(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】セラミックパッケージおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/13 20060101AFI20230314BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20230314BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20230314BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
H01L23/12 C
H05K3/46 H
H05K3/00 N
H01L23/12 D
H01L23/12 N
(21)【出願番号】P 2019027490
(22)【出願日】2019-02-19
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松橋 憲助
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特許第3008146(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/13
H05K 3/46
H05K 3/00
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのセラミック層と、少なくとも1つの配線層とを積層して形成される配線基板を備えるセラミックパッケージであって、
絶縁性を有する材料で形成され、前記少なくとも1つの配線層のうち前記少なくとも1つのセラミック層に覆われていない配線層である表面配線層における互いに異なる一部分を覆う第1被覆部材および第2被覆部材を備え、
前記第1被覆部材および前記第2被覆部材は、前記第1被覆部材と前記第2被覆部材との間に形成された凹部を隔てて互いに対向して
おり、
前記少なくとも1つのセラミック層は、複数のセラミック層であり、
前記少なくとも1つの配線層は、複数の配線層であり、
前記複数のセラミック層のうち、前記表面配線層が表面に形成されているセラミック層を表面セラミック層とし、
前記複数のセラミック層のうち、前記表面セラミック層に接触しているセラミック層を直下セラミック層とし、
前記複数の配線層のうち、前記直下セラミック層の表面に形成されている配線層を直下配線層として、
前記直下セラミック層の表面において前記凹部と対向している領域には、前記直下配線層が形成されていないセラミックパッケージ。
【請求項2】
請求項1に記載のセラミックパッケージであって、
前記表面配線層の一部分と電気的に接続される複数の導電部材が、前記配線基板の周囲に沿って配置されているセラミックパッケージ。
【請求項3】
少なくとも1つのセラミック層と、少なくとも1つの配線層とを積層して形成される配線基板を備えるセラミックパッケージの製造方法であって、
セラミック材料を用いてシート状に成形された少なくとも1つのグリーンシートを準備する準備工程と、
前記少なくとも1つのグリーンシートの面上に導電性の配線パターンを形成する配線形成工程と、
前記少なくとも1つのグリーンシートのうち、前記配線基板における最表面に配置されるグリーンシートを表面グリーンシートとして、前記表面グリーンシートに形成された前記配線パターンにおける一部分を覆うように絶縁性の被覆パターンを形成する被覆工程と、
前記少なくとも1つのグリーンシートの面上に前記配線パターンおよび前記被覆パターンが形成された後に、前記少なくとも1つのグリーンシートを焼成し、前記少なくとも1つのセラミック層と、前記配線パターンが焼成された前記配線層と、前記被覆パターンが焼成された被覆部材とを得る焼成工程と、
前記配線層を表面配線層として、前記表面配線層上に金属層を形成するメッキ工程と、
前記表面配線層上に前記金属層が形成された後に、前記被覆部材に向けてレーザ光を照射することにより、前記被覆部材を切断する切断工程と
を備
え、
前記少なくとも1つのセラミック層は、複数のセラミック層であり、
前記少なくとも1つの配線層は、複数の配線層であり、
前記少なくとも1つのグリーンシートは、複数のグリーンシートであり、
前記複数のセラミック層のうち、前記表面配線層が表面に形成されているセラミック層を表面セラミック層とし、
前記複数のセラミック層のうち、前記表面セラミック層に接触しているセラミック層を直下セラミック層とし、
前記複数の配線層のうち、前記直下セラミック層の表面に形成されている配線層を直下配線層とし、
前記複数のグリーンシートのうち、焼成により前記直下セラミック層となるグリーンシートを直下グリーンシートとして、
前記配線形成工程では、前記直下グリーンシートの表面において前記表面グリーンシートと積層することで前記被覆パターンと対向する領域には、前記直下配線層となる前記配線パターンが形成されないように、前記直下グリーンシートの面上に前記配線パターンを形成するセラミックパッケージの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のセラミックパッケージの製造方法であって、
前記少なくとも1つのグリーンシートは、複数のグリーンシートであり、
前記複数のグリーンシートの面上に前記配線パターンが形成された後に、前記複数のグリーンシートを積層する積層工程を備えるセラミックパッケージの製造方法。
【請求項5】
請求項3または
請求項4に記載のセラミックパッケージの製造方法であって、
前記焼成工程が実行された後であって、前記メッキ工程が実行される前に、複数の導電部材を前記表面配線層に対して電気的に接合する接合工程を備えるセラミックパッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セラミックパッケージおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1電極パッドおよび第2電極パッドの表面に電解めっき層を形成するメッキ工程の後に、凹部の内部に形成された電解めっき用導体へ向けてレーザービームを照射して電解めっき用導体を切断することにより、第1電極パッドと第2電極パッドとを電気的に独立させることが記載されている。これにより、電解めっき用導体の切り屑が飛散して、絶縁層の表面と、露出した配線導体とに付着するのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術では、導体の切り屑の飛散を抑制するための孔部を別途設ける必要があるため、セラミックパッケージの構造が複雑になってしまうおそれがあった。
【0005】
本開示は、孔部を設けることなく導体の切り屑の飛散を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、少なくとも1つのセラミック層と、少なくとも1つの配線層とを積層して形成される配線基板を備えるセラミックパッケージであって、第1被覆部材および第2被覆部材を備える。第1被覆部材および第2被覆部材は、絶縁性を有する材料で形成され、少なくとも1つの配線層のうち少なくとも1つのセラミック層に覆われていない配線層である表面配線層における互いに異なる一部分を覆う。
【0007】
そして、本開示のセラミックパッケージでは、第1被覆部材および第2被覆部材は、第1被覆部材と第2被覆部材との間に形成された凹部を隔てて互いに対向している。
このように構成された本開示のセラミックパッケージは、表面配線層を覆うように絶縁部材を形成して、この絶縁部材を例えばレーザ光で切断することによって製造される。すなわち、本開示のセラミックパッケージでは、絶縁部材を介して表面配線層へレーザ光を照射することにより、表面配線層を切断し電気的に接続していない状態とすることができる。そして、本開示のセラミックパッケージでは、表面配線層が絶縁部材に覆われているために、表面配線層へレーザ光を照射した際に導体の切り屑が飛散するのを抑制することができる。従って、本開示のセラミックパッケージは、孔部を設けることなく導体の切り屑の飛散を抑制することができる。これにより、本開示のセラミックパッケージは、セラミックパッケージの構造が複雑になるのを抑制し、表面配線層同士が電気的に切断された状態とすることができる。加えて、切断前の電気的に接続されている表面配線層に対して電解めっき等により、切断により電気的に独立する表面配線層も含めて、表面配線層全体に、金属層を形成することができる。
【0008】
本開示の一態様では、少なくとも1つのセラミック層は、複数のセラミック層であり、少なくとも1つの配線層は、複数の配線層であり、直下セラミック層の表面において凹部と対向している領域には、直下配線層が形成されていないようにしてもよい。表面セラミック層は、複数のセラミック層のうち、表面配線層が表面に形成されているセラミック層である。直下セラミック層は、複数のセラミック層のうち、表面セラミック層に接触しているセラミック層である。直下配線層は、複数の配線層のうち、直下セラミック層の表面に形成されている配線層である。
【0009】
これにより、本開示のセラミックパッケージは、表面配線層を切断するために照射されたレーザ光が直下セラミック層まで到達した場合であっても、直下配線層が切断されてしまうという事態の発生を抑制することができる。
【0010】
本開示の一態様では、表面配線層の一部分と電気的に接続される複数の導電部材が、配線基板の周囲に沿って配置されているようにしてもよい。このような態様では、導電部材を介して表面配線層に給電することが可能であり、表面配線層に直接給電用の端子を接触させることなく、表面配線層と導電部材とに金属層を形成することができる。このような態様において、上述の態様はより一層効果的に実施することができる。
本開示の別の態様は、少なくとも1つのセラミック層と、少なくとも1つの配線層とを積層して形成される配線基板を備えるセラミックパッケージの製造方法であって、準備工程と、配線形成工程と、被覆工程と、焼成工程と、メッキ工程と、切断工程とを備える。
【0011】
準備工程では、セラミック材料を用いてシート状に成形された少なくとも1つのグリーンシートを準備する。配線形成工程では、少なくとも1つのグリーンシートの面上に導電性の配線パターンを形成する。
【0012】
被覆工程では、表面グリーンシートに形成された配線パターンにおける一部分を覆うように絶縁性の被覆パターンを形成する。表面グリーンシートは、少なくとも1つのグリーンシートのうち、配線基板における最表面に配置されるグリーンシートである。
【0013】
焼成工程では、少なくとも1つのグリーンシートの面上に配線パターンおよび被覆パターンが形成された後に、少なくとも1つのグリーンシートを焼成し、少なくとも1つのセラミック層と、配線パターンが焼成された配線層と、被覆パターンが焼成された被覆部材とを得る。メッキ工程では、配線層を表面配線層として、表面配線層上の被覆部材で覆われていない箇所に金属層を形成する。
【0014】
切断工程では、表面配線層上に金属層が形成された後に、被覆部材に向けてレーザ光を照射することにより、被覆部材を切断する。この時、表面配線層も切断される。
このように構成された本開示のセラミックパッケージの製造方法では、本開示の一態様のセラミックパッケージの製造方法であり、本開示のセラミックパッケージと同様の効果を得ることができる。つまり、切断工程により切断され、電気的に独立する表面配線層に対して、メッキ工程により切断前の表面配線層の露出箇所に、切断により電気的に独立する表面配線層も含めて、表面配線層全体に、金属層を形成することができ、表面配線層の耐腐食性や電気的特性等を向上させることができる。そして、メッキ工程の後に、切断工程を行う際に、表面配線層の一部は被覆部材に覆われており、この被覆部材に向けてレーザ光を照射して、被覆部材及び被覆部材に覆われた箇所の表面配線層を切断することで、表面配線層へレーザ光を照射した際に導体の切り屑が飛散するのを抑制することができる。従って、本開示のセラミックパッケージは、孔部を設けることなく導体の切り屑の飛散を抑制することができる。
【0015】
本開示の別の態様では、少なくとも1つのグリーンシートは、複数のグリーンシートであり、複数のグリーンシートの面上に配線パターンが形成された後に、複数のグリーンシートを積層する積層工程を備えるようにしてもよい。
【0016】
本開示の別の態様では、焼成工程が実行された後であって、メッキ工程が実行される前に、複数の導電部材を表面配線層に対して電気的に接合する接合工程を備えるようにしてもよい。接合工程を備えることにより、メッキ工程にて、金属層を形成する際に、導電部材を介して表面配線層に給電することが可能であり、表面配線層に直接給電用の端子を接触させることなく、表面配線層と導電部材とに金属層を形成することができる。
【0017】
本開示の別の態様では、少なくとも1つのセラミック層は、複数のセラミック層であり、少なくとも1つの配線層は、複数の配線層であり、少なくとも1つのグリーンシートは、複数のグリーンシートであるようにしてもよい。そして配線形成工程では、直下グリーンシートの表面において表面グリーンシートと積層することで被覆パターンと対向する領域には、直下配線層となる配線パターンが形成されないように、直下グリーンシートの面上に配線パターンを形成するようにしてもよい。表面セラミック層は、複数のセラミック層のうち、表面配線層が表面に形成されているセラミック層である。直下セラミック層は、複数のセラミック層のうち、表面セラミック層に接触しているセラミック層である。直下配線層は、複数の配線層のうち、直下セラミック層の表面に形成されている配線層である。直下グリーンシートは、複数のグリーンシートのうち、焼成により直下セラミック層となるグリーンシートである。
【0018】
これにより、本開示のセラミックパッケージの製造方法は、表面配線層を切断するために照射されたレーザ光が直下セラミック層まで到達した場合であっても、直下配線層が切断されてしまうという事態の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】セラミックパッケージの一部分の断面図である。
【
図4】セラミックパッケージの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本開示の実施形態を図面とともに説明する。
本実施形態のセラミックパッケージ1は、
図1に示すように、セラミック配線基板2と、リードフレーム3とを備える。
【0021】
セラミック配線基板2は、
図2に示すように、例えば、セラミック層11,12,13と、内部配線層21,22と、表面配線層23とを備える。以下、内部配線層21、内部配線層22および表面配線層23をそれぞれ、配線層21、配線層22および配線層23ともいう。
【0022】
セラミック層11~13と、配線層21~23とは、積層方向SDに沿って交互に積層される。これにより、内部配線層21はセラミック層11とセラミック層12との間に配置され、内部配線層22はセラミック層12とセラミック層13との間に配置される。また表面配線層23は、セラミック層13の両面のうち、内部配線層22が配置されていない側に配置される。
【0023】
また、セラミック層12,13内にはそれぞれ、積層方向SDに延びてセラミック層12,13を貫通するビア導体32,33が形成される。これにより、セラミック層12を挟んでセラミック層12の両面に形成されている内部配線層21と内部配線層22とが電気的に接続される。また、セラミック層13を挟んでセラミック層13の両面に形成されている内部配線層22と表面配線層23とが電気的に接続される。
【0024】
セラミック層11~13は、積層方向SDに対して垂直な方向に沿って広がる板状の絶縁層であり、例えば、アルミナ(Al2O3)を90重量%以上含有している。
内部配線層21,22はそれぞれ、セラミック層11,12上に形成される導電層であり、例えば、導電成分である銅(Cu)およびタングステン(W)と、アルミナ等のセラミック成分とを含有している。
【0025】
また表面配線層23は、セラミック層13上に形成される導電層であり、例えば、内部配線層21,22と同様の成分を有する層の上に、金属層が積層されて形成されている。また、
図3に示すように、内部配線層22のうち、セラミック層12の表面に形成されセラミック層13に覆われていない内部配線層22の一部は、外部電極パッド45を形成している。外部電極パッド45についても、金属層が積層されて形成されている。
【0026】
図1に示すように、表面配線層23は、複数の第1電極パッド41と、複数の第2電極パッド42と、複数の接続配線43とを備える。
複数の第1電極パッド41は、セラミック層13上において、平面視で矩形状のセラミック層13の矩形を形成する四辺に沿って枠状に配列されている。複数の第2電極パッド42は、セラミック層13上において、複数の第1電極パッド41により囲まれて内側に配置される。複数の接続配線43はそれぞれ、セラミック層13上において、1つの第1電極パッド41と1つの第2電極パッド42とを接続するように形成されている。
【0027】
セラミック配線基板2は、更に、複数のアルミナコート50を備える。複数のアルミナコート50は、複数の接続配線43のそれぞれに対応して、接続配線43の一部分を被覆するように配置される。アルミナコート50は、セラミック層11~13と同様の成分を有する絶縁層であり、例えば、アルミナを90重量%以上含有している。
【0028】
アルミナコート50および接続配線43は、
図1および
図3に示すように、接続配線43が延びる方向に対して垂直な方向に沿って、切断されている。このため、
図3に示すように、第1分割コート50aと第2分割コート50bとは、切断溝55を隔てて互いに対向する。第1分割コート50aおよび第2分割コート50bはそれぞれ、切断により二つに分割されたアルミナコート50の一方および他方である。また、接続配線43も切断溝55により、アルミナコート50同様に切断されており、切断溝55を隔てて互いに対向している。
【0029】
また、
図3に示すように、セラミック層12上における切断溝55の直下には、内部配線層22が配置されない。
セラミック配線基板2は、セラミック層12の表面上であり、セラミック層13に覆われておらず、平面視で、第1電極パッド41を囲むように配置された複数の外部電極パッド45を備える。第1電極パッド41と外部電極パッド45とは、内部配線層21,22やビア導体32,33等を介して、電気的に接続されている。
リードフレーム3は、
図1に示すように、支持枠71と、複数のリード72とを備える。支持枠71は、平面視で矩形状のセラミック配線基板2の矩形を形成する四辺に沿ってセラミック配線基板2を覆うように矩形枠状に形成されている。また支持枠71およびリード72は、例えば、鉄ニッケル系合金の薄板をエッチングまたはプレスすることにより形成されている。
【0030】
複数のリード72は、金属材料で線状に形成された部材である。複数のリード72は、複数の外部電極パッド45のそれぞれに対応して設けられている。そして、リード72の一端は、
図3に示すように、対応する外部電極パッド45と銀ロウ75によって接合される。また、リード72の他端は、
図1に示すように、支持枠71に接合される。
【0031】
次に、セラミックパッケージ1の製造方法を説明する。
セラミックパッケージ1を製造するためには、
図4に示すように、まず、S10にて、セラミックグリーンシートを準備する。具体的には、まず、無機成分として、アルミナ粉末と、シリカ等の金属酸化物の粉末とを用意する。また、バインダ成分としてのブチラール系樹脂と、成形後のグリーンシートに適度な柔軟性を与える可塑剤成分としてのジ・オチクル・フタレート(以下、DOP)と、適当なスラリー粘度とシート強度を持たせる溶剤とを用意する。
【0032】
そして、アルミナ粉末が90重量%となるように上記のアルミナ粉末と金属酸化物の粉末とを所定量秤量して、アルミナ製のポットに入れる。さらに、ブチラール系樹脂、DOPおよび溶剤を上記のポットに入れて混合することにより、セラミックスラリーを得る。さらに、ドクターブレード法により、例えばポリエチレンテレフタレートからなるキャリアフィルム上で、得られたセラミックスラリーをシート状とし、セラミックグリーンシートを作製する。
【0033】
次にS20にて、パンチを用いた打ち抜き加工により、S10で準備したセラミックグリーンシートに、セラミックグリーンシートを貫通するビアホールを形成する。
次にS30にて、セラミックグリーンシートに形成されたビアホールの内部に、導電性ペーストを充填する。導電性ペーストは、タングステン粉末と、アルミナ粉末とを含む混合粉末に、ワニス成分としてエチルセルロース樹脂とターピネオール溶剤とを加え、3本ロールミルによって混練することで作製される。
【0034】
次にS40にて、セラミックグリーンシートの表面における必要な箇所に、導電性ペーストを用いて、印刷によって、配線層21~23となる配線パターンを形成する。
次にS50にて、配線パターンが形成された複数のセラミックグリーンシートを積層して、グリーンシート積層体を作製する。
【0035】
次にS60にて、グリーンシート積層体の表面における必要な箇所に、S10で得られたセラミックスラリーを用いて、印刷によって、アルミナコート50となるアルミナコートパターンを形成する。
【0036】
次にS70にて、グリーンシート積層体を、例えば、1300℃にて60分間焼成して、積層焼結体を作製する。
次にS80にて、リードフレーム3における複数のリード72の一端をそれぞれ、対応する外部電極パッド45にロウ付けして接合することにより、リードフレーム3を積層焼結体に取り付ける。
【0037】
次にS90にて、リードフレーム3にメッキ端子を接触させて電解メッキを行い、複数の第1電極パッド41、複数の第2電極パッド42、複数の接続配線43、および複数の外部電極パッド45の露出しているそれぞれの表面に金属層を形成する。これにより、セラミック配線基板2が作製される。このS90の工程にて、リードフレーム3の露出している表面にも金属層が形成される。
【0038】
次にS100にて、複数のアルミナコート50を切断して、セラミックパッケージ1の製造を終了する。具体的には、
図5に示すように、セラミック配線基板2の表面においてアルミナコート50が配置されている箇所にレーザ光LBを照射することにより、アルミナコート50と、アルミナコート50および接続配線43を切断する。
【0039】
このように構成されたセラミックパッケージ1は、セラミック層11,12,13と、内部配線層21,22および表面配線層23とを積層して形成されるセラミック配線基板2を備える。そしてセラミックパッケージ1は、第1分割コート50aおよび第2分割コート50bを備える。第1分割コート50aおよび第2分割コート50bは、絶縁性を有する材料で形成され、表面配線層23における互いに異なる一部分を覆う。そしてセラミックパッケージ1では、第1分割コート50aおよび第2分割コート50bは、第1分割コート50aと第2分割コート50bとの間に形成された切断溝55を隔てて互いに対向している。
【0040】
このように構成されたセラミックパッケージ1は、表面配線層23を覆うようにアルミナコート50を形成して、このアルミナコート50を例えばレーザ光で切断することによって製造される。すなわち、セラミックパッケージ1では、アルミナコート50を介して表面配線層23へレーザ光を照射することにより、表面配線層23を切断し電気的に接続していない状態とすることができる。そしてセラミックパッケージ1では、表面配線層23がアルミナコート50に覆われているために、表面配線層23へレーザ光を照射した際に導体の切り屑が飛散するのを抑制することができる。従って、セラミックパッケージ1は、孔部を設けることなく導体の切り屑の飛散を抑制することができる。これにより、セラミックパッケージ1は、セラミックパッケージ1の構造が複雑になるのを抑制し、表面配線層23が電気的に切断された状態とすることができる。加えて、切断前の電気的に接続されている表面配線層23に対して電解メッキ等により、切断により電気的に独立する表面配線層23も含めて、表面配線層23全体に、金属層を形成することができる。またアルミナコート50は、表面配線層23へ向けてレーザ光を照射する位置を示す目印となる。
【0041】
また、セラミック層12の表面において切断溝55と対向している領域には、内部配線層22が形成されていない。セラミック層13は、セラミック層11,12,13のうち、表面配線層23が表面に形成されているセラミック層である。セラミック層12は、セラミック層11,12,13のうち、セラミック層13に接触しているセラミック層である。内部配線層22は、配線層21~23のうち、セラミック層12の表面に形成されている配線層である。
【0042】
これにより、セラミックパッケージ1は、表面配線層23を切断するために照射されたレーザ光がセラミック層12まで到達した場合であっても、内部配線層22が切断されてしまうという事態の発生を抑制することができる。
【0043】
セラミックパッケージ1では、表面配線層23の一部分と電気的に接続されるリードフレーム3が、セラミック配線基板2の周囲に沿って配置されている。つまり、リードフレーム3を介して表面配線層23に給電することが可能であり、表面配線層23に直接給電用の端子を接触させることなく、表面配線層23とリードフレーム3との露出している表面に金属層を形成することができる。
セラミックパッケージ1の製造方法は、準備工程と、配線形成工程と、被覆工程と、焼成工程と、メッキ工程と、切断工程とを備える。
【0044】
準備工程では、セラミック材料を用いてシート状に成形された複数のグリーンシートを準備する。配線形成工程では、複数のグリーンシートの面上に導電性の配線パターンを形成する。
【0045】
被覆工程では、表面グリーンシートに形成された配線パターンにおける一部分を覆うように絶縁性のアルミナコートパターンを形成する。表面グリーンシートは、複数のグリーンシートのうち、セラミック配線基板2における最表面に配置されるグリーンシートである。
【0046】
焼成工程では、複数のグリーンシートの面上に配線パターンおよびアルミナコートパターンが形成された後に、複数のグリーンシートを焼成し、セラミック層11~13と、配線パターンが焼成された配線層21~23と、アルミナコートパターンが焼成されたアルミナコート50とを得る。メッキ工程では、表面配線層23上にメッキ層を形成する。
【0047】
切断工程では、表面配線層23上にメッキ層が形成された後に、アルミナコート50に向けてレーザ光を照射することにより、アルミナコート50を切断する。
このように構成されたセラミックパッケージ1の製造方法は、セラミックパッケージ1と同様の効果を得ることができる。つまり、切断工程により切断され、電気的に独立する表面配線層23に対して、メッキ工程により切断前の表面配線層23の露出している表面に金属層を形成することができ、表面配線層23の耐腐食性や電気的特性等を向上させることができる。そして、メッキ工程の後に、切断工程を行う際に、表面配線層23の一部はアルミナコート50に覆われており、このアルミナコート50に向けてレーザ光を照射して、アルミナコート50及びアルミナコート50に覆われた箇所の表面配線層23を切断することで、表面配線層23へレーザ光を照射した際に導体の切り屑が飛散するのを抑制することができる。従って、本開示のセラミックパッケージ1は、孔部を設けることなく導体の切り屑の飛散を抑制することができる。
【0048】
セラミックパッケージ1の製造方法は、複数のグリーンシートの面上に配線パターンが形成された後に、複数のグリーンシートを積層する積層工程を備える。
セラミックパッケージ1の製造方法は、焼成工程が実行された後であって、メッキ工程が実行される前に、リードフレーム3の複数のリード72を表面配線層23に対して電気的に接続するように、セラミック配線基板2の外部電極パッド45と接合する接合工程を備える。
【0049】
また配線形成工程では、直下グリーンシートの表面において表面グリーンシートと積層することでアルミナコートパターンと対向する領域には、内部配線層22となる配線パターンが形成されないように、直下グリーンシートの面上に配線パターンを形成する。直下グリーンシートは、複数のグリーンシートのうち、焼成によりセラミック層12となるグリーンシートである。
【0050】
これにより、セラミックパッケージ1の製造方法は、表面配線層23を切断するために照射されたレーザ光がセラミック層12まで到達した場合であっても、内部配線層22が切断されてしまうという事態の発生を抑制することができる。
【0051】
以上説明した実施形態において、セラミック配線基板2は配線基板に相当し、第1分割コート50aは第1被覆部材に相当し、第2分割コート50bは第2被覆部材に相当し、切断溝55は凹部に相当する。
【0052】
また、セラミック層13は表面セラミック層に相当し、セラミック層12は直下セラミック層に相当し、内部配線層22は直下配線層に相当し、リードフレーム3、支持枠71およびリード72は導電部材に相当する。
【0053】
また、S10は準備工程としての処理に相当し、S40は配線形成工程としての処理に相当し、S60は被覆工程としての処理に相当し、S70は焼成工程としての処理に相当する。
【0054】
また、S90はメッキ工程としての処理に相当し、S100は切断工程としての処理に相当し、S50は積層工程としての処理に相当し、S80は接合工程としての処理に相当する。
【0055】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
例えば上記実施形態では、セラミックパッケージ1が、複数のセラミック層11~13と複数の配線層21~23とを積層して形成されるセラミック配線基板2を備える形態を示した。しかし、セラミックパッケージは1つのセラミック層と1つの配線層とを積層して形成される配線基板を備えるようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…セラミックパッケージ、2…セラミック配線基板、11,12,13…セラミック層、21,22…内部配線層、23…表面配線層、50…アルミナコート、50a…第1分割コート、50b…第2分割コート、55…切断溝