(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】X線支持装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20230313BHJP
【FI】
A61B6/00 310
A61B6/00 300D
(21)【出願番号】P 2018226943
(22)【出願日】2018-12-04
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390028820
【氏名又は名称】蔵前産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092808
【氏名又は名称】羽鳥 亘
(74)【代理人】
【識別番号】100140981
【氏名又は名称】柿原 希望
(72)【発明者】
【氏名】橋本 勝
(72)【発明者】
【氏名】桑原 勇幸
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-193177(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0310903(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱部を備えた台車部と、先側にX線撮影装置が設置されるとともに前記支柱部に対し回動可能に固定した支持アームと、前記支持アームと前記支柱部とを繋ぎ伸縮可能なガススプリングと、を有するX線支持装置において、
前記ガススプリングが自身の伸縮状態をロックするロック機構を備えるとともに、前記ロック機構を操作する操作部を有
し、
前記操作部が支持アームに設置され、前記操作部と前記ロック機構とがアウターケーブル内をスライド移動するインナーケーブルで接続することを特徴とするX線支持装置。
【請求項2】
X線撮影装置がポータブルX線撮影装置であることを特徴とする請求項1記載のX線支持装置。
【請求項3】
操作部が操作ハンドルを備え、前記操作ハンドルは開放状態に付勢されるとともに、ロック機構は前記操作ハンドルの開放状態でロックされ操作状態でロック解除することを特徴とする
請求項1または請求項2に記載のX線支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポータブル型のX線撮影装置を適切な撮影位置に保持する支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯科医院や被災地、移動が困難な高齢患者等のX線撮影のため、例えば下記[特許文献1]に示すような移動型のX線撮影システムが実用化されている。また、[特許文献1]に記載の移動型X線撮影システムよりもさらに小型で持ち運びが可能なポータブル型X線撮影装置も実用化されている。
【0003】
このようなポータブル型X線撮影装置では操作者(医師又は診療放射線技師)が目的の部位(患部等)に撮影部を位置させ、その状態で保持する必要がある。そして、このポータブル型X線撮影装置の保持はX線支持装置によって行うことが一般的である。ここで、従来のX線支持装置の構成を
図4に示す。
図4に示す従来のX線支持装置10は、支柱部22を備えた台車部20と、先側にX線撮影装置1が設置されるとともに支柱部22に対し回動可能に固定した支持アーム24と、を有している。また、支持アーム24と支柱部22との間には伸縮可能なガススプリング12が設けられ、このガススプリング12によってX線撮影装置1の上下方向の懸垂バランスが取られ、支持アーム24の回動によるX線撮影装置1の位置合わせ作業を楽に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のようにガススプリング12を設けることにより支持アーム24の回動を楽に行うことが可能となった。しかしながら、X線撮影装置1の撮影時には支持アーム24をその位置で固定する必要があり、この固定は従来のX線支持装置10では回転部18に設けられた固定ハンドル14を操作して回転部18内の固定摩擦板を締め付けることで行われてきた。しかしながら、支持アーム24の先端に位置するX線撮影装置1を保持しながら支持アーム24の基側にある固定ハンドル14を一人で操作することは容易ではなく、スムーズな位置合わせ作業の障害となる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、支持アームの固定と解除とを簡単に行う事が可能なX線支持装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)支柱部22を備えた台車部20と、先側にX線撮影装置1が設置されるとともに前記支柱部22に対し回動可能に固定した支持アーム24と、前記支持アーム24と前記支柱部22とを繋ぎ伸縮可能なガススプリング40と、を有するX線支持装置において、
前記ガススプリング40が自身の伸縮状態をロックするロック機構を備えるとともに、前記ロック機構を操作する操作部30を有し、前記操作部30が支持アーム24に設置され、前記操作部30と前記ロック機構とがアウターケーブル50b内をスライド移動するインナーケーブル50aで接続することを特徴とするX線支持装置80を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)X線撮影装置1がポータブルX線撮影装置であることを特徴とする上記(1)記載のX線支持装置80を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)操作部30が操作ハンドル34を備え、前記操作ハンドル34は開放状態に付勢されるとともに、ロック機構は前記操作ハンドル34の開放状態でロックされ操作状態でロック解除することを特徴とする上記(1)または(2)に記載のX線支持装置80を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るX線支持装置は、ガススプリングのロック機構による支持アームの固定と解除とを操作者の手元側に設けられた操作部によって行う。これにより、位置合わせ作業と固定作業とを一連の動作で迅速かつスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本発明に係るX線支持装置の操作部の部分拡大図である。
【
図3】本発明に係るX線支持装置のワイヤケーブルとガススプリングとの接続部分の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るX線支持装置80の実施の形態について図面に基づいて説明する。尚、従来と同等の構成に関しては同符号にて表す。
図1に示す本発明に係るX線支持装置80は、支柱部22を備えた台車部20と、先側にX線撮影装置1が設置されるとともに支柱部22に対し回動可能に固定した支持アーム24と、この支持アーム24と支柱部22とを繋ぎ伸縮可能なガススプリング40と、を有している。
【0011】
また、ガススプリング40は、周知のガスが充填したシリンダ40aと、このシリンダ40a内をスライド移動するピストンロッド40bと、を有しており、このピストンロッド40bがシリンダ40a内をスライド移動することでガススプリング40全体としての長さが伸縮する。また、ガススプリング40の両端(シリンダ40aの基端、及びピストンロッド40bの先端)は支持アーム24及び支柱部22に対し回動可能に設置され、これによりガススプリング40は支持アーム24の回動、即ち支持アーム24と支柱部22との挟角の変化に応じて傾きと長さとが変化し、X線撮影装置1の懸垂バランスを取りながら支持アーム24のスムーズな回動を可能とする。そして、特に本発明に係るX線支持装置80では、このガススプリング40として自身の伸縮状態を固定可能なロック機構を備えたものを用いる。
【0012】
また、台車部20は、前述のように垂直方向に伸びる支柱部22を有するとともに、底側にキャスタ26を備えており、人力による移動が可能である。また、支持アーム24は先側にX線撮影装置1を固定する取付部を備えており、基側が回動軸28を介して支柱部22の上部に固定する。尚、本発明に用いるX線撮影装置1としては撮影部と本体部とが一体的に構成されたポータブルX線撮影装置が最も好適であるが、本発明は一体型のポータブルX線撮影装置に限定されるものではなく、ポータブル型であれば撮影部と制御部とが分離したX線撮影装置を用いても良い。尚、一般的なポータブルX線撮影装置(分離型ではX線撮影装置の撮影部)には取付けハンガー1aが設けられており、この取付けハンガー1aに支持アーム24の取付部を固定することで、X線撮影装置1を支持アーム24に固定することが可能である。
【0013】
また、本発明に係るX線支持装置80は、ガススプリング40のロック機構を操作する操作部30を有している。尚、操作部30の設置箇所は操作者がX線撮影装置1に片手を添えても容易に操作可能な箇所とし、特に支持アーム24のアーム部分とする。
【0014】
次に、操作部30及びガススプリング40のロック機構に関して更に詳しく説明する。ここで、
図2(a)、(b)は本発明に係るX線支持装置80の操作部30の部分拡大図である。
図2に示す操作部30は、支持アーム24に固定した取付板32と、この取付板32に対し回動可能に設置された操作ハンドル34と、この操作ハンドル34を支持アーム24に対して立ち上がった開放状態に付勢する弾性部材36と、を有している。そして、この操作部30にはワイヤケーブル50が接続する。尚、ワイヤケーブル50は、インナーケーブル50aと、このインナーケーブル50aが内部をスライド移動するとともにワイヤケーブル50を対象物に固定するためのチューブ状のアウターケーブル50bと、を有している。そして、インナーケーブル50aの一端が操作ハンドル34と接続し、アウターケーブル50bの一端が取付板32に固定することで、操作ハンドル34の倒伏動作がインナーケーブル50aのスライド移動に変換されて他端側に伝達する。
【0015】
次に、ワイヤケーブル50とガススプリング40のロック機構との接続部分に関して
図3を用いて説明する。尚、本例ではシリンダ40a側が支持アーム24と接続し、ピストンロッド40b側が支柱部22と接続した例を示しているが、ピストンロッド40b側を支持アーム24に接続し、シリンダ40a側を支柱部22に接続するようにしても良い。この場合、後述するロッド固定部66等の構成は支持アーム24側に設けられる。
【0016】
先ず、ガススプリング40のピストンロッド40bの先端には、ガススプリング40のロック状態を解除するプッシュピン42が設けられている。尚、このプッシュピン42は荷重の掛からないフリーの状態ではピストンロッド40bの先端から突出し、このときガススプリング40のロック機構はロック状態となる。また、プッシュピン42を押圧してピストンロッド40b側に押込むとロック機構のロック状態は解除される。そして、ピストンロッド40bの端部は、このプッシュピン42が例えば下方に貫通するなどして可動な状態でロッドプレート62と固定する。また、支柱部22にはロッド固定部66が設けられ、ロッドプレート62とこのロッド固定部66とは回転軸64を介して回動可能に固定する。また、プッシュピン42の先端には押圧プレート52が当接し、この押圧プレート52の一端側は回転軸54を介してロッドプレート62に回動可能に固定する。さらに、押圧プレート52の他端側にはインナーケーブル50aの他端が固定するとともに、アウターケーブル50bの他端はロッドプレート62と固定する。
【0017】
次に、本発明に係るX線支持装置80の動作を説明する。先ず、X線撮影装置1を支持アーム24の先端に例えば取付けハンガー1aを介して固定する。次に、操作者がX線支持装置80を撮影場所に移動する。このとき、操作部30の操作ハンドル34は弾性部材36の弾性力によって開放状態、即ち、
図2(a)に示すように、支持アーム24に対して立ち上がった状態に維持される。このとき、押圧プレート52は、
図3(a)に示すように、プッシュピン42が突出する開状態となる。そして、プッシュピン42が突出した開状態ではガススプリング40のロック機構はロック状態にあり、ガススプリング40は伸縮せず、これにより支持アーム24は回動不可の固定状態となる。
【0018】
次に、操作者は操作部30の操作ハンドル34を握持するなどして倒伏させ、
図2(b)に示す操作状態とする。これにより、操作ハンドル34と接続したインナーケーブル50aが引っ張られ、アウターケーブル50b内をスライド移動する。そして、このインナーケーブル50aのスライド移動は他端に接続した押圧プレート52に伝達し、
図3(b)に示すように、この押圧プレート52を引き上げる。これにより、押圧プレート52が回転軸54を軸に閉方向に回動しプッシュピン42をピストンロッド40b側に押込む。これにより、ガススプリング40のロック状態は解除され、ガススプリング40の伸縮が可能となる。これにより、支持アーム24が支柱部22に対して回動可能な状態となる。そして、操作者は操作ハンドル34を操作状態に維持したまま支持アーム24を適宜回動させ、X線撮影装置1を目的の撮影位置に位置させる。そして、操作ハンドル34を開放する。これにより、操作ハンドル34は弾性部材36の弾性力によって
図2(a)に示す開放状態に復帰するとともにインナーケーブル50aを押し込み、押圧プレート52を
図3(a)に示す開状態とする。これにより、プッシュピン42がピストンロッド40bの先端から突出し、ガススプリング40はロック状態となる。これにより、ガススプリング40の伸縮は不可となり、支持アーム24はこの状態で固定する。そして、操作者はX線撮影装置1を操作して目的の部位のX線撮影を行う。
【0019】
以上のように、本発明に係るX線支持装置80は、ガススプリング40のロック機構による支持アーム24の固定と解除とを操作者の手元側に設けられた操作部30によって行う。これにより、従来のX線支持装置10のように支持アーム24の固定作業を別に行う必要が無く、位置合わせ作業と固定作業、即ち、支持アーム24の固定解除、支持アーム24の回動によるX線撮影装置1の位置合わせ、その位置での支持アーム24の固定、を一連の動作で迅速かつスムーズに行うことができる。特に、操作部30を支持アーム24に設けたため、支持アーム24の操作部30を適宜握持することで上記の位置合わせ作業と固定作業とを支持アーム24から手を離さずに極めてスムーズに行うことができる。
【0020】
尚、本例で示したX線支持装置80、操作部30、プッシュピン42の押圧機構等の構成は一例であり、各部の形状、動作機構、寸法、デザイン等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 X線撮影装置
20 台車部
22 支柱部
24 支持アーム
30 操作部
34 操作ハンドル
40 ガススプリング
50a インナーケーブル
50b アウターケーブル
80 X線支持装置