(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】パターンの形成方法および装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20230317BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
(21)【出願番号】P 2019017649
(22)【出願日】2019-02-04
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】黒宮 未散
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-102039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写材料を塗布されたモールドに被転写体を上から押圧し、前記被転写体と前記モールド間に転写材料を充填する充填工程と、
前記充填された転写材料をUV照射により被転写体上に硬化させる硬化工程と、
前記転写材料を硬化された前記被転写体を前記モールドから離型させる離型工程と、を有し、
前記硬化工程において、前記モールドのパターンサイズの小さい領域から平坦部あるいは前記パターンサイズの小さい領域からパターンサイズの大きい領域に切り替わる箇所における前記パターンサイズの小さい箇所の終端部である切替部、を冷却し、
前記離型工程において、前記切替部を加熱する、パターンの形成方法。
【請求項2】
前記硬化工程において、回転するモールドの回転数に基づいて前記冷却が行われる、請求項1に記載のパターンの形成方法。
【請求項3】
前記硬化工程において、前記モールド側から前記切替部に向かって冷却が行われる、請求項1または2に記載のパターンの形成方法。
【請求項4】
前記硬化工程において、前記UV照射と対向する方向から前記切替部に向かって冷却が行われる、請求項3に記載のパターンの形成方法。
【請求項5】
前記硬化工程において、前記切替部を含む少なくとも50μmの領域を冷却する、請求項1~4のいずれかに記載のパターンの形成方法。
【請求項6】
前記硬化工程において、前記切替部と前記切替部から50μm手前までの領域の両方を含む領域を冷却する、請求項5に記載のパターンの形成方法。
【請求項7】
前記硬化工程において、前記領域を20度以上25度以下に冷却する、請求項5または6に記載のパターンの形成方法。
【請求項8】
前記離型工程において、回転するモールドの回転数に基づいて前記加熱が行われる、請求項1~6のいずれかに記載のパターンの形成方法。
【請求項9】
前記離型工程において、前記モールド側から前記切替部に向かって加熱が行われる、請求項1~7のいずれかに記載のパターンの形成方法。
【請求項10】
前記離型工程において、前記UV照射と対向する方向から前記切替部に向かって加熱が行われる、請求項9に記載のパターンの形成方法。
【請求項11】
前記離型工程において、前記切替部を含む少なくとも50μmの領域を加熱する、請求項1~10のいずれかに記載のパターンの形成方法。
【請求項12】
前記離型工程において、前記切替部と前記切替部から50μm手前までの領域の両方を含む領域を加熱する、請求項11に記載のパターンの形成方法。
【請求項13】
前記硬化工程において、前記領域を35度以上40度以下に加熱する、請求項11または12に記載のパターンの形成方法。
【請求項14】
ロールと、
前記ロールの表面に配され、転写材料を充填するパターンを有するモールドと、
前記モールドに充填された前記転写材料をUV照射により被転写体上に硬化させる硬化装置と、
前記モールドのパターンサイズの小さい領域から平坦部あるいは前記パターンサイズの小さい領域からパターンサイズの大きい領域に切り替わる箇所における前記パターンサイズの小さい箇所の終端部である切替部、の下部に配され、温度を制御する温度制御装置と、
を備え
、
前記温度制御装置は、前記切替部が前記硬化装置によるUV照射範囲内に入ったタイミングにおいて、前記転写材料を冷却する、インプリント装置。
【請求項15】
前記温度制御装置は、前記ロール内部に配される、請求項14に記載のインプリント装置。
【請求項16】
前記温度制御装置は、前記ロールの回転数に基づいて温度を制御する、請求項14または15に記載のインプリント装置。
【請求項17】
前記温度制御装置は、前記切替部が前記硬化装置によるUV照射範囲内に入ったタイミングにおいて、前記切替部を20度以上25度以下に冷却する、請求項
14~16のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項18】
前記温度制御装置は、前記切替部がUV照射範囲を通過したタイミングにおいて、前記転写材料を加熱する、請求項
14~17のいずれかに記載のインプリント装置。
【請求項19】
前記温度制御装置は、前記切替部がUV照射範囲を通過したタイミングにおいて、前記切替部を35度以上40度以下に加熱する、請求項
18に記載のインプリント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インプリント技術を用いたパターンの形成方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(インプリント技術の背景,適用分野)
近年、ディスプレイ、照明などの商品に用いられる光学部品において、特殊光学特性を発揮するナノメートル(nm)オーダーからミクロン(μm)オーダーの微細なパターンを形成することで、光の反射、回折を制御した従来にない新機能を発現したデバイスを実現することが望まれている。また、システムLSIなどの半導体において、高集積化に伴った配線の微細化も望まれている。このような微細な構造を形成する方法としてはフォトリソグラフィー技術や電子線描画技術に加えて、近年ではインプリント技術が注目されている。
【0003】
インプリント技術とは、微細形状が予め表面に加工された型を、基材表面に塗布された樹脂に押し付けることで、微細構造を形成する方法である。
【0004】
インプリント方法としては、基板表面に塗布された熱可塑性樹脂をガラス転移温度以上に加熱したモールドを押し当てることにより形状を転写する熱インプリント法と、UV硬化樹脂を用いてモールドを押し当てた状態でUV光を照射することにより形状を転写するUVインプリント法が一般的である。熱インプリント法は、材料の選択性が広いという特徴があるが、形状を転写させる際にモールドを昇温および降温する必要があるため、スループットが低いという問題がある。一方、UVインプリント法は、紫外線で硬化する材料に限定されるため、熱インプリントと比較すると選択性が狭いものの、数秒~数十秒で硬化を完了させることが可能である為、スループットが非常に高い。熱インプリント法およびUVインプリント法のいずれを採用するかは、適用するデバイスにより異なるが、材料起因の問題がない場合には、UVインプリント法が量産工法として適していると考えられる。
【0005】
(UVインプリント法のインプリント方式)
次に、UVインプリント法によってパターンを形成するインプリント方式としては、平板式インプリント方式が一般的である。
【0006】
また、対象とする基材がPETなどのフィルムである場合には、表面に微細形状が形成されたモールド付きのロールを用いて、フィルムの送りと同時にフィルム上に微細構造を転写するロールトゥロール式インプリント方式もあり、さらなるスループットの向上が見込める。
【0007】
(平板式インプリント方式)
以下に、平板式インプリント方式によってパターンを形成する際の一般的な工程フローについて
図2を用いて説明する。
【0008】
図2は、一般的な平板式インプリント工程の概略模式図である。
【0009】
まずは、
図2の工程(a)に示すように、ステージ201上に、被加工基材204を準備し、ディスペンサやインクジェットなどを用いて転写材料203を塗布する。
【0010】
次に、
図2の工程(b)に示すように、転写すべきパターンを有するモールド202の凹凸パターンを被加工基材204上の転写材料203に接触させてロール205によって加圧する。さらに、
図2の工程(c)に示すように、モールド202を押し付けた状態でUV照射器206からをUVを照射し、光硬化樹脂を硬化させ、硬化した転写材料203とする。
【0011】
次に、
図2(d)に示すように、モールド202を、被加工基材204に対して、斜め上向きまたは垂直方向へ移動させることで、硬化した転写材料203から離型させる。離型後、被加工基材204上に転写材料203による転写パターンが形成される。
【0012】
(ロールトゥロールインプリント方式)
次に、以下に、ロールトゥロールインプリント方式によってパターンを形成する際の一般的な工法について
図3を用いて説明する。
【0013】
図3は、一般的なロールトゥロール式インプリント工法の概略模式図である。
【0014】
まず、連続的に走行するフィルム304上に、ダイ307から転写材料303を押し出し塗布する。次にフィルム304は表面に微細形状を有するモールド302が設置されたロール305と、ロール305に所定の加圧で押付けられた加圧ロール309の間を通通することで、モールド302の微細形状に転写材料303が充填される。次にモールド302に対しUV照射器306からUV光を照射させることで、転写材料303はモールド302の微細形状に充填された状態で硬化する。最後にフィルム304は離型ロール308とロール305の間を通過し、離型ロール308に沿って走行することで、モールド302から離型され、フィルム304上に微細形状が形成される。
【0015】
上記の方式は、フィルム基材の片側の面に微細形状を形成する方式である。もう一方の面にも同様に微細形状を形成する必要がある場合には、例えば、上記と同構成を2工程用意し、工程間でフィルムを反転させて製造する方法が考えられる。その際、フィルム基材の両面に形成される微細形状同士の相対位置精度が求められる。
【0016】
上記のような各インプリント方式において、
図2(d)や
図3に示すように、モールドを硬化した転写材料から離型させる際に、パターンサイズが小さい領域から平坦部あるいはパターンサイズが大きい領域に切り替わる箇所のパターンサイズが小さい領域の終端部において、
図4(a)および(b)に示すように、転写パターンの表面角部が欠けるパターン欠陥が生じ、転写精度が悪化する現象が起こる。このパターン欠陥は、モールドに、特にNiなどを始めとする金属モールドを用いた際に頻繁に発生する。
【0017】
その要因の一つとして、モールドのパターンサイズが小さい領域から平坦部あるいはパターンサイズが大きい領域に離型していく際に、その境界付近で離型速度が急激に速くなり、パターンサイズが小さい領域の終端部に急激に大きな離型抵抗がかかることによりパターン欠陥が発生することが知られている。
【0018】
上記課題を解決する為に、例えば、特許文献1に記載のパターン毎にUV光の露光量を調節する方法が知られている。特許文献1では、パターンサイズが小さく離型抵抗が高い領域に対して、平坦部あるいはパターンサイズが大きい領域で離型抵抗が小さい領域よりもUV露光量を小さくして転写材料の硬化度を下げることにより、パターンサイズが小さい領域が離型しやすくなり、その境界付近で離型速度が急激に速くなり、パターンサイズが小さい領域の終端部に急激に大きな離型抵抗がかかることを抑制することができる。その結果、パターンサイズが小さい領域の終端部にパターン欠陥が生じるのを抑制することができ、良好な転写精度を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
以上説明したように、従来のインプリント方法として、パターン毎にUV光の露光量を調節することにより、パターンサイズが小さい領域から平坦部あるいはパターンサイズが大きい領域に切り替わる箇所のパターンサイズが小さい領域の終端部にパターン欠陥が生じるのを抑制する方法が提案されている。この方法は、平板式インプリント方式のように、UV照射時にモールドが固定されている場合には、パターン領域毎にUV光の露光量を調節することが出来るため適用することができる。
【0021】
しかしながら、先行例に示す方法は、ロールトゥロールインプリント方式の場合には、UV光源がバー型であること、さらにはモールド付きロールが高速で回転しながら転写するため、パターン領域毎にUV光の露光量を変化させるのが困難である。
【0022】
本開示は上記従来の問題点に鑑み、良好な転写精度を得ることが可能なパターンの形成方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成する為に、本開示のパターンの形成方法は、転写材料を塗布されたモールドに被転写体を上から押圧し、前記被転写体と前記モールド間に転写材料を充填する充填工程と、前記充填された転写材料をUV照射により被転写体上に硬化させる硬化工程と、前記転写材料を硬化された前記被転写体を前記モールドから離型させる離型工程と、を有し、前記硬化工程において、前記モールドのパターンサイズの小さい領域から平坦部あるいは前記パターンサイズの小さい領域からパターンサイズの大きい領域に切り替わる箇所における前記パターンサイズの小さい箇所の終端部である切替部、を冷却し、前記離型工程において、前記切替部を加熱する。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本開示のパターンの形成方法および装置によれば、良好な転写精度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本実施の形態におけるインプリント工程の概略模式図
【
図2】一般的な平板式インプリント工程の概略模式図
【
図3】一般的なロールトゥロールインプリント工程の概略模式図
【
図4】(a)転写欠陥の上面SEM画像を示す顕微鏡写真(b)転写欠陥の断面SEM画像を示す顕微鏡写真
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施の形態)
以下、本実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1は、本実施の形態におけるパターンの形成方法を説明する概略模式図である。
【0028】
まず始めに、
図1-(a)を用いて、本実施の形態におけるロールトゥロール両面インプリントの装置構成を説明する。
【0029】
まず、片面にパターンを形成する為に、転写材料103をフィルム104上に供給する場所に第1コーティングロール101が設置されている。また、表面にパターンが形成された第1モールド102が取り付けられた第1ロール105と、それに接触するように第1加圧ロール109と第1離型ロール108が設置されている。
【0030】
次に、片面を形成した後に裏面にもパターンを形成するために、片面と同様に、転写材料103をフィルム104上に供給する場所に第2コーティングロール112が設置されている。また、表面にパターンが形成された第2モールド113が取り付けられた第2ロール114と、それに接触するように第2加圧ロール116と第2離型ロール115が設置されている。
【0031】
本ロール構成において、フィルム104は、第1コーティングロール101の図面上方を経て、第1加圧ロール109の図面上方から第1加圧ロール109に接触するように巻かれ、第1モールド102に接触し、図面下方で第1離型ロール108と接触する。その後、第2コーティングロール112の図面下方を経て、第2加圧ロール116と第2モールド113に接触するように巻かれ、最後に第2離型ロール115と接触するように巻かれており、各ロールの回転により図面の左方から右方へ送られる。
【0032】
第1コーティングロール101上には第1ダイ107が配置され、フィルム104上に転写材料103が塗布される。第2コーティングロール112上には第2ダイ117が配置され、フィルム104上に転写材料103が塗布される。また、第1加圧ロール109と第1モールド102の間をフィルム104が通過した後においては、第1ロール105下方に配置された第1UV照射器106よりUV光が照射され、転写材料103を硬化する。その後、第2コーティングロール112の下方に配置された第2ダイ117より、フィルム104上に転写材料103が塗布され、第2加圧ロール116と第2モールド113の間をフィルム104が通過した後においては、第2ロール114の上方に配置された第2UV照射器118よりUV光が照射され、転写材料103を硬化した後、第2離型ロール115からフィルム104が離型される。
【0033】
第1モールド102および第2モールド113は、それぞれ、パターン領域と平坦部を有する。パターン領域とは、モールド表面に凹凸形状を有する領域であり、凹凸の間隔が大きいほどパターンサイズは大きく、凹凸の間隔が小さいほどパターンサイズは小さい。平坦部とは、モールド表面に凹凸形状を有さない領域である。
【0034】
第1ロール105の内部には、第1温度制御部111が具備される。第2ロール114の内部には、第2温度制御部120が具備される。第1温度制御部111および第2温度制御部120は、それぞれ、例えば、加熱用のヒータおよびこれを制御する電力操作器や、冷却用に冷却水や冷却ガスを流すための冷却路およびこれを制御する流量操作器などである。
【0035】
第1温度制御部111は、第1モールド102上の切替部の下部に配置されることが好ましい。また、第2温度制御部120は、第2モールド113上の切替部の下部に配置されることが好ましい。ここで、切替部とは、モールドのパターンにおける、パターン領域と平坦部との切り替わり箇所のうちパターン領域の終端部、あるいはパターンサイズの小さい領域と大きい領域との切り替わり箇所のうちパターンサイズの小さい領域の終端部、のことを表す。
【0036】
第1ロール105および第2ロール114の内部には、ロールの回転数を検出し、その情報からUV照射および離型のタイミングを算出することにより、第1温度制御部111および第2温度制御部120にロールの温度制御の指示を出力する第1ロール制御部110および第2ロール制御部119が具備されている。
【0037】
第1ロール制御部110および第2ロール制御部119は、例えばCPUなどの演算機能を有する構成であり、予め設定されたロールの回転数をもとに、ロールの回転数を検出する。また、例えば、第1ロール制御部110および第2ロール制御部119は、ロールの回転を検出するセンサを含み、センサによって検出されたロールの回転に基づき、ロールの回転数を出力しても良い。また、例えば、第1ロール制御部110および第2ロール制御部119は、ロールに予め設置されたマーカーを検出するセンサを備え、マーカーの検出時間に基づき、ロールの回転数を出力しても良い。
【0038】
第1ロール制御部110および第2ロール制御部119は、第1温度制御部111および第2温度制御部120に、ロールの温度制御のタイミングを指示として出力する。また、第1ロール制御部110および第2ロール制御部119は、ロールの温度制御の温度を指示として出力しても良い。
【0039】
第1ロール制御部110および第2ロール制御部119は、前記第1モールド102および第2モールド113上の切替部がUV照射範囲内に到達したタイミングにおいて、前記第1モールド102および第2モールド113上の切替部の下部に配置された第1温度制御部111および第2温度制御部120に温度制御の指示を出力する。転写材料は、第1温度制御部111および第2温度制御部120を用いて温度制御される。したがって、ロール回転数に基づいて、UV照射時の転写材料の温度を制御することが出来る。このようにして、後述する転写材料の冷却が行われる。
【0040】
さらには、第1ロール制御部110および第2ロール制御部119は、前記第1モールド102および第2モールド113が回転し、前記第1モールド102および第2モールド113上の切替部がUV照射範囲を通過したタイミングにおいて、前記第1モールド102および第2モールド113上の切替部の下部に配置された第1温度制御部111および第2温度制御部120に温度制御の指示を出力する。転写材料は、第1温度制御部111および第2温度制御部120を用いて温度制御される。したがって、ロール回転数に基づいて、離型時の転写材料の温度を制御することが出来る。このようにして、後述する転写材料の加熱が行われる。
【0041】
ここで、前記第1モールド102および第2モールド113上の切替部において、UV照射時に温度制御する範囲は、パターンサイズが小さい領域の終端部から50μm~1000μm手前の領域が望ましい。
【0042】
温度制御する範囲が50μm以下になると、転写材料の硬化率を下げ、かつ弾性率を下げても、モールドとパターンサイズが小さい領域の接触面積が小さいため、十分に離型抵抗を下げることができないまま平坦部への応力付加が始まり、離型が開始する。その結果、パターンの境界付近で離型速度が急激に速くなり、パターン欠陥が生じる。
【0043】
また、温度制御する範囲が1000μm以上になると、離型時に加熱されたモールドを、
次のUV照射までに環境温度まで下げておくことが困難になる。その結果、転写材料の塗布膜厚のばらつきやモールド上パターンの熱収縮につながり、転写精度が悪化する。
【0044】
次に、
図1を用いて、本実施の形態におけるパターンの形成方法を説明する。
【0045】
まずは、
図1の工程(a)に示すように、第1UV照射器106のUV照射部と対向する第1モールド102上の領域が切替部でない場合、もしくは第2UV照射器118のUV照射部と対向する第2モールド113上の領域が切替部でない場合には、第1ロール105および第2ロール114の表面温度の制御は行わないで、インプリントを行う。
【0046】
転写材料103としては、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、アクリルアクリレート樹脂など、様々なUV硬化樹脂が挙げられるが、被転写体の形状や硬化させるのに必要なUV光量などに応じて適宜選択すると良い。
【0047】
また、第1モールド102および第2モールド113の材料は、型として必要な剛性や硬度等を有する材料であれば、特に限定されないが、特に金属材料の場合に本開示の効果が大きく得られる。金属材料は、転写材料との離型性が高い材料が望ましく、例えばNiである。
【0048】
さらに、第1モールド102および第2モールド113の微細パターンの表面には、転写材料に対する離型性を高める為に、前記微細パターンを覆うように離型層を形成しても良い。離型層は、前記微細パターンの上面にカップリング剤を結合して形成されている。カップリング剤を用いて離型層を形成することにより、単分子膜のような極めて薄い膜とすることができ、転写形状への影響が極めて少なくなる。
【0049】
上記カップリング剤としては、例えば、Ti、Li、Si、Na、K、Mg、Ca,St、Ba,Al、In、Ge、Bi,Fe、Cu、Y、Zr,Ta等を有する各種金属アルコキシドを用いることが出来るが、これらの中でも特にSiを有する金属アルコキシド、すなわちシランカップリング剤を用いることが望ましい。
【0050】
最後に、第1モールド102および第2モールド113の全面に転写材料103を塗布する方法としては、例えばディスペンス塗布、ロール塗布、グラビア塗布、スクリーン塗布など、様々な方法が挙げられるが、転写材料の性質や被転写体の形状に応じて適宜選択すると良い。
【0051】
次に、工程(b)に示すように、第1モールド102上の切替部が第1UV照射器106のUV照射部と対向する領域まで回転したタイミング、つまり、第1ロール105の回転数情報から算出されたUV照射のタイミングにおいて、第1ロール105の表面を20度以上25度以下に冷却することにより、第1モールド102のパターンサイズが小さい領域から平坦部あるいはパターンサイズが大きい領域に切り替わる箇所のパターンサイズが小さい領域の終端部を20度以上25度以下に冷却する。
【0052】
さらに、同様に、第2モールド113上の切替部が第2UV照射器118のUV照射部と対向する領域まで回転したタイミング、つまり、第2ロール114の回転数情報から算出されたUV照射のタイミングにおいて、第2ロール114の表面を20度以上25度以下に冷却することにより、第2モールド113上の切替部を20度以上25度以下に冷却する。
【0053】
上記のように、UV硬化時に切替部を冷却することにより、UV照射による加温による粘度低下を抑制することが出来る。つまり、転写材料103の重合プロセスが進みにくくなるため、二重結合反応率、つまり硬化率が徐々に低下していく。
【0054】
その結果、切替部の硬化率が低下し、弾性率が低くなるため、離型抵抗が低下し、パターンサイズが小さい領域から平坦部あるいはパターンサイズが大きい領域に切り替わる箇所でその境界付近で離型速度が急激に速くなり、パターンサイズが小さい領域の終端部に急激に大きな離型抵抗がかかるのを抑制し、パターン欠陥の発生を抑制することが可能になる。
【0055】
ここで、UV照射のタイミングにおいて、第1モールド102上および第2モールド113上の切替部の冷却温度は、20度よりも低くなると、硬化率が小さくなりすぎ、後工程および製品において必要な硬度を得ることが出来ない。また、25度よりも高くなると、硬化率を十分に下げることが出来ず、パターン欠陥が発生する。
【0056】
次に、工程(c)に示すように、第1モールド102上の切替部が第1離型ロール108の離型部まで回転したタイミング、つまり、第1ロール105の回転数情報から算出された離型のタイミングにおいて、第1モールド102上の切替部を35度以上45度以下に加熱する。
【0057】
さらに、同様に、第2モールド113上の切替部が第2離型ロール115の離型部まで回転したタイミング、つまり、第2ロール114の回転数情報から算出された離型のタイミングにおいて、第1モールド102上の切替部を35度以上45度以下に加熱する。
【0058】
ここで、UV照射のタイミングにおいて、第1モールド102上および第2モールド113上の切替部の加熱温度は、35度よりも低くなると、転写材料の弾性率を十分に下げることが出来ず、パターン欠陥が発生する。また、45度よりも高くなると、転写材料の熱膨張によりパターンの変形が起こりやすくなる。
【0059】
上記のように、離型時に切替部を加熱することにより、硬化後の転写材料103の弾性率が低下し、パターンサイズが小さい領域から平坦部あるいはパターンサイズが大きい領域に切り替わる箇所における離型抵抗の増加量が小さくなり、パターン欠陥の発生を抑制することが可能になる。
【0060】
さらに、ロールが回転し、工程(a)を経て、工程(b)にいたる迄に、工程(c)において加熱された35度以上45度以下に加熱された第1ロール105上の第1モールド102、および第2ロール114上の第2モールド113を、20度以上25度以下まで下げておくことが望ましい。それにより、転写材料の塗布膜厚やロール型上のパターンの膨張を抑制することができるため、転写精度を確保することが出来る。
【0061】
以上の工程を繰り返すことにより、ヒゲ不良のない欠陥のない転写精度の高いインプリントが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本開示は、パターンを高精度に形成することができ、被転写体にパターンを転写するインプリント方法およびインプリント装置等に有用である。
【符号の説明】
【0063】
101 第1コーティングロール
102 第1モールド
103、203、303 転写材料
104、304 フィルム
105 第1ロール
106 第1UV照射器
107 第1ダイ
108 第1離型ロール
109 第1加圧ロール
110 第1ロール制御部
111 第1温度制御部
112 第2コーティングロール
113 第2モールド
114 第2ロール
115 第2離型ロール
116 第2加圧ロール
117 第2ダイ
118 第2UV照射器
119 第2ロール制御部
120 第2温度制御部
201 ステージ
202、302 モールド
204 被加工基材
205、305 ロール
206、306 UV照射器
307 ダイ
308 離型ロール
309 加圧ロール