(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 307/14 20060101AFI20230314BHJP
B01J 23/46 20060101ALI20230314BHJP
B01J 23/44 20060101ALI20230314BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230314BHJP
【FI】
C07D307/14
B01J23/46 301Z
B01J23/44 Z
B01J23/46 311Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019548207
(86)(22)【出願日】2018-10-10
(86)【国際出願番号】 JP2018037649
(87)【国際公開番号】W WO2019073987
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2017197724
(32)【優先日】2017-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】浅井 良
(72)【発明者】
【氏名】桐野 智明
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-143832(JP,A)
【文献】特開2017-101179(JP,A)
【文献】特表2014-524953(JP,A)
【文献】特表2017-521430(JP,A)
【文献】国際公開第2018/113599(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107474026(CN,A)
【文献】Industrial & Engineering Chemistry Research,1995年,34,3392-3398
【文献】Journal of the American Chemical Society,2017年,139,11493-11499
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 307/14
B01J 23/46
B01J 23/44
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,5-ビス(アミノメチル)フランに対して、水素化触媒を用いて水素供給源を反応させることにより、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランを得る工程を含
み、
さらに、2,5-ビス(アミノメチル)フランを反応系に供給することを含む(ただし、アミノアルコールの存在下で水素化反応を行う場合を除く)、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランの製造方法。
【請求項2】
ワンポット合成である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記水素化触媒が、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、ReおよびOsからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記水素化触媒が、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Pd、Ir、Pt、ReおよびOsからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記水素化触媒が、Fe、Co、Cu、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、ReおよびOsからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記水素化触媒が、Rhを含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記水素供給源が、水素および炭素数1~5のアルコールの少なくとも1種を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記反応が、水素圧0MPa超過25MPa以下で行なわれる、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラヒドロフラン骨格を有する化合物は、樹脂、医薬品、および香料等の原材料や中間体として有用である。中でも、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランは、官能基としてアミノ基を有するため、エポキシ樹脂硬化剤や、化合物の中間原料等として有用であり、その製造方法が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、以下に示すように、{5-(イミノメチル)フラン-2-イル}メタンアミンや{5-(イミノメチル)フラン-2-イル}メタンアジドを出発物とし、ラネーニッケル触媒の存在下、接触水素化反応を行うことにより、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランを合成できることが開示されている。
【0004】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
原料の入手容易性や、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランの供給の安定性から、特許文献1における{5-(イミノメチル)フラン-2-イル}メタンアミンや{5-(イミノメチル)フラン-2-イル}メタンアジド等以外の原料から、効率的に2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランを製造する方法が求められている。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、効率的に2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランを製造できる製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランの製造方法について鋭意検討した結果、触媒を用いて2,5-ビス(アミノメチル)フランを水素化反応に供することによって、効率的に2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
<1>2,5-ビス(アミノメチル)フランに対して、水素化触媒を用いて水素供給源を反応させることにより、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランを得る工程を含む、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランの製造方法。
<2>ワンポット合成である、<1>に記載の製造方法。
<3>前記水素化触媒が、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、ReおよびOsからなる群より選択される少なくとも一種を含む、<1>または<2>に記載の製造方法。
<4>前記水素化触媒が、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Pd、Ir、Pt、ReおよびOsからなる群より選択される少なくとも一種を含む、<1>または<2>に記載の製造方法。
<5>前記水素化触媒が、Fe、Co、Cu、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、ReおよびOsからなる群より選択される少なくとも一種を含む、<1>または<2>に記載の製造方法。
<6>前記水素化触媒が、Rhを含む、<1>または<2>に記載の製造方法。
<7>前記水素供給源が、水素および炭素数1~5のアルコールの少なくとも1種を含む、<1>~<6>のいずれか一つに記載の製造方法。
<8>前記反応が、水素圧0MPa超過25MPa以下で行なわれる、<1>~<7>のいずれか一つに記載の製造方法。
<9>2,5-ビス(アミノメチル)フランを反応釜に供給することを含む、<1>~<9>のいずれか一つに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法は、効率的に2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランを得ることができ、工業的に有利な製造方法である。また、本発明の製造方法によって得られる2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランは、樹脂、医薬品、および香料の原材料や中間体として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0011】
本実施形態の製造方法は、2,5-ビス(アミノメチル)フラン(以下、H-BAFとも記載する。)に対して、水素化触媒を用いて水素供給源を反応させることにより、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフラン(以下、BAFとも記載する。)を得る工程を含むことを特徴とする。このような構成とすることにより、効率的に2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランが得られる。好ましくは、ワンポット合成で得ることができる。
【0012】
【0013】
本発明者らが2,5-ビス(アミノメチル)フランから2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランを製造する方法について検討を行った結果、反応基質である2,5-ビス(アミノメチル)フランは反応性が高いために、副生成物が生じやすいことがわかった。具体的には、副生成物として、以下の2-(アミノメチル)-5-メチルテトラヒドロフランを生成することが確認された。下記において、Meはメチル基である。
【0014】
【0015】
副生成物の生成は、目的物である2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランの収率低下や、副生成物を除去するために精製を必要とし、製造工程が煩雑になるといった問題を招来する。特に2-(アミノメチル)-5-メチルテトラヒドロフランは、目的物である2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランと構造が近似しているため、生成物の混合物から、一般的な精製方法によって目的物と分離することが困難な副生成物である。
本発明者らは、反応条件についてさらに検討を重ねた結果、2,5-ビス(アミノメチル)フランに対して、水素化触媒(特に、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、ReおよびOsからなる群より選択される少なくとも一種を含む水素化触媒)を用いて水素供給源を反応させることにより、オレフィンが選択的に反応し、2-(アミノメチル)-5-メチルテトラヒドロフランが生じることなく、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランを効率的に得られることを見出した。
【0016】
(2,5-ビス(アミノメチル)フラン)
本実施形態における2,5-ビス(アミノメチル)フランは、市販品として入手可能である。また、2,5-ビス(アミノメチル)フランは、5-ヒドロキシメチルフルフラールや5-(クロロメチル)フルフラール等の公知の化合物から有機合成手法を用いて合成してもよい。
【0017】
(水素化触媒)
本実施形態における水素化触媒は、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、ReおよびOsからなる群より選択される少なくとも一種の金属を含むことが好ましい。これらの金属は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上述したように、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランは反応性が高いために、副生成物が生じやすい。特に、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、ReおよびOsからなる群より選択される少なくとも一種の金属は、触媒としての活性が強すぎないため、副生成物である2-(アミノメチル)-5-メチルテトラヒドロフランの生成を抑制できると考えられる。
【0018】
上述した金属は、担体に担持されていてもよい。担体としては、触媒の担体として通常使用される担体であれば特に制限されず、例えば、無機酸化物、活性炭素、イオン交換樹脂等が挙げられる。無機酸化物としては、具体的には、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、これら無機酸化物の二種以上の複合体(例えば、ゼオライト等)等が挙げられる。
【0019】
水素化触媒の好ましい形態として、水素化触媒は、Fe、Co、Cu、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、ReおよびOsからなる群より選択される少なくとも一種を含むことが挙げられる。
また、他の好ましい形態として、水素化触媒は、Fe、Co、Cu、Ru、Pd、Ir、Pt、ReおよびOsからなる群より選択される少なくとも一種を含むことが挙げられる。
さらに他の好ましい形態として、水素化触媒は、RuおよびRhの少なくとも一種を含むことが挙げられる。
さらに他の好ましい形態として、水素化触媒は、Rhを含むことが挙げられる。
水素化触媒としては、具体的には、還元鉄等の鉄(Fe)触媒;還元コバルトおよびラネーコバルト等のコバルト(Co)触媒;還元ニッケル、酸化ニッケルおよびラネーニッケル(以下、Raney-Niとも記載する。)等のニッケル(Ni)触媒;塩化銅(II)、塩化銅(I)、銅(0)、亜酸化銅(I)、酸化銅(II)等の銅(Cu)触媒;ルテニウム/炭素およびルテニウム/アルミナ等のルテニウム(Ru)触媒;ロジウム/炭素およびロジウム/アルミナ等のロジウム(Rh)触媒;白金担持過レニウム酸等のレニウム(Re)触媒;オスミウム/炭素等のオスミウム(Os)触媒;等が挙げられる。
【0020】
2,5-ビス(アミノメチル)フランに対する触媒の量は、適宜調整すればよく、一般的には、2,5-ビス(アミノメチル)フランの質量に対して、1~200質量部である。触媒の量は、2,5-ビス(アミノメチル)フランの質量に対して、好ましくは1~150質量部であり、より好ましくは1~100質量部である。
【0021】
(水素供給源)
本実施形態における水素供給源は、オレフィンを還元することができる水素源であれば特に制限されず、例えば、水素および炭素数1~5のアルコールが好適に挙げられる。これらの水素供給源は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
炭素数1~5のアルコールとしては、具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、n-アミルアルコール、sec-アミルアルコール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、ネオペンチルアルコール等が挙げられる。これらの炭素数1~5のアルコールは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの炭素数1~5のアルコールの中でも好ましくは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、n-アミルアルコール、sec-アミルアルコールである。
【0023】
本実施形態の反応は、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒は、特に限定されず、反応温度や反応物等によって適宜選択される。
溶媒としては、2,5-ビス(アミノメチル)フランの一部または全量を溶解することができ、水素化反応を妨げないものであれば特に限定されず、例えば、芳香族炭化水素溶媒、アミド溶媒、エーテル溶媒、アルコール溶媒、ハロゲン溶媒等が挙げられ、エーテル溶媒が好ましい。これら溶媒は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
芳香族炭化水素溶媒としては、具体的には、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。
アミド溶媒としては、具体的には、アセトニトリル、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。本発明で用いる溶媒は、キシレンを実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、キシレンが溶媒の10質量%以下であることをいい、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%であることがさらに好ましい。
エーテル溶媒としては、具体的には、テトラヒドロフラン(以下、THFとも記載する。)、ジエチルエーテル等が挙げられる。
アルコール溶媒としては、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。アルコール溶媒は、水素供給源にもなる。
ハロゲン溶媒としては、具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等が挙げられる。
【0025】
溶媒の使用の有無およびその使用量は、特に限定されないが、生産性およびエネルギー効率の観点から、2,5-ビス(アミノメチル)フランに対して、好ましくは0.5~100質量倍であり、より好ましくは1.0~50質量倍であり、さらに好ましくは1.0~20質量倍である。
【0026】
本実施形態における溶媒は、水の含有量が少ないことが好ましい。溶媒中の水の含有量は、好ましくは0~3.0質量%であり、より好ましくは0~2.0質量%であり、さらに好ましくは0~1.0質量%である。溶媒中の水の含有量が少ないことにより、副生成物の生成を抑えられ、さらに目的物である2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフラン生成の選択性を向上させることができる。
本実施形態において、溶媒の95質量%以上がエーテル溶媒である態様が例示される。
【0027】
(反応条件)
本実施形態の製造方法は、具体的には、2,5-ビス(アミノメチル)フラン、水素化触媒、および水素供給源、並びに必要に応じて溶媒を混合して、反応させる方法を挙げることができる。本発明では、通常、反応系に2,5-ビス(アミノメチル)フランが供給される。このように反応系(例えば、反応器、反応釜)に直接に2,5-ビス(アミノメチル)フランを原料として投入することにより、より効率的に2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランが得られる。
2,5-ビス(アミノメチル)フラン、水素化触媒、溶媒および水素供給源を混合する順番は任意である。作業効率の観点から、本実施形態の製造方法では、あらかじめ2,5-ビス(アミノメチル)フランと水素化触媒とを混合し、次に水素供給源を導入することが好ましい。
【0028】
本実施形態の製造方法において、水素化触媒を添加するときは、使用する水素化触媒に応じ、適宜、発火することを防ぐため、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、水素化触媒を溶媒等に懸濁させ、懸濁液として添加してもよい。
【0029】
本実施形態の製造方法は、水素供給源として水素を用いる場合、反応を水素圧0MPa超過25MPa以下で行うことが好ましい。水素圧は、より好ましくは0.5MPa以上15MPa以下であり、さらに好ましくは1.0MPa以上10MPa以下である。
【0030】
反応温度は、溶媒の種類等に応じて適宜調整すればよく、一般的には40~200℃、好ましくは50~120℃、より好ましくは50~110℃、さらに好ましくは70~115℃である。
反応時間は、GC-MS等を用い反応の進行状況をモニタリングすることによって適宜調整すればよく、一般的には1分~24時間、好ましくは0.5~3時間、より好ましくは0.5~2時間である。
【0031】
反応後における反応混合物と触媒との分離は、沈降、遠心分離、濾過等の一般的な方法により行うことができる。触媒の分離は、使用する触媒に応じ、発火することを防ぐため、適宜、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
また、反応混合物は、得られた反応溶液を必要に応じて濃縮した後、残渣をそのまま原材料や中間体として使用してもよく、反応混合物を適宜後処理して精製してもよい。後処理の具体的な方法としては、抽出、蒸留、クロマトグラフィー等の公知の精製方法を挙げることができる。これらの精製方法は、二種以上を組み合わせて行ってもよい。
【実施例】
【0032】
以下、実験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実験例に何ら限定されるものではない。
【0033】
(例1)
耐圧オートクレーブに2,5-ビス(アミノメチル)フラン0.5gに対し、溶媒としてTHF3mL、触媒としてRu/アルミナ(Al2O3)(Ru触媒の量は5質量%である、以下、「5質量%Ru/アルミナ」等と表示する)0.1gを投入後、水素圧力を3MPaGまで昇圧した。なお、Ru/アルミナは、事前に150℃で12時間還元させたものを使用した。
その後温度を90℃で1時間保持したまま反応し、耐圧オートクレーブを氷水で冷却して反応を停止した。
アルゴンガス流通下、触媒と反応液を濾過することによって触媒を除去し、生成物を含む濾液についてCI法による精密質量測定を行った。なお、CI法による精密質量測定は、GC-MSスペクトル装置Agilent7890BGC/5977MSD(Agilent Technologies,Inc.製)を用いて実施した。
また、濾液を濃縮して得られた残渣の一部を、重クロロホルムに溶解し、1H-NMR、13C-NMR測定を行った。なお、NMR測定装置は、日本電子株式会社製のJNM-ECA500(500MHz)を使用した。
なお、2,5-ビス(アミノメチル)フランは、トロントリサーチケミカルス社製のものを使用した。
THFは、和光純薬工業株式会社製、分光分析用を使用した。
Ru/アルミナは、アルミナに担持されたルテニウム触媒であり、エヌ・イー ケムキャット株式会社製のものを使用した。
【0034】
<生成物の収率>
GC-FID検出強度(面積値)における全ピークの面積値に対する2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランの面積値の割合を2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランの収率とした。
具体的には、反応液のGC-FID測定により得られたGC-FID検出強度(面積値)から全ピークの面積値を求め、全ピークの面積値に対する2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランの面積値の割合が82%であったため、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランの収率を82%とした。
【0035】
<生成物の同定(1H-NMR、13C-NMR、CI法による精密質量測定の結果)>
例1にて得られた生成物を1H-NMR、13C-NMR測定したところ、原料である2,5-ビス(アミノメチル)フランを差し引いたケミカルシフトより、得られた化合物は1H-NMR測定からテトラヒドロフラン環を有し、13C-NMR測定から分子構造に対称性があることが分かった。さらにChemDrawから計算した2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランの1H-NMR、13C-NMRシフトと測定したケミカルシフトがほぼ一致した。
さらにCI法により精密分子量を求めたところ131であり、これは2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランにカウンターカチオンとしてプロトンが配位した分子量であったため、目的物であることが確認された。2-(アミノメチル)-5-メチルテトラヒドロフランの生成は見られなかった。
【0036】
(例2)
触媒として5質量%Pd/カーボン(C)を用いたこと以外は、例1と同様に実施した。
例1と同様に2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランの収率を求めたところ、41%であった。また、生成物の同定を同様に行ったところ2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランと共に、2-(アミノメチル)-5-メチルテトラヒドロフランの生成が確認された。
Pd/カーボン(C)は、カーボンに担持されたPd触媒であり、エヌ・イー ケムキャット株式会社製のものを使用した。
【0037】
(例3)
耐圧オートクレーブに2,5-ビス(アミノメチル)フラン20gに対し、触媒として5質量%のRu/アルミナ8g、溶媒としてTHF120mLを投入後、水素圧力を6MPaGまで昇圧し、温度を90℃で1時間保持したまま反応し、耐圧オートクレーブを氷水で冷却して反応を停止した。アルゴンガス流通下、触媒と反応液をろ過することによって触媒を除去し、生成物を含む濾液を得た後濃縮した。なお、Ru/アルミナは、事前に150℃で12時間還元させたものを使用した。
得られた生成物を、GC-MSスペクトル装置Agilent7890BGC/5977MSD(Agilent Technologies,Inc.製)にて分析したところ、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフラン91モル%、2,5-ビス(アミノメチル)フラン0モル%、2-(アミノメチル)-5-メチルテトラヒドロフラン9モル%であった。
なお、2,5-ビス(アミノメチル)フランは、トロントリサーチケミカルス社製のものを使用した。
Ru/アルミナは、アルミナに担持されたルテニウム触媒であり、エヌ・イー ケムキャット株式会社製のものを使用した。
【0038】
(例4)
耐圧オートクレーブに2,5-ビス(アミノメチル)フラン20gに対し、触媒として5質量%Rh/C8g、溶媒としてTHF120mLを投入後、水素圧力を6MPaGまで昇圧し、温度を90℃で1時間保持したまま反応し、耐圧オートクレーブを氷水で冷却して反応を停止した。アルゴンガス流通下、触媒と反応液をろ過することによって触媒を除去し、生成物を含む濾液を得た後、濃縮し、減圧蒸留を温度120℃、圧力1mbarで行い、精製した。得られた生成物を、GC-MSスペクトル装置Agilent7890BGC/5977MSD(Agilent Technologies,Inc.製)にて分析したところ、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフラン100モル%であった。
なお、2,5-ビス(アミノメチル)フランは、トロントリサーチケミカルス社製のものを使用した。
Rh/アルミナは、アルミナに担持されたロジウム触媒であり、エヌ・イー ケムキャット株式会社製のものを使用した。