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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】ドライアイス噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B24C 1/00 20060101AFI20230315BHJP
   B24C 5/04 20060101ALI20230315BHJP
   B24C 7/00 20060101ALI20230315BHJP
   B08B 7/00 20060101ALI20230315BHJP
   B08B 7/02 20060101ALI20230315BHJP
   B05B 7/04 20060101ALI20230315BHJP
   B05B 7/14 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
B24C1/00 A
B24C5/04 A
B24C7/00 D
B08B7/00
B08B7/02
B05B7/04
B05B7/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018225836
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2019098519
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2017232206
(32)【優先日】2017-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506219889
【氏名又は名称】株式会社クールテクノス
(73)【特許権者】
【識別番号】000158312
【氏名又は名称】岩谷産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149870
【弁理士】
【氏名又は名称】芦北 智晴
(72)【発明者】
【氏名】和田 嘉之
(72)【発明者】
【氏名】和田 好史
(72)【発明者】
【氏名】赤木 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 臣哉
(72)【発明者】
【氏名】石井 辰弥
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-226290(JP,A)
【文献】実開昭61-111933(JP,U)
【文献】特開2001-277116(JP,A)
【文献】特開2001-276668(JP,A)
【文献】特開2005-334994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 1/00
B24C 5/04
B24C 7/00
B08B 7/00
B08B 7/02
B05B 7/04
B05B 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化二酸化炭素を供給する液化二酸化炭素供給路と、
キャリアガスを供給するキャリアガス供給路と、
前記液化二酸化炭素供給路から供給される液化二酸化炭素を噴出する噴出孔と、
前記噴出孔から噴出された液化二酸化炭素を膨張させてドライアイス粒子を生成する膨張空間と、
前記キャリアガス供給路から供給されるキャリアガスと、前記膨張空間で生成されたドライアイス粒子とを合流させる合流空間と、
前記合流空間から噴射口に至るまで形成された噴射路と、
を備えるドライアイス噴射装置であって、
前記液化二酸化炭素供給路の途中に気液分離器が設けられ、この気液分離器の下流端から前記噴出孔までの液化二酸化炭素供給路の流路長さが200mm以内であ
前記気液分離器内の上部に溜まる気体を外部に排出するための排出路と、
前記気液分離器内の液化二酸化炭素の液面高さを調整するために前記排出路を開閉する弁と、
前記排出路に設けられた温度検出器と、
前記弁の開閉を制御する制御盤と、
をさらに備え、
前記弁は、一定時間毎に前記排出路の開閉動作を繰り返すように前記制御盤に制御され、
前記気液分離器内の液化二酸化炭素の液面が高くなって、液化二酸化炭素が前記排出路から流出するようになり、前記温度検出器により、前記排出路内を流れる流体温度の低下が検出された場合、前記制御盤によって、前記弁の前記排出路の閉時間が開時間より長く設定され、その後、前記温度検出器により、前記排出路内を流れる流体温度が所定値まで上昇したことが検出されると、前記制御盤は、前記弁が、再び、一定時間毎に前記排出路の開閉動作を繰り返すように制御する、
ことを特徴とするドライアイス噴射装置。
【請求項2】
請求項に記載のドライアイス噴射装置において、
前記気液分離器より下流側の前記液化二酸化炭素供給路は、鉛直方向に形成されている、
ことを特徴とするドライアイスの噴射装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のドライアイス噴射装置において、
前記気液分離器より下流側の前記液化二酸化炭素供給路の途中に開閉弁が設けられており、当該開閉弁がボール弁である、
ことを特徴とするドライアイスの噴射装置。
【請求項4】
液化二酸化炭素を供給する液化二酸化炭素供給路と、
キャリアガスを供給するキャリアガス供給路と、
前記液化二酸化炭素供給路から供給される液化二酸化炭素を噴出する噴出孔と、
前記噴出孔から噴出された液化二酸化炭素を膨張させてドライアイス粒子を生成する膨張空間と、
前記キャリアガス供給路から供給されるキャリアガスと、前記膨張空間で生成されたドライアイス粒子とを合流させる合流空間と、
前記合流空間から噴射口に至るまで形成された噴射路と、
を備えるドライアイス噴射装置であって、
前記液化二酸化炭素供給路の途中に気液分離器が設けられ、この気液分離器の下流端から前記噴出孔までの液化二酸化炭素供給路の流路長さが200mm以内であり、
内部が前記膨張空間となるドライアイス生成管を備えており、
前記キャリアガス供給路は、前記ドライアイス生成管に向かってキャリアガスを供給するように形成されており、
前記ドライアイス生成管は、前記噴出孔から噴出された液化二酸化炭素を内部で膨張させてドライアイス粒子を生成する内管と、該内管の外側に隙間を介して設けられた外管とを含む、
ことを特徴とするドライアイス噴射装置。
【請求項5】
液化二酸化炭素を2Mpa±0.2Mpa以内の圧力で貯留する液化二酸化炭素貯留部と、
前記液化二酸化炭素貯留部から前記圧力にて液化二酸化炭素を供給する液化二酸化炭素供給路と、
キャリアガスを供給するキャリアガス供給路と、
前記液化二酸化炭素供給路から供給される液化二酸化炭素を噴出する噴出孔と、
前記噴出孔から噴出された液化二酸化炭素を膨張させてドライアイス粒子を生成する膨張空間と、
前記キャリアガス供給路から供給されるキャリアガスと、前記膨張空間で生成されたドライアイス粒子とを合流させる合流空間と、
前記合流空間から噴射口に至るまで形成された噴射路と、
を備えるドライアイス噴射装置であって、
前記液化二酸化炭素供給路の途中に気液分離器が設けられ、この気液分離器の下流端から前記噴出孔までの液化二酸化炭素供給路の流路長さが400mm以内であ
内部に前記膨張空間を有し、当該膨張空間で生成されたドライアイス粒子を前記合流空間へ供給するドライアイス供給管を備えており、
前記ドライアイス供給管の少なくとも一部が可撓性チューブを用いて構成され、
前記キャリアガス供給路の少なくとも一部も可撓性チューブを用いて構成されている、
ことを特徴とするドライアイス噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライアイス粒子を対象物に向けて噴射することで対象物の表面の洗浄等を行うドライアイス噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液化二酸化炭素を断熱膨張させて生成したドライアイス粒子をキャリアガスの流れに導入して噴射する装置が知られている(例えば特許文献1を参照。)。
【0003】
特許文献1に開示されている装置では、液化炭酸ガス容器からドライアイス噴射用ノズルに供給される液化二酸化炭素をドライアイス生成管(同文献では「ドライアイス供給管」と称している。)内で断熱膨張させてドライアイスを生成し、生成したドライアイスを液体窒素貯槽側からドライアイス噴射用ノズルに供給されるキャリアガス(同文献では「加速用ガス」と称している。)の流れに導入して噴射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-145429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ドライアイス粒子を対象物に向けて噴射させて対象物の表面の処理(洗浄等)を行うこの種の装置では、通常、噴射するドライアイス粒子の流量は対象物に適した流量である。例えば、対象物が電子部品のように、衝撃に弱いデリケートな物である場合、極少ない流量でドライアイス粒子を噴射しなければならない。
【0006】
しかしながら、従来のドライアイス粒子を噴射する装置では、噴射するドライアイス粒子の流量を極少なくすると、安定した流量でドライアイス粒子を噴射することができなくなる。すなわち、噴射するドライアイス粒子の流量を極少なくすると、断熱膨張させる前の配管内で熱侵入により気化した炭酸ガスの影響が大きくなり、ドライアイス生成管内でドライアイス粒子が間欠的に生成されるようになる。その結果、噴射口からドライアイス粒子が噴射される状態と、ドライアイス粒子を含まないキャリアガスのみが噴射される状態とが交互に繰り返され、対象物の表面を均一に処理(洗浄等)することができなくなる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて創案されたものであり、噴射するドライアイス粒子の流量が極少なくても、安定した流量でドライアイス粒子を噴射させることのできるドライアイス噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るドライアイス噴射装置は、液化二酸化炭素を供給する液化二酸化炭素供給路と、キャリアガスを供給するキャリアガス供給路と、前記液化二酸化炭素供給路から供給される液化二酸化炭素を噴出する噴出孔と、前記噴出孔から噴出された液化二酸化炭素を膨張させてドライアイス粒子を生成する膨張空間と、前記キャリアガス供給路から供給されるキャリアガスと、前記膨張空間で生成されたドライアイス粒子とを合流させる合流空間と、前記合流空間から噴射口に至るまで形成された噴射路と、を備える。そして、前記液化二酸化炭素供給路の途中に気液分離器が設けられ、この気液分離器の下流端から前記噴出孔までの液化二酸化炭素供給路の流路長さが200mm以内である、ことを特徴とする。
【0009】
上記構成を備えるドライアイス噴射装置において、前記気液分離器内の上部に溜まる気体を外部に排出するための排出路と、該排出路を開閉する弁と、を備えるものとしてもよい。
【0010】
上記構成を備えるドライアイス噴射装置において、前記気液分離器より下流側の前記液化二酸化炭素供給路は、鉛直方向に形成されている、ことが好ましい。
【0011】
上記構成を備えるドライアイス噴射装置において、前記気液分離器より下流側の前記液化二酸化炭素供給路の途中に開閉弁が設けられており、当該開閉弁がボール弁である、ことが好ましい。
【0012】
上記構成を備えるドライアイス噴射装置において、内部が前記膨張空間となるドライアイス生成管を備えており、前記キャリアガス供給路は、前記ドライアイス生成管に向かってキャリアガスを供給するように形成されており、前記ドライアイス生成管は、前記噴出孔から噴出された液化二酸化炭素を内部で膨張させてドライアイス粒子を生成する内管と、該内管の外側に隙間を介して設けられた外管とを含む、ことが好ましい。
【0013】
本発明の他の態様に係るドライアイス噴射装置は、液化二酸化炭素を2Mpa±0.2Mpa以内の圧力で貯留する液化二酸化炭素貯留部と、前記液化二酸化炭素貯留部から前記圧力にて液化二酸化炭素を供給する液化二酸化炭素供給路と、キャリアガスを供給するキャリアガス供給路と、前記液化二酸化炭素供給路から供給される液化二酸化炭素を噴出する噴出孔と、前記噴出孔から噴出された液化二酸化炭素を膨張させてドライアイス粒子を生成する膨張空間と、前記キャリアガス供給路から供給されるキャリアガスと、前記膨張空間で生成されたドライアイス粒子とを合流させる合流空間と、前記合流空間から噴射口に至るまで形成された噴射路と、を備える。そして、前記液化二酸化炭素供給路の途中に気液分離器が設けられ、この気液分離器の下流端から前記噴出孔までの液化二酸化炭素供給路の流路長さが400mm以内である、ことを特徴とする。
【0014】
上記構成を備えるドライアイス噴射装置において、内部に前記膨張空間を有し、当該膨張空間で生成されたドライアイス粒子を前記合流空間の方へ供給するドライアイス供給管を備えており、前記ドライアイス供給管の少なくとも一部が可撓性チューブを用いて構成され、前記キャリアガス供給路の少なくとも一部も可撓性チューブを用いて構成されている、ものとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るドライアイス噴射装置によれば、噴射するドライアイス粒子の流量が極少なくても、安定した流量でドライアイス粒子を噴射させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態に係るドライアイス噴射装置の要部を示す部分断面図である。
図2】第1の実施形態に係るドライアイス噴射装置全体の空気配管系統図である。
図3】第1の実施形態の変形例に係るドライアイス噴射装置の空気配管系統図である。但し、キャリアガス供給部の図示は省略している。
図4】第2の実施形態に係るドライアイス噴射装置全体の配管等の系統図である。
図5】第2の実施形態に係るオリフィス板およびその近傍を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1の実施形態に係るドライアイス噴射装置について図面を参照しつつ説明する。図1および図2に示すように、ドライアイス噴射装置1は、噴射装置本体2、液化二酸化炭素供給部3、キャリアガス供給部4、制御盤5等を備えている。
【0018】
噴射装置本体2は、図1に示すように、合流部材8、ノズル9、ドライアイス生成管10等を備えている。
【0019】
合流部材8は、キャリアガス供給路7を通じて供給されるキャリアガスと、後述するドライアイス生成管10から流出するドライアイス粒子とが合流する合流空間11を内部に有する。本実施形態ではキャリアガスとしてドライエアが使用されている。なお、キャリアガスには、露点温度の低いガスを使用することができ、上記ドライエアの他、窒素ガス、炭酸ガスなどを使用してもよい。
【0020】
また、合流部材8内には、図1に示すように、2重管からなるドライアイス生成管10が設けられている。ドライアイス生成管10は、基端部がオリフィス板13を介して液化二酸化炭素供給路6に接続されている。
【0021】
オリフィス板13は、1又は複数の噴出孔16(本実施形態では、内径0.1mm~0.2mmの噴出孔16が2、3カ所形成されている。)が形成された薄板(例えば板厚1mmの円板)で構成されている。このオリフィス板13は、液化二酸化炭素供給路6の下流端とドライアイス生成管10との境界に設けられている。
【0022】
オリフィス板13に形成された噴出孔16は、液化二酸化炭素供給路6から供給される液化二酸化炭素を噴出する。なお、液化二酸化炭素は、低温の液化二酸化炭素である。
【0023】
ドライアイス生成管10は、内管101と、内管101の外側に隙間を介して設けられた外管102とを備えている。内管101の先端部101aは、外管102の先端部102aより所定の長さ先端側に位置している。本実施形態では、外管102の基端部は内管101の外周面に固定されている。
【0024】
ドライアイス生成管10の内管101は、その内部が膨張空間10aとして機能する。また、オリフィス板13の噴出孔16から膨張空間10aに噴出された液化二酸化炭素が断熱膨張して固いドライアイス粒子を形成するように、ドライアイス生成管10内の上流部の断面積は、オリフィス板13に形成された噴出孔16の断面積に対してある程度大きく設定されている。
【0025】
液化二酸化炭素供給部3は、図2に示すように、液化二酸化炭素供給路6、液化二酸化炭素貯留部14、気液分離器15等を備えている。なお、液化二酸化炭素貯留部14として、例えば、極低温容器(LGC)、貯槽タンク(CE:コールドエバポレーター)などが使用される。
【0026】
液化二酸化炭素供給路6は、液化二酸化炭素貯留部14からオリフィス板13に形成された噴出孔16に至るまで配管等により形成されており、液化二酸化炭素をドライアイス生成管10内の膨張空間10aに供給する。この液化二酸化炭素供給路6上には、上流側から順に、液化二酸化炭素貯留部14に付設された開閉弁19、フィルタ20、圧力計P1、安全弁21、開閉弁SV1、気液分離器15、ボール弁CV1が設けられている。
【0027】
気液分離器15は、噴射装置本体2(オリフィス板13)に近い位置に設けられている。本実施形態では、気液分離器15は、容器15aと、ガス排出路15bと、ガス排出路15bを開閉する液面調整弁SV4とを備えている。
【0028】
気液分離器15の容器15aの上部には、液化二酸化炭素供給路6の上流側部が接続され、ここから容器15a内に液化二酸化炭素が供給される。また、容器15aの底部には、液化二酸化炭素供給路6の下流側部が接続され、容器15aから液化二酸化炭素供給路6の下流側部へ気体が除去された液化二酸化炭素が流出する。本実施形態では、容器15aの容量は、例えば、0.1L以上~1.5L以下の範囲であり、容器15aの下流端から噴出孔16までの液化二酸化炭素供給路6の流路長さは、200mm以下(好ましくは、100mm以下、更に好ましくは、50mm以下)である。なお、気液分離器15より下流側に設けられた液化二酸化炭素供給路6aは、ボール弁CV1内の流路を含めて鉛直方向に形成されている。
【0029】
ガス排出路15bは、容器15aの上部に溜まった炭酸ガスを外へ排出するために設けられている。液面調整弁SV4は、容器15a内の液面高さを調整するために設けられている。具体的には、液面調整弁SV4は、容器15a内の液面が高くない場合に、一定時間毎に(例えば10秒毎に)ガス排出路15bの開閉動作を繰り返す。液面が高くなり、液化二酸化炭素がガス排出路15bから流出するようになると、ガス排出路15bに設けられた温度検出器T3により、流体温度の低下が検出され、制御盤5によって、液面調整弁SV4のガス排出路15bの閉時間が開時間より長く設定される。その後、温度検出器T3により、液化二酸化炭素がガス排出路15bから流出する流体の温度が所定値まで上昇すると、制御盤5は、液面調整弁SV4が、再び、一定時間毎に(例えば10秒毎に)ガス排出路15bの開閉動作を繰り返すように制御する。
【0030】
キャリアガス供給路7は、合流部材8の内部に形成された内部キャリアガス供給路7aと、合流部材8の外部に形成された外部キャリアガス供給路7bとで構成されている。
【0031】
内部キャリアガス供給路7aは、ドライアイス生成管10に向かってキャリアガスを供給するように形成されている。本実施形態では、内部キャリアガス供給路7aは直線流路を形成し、直管状のドライアイス生成管10に向かってキャリアガスを所定鋭角で供給する。換言すると、ドライアイス生成管10の中心線に対する、内部キャリアガス供給路7aの中心線の角度が所定鋭角(図2の例では30°)となっている。なお、上記中心線同士のなす角度は所定鋭角であることが望ましいが、略90°又は所定鈍角であってもよい。
【0032】
合流空間11では、キャリアガス供給路7から供給されるキャリアガスと、ドライアイス生成管10の内管101内で生成されたドライアイス粒子とが合流する。この合流空間11から、噴射装置本体2のノズル9の先端の噴射口17に至るまでノズル9内に噴射路18が形成されており、合流空間11でキャリアガスに合流したドライアイス粒子はキャリアガスの流れに乗って加速され噴射口17から対象物に向かって噴射される。
【0033】
外部キャリアガス供給路7bは、空気圧源22から合流部材8に至るまで形成され、キャリアガスを噴射装置本体2の合流部材8内に供給するようになっている。図2に示すように、外部キャリアガス供給路7b上には、上流側から順に、フィルタ23、減圧弁RV1、開閉弁SV2、フロースイッチ24、圧力検出器P2、ヒータ前の温度検出器T1、キャリアガスを昇温するヒータ25、ヒータ後の温度検出器T2等が設けられている。
【0034】
なお、フィルタ23の直後には、エアー作動弁であるボール弁CV1に作動エアーを供給するための分岐路26が形成されている。分岐路26上には、減圧弁RV2、開閉弁SV3が設けられている。
【0035】
制御盤5は、温度検出器T1~T3、フロースイッチ24、圧力検出器P1,P2等から入力される各種情報、およびユーザからの各種操作指示に基づいて、ボール弁CV1、開閉弁SV1~SV3および液面調整弁SV4の開閉制御並びにヒータ25の温度制御を行う。
【0036】
以上の構成を備えるドライアイス噴射装置1において、開閉弁19が開弁され、制御盤5において運転開始のための所定操作がなされると、液化二酸化炭素供給路6を介して液化二酸化炭素がオリフィス板13の噴出孔16に送液され、液化二酸化炭素は、噴出孔16からドライアイス生成管10の内管101内の膨張空間10aに噴出される。そして、液化二酸化炭素は、膨張空間10a内で断熱膨張してドライアイス粒子となる。また同時に、キャリアガス供給路7を介してヒータ25で所定温度に昇温されたキャリアガスがドライアイス生成管10の外管102に向かって供給され、噴射路18を通って噴射口17から噴射される。ドライアイス生成管10の内管101から流出するドライアイス粒子は、合流空間11で噴射口17に向かって流れるキャリアガスに混入し、そのキャリアガスの流れに乗って噴射路18内で加速された後、噴射口17から対象物Xに向かって噴射される。
【0037】
以上に説明したドライアイス噴射装置1によれば、以下の作用効果が奏される。
【0038】
(1)液化二酸化炭素供給路6の途中に設けられた気液分離器15によって、気化した炭酸ガスが除去される。しかも、気液分離器15の下流端から噴出孔16までの液化二酸化炭素供給路6の流路長さが極めて短い長さ(200mm以下)であることから、噴出孔16に供給される液化二酸化炭素に気化した炭酸ガスが殆ど存在しなくなる。このため、ドライアイス生成管10内では、連続的にドライアイス粒子が生成され、噴射するドライアイス粒子の流量を極少なくしたとしても、安定した流量で噴射口17からドライアイス粒子を噴射させることが可能となる。
(2)気液分離器15より下流側の液化二酸化炭素供給路6が鉛直方向に形成されていることから、もし、気液分離器15より下流側の液化二酸化炭素供給路6で熱浸入により炭酸ガスが発生しても、発生した炭酸ガスは、上方に浮かび上がって気液分離器15に捕捉される。その結果、発生した上記炭酸ガスが噴射孔16に流れ込むことが防止され、更に安定した流量でドライアイス粒子を噴射させることが可能となる。
(3)気液分離器15より下流側の液化二酸化炭素供給路6の途中に設けられた開閉弁CV1がボール弁であることから、弁の外部からの熱浸入により弁の中に気泡が発生しても弁の中に当該気泡が滞留しにくくなる。弁の中に気泡が滞留すると、次第に滞留した気泡が成長して噴出孔16に流れ込む可能性が高まるが、ボール弁を採用することでそのような問題が生じ難くなる。
(4)特許文献1に開示されたドライアイス噴射装置のように、ドライアイス生成管10にキャリアガスが吹き付けられるタイプのドライアイス噴射装置では、ドライアイス生成管10がキャリアガスによって暖められることが原因で、ドライアイス生成管10内を流れるドライアイス粒子の硬さが低下し、対象物の表面の洗浄等の効果が低下する。更に、噴出孔16から噴出させる液化二酸化炭素の流量を極少量にした場合、更にドライアイス生成管10が暖められ易くなって、ドライアイス粒子の硬さがより一層低下する恐れがある。しかし、本実施形態によれば、ドライアイス生成管10が2重管構造であるため、キャリアガス供給路7から供給されるキャリアガスが、外管102に覆われた内管101に直接当たることはなく、また、外管102と内管101との間に、断熱層として機能する隙間が介在することから、ドライアイス生成管10の内管101内では、硬いドライアイス粒子が生成され易くなる。
(5)本実施形態では、ガス排出路15bの開閉制御をガス排出路15bを流れる流体の温度に基づいて行うことで、気液分離器15内の液面高さ調整を行っているため、簡易かつ安価な構成で気液分離器15内の液面高さの調整を行うことができる。
【0039】
本実施形態の変形例を以下に挙げる。
【0040】
本実施形態では、ドライアイス噴射装置1が備える噴射装置本体2は1台であったが、ドライアイス粒子の噴射範囲を拡大するため、図3に示すように、噴射装置本体2を追加して複数台にしてもよい。この場合、ボール弁CV1とオリフィス板13の間から分岐路28を設け、追加した噴射装置本体2に液化二酸化炭素を供給する。なお、図3では、キャリアガス供給部4の図示を省略しているが、各噴射装置本体2には、キャリアガス供給部4からキャリアガスが供給されるように構成される。
【0041】
本実施形態では、気液分離器15の下流側にボール弁CV1が設けられているが、このボール弁CV1の代わりにその他の種類のバルブを適用することも可能である。すなわち、その他の種類のバルブを適用しても気液分離器15を設置したことによる作用効果は得られる。
【0042】
以下、本発明の第2の実施形態に係るドライアイス噴射装置について図4を参照しつつ説明する。第2の実施形態に係るドライアイス噴射装置201は、ノズル209等が対象物Xに対して移動しながらドライアイス粒子を噴射できる構成を備えている。
【0043】
第2の実施形態に係るドライアイス噴射装置201は、噴射装置本体202、液化二酸化炭素供給部203、キャリアガス供給部204、制御盤205、筐体300等を備えている。
【0044】
噴射装置本体202は、合流部材208、ノズル209、ドライアイス供給管210等を備えている。
【0045】
合流部材208は、キャリアガス供給路207を通じて供給されるキャリアガスと、ドライアイス供給管210から供給されるドライアイス粒子とが合流する合流空間211を内部に有する。この合流空間211からノズル209の先端の噴射口217に至るまでノズル209内に噴射路218が形成されており、合流空間211でキャリアガスと合流したドライアイス粒子はキャリアガスの流れに乗って加速され噴射口217から対象物Xに向かって噴射される。キャリアガス供給路207を通じて供給されるキャリアガスとしては、第1の実施形態と同様のキャリアガスを使用することができる。
【0046】
ドライアイス供給管210は、基端部がオリフィス板213を介して液化二酸化炭素供給路206に接続されている。本実施形態では、合流部材208およびノズル209が対象物Xに対して移動できるように、ドライアイス供給管210の一部が可撓性のチューブを用いて構成されている。可撓性のチューブとしては、例えばテフロン(登録商標)製のチューブを使用することができる。合流部材208およびノズル209は、例えば、対象物Xの表面に対して移動するノズル移動装置に取り付けて使用される。ノズル移動装置として、ロボットアームおよびXYステージを例示することができる。
【0047】
オリフィス板213は、例えば、1又は複数の噴出孔216(本実施形態では、内径0.1mm~0.6mmの噴出孔216が1カ所に形成されている。)が形成された薄板で構成されている。このオリフィス板213は、図5に示すように、液化二酸化炭素供給路206の下流端とドライアイス供給管210との境界に設けられている。
【0048】
オリフィス板213に形成された噴出孔216は、2MPa±0.2MPa以内の圧力で液化二酸化炭素供給路206から供給される液化二酸化炭素を噴出する。なお、図5における3本の矢印は、噴出孔216から液化二酸化炭素が噴出される方向を示している。
【0049】
ドライアイス供給管210は、その内部が膨張空間210aとして機能する。また、オリフィス板213の噴出孔216から膨張空間210aに噴出された液化二酸化炭素が断熱膨張して固いドライアイス粒子を形成するように、ドライアイス供給管210内の上流部の断面積は、オリフィス板213に形成された噴出孔216の断面積に対してある程度大きく設定されている。
【0050】
液化二酸化炭素供給部203は、図4に示すように、液化二酸化炭素供給路206、液化二酸化炭素貯留部214、気液分離器215等を備えている。
【0051】
液化二酸化炭素貯留部214は、液化二酸化炭素を2MPa±0.2MPa以内の低圧にて貯留する低圧貯留部である。液化二酸化炭素貯留部214から液化二酸化炭素供給路206へは2MPa±0.2MPa以内の圧力で低温の液化二酸化炭素が供給される。液化二酸化炭素貯留部214として、例えば、極低温容器(LGC)、貯槽タンク(CE:コールドエバポレーター)などが使用される。
【0052】
液化二酸化炭素供給路206は、液化二酸化炭素貯留部214からオリフィス板213に形成された噴出孔216に至るまで配管等により形成されている。この液化二酸化炭素供給路206上には、上流側から順に、安全弁221、ストレーナ222、開閉弁CV2、圧力センサP3、気液分離器215および開閉弁CV3が設けられている。
【0053】
気液分離器215は、オリフィス板213に近い位置に設けられている。本実施形態では、気液分離器215は、容器215aと、ガス排出路215bと、ガス排出路215bを開閉する液面調整弁CV4と、流量調整弁225とを備えている。
【0054】
気液分離器215の容器215aの上部には、液化二酸化炭素供給路206の上流側部206aが接続され、ここから容器215a内に液化二酸化炭素が供給される。また、容器215aの底部には、液化二酸化炭素供給路206の下流側部206bが接続され、容器215aから液化二酸化炭素供給路6の下流側部206bへ気体が除去された液化二酸化炭素が流出する。本実施形態では、容器215aの容量は、例えば、0.1L以上~1.5L以下の範囲であり、容器215aの下流端から噴出孔216までの液化二酸化炭素供給路206の流路長さは、400mm以下(好ましくは、200mm以下、更に好ましくは、100mm以下)である。
【0055】
ガス排出路215bは、容器215aの上部に溜まった炭酸ガスを外へ排出するために設けられている。液面調整弁CV4は、容器215a内の液面高さを調整するために設けられている。具体的には、液面調整弁CV4は、容器215a内の液面が高くない場合に、一定時間毎に(例えば10秒毎に)ガス排出路215bの開閉動作を繰り返す。液面が高くなり、液化二酸化炭素が容器215aからガス排出路215bに流入するようになると、ガス排出路215bに設けられた温度検出器T4により、流体温度の低下が検出され、制御盤205によって、液面調整弁CV4のガス排出路215bの閉時間が開時間より長く設定される。その後、温度検出器T4により、ガス排出路215bを流れる流体の温度が所定値まで上昇すると、制御盤205は、再び、液面調整弁CV4が一定時間毎に(例えば10秒毎に)ガス排出路215bの開閉動作を繰り返すように制御する。
【0056】
また、ガス排出路215bの一部には、内径が比較的小さい螺旋状の配管が用いられている。この配管によって、ガス排出路215bに圧力損失が付与され、容器215a内の圧力変動が抑制される。その結果、噴出孔216から膨張空間210aへ噴出される液化二酸化炭素の流量が安定し、ノズル209から対象物Xに噴射されるドライアイス粒子の流量も安定する。なお、本実施形態では、噴出孔216から液化二酸化炭素が噴出する圧力(本実施形態では約2MPa)と、合流空間211に供給されるキャリアガスの供給圧(本実施形態では約0.3MPa)との差圧が小さいため、ノズル209から対象物Xに噴射されるドライアイス粒子の流量を安定化させるために、容器215a内の圧力変動を抑制することが好ましい。
【0057】
キャリアガス供給路207は、空気圧源223から合流部材208内の合流空間211に至るまで形成されている。図4に示すように、キャリアガス供給路207上には、上流側から順に、減圧弁RV3、圧力計PG、流量調節弁224、フロースイッチ226、開閉弁SV6、圧力検出器P4、ヒータ前の温度検出器T5、キャリアガスを昇温するヒータ227、ヒータ後の温度検出器T6等が設けられている。本実施形態では、空気圧源223がコンプレッサで構成されており、コンプレッサから供給される元圧力が減圧弁RV3によって第1の所定圧まで減圧され、キャリアガス供給路207により合流部材208内に供給される圧力が第2の所定圧になるように、流量調節弁224によって流量が絞られている。なお、本実施の形態では第2の所定圧は、0.3Mpa±0.1MPa以内である。
【0058】
本実施形態では、合流部材208およびノズル209が対象物Xに対して移動できるように、キャリアガス供給路207の筐体300から出た部分の一部が可撓性のチューブを用いて構成されている。なお、減圧弁RV3の直後には、エアー作動弁に作動エアーを供給するための分岐路228が形成されている。本実施形態では、開閉弁CV2、開閉弁CV3および液面調整弁CV4にエアー作動弁のボール弁が使用されている。
【0059】
制御盤205は、温度検出器T4~T6、フロースイッチ226、圧力検出器P3,P4等から入力される各種情報、およびユーザからの各種操作指示に基づいて、開閉弁CV2,CV3,SV6および液面調整弁CV4の開閉制御、並びにヒータ227の温度制御を行う。
【0060】
筐体300内には、少なくとも、液化二酸化炭素供給路206の途中部206P1から下流端部206P2までの部分と、気液分離器215と、制御盤205とが設置されている。本実施形態では、さらに、筐体300内にキャリアガス供給路207の中間部(途中部207P1から途中部207P2まで)が設置されている。なお、液化二酸化炭素供給路206の途中部206P1および下流端部206P2には管継手228が設けられている。また、キャリアガス供給路207の途中部206P1,206P2にも管継手228が設けられている。また、ガス排出路215bの下流端部にも管継手228が設けられている。各管継手228は、筐体300から露出しており、筐体300の外から容易に配管等の接続作業を行うことができるようになっている。
【0061】
以上の構成を備えるドライアイス噴射装置201において、制御盤205において運転開始のための所定操作がなされると、液化二酸化炭素供給路206を介して液化二酸化炭素がオリフィス板213の噴出孔216まで送液される。液化二酸化炭素は、噴出孔216からドライアイス供給管210内の膨張空間210aに噴出される。そして、液化二酸化炭素は、膨張空間210a内で断熱膨張してドライアイス粒子となる。また同時に、キャリアガス供給路207を介してヒータ227で所定温度に昇温されたキャリアガスが合流部材208内に供給される。合流部材208に供給されたキャリアガスは、ドライアイス供給管210の下流側から流出するドライアイス粒子と合流した後、噴射口217から対象物Xに向かって噴射される。
【0062】
以上に説明したドライアイス噴射装置201によれば、以下の作用効果が奏される。
【0063】
(1)液化二酸化炭素供給路206の途中に設けられた気液分離器215によって、気化した炭酸ガスが除去される。しかも、気液分離器215の下流端から噴出孔216までの液化二酸化炭素供給路206の流路長さが極めて短い長さ(400mm以下)であることから、噴出孔216に供給される液化二酸化炭素に気化した炭酸ガスが殆ど存在しなくなる。このため、ドライアイス供給管210内では、連続的にドライアイス粒子が生成され、噴射するドライアイス粒子の流量を極少なくしたとしても、安定した流量で噴射口217からドライアイス粒子を噴射させることが可能となる。特に、LGCやCE等の低圧の液化二酸化炭素貯留部214を採用した場合、配管を流れる液化二酸化炭素への熱侵入の影響が大きくなるが、気液分離器215の下流端から噴出孔216までの液化二酸化炭素供給路206の流路長さが極めて短いことにより、熱侵入の影響を殆ど無くすことができ、安定した流量でドライアイス粒子を噴射させることが可能となる。
(2)また、LCG、CE等の低圧かつ大容量の二酸化炭素貯留部214を使用しても、極少ない流量かつ安定した流量でドライアイス粒子を噴射できるので、電子部品のように、衝撃に弱いデリケートな対象物Xに対して、長時間の連続洗浄を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0064】
1 ドライアイス噴射装置
6 液化二酸化炭素供給路
7 キャリアガス供給路
10 ドライアイス生成管
101 内管
102 外管
10a 膨張空間
11 合流空間
15 気液分離器
15b 排出路
16 噴出孔
17 噴射口
18 噴射路
214 液化二酸化炭素貯留部
206 液化二酸化炭素供給路
207 キャリアガス供給路
210 ドライアイス供給管
210a 膨張空間
211 合流空間
215 気液分離器
216 噴出孔
217 噴射口
218 噴射路
CV1 ボール弁
SV4 排出路を開閉する開閉弁
図1
図2
図3
図4
図5