(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】位置決め装置および部品実装装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/02 20060101AFI20230317BHJP
【FI】
H05K13/02 D
(21)【出願番号】P 2019119494
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2022-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】石谷 泰行
(72)【発明者】
【氏名】山本 慎二
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-207844(JP,A)
【文献】特開2016-041622(JP,A)
【文献】特開平03-274711(JP,A)
【文献】特開2015-070258(JP,A)
【文献】特開2013-239679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を収納するトレイが載置されるパレットを備えるトレイフィーダにおいて、前記トレイを前記パレットの所定の箇所に位置決めする位置決め装置であって、
前記トレイと当接可能な当接部を有する本体部と、
前記本体部を磁力によって前記パレットに固定するマグネットと、
前記本体部によって変位可能に支持されるとともに、変位により前記本体部を前記パレットから離すレバー部とを備えた位置決め装置。
【請求項2】
前記本体部は、前記マグネットと一体である請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記レバー部は、前記本体部の少なくとも一端側に設けられる請求項1または2に記載の位置決め装置。
【請求項4】
前記レバー部は、前記本体部に対して揺動可能に支持されており、下方向または上方向に押圧される力が作用する力点と、前記パレットに当接する支点と、前記本体部を上方向に押す力を作用させる作用点とを有する請求項1~3のいずれかに記載の位置決め装置。
【請求項5】
部品を収納するトレイから前記部品をピックアップしてワークに実装する部品実装装置であって、
前記トレイが載置されるパレットと、
前記トレイを前記パレット上の所定の箇所に位置決めする位置決め装置を有し、
前記位置決め装置は、
前記トレイと当接可能な当接部を有する本体部と、
前記本体部を磁力によって前記パレットに固定するマグネットと、
前記本体部によって変位可能に支持されるとともに、変位により前記本体部を前記パレットから離すレバー部とを備えた部品実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品を収納するトレイが載置されるパレットを備えるトレイフィーダにおいて、トレイをパレットの所定の箇所に位置決めする位置決め装置およびこの位置決め装置を備えた部品実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板に部品を装着して実装基板を生産する部品実装装置の部品供給部として、トレイフィーダが知られている。トレイフィーダは、内蔵したマガジン内に複数のパレットを挿抜自在に収納しており、各パレットには部品が載置されたトレイが位置決め装置によって位置決めされている。位置決め装置は、パレットが磁性体材料から成る場合には、磁力を利用してパレットの上面に着脱できるようになっている(例えば、下記の特許文献1参照)。
【0003】
磁力を利用した構成の位置決め装置は通常、棒状に延びた形状の本体部の内部にマグネットを備えており、マグネットを本体部の底面側に露出させておくことによって、本体部をパレット上に固定できるようになっている。位置決め装置によってトレイをパレットに位置決めするときには、トレイの外側面をパレットの内側面に押し当てたうえで本体部をパレットの上面に取り付けつつ、本体部の側面をトレイの他の外側面に押し当てるようにする。これによりトレイはパレットの内側面と位置決め装置とによって挟み込まれた状態となり、パレット上に位置決めされる。一方、パレットに取り付けられた位置決め装置を取り外す場合には、位置決め装置を指でつまんで上方に引っ張り、パレットから引き離せばよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、位置決め装置は、トレイをパレット上に保持する部材でもあるため、比較的強力な磁力でパレットに固定される。従って作業者は、位置決め装置をパレットから取り外す際には、マグネットとパレットとの間の磁力に抗し得る強い力で位置決め装置をパレットから引っ張ることになる。しかしながら、強い力で位置決め装置を引っ張ると、位置決め装置がパレットから離れた瞬間に反動でパレットからトレイが飛び出すことがあり、トレイ内に部品が残っている場合にはそれらの部品がトレイから飛び出して飛散してしまうおそれがあるという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、トレイをパレットから取り外すときに、トレイがパレットから飛び出したり、トレイ内の部品が飛散したりしてしまう事態を防止できる位置決め装置およびこのような位置決め装置を備えた部品実装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の位置決め装置は、部品を収納するトレイが載置されるパレットを備えるトレイフィーダにおいて、前記トレイを前記パレットの所定の箇所に位置決めする位置決め装置であって、前記トレイと当接可能な当接部を有する本体部と、前記本体部を磁力によって前記パレットに固定するマグネットと、前記本体部によって変位可能に支持されるとともに、変位により前記本体部を前記パレットから離すレバー部とを備えた。
【0008】
本発明の部品実装装置は、部品を収納するトレイから前記部品をピックアップしてワークに実装する部品実装装置であって、前記トレイが載置されるパレットと、前記トレイを前記パレット上の所定の箇所に位置決めする位置決め装置を有し、前記位置決め装置は、前記トレイと当接可能な当接部を有する本体部と、前記本体部を磁力によって前記パレットに固定するマグネットと、前記本体部によって変位可能に支持されるとともに、変位により前記本体部を前記パレットから離すレバー部とを備えた。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トレイをパレットから取り外すときに、トレイがパレットから飛び出したり、トレイ内の部品が飛散したりしてしまう事態を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1における部品実装装置の要部側面図
【
図2】(a)(b)本発明の実施の形態1における部品実装装置が備えるトレイフィーダの斜視図
【
図3】(a)(b)本発明の実施の形態1における部品実装装置が備えるトレイフィーダが備えるマガジンをこれに収納されるパレットおよびトレイとともに示す斜視図
【
図4】(a)(b)本発明の実施の形態1における部品実装装置が備えるトレイフィーダの動作を説明する側面図
【
図5】(a)(b)本発明の実施の形態1における部品実装装置が備えるトレイフィーダの動作を説明する側面図
【
図6】本発明の実施の形態1における部品実装装置が備える位置決め装置の斜視図
【
図7】本発明の実施の形態1における部品実装装置が備える位置決め装置の一部の拡大側断面図
【
図8】(a)(b)本発明の実施の形態1における位置決め装置によりトレイをパレット上に位置決めする手順を示すパレットの斜視図
【
図9】本発明の実施の形態1における位置決め装置によりトレイをパレット上に位置決めした状態を示すパレットの斜視図
【
図10】(a)(b)本発明の実施の形態1における位置決め装置によりトレイをパレット上に位置決めした状態を示すパレットの側断面図
【
図11】(a)(b)(c)本発明の実施の形態1における位置決め装置をパレットから取り外す手順を示す図
【
図12】(a)(b)本発明の実施の形態1における位置決め装置がパレットから離れる様子を示す図
【
図13】本発明の実施の形態1の変形例における位置決め装置の斜視図
【
図14】(a)(b)本発明の実施の形態2における位置決め装置がパレットから離れる様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における部品実装装置1を示している。部品実装装置1はワークとしての基板KBに部品BHを実装することで実装基板を生産する装置である。ここでは説明の便宜上、基板KBの搬送方向(作業者OPから見た左右方向)をX軸方向とし、X軸方向と直交する水平方向(作業者OPから見た前後方向)をY軸方向とする。また、上下方向をZ軸方向とする。
【0012】
図1において、部品実装装置1は、基台11、基板搬送コンベア12、トレイフィーダ13、実装ヘッド14およびヘッド移動機構15を備えている。基板搬送コンベア12は基台11上をX軸方向に延びており、部品実装装置1の外部から送られてきた基板KBを受け取って搬送し、所定の作業位置に位置決めする。
【0013】
トレイフィーダ13は部品BHを供給する装置であり、
図1および
図2(a),(b)に示すように、基台11に連結される台車21と、台車21上に設けられたマガジン22およびパレット移動機構23を備えている。マガジン22内には複数のパレット収納部22Hが上下方向に並んで形成されており、これら複数のパレット収納部22Hのそれぞれには、パレット31が水平方向に挿抜自在に収納されている。各パレット31は少なくとも上面を含む部分が磁性体材料から構成されており、各パレット31の上面には樹脂等の非磁性体材料から構成されたトレイ32が載置されている。
【0014】
図3(a),(b)において、トレイ32内には複数の部品BHが整列状態に並べられている。トレイ32は、位置決め装置33によって、パレット31上の所定の箇所に位置決めされた状態で保持されている。位置決め装置33の構成については後述する。
【0015】
図1および
図2(a),(b)において、パレット移動機構23は、台車21から上方に延びて設けられた左右の垂直支柱41と、左右の垂直支柱41の間を上下方向に延びたボール螺子42を有している。ボール螺子42にはブロックナット43が螺合しており、ブロックナット43にはパレット支持テーブル44が結合されている。
【0016】
図1および
図2(b)において、台車21には、ボール螺子42を回転させる昇降モータ45が設けられている。昇降モータ45がボール螺子42を回転させると、ブロックナット43がボール螺子42上を上下移動し、これによりパレット支持テーブル44が台車21に対して昇降する(
図1および
図2(b)中に示す矢印A)。このため昇降モータ45の回転方向および回転数を制御することで、パレット支持テーブル44を所望の高さに位置させることができる。
【0017】
図2(b)において、パレット支持テーブル44の上面には、X軸方向に延びた係止ロッド46が設けられている。係止ロッド46はパレット支持テーブル44上でY軸方向に移動させることができる(
図2(b)中に示す矢印B)。
【0018】
トレイフィーダ13は、これから供給しようとしている部品BHを収納したトレイ32を部品供給位置13K(
図1)に供給する場合には、先ず、昇降モータ45を作動させてパレット支持テーブル44を昇降させ、供給しようとしている部品BHが収納されたトレイ32を保持しているパレット31の(パレット収納部22Hの)高さの位置にパレット支持テーブル44を位置させる。そして、係止ロッド46をパレット支持テーブル44の前方(作業者OPの側)に移動させ、係止ロッド46の両端部をパレット31の2つの係止部31aに係止させたうえで(
図3(a)→
図3(b))、係止ロッド46をY軸方向の後方(作業者OPから離れる側)に引き寄せる(
図4(a)。図中に示す矢印B1)。これによりパレット31がパレット支持テーブル44に載置される。パレット31がパレット支持テーブル44に載置されたら(
図4(a))、昇降モータ45を作動させ、パレット支持テーブル44を部品供給位置13Kの高さまで上昇させる(
図4(b)。図中に示す矢印A1)。
【0019】
部品実装装置1は、部品供給位置13Kに位置させたトレイ32をマガジン22内に戻す場合には、昇降モータ45を作動させてパレット支持テーブル44を下降させ(
図5(a)中に示す矢印A2)、パレット31がもともと収納されていたパレット収納部22Hの高さの位置に位置させる(
図5(a))。そして、係止ロッド46を前方に移動させることによって、パレット支持テーブル44上のパレット31をマガジン22側に押し出し(
図5(b)中に示す矢印B2)、そのパレット31をパレット収納部22Hに収納させる(
図5(b))。これにより部品供給位置13Kに位置させていたトレイ32(パレット31)がマガジン22内に戻された状態となる。
【0020】
図1において、実装ヘッド14は下方に延びた複数のノズル14Nを備えている。各ノズル14Nは実装ヘッド14に対して昇降およびZ軸まわりの回転動作が可能である。また、実装ヘッド14は、各ノズル14Nの下端に部品BHを吸着する真空吸引力を発生させることができる。
【0021】
図1において、ヘッド移動機構15は実装ヘッド14を水平面内方向に移動させ、トレイフィーダ13の上方領域と基板KBの上方領域との間で実装ヘッド14を往復させる(図中に示す矢印C)。この往復移動において、実装ヘッド14はトレイフィーダ13から部品BHを吸着してピックアップし、基板KB上の所定の位置にその部品BHを実装する。
【0022】
図1において、部品実装装置1は制御装置50を備えている。制御装置50は、基板搬送コンベア12による基板KBの搬送および位置決め動作を制御する。また制御装置50は、トレイフィーダ13による部品BHの供給動作を制御する。また制御装置50は、ヘッド移動機構15による実装ヘッド14の移動動作と、実装ヘッド14による部品BHの吸着動作を制御する。
【0023】
部品実装装置1が基板KBに部品BHを実装する場合には先ず、外部から送られてきた基板KBを基板搬送コンベア12により受け取って作業位置に位置決めする。基板KBを位置決めしたら、トレイフィーダ13が前述のように作動して、供給しようとする部品BHが収納されたトレイ32(パレット31)を部品供給位置13Kに位置させる。
【0024】
トレイフィーダ13が部品供給位置13Kにトレイ32(パレット31)を位置させたら、ヘッド移動機構15と実装ヘッド14が連動して動作することによって、ノズル14Nの下端に部品BHを吸着させる。そして、部品BHを吸着したノズル14Nが基板KBの上方に位置するように実装ヘッド14を移動させたうえで、ノズル14Nを下降させることによって、部品BHを基板KB上の目標実装部位に実装する。
【0025】
次に、パレット31上の所定の箇所にトレイ32を位置決めする位置決め装置33について説明する。
図6において、位置決め装置33は、本体部61、マグネット62およびレバー部63を備えている。本体部61は、一の方向(長手方向とする)に棒状に延びた形状を有しており、幅方向に対向して位置する2つの側面はそれぞれ、トレイ32の外側面と当接可能な当接部61Tとなっている。マグネット62は棒形状を有しており、本体部61内に設けられている。マグネット62は下面が本体部61の底面61M側に露出しており、パレット31との間の磁力によって本体部61をパレット31に固定する機能を有する。本体部61とレバー部63は非磁性体材料(例えば、アルミニウムや樹脂等)から構成されている。
【0026】
図6において、レバー部63は、本体部61の両端部のそれぞれに取り付けられている。
図7(
図6中に示す領域R1の拡大側面図)に示すように、各レバー部63の基端側端部63aは、本体部61の幅方向に延びて設けられ、本体部61に両端が支持された揺動軸64に取り付けられている。このためレバー部63の先端側端部(基端側端部63aとは反対側の端部)63bを上下方向に移動させると、レバー部63の全体が揺動軸64まわりに揺動する(
図7中に示す矢印M)。
【0027】
図7において、各レバー部63は、基準位置(図中、実線で示すレバー部63の位置)と揺動位置(図中、一点鎖線で示すレバー部63の位置)との間で揺動可能である。ここで、「基準位置」とは、レバー部63の下面63Mが本体部61の底面61Mを含む平面PLよりも上方に位置する位置であり、
図7中、実線で示すレバー部63の位置である。一方、「揺動位置」とは、レバー部63の下面63Mの一部の角部63c(この角部63cは揺動軸64よりも先端側端部63bの側に位置する)が本体部61の底面61Mよりも下方に突出する位置であり、
図7中、一点鎖線で示すレバー部63の位置である。
【0028】
位置決め装置33をパレット31の上面に取り付ける場合には、位置決め装置33の本体部61をその底面61Mが下側になるようにしてパレット31の上面に載置する。これにより位置決め装置33のマグネット62は磁性体材料から成るパレット31の上面と磁力で引き合い、本体部61はマグネット62によってパレット31上に固定された状態となる。このとき2つのレバー部63はともに基準位置に位置し、2つのレバー部63それぞれの角部63cはパレット31の上面よりも上方に位置する。
【0029】
このような構成の位置決め装置33によってトレイ32をパレット31に固定する場合には、先ず、トレイ32をパレット31の上面に載置する(
図8(a))。トレイ32をパレット31の上面に載置するときは、トレイ32の一つの隅部32Sを、パレット31の所定の一隅31Sに一致させるようにして、トレイ32の2つの外側面をパレット31の2つの内側面に押し当てる(
図8(b))。
【0030】
トレイ32の外側面をパレット31の内側面に押し当てたら、位置決め装置33をパレット31の上面に取り付ける(
図8(b))。このとき、本体部61の当接部61T(側面)をパレット31の内側面に押し当てられた外側面と反対側の外側面に押し当てるようにする(
図9および
図10(a),(b))。ここで、
図10(a)は
図9における矢視V-Vから見た断面図であり、
図10(b)は
図10(a)中に示す領域R2の拡大図である。
【0031】
上記のように、本体部61の当接部61Tをトレイ32の外側面に押し当てることで、トレイ32はパレット31の内側面と位置決め装置33との間に挟み込まれた状態となり、パレット31に対して位置決めされる(
図9)。なお、
図9では、2つの位置決め装置33を用いてトレイ32をパレット31に位置決めしているが、パレット31に対してトレイ32が確実に位置決めされ、かつしっかりと固定されるのであれば、1つの位置決め装置33によってトレイ32をパレット31に位置決めするようにしてもよい。
【0032】
パレット31に取り付けた位置決め装置33をパレット31から取り外す場合には、作業者OPは、位置決め装置33のレバー部63を指で下方に押圧する(
図11(a)→
図11(b)。
図11(b)中に矢印で示す押圧力FF)。これによりレバー部63は揺動軸64まわりに揺動(変位)して揺動位置に位置し(
図12(a)→
図12(b))、レバー部63の角部63cは本体部61の底面61Mよりも下方に移動する。
【0033】
上記のようにしてレバー部63が基準位置から揺動位置へ揺動するとき、レバー部63の角部63cはパレット31の上面に当接して支点PS、先端側端部63bは力点PF、基端側端部63aは作用点PWとなり、揺動軸64はレバー部63によって、パレット31の上方に持ち上げられる(
図11(b)および
図12(b)。これらの図中に矢印で示す持上げ力FW)。このように実施の形態1において、レバー部63は、本体部61に対して揺動可能に支持されており、下方向に押圧される力が作用する力点PFと、パレット31に当接する支点PSと、本体部61を上方向に押す力を作用させる作用点PWとを有するものとなっている。
【0034】
上記のように、揺動軸64がパレット31の上方に持ち上げられることによって、本体部61とパレット31の上面との間に隙間SPが形成される(
図12(b))。この隙間SPの高さ方向寸法LF(
図12(b)は僅かであるが、この隙間SPによって、パレット31とマグネット62との間の吸引力は大きく低下する。このため作業者OPは、位置決め装置33を指でつまんで引き上げることによって(
図11(c)中に示す矢印H)、位置決め装置33をトレイ32から容易に取り外すことができる。
【0035】
また、
図12(a)に示すように、支点PSから力点PFまでのアーム長さ(パレット31の上面に平行な方向の長さ)をL1、支点PSから作用点PWまでのアーム長さ(パレット31の上面に平行な方向の長さ)をL2とした場合、作用点PWに作用する持上げ力FWは、力点PFに作用する押圧力FFのL1/L2倍となる。このため、L2に対するL1の長さの設定の仕方によっては、極めて小さい押圧力FFで位置決め装置33の端部(作用点PW)を持ち上げることが可能となる。
【0036】
ここで、作業者OPは、パレット31上の位置決め装置33を取り外す際、本体部61の両端部に設けられた2つのレバー部63のうちのどちらを操作しても構わない。すなわち、本体部61の両端部に2つのレバー部63が設けられている場合には、作業者OPは状況に応じて操作し易い方のレバー部63を選択して操作することができる。しかし、レバー部63は、本体部61の少なくとも一端側に設けられていればよいので、
図13の変形例に示すように、本体部61の一端側にのみレバー部63が設けられているのであってもよい。この変形例では、レバー部63がひとつしかないので、作業者OPは操作するレバー部63を選ぶことはできないが、全体の構造を簡単なものとすることができるという利点がある。
【0037】
このように本実施の形態1における位置決め装置33は、トレイ32と当接可能な当接部61Tを有する本体部61と、本体部61を磁力によってパレット31に固定するマグネット62と、本体部61によって揺動(変位)可能に支持されるとともに、揺動により本体部61をパレット31から離すレバー部63とを備えた構成となっている。作業者OPがレバー部63を操作してレバー部63を揺動(変位)させると、本体部61の端部がパレット31から持ち上がり、これにより本体部61の底面61Mの全体がパレット31から離間するので、位置決め装置33がパレット31の上面から離れた瞬間にその反動でパレット31からトレイ32が飛び出してしまったり、トレイ32内に残っていた部品BHが周辺に飛散したりしてしまうことが防止される。
【0038】
(実施の形態2)
図14(a)は、本発明の実施の形態2における位置決め装置33Aの一部を断面図により示している。実施の形態2における位置決め装置33Aは、レバー部63の構成が実施の形態1のレバー部63と異なっているが、レバー部63以外の部分は実施の形態1における位置決め装置33と同じである。
【0039】
実施の形態2では、
図14(b)に示すように、レバー部63の先端側端部63bを引き上げることによって、本体部61の端部をパレット31の上面から引き離すことができる構成となっている。具体的には、作業者OPがレバー部63を指で引き上げると(
図14(a)→
図14(b)。
図14(b)中に示す押圧力FF)、レバー部63は揺動軸64まわりに揺動(変位)し、レバー部63の角部63c(この角部63cは揺動軸64に対して先端側端部63bとは反対の側に位置する)が、本体部61の底面61Mよりも下方に移動する。これにより角部63cはパレット31の上面に当接して支点PS、先端側端部63bは力点PF、基端側端部63aは作用点PWとなり、揺動軸64はレバー部63によって、パレット31の上方に持ち上げられる(
図14(b)。図中に矢印で示す持上げ力FW)。
【0040】
実施の形態2において、レバー部63は、本体部61に対して揺動可能に支持されており、上方向に押圧される力が作用する力点PFと、パレット31に当接する支点PSと、本体部61を上方向に押す力を作用させる作用点PWとを有するものとなっている。このように、レバー部63の力点PFに作用する押圧力FFは、下方向に押圧される力(実施の形態1)に限られず、上方向に押圧される力(実施の形態2)であっても構わない。
【0041】
実施の形態2においても、揺動軸64がパレット31の上方に持ち上げられることによって、本体部61とパレット31の上面との間に隙間SPが形成される(
図14(b))。そして、この隙間SPによって、パレット31とマグネット62との間の吸引力は大きく低下するので、作業者OPは、位置決め装置33Aを指でつまんで引き上げることによって、位置決め装置33Aをトレイ32から容易に取り外すことができる。
【0042】
以上説明したように、実施の形態1における位置決め装置33および実施の形態2における位置決め装置33Aは、トレイ32と当接可能な当接部61Tを有する本体部61と、本体部61を磁力によってパレット31に固定するマグネット62と、本体部61によって変位可能に支持されるとともに、変位により本体部61をパレット31から離すレバー部63とを備えており、トレイ32をパレット31から取り外すときには、位置決め装置33,33Aのレバー部63が変位するようにレバー部63を操作すればよく、これにより本体部61の一部(端部)がパレット31から引き離されて本体部61とパレット31との間に隙間SPが形成されるので、位置決め装置33をパレット31から離れたときの反動でパレット31からトレイ32が飛び出すようなことがなく、従ってトレイ32内に部品BHが残っていた場合であっても、そのトレイ32内の部品BHがトレイ32から飛び出すようなことがない。よって、実施の形態1における位置決め装置33および実施の形態2における位置決め装置33Aによれば、トレイ32をパレット31から取り外すときに、トレイ32がパレット31から飛び出したり、トレイ32内の部品BHが飛散したりしてしまう事態を防止することができる。
【0043】
これまで本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上述したものに限定されず、種々の変形等が可能である。例えば、上述の実施の形態では、本体部61はマグネット62とは別個の部材として構成されていたが、本体部61はマグネット62と一体であっても(マグネット62がそのまま本体部61となっていても)よい。また、本体部61やマグネット62およびレバー部63の形状等は上述したものに限定されず、種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
トレイをパレットから取り外すときに、トレイがパレットから飛び出したり、トレイ内の部品が飛散したりしてしまう事態を防止できる位置決め装置および部品実装装置を提供する。
【符号の説明】
【0045】
1 部品実装装置
13 トレイフィーダ
31 パレット
32 トレイ
33,33A 位置決め装置
61 本体部
61T 当接部
62 マグネット
63 レバー部
PF 力点
PS 支点
PW 作用点
BH 部品
KB 基板(ワーク)