(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】ハブユニット軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 33/78 20060101AFI20230314BHJP
F16C 19/18 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
F16C33/78 Z
F16C19/18
(21)【出願番号】P 2018242905
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷川 拓真
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-113895(JP,A)
【文献】特開2015-17674(JP,A)
【文献】特開2013-194908(JP,A)
【文献】特開2018-35825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/78,19/18
B60B 35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪部材と、複数の転動体を介して前記外輪部材に対して回転可能に設けられる内輪部材と、前記複数の転動体を周方向に略等間隔に保持する保持器と、前記外輪部材と前記内輪部材との間の軸受内部空間のアウトボード側を塞ぐシール部材と、を備えるハブユニット軸受であって、
前記内輪部材は、その外径面から径方向外方に延出する板状のフランジ部を有し、
前記シール部材は、前記外輪部材のアウトボード側端部の内径面に固定される円環状の芯金と、前記芯金に固着される弾性シール部と、を備え、
前記弾性シール部は、前記芯金の内径側に形成され、前記内輪部材に摺接する少なくとも1つの接触リップと、前記芯金の外径側に形成され、前記外輪部材のアウトボード側端部の外径面よりも径方向外側に突出する堰部と、を有し、
前記堰部に、複数の突起が形成され
、
前記堰部は、前記シール部材の全周に亘って形成され、
前記複数の突起は、前記堰部のインボード側の側面の表面に間欠的に形成されることを特徴とするハブユニット軸受。
【請求項2】
前記弾性シール部は、前記少なくとも1つの接触リップよりも径方向外側に設けられる非接触リップを更に有し、
前記非接触リップ
の外表面に、前記複数の突起が形成されることを特徴とする請求項1に記載のハブユニット軸受。
【請求項3】
外輪部材と、複数の転動体を介して前記外輪部材に対して回転可能に設けられる内輪部材と、前記複数の転動体を周方向に略等間隔に保持する保持器と、前記外輪部材と前記内輪部材との間の軸受内部空間のアウトボード側を塞ぐシール部材と、を備えるハブユニット軸受であって、
前記内輪部材は、その外径面から径方向外方に延出する板状のフランジ部を有し、
前記シール部材は、前記外輪部材のアウトボード側端部の内径面に固定される円環状の芯金と、前記芯金に固着される弾性シール部と、を備え、
前記弾性シール部は、前記芯金の内径側に形成され、前記内輪部材に摺接する少なくとも1つの接触リップと、前記少なくとも1つの接触リップよりも径方向外側に設けられる非接触リップと、を有し、
前記非接触リップ
の外表面に、複数の突起が形成されることを特徴とするハブユニット軸受。
【請求項4】
前記複数の突起は、前記フランジ部が回転する時に前記外輪部材の周囲に発生する回転気流を乱流化するボルテックスジェネレータであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のハブユニット軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハブユニット軸受に関し、より詳細には、ハブユニット軸受のシール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ハブユニット軸受の周囲は、回転するハブフランジとブレーキロータに囲まれた空間になっているため、ハブフランジとブレーキロータに巻き上げられた空気が静止したバッキングプレートや外輪に沿って流れる気流となる他に、車両走行時の外輪の周囲にはより強力な回転気流が発生している。
【0003】
そして、ハブユニット軸受の周辺の空間に入り込んだ水滴は、車両走行中は、その回転気流に取り込まれて回転運動(周方向運動)するが、車両の速度が低下したり、停止したりした時は、回転していた水滴が外輪に付着するので、水滴が外輪の外径面を軸方向に勢いよく流れることはほぼなく、ハブユニット軸受のアウトボード側シール部材の耐水性向上のためには、回転気流に取り込まれた水滴を、シールリップの摺接点に接近させないようにすることが重要である。
【0004】
アウトボード側シール部材の耐水性向上を図った従来のハブユニット軸受として、外輪とハブ輪との間をシールするアウトボード側シール部材を備え、アウトボード側シール部材が、外輪の外径面よりも径方向外側に突出する円環状の堰部と、堰部から軸方向に突出し、外輪を囲うように形成される円筒状のひさし部と、を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1に記載のアウトボード側シール部材では、外輪の外径面を軸方向に流れる水滴を堰き止めることはできるものの、回転気流に取り込まれた水滴をシールリップの摺接点に接近させないようにすることはできなかった。
【0007】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転気流に取り込まれた水滴がシールリップの摺接点に接近するのを防止することができるハブユニット軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1)外輪部材と、複数の転動体を介して前記外輪部材に対して回転可能に設けられる内輪部材と、前記複数の転動体を周方向に略等間隔に保持する保持器と、前記外輪部材と前記内輪部材との間の軸受内部空間のアウトボード側を塞ぐシール部材と、を備えるハブユニット軸受であって、前記内輪部材は、その外径面から径方向外方に延出する板状のフランジ部を有し、前記シール部材は、前記外輪部材のアウトボード側端部の内径面に固定される円環状の芯金と、前記芯金に固着される弾性シール部と、を備え、前記弾性シール部は、前記芯金の内径側に形成され、前記内輪部材に摺接する少なくとも1つの接触リップと、前記芯金の外径側に形成され、前記外輪部材のアウトボード側端部の外径面よりも径方向外側に突出する堰部と、を有し、前記堰部に、複数の突起が形成されることを特徴とするハブユニット軸受。
(2)前記弾性シール部は、前記少なくとも1つの接触リップよりも径方向外側に設けられる非接触リップを更に有し、前記非接触リップに、前記複数の突起が形成されることを特徴とする(1)に記載のハブユニット軸受。
(3)外輪部材と、複数の転動体を介して前記外輪部材に対して回転可能に設けられる内輪部材と、前記複数の転動体を周方向に略等間隔に保持する保持器と、前記外輪部材と前記内輪部材との間の軸受内部空間のアウトボード側を塞ぐシール部材と、を備えるハブユニット軸受であって、前記内輪部材は、その外径面から径方向外方に延出する板状のフランジ部を有し、前記シール部材は、前記外輪部材のアウトボード側端部の内径面に固定される円環状の芯金と、前記芯金に固着される弾性シール部と、を備え、前記弾性シール部は、前記芯金の内径側に形成され、前記内輪部材に摺接する少なくとも1つの接触リップと、前記少なくとも1つの接触リップよりも径方向外側に設けられる非接触リップと、を有し、前記非接触リップに、複数の突起が形成されることを特徴とするハブユニット軸受。
(4)前記複数の突起は、前記フランジ部が回転する時に前記外輪部材の周囲に発生する回転気流を乱流化するボルテックスジェネレータであることを特徴とする(1)~(3)のいずれか1つに記載のハブユニット軸受。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シール部材の堰部や非接触リップに形成されるボルテックスジェネレータとなる複数の突起により、フランジ部が回転する時に外輪部材の周囲に発生する回転気流を乱流化することができるため、回転気流に取り込まれた水滴がシールリップの摺接点に接近するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るハブユニット軸受の第1実施形態を説明する断面図である。
【
図2】
図1に示すシール部材の周辺の拡大断面図である。
【
図3】第1実施形態のシール部材の第1変形例を説明する拡大断面図である。
【
図4】第1実施形態のシール部材の第2変形例を説明する拡大断面図である。
【
図5】第1実施形態のシール部材の第3変形例を説明する拡大断面図である。
【
図6】第1実施形態のシール部材の第4変形例を説明する拡大断面図である。
【
図7】第1実施形態のシール部材の第5変形例を説明する拡大断面図である。
【
図8】第1実施形態のシール部材の第6変形例を説明する拡大断面図である。
【
図9】第1実施形態のシール部材の第7変形例を説明する拡大断面図である。
【
図10】本発明に係るハブユニット軸受の第2実施形態を説明するシール部材の周辺の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るハブユニット軸受の各実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
(第1実施形態)
まず、
図1~
図9を参照して、本発明に係るハブユニット軸受の第1実施形態について説明する。
【0013】
本実施形態のハブユニット軸受10は、従動輪用のハブユニット軸受であり、
図1に示すように、外輪部材11と、内輪部材であるハブ輪12と、ハブ輪12とは別体の内輪部材であり、ハブ輪12に一体的に固定される内輪13と、外輪部材11の内径面とハブ輪12及び内輪13の外径面との間に転動可能に2列で配置される複数の玉(転動体)14と、この2列の複数の玉14を周方向で等間隔にそれぞれ保持する一対の保持器15と、外輪部材11と内輪部材(ハブ輪12、内輪13)との間の軸受内部空間10aのアウトボード側を塞ぐシール部材16と、軸受内部空間10aのインボード側を塞ぐキャップ17と、を備える。なお、アウトボード側とは、自動車に組み付けられた状態での幅方向外側となる
図1の左側であり、インボード側とは、幅方向中央側となる
図1の右側である。
【0014】
外輪部材11の内径面には、互いに平行な2列の外輪軌道面11a,11aが離間して形成されている。また、ハブ輪12及び内輪13の外径面には、それぞれ内輪軌道面12a,13aが外輪部材11の外輪軌道面11a,11aに対応して形成されている。外輪軌道面11a,11a及び内輪軌道面12a,13aで構成される2列の軌道には、保持器15によって転動可能に保持される複数の玉14が周方向で等間隔にそれぞれ配置されている。
【0015】
複数の玉14は、互いに背面組み合わせ型(DB)の接触角をなして外輪軌道面11a,11a及び内輪軌道面12a,13aに接触して、複列アンギュラ玉軸受が構成される。これにより、ハブ輪12及び内輪13は、外輪部材11に対して回転可能となる。
【0016】
ハブ輪12のインボード側端部には、小径段部12bが形成されており、この小径段部12bに内輪13を外嵌した後、小径段部12bの端部を径方向外側にかしめ加工することにより、内輪13がハブ輪12に固定される。また、かしめ加工によって内輪13を押圧することで、適正な予圧が付与される。
【0017】
ハブ輪12は、略円柱形状の部材であり、そのアウトボード側端部には、外径面から径方向外方に延出する板状のフランジ部12cが形成される。フランジ部12cには、不図示のタイヤホイール及びブレーキロータなどを締結するためのハブボルト12dが周方向で等間隔に複数設けられる。
【0018】
シール部材16は、
図2に示すように、外輪部材11のアウトボード側端部の内径面に圧入固定される円環状の芯金20と、芯金20に固着されるゴムやエラストマーなどからなる弾性シール部30と、を備える。
【0019】
芯金20は、鋼板などの金属板に打ち抜き及び曲げなどのプレス加工を施すことにより形成されるものであり、外輪部材11の内径面に固定される円筒部21と、円筒部21のアウトボード側端部から径方向外側に延びる外径鍔部22と、円筒部21のインボード側端部からアウトボード側に向けて折り返されると共に径方向内側に延びる内径鍔部23と、を有する。そして、芯金20は、その円筒部21を、外輪部材11の内周面に圧入固定すると共に、外径鍔部22のインボード側の側面を、外輪部材11のアウトボード側端面に、弾性シール部30の一部を介在させた状態で突き当てている。
【0020】
弾性シール部30は、第1~第3接触リップ31~33と、1つの非接触リップ34と、1つの堰部35と、を有する。
【0021】
第1接触リップ31は、芯金20の内径鍔部23の内径側端部からインボード側且つ径方向内側に向けて傾斜して形成されている。第2接触リップ32は、芯金20の内径鍔部23の内径側端部からアウトボード側且つ径方向外側に向けて傾斜して形成されている。第3接触リップ33は、第2接触リップ32よりも径方向外側に設けられ、芯金20の内径鍔部23の側面からアウトボード側且つ径方向外側に向けて傾斜して形成されている。第1~第3接触リップ31~33は、シール部材16の全周に亘って形成されている。そして、第1~第3接触リップ31~33の先端部は、ハブ輪12の外径面や軸方向側面に全周に亘ってそれぞれ摺接する。なお、
図1~
図10では、第1~第3接触リップ31~33の形状は、シール部材16の自由状態を示している。
【0022】
非接触リップ34は、第3接触リップ33よりも径方向外側に設けられ、芯金20の外径鍔部22の外径側端部からアウトボード側且つ径方向外側に向けて傾斜して形成されている。非接触リップ34は、シール部材16の全周に亘って形成されている。そして、非接触リップ34の先端部は、ハブ輪12のフランジ部12cのインボード側の側面に近接対向して、フランジ部12cとの間にラビリンスシールを形成している。
【0023】
堰部35は、芯金20の外径鍔部22の外径側端部から径方向外側に向けて形成されている。堰部35は、外輪部材11のアウトボード側端部の外径面よりも径方向外側に突出するように形成されている。堰部35は、シール部材16の全周に亘って形成されている。なお、外径鍔部22のインボード側の側面は、この堰部35の一部を介在させた状態で外輪部材11のアウトボード側端面に突き当てられている。
【0024】
そして、
図2に示すように、堰部35のインボード側の側面には、複数の突起40が形成されている。そして、複数の突起40は、フランジ部12cが回転する時(車両走行時)に外輪部材11の周囲に発生する回転気流を乱流化するボルテックスジェネレータである。
【0025】
複数の突起40は、堰部35の全周に亘って略等間隔に1列で形成されている。また、突起40は、非接触リップ34よりも径方向外側となる位置に設けられている。また、突起40は、部分球状(略半球状)に形成されている。なお、突起40の形状は、部分球状(略半球状)に限定されず、円筒状、円柱状、多角柱状、浮き出し文字など、種々の形状を選択可能である。また、突起40の配置は、複数の突起40を全周に亘って略等間隔に形成する形態に限定されず、例えば、所定数(例えば3つ)の突起40を1グループとして、複数(例えば4つ)のグループを周方向に間欠的に形成するようにしてもよい。
【0026】
以上説明したように、本実施形態のハブユニット軸受10によれば、シール部材16の堰部35に形成されるボルテックスジェネレータとなる複数の突起40により、フランジ部12cが回転する時に外輪部材11の周囲(特に堰部35の周辺)に発生する回転気流を乱流化することができる。このため、水滴を含んだ回転気流が非接触リップ34よりも径方向内側に侵入することを防止して、回転気流に取り込まれた水滴がシールリップ(第1~第3接触リップ31~33)の摺接点に接近するのを防止することができる。
【0027】
次に、本実施形態の第1変形例として、
図3に示すように、複数の突起40は、堰部35のインボード側の側面に、2列で形成されていてもよい。本変形例では、複数の突起40は、堰部35のインボード側の側面に、周方向に沿って2列で千鳥状に配置されている。なお、複数の突起40の配置は、2列に限定されず、3列以上であってもよい。
【0028】
次に、本実施形態の第2変形例として、
図4に示すように、複数の突起40は、堰部35のアウトボード側の側面に、1列で形成されていてもよい。この場合も、上記した第1変形例のように、複数の突起40は、2列以上形成されていてもよい。
【0029】
次に、本実施形態の第3変形例として、
図5に示すように、複数の突起40は、堰部35の外径面に、1列で形成されていてもよい。但し、本変形例の場合、成形型の分割面PLの位置関係により、加硫成形時に無理抜きが発生して、突起40を大きくすることができない。
【0030】
次に、本実施形態の第4変形例として、
図6に示すように、複数の突起40は、堰部35の外径面に形成され、且つ突起40の頂部が堰部35のインボード側の側面の延長線上に位置するように形成されていてもよい。この場合、突起40は、概ね4分の1の球状に形成される。また、本変形例の場合、成形型の分割面PLを堰部35のインボード側の側面の延長線上に配置することにより、加硫成形時の無理抜きを回避して、突起40を大きくすることができる。
【0031】
次に、本実施形態の第5変形例として、
図7に示すように、複数の突起40は、堰部35の外径面に形成され、且つ突起40の頂部が堰部35のアウトボード側の側面の延長線上に位置するように形成されていてもよい。この場合、突起40は、概ね4分の1の球状に形成される。また、本変形例の場合、成形型の分割面PLを堰部35のアウトボード側の側面の延長線上に配置することにより、加硫成形時の無理抜きを回避して、突起40を大きくすることができる。
【0032】
次に、本実施形態の第6変形例として、
図8に示すように、複数の突起40は、堰部35のインボード側の側面から外径面に亘って形成されていてもよい。この場合、突起40は、概ね4分の3の球状に形成される。本変形例によれば、堰部35のインボード側の側面と外径面の両方に突起40が突出するため、
図1~
図7に示す形態と比較して、回転気流を乱流化する効果を高めて、回転気流に取り込まれた水滴がシールリップ(第1~第3接触リップ31~33)の摺接点に接近するのを更に防止することができる。また、本変形例の場合、成形型の分割面PLを堰部35のインボード側の側面の延長線上に配置することにより、加硫成形時の無理抜きを回避して、突起40を大きくすることができる。
【0033】
次に、本実施形態の第7変形例として、
図9に示すように、複数の突起40は、堰部35のアウトボード側の側面から外径面に亘って形成されていてもよい。この場合、突起40は、概ね4分の3の球状に形成される。本変形例によれば、堰部35のアウトボード側の側面と外径面の両方に突起40が突出するため、
図1~
図7に示す形態と比較して、回転気流を乱流化する効果を高めて、回転気流に取り込まれた水滴がシールリップ(第1~第3接触リップ31~33)の摺接点に接近するのを更に防止することができる。また、本変形例の場合、成形型の分割面PLを堰部35のアウトボード側の側面の延長線上に配置することにより、加硫成形時の無理抜きを回避して、突起40を大きくすることができる。
【0034】
(第2実施形態)
次に、
図10を参照して、本発明に係るハブユニット軸受の第2実施形態について説明する。なお、上記第1実施形態と同一又は同等部分については、図面に同一符号を付してその説明を省略或いは簡略化する。
【0035】
本実施形態では、
図10に示すように、堰部35に複数の突起40が形成されておらず、その代わりに、非接触リップ34の外径面の先端部に、ボルテックスジェネレータとなる複数の突起41が形成されている。
【0036】
複数の突起41は、非接触リップ34の全周に亘って略等間隔に1列で形成されている。また、突起41は、円柱状に形成されている。なお、突起40の形状は、円柱状に限定されず、部分球状(略半球状)、円筒状、多角柱状、浮き出し文字など、種々の形状を選択可能である。また、突起41の配置は、複数の突起41を全周に亘って略等間隔に形成する形態に限定されず、例えば、所定数(例えば3つ)の突起41を1グループとして、複数(例えば4つ)のグループを周方向に間欠的に形成するようにしてもよい。また、複数の突起41は、2列以上形成されていてもよい。
【0037】
以上説明したように、本実施形態のハブユニット軸受10によれば、シール部材16の非接触リップ34に形成されるボルテックスジェネレータとなる複数の突起41により、フランジ部12cが回転する時に外輪部材11の周囲(特にラビリンスシールの周辺)に発生する回転気流を乱流化することができる。このため、水滴を含んだ回転気流が非接触リップ34よりも径方向内側に侵入することを防止して、回転気流に取り込まれた水滴がシールリップ(第1~第3接触リップ31~33)の摺接点に接近するのを防止することができる。
その他の構成及び作用効果については、上記第1実施形態と同様である。
【0038】
なお、本発明は上記各実施形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記第1実施形態の堰部に形成される複数の突起と上記第2実施形態の非接触リップに形成される複数の突起との両方を備えていてもよい。この場合、回転気流を乱流化する効果を高めて、回転気流に取り込まれた水滴がシールリップの摺接点に接近するのを更に防止することができる。
また、上記第1実施形態の場合、非接触リップはなくてもよい。
また、ハブユニット軸受は、
図1に示す従動輪用のハブユニット軸受に限定されず、駆動輪用のハブユニット軸受であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 ハブユニット軸受
10a 軸受内部空間
11 外輪部材
11a 外輪軌道面
12 ハブ輪(内輪部材)
12a 内輪軌道面
12c フランジ部
13 内輪(内輪部材)
13a 内輪軌道面
14 玉(転動体)
15 保持器
16 シール部材
17 キャップ
20 芯金
21 円筒部
22 外径鍔部
23 内径鍔部
30 弾性シール部
31 第1接触リップ
32 第2接触リップ
33 第3接触リップ
34 非接触リップ
35 堰部
40 突起(ボルテックスジェネレータ)
41 突起(ボルテックスジェネレータ)