(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】積重ね可能な薄型の一様なペトリ皿
(51)【国際特許分類】
C12M 1/22 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
C12M1/22
(21)【出願番号】P 2020529295
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(86)【国際出願番号】 US2018062087
(87)【国際公開番号】W WO2019108445
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-11-12
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ブリッシュ,クリストフ ローラン ルネ
【審査官】竹内 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-047459(JP,A)
【文献】米国特許第04743556(US,A)
【文献】特開平03-030664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皿であって、
円形皿領域、角部、および上向きに延在する側壁を有するポリマー製の基体
であって、該ポリマー製の基体は、
前記角部において前記基体の内面に設けられたチャネルと、
前記角部において前記基体の外面に設けられた基体側積重ねリングと
、
円形蓋領域、角部、および下向きに延在する側壁を有するポリマー製の蓋と、を備え、
該ポリマー製の蓋は
前記角部において前記蓋の内面に設けられた溝と、
前記角部において前記蓋の外面に設けられた材料の隆起リングである蓋側積重ねリングであって、該蓋側積重ねリングは、前記円形蓋領域を周回し、かつ境界を接する蓋側積み重ねリングと、
を備え、
前記円形皿領域、前記上向きに延在する側壁、および前記角部がそれぞれ、所定の厚さを有し、
前記円形皿領域、前記上向きに延在する側壁、および前記角部の前記厚さ
の差が、
それぞれ30%以内であ
り、
前記基体が、ポリスチレン(PS)を含み、
前記ポリマー製の基体が前記ポリマー製の蓋の上に積み重ねられると、前記基体側積重ねリングが、前記蓋側積重ねリングの内側に同心に収まり、前記円形蓋領域上に配置される、
皿。
【請求項2】
前記基体側積重ねリングに少なくとも3つの基体側通気路をさらに備える、請求項1記載の皿。
【請求項3】
前記基体側積重ねリングに少なくとも4つの基体側通気路を備える、請求項2記載の皿。
【請求項4】
前記基体側通気路が、互いに等距離に配置されている、請求項2記載の皿。
【請求項5】
前記基体側積重ねリングが、ゲートにより中断されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の皿。
【請求項6】
前記円形蓋領域、前記下向きに延在する側壁、および前記角部がそれぞれ、所定の厚さを有し、
前記円形蓋領域、前記下向きに延在する側壁、および前記角部の前記厚さ
の差が、
それぞれ30%以内である、請求項
1記載の皿。
【請求項7】
前記蓋が、前記角部において前記蓋の前記内面から下向きに延在する少なくとも3つのリブをさらに備える、請求項
6記載の皿。
【請求項8】
前記リブが、三角形である、請求項
7記載の皿。
【請求項9】
前記リブが、互いに等距離にある、請求項
7または8記載の皿。
【請求項10】
前記蓋が、少なくとも3つの通気路をさらに備える、請求項
1から9までのいずれか1項記載の皿。
【請求項11】
前記通気路が、互いに等距離にある、請求項
10記載の皿。
【請求項12】
前記リブおよび前記通気路が、蓋において同じ位置に配置されている、請求項
9または
10記載の皿。
【請求項13】
前記蓋側積重ねリングが、ゲートにより中断されている、請求項
6から12までのいずれか1項記載の皿。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、米国特許法第119条のもと、2017年11月30日に出願された欧州特許出願第17306672.1号明細書の優先権の利益を主張するものであり、その内容に依拠し、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、一般的には、実験室用消耗品に関し、より具体的には、一様な断面を有する積重ね可能なペトリ皿に関する。
【背景技術】
【0003】
ペトリ皿は、細胞を培養するのに使用されるガラス製またはプラスチック製の浅い蓋付き容器である。ペトリ皿は、微生物学的研究のための寒天プレートを作製するのに使用されることが多い。この場合、基体ユニットに、寒天とさらなる任意の成分、例えば、栄養素、血液、塩、炭水化物、指示薬、アミノ酸または抗生物質とを含有する液体が部分的に充填される。寒天が冷えて固化すると、ペトリ皿に、微生物含有サンプルが植菌される(「播種される」)。使用中または保管中、ペトリ皿を積み重ねることがある。
【0004】
従来では、ペトリ皿は、結晶性ポリスチレンを使用する射出成形により製造されている。このような方法では、原材料のコストが、製品のコストの50%程度を占める。したがって、ペトリ皿を形成するのに使用される原材料の量を、それらの積重ね可能性を含むそれらの機能を維持しながら減らすことが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本明細書には、ペトリ皿の基体であって、実質的に円形で、実質的に平坦な基体領域を有し、この基体領域から、基体側壁が、平坦な基体領域に対して垂直に延在して、角部を形成し、基体は、角部において基体の外側から延在する基体側積重ねリングを有することができ、角部において基体の内側の全周にわたる内部チャネルも画定する、基体が開示されている。基体は、一様な断面厚さを有することができる。また、基体は、基体側積重ねリングに通気路を有することもできる。また、ペトリ皿は、蓋を有してもよく、この蓋は、一様な断面の蓋厚さを有してもよい。蓋は、円形平坦領域と、下向きに延在し、角部を形成する側壁とを有してよい。蓋は、角部において蓋側積重ねリングを有してよく、この蓋側積重ねリングは、角部において蓋の内部に溝を形成する。また、蓋は、複数の皿を積み重ねるのを可能にするために、リブおよび通気路を有してもよい。
【0006】
本開示は、態様(1)において、皿であって、円形皿領域、角部、および上向きに延在する側壁を有するポリマー製の基体と、角部において基体の内面に設けられたチャネルと、角部において基体の外面に設けられた基体側積重ねリングとを備え、円形基体部、上向きに延在する側壁、および角部がそれぞれ、所定の厚さを有し、円形基体部、上向きに延在する側壁、および角部の厚さが、互いの30%以内である、皿を提供する。
【0007】
本開示は、態様(2)において、基体側積重ねリングに少なくとも3つの基体側通気路をさらに備える、態様1記載の皿を提供する。別の態様(3)において、本開示は、基体側積重ねリングに少なくとも4つの基体側通気路を備える、態様(2)記載の皿を提供する。別の態様(4)において、本開示は、基体側通気路が、互いに等距離に配置されている、態様(2)記載の皿を提供する。別の態様(5)において、本開示は、基体側積重ねリングが、ゲートにより中断されている、態様1から4までのいずれか1つ記載の皿を提供する。
【0008】
追加の態様(6)において、本開示は、ポリマー製の蓋をさらに備える、態様1から5までのいずれか1つ記載の皿を提供する。態様(7)において、本開示は、蓋が、円形蓋部、角部、および下向きに延在する側壁と、角部において蓋の内面に設けられた溝と、角部において蓋の外面に設けられた蓋側積重ねリングとを備え、円形蓋部、下向きに延在する側壁、および角部がそれぞれ、所定の厚さを有し、円形蓋部、下向きに延在する側壁、および角部の厚さが、互いの30%以内である、態様6記載の皿を提供する。態様(8)において、本開示は、蓋が、円形蓋部と下向きに延在する蓋壁との間の接続部において蓋の内面から下向きに延在する少なくとも3つのリブをさらに備える、態様7記載の皿を提供する。態様(9)において、本開示は、リブが、三角形であるか、または互いに等距離にある、態様8記載の皿を提供する。態様(10)において、本開示は、蓋が、少なくとも3つの通気路をさらに備える、態様6から9までのいずれか1つ記載の皿を提供する。態様(11)において、本開示は、通気路が、互いに等距離にあるか、または同じ位置に配置されているか、または蓋側積重ねリングが、ゲートにより中断されている、態様10記載の皿を提供する。
【0009】
追加の態様(12)において、本開示は、1つの皿を別の皿の上側に積み重ねると、上側の皿の基体側積重ねリングが、別の皿の蓋側積重ねリング内に収まる、態様7から11までのいずれか1つ記載の皿および蓋を提供する。
【0010】
本開示のさらなる特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載され、一部、詳細な説明を読んで理解した後に当業者に明白となるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲および添付の図面を含む本明細書に記載された実施形態を実施することにより認識されるであろう。
【0011】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は両方とも、様々な実施形態を記載しており、請求される主題の本質および特徴を理解するための概説または体系を提供することを意図していると理解されたい。添付の図面は、様々な実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本明細書で説明される様々な実施形態を示し、説明とともに、請求される主題の原理および動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0012】
以下は、添付の図面における図の説明である。図は、必ずしも縮尺通りではなく、図の特定の特徴および特定の見え方は、明確性または簡潔性のために、縮尺または概略図で誇張して示されていることがある。
【
図1B】先行技術のペトリ皿の概略的な断面図である。
【
図2A】本開示の実施形態に係る蓋の実施形態の概略的な斜視図であり、蓋の外部の斜視図である。
【
図2B】本開示の実施形態に係る蓋の実施形態の概略的な斜視図であり、
図2Aに示された領域2Bの拡大図である。
【
図2C】本開示の実施形態に係る蓋の実施形態の概略的な斜視図であり、蓋の内部の斜視図である。
【
図3A】本開示の実施形態に係る蓋の図であり、実施形態に係る蓋の外面の上面図である。
【
図3B】本開示の実施形態に係る蓋の図であり、
図3Aの線3Bに沿った蓋の断面図である。
【
図3C】本開示の実施形態に係る蓋の図であり、
図3Bの断面図において3Cとして示されている領域の拡大図である。
【
図3D】本開示の実施形態に係る蓋の図であり、
図3Bの断面図において3Dとして示されている領域の拡大図である。
【
図4A】本開示の別の実施形態に係る蓋の図であり、実施形態に係る蓋の外面の上面図である。
【
図4B】本開示の別の実施形態に係る蓋の図であり、
図4Aの線4B-Cに沿った蓋の断面図である。
【
図4C】本開示の別の実施形態に係る蓋の図であり、
図4Bの断面図において4Cとして示されている領域の拡大図である。
【
図4D】本開示の別の実施形態に係る蓋の図であり、
図4Bの断面図において4Dとして示されている領域の拡大図である。
【
図4E】本開示の別の実施形態に係る蓋の図であり、
図4Bの断面図において4Eとして示されている領域の拡大図である。
【
図5A】本開示の実施形態に係るペトリ皿または基体の図であり、実施形態に係る皿または基体の外面の上面図である。
【
図5B】本開示の実施形態に係るペトリ皿または基体の図であり、
図5Aに示された皿または基体の外部底面の領域の拡大図である。
【
図5C】本開示の実施形態に係るペトリ皿または基体の図であり、
図5Bにおいて線5Cで示されている皿の断面図である。
【
図5D】本開示の実施形態に係るペトリ皿または基体の図であり、
図5Bにおいて線5Dで示されている皿の断面図である。
【
図5E】本開示の実施形態に係るペトリ皿または基体の図であり、
図5Bの断面5Cに沿った追加の断面図である。
【
図5F】本開示の実施形態に係るペトリ皿または基体の図であり、
図5Bの5Dとして示されている線に沿った追加の断面図である。
【
図6A】本開示の実施形態に係るペトリ皿または基体の図であり、実施形態に係る皿または基体の外面の底面図である。
【
図6B】本開示の実施形態に係るペトリ皿または基体の図であり、
図6Aの線6Bに沿った皿または基体の断面図である。
【
図6C】本開示の実施形態に係るペトリ皿または基体の図であり、
図6Bの断面図において6Cとして示されている領域の拡大図である。
【
図6D】本開示の実施形態に係るペトリ皿または基体の図であり、
図6Bの断面図において6Dとして示されている領域の拡大図である。
【
図7A】蓋を含めて積み重ねられたペトリ皿を示す図であり、蓋を含めて積み重ねられた2つのペトリ皿の切断側面図である。
【
図7B】蓋を含めて積み重ねられたペトリ皿を示す図であり、
図7Aにおいて7Bとして示されている領域の拡大図である。
【
図8】蓋を有する33個の先行技術のペトリ皿のスタックの図である。
【
図9】蓋を有する33個の実施形態に係るペトリ皿のスタックの図である。
【0013】
前述の概要および以下の詳細な説明は、図面と併せて読むと一層理解しやすくなるであろう。特許請求の範囲は、図面に示された構成および手段に限定されるものではないことを理解されたい。さらに、図面に示された外観は、装置の上述の機能を達成するために利用することができる、多数の装飾的な外観のうちの1つである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するために、数多くの特定の詳細が説明される。ただし、本発明が、これらの特定の詳細の一部または全部なしに実施することができることは、当業者に明白となるであろう。他の例では、本発明を不必要に曖昧にしないように、周知の特徴またはプロセスを詳細には記載しないことがある。加えて、共通または類似の構成要素を識別するために、類似または同一の参照符号が使用されることがある。
【0015】
先行技術のペトリ皿(蓋および基体)の部分断面図を
図1Aおよび
図1Bに示す。先行技術の蓋10は、実質的に平面の蓋上壁12と、下向きに延在する周囲の蓋側壁16とを備える。先行技術の基体20は、実質的に平面の基体底壁22と、上向きに延在する周囲の基体側壁26とを備える。
【0016】
図1Aに示された先行技術の蓋の図において、蓋上壁12の上縁部から延在しているのは、積み重ねられた先行技術の基体20の底面と係合するように適合された周縁蓋隆起部14である。周縁蓋隆起部14は、蓋上壁12の上面で蓋10の角部17に対して内側にある環状隆起部14である。断面では、
図1Aに示されたように、周縁蓋隆起部14は、バンプ、つまり、蓋上壁の厚さ11と比較した、周縁蓋隆起部13における蓋10の断面の局所的な厚さの増加である。
【0017】
図1Bに示された先行技術の基体20において、基体底壁22の下縁部28から延在しているのは、周縁基体隆起部24である。周縁基体隆起部24は、基体20の角部27に対して内側にある環状隆起部である。周縁基体隆起部24は、支持面、例えば、テーブルと接触するように、または積み重ねられた場合には、下にある先行技術の蓋10の上壁12の周縁蓋隆起部14と係合するように適合されている。断面では、
図1Bに示されたように、周縁基体隆起部24も、バンプ、つまり、基体底壁の厚さ21と比較した、周縁基体隆起部23における基体20の断面の局所的な厚さの増加である。
【0018】
周縁隆起部14,24により、
図1Aおよび
図1Bに係る先行技術のペトリ皿の積重ねが容易になるが、隆起部設計は、厚くされる特徴を提供するために、追加の原材料を必要とする。これは、先行技術の蓋10と先行技術の基体20との両方の壁が周縁隆起部14,24の領域において局所的に厚くなってしまう、壁の厚さが変わる先行技術のペトリ皿をもたらす。このような先行技術のペトリ皿は、ペトリ皿(蓋と基体を合わせて)あたり約14.3gのポリスチレンを含有する。
【0019】
基体および蓋の両方の厚さにおけるこれらの局所的な差異のため、射出成形によりこれらの皿を製造する際には困難が生じる。射出成形のプロセスは、簡単に言えば、液体原材料を型に導入し、原材料が型の全ての領域に存在するまで原材料を流動させ、原材料を冷却し、硬化させ、成形物品を型から取り出すことを含むプロセスである。原材料は、均一な速度で物品の均一な厚さを規定する型に流入する。しかしながら、型が、より厚い領域、例えば、
図1Aにおける13(11と比較)または
図1Bにおける23(21と比較)で示された領域を有する場合、液体原材料は、より速くより厚い領域に流れる。局所的に厚い領域が存在する場合、樹脂の流れは不連続になることがある。例えば、壁が原材料で満たされる前に、原材料が、厚い領域を満たし、成形物品内に1つ以上の気泡が形成されてしまうことがある。成形物品に気泡が形成されたペトリ皿は不良品である。この気泡形成は、容認できない成形物品をもたらすだけでなく、気泡の形成は、型自体を傷付けてしまう。時間が経つにつれて、エアポケットを有する物品を成形する複数回のサイクルを経た型により、成形物品の表面上に艶が減ったペトリ皿が作製されてしまう。
【0020】
同時に、ペトリ皿の蓋および基体上の積重ねリングは、皿の積重ね可能性を改善する有用な特徴である。ペトリ皿は、輸送および使用時に積み重ねられる。20個以上のペトリ皿を高く積み重ねることは珍しくない。そして、特に自動化された装置が使用される場合、ペトリ皿のスタックを崩すことなく、ペトリ皿のスタックから1つのペトリ皿をスライドさせることができることが重要である。したがって、積み重ねられたペトリ皿のスタックを維持するのに有用な周縁隆起部または他の構造部は、皿のスタック内の1つの皿を、スタックを崩すことなくスタックから離れるように移動させられないほど大きな移動制限を導入してはならない。蓋は、手動でまたは自動化装置を使用して取り外し可能でなければならない。また、ペトリ皿の基体の内面は平坦でなければならない。加えて、ペトリ皿は、安定した真っ直ぐな高いスタックに積重ね可能にする特徴を有することが重要である。すなわち、高いスタックに積み重ねられた時、ペトリ皿は、実施形態において、一方または他方に「傾斜」しない。
【0021】
実施形態において、本明細書に開示されたペトリ皿は、周縁の蓋側積重ねリングと基体側積重ねリングとを有する。ただし、これらのリングは、蓋側積重ねリングおよび基体側積重ねリングの領域において、材料の局所的な厚さの増大をもたらさない。代わりに、実施形態において、本明細書に開示されたペトリ皿は、それぞれ一様な断面厚さを有する基体壁と、側壁と、基体側積重ねリングとを備えた基体を有する。また、ここに開示されたペトリ皿は、それぞれ一様な断面厚さを有する蓋壁と、蓋側壁と、蓋側積重ねリングとを備えた蓋も有する。実施形態において、これらの構造により、物品の積重ねおよび使用に重要な特徴を保持し、製造欠陥がより少なく、先行技術の物品より使用する材料が少ない成形物品がもたらされる。周縁隆起部の領域における壁の厚さを薄くすることにより、各ペトリ皿100を製造するのに必要な材料を15~20%少なくすることができる。
【0022】
図2A、
図2B、および
図2Cに、本開示の一実施形態に係る蓋の実施形態の概略的な斜視図を示す。
図2Aは、蓋の外部の斜視図である。
図2Bは、
図2Aに示された領域2Bの拡大図である。
図2Cは、蓋の内部の斜視図である。
【0023】
図2Aは、本開示の実施形態に係る蓋の外部の斜視図である。
図2Aに、外蓋上面213を有する円形平坦蓋領域212、下向きに延在する蓋側壁216、および蓋上面212と蓋側壁216との交点にある角部230を有する蓋200を示す。角部230は、蓋側積重ねリング225を備える。実施形態において、蓋側積重ねリング225は、上部から見て、蓋200の角部230における材料の隆起リングである。実施形態において、蓋はポリマー材料から製造される。
【0024】
任意選択で、実施形態において、蓋は、通気路222を有してもよい。
図2Bは、通気路222の実施形態を示す、
図2Aに示された領域2Bの拡大図である。実施形態において、1つ以上の通気路222が、蓋200の角部230に存在する。実施形態において、通気路222は、蓋の角部にある凹みである。通気路222は、蓋200と、次に積み重ねられたペトリ皿の基体300との間で空気が流れるようにするための経路を形成するように機能する。通気路222により、空気が蓋200と基体300との間を通過するのが可能となる。外気をペトリ皿100内の空気と交換することが重要である。ペトリ皿内で増殖する細菌または他の細胞は、増殖するために酸素を必要とする。実施形態において、蓋の通気路222は、蓋側積重ねリング225の全周にわたって互いに等距離に配置されている。
【0025】
ペトリ皿が、保存、輸送、または使用のために積み重ねられた場合、蓋と、次に積み重ねられたペトリ皿の基体との間に真空が形成されることが多い。この真空は、部品間の冷却空気、部品の材料の静的特性、積み重ねられた部品の重量による部品への圧力、または部品の幾何学的形状により発生させられることがある。真空により、積み重ねられた部品の操作が困難になる。部品同士が「密着」してしまう。これにより、皿のスタックから1つの皿を取り出すのが困難となり、蓋-基体対で部品を操作するのが困難になり、皿のロボット操作が困難になる。密着した部品により、破損、プレートからの蓋の分離、汚染がもたらされ、ロボット装置のメンテナンスが必要となることがある。例えば、蓋が、隣接する積み重ねられたペトリ皿の基体に密着した場合、ユーザまたはロボットがペトリ皿のスタックから1つのペトリ皿を取り出そうとした時、ユーザは、基体の上にある蓋の代わりに、隣接する基体に密着した蓋を持ち上げてしまうことがある。これにより、組み合わされている皿から蓋を取り外すことになる。皿を開け、蓋を皿から取り外すと、皿の内側に汚染の機会が生じる。したがって、蓋200の上部212と、隣接する積み重ねられた皿の底面との間に気流を形成するように機能する特徴が必要である(例えば、
図5Dまたは
図6Bにおける312参照)。通気路222は、このような特徴である。追加の真空解除または通気路特徴については、後の図で論じるものとする。
【0026】
図2Cは、蓋の内部の斜視図である。
図2Cに、蓋の内部上面312と、内面217を有する側壁216とを示す。また、
図2Cには、任意のリブ295が示されている。実施形態において、リブ295は、蓋200の内部上面312と蓋200の側壁216との間に延在する三角形の特徴である。リブ295を有する蓋200が、基体300上に配置されると、蓋200は、基体300に対して位置合わせされる。リブ295の形状が三角形であるため、蓋200と基体300とが同軸であることを確実にする方法で、蓋200が、基体300に対して定置される。すなわち、蓋200の中心が、基体300の中心と整合する(例えば、
図7Aおよび
図7Bを参照のこと)。実施形態において、蓋200は、3つ以上のリブを有してもよい。例えば、蓋は、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、またはそれ以上の個数のリブ295を有してもよい。実施形態において、リブ295は、蓋200の角部230の全周にわたって等間隔で配置されている。すなわち、実施形態において、リブ295は、蓋側積重ねリング225の全周にわたって互いに等距離に配置されている。
【0027】
リブ295は、
図4Eにより詳細に示され、説明される。実施形態において、蓋200は、蓋側通気路222と同数のリブ295を有する。実施形態において、蓋側通気路222およびリブ295は、蓋200の角部230の全周にわたって同じ位置に配置されている。
【0028】
図3A、
図3B、
図3C、および
図3Dに、本開示の実施形態に係る蓋の図を示す。
図3Aは、実施形態に係る蓋の外面の上面図である。
図3Aに、蓋200を示す。この蓋は、複数の通気路222を含めて示される。実施形態において、この蓋は、蓋の周方向に均等に分配されている3つの通気路、4つの通気路、5つの通気路、または6つの通気路を有する。
図3Aに示されたように、この蓋は、蓋200の周方向に均等に分配されている6つの通気路を有する。
図3Aに示された蓋の実施形態は、通気路の存在を示すが、本開示の範囲は、通気路を有さない蓋を包含する(図示せず)。
【0029】
図3Bは、
図3Aの線3Bに沿った蓋の断面図である。一方の側において、
図3Bに、
図3Cにさらに示されているように、通気路222を断面で示す。他方の側において、
図3Bに、
図3Dにさらに示されているように、通気路222を含まない領域における蓋200の角部230を示す。
【0030】
図3Cは、
図3Bの断面図において3Cとして示されている領域の拡大図である。
図3Cに、通気路222が蓋の角部350における凹みであることを示す。上記されたように、角部350は、蓋側積重ねリング225を画定し、通気路222は、蓋200が、蓋200の上部に積み重ねられた基体または皿に密着するのを防止するために存在する。
図3Cに、断面において、上部円形平坦領域212、角部225、通気路222、および蓋側壁216における蓋の厚さ250が実質的に一定であることを示す。
【0031】
図3Dは、
図3Bの断面図において3Dとして示された領域である、通気路222を含まない領域の拡大図である。蓋側積重ねリング225は、蓋200の周縁の環状突起である。別の言い方をすれば、蓋の角部は、ペトリ皿の蓋200の角部に蓋側積重ねリング225を形成する突起またはバンプを有する。
図3Dに、断面において、上部円形平坦領域212、角部225、および蓋側壁216における蓋の厚さ250が実質的に一様であることを示す。実施形態において、上部円形平坦領域212、角部225、および蓋側壁216における蓋の厚さは、互いの30%以内である。すなわち、実施形態において、側壁216、円形皿領域212、および蓋側積重ねリング225を有する角部226の厚さは、互いに30%以下で異なる。例えば、側壁216の厚さが4mmである場合、円形皿領域212および蓋側積重ねリング225の厚さは、4mmから30%を超えて変動しないものとする。すなわち、円形蓋領域212は、2.08~5.2mmとする。実施形態において、厚さ250は、3mm~6mmである。
【0032】
図3B、
図3C、および
図3Dに、断面において、上部円形平坦領域212、角部225、通気路222、および蓋側壁216における蓋の厚さ250が実質的に一定であることを示す。厚さ250が実質的に一定であるため、蓋の上面において角部225に設けられた蓋側積重ねリング230である構造により、蓋の底面において角部225に設けられた溝240が形成される。すなわち、蓋の内面は、角部に環状溝240を有する。蓋側積重ねリング230は、角部225において蓋200の上面212から突出しており、蓋200の底面312に溝240を形成している。円形蓋領域212、角部230、および蓋側壁216の厚さが実質的に一定であるため、円形蓋225の角部230への環状突起または蓋側積重ねリング225の形成により、側壁216が円形平坦蓋領域212と合致する円形蓋の内縁にも環状溝240が形成される。
【0033】
図4A~
図4Eに、本開示の別の実施形態に係る蓋の図を示す。
図4Aは、実施形態に係る蓋の外面の上面図である。
図48は、
図4Aの線48-Cに沿った蓋の断面図である。
図4Cは、
図48の断面図において4Cとして示された領域の拡大図である。
図4Dは、
図48の断面図において4Dとして示された領域の拡大図である。
図4Eは、
図48の断面図において4Eとして示された領域の拡大図である。
【0034】
図4Aは、実施形態に係る蓋200の外面の上面図である。
図4Aに示されたように、任意のゲート290が、蓋200の角部230の位置に存在する。実施形態において、ゲート290は、成形される蓋を製造するために、樹脂が型に射出される位置である。実施形態において、蓋200の角部230に位置する蓋側積重ねリング225は、ゲート290により中断されている。実施形態において、この蓋は、1つのゲート290を有する。追加の実施形態において、この蓋は、2つ以上のゲート290を有する。実施形態において、この蓋は、射出成形により形成され、この場合、樹脂は、蓋200の角部の位置において射出される。射出成形の位置は、ゲート290である。円形蓋領域212、角部230、および蓋側壁216の厚さが実質的に一定であるため、溶融樹脂を1つのゲート290から型内に流入させた場合、射出成形のプロセスにより、気泡は形成されない。一方、
図1を参照して上記で論じられたように、角部領域が、円形平坦蓋領域または側壁より厚い場合には、気泡が形成される可能性がより高い。側壁216は、通常、蓋200を型から取り外すのを容易にするために、上壁212に対して垂直な線から傾斜している(すなわち、通常、正確に90度ではなく、90度~100度)。蓋側積重ねリング225は、蓋ゲート290により中断される箇所を除いて、蓋200の周方向に延在してよい。蓋側積重ねリング225は、側壁216と同心でよい。蓋側積重ねリング225は、蓋200を反転させて表面上に置く時、蓋200を静止させる接触面を画定してよい。
【0035】
図5A~
図5Fに、本開示の実施形態に係るペトリ皿または基体300の図を示す。
図5Aは、実施形態に係る皿または基体300の外面313の上面図である。
図5Aに示されたように、基体は、基体300が外部平坦皿領域312の外面313を上向きにして置かれた場合、外面313を有する円形平坦基体領域312を有する。また、皿300は、皿300の円形平坦基体領域312と側壁316との間の移行部である角部322も有する(
図5Bに示す)。また、角部322には、基体側積重ねリング325も存在する。基体側積重ねリング325は、
図5Cおよび
図5Dにより詳細に示されている。
【0036】
図5Bは、
図5Aにおいて5Bとして示されている皿または基体300の外部底面313の領域の拡大図である。
図5Bに、基体300の円形基体領域312と側壁316との間の角部326に突起が存在することを示す。この突起が、基体側積重ねリング325である。
【0037】
図5Bに、基体側積重ねリング325を有する角部326が、1つ以上の任意の基体側通気路322を有してもよいことを示す。基体側通気路322は、基体側積重ねリング325に設けられた窪みまたは凹みである。基体側通気路322が存在する場合、基体側通気路322により、皿300と、隣接する積み重ねられたペトリ皿の蓋200との間に空間が形成される。この空間は、
図7Bにより詳細に示されている。基体側通気路322により形成された空間により、隣接する積み重ねられたペトリ皿(蓋+基体100)間を空気が通過することが可能となり、隣接する積み重ねられたペトリ皿(蓋+基体100)間への真空の形成が防止される。隣接する積み重ねられたペトリ皿100間に形成される真空により、隣接する積み重ねられたペトリ皿から1つのペトリ皿100を取り出す際に抵抗が生じる。この真空により、ペトリ皿100のスタック(例えば、
図8および
図9に示されたスタック)から一度に1つのペトリ皿を操作することが困難となる。隣接する積み重ねられたペトリ皿100間に形成される真空は、ペトリ皿100がロボット操作される際に特に支障をきたす。ロボットにより取り扱うには、ペトリ皿100が積み重ねられている場合、ペトリ皿100を互いにスライドさせて取り出す必要がある。隣接する積み重ねられたペトリ皿100間に真空が存在すると、それらは、互いに容易にスライドさせて取り出せない。
【0038】
図5Cは、
図5Bにおいて線5Cで示されている皿の断面図である。
図5Dは、
図5Bにおいて線5Dで示されている皿の断面図である。
図5Dに、基体が、円形皿領域312、上向きに延在する側壁316、および基体300の円形基体領域と側壁316との交点にある角部326を有することを示す。角部326には、基体側積重ねリング325である突起がある。
図5Dに示されたように、この突起は、下向きに延在している。
図5Aに示されたように、基体を下から示した場合、突起は、上向きに延在する。側壁316、円形皿領域312、および角部326は全て、厚さ350を有する。実施形態において、側壁316、円形皿領域312、および基体側積重ねリング325を有する角部326の厚さは実質的に等しい。実施形態において、側壁316、円形皿領域312、および基体側積重ねリング325を有する角部326の厚さは、互いに30%以下で異なる。例えば、側壁316の厚さが4mmである場合、円形皿領域312および基体側積重ねリング325の厚さは、4mmから30%を超えて変動しないものとする。すなわち、円形皿領域312は、2.08~5.2mmとする。実施形態において、厚さ350は、3mm~6mmである。これらの厚さは、例として提供されるが、提供される皿および蓋の厚さは、単なる例示である。皿および蓋の実際の厚さは、製造方法により定義され、変化してもよい。
【0039】
側壁316、円形皿領域312、および基体側積重ねリング325を有する角部326の厚さ350は実質的に等しいため、基体300の底面313から延在する基体側積重ねリング325である突起は、基体の内面311にチャネル330を形成している。
【0040】
図5Cに、
図5Bにおいて線5Cで示されている皿300の断面を示す。
図5Bにおける線5Cは、基体側通気路322と交差している。基体側通気路322は、断面において、基体300の角部326の断面プロファイルにおける窪みまたは凹みである。ただし、基体300の厚さ350は、側壁316から、基体側通気路322の領域を通って、円形平坦基体領域312にわたって一定のままであることに留意すべきである。
図5Dに、基体側通気路322が存在しない角部326を示す。基体300の厚さ350は、側壁316から、角部326の領域を通って、円形平坦底面領域312にわたって一定のままである。また、
図5Dに、基体側積重ねリング325も示す。基体側積重ねリング325は、円形基体300の角部の全周にわたる環状突起である。皿300の厚さ350が、側壁316から、角部(基体側積重ねリング325でもある)を通って、円形平坦基体領域312にわたって一様であるため、基体300の角部326の全周にわたって環状突起が設けられ、基体300の内側に、基体300の角部326の全周にわたるチャネル330が存在する。実施形態において、基体300は、少なくとも3つの基体側通気路322を有する。実施形態において、基体は、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上の個数の基体側通気路322を有する。実施形態において、基体側通気路322は、基体側積重ねリング325の全周にわたって互いに等距離に配置されている。
【0041】
図5Eは、
図5Bの断面5Cに沿った基体300の実施形態の追加の断面図である。
図5Fは、
図5Bの5Dとして示されている線に沿った基体300の実施形態の追加の断面図である。
図5Eに、通気路322の断面を示す。
図5Fに、基体側積重ねリング325を示す角部326の断面を示す。また、
図5Fに示されたように、基体300の裏側には、基体側通気路322がある。実施形態において、基体300は、1つ以上の基体側通気路322を有する。追加の実施形態において、基体300は、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上の個数の通気路322を有する。
【0042】
側壁316と円形平坦基体領域312との間の形状(例えば、基体チャネル330)により、寒天がペトリ皿基体300に導入される際に、気泡形成の減少が容易になることがある。また、基体チャネル330は、寒天を基体の底部に効果的に固定するように機能するため、基体300への寒天のより良好な固着が容易になることがある。円形平坦基体領域312は、光学的に平坦であると共に光学的に透明であることができ、これにより、円形平坦基体領域312を通しての光学的なイメージングを向上させることができる。加えて、円形平坦基体領域212は、寒天を基体に対して平坦に置くことができ、また、平坦基体領域212の材料による妨害なしに、ユーザが皿の底部を通してペトリ皿の内容物を目視できるほどに平坦である。
【0043】
図6A~
図6Dに、本開示の実施形態に係る基体300の図を示す。
図6Aは、実施形態に係る基体300の外面の底面図である。
図6Aに、基体300の円形平坦領域312を示し、基体300は、基体側積重ねリング325を有する角部326を有する。
図6に示された実施形態では、ゲート390が、基体300の角部326に沿って少なくとも1か所に存在する。ゲート390は、射出成形プロセスにおいて液体プラスチック材料を型内に射出する位置である。すなわち、ゲート390は、射出成形の産物(artifact)である。
図6Bは、
図6Aの線6Bに沿った基体300の断面図である。
図6Cは、
図6Bの断面図において6Cとして示されている領域の拡大図である。
図6Cに示されたように、ゲートの位置において、角部326は直角である。すなわち、ゲート390の位置には、基体側積重ねリングが存在しない。または、実施形態において、基体300の角部326に位置する基体側積重ねリング325は、ゲート390により中断されている。ただし、ゲート390の有無に関わらず、部分の厚さ350は、側壁316から、角部326を通って、円形平坦領域312にわたって一様であることに留意すべきである。
図6Dは、
図6Bの断面図において5Dとして示されている領域の拡大図である。基体側積重ねリング325を通って交差する
図6Dの断面図には、角部326の内面におけるチャネル330が示される。部分の厚さ350は、側壁316から、基体側積重ねリング325を含む角部326を通って、円形平坦領域312にわたって一様である。基体側積重ねリング325は、側壁316と同心でよい。基体側積重ねリング325は、基体300を表面上に置く時、基体300を静止させる接触面を画定してよい。
【0044】
図7Aおよび
図7Bに、皿300および蓋200を備える積み重ねられたペトリ皿100を示す。
図7Aは、2つの積み重ねられたペトリ皿100の断側面図である。
図7Bは、
図7Aにおいて7Bとして示されている領域の拡大図である。
図7Aに、積み重ねられた時に、基体側積重ねリング325が蓋側積重ねリング225の内側に適合することを示す。蓋側通気路222により、積み重ねられた下側のペトリ皿100の蓋200と上側のペトリ皿100の基体300との間に空気通路が形成される。また、基体側通気路322によっても、上側のペトリ皿100の基体300と下側のペトリ皿100の蓋200との間に空間が提供される。
図7Bに示されたように、蓋200は、基体300の上に位置し、リブ295により基体300上に保持される。蓋200は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の個数の蓋リブ295、例えば、等間隔に配置された6つの蓋リブ295(すなわち、約60度で離間している)を備えてよい。
【0045】
図8は、蓋100を有する33個の先行技術のペトリ皿のスタックの図である。
図8に示されたように、33個の先行技術のペトリ皿100のスタックは、約10%の「傾斜」(基体からスタックの上部角部までの距離(49.02cm)/ペトリ皿のスタックの高さ(455.81cm))(49.02cm/455.81cm=0.1075)を形成し得る。
【0046】
図9は、本開示の実施形態に係る、蓋を有する33個のペトリ皿のスタックの図である。
図8に示されたスタックとは対照的に、
図2~
図7に示された蓋側積重ねリング225および基体側積重ねリング325を有するペトリ皿100は、約5%という(距離25.70cm/高さ455.81cm=0.0563)減じられた「傾斜」を示す。
【0047】
図8および
図9に示された測定値は、単なる例示である。実際の測定値は、ペトリ皿のサイズ、ペトリ皿の基体の側壁の高さにより決まる。
図8および
図9は、蓋側積重ねリングおよび基体側積重ねリングの存在と組み合わせて、三角形のリブを使用して蓋を基体に対してセンタリングする効果を示すために提供される。蓋側積重ねリングおよび基体側積重ねリングにより、上側ペトリ皿の基体が、隣接する下側ペトリ皿の蓋側積重ねリング内に位置することが可能となる。これらの特徴は、単独でまたは組み合わせて、他のペトリ皿と比較して、より真っ直ぐなスタックに積み重なるペトリ皿を提供する。
【0048】
本開示の態様によれば、積重ね可能な肉薄の蓋200および基体300は、射出成形および熱成形を含む様々なプラスチック成形技術を使用して製造することができる。射出成形では、材料を型内に射出することにより部品が形成される。射出成形は、典型的には、ラムまたはスクリュータイプのプランジャーを使用して、溶融プラスチック材料を型キャビティ内に強制的に押し込む。次いで、材料は、型の輪郭に適合した形状に固化する。射出成形は、熱可塑性ポリマーおよび熱硬化性ポリマーの両方を加工するために使用することができる。熱成形は、プラスチックシートが柔軟な成形温度に加熱され、型内で特定の形状に成形され、トリミングされて使用可能な製品を製造する製造プロセスである。射出成形と比較して、熱成形には、全体的に製造コストをより低くすることができる可能性がある。熱成形部品は、射出成形部品より薄くすることができる。なぜならば、熱成形部品は、液体ポリマー材料を型内に射出する必要がないためである。より薄い部品であれば、必要な原材料、必要なポリマー材料がより少なくて済む。
【0049】
製造の方法に応じて、異なる利点を達成することができる。射出成形中、例えば、型の断面が一定であるため、型内への材料充填速度は、一定かつ均一であることができる。これにより、完成した蓋200および基体300への気泡の取込みならびにフローラインの形成を最小限に抑えるかまたは排除することができる。代替的に、熱成形により製造された蓋200および基体300は、残留内部応力を示さず、射出弁ゲートによるマークも、フローラインもなくすことができる。
【0050】
蓋200および基体300は、熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーから形成されてもよい。これらは、再粉砕樹脂または再生樹脂、例えば、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリプロピレン、環状オレフィンコポリマー(COC)、透明コポリマー、例えば、無水スチレンマレイン酸、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)(SBS)、およびそれらの組合せを含む。熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーは、光学的に透明であってよい。
【0051】
実施形態において、ペトリ蓋200および基体300は、射出成形により製造されてもよく、射出成形は、液体プラスチック材料を型内に射出し、液体プラスチック材料を冷却させ、その後、成形された部品を型から取り出すことを含む。実施形態において、ペトリ蓋または基体は、真空成形または熱成形により製造されてもよい。真空成形または熱成形は、プラスチック材料のシートを提供し、シートを柔軟な成形温度に加熱し、シートを型内で、実質的に一定の断面厚さを有するペトリ皿の部品に熱成形することを含む。
【0052】
本開示の態様によれば、ペトリ皿蓋200もしくはペトリ皿基体300、またはその両方は、記載された特徴を有してよい。ペトリ皿蓋200は、一定の肉厚を有してよい。同様に、ペトリ皿基体300は、一定の肉厚を有してよい。肉薄の蓋200および基体300は、積重ね可能であり、製造に必要な樹脂が先行技術のペトリ皿より15~20%少ない。さらに、本開示は、肉薄の部品に関連する数多くの制約を扱う。すなわち、肉薄の設計に必要な製造上の懸念は、樹脂内の残留応力の増加、欠陥、例えば、捕捉された空気を生じさせる可変溶融フローフロント、および部品に亀裂を生じさせやすいウェルドラインを含む。
【0053】
ペトリ皿100の蓋200および基体300は、同じかまたは異なる製造方法により、同じかまたは異なる材料を使用して形成されてよい。例えば、蓋200および基体300はそれぞれ、熱成形により形成されてよい。例えば、蓋200および基体300はそれぞれ、PSを含んでよい。任意選択で、材料選択によって各部品の相対剛性を制御することにより、蓋200と基体300との間にクッション効果を提供することができる。この効果により、より薄い設計であっても破損を最小限に抑えることができる。例えば、蓋200は、比較的柔軟な材料、例えば、PETまたはPS-SBSを含んでよい。一方、基体300は、柔軟性の低い材料、例えば、PSを含んでよい。任意選択で、蓋200および基体300の一方または両方は、光学的に透明であってよい。
【0054】
特に明示的な記載がない限り、本明細書で記載されたいずれの方法も、そのステップが特定の順序で行われる必要があると解釈されることは決して意図されない。したがって、方法の請求項が、そのステップが従うべき順序を実際に列挙していない場合またはステップが特定の順序に限定されるべきであると特許請求の範囲もしくは明細書に特に記載されていない場合、何らかの特定の順序が推測されることは決して意図されない。任意の1つの請求項における任意の列挙された単一または複数の特徴または態様は、任意の他の1つ以上の請求項における任意の他の列挙された特徴または態様と組み合わせることができるかまたは置き換えることができる。
【0055】
本明細書における記載は、特定の形式で機能するように「構成された」または「適合させられた」構成要素を意味することにも留意されたい。これに関して、このような構成要素は、特定の特性または機能を特定の形式で実現するように「構成されており」または「適合させられており」、このような記載は、意図された使用の記載とは対照的に構造的な記載である。より具体的には、構成要素が「構成された」または「適合させられた」形式についての本明細書での言及は、構成要素の既存の物理的条件を意味し、これにより、構成要素の構造的特徴の明確な記載として解釈されるべきである。
【0056】
特定の実施形態の様々な特徴、要素またはステップが、「含む」という移行句を使用して開示されていることがあるが、「からなる」または「から本質的になる」という移行句を使用して記載されることがあるものを含む代替的な実施形態が示唆されていることが理解されるべきである。このため、例えば、基体および蓋を備えたペトリ皿に対する示唆された代替的な実施形態は、ペトリ皿が基体および蓋からなる実施形態と、ペトリ皿が本質的に基体および蓋からなる実施形態とを含む。
【0057】
本発明を、限定された数の実施形態に関して説明してきたが、本開示の利益を享受する当業者であれば、本明細書に開示された本発明の範囲から逸脱することなしに、他の実施形態を考え出すことができると理解されるべきである。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【0058】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0059】
実施形態1
皿であって、
円形皿領域(312)、角部(326)、および上向きに延在する側壁(316)を有するポリマー製の基体(300)と、
前記角部(326)において前記基体(300)の内面(311)に設けられたチャネル(330)と、
前記角部(326)において前記基体(300)の外面(313)に設けられた基体側積重ねリング(325)と
を備え、
前記円形皿領域(312)、前記上向きに延在する側壁(316)、および前記角部(326)がそれぞれ、所定の厚さ(350)を有し、
前記円形皿領域(312)、前記上向きに延在する側壁(316)、および前記角部(326)の前記厚さ(350)が、互いの30%以内である、
皿。
【0060】
実施形態2
前記基体側積重ねリング(325)に少なくとも3つの基体側通気路(322)をさらに備える、実施形態1記載の皿(300)。
【0061】
実施形態3
前記基体側積重ねリング(325)に少なくとも4つの基体側通気路(322)を備える、実施形態2記載の皿(300)。
【0062】
実施形態4
前記基体側通気路(322)が、互いに等距離に配置されている、実施形態2記載の皿(300)。
【0063】
実施形態5
前記基体側積重ねリング(325)が、ゲート(390)により中断されている、実施形態1から4までのいずれか1つ記載の皿(300)。
【0064】
実施形態6
ポリマー製の蓋(200)をさらに備える、実施形態1から5までのいずれか1つ記載の皿(300)。
【0065】
実施形態7
前記蓋(200)が、
円形蓋領域(212)、角部(230)、および下向きに延在する側壁(216)と、
前記角部(230)において前記蓋(200)の内面(312)に設けられた溝(240)と
前記角部(230)において前記蓋(200)の外面(313)に設けられた蓋側積重ねリング(225)と
を備え、
前記円形蓋領域(212)、前記下向きに延在する側壁(216)、および前記角部(230)がそれぞれ、所定の厚さ(250)を有し、
前記円形蓋領域(212)、前記下向きに延在する側壁(216)、および前記角部(230)の前記厚さ(250)が、互いの30%以内である、実施形態6記載の皿(300)。
【0066】
実施形態8
前記蓋(200)が、前記角部(230)において前記蓋(200)の前記内面(312)から下向きに延在する少なくとも3つのリブ(295)をさらに備える、実施形態7記載の皿(300)。
【0067】
実施形態9
前記リブ(295)が、三角形である、実施形態8記載の皿(300)。
【0068】
実施形態10
前記リブ(295)が、互いに等距離にある、実施形態8または9記載の皿(300)。
【0069】
実施形態11
前記蓋(200)が、少なくとも3つの通気路(222)をさらに備える、実施形態6から10までのいずれか1つ記載の皿(300)。
【0070】
実施形態12
前記通気路(222)が、互いに等距離にある、実施形態11記載の皿(300)。
【0071】
実施形態13
前記リブ(295)および前記通気路(222)が、蓋(200)において同じ位置に配置されている、実施形態10または11記載の皿(300)。
【0072】
実施形態14
前記蓋側積重ねリング(225)が、ゲート(223)により中断されている、実施形態7から13までのいずれか1つ記載の皿(300)。
【0073】
実施形態15
1つの皿を別の皿の上側に積み重ねると、上側の前記皿の前記基体側積重ねリング(325)が、前記別の皿の前記蓋側積重ねリング(225)内に収まる、実施形態7から14までのいずれか1つ記載の皿(300)。