェニル基、置換又は無置換のナフチル基、置換又は無置換のフルオレニル基、及び置換又は無置換のアクリジニル基の中から選択されるものである。化学式(1)で、L1は置換又は無置換のフェニレン基、置換又は無置換のビフェニレン基、及び置換
又は無置換のフルオレニレン基の中から選択されるものである。
【0009】
第1正孔輸送材料は下記の化合物群1で示される化合物の中から少なくとも1つを含むものである。
[化合物群1]
【化5】
【化6】
【0010】
化学式(2)で、Ar
3及びAr
4は互いに結合して環を形成するものである。化学式(2)で、Ar
3及びAr
4は各々独立に、置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のビフェニル基、置換又は無置換のナフチル基、置換又は無置換のフルオレニル基、及び置換又は無置換のスピロビフルオレニル基の中から選択されるものである。化学式(2)で、Ar
5は置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のジベンゾフリル基、置換又は
無置換のピリジリル基の中から選択されるものである。化学式(2)で、L
2は直接結合
、置換又は無置換のフェニレン基、置換又は無置換のビフェニレン基、及び置換又は無置換のフルオレニレン基の中から選択されるものである。第2正孔輸送材料は下記の化合物群2で示される化合物の中から少なくとも1つを含むものである。
[化合物群2]
【化7】
【化8】
【0011】
化学式(3)で、Ar
6及びAr
7は各々独立に、置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のビフェニル基、置換又は無置換のナフチル基、置換又は無置換のジベンゾフリル基、及び置換又は無置換のジベンゾチオフェニル基の中から選択されるものである。化学式(3)で、R
5は置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のビフェニル基、置
換又は無置換のナフチル基、置換又は無置換のフルオレニル基、置換又は無置換のジベンゾフリル基、及び置換又は無置換のベンゾ[def]カルバゾリル基の中から選択されるものである。第3正孔輸送材料は下記の化合物群3で示される化合物の中から少なくとも1つを含むものである。
[化合物群3]
【化9】
【化10】
【0012】
化学式(4)で、Ar
8はR
6及びR
13の中から少なくとも1つと結合して環を形成するものである。化学式(4)で、R
9はR
10と結合してXを含む環を形成するものである。
化学式(4)で、Ar
8は置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のビフェニル基
、及び置換又は無置換のカルバゾリル基の中から選択されるものである。R
6、R
7、R
8
、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、及びR
15は各々独立に、置換又は無置換のフェ
ニル基、置換又は無置換のナフチル基、置換又は無置換のカルバゾリル基、置換又は無置換のベンゾ[def]カルバゾリル基、置換又は無置換のフルオレニル基、置換又は無置換のジベンゾフリル基、置換又は無置換のトリフェニレン基、置換又は無置換のフェナントリル基、及び置換又は無置換のジベンゾシロール基の中から選択されるものである。第4正孔輸送材料は下記の化合物群4で示される化合物の中から少なくとも1つを含むものである。
[化合物群4]
【化11】
【化12】
【0013】
正孔輸送領域はアノード及び第1正孔輸送層の間に設けられた正孔注入層をさらに含むものである。電子輸送領域は電子輸送層及び電子輸送層上に設けられた電子注入層を含むものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子は高い発光効率及び長寿命を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子の概略図(断面図)である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子の概略図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
当業者は、本発明の目的、実施形態の目的、構成の特徴及び作用効果について、添付された図面及び以下の実施形態を通じて容易に理解することができるだろう。しかし、本発明は本明細書において説明される実施形態に限定されるものではなく、本明細書に明示的に記載されない実施の形態によって実施されうる。本明細書で紹介される実施形態は開示した内容を十分に当業者が理解できるようにするために、具体的に説明している。
【0017】
各図面を説明しながら、類似な参照符号を類似な構成要素に対して使用した。添付された図面において、構造物の寸法は本発明の明確性のために実際より拡大して図示した。第1、第2等の用語は種々の構成要素を説明するために使用されるが、構成要素は用語によって限定されない。すなわち、用語は1つの構成要素を他の構成要素から区別することを目的として使用される。例えば、本発明の開示範囲を逸脱せず、第1構成要素は第2構成要素と称されてもよいし、同様に第2構成要素も第1構成要素と称してもよい。単数の表現であっても、文脈上に明確に単数であることが表現されない限り、複数の場合を含む。
【0018】
本明細書で、含む等の用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組合せたことが存在することを表現しようするものであり、1つ又はその以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品、又はこれらを組合せたものの存在又は付加可能性を予め排除しないものとして理解されるべきである。また、層、膜、領域、板等の部分が他の部分の上にあるとする場合、これは、他の部分の直ちに上にある場合のみではなく、その中間にその他の部分がある場合も含む。反対に、層、膜、領域、板等の部分が他の部分の下にあるとする場合、これは、他の部分の直ちに下にある場合のみではなく、その中間にその他の部分がある場合も含む。
【0019】
本明細書で、置換又は無置換のは、反対の記載がない限り、重水素、ハロゲン原子、ニトリル基、ニトロ基、アミノ基、シリル基、ホウ素基、ホスフィンオキシド基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、及びヘテロ環基からなる群で選択される1つ以上の置換された基で置換又は置換されないことを意味する。また、例示された置換基の各々は、置換又は無置換のものであってもよい。例えば、ビフェニル基は、アリール基とも解釈できるし、フェニル基で置換されたフェニル基(つまり、フェノールのH原子がフェニル基で置換されたもの)と解釈できる。
【0020】
本明細書で、“隣接する基と互いに結合して環を形成する”とは、隣接する基と互いに結合して置換又は無置換の炭化水素環、又は置換又は無置換のヘテロ環を形成することを意味する。炭化水素環は脂肪族炭化水素環及び芳香族炭化水素環を含む。ヘテロ環は脂肪族ヘテロ環及び芳香族ヘテロ環を含む。炭化水素環及びヘテロ環は単環又は多環である。また、隣接する基と互いに結合して形成された環は他の環と結合してスピロ構造を形成するものであってもよい。
【0021】
本明細書で、“隣接する基”は当該置換基が置換する原子と直接結合した原子を置換する置換基、当該置換基が置換する原子に置換する他の置換基又は当該置換基と立体構造的に最も隣接する置換基を意味する。例えば、1、2-ジメチルベンゼン(1、2-dimethylbenzene)で2個のメチル基は、互いに“隣接する基”に解釈されることができ、1、1-ジエチルシクロペンテン(1、1-diethylcyclopentene)で2個のエチル基は、互いに“隣接する基”として解釈される。
【0022】
本明細書で、ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子がある。
【0023】
本明細書で、アルキル基は、直鎖、分岐鎖、又は環形である。アルキル基の炭素数は、1以上30以下、1以上20以下、1以上10以下、又は1以上6以下である。アルキル基の例としてはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、i-ブチル基、2-エチルブチル基、3、3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、シクロペンチル基、1-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-エチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-ブチルヘキシル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-t-ブチルシクロヘキシル基、n-ペンチル基、1-メチルヘプチル基、2、2-ジメチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、2-ブチルヘプチル基、n-オクチル基、t-オクチル基、2-エチルオクチル基、2-ブチルオクチル基、2-ヘキシルオクチル基、3、7-ジメチルオクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、アダマンチル基、2-エチルデシル基、2-ブチルデシル基、2-ヘキシルデシル基、2-オクチルデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、2-エチルドデシル基、2-ブチルドデシル基、2-ヘキシルドデシル基、2-オクチルドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、2-エチルヘキサデシル基、2-ブチルヘキサデシル基、2-ヘキシルヘキサデシル基、2-オクチルヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル、n-ノナデシル基、n-イコシル基、2-エチルイコシル基、2-ブチルイコシル基、2-ヘキシルイコシル基、2-オクチルイコシル基、n-ヘンイコシル基、n-ドコシル基、n-トリコシル基、n-テトラコシル基、n-ペンタコシル基、n-ヘキサコシル基、n-ヘプタコシル基、n-オクタコシル基、n-ノナコシル基、及びn-トリアコンチル基等を挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書で、アリール基は芳香族炭化水素環から誘導された任意の作用基又は置換基を意味する。アリール基は単環式アリール基又は多環式アリール基である。アリール基の環形成炭素数は6以上30以下又は6以上20以下であってもよい。アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クォーターフェニル基、キンキフェニル(quinquephenyl)基、セクシフェニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、ベンゾフルオランテニル基、クリセニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書で、フルオレニル基は、置換されてもよく、置換基2つが互いに結合してスピロ構造を形成してもよい。
【0026】
本明細書で、ヘテロアリール基は、異種元素としてO、N、及びSの中から1つ以上を含むヘテロアリール基である。ヘテロアリール基の環形成炭素数は2以上30以下又は2以上20以下である。ヘテロアリール基の例としては、チオフェニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジン基、アクリジル基、ピ
ラジニル基、キノリニル基、キナゾリン基、キノキサリニル基、フェノキサジル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジピラジニル基、イソキノリニル基、インドール基、カルバゾリル基、N-アリルカルバゾリル基、N-ヘテロアリルカルバゾリル基、N-アルキルカルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾル基、ベンゾカルバゾリル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基、チエノチオフェニル基、ベンゾフラニル基、フェナントロリニル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェノチアジニル基、及びジベンゾフラニル基等があるが、これらに限定されない。
【0027】
本明細書で、アリーレン基は、2価基であることを除外すれば、前述したアリール基に関する説明が適用されることができる。
【0028】
本明細書で、シリル基はアルキルシリル基及びアリールシリル基を含む。シリル基の例としてはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基等があるが、これらに限定されない。
【0029】
本明細書で、ホウ素基はアルキルホウ素基及びアリールホウ素基を含む。ホウ素基の例としてはトリメチルホウ素基、トリエチルホウ素基、t-ブチルジメチルホウ素基、トリフェニルホウ素基、ジフェニルホウ素基、フェニルホウ素基等があるが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書で、アルケニル基は直鎖又は分岐鎖である。炭素数は、特に限定されないが、2以上30以下、2以上20以下、又は2以上10以下である。アルケニル基の例としてはビニル基、1-ブテニル基、1-ペンテニル基、1、3-ブタジエニルアリール基、スチレニル基、スチルベニル基等があるが、これらに限定されない。
【0031】
以下では本発明の一実施形態による有機電界発光素子に対して説明する。
【0032】
図1は本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示した断面図である。
図2は本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示した断面図である。
【0033】
図1及び
図2を参照すれば、本発明の一実施形態による有機電界発光素子10はアノードAN、正孔輸送領域HTR、発光層EML、電子輸送領域ETR、及びカソードCATを含む。
【0034】
アノードANは導電性を有する。アノードANは画素電極又は陽極である。アノードANは透過型電極、半透過型電極、又は反射型電極である。アノードANが透過型電極である場合、アノードANは透明金属酸化物、例えばITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、ZnO(zinc oxide)、ITZO(indium tin zinc oxide)等からなされる。アノードANが半透過型の電極又は反射型電極である場合、アノードANはAg、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Mo、Ti又はこれらの化合物や混合物(例えば、AgとMgとの混合物)を含む。又は物質で形成された反射膜や半透過膜及びITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、ZnO(zinc oxide)、ITZO(indium tin zinc oxide)等で形成された透明導電膜を含む複数の層構造であってもよい。
【0035】
正孔輸送領域HTRはアノードAN上に設けられる。正孔輸送領域HTRは第1正孔輸送層HTL1及び第2正孔輸送層HTL2を含む。正孔輸送領域HTRは正孔注入層HIL、正孔バッファ層、及び電子ブロック層の中から少なくとも1つをさらに含む。正孔輸送領域HTRの厚さは、例えば約1000Å以上約1500Å以下である。正孔輸送領域HTRの厚さは約100Å以上約10000Å以下であり、例えば約100Å以上約1000Å以下であってもよい。
【0036】
正孔輸送領域HTRは、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法(Langmuir-Blodgett)、インクジェットプリンティング法、レーザープリンティング法、レーザー熱転写法(Laser Induced Thermal Imaging、LITI)等の多様な方法を利用して形成されることができる。
【0037】
正孔注入層HILは、例えば銅フタロシアニン(copper phthalocyanine)等のフタロシアニン(phthalocyanine)化合物;DNTPD(N、N’-diphenyl-N、N’-bis-[4-(phenyl-m-tolyl-amino)-phenyl]-biphenyl-4、4’-diamine)、m-MTDATA(4、4’、4’’-tris(3-methylphenylphenylamino)triphenylamine)、TDATA(4、4’4’’-Tris(N、N-diphenylamino)triphenylamine)、2-TNATA(4、4’、4’’-tris{N、-(2-naphthyl)-N-phenylamino}-triphenylamine)、PEDOT/PSS(Poly(3、4-ethylenedioxythiophene)/Poly(4-styrenesulfonate))、PANI/DBSA(Polyaniline/Dodecylbenzenesulfonic acid)、PANI/CSA(Polyaniline/Camphor sulfonicacid)、PANI/PSS((Polyaniline)/Poly(4-styrenesulfonate))、NPB(N、N’-di(naphthalene-l-yl)-N、N’-diplienyl-benzidine)、トリフェニルアミンを含むポリエーテルケトン(TPAPEK)、4-Isopropyl-4’-methyldiphenyliodonium Tetrakis(pentafluorophenyl)borate]等を含んでもよい。
【0038】
第1正孔輸送層HTL1は下記の化学式(1)で示される第1正孔輸送材料又は下記の化学式(2)で示される第2正孔輸送材料を含む。第2正孔輸送層HTL2は第1正孔輸送層HTL1上に設けられる。第2正孔輸送層HTL2は下記の化学式(3)で示される第3正孔輸送材料又は下記の化学式(4)で示される第4正孔輸送材料を含む。
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【0039】
化学式(1)、化学式(2)、化学式(3)、及び化学式(4)で、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6、Ar7、及びAr8は各々独立に、例えば置換又は無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換又は無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、置換又は無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換又は無置換のシリル基、ハロゲン原子、重水素原子、及び水素原子の中から選択され、Xは直接結合又はCR14R15であり、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、及びR15は各々独立に、例えば置換又は無置換の環形成炭素数6
以上30以下のアリール基、置換又は無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、置換又は無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換又は無置換のシリル基、ハロゲン原子、重水素原子、及び水素原子の中から選択され、L1及びL2は各々独立に、例えば直接結合(direct linkage)、置換又は無置換の炭素数6以上30以下のアルキル基、置換又は無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基、及び置換又は無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリーレン基の中から選択され、a、b及びcは各々独立に、例えば0以上4以下の整数であり、dは0以上3以下の整数であり、eは0以上5以下の整数である。
【0040】
eが2以上である場合、互いに隣接するR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、及びR15は互いに環を形成することができる。
【0041】
化学式(1)で、Ar1及びAr2は各々独立に、例えば置換又は無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換又は無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、置換又は無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換又は無置換のシリル基、ハロゲン原子、重水素原子、及び水素原子の中から選択される。
【0042】
Ar1及びAr2は各々独立に、例えば置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換の
ビフェニル基、置換又は無置換のナフチル基、置換又は無置換のフルオレニル基、及び置換又は無置換のアクリジニル基の中から選択されるものである。
【0043】
Ar1及びAr2は各々独立に、例えばアルキル基で置換又は無置換のフルオレニル基、アルキル基で置換又は無置換のアクリジニル基、アルキル基で置換又は無置換のフェニル基、アルコキシ基で置換又は無置換のフェニル基、ハロゲン原子で置換又は無置換のフェニル基、ニトリル基で置換又は無置換のフェニル基、及びアリール基で置換又は無置換のフェニル基の中から選択されるものである。
【0044】
Ar1及びAr2は各々独立に、例えばフェニル基で置換又は無置換のフェニル基及びナフチル基で置換又は無置換のフェニル基の中から選択されるものである。
【0045】
化学式(1)で、L1は直接結合、置換又は無置換の炭素数6以上30以下のアルキル
基、置換又は無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基、及び置換又は無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリーレン基の中から選択される。
【0046】
L1は、例えば置換又は無置換のフェニレン基、置換又は無置換のビフェニレン基、及
び置換又は無置換のフルオレニレン基の中から選択されるものである。
【0047】
化学式(1)で、R1及びR2は各々独立に、例えば置換又は無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換又は無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、置換又は無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換又は無置換のシリル基、ハロゲン原子、重水素原子、及び水素原子の中から選択される。
【0048】
化学式(1)で、a及びbは各々独立に、例えば0以上4以下の整数である。
【0049】
aが1以上の整数である場合、複数のR1は互いに同一であることもあり得るし、互い
に異なることもあり得るのであって、少なくとも1つのR1は異なることもあり得る。b
が1以上の整数である場合、複数のR2は互いに同一であることもあり得るのであり、互
いに異なることもあり得るのであって、少なくとも1つのR2は異なることもあり得る。
【0050】
第1正孔輸送材料は、例えば下記の化合物群1で示される化合物の中から少なくとも1つを含むものである。
【0051】
【0052】
化学式(2)で、Ar3及びAr4は各々独立に、例えば置換又は無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換又は無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、置換又は無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換又は無置換のシリル基、ハロゲン原子、重水素原子、及び水素原子の中から選択される。
【0053】
Ar3及びAr4は各々独立に、例えば置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のビフェニル基、置換又は無置換のナフチル基、置換又は無置換のフルオレニル基、及び置換又は無置換のスピロビフルオレニル基の中から選択されるものである。
【0054】
Ar3及びAr4は各々独立に、例えば置換又は無置換のアルキル基で置換又は無置換のフルオレニル基、置換又は無置換のアルキル基で置換又は無置換のアクリジニル基、置換又は無置換のアルキル基で置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のアルコキシ基で置換又は無置換のフェニル基、ハロゲン原子で置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のニトリル基で置換又は無置換のフェニル基、及び置換又は無置換のアリール基で置換又は無置換のフェニル基の中から選択されるものである。
【0055】
Ar3及びAr4は各々独立に、例えば置換又は無置換のフェニル基で置換又は無置換のフェニル基及び置換又は無置換のナフチル基で置換又は無置換のフェニル基の中から選択
されるものである。
【0056】
Ar3及びAr4は互いに結合して環を形成するものである。Ar3及びAr4は互いに結合して置換又は無置換のアリール基を形成するものである。Ar3及びAr4は互いに結合して置換又は無置換のアクリジニル基を形成するものである。
【0057】
化学式(2)で、Ar5は置換又は無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基
、置換又は無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、置換又は無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換又は無置換のシリル基、ハロゲン原子、重水素原子、及び水素原子の中から選択される。
【0058】
Ar5は置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のジベンゾフリル基、及び置換
又は無置換のピリジリル基の中から選択されるものである。
【0059】
化学式(2)で、L2は直接結合、置換又は無置換の炭素数6以上30以下のアルキル
基、置換又は無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基、及び置換又は無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリーレン基の中から選択される。
【0060】
L2は直接結合、置換又は無置換のフェニレン基、置換又は無置換のビフェニレン基、
及び置換又は無置換のフルオレニレン基の中から選択されるものである。
【0061】
化学式(2)で、R3及びR4は各々独立に、例えば置換又は無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換又は無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、置換又は無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換又は無置換のシリル基、ハロゲン原子、重水素原子、及び水素原子の中から選択される。
【0062】
化学式(2)で、cは0以上4以下の整数である。化学式(2)で、dは0以上3以下の整数である。
【0063】
cが1以上の整数である場合、複数のR3は互いに同一であることもあり得るし、互い
に異なることもあり得るし、少なくとも1つのR3は異なることもあり得る。dが1以上
の整数である場合、複数のR4は互いに同一であることもあり得るし、互いに異なること
もあり得るし、少なくとも1つのR4は異なることもあり得る。
【0064】
第2正孔輸送材料は、例えば下記の化合物群2で示される化合物の中から少なくとも1つを含むものである。
【0065】
【0066】
化学式(3)で、Ar6及びAr7は各々独立に、例えば置換又は無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換又は無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、置換又は無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換又は無置換のシリル基、ハロゲン原子、重水素原子、及び水素原子の中から選択される。
【0067】
Ar6及びAr7は各々独立に、例えば置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のビフェニル基、置換又は無置換のナフチル基、置換又は無置換のジベンゾフリル基、及び置換又は無置換のジベンゾチオフェニル基の中から選択されるものである。
【0068】
Ar6及びAr7は各々独立に、例えば置換又は無置換のアリール基で置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のシリル基で置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のアリール基で置換又は無置換のジベンゾチオフェニル基、及び置換又は無置換のアリー
ル基で置換又は無置換のビフェニル基の中から選択されるものである。
【0069】
Ar6及びAr7は各々独立に、例えば置換又は無置換のフェニル基で置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のナフチル基で置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のベンゾ[def]カルバゾリル基で置換又は無置換のフェニル基、及び置換又は無置換のトリフェニルシリル基で置換又は無置換のフェニル基の中から選択されるものである。
【0070】
Ar6及びAr7は各々独立に、例えば置換又は無置換のジベンゾフリル基で置換又は無置換のビフェニル基、置換又は無置換のベンゾ[def]カルバゾリル基で置換又は無置換のビフェニル基、及び置換又は無置換のカルバゾリル基で置換又は無置換のビフェニル基の中から選択されるものである。
【0071】
化学式(3)で、R5は置換又は無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、
置換又は無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、置換又は無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換又は無置換のシリル基、ハロゲン原子、重水素原子、及び水素原子の中から選択される。
【0072】
R5は置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のビフェニル基、置換又は無置換
のナフチル基、置換又は無置換のフルオレニル基、置換又は無置換のジベンゾフリル基、及び置換又は無置換のベンゾ[def]カルバゾリル基の中から選択されるものである。
【0073】
R5は置換又は無置換のシリル基で置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のア
リール基で置換又は無置換のフルオレニル基、置換又は無置換のアリール基で置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のアリール基で置換又は無置換のベンゾ[def]カルバゾリル基、及び置換又は無置換のアリール基で置換又は無置換のジベンゾフリル基の中から選択されるものである。
【0074】
R5は置換又は無置換のナフチル基で置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換の
カルバゾリル基で置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のベンゾ[def]カルバゾリル基で置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のジベンゾフリル基で置換又は無置換のフェニル基、及び置換又は無置換のジベンゾフリル基で置換又は無置換のビフェニル基の中から選択されるものである。
【0075】
化学式(3)で、eは0以上5以下の整数である。eが1以上の整数である場合、複数のR5は互いに同一であることもあり得るし、互いに異なることもあり得るし、少なくと
も1つのR5は異なることもあり得る。
【0076】
第3正孔輸送材料は、例えば下記の化合物群3で示される化合物の中から少なくとも1つを含むものである。
【0077】
【0078】
化学式(4)で、Ar8は置換又は無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基
、置換又は無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、置換又は無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換又は無置換のシリル基、ハロゲン原子、重水素原子、及び水素原子の中から選択される。
【0079】
Ar8は置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のビフェニル基、及び置換又は
無置換のカルバゾリル基の中から選択されるものである。
【0080】
Ar8は置換又は無置換のシリル基で置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換の
アリール基で置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のアリール基で置換又は無置換のビフェニル基、及び置換又は無置換のアリール基で置換又は無置換のカルバゾリル基の中から選択されるものである。
【0081】
Ar8は置換又は無置換のトリフェニルシリル基で置換又は無置換のフェニル基、置換
又は無置換のフェナントリル基で置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のジベンゾフリル基で置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のカルバゾリル基で置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のトリフェニレン基で置換又は無置換のフェニル基、及び置換又は無置換のフェニル基で置換又は無置換のカルバゾリル基の中から選択されるものである。
【0082】
化学式(4)で、Ar8はR6及びR13の中から少なくとも1つと結合して環を形成するものである。Ar8はR6及びR13の中から少なくとも1つと結合し、これにしたがって第4正孔輸送材料は化合物構造内に置換又は無置換のbenzo furo quinolino acridine基を含む。
【0083】
化学式(4)で、R9はR10と結合してXを含む環を形成するものである。Xは直接結
合又はCR14R15である。Ar8と結合するNとXは5角環を形成することもあり、6角
環を形成することもできる。
【0084】
R9はR10と結合して、環を形成し、これにしたがって第4正孔輸送材料は化合物構造
内に置換又は無置換のインドロカルバゾリル基、置換又は無置換のベンゾ[def]カルバゾリル基、置換又は無置換のベンゾカルバゾリル基、置換又は無置換のbenzofurocarbazole基又は置換又は無置換のbenzo[def]indolocarbazole基を含んでもよい。
【0085】
化学式(4)で、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、及びR15は各々独立に、例えば置換又は無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換又は無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、置換又は無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換又は無置換のシリル基、ハロゲン原子、重水素原子、及び水素原子の中から選択される。
【0086】
R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、及びR15は各々独立に、例えば置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のナフチル基、置換又は無置換のカルバゾリル基、置換又は無置換のベンゾ[def]カルバゾリル基、置換又は無置換のフルオレニル基、置換又は無置換のジベンゾフリル基、置換又は無置換のトリフェニレン基、置換又は無置換のフェナントリル基、及び置換又は無置換のジベンゾシロール基の中から選択されるものである。
【0087】
R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、及びR15は各々独立に、例えば置換又は無置換のアリール基で置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のシリル基で置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のアリール基で置換又は無置換のナフチル基、置換又は無置換のアリール基で置換又は無置換のカルバゾリル基、置換又は無置換のアリール基で置換又は無置換のベンゾ[def]カルバゾリル基、置換又は無置換のアリール基で置換又は無置換のフルオレニル基、置換又は無置換のアリール基で置換又は無置換のジベンゾフリル基、置換又は無置換のアリール基で置換又は無置換のトリフェニレン基、置換又は無置換のアリール基で置換又は無置換のフェナントリル基、及び置換又は無置換のアリール基で置換又は無置換のジベンゾシロール基の中から選択されるものである。
【0088】
R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、及びR15は各々独立に、例えば置換又は無置換のトリフェニルシリル基で置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のカルバゾリル基で置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のジベンゾフリル基で置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のカルバゾリル基で置換又は無置換のナフチル基、置換又は無置換のフェニル基で置換又は無置換のカルバゾリル基、置換又は無置
換のカルバゾリル基で置換又は無置換のカルバゾリル基、置換又は無置換のフェニル基で置換又は無置換のベンゾ[def]カルバゾリル基、置換又は無置換のカルバゾリル基で置換又は無置換のベンゾ[def]カルバゾリル基、置換又は無置換のカルバゾリル基で置換又は無置換のフルオレニル基、置換又は無置換のカルバゾリル基で置換又は無置換のジベンゾフリル基、置換又は無置換のベンゾ[def]カルバゾリル基で置換又は無置換のジベンゾフリル基、置換又は無置換のカルバゾリル基で置換又は無置換のトリフェニレン基、置換又は無置換のカルバゾリル基で置換又は無置換のフェナントリル基、及び置換又は無置換のカルバゾリル基で置換又は無置換のジベンゾシロール基の中から選択されるものである。
【0089】
第4正孔輸送材料は、例えば下記の化合物群4で示される化合物の中から少なくとも1つを含むものである。
【0090】
【0091】
正孔輸送領域HTRは先に言及された物質の以外に、導電性向上のために電荷生成物質をさらに含んでもよい。電荷生成物質は正孔輸送領域HTR内に均一に又は不均一に分散されてあり得る。電荷生成物質は、例えばp-ドーパント(dopant)である。p-ドーパントはキノン(quinone)誘導体、金属酸化物及びシアノ(cyano)基含有化合物の中でいずれか1つであるが、これらに限定されない。例えば、p-ドーパントの非制限的な例としては、TCNQ(Tetracyanoquinodimethane)及びF4-TCNQ(2、3、5、6-tetrafluoro-tetracyanoquinodimethane)等のキノン誘導体、タングステン酸化物及びモリブデン酸化物等の金属酸化物等を挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
先に言及されたように、正孔輸送領域HTRは正孔注入層HIL、第1正孔輸送層HTL1及び第2正孔輸送層HTL2の以外に、正孔バッファ層及び電子ブロック層の中で少なくとも1つをさらに含んでもよい。正孔バッファ層は、発光層EMLから放出される光の波長による共振距離を補償して光の放出効率を増加させることができる。正孔バッファ層に含まれる物質としては正孔輸送領域HTRに含まれることができる物質を使用することができる。電子ブロック層は電子輸送領域ETRから正孔輸送領域HTRへの電子注入を防止する役割をする層である。
【0093】
発光層EMLは正孔輸送領域HTR上に設けられる。発光層EMLは第2正孔輸送層HTL2上に設けられる。発光層EMLの厚さは、例えば約100Å以上約300Å以下である。発光層EMLは単一物質からなされた単一層、複数の互に異なる物質からなされた単一層、又は複数の互に異なる物質からなされた複数の層を有する多層構造を有することができる。
【0094】
発光層EMLはレッド光、グリーン光、ブルー光、ホワイト光、イエロー光、シアン光の中で1つを発光するものである。発光層EMLは蛍光物質又は燐光物質を含む。発光層EMLは熱活性遅延蛍光材料を含んでもよい。また、発光層EMLはホスト及びドーパントを含んでもよい。発光層EMLは、例えば10nm以上60nm以下の厚さを有する。
【0095】
ホストは通常的に使用する物質であれば、特別に限定しないが、例えばAlq3(tris(8-hydroxyquinolino)aluminum)、CBP(4、4’-bis(N-carbazolyl)-1、1’-biphenyl)、PVK(poly(n-vinylcabazole)、ADN(9、10-di(naphthalene-2-yl)anthracene)、TCTA(4、4’、4’’-Tris(carbazol-9-yl)-triphenylamine)、TPBi(1、3、5-tris(N-phenylbenzimidazole-2-yl)benzene)、TBADN(3-tert-butyl-9、10-di(naphth-2-yl)anthracene)、DSA(distyrylarylene)、CDBP(4、4′-bis(9-carbazolyl)-2、2′-dimethyl-biphenyl)、MADN(2-Methyl-9、10-bis(naphthalen-2-yl)anthracene)等を使用してもよい。
【0096】
ドーパントはドナー基及びアクセプタ基を備える発光材料(熱活性化遅延蛍光物質)を含む。
【0097】
発光層EMLが赤色を発光する場合、発光層EMLは、例えば、ホスト材料として、例えば、4、4’-bis(9-carbazolyl)-1、1’-biphenyl(CBP)13、5-tri[(3-pyridyl)-phen-3-yl]benzene(BmPyPb)を含んでもよい。ドーパントは、例えば4、4’、4’’-(1、
3、3a1、4、6、7、9-heptaazaphenalene-2、5、8-triyl)tris(N、N-bis(4-(tert-butyl)phenyl)aniline)(HAP-3TPA)、2、4、6-Tri(4-(10H-phenoxazin-10H-yl)phenyl)-1、3、5-triazine(tri-PXZ-TRZ)及びその誘導体で選択することができる。
【0098】
発光層EMLが緑色を発光する場合、発光層EMLは、例えば、ホスト材料として、例えば、N、N’-dicarbazolyl-3、5-benzene(mCP)、1、3、5-tri[(3-pyridyl)-phen-3-yl]benzene(BmPyPb)を含むことができる。ドーパントは、例えば、1、2、3、5-tetrakis(carbazol-9-yl)-4、6-dicyanobenzene(4CzIPN)、2、5-bis(carbazol-9-yl)-1、4-dicyanobenzene(CzTPN)及びその誘導体から選択することができる。
【0099】
発光層EMLが青色を発光する場合、発光層EMLは、例えばホスト材料として、例えば4、4’、4’’-Tris(carbazol-9-yl)-triphenylamine(TCTA)を含むことができる。ドーパントは、例えばBis[4-(9、9-diMethyl-9、10-dihydroacridine)phenyl]solfone(DMAC-DSP)、4、5-bis(carbazol-9-yl)-1、2-dicyanobenzene(2CzPN)、m-bisCzTRZ、及びその誘導体から選択することができる。
【0100】
電子輸送領域ETRは発光層EML上に設けられる。電子輸送領域ETRは、電子ブロック層、電子輸送層ETL、及び電子注入層EILの中、少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。
【0101】
電子輸送領域ETRは単一物質からなる単一層、複数の互に異なる物質からなる単一層、又は複数の互に異なる物質からなる複数の層を有する多層構造を有していてもよい。
【0102】
例えば、電子輸送領域ETRは、電子注入層EIL又は電子輸送層ETLの単一層の構造を有してもよく、電子注入物質と電子輸送物質からなされた単一層の構造を有してもよい。また、電子輸送領域ETRは、複数の互いに異なる物質からなる単一層の構造を有してもよいし、或いはアノードANから順に積層された電子輸送層ETL/電子注入層EIL、正孔ブロック層/電子輸送層ETL/電子注入層EIL構造を有してもよい。しかし、これらに限定されない。電子輸送領域ETRの厚さは、例えば約1000Å以上約1500Å以下であってもよい。
【0103】
電子輸送領域ETRは、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法(Langmuir-Blodgett)、インクジェットプリンティング法、レーザープリンティング法、レーザー熱転写法(Laser Induced Thermal Imaging、LITI)等の多様な方法を用いして形成することができる。
【0104】
電子輸送領域ETRが電子輸送層ETLを含む場合、電子輸送領域ETRは、Alq3(Tris(8-hydroxyquinolinato)aluminum)、1、3、5-tri[(3-pyridyl)-phen-3-yl]benzene、2、4、6-tris(3’-(pyridin-3-yl)biphenyl-3-yl)-1、3、5-triazine、2-(4-(N-phenylbenzoimidazolyl-1-ylphenyl)-9、10-dinaphthylanthracene、TPBi(1、3、5-Tri(1-phenyl-1H-benzo[d]imidazol-2-yl)phenyl)、BCP(2、9-Dimethyl-4、7
-diphenyl-1、10-phenanthroline)、Bphen(4、7-Diphenyl-1、10-phenanthroline)、TAZ(3-(4-Biphenylyl)-4-phenyl-5-tert-butylphenyl-1、2、4-triazole)、NTAZ(4-(Naphthalen-1-yl)-3、5-diphenyl-4H-1、2、4-triazole)、tBu-PBD(2-(4-Biphenylyl)-5-(4-tert-butylphenyl)-1、3、4-oxadiazole)、BAlq(Bis(2-methyl-8-quinolinolato-N1、O8)-(1、1’-Biphenyl-4-olato)aluminum)、Bebq2(berylliumbis(benzoquinolin-10-olate)、ADN(9、10-di(naphthalene-2-yl)anthracene)及びこれらの混合物を含んでもよいが、これらに限定されない。電子輸送層ETLの厚さは約100Å以上約1000Å以下であり、例えば約150Å以上約500Å以下であってもよい。電子輸送層ETLの厚さが前述した範囲を満足する場合、実質的に駆動電圧を上昇させることなしに、駆動に必要な電子輸送特性を得ることができる。
【0105】
電子輸送領域ETRが電子注入層EILを含む場合、電子輸送領域ETRは、LiF、LiQ(Lithium quinolate)、Li2O、BaO、NaCl、CsF
、Yb等のランタノイド族金属、又はRbCl、RbI等のハロゲン化の金属等が使用しうるが、これらに限定されない。また、電子注入層EILは電子輸送物質と絶縁性の有機金属塩(organo metal salt)とが混合された物質であってもよい。有機金属塩は、エネルギーバンドギャップ(energy bandgap)が約4eV以上の物質である。具体的には、有機金属塩は、金属アセテート(metal acetate)、金属ベンゾエート(metal benzoate)、金属アセトアセテート(metal acetoacetate)、金属アセチルアセトネート(metal acetylacetonate)、又は金属ステアレート(stearate)を含んでいてもよい。電子注入層EILの厚さは約1Å以上約100Å以下であり、たとえば約3Å以上約90Å以下であってもよい。電子注入層EILの厚さが前述した範囲を満足する場合、実質的に駆動電圧を上昇させることなしに、駆動に必要な程度の電子注入特性を得ることができる。
【0106】
電子輸送領域ETRは、先述のとおり、正孔ブロック層を含む。正孔ブロック層は、例えばBCP(2、9-dimethyl-4、7-diphenyl-1、10-phenanthroline)及びBphen(4、7-diphenyl-1、10-phenanthroline)の中、少なくとも1つを含んでもよいが、これに限定されない。
【0107】
カソードCATは電子輸送領域ETR上に設けられる。カソードCATは、共通電極又は陰極であってもよい。カソードCATは透過型電極、半透過型電極、又は反射型電極であってもよい。カソードCATが透過型電極である場合には、カソードCATは透明金属酸化物である。透明金属酸化物導電体としては、例えば、ITO(indium tin
oxide)、IZO(indium zinc oxide)、ZnO(zinc oxide)、ITZO(indium tin zinc oxide)等が挙げられる。
【0108】
カソードCATが半透過型の電極又は反射型電極である場合には、カソードCATはAg、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Mo、Ti又はこれらの化合物、或いは混合物(例えば、AgとMgとの混合物)を含んでもよいし、これらで形成された反射膜や半透過膜であってもよいし、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zin
c oxide)、ZnO(zinc oxide)、ITZO(indium tin
zinc oxide)等で形成された透明導電膜を含む複数の層構造を有する薄膜であってもよい。
【0109】
カソードCATは補助電極と接続してもよい(図示省略)。カソードCATが補助電極と接続されれば、カソードCATの抵抗を減少させることができる。
【0110】
有機電界発光素子10で、アノードANとカソードCATとに各々電圧が印加されることによって、アノードANから注入された正孔は正孔輸送領域HTRを経て発光層EMLへ移動し、カソードCATから注入された電子が電子輸送領域ETRを経て発光層EMLへ移動する。電子と正孔とは発光層EMLで再結合して励起子を生成し、励起子が励起状態で基底状態に戻りながら、発光するようになる。
【0111】
有機電界発光素子10が前面発光型素子である場合、アノードANは反射型電極であり、カソードCATは透過型電極又は半透過型電極である。有機電界発光素子10が背面発光型素子である場合、アノードANは透過型電極又は半透過型電極であり、カソードCATは反射型電極である。
【0112】
本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子は、アミノ基を含む第1正孔輸送材料又は第2正孔輸送材料を含む第1正孔輸送層を含み、1つのアミノ基を含む第3正孔輸送材料又はN原子を含む環を含む第4正孔輸送材料を含む第2正孔輸送層を含む。そして、第1正孔輸送材料及び第2正孔輸送材料各々はアミノ基を含んでいることから、正孔輸送性が高い。また、第3正孔輸送材料は1つのアミノ基を含み、第4正孔輸送材料はN原子を含む環を含んでいるから、電荷耐性が高い。よって、本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子は、発光層内で正孔と電子との電荷バランスに優れる。したがって、本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子は、発光層内で正孔と電子との電荷バランスに優れるため、高い発光効率及び長寿命を実現することができる。
【0113】
以下、具体的な実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。下記の実施例は本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲はこれらに限定されない。
【実施例】
【0114】
[合成例]
[化合物の合成]
(化合物Aの合成)
【化25】
Ar雰囲気下で200mLの3口フラスコに9-Phenylcarbazole-3-boronic Acid 2.87gと1-Bromo-4-iodobenzene
2.99g、Pd(PPh
3)
4 0.33g、炭酸カリウム 1.86gとを添加して50mLトルエン、20mLの水の混合溶媒の中で、90℃で8時間加熱攪拌した。空冷の後、水を添加して有機層を分離し、溶媒留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタンとヘキサンとの混合溶媒を使用)で精製した後、トルエン及びヘキサン混合溶媒に再結晶を実施して白色固体化合物Aを 3.50g(収
率88%)得た。FAB-MS測定により測定された化合物Aの分子量は398であった。FAB-MSはJEOL社のJMS-700Vを使用して測定し、NMRはBruker Biospin KK社のAVAVCE300Mを使用して1H-NMRを測定した。
【0115】
(化合物2-3の合成)
【化26】
Ar雰囲気下で、200mLの3口フラスコに化合物A 3.98gとN-[1、1’-biphenyl]-4-yl-9、9-dimethyl-9H-Fluoren-2-amine 3.62g、Pd(dba)
2 0.563g、(t-Bu)
3P 0.19g、ナトリウムt-ブトキシド6.44gを添加して、130mLトルエン溶媒で8時間加熱還流攪拌した。空冷の後、水を添加して有機層を分離し、溶媒留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエンとヘキサンとの混合溶媒を使用)で精製した後、トルエン及びヘキサン混合溶媒に再結晶し、黄色の固体化合物2-3を4.75g(収率70%)得た。FAB-MS測定によって測定された化合物2-3の分子量は679であった。FAB-MSはJEOL社のJMS-700Vを使用して測定し、NMRはBruker Biospin KK社のAVAVCE300Mを使用して1H-NMRを測定した。
【0116】
(化合物2-11合成)
化合物2-3の合成でN-[1、1’-biphenyl]-4-yl-9、9-dimethyl-9H-Fluoren-2-amineの代わりにN-(9、9-dimethyl-9H-fluoren-2-yl)-9、9-dimethyl-9H-fluoren-2-amineを使用したことを除いては同一の合成方法に合成した。FAB-MS測定によって測定された化合物2-11の分子量は719であった。FAB-MSはJEOL社のJMS-700Vを使用して測定し、NMRはBruker Biospin KK社のAVAVCE300Mを使用して1H-NMRを測定した。
【0117】
(化合物2-19合成)
化合物2-3の合成でN-[1、1’-biphenyl]-4-yl-9、9-dimethyl-9H-Fluoren-2-amineの代わりにN-[4-(1-naphthalenyl)phenyl]-[1、1’-Biphenyl]-4-amineを使用したことを除いては、同一の合成方法で合成した。FAB-MS測定によって測定された化合物2-19の分子量は689であった。FAB-MSはJEOL社のJMS-700Vを使用して測定し、NMRはBruker Biospin KK社のAVAVCE300Mを使用して1H-NMRを測定した。
【0118】
(化合物3-2合成)
【化27】
Ar雰囲気下で200mLの3口フラスコに4-[bis(1、1’-biphenyl]-4-yl)amino]phenylboronic acid 4.40g及び4-Bromotetraphenylsilane 4.15g、Pd(PPh
3)
4 0.263g、炭酸カリウム 2.44gを添加して50mLトルエン、20mLの水の混合溶媒の中で90℃、8時間、加熱攪拌した。空冷の後、水を添加して有機層を分離し、溶媒留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタンとヘキサンとの混合溶媒を使用)で精製した後、トルエン及びヘキサンの混合溶媒に再結晶を実施して白色固体化合物3-2を6.33g(収率88%)得た。FAB-MS測定により測定された化合物3-2の分子量は、719であった。FAB-MSはJEOL社のJMS-700Vを使用して測定し、NMRはBruker Biospin KK社のAVAVCE300Mを使用して1H-NMRを測定した。
【0119】
(化合物3-17の合成)
化合物3-2の合成で4-Bromotetraphenylsilaneの代わりに9-(3-bromophenyl)-9H-Carbazoleを使用したことを除いては同一の合成方法で合成した。FAB-MS測定によって測定された化合物3-17の分子量は639であった。FAB-MSはJEOL社のJMS-700Vを使用して測定し、NMRはBruker Biospin KK社のAVAVCE300Mを使用して1H-NMRを測定した。
【0120】
[有機電界発光素子の作製]
ITOで150nm厚さの陽極を形成し、HAT-CN(2、3、6、7、10、11-Hexacyano-1、4、5、8、9、12-hexaazatriphenylene)で5nm厚さの正孔注入層を形成し、下記の表1で表示された材料で10nm厚さの第1正孔輸送層を形成し、下記の表1で表示された材料で100nm厚さの第2正孔輸送層を形成し、4CzIPN(2、4、5、6-tetrakis(carbazol-9-yl)-1、3-dicyanobenzene)及びmCBP(3、3-Di(9H-carbazol-9-yl)biphenyl)で20nmの発光層を形成し、T2T(2、4、6-tris(biphenyl-3-yl)-1、3、5-triaxine)で5nm厚さの第1電子輸送層を形成し、BPy-TP2で25nm厚さの第2電子輸送層を形成し、LiFで1nm厚さの電子注入層を形成し、Alで100nm厚さの陰極を形成した。
【0121】
素子の電流密度はKeithley Instruments社の2400 SeriesのSource Meter、電圧は株式会社Konica Monilta Holdings社の色彩輝度計CS-200、発光効率は株式会社日本national Instruments社の測定用PC Program LabVIEW 8.2を使用して測定した。
【0122】
【0123】
Tris-PCz:9、9´-Diphenyl-6-(9-phenyl-9H-carbazol-3-yl)-9H、9´H-3、3´-bicarbazole
[比較例化合物]
【化28】
【0124】
表1を参照すれば、実施例1から16までの有機電界発光素子が比較例1及び2の有機電界発光素子より発光効率が高く、寿命が長いことを確認することができる。比較例1はアミノ基を含まないTris-PCzを第1正孔輸送層の材料に含み、第2正孔輸送層は含まないので、正孔輸送性が低く電荷バランスが低く、素子の寿命が短い。また、比較例2は第2正孔輸送層にジアミン化合物である比較例化合物1を含み、電荷耐性が低く、これにしたがって素子の寿命が短い。
【0125】
以上、添付された図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須的な特徴を変形させずに、他の具体的な形態においても実施できる。したがって、上記した実施形態はすべて例示的なものであり、限定的なものではない。
【符号の説明】
【0126】
10 有機電界発光素子
AN アノード
HTR 正孔輸送領域
EML 発光層
ETR 電子輸送領域
CAT カソード