(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】電力変換装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
H02M7/12 H
H02M7/12 B
(21)【出願番号】P 2019132085
(22)【出願日】2019-07-17
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】堀越 眞一
(72)【発明者】
【氏名】酒井 幸次郎
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-135955(JP,A)
【文献】特開2016-077031(JP,A)
【文献】特開2012-120376(JP,A)
【文献】特開2016-167948(JP,A)
【文献】特開2016-152671(JP,A)
【文献】特開2008-104276(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0080022(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から開閉器を介して供給される交流電圧を直流電圧に変換するコンバータと、
前記コンバータから出力される前記直流電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記コンバータと前記平滑コンデンサとの間に設けられ、前記平滑コンデンサに流入する電流を抑制する抵抗器と、
前記抵抗器に対して並列に接続され、前記抵抗器の両端を短絡させ得るスイッチと、
前記開閉器と前記コンバータとの間に設けられ、リアクトル及びコンデンサを含み、ノイズを除去するフィルタと、
前記開閉器及び前記スイッチの開閉を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記平滑コンデンサの電圧が電圧閾値未満である場合には、前記スイッチを開いた状態で前記開閉器を開状態から閉状態に遷移させ、前記平滑コンデンサの前記電圧が前記電圧閾値以上である場合には、前記スイッチを閉じた状態で前記開閉器を前記開状態から前記閉状態に遷移させる、電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記平滑コンデンサの前記電圧を検出する検出部を更に有し、
前記制御部は、前記平滑コンデンサの前記電圧が前記電圧閾値以上であるか否かを、前記検出部によって検出された前記電圧に基づいて判定する、電力変換装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記制御部は、前記平滑コンデンサの前記電圧が前記電圧閾値以上であるか否かを、前記開閉器が前記閉状態から前記開状態に遷移したタイミングからの経過時間に基づいて判定する、電力変換装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
前記コンバータは、パルス幅変調コンバータである、電力変換装置。
【請求項5】
交流電源から開閉器を介して供給される交流電圧を直流電圧に変換するコンバータと、前記コンバータから出力される前記直流電圧を平滑化する平滑コンデンサと、前記コンバータと前記平滑コンデンサとの間に設けられ、前記平滑コンデンサに流入する電流を抑制する抵抗器と、前記抵抗器に対して並列に接続され、前記抵抗器の両端を短絡させ得るスイッチと、前記開閉器と前記コンバータとの間に設けられ、リアクトル及びコンデンサを含み、ノイズを除去するフィルタと、前記開閉器及び前記スイッチの開閉を制御する制御部とを備える電力変換装置の制御方法であって、
前記平滑コンデンサの電圧が電圧閾値以上であるか否かを判定するステップと、
前記開閉器を開状態から閉状態に遷移させるステップとを有し、
前記開閉器を前記開状態から前記閉状態に遷移させるステップでは、前記平滑コンデンサの前記電圧が前記電圧閾値未満である場合には、前記スイッチを開いた状態で前記開閉器を前記開状態から前記閉状態に遷移させ、前記平滑コンデンサの前記電圧が前記電圧閾値以上である場合には、前記スイッチを閉じた状態で前記開閉器を前記開状態から前記閉状態に遷移させる、電力変換装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンバータの入力電圧が設定値以上である場合に当該コンバータのスイッチングを停止する電力変換装置が開示されている。特許文献1によれば、電気部品の破壊の防止に寄与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、コンバータに備えられたスイッチング素子等の破壊を必ずしも良好に防止し得ない。
【0005】
本発明の目的は、スイッチング素子等の破壊を良好に防止し得る電力変換装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による電力変換装置は、交流電源から開閉器を介して供給される交流電圧を直流電圧に変換するコンバータと、前記コンバータから出力される前記直流電圧を平滑化する平滑コンデンサと、前記コンバータと前記平滑コンデンサとの間に設けられ、前記平滑コンデンサに流入する電流を抑制する抵抗器と、前記抵抗器に対して並列に接続され、前記抵抗器の両端を短絡させ得るスイッチと、前記開閉器と前記コンバータとの間に設けられ、リアクトル及びコンデンサを含み、ノイズを除去するフィルタと、前記開閉器及び前記スイッチの開閉を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記平滑コンデンサの電圧が電圧閾値未満である場合には、前記スイッチを開いた状態で前記開閉器を開状態から閉状態に遷移させ、前記平滑コンデンサの前記電圧が前記電圧閾値以上である場合には、前記スイッチを閉じた状態で前記開閉器を前記開状態から前記閉状態に遷移させる。
【0007】
本発明の他の態様による電力変換装置の制御方法は、交流電源から開閉器を介して供給される交流電圧を直流電圧に変換するコンバータと、前記コンバータから出力される前記直流電圧を平滑化する平滑コンデンサと、前記コンバータと前記平滑コンデンサとの間に設けられ、前記平滑コンデンサに流入する電流を抑制する抵抗器と、前記抵抗器に対して並列に接続され、前記抵抗器の両端を短絡させ得るスイッチと、前記開閉器と前記コンバータとの間に設けられ、リアクトル及びコンデンサを含み、ノイズを除去するフィルタと、前記開閉器及び前記スイッチの開閉を制御する制御部とを備える電力変換装置の制御方法であって、前記平滑コンデンサの電圧が電圧閾値以上であるか否かを判定するステップと、前記開閉器を開状態から閉状態に遷移させるステップとを有し、前記開閉器を前記開状態から前記閉状態に遷移させるステップでは、前記平滑コンデンサの電圧が電圧閾値未満である場合には、前記スイッチを開いた状態で前記開閉器を前記開状態から前記閉状態に遷移させ、前記平滑コンデンサの前記電圧が前記電圧閾値以上である場合には、前記スイッチを閉じた状態で前記開閉器を前記開状態から前記閉状態に遷移させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スイッチング素子等の破壊を良好に防止し得る電力変換装置及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態による電力変換装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2A及び
図2Bは、開閉器を開状態から閉状態に遷移させた際における各部の電圧の変化の例を示す図である。
【
図3】一実施形態による電力変換装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】一実施形態の変形例による電力変換装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による電力変換装置及びその制御方法について、好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【0011】
[一実施形態]
一実施形態による電力変換装置及びその制御方法について
図1~
図3を用いて説明する。
図1は、本実施形態による電力変換装置の構成を示す図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態による電力変換装置10には、コンバータ12が備えられている。コンバータ12は、交流電源14から開閉器16を介して供給される交流電圧を直流電圧に変換する。コンバータ12は、例えば公知のパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)コンバータであるが、これに限定されるものではない。
【0013】
交流電源14は、例えば、多相の相電圧を供給する多相交流電源、より具体的には、3相交流電源であるが、これに限定されるものではない。交流電源14は、例えば、120度ずつ位相がずれたU相、V相及びW相の電圧を供給し得る。
【0014】
開閉器16は、交流電源14から電力変換装置10への交流電圧の供給をオン/オフするためのものである。開閉器16としては、例えば、電磁接触器、ブレーカ等を用い得るが、これに限定されるものではない。
【0015】
電力変換装置10には、フィルタ24が更に備えられている。フィルタ24は、開閉器16とコンバータ12との間に備えられている。フィルタ24は、コンバータ12側から交流電源14側に伝達されるノイズを除去し得るとともに、交流電源14側からコンバータ12側に伝達されるノイズを除去し得る。
【0016】
コンバータ12には、整流回路30が備えられている。整流回路30は、交流電源14から開閉器16を介して供給される交流電圧を直流電圧に整流する。
【0017】
整流回路30には、交流電源14の各相に対応して、パワー素子部32U、32V、32Wが備えられている。
【0018】
U相に対応したパワー素子部32Uには、上アーム側のダイオード36Uuと、下アーム側のダイオード36Udと、上アーム側のスイッチング素子(半導体スイッチング素子)34Uuと、下アーム側とスイッチング素子34Udとが備えられている。
【0019】
V相に対応したパワー素子部32Vには、上アーム側のダイオード36Vuと、下アーム側のダイオード36Vdと、上アーム側のスイッチング素子34Vuと、下アーム側とスイッチング素子34Vdとが備えられている。
【0020】
W相に対応したパワー素子部32Wには、上アーム側のダイオード36Wuと、下アーム側のダイオード36Wdと、上アーム側のスイッチング素子34Wuと、下アーム側とスイッチング素子34Wdとが備えられている。
【0021】
上アーム側のダイオード一般について説明する際には、符号36uを用い、個々の上アーム側のダイオードについて説明する際には、符号36Uu、36Vu、36Wuを用いる。また、下アーム側のダイオード一般について説明する際には、符号36dを用い、個々の下アーム側のダイオードについて説明する際には、符号36Ud、36Vd、36Wdを用いる。
【0022】
スイッチング素子一般について説明する際には、符号34を用い、個々のスイッチング素子について説明する際には、符号34Uu、34Ud、34Vu、34Vd、34Wu、34Wdを用いる。また、上アーム側のスイッチング素子一般について説明する際には、符号34uを用い、個々の上アーム側のスイッチング素子について説明する際には、符号34Uu、34Vu、34Wuを用いる。また、下アーム側のスイッチング素子一般について説明する際には、符号34dを用い、個々の下アーム側のスイッチング素子について説明する際には、符号34Ud、34Vd、34Wdを用いる。スイッチング素子34は、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)を用い得るが、これに限定されるものではない。FET(Field Effect Transistor)をスイッチング素子34として用いるようにしてもよい。
【0023】
上アーム側のダイオード36uと、下アーム側のダイオード36dとは、互いに直列に接続されている。上アーム側のダイオード36uのカソードは、一方の出力線42uに接続されている。上アーム側のダイオード36uのアノードは、下アーム側のダイオード36dのカソードに接続されている。下アーム側のダイオード36dのアノードは、他方の出力線42dに接続されている。
【0024】
上アーム側のスイッチング素子34uと、下アーム側のスイッチング素子34dとは、互いに直列に接続されている。上アーム側のスイッチング素子34uの第1端子は、上アーム側のダイオード36uのカソードに接続されている。スイッチング素子34が例えばIGBTである場合、第1端子はコレクタであり、スイッチング素子34が例えばFETである場合、第1端子はソース/ドレインの一方である。上アーム側のスイッチング素子34uの第2端子は、上アーム側のダイオード36uのアノードに接続されている。スイッチング素子34が例えばIGBTである場合、第2端子はエミッタであり、スイッチング素子34が例えばFETである場合、第2端子はソース/ドレインの他方である。下アーム側のスイッチング素子34dの第1端子は、下アーム側のダイオード36dのカソードに接続されている。下アーム側のスイッチング素子34dの第2端子は、下アーム側のダイオード36dのアノードに接続されている。
【0025】
上アーム側のダイオード36Uuのアノードと、上アーム側のスイッチング素子34Uuの第2端子と、下アーム側のダイオード36Udのカソードと、下アーム側のスイッチング素子34Udの第1端子とに接続されたノード38Uには、U相の電圧、即ち、U相電圧が供給される。
【0026】
上アーム側のダイオード36Vuのアノードと、上アーム側のスイッチング素子34Vuの第2端子と、下アーム側のダイオード36Vdのカソードと、下アーム側のスイッチング素子34Vdの第1端子とに接続されたノード38Vには、V相の電圧、即ち、V相電圧が供給される。
【0027】
上アーム側のダイオード36Wuのアノードと、上アーム側のスイッチング素子34Wuの第2端子と、下アーム側のダイオード36Wdのカソードと、下アーム側のスイッチング素子34Wdの第1端子とに接続されたノード38Wには、W相の電圧、即ち、W相電圧が供給される。
【0028】
電力変換装置10には、平滑コンデンサ18が更に備えられている。平滑コンデンサ18は、コンバータ12の後段に備えられている。平滑コンデンサ18の一端は、一方の出力線42uに接続されている。平滑コンデンサ18の他端は、他方の出力線42dに接続されている。平滑コンデンサ18は、コンバータ12から出力される直流電圧、即ち、整流回路30によって整流された直流電圧を平滑化する。
【0029】
電力変換装置10には、抵抗器20が更に備えられている。抵抗器20は、一方の出力線42uに設けられている。抵抗器20は、コンバータ12と平滑コンデンサ18との間に位置している。抵抗器20の一端は、一方の出力線42uを介して、上アーム側のダイオード36u及び上アーム側のスイッチング素子34uに電気的に接続されている。抵抗器20の他端は、一方の出力線42uを介して、平滑コンデンサ18の一端に接続されている。
【0030】
電力変換装置10には、スイッチ22が更に備えられている。スイッチ22は、抵抗器20に対して並列に接続されている。スイッチ22は、抵抗器20の両端を短絡し得る。スイッチ22が閉じられた際には、抵抗器20の両端が短絡された状態となる。スイッチ22が開かれた際には、抵抗器20の両端が短絡されていない状態となる。
【0031】
スイッチ22が開かれている状態で、交流電圧から直流電圧への変換がコンバータ12によって開始される。このため、交流電圧から直流電圧への変換がコンバータ12によって開始された際に、平滑コンデンサ18に大きな突入電流が流入するのを、抵抗器20によって抑制することができる。平滑コンデンサ18に十分な電荷が充電された後には、スイッチ22は閉じられる。
【0032】
フィルタ24には、リアクトル46U、46V、46Wが備えられている。リアクトル46U、46V、46Wの一端は、フィルタ24の一方の入出力端子44U、44V、44Wにそれぞれ接続されている。フィルタ24の一方の入出力端子44U、44V、44Wには、交流電源14からの交流電圧が開閉器16を介してそれぞれ供給される。
【0033】
フィルタ24には、リアクトル48U、48V、48Wが更に備えられている。リアクトル46U、46V、46Wの他端は、リアクトル48U、48V、48Wの一端にそれぞれ接続されている。リアクトル48U、48V、48Wの他端は、フィルタ24の他方の入出力端子50U、50V、50Wにそれぞれ接続されている。フィルタ24の他方の入出力端子50U、50V、50Wには、ノード38U、38V、38Wがそれぞれ接続されている。
【0034】
フィルタ24には、抵抗器52U、52V、52Wが更に備えられている。抵抗器52U、52V、52Wは、共振現象を抑制するための抵抗器であるダンピング抵抗器である。リアクトル46U、46V、46Wの他端と、リアクトル48U、48V、48Wの一端とに接続されたノード53U、53V、53Wは、抵抗器52U、52V、52Wの一端にそれぞれ接続されている。
【0035】
フィルタ24には、コンデンサ54U、54V、54Wが更に備えられている。コンデンサ一般について説明する際には、符号54を用い、個々のコンデンサについて説明する際には、符号54U、54V、54Wを用いる。コンデンサ54U、54V、54Wの一端は、抵抗器52U、52V、52Wの他端にそれぞれ接続されている。
【0036】
フィルタ24には、抵抗器56U、56V、56Wが更に備えられている。抵抗器一般について説明する際には、符号56を用い、個々の抵抗器について説明する際には、符号56U、56V、56Wを用いる。抵抗器56U、56V、56Wは、コンデンサ54U、54V、54Wに対してそれぞれ並列に接続されている。抵抗器56U、56V、56Wは、コンデンサ54U、54V、54Wに蓄えられた電荷を放電させるためのものである。
【0037】
コンデンサ54U、54V、54Wの他端は、互いに接続されている。
【0038】
電力変換装置10には、電圧センサ(検出部)28が更に備えられている。電圧センサ28の一方の入力端子は、平滑コンデンサ18の一端に接続されている。電圧センサ28の他方の入力端子は、平滑コンデンサ18の他端に接続されている。電圧センサ28は、平滑コンデンサ18の電圧、即ち、平滑コンデンサ18の両端の電圧を検出し得る。
【0039】
電力変換装置10には、PWM制御回路29が更に備えられている。PWM制御回路29は、コンバータ12をPWM制御するためのものである。具体的には、PWM制御回路29は、制御部64から供給される信号(指令)に基づいて、スイッチング素子34の第3端子(ゲート)に電圧を印加することによって、スイッチング素子34をスイッチングする。PWM制御回路29は、スイッチング素子34を適宜スイッチングすることにより、出力電圧の調整、即ち、平滑コンデンサ18の両端の電圧の調整等を行い得る。
【0040】
電力変換装置10には、制御装置26が更に備えられている。制御装置26は、電力変換装置10の全体の制御を司る。制御装置26には、演算部58と、記憶部60とが備えられている。演算部58は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等によって構成され得るが、これに限定されるものではない。記憶部60には、例えば、不図示の揮発性メモリと、不図示の不揮発性メモリとが備えられている。揮発性メモリとしては、例えばRAM(Random Access Memory)等が挙げられる。不揮発性メモリとしては、例えばROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等が挙げられる。プログラム、データ、テーブル等が、記憶部60に記憶され得る。
【0041】
演算部58には、判定部62と、制御部64とが備えられている。判定部62と、制御部64とは、記憶部60に記憶されているプログラムが演算部58によって実行されることによって実現され得る。
【0042】
判定部62は、平滑コンデンサ18の両端の電圧が電圧閾値以上であるか否かを判定する。具体的には、判定部62は、電圧センサ28から供給される情報に基づいて、平滑コンデンサ18の両端の電圧を判定する。電圧閾値は、平滑コンデンサ18の電圧が十分に大きい状態であるか否かを判定するための閾値である。
【0043】
制御部64は、開閉器16の開閉を制御し得る。開閉器16が閉じられると、交流電源14から供給される交流電圧が、開閉器16とフィルタ24とを介してコンバータ12に供給される状態となる。開閉器16が開かれると、フィルタ24及びコンバータ12に交流電圧が供給されない状態となる。
【0044】
制御部64は、スイッチ22の開閉を制御し得る。上述したように、スイッチ22が閉じられると、抵抗器20の両端が短絡された状態となる。上述したように、スイッチ22が開かれると、抵抗器20の両端が短絡されていない状態となる。
【0045】
制御部64は、例えば、不図示の電圧センサ、電流センサ等によって取得される情報等に基づいて、PWM制御回路29に供給する信号(指令)を生成し得る。制御部64は、PWM制御回路29を用いてスイッチング素子34を適宜スイッチングすることにより、出力電圧の調整、即ち、平滑コンデンサ18の両端の電圧の調整等を行い得る。
【0046】
コンデンサ54の両端には、3相交流の線間電圧に応じた電圧が印加される。コンデンサ54には、印加された当該電圧に応じた電荷が蓄えられる。開閉器16が閉状態から開状態に遷移すると、当該タイミングにおいてコンデンサ54に蓄えられている電荷が抵抗器56を介して放電され始める。開閉器16が閉状態から開状態に遷移したタイミングからの経過時間が比較的短い段階においては、コンデンサ54に蓄えられている電荷が十分に放電しきらず、コンデンサ54の両端の電圧は大きい状態のままである。開閉器16を開状態から閉状態に遷移させると、共振電圧がフィルタ24において生じ得る。開状態に遷移した開閉器16を再度閉状態に戻すまでの期間が比較的短く、しかも、開閉器16を開状態に遷移させた際における線間電圧の位相と、開閉器16を閉状態に戻した際における線間電圧の位相とが逆である場合には、共振電圧のピークが著しく大きくなり得る。ピークの著しく大きい共振電圧がスイッチング素子34に印加された場合には、当該スイッチング素子34が破壊される虞がある。
【0047】
ところで、開状態に遷移した開閉器16を再度閉状態に戻すまでの期間が比較的短い場合には、平滑コンデンサ18の電圧は大きい状態のままである。抵抗器20をスイッチ22によって短絡するようにすれば、共振電圧のピークは、平滑コンデンサ18の電圧にクランプされるため、著しく大きくはならない。そこで、本実施形態では、開状態に遷移した開閉器16を再度閉状態に戻すまでの期間が比較的短い場合、即ち、平滑コンデンサ18の電圧が電圧閾値以上である場合には、スイッチ22を閉じた状態で開閉器16を開状態から閉状態に遷移させる。なお、スイッチ22を閉じた状態で開閉器16を開状態から閉状態に遷移させても、平滑コンデンサ18の電圧が大きいため、大きな突入電流が平滑コンデンサ18に流れることはない。
【0048】
図2A及び
図2Bは、開閉器を開状態から閉状態に遷移させた際における各部の電圧の変化の例を示す図である。
図2Aには、比較例の場合、即ち、抵抗器20がスイッチ22によって短絡されていない場合の例が示されている。
図2Bには、本実施形態の場合、即ち、抵抗器20がスイッチ22によって短絡されている場合の例が示されている。
図2A及び
図2Bの左側には、開閉器16の出力側の電圧の例が示されている。
図2A及び
図2Bの右側には、共振電圧の例が示されている。なお、ここでは、説明を簡略化するため、開閉器16を介してフィルタ24に直流電圧を印加した場合の例が示されている。
図2A及び
図2Bには、平滑コンデンサ18の電圧が十分に大きくなっている場合の例が示されている。
【0049】
抵抗器20がスイッチ22によって短絡されていない状態で開閉器16を開状態から閉状態に遷移させた場合、即ち、比較例の場合には、
図2Aに示すように、共振電圧のピークは著しく大きくなる。
【0050】
一方、抵抗器20がスイッチ22によって短絡されている状態で開閉器16を開状態から閉状態に遷移させた場合、即ち、本実施形態の場合には、
図2Bに示すように、共振電圧のピークは平滑コンデンサ18の電圧によってクランプされる。
【0051】
このように、本実施形態では、開状態に遷移した開閉器16を再度閉状態に戻すまでの期間が比較的短い場合、即ち、平滑コンデンサ18の電圧が十分に大きい場合には、スイッチ22を閉じた状態で開閉器16を開状態から閉状態に遷移させる。抵抗器20がスイッチ22によって短絡されるため、共振電圧のピークが平滑コンデンサ18の電圧にクランプされる。共振電圧のピークが著しく大きくならないため、本実施形態によれば、スイッチング素子34等が破壊されるのを良好に防止することができる。
【0052】
一方、開状態に遷移した開閉器16を再度閉状態に戻すまでの期間が十分に長い場合には、コンデンサ54に蓄えられた電荷が抵抗器56を介して十分に放電されるため、コンデンサ54の両端の電圧は十分に小さくなっている。平滑コンデンサ18の両端の電圧が十分に小さくなっていることは、開状態に遷移した開閉器16を再度閉状態に戻すまでの期間が十分に長いこと、即ち、コンデンサ54の両端の電圧が十分に小さくなっていることを意味する。コンデンサ54の両端の電圧が十分に小さくなっている場合には、開閉器16を開状態に遷移させた際の電圧の位相と、開閉器16を閉状態に戻した際の電圧の位相とが逆であったとしても、共振電圧のピークは著しく大きくはならない。そこで、本実施形態では、開状態に遷移した開閉器16を再度閉状態に戻すまでの期間が比較的長い場合、即ち、平滑コンデンサ18の電圧が電圧閾値未満である場合には、スイッチ22を開いた状態で開閉器16を開状態から閉状態に遷移させる。スイッチ22を開いた状態で開閉器16を開状態から閉状態に遷移させるため、平滑コンデンサ18に大きな突入電流が流れるのを抵抗器20によって防止し得る。
【0053】
本実施形態による電力変換装置10の動作について
図3を用いて説明する。
図3は、本実施形態による電力変換装置の動作を示すフローチャートである。
図3には開閉器16が閉状態から開状態に遷移した後の動作が示されている。
【0054】
ステップS1において、制御部64は、開閉器16を開状態から閉状態に遷移させるか否かを判定する。開閉器16を開状態から閉状態に遷移させる場合(ステップS1においてYES)、ステップS2に遷移する。開閉器16を開状態から閉状態に遷移させない場合(ステップS1においてNO)、
図3に示す処理が完了する。
【0055】
ステップS2において、判定部62は、平滑コンデンサ18の電圧、即ち、平滑コンデンサ18の両端の電圧が電圧閾値以上であるか否かを判定する。平滑コンデンサ18の電圧が電圧閾値以上である場合(ステップS2においてYES)、ステップS3に遷移する。平滑コンデンサ18の電圧が電圧閾値未満である場合(ステップS2においてNO)、ステップS4に遷移する。
【0056】
ステップS3において、制御部64は、スイッチ22を閉じる。スイッチ22が既に閉じられている場合には、制御部64は、スイッチ22が閉じられている状態を維持する。この後、ステップS5に遷移する。
【0057】
ステップS4において、制御部64は、スイッチ22を開く。スイッチ22が既に開かれている場合には、制御部64は、スイッチ22が開かれている状態を維持する。この後、ステップS5に遷移する。
【0058】
ステップS5において、制御部64は、開閉器16を開状態から閉状態に遷移させる。こうして、
図3に示す処理が完了する。
【0059】
このように、本実施形態によれば、平滑コンデンサ18の電圧が電圧閾値未満である場合には、スイッチ22を開いた状態で開閉器16を開状態から閉状態に遷移させ、平滑コンデンサ18の電圧が電圧閾値以上である場合には、スイッチ22を閉じた状態で開閉器16を開状態から閉状態に遷移させる。本実施形態によれば、コンデンサ54の両端の電圧が大きい場合には、抵抗器20がスイッチ22によって短絡されるため、共振電圧のピークが平滑コンデンサ18の電圧にクランプされる。共振電圧のピークが著しく大きくならないため、本実施形態によれば、スイッチング素子34等が破壊されるのを良好に防止することができる。
【0060】
(変形例)
本実施形態の変形例による電力変換装置10について
図4を用いて説明する。
図4は、本変形例による電力変換装置の構成を示す図である。
【0061】
本変形例による電力変換装置10は、平滑コンデンサ18の電圧が電圧閾値以上であるか否かを、開閉器16が閉状態から開状態に遷移したタイミングからの経過時間に基づいて判定するものである。
【0062】
図4に示すように、本変形例では、電圧センサ28(
図1参照)が備えられていない。本実施形態では、演算部58にタイマ66が更に備えられている。タイマ66は、記憶部60に記憶されているプログラムが演算部58によって実行されることによって実現され得る。
【0063】
制御部64は、開閉器16を閉状態から開状態に遷移させた際、開閉器16を閉状態から開状態に遷移させたことを示す情報をタイマ66に供給する。タイマ66は、開閉器16が閉状態から開状態に遷移したタイミングからの経過時間をカウントする。タイマ66によってカウントされた経過時間は、判定部62に供給される。判定部62は、タイマ66によってカウントされた経過時間に基づいて、平滑コンデンサ18の電圧が電圧閾値以上であるか否かを判定する。
【0064】
本変形例による電力変換装置10の動作は、
図3を用いて上述した電力変換装置10の動作と同様であるため、説明を省略する。
【0065】
このように、平滑コンデンサ18の電圧が電圧閾値以上であるか否かを、開閉器16が閉状態から開状態に遷移したタイミングからの経過時間に基づいて判定するようにしてもよい。
【0066】
上記実施形態をまとめると以下のようになる。
【0067】
電力変換装置(10)は、交流電源(14)から開閉器(16)を介して供給される交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ(12)と、前記コンバータから出力される前記直流電圧を平滑化する平滑コンデンサ(18)と、前記コンバータと前記平滑コンデンサとの間に設けられ、前記平滑コンデンサに流入する電流を抑制する抵抗器(20)と、前記抵抗器に対して並列に接続され、前記抵抗器の両端を短絡させ得るスイッチ(22)と、前記開閉器と前記コンバータとの間に設けられ、リアクトル(46U、46V、46W、48U、48V、48W)及びコンデンサ(54U、54V、54W)を含み、ノイズを除去するフィルタ(24)と、前記開閉器及び前記スイッチの開閉を制御する制御部(64)とを備え、前記制御部は、前記平滑コンデンサの電圧が電圧閾値未満である場合には、前記スイッチを開いた状態で前記開閉器を開状態から閉状態に遷移させ、前記平滑コンデンサの前記電圧が前記電圧閾値以上である場合には、前記スイッチを閉じた状態で前記開閉器を前記開状態から前記閉状態に遷移させる。このような構成によれば、平滑コンデンサの電圧が十分に大きい場合、即ち、コンデンサの両端の電圧が大きい際には、抵抗器がスイッチによって短絡されるため、共振電圧のピークが平滑コンデンサの電圧にクランプされる。共振電圧のピークが著しく大きくならないため、このような構成によれば、スイッチング素子34等が破壊されるのを良好に防止することができる。
【0068】
前記平滑コンデンサの前記電圧を検出する検出部(28)を更に有し、前記制御部は、前記平滑コンデンサの前記電圧が前記電圧閾値以上であるか否かを、前記検出部によって検出された前記電圧に基づいて判定するようにしてもよい。
【0069】
前記制御部は、前記平滑コンデンサの前記電圧が前記電圧閾値以上であるか否かを、前記開閉器が前記閉状態から前記開状態に遷移したタイミングからの経過時間に基づいて判定するようにしてもよい。このような構成によれば、平滑コンデンサの電圧を検出する検出部が不要となるため、低コスト化等に寄与することができる。
【0070】
前記コンバータは、パルス幅変調コンバータであるようにしてもよい。
【0071】
電力変換装置の制御方法は、交流電源から開閉器を介して供給される交流電圧を直流電圧に変換するコンバータと、前記コンバータから出力される前記直流電圧を平滑化する平滑コンデンサと、前記コンバータと前記平滑コンデンサとの間に設けられ、前記平滑コンデンサに流入する電流を抑制する抵抗器と、前記抵抗器に対して並列に接続され、前記抵抗器の両端を短絡させ得るスイッチと、前記開閉器と前記コンバータとの間に設けられ、リアクトル及びコンデンサを含み、ノイズを除去するフィルタと、前記開閉器及び前記スイッチの開閉を制御する制御部とを備える電力変換装置の制御方法であって、前記平滑コンデンサの電圧が電圧閾値以上であるか否かを判定するステップ(S2)と、前記開閉器を開状態から閉状態に遷移させるステップ(S5)とを有し、前記開閉器を前記開状態から前記閉状態に遷移させるステップでは、前記平滑コンデンサの前記電圧が前記電圧閾値未満である場合には、前記スイッチを開いた状態で前記開閉器を前記開状態から前記閉状態に遷移させ(S4、S5)、前記平滑コンデンサの前記電圧が前記電圧閾値以上である場合には、前記スイッチを閉じた状態で前記開閉器を前記開状態から前記閉状態に遷移させる(S3、S5)。
【符号の説明】
【0072】
10:電力変換装置 12:コンバータ
14:交流電源 16:開閉器
18:平滑コンデンサ
20、52U、52V、52W、56U、56V、56W:抵抗器
22:スイッチ 24:フィルタ
26:制御装置 28:電圧センサ
29:PWM制御回路 30:整流回路
32U、32V、32W:パワー素子部
34Ud、34Uu、34Vd、34Vu、34Wd、34Wu:スイッチング素子
36Ud、36Uu、36Vd、36Vu、36Wd、36Wu:ダイオード
38U、38V、38W、53U、53V、53W:ノード
42d、42u:出力線
44U、44V、44W、50U、50V、50W:入出力端子
46U、46V、46W、48U、48V、48W:リアクトル
54U、54V、54W:コンデンサ 58:演算部
60:記憶部 62:判定部
64:制御部 66:タイマ