(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体
(51)【国際特許分類】
G09B 25/04 20060101AFI20230314BHJP
G09B 19/00 20060101ALI20230314BHJP
G09B 19/16 20060101ALI20230314BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
G09B25/04
G09B19/00 Z
G09B19/16
E01D22/00 A
(21)【出願番号】P 2021075444
(22)【出願日】2021-04-27
【審査請求日】2021-05-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発明者角口賀敏が発明した「橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体」について、発明者から特許を受ける権利を承継した出願人株式会社キナンが、令和2年11月15日に建設を開始し、令和3年3月25日に完成した。
(73)【特許権者】
【識別番号】399003237
【氏名又は名称】株式会社 キナン
(74)【代理人】
【識別番号】100117374
【氏名又は名称】中尾 真一
(72)【発明者】
【氏名】角口賀敏
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】特許第6815611(JP,B1)
【文献】特開平08-013421(JP,A)
【文献】特開平08-338006(JP,A)
【文献】ドローンビジネス調査報告書2019 【インフラ・設備点検編】,第1版,日本,株式会社インプレス,2018年12月01日,p.41-43
【文献】田名瀬 寛之, 築山 有二, 国枝 稔, 中村 光,ニュー・ブリッジを活用した橋梁維持管理技術者の臨床型人材育成プログラム,土木学会第67回年次学術講演会,2012年09月,VI-446,<http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00035/2012/67-06/67-06-0446.pdf>,[2022年4月21日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 25/04
G09B 19/00
G09B 19/16
E01D 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な高架部と
斜面部と前記高架部への導入路を備える橋梁検査用作業車の動作確認等の試験、動作シュミレーション及びオペレーターの訓練等に使用される橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体であって、
前記高架部は、前記橋梁検査用作業車のアームに取り付けられた作業台を前記高架の裏面に差し入れることができるだけの高さを備えると共に、前記橋梁検査用作業車を載置した状態で所望の角度に傾倒可能な可動床を備えてなることを特徴とする橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体。
【請求項2】
前記
斜面部は傾度が異なる複数の斜面部を備え、
前記複数の各斜面部は、それぞれ、少なくとも、試験等対象である橋梁検査用作業車の全長よりも長い斜面部であることを特徴とする請求項1に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体。
【請求項3】
前記複数の斜面部の内、一の斜面部の傾度は7度であり、その他の斜面部は、それ以下の傾度であることを特徴とする請求項2に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体。
【請求項4】
前記可動床は、前記橋梁検査用作業車を載置する可動板の側端部を上方に駆動させ、前記橋梁検査用作業車のローリング方向における所望の傾斜角度位置に固定して試験等を行うことができることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体。
【請求項5】
前記可動床は、前記可動床の底面部に取り付ける複数の駆動アームによって前記橋梁検査用作業車の前後方向及び左右方向に揺動するように形成されてなることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体。
【請求項6】
前記斜面部の幅方向側部若しくは下部又は前記高架部の幅方向側部若しくは下部には、検査・点検対象となる現場に模することのできる
模擬障害設備を設置してなることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体。
【請求項7】
前記斜面部の幅方向側部又は下部又は前記高架部の幅方向側部又は下部には、検査・点検対象となる現場に模することのできる
模擬障害設備を設置してなることを特徴とする請求項4に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体。
【請求項8】
前記斜面部の幅方向側部又は下部又は前記高架部の幅方向側部又は下部には、検査・点検対象となる現場に模することのできる
模擬障害設備を設置してなることを特徴とする請求項5に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体。
【請求項9】
前記模擬障害設備は、所定間隔に立設する複数の支柱と前記支柱間に設けられた架設体とを備え、前記支柱と前記架設体は、長さ方向に所定間隔に複数のフックを設けてなり、前記フック間に、ロープを取り外し自在に張設し、トラス構造や斜張橋のワイヤに模した模擬障害設備を形成することができることを特徴をする請求項6に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体。
【請求項10】
前記模擬障害設備は、所定間隔に立設する複数の支柱と前記支柱間に設けられた架設体とを備え、前記支柱と前記架設体は、長さ方向に所定間隔に複数のフックを設けてなり、前記フック間に、ロープを取り外し自在に張設し、トラス構造や斜張橋のワイヤに模した模擬障害設備を形成することができることを特徴をする請求項7又は9の何れか一に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁検査用作業車の動作確認等の試験、動作シュミレーション及びオペレーターの訓練等に使用される橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国では、1964年の東京オリンピックの頃に整備されたインフラ施設が急速に老朽化し、今後20年間で、建設後50年以上経過するインフラ施設の割合が加速度的に高くなる見込みである。特に、道路インフラ、とりわけ、橋梁は日本全国で70万橋のうち、建設から50年を経過するものが全体の過半数となる等、早急な整備対策が迫られている。
【0003】
そして、このような橋梁の状態を検査・点検を行うために、高所作業車、特に橋梁の裏面や側面、例えば、床板の裏面等や橋脚等の側面、配管・電線等の橋梁を構成する部材や付属設備等(以下、「裏面側等」という。)を検査・点検する必要から特殊な構造の橋梁検査用作業車が使用される。前記橋梁検査用作業車は架設される橋梁の裏面側等を検査・点検する必要性から、橋梁上に停車した状態から、橋梁の裏面に検査作業台を運び入れることのできるように、2段乃至4段又は5段の伸縮可能なアームの先端部に前記検査作業台を取り付けるような特殊な構造を採用している。
【0004】
この種の橋梁検査用作業車には、橋梁検査作業時におけるアームの旋回・展開等の動作を、当該橋梁検査用作業車が転倒しないように、また、破損しない範囲内に制限するよう種々のタイプの安全装置が取り付けられている。
【0005】
一方、前記橋梁検査用作業車のような特殊車両は、検査施工会社が自己所有するよりも、建設機材のレンタル会社等から必要に応じて必要な期間、借り出して使用するという形態が一般的である。
【0006】
前記建設機材のレンタル会社においては、一台の作業車が多数の使用者によって、かなり異なる作業環境の下、使用される場合が多い。また、所有する作業車においても一社のみならず、複数社の同種車両を所有している。また、特殊車両にあっては、一台一台が特殊換装により製造される場合が多い。このような事情から、各個体によって、また、経年や使用状況によって、一台一台のコンディションが相違する。そのため、新たに車両を貸し出すときには、事前に動作確認や所定の条件下で安全装置が作動するか等の確認等の試験を行う必要が生じる。また、検査対象箇所は事前に判明しているので、当該検査対象箇所の状態を模して予め検査動作のシュミレーションを行うことは安全性の上でも、作業効率の上でも有用である。さらに、前記橋梁検査用作業車のような特殊車両は、当該車両のみならず、そのオペレーターも同時に手配する場合があるため、オペレーターの訓練を積める施設があると有用であり、また、法令等の要求にも沿うことができる。
【0007】
従来、このような橋梁に発生する疲労き裂等の損傷を点検する点検員を訓練するための橋梁点検訓練装置、橋梁点検訓練方法及び橋梁点検訓練プログラムに関するものとして、例えば、特許第6815611号(特許文献1)のような装置等が公知である。前記特許文献1に記載の装置は、表示部を備えた橋梁点検訓練装置であって、橋梁を示す3次元橋梁モデルに関する橋梁モデルデータを記憶し、3次元橋梁モデルの表面に配置された複数の点検箇所を示す点検データセットを複数種類記憶し、点検箇所を点検した点検数を示す点検数データを記憶する記憶部、点検訓練が開始された場合、橋梁モデルデータに基づいて仮想空間内に配置された3次元橋梁モデルと、複数種類の点検データセットの中からランダムに選択された第1の点検データセットによって示される複数の点検箇所とが投影された仮想スクリーンの画像を表示部に表示する表示処理部、及び、ユーザによる指定操作に基づいて、表示部に表示された点検箇所に対する指定指示を取得した場合、記憶部に記憶された点検数データによって示される点検数を増加させる訓練進行部を備えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6815611号 第1頁
図1乃至
図8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記橋梁点検訓練装置はあくまでもプログラムされたデータ基づく、机上の訓練であり、実際の操作とは相違する。しかも、一台一台の個体により、相違するコンディションにおける実際の作業用装置の動作確認や所定の条件下で安全装置が作動するか等の確認等の試験を行うものではない。
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、実際の橋梁検査用作業車の作業用装置の動作確認や所定の条件下で安全装置が作動するか等の確認等の試験や、実際の検査箇所を踏まえた動作シュミレーション及びオペレーターの訓練等に使用できる橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明の他の目的は、実際の現場に存在する障害物を模することのできる障害設備を有する橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体は、斜面部と水平な高架部とを備える橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体であって、前記高架部は、前記橋梁検査用作業車の作業台を、前記高架の裏面に差し入れることのできる高さを備えると共に、前記高架部は、前記橋梁検査用作業車を載置した状態で所望の角度に傾倒可能な可動床を備えてなることを特徴とする。
【0013】
請求項1に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体にあっては、斜面部と水平な高架部に橋梁検査用作業車を停車させて、作業装置を動かし、実際に前記橋梁検査用作業車の作業用装置の動作確認や所定の条件下で安全装置が作動するか等の確認等の試験や、実際の検査箇所合わせた停車状態で動作シュミレーションを行うことができると共に、オペレーターの訓練等を行うことができる。さらに、前記可動床に前記橋梁検査用作業車を停車させて、所望の傾斜角度で検査対象の道路面を模した状態で、前記橋梁検査用作業車の作業用装置の動作確認や所定の条件下で安全装置が作動するか等の確認等の試験や、実際の検査箇所合わせた停車状態で動作シュミレーションを行うことができると共に、オペレーターの訓練等を行うことができる。なお、ここでいう水平とは、厳密な水平でなくとも良い。
【0014】
請求項2に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体は、 請求項1に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体において、前記斜面部は、傾度が異なる複数の傾斜面を備え、前記複数の各傾斜面は、それぞれ、少なくとも、試験等対象である橋梁検査用作業車の全長よりも長い斜面であることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体にあっては、様々な角度の傾斜件を備えているので、様々な角度の傾斜面において、前記橋梁検査用作業車を停車させて作業装置を動かし、実際に前記橋梁検査用作業車の作業用装置の動作確認や所定の条件下で安全装置が作動するか等の確認等の試験や、実際の検査箇所合わせた停車状態で動作シュミレーションを行うことができると共に、オペレーターの訓練等を行うことができる。
【0016】
請求項3に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体は、請求項2に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体において、前記斜面部の内、一の傾斜面の傾度は7度であり、その他の傾斜面は、それ以下の傾度であることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体にあっては、道路構造令によって定められている車道の最大縦断勾配である約6,8度に対応することのできる傾斜角度として7度を規定し、その他の斜面をそれより小さい傾斜角度の傾斜面として形成し、試験等の安全性及び実効性を図ることができる。
【0018】
請求項4に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体は、請求項1乃至3の何れか一に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体において、前記可動床は、前記高架部に配置され、前記橋梁検査用作業車を載置する可動板と、前記可動板の一側端部を上方に駆動さる駆動アームと、他側端部を回動させるヒンジ部とを備え、前記橋梁検査用作業車をローリング方向における所望の傾斜角度位置にて載置させてなることを特徴とする。
【0019】
請求項4に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体にあっては、前記可動床は前記橋梁検査用作業車を載置した状態で、前記作業車のローリング方向において、所望の角度に傾斜させ停車させて、作業装置を動かし、実際に前記橋梁検査用作業車の作業用装置の動作確認や所定の条件下で安全装置が作動するか等の確認等の試験や、実際の検査箇所合わせた停車状態で動作シュミレーションを行うことができると共に、オペレーターの訓練等を行うことができる。
【0020】
請求項5に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体は、請求項1乃至3の何れか一に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体において、前記可動床は、前記可動板の底面部に取り付ける複数の駆動アームによって前後方向及び左右方向に揺動することができることを特徴とする。
【0021】
請求項5に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体にあっては、前記可動板の載置した前記橋梁検査用作業車を前後方向及び左右方向に揺動させて、所望の傾斜状態に載置した状態で、作業装置を動かし、実際に前記橋梁検査用作業車の作業用装置の動作確認や所定の条件下で安全装置が作動するか等の確認等の試験や、実際の検査箇所合わせた停車状態で動作シュミレーションを行うことができると共に、オペレーターの訓練等を行うことができる。
【0022】
請求項6に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体は、請求項乃1至6の何れか一に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体において、前記斜面部又は前記高架部の幅方向側部には、模擬障害設備を設置してなることを特徴とする。
【0023】
請求項6に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体にあっては、検査対象の橋梁にトラス等の構造体や斜張橋のワイヤーがある場合等検査の障害になるような状態を再現して、作業装置を動かし、実際に前記橋梁検査用作業車の作業用装置の動作確認や所定の条件下で安全装置が作動するか等の確認等の試験や、実際の検査箇所に合わせた停車状態で動作シュミレーション等を行うことができると共に、オペレーターの訓練等を行うことができる。
【0024】
請求項7乃至10に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体は、請求項6に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体において、前記模擬障害設備は、所定間隔に立設する複数の支柱と前記支柱間に設けられた架設体とを備え、前記支柱と前記架設体は、長さ方向に所定間隔に複数のフックを設けてなり、前記フック間に、ロープを取り外し自在に張設することにより、トラス構造等に模した模擬障害設備を形成することを特徴をする。
【0025】
請求項7乃至10に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体にあっては、前記模擬障害設備は、所定間隔に立設する複数の支柱と前記支柱間に設けられた架設体とを備え、前記支柱と前記架設体は、長さ方向に所定間隔に複数のフックを設けてなり、前記フック間に、ロープを取り外し自在に張設し、トラス構造や斜張橋のワイヤ等に見立てた模擬障害設備を形成することを特徴をする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1に係る橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体に依ると、斜面部と水平な高架部とを備える橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体であって、前記高架部は、前記橋梁検査用作業車の作業台を、前記高架の裏面に差し入れることのできる高さを備えると共に、前記高架部は、前記橋梁検査用作業車を載置した状態で所望の角度に傾倒可能な可動床を備えているので、斜面部と平坦な高架部に橋梁検査用作業車を停車させて、作業装置を動かし、実際に前記橋梁検査用作業車の作業用装置の動作確認や所定の条件下で安全装置が作動するか等の確認等の試験や、実際の検査箇所合わせた停車状態で動作シュミレーションを行うことができると共に、オペレーターの訓練等を行うことができる。さらに、前記可動床に前記橋梁検査用作業車を停車させて、所望の傾斜角度で検査対象の道路面を模した状態で、前記橋梁検査用作業車の作業用装置の動作確認や所定の条件下で安全装置が作動するか等の確認等の試験や、実際の検査箇所合わせた停車状態で動作シュミレーションを行うことができると共に、オペレーターの訓練等を行うことができる。
【0027】
請求項2に係る橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体に依ると、請求項1に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体に加えて、前記斜面部は、傾度が異なる複数の傾斜面を備え、前記複数の各傾斜面は、それぞれ、少なくとも、試験等対象である橋梁検査用作業車の全長よりも長い傾斜面であるので、様々な角度の傾斜面において、前記橋梁検査用作業車を停車させて、作業装置を動かし、実際に前記橋梁検査用作業車の作業用装置の動作確認や所定の条件下で安全装置が作動するか等の確認等の試験や、実際の検査箇所合わせた停車状態で動作シュミレーションを行うことができると共に、オペレーターの訓練等を行うことができる。
【0028】
請求項3に係る橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体に依ると、請求項2に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体に加えて、前記斜面部の内、一の傾斜面の傾度は7度であり、その他の傾斜面は、それ以下の傾度であるので、道路構造令によって定められている車道の最大縦断勾配である約6,8度に対応することのできる傾斜角度として7度を規定し、その他の斜面をそれより小さい傾斜角度の傾斜面として形成し、試験等の安全性及び実効性を図ることができる。
【0029】
請求項4に係る橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体に依ると、請求項1乃至3の何れか一に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体に加えて、前記可動床は、前記高架部に配置され、前記橋梁検査用作業車を載置する可動板と、前記可動板の一側端部を上方に駆動さる駆動アームと、他側端部を回動させるヒンジ部とを備え、前記橋梁検査用作業車をローリング方向における所望の傾斜角度位置にて載置させることができるので、前記可動床は前記橋梁検査用作業車を載置した状態で、前記作業車のローリング方向において、所望の角度に傾斜させ停車させて、作業装置を動かし、実際に前記橋梁検査用作業車の作業用装置の動作確認や所定の条件下で安全装置が作動するか等の確認等の試験や、実際の検査箇所合わせた停車状態で動作シュミレーションを行うことができると共に、オペレーターの訓練等を行うことができる。
【0030】
請求項5に係る橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体に依ると、請求項1乃至3の何れか一に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体に加えて、前記可動床は、前記可動板の底面部に取り付ける複数の駆動アームによって前後方向及び左右方向に揺動することができるので、前記可動板の載置した前記橋梁検査用作業車を前後方向及び左右方向に揺動させて、所望の傾斜状態に載置した状態で、作業装置を動かし、実際に前記橋梁検査用作業車の作業用装置の動作確認や所定の条件下で安全装置が作動するか等の確認等の試験や、実際の検査箇所合わせた停車状態で動作シュミレーションを行うことができると共に、オペレーターの訓練等を行うことができる。
【0031】
請求項6に係る橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体に依ると、請求項乃1至6の何れか一に記載の橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体に加えて、前記斜面部又は前記高架部の幅方向側部には、模擬障害設備を設置しているので、検査対象の橋梁にトラス等の構造体がある場合等検査の障害になるような状態を再現して、作業装置を動かし、実際に前記橋梁検査用作業車の作業用装置の動作確認や所定の条件下で安全装置が作動するか等の確認等の試験や、実際の検査箇所合わせた停車状態で動作シュミレーションを行うことができると共に、オペレーターの訓練等を行うことができる。
【0032】
請求項7乃至10に係る橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体に依ると、、前記模擬障害設備は、所定間隔に立設する複数の支柱と前記支柱間に設けられた架設体とを備え、前記支柱と前記架設体は、長さ方向に所定間隔に複数のフックを設けてなり、前記フック間に、ロープを取り外し自在に張設し、トラス構造や斜張橋のワイヤ等に見立てた模擬障害設備を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明に係る橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体の斜視図である。
【
図3】(a)は本発明に係る高架構造体の平面図であり、(b)は同側面図である。
【
図4】本発明に係る高架構造体の概略骨格の斜視図である。
【
図7】可動床周辺の下からの要部拡大斜視図である。
【
図11】可動板に橋梁検査用作業車を載置した状態で作業装置を動かした状態の概略右側面図である。
【
図12】可動板に橋梁検査用作業車を載置し、所定の角度で傾斜させた状態で作業装置を動かした状態の概略右側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
【0035】
図1は本発明にかかる橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体を示す斜視図であり、
図2は逆方向からの同斜視図であり、
図3(a)は本発明に係る高架構造体の平面図であり、(b)は同側面図である。また、
図3は本発明に係る高架構造体の可動床構造部分を除く骨格の斜視図である。
【0036】
図1乃至4に示すように、10は本発明に係る橋梁検査用作業車(以下、「作業車」という。)BCの試験等用高架構造体(以下、「高架構造体」という。)であり、全長約103m、幅員約6m、路肩約0.6m、高さ約6.3mの橋梁を模した構造体として形成されている。
【0037】
前記高架構造体10は、
図4の概略骨格図(可動床構造部分を除く)に示すように、コンクリートで形成される基礎11の上に並行に立設した2本の支柱12a、12bを長さ方向に向けて複数本、立設させて、長さ方向の支柱12a、12a間には鋼製の主桁13aを架設し、もう一方の長さ方向の支柱12b、12b間には鋼製の主桁13bを架設し、幅方向に並行して立設した2本の支柱12a、12bの上部には鋼製の主梁14を架設する。さらに前記主桁13aと前記主桁13bの間には、長さ方向に、5本の補強桁15を架設すると共に、前記主梁14と前記主梁14の間には5本の補強梁16を架設し、前記各支柱間の中央部分と前記支柱の下部に掛けてブレース17を取り付け、基本骨格を形成し、その上面に鋼製の路面板18を敷設している。なお、後述する高架部30の下の長手方向における支柱12a、12a間には、作業台DKを試験等のため差し入れることのできるようにブレース17は設けられていない。
【0038】
前記高架構造体10の周縁には、グレーチングにより形成される路肩部19を設けると共に、作業員、オペレーター等の安全を確保するため、高さ1,5m程の防護柵20が配設されており、さらに、前記高架構造体10の側面の中程には、地上から前記高架部30に直接上れるように階段19を取り付けている。
【0039】
前記高架構造体10は、平坦な高架部30と斜面部40とから形成されており、前記斜面部40の一端は地面GLから盛り上げられた嵩高の一般道路と連続しており他端に向けて上り勾配をとり、平坦な前記高架部30と連なるよう形成されている。
前記斜面部40において、前記傾斜面44の法勾配を7度としたのは、道路構造令によって定められている車道の最大縦断勾配である約6.8度に対応することのできる傾斜角度として前記傾斜面44を形成したためであり、その他の傾斜面42、43及び42をそれより小さい角度の異なった傾斜角度の傾斜面として形成するので、様々な傾斜角度において前記試験等を行うことができ、実際の作業現場に則した試験等を行うことができる。
【0040】
前記各傾斜面42乃至45は、それぞれ、少なくとも長さ12m、幅6m以上に形成されており、前記作業車BCの車幅及び全長以上に設定され、それぞれの違った角度の勾配の傾斜面42乃至45上に停車した状態でアームARを伸張させて橋梁検査作業等が行う
【0041】
前記斜面部40は、嵩高な一般道路に連なる水平(法勾配0度)な導入路41と、法勾配4.5度の傾斜面42、法勾配6度の傾斜面43、法勾配7度の傾斜面44、法勾配2度の傾斜面45を有している。そして、前記傾斜面45は水平面46に連なっている。
【0042】
一方、前記高架部30の地上高は、前記作業車BCのアームARの先端に取り付けられる作業台DKを前記高架部30の裏面に差し入れることのできるように、地面GLから6.3m程度に設定している。したがって、たとえば、前記作業車BCの全てのアームARを最大限まで伸張し、展開した状態で作動確認等の試験を行うことができる。
【0043】
また、前記高架部30の路面の一側には、前記作業車BCの動作確認試験やオペレーターの訓練のために、実際の作業現場にある障害物(トラス梁、斜張橋のワイヤ、2階建て構造の天井材等)に見立てることのできる障害設備60を設けている。
【0044】
さらに、 前記高架部30の先端部には、前記作業車BCを載置して停車させた状態で幅方向に対して所定の角度傾倒して、前記作業車BCが傾いた状態での、前記作業車BCのアームAR動作や作業台DKの動作試験等を行うことのできる可動床50を設置するため、可動床開口部23を設けている。
【0045】
図5は可動床の下からの拡大斜視図であり、
図6は可動床周辺の要部拡大側面図であるり、
図7は可動床周辺の下からの要部拡大斜視図であり、
図8は可動床周辺の要部拡大断面図である。
【0046】
図5乃至
図8に示すように、前記可動床50は、H鋼で長方形状に枠体51を形成すると共に、前記枠体51内は、長手方向中央部に1本、幅方向に7本のH鋼を格子状に組み込んで格子状補強鋼52とし、その上に金属製の床板52を溶接して形成されており、前記高架部30の先端部の路面に設けた前記可動床開口部23に嵌め込んで設置される。
【0047】
前記可動床50の前記枠体51の長辺の一側には、裏面側から油圧ジャッキ56を2本適当に間隔を隔てて取り付け、長辺の他側にヒンジ54を設けて、前記可動床50を回動自在に支持しており、前記一側を前記油圧ジャッキ56で持ち上げることにより、前記可動床50を前記作業車BCをローリング方向に向けて傾倒させ、その状態で前記作業車BCのアームAR動作や作業台DKの動作試験等を行う。
【0048】
前記高架部30の先端部の路面に設けられた前記可動床開口部23の下方には、前記油圧ジャッキ56を支承する駆動部支承体22を架設して、前記油圧ジャッキ56を支持している。
【0049】
前記駆動部支承体22は、前記油圧ジャッキ56を支持する支承部22bと、前記支承部22bを前記主桁13a、13b及び前記補強桁15に固定して支持する支持部22cと、前記支承部22bを前記補強梁16に固定するブレース17により形成されており、前記2本油圧ジャッキのそれぞれの下方に設置される。
【0050】
【0051】
図9において、60は現場におけるトラス梁や斜張橋のワイヤー等に模して形成される模擬障害設備であり、前記模擬障害設備60は、前記高架部30の路面の側部から2本の支柱61,61を間隔を隔てて立設し、前記支柱60,60の上端にロッド62を架設し、前記支柱61,61及び前記架設ロッド62に、約1m間隔でフック63を8個前後取り付けてて形成している。
【0052】
また、64は、前記高架部30の下方に設置した模擬障害設備であり、地面GLから2本の支柱65,65を間隔を隔てて立設し、前記支柱65,65の上端にロッド66を架設し、前記支柱65,65及び前記架設ロッド66に、約1m間隔でフック67を4乃至8個程度、取り付けてて形成している。
【0053】
そして、前記フック63,63又は前記フック67,67間に、ロープRを張設することにより、現場におけるトラス梁や斜張橋のワイヤー等に見立てて、試験等を行うことができる。例えば、前記ロッド62と前記支柱61の前記フック63間に前記ロープRを、トラス梁や斜張橋のワイヤーを模すように張設して、前記作業車BCの前記アームAR等の操作を行い、障害物を回避できるかどうかの試験等を行うことができる。この場合、障害物を前記ロープRによって想定しているため、前記作業台DKや前記アームARがロープに接触等しても、前記作業台DKや前記アームARにダメージを生じることはないし、また、複数個設けられた前記フック63又は前記フック67にロープRを張設するため、実際に障害となるトラス梁や斜張橋のワイヤー等の傾斜角度や位置に模して障害物として設定することができる。
【0054】
図10は可動床周辺の要部拡大平面図であり、
図11は可動板に橋梁検査用作業車を載置した状態で作業装置を動かした状態の概略右側面図であり、
図12は可動板に橋梁検査用作業車を載置し、所定の角度で傾斜させた状態で作業装置を動かした状態の概略右側面図である。
【0055】
本発明に係る高架構造体10は、以上の構成からなるので、前記作業車BCの試験等を行う場合は、前記高架構造体10の導入路41から前記作業車BCを後進または前進させて侵入させる。そして斜面における試験等を行う場合は、前記斜面部40に前記作業車BCを、所望の傾斜角度の傾斜面42~45に停車させて、必要であればアウトリガーORを引き出して、試験等を行う。
【0056】
そして、前記作業車BCをローリング方向へ傾斜させて試験等を行う場合は、前記作業車BCを、前記高架部30に設置した前記可動床50まで前記作業車BCを進入させて、
図10に示すように、前記作業車BCを前記可動床50に載置させ、必要であれば、アウトリガーORを引き出して、
図11に示すように、前記可動床50を、所望の傾斜角度まで、前記油圧ジャッキで持ち上げ、ローリング方向へ傾斜させた状態で、例えば、
図12に示すように、前記アームARを最大限展開させ、前記作業台DKを最大限引き出した状態で試験等を行うことができる。
【0057】
さらに、前記作業車BCを前記模擬障害設備60の回避動作下での試験等を行う場合は、前記作業車BCを、前記高架部30に設置した前記前記模擬障害設備60の横に停車させて、必要であればアウトリガーORを引き出して、試験等を行うことができる。
【0058】
このとき、前記高架部30上に設けられた前記模擬障害設備60は、前記ロープRを前記支柱61と前記ロッド62のフック間に張設して斜張橋のワイヤーに見立てて、また、前記高架部30の下方設けられた前記模擬障害設備60は、前記ロープRを前記支柱61と前記ロッド62のフック間に張設してトラス梁に見立てて試験等を行うことができる。
【0059】
図13は他の実施例における可動床の動作説明図である。
【0060】
図13において、70は他の実施例における可動床を示し、前記可動床70は、床板72が、前記可動床開口部の下方に設けた長方形板上の駆動部支承体の四方に油圧ジャッキ取付部材74を介して揺動自在に取り付けられた4本の油圧ジャッキ73,73,73,73で四方を支持されており、前記油圧ジャッキ73はそれぞれ、独立して制御されており、
図13に示すように、前記可動床70はローリング方向及びピッチング方向及びそれらを組み合わせた方向に揺動するように制御することができる。
【0061】
なお、前記高架構造体10の各寸法は一例であり、これに限定するものではなく、適宜大きさに設計変更することができる。また、前記油圧ジャッキの位置は前記床板の側方に設けても良く、また、その数も2本に限定するものではなく、増やしても良い。さらに、前記模擬障害設備の位置及び数も、適宜の位置また数で設置することも勿論可能である。
【0062】
また、本高架構造体10は、前述したものの他に、設定された作動範囲内においてアーム等の展開時しか発生しない不具合の確認、ユーザーの安全講習会での利用、緊急時動作訓練、設定された作動範囲内における前記アームAR等の最大展開時における整備・点検・修理等にも使用でき、また、現状存在する「9.9mまでの高所作業車特別教育」や「10m以上の高所作業車運転技能講習」の教育講習に加えて、新たに、従来なかった橋梁検査用作業車の教育講習に使用する訓練施設として供することもできる。
【0063】
なお、前記模擬障害設備60,64は、前記高架部30の上方と下方に設置したが、どちらか一方に設置しても良く、さらに、可動床を備えない橋梁検査用作業車の試験等用高架構造体に設置することもできる。
【符号の説明】
【0064】
10・・・高架構造体
11・・・基礎
12a、12b・・支柱
13a、13b・・主桁
14・・・主梁
15・・・補強桁
16・・・補強梁
17・・・ブレース
18・・・路面板
19・・・路肩
20・・・防護柵
21・・・階段
22・・・駆動部支承体
22a・・架設部
22b・・支承体
22c・・支持体
23・・・可動床開口部
30・・・高架部
40・・・斜面部
41・・・導入路
42~45・・・傾斜面
46・・・水平面
50・・・可動床
51・・・枠体
52・・・格子状補強鋼
53・・・床板
54・・・ヒンジ
55・・・油圧ジャッキ取付部材
56・・・油圧ジャッキ
60、64・・・模擬障害設備
61、65・・・障害支柱
62、66・・・障害架設体
63、67・・・フック
70・・・可動床(他実施例)
71・・・駆動部支承体(他実施例)
72・・・床板(他実施例)
73・・・油圧ジャッキ(他実施例)
74・・・油圧ジャッキ取付部(他実施例)
BC・・・橋梁検査用作業車
AR・・・アーム
DK・・・作業台
OR・・・アウトリガー
R・・・・ロープ
L・・・全長
W・・・幅員
S・・・路肩
H・・・高さ