(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】飲料供給装置
(51)【国際特許分類】
A47J 31/54 20060101AFI20230317BHJP
A47J 31/44 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
A47J31/54
A47J31/44 410
(21)【出願番号】P 2019022956
(22)【出願日】2019-02-12
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 直人
(72)【発明者】
【氏名】神 基
(72)【発明者】
【氏名】呉屋 弘二
(72)【発明者】
【氏名】古石 雅也
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-165814(JP,A)
【文献】特開平03-110307(JP,A)
【文献】特開2014-062693(JP,A)
【文献】特開2018-110697(JP,A)
【文献】特開2007-151723(JP,A)
【文献】特開平03-051661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/54
A47J 31/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯を貯留する湯タンクと、前記湯タンクからの湯を加熱して蒸気を生成するボイラとを備え、前記ボイラで生成された蒸気をミルカーに吐出し、空気とミルクを混合してフォームミルクを生成する飲料供給装置において、
前記湯タンクの供給される水を加熱するヒータと、
前記ボイラからの余剰の蒸気を前記湯タンクに戻す蒸気戻し経路に接続される蒸気戻し管とを備え、
前記蒸気戻し管の前記湯タンクの内部における下端開口は、前記湯タンクの下方に配置され、
前記蒸気戻し管の中途部であって前記湯タンクの上限水位より上方には、前記下端開口よりも径が小さい連通孔が形成されていることを特徴とする飲料供給
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料供給装置に係り、特に、ボイラからの蒸気を用いてミルクフォームを生成することのできる飲料供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、コーヒーやコーヒーにミルクフォームを添加することにより、カプチーノ等のコーヒー飲料を提供することのできる飲料供給装置が知られている。
このような飲料供給装置においては、コーヒー抽出機に供給する際に、例えば貫流式蒸気発生器(以下、単に「ボイラ」という)で生成された蒸気を用いてミルクをミルカーにおいて空気と混合し、泡立て、蒸気処理されたミルクの混合物、即ちミルクフォームをコーヒー抽出機に供給する装置がある。
【0003】
このような飲料供給装置としては、従来、湯タンクからボイラに湯を供給するための湯供給経路と、ボイラからミルカーに蒸気を吐出するための蒸気吐出経路と、ミルク保冷庫からミルカーにミルクを供給するためのミルク供給経路と、ミルカーに空気を供給するための空気供給経路と、蒸気吐出経路から分岐して湯タンクに至る蒸気戻し経路と、ボイラにて生成された蒸気をミルカーに吐出するか、蒸気戻し経路を経て湯タンクに戻すかを制御する三方弁を備えるようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術においては、飲料供給時に、ボイラで生成された蒸気をミルカーに吐出し、飲料供給終了時には、ボイラから出る蒸気を、蒸気戻し経路を経て湯タンクに戻すものであるが、湯タンクに戻した蒸気が充分冷えずに湯タンクの内部に充満してしまい、湯タンクの沸騰を検出する沸騰検出センサを誤動作させてしまうといった課題があった。
【0006】
本発明は、前記した点に鑑みてなされたものであり、ボイラから湯タンクに蒸気が戻された場合でも、沸騰検出センサの誤動作を確実に防止することができる飲料供給装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、湯を貯留する湯タンクと、前記湯タンクからの湯を加熱して蒸気を生成するボイラとを備え、前記ボイラで生成された蒸気をミルカーに吐出し、空気とミルクを混合してフォームミルクを生成する飲料供給装置において、前記湯タンクの供給される水を加熱するヒータと、前記ボイラからの余剰の蒸気を前記湯タンクに戻す蒸気戻し経路に接続される蒸気戻し管とを備え、前記蒸気戻し管の前記湯タンクの内部における下端開口は、前記湯タンクの下方に配置され、前記蒸気戻し管の中途部であって前記湯タンクの上限水位より上方には、前記下端開口よりも径が小さい連通孔が形成されていることを特徴とする。
これにより、蒸気戻し管の下端開口をヒータの最下部より下方に配置しているので、湯タンクの比較的温度の低い湯が貯留されている箇所に蒸気が放出され、その結果、蒸気を急激に冷却することができ、湯タンクの内部に蒸気が充満してしまうことを防止することができる。また、下端開口よりも径が小さい連通孔を形成することにより、蒸気戻し管を通じて湯タンクの水(湯)が逆流することを防止することができるので、ボイラ側に蒸気が送られてしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、湯タンクの比較的温度の低い湯が貯留されている箇所に蒸気が放出されるので、蒸気を急激に冷却することができ、湯タンクの内部に蒸気が充満してしまうことを防止することができ、その結果、沸騰検出センサによる誤動作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る飲料供給装置の実施形態を示す正面図。
【
図2】本実施形態の飲料供給装置の前面ドア、側面パネル、コーヒー豆キャニスタ等を取り外した状態の正面図。
【
図6】本実施形態の飲料供給装置の部分概略構成図。
【
図7】本実施形態の飲料供給装置に設けられたミルクフォーマーの概略構成図。
【
図9】
図9(a)は本実施形態図におけるボイラ温度と沸騰検出センサによる検出温度および周辺温度との関係を示すグラフ、
図9(b)は、従来の飲料供給装置によるボイラ温度と沸騰検出センサによる検出温度および周辺温度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、湯を貯留する湯タンクと、前記湯タンクからの湯を加熱して蒸気を生成するボイラとを備え、前記ボイラで生成された蒸気をミルカーに吐出し、空気とミルクを混合してフォームミルクを生成する飲料供給装置において、前記湯タンクの供給される水を加熱するヒータと、前記ボイラからの余剰の蒸気を前記湯タンクに戻す蒸気戻し経路に接続される蒸気戻し管とを備え、前記蒸気戻し管の前記湯タンクの内部における下端開口は、前記湯タンクの下方に配置されている。
これによれば、蒸気戻し管の下端開口を湯タンクの下方に配置しているので、湯タンクの比較的温度の低い湯が貯留されている箇所に蒸気が放出され、その結果、蒸気を急激に冷却することができ、湯タンクの内部に蒸気が充満してしまうことを防止することができ、沸騰検出センサによる誤動作を防止することができる。
【0011】
第2の発明は、前記蒸気戻し管の中途部であって前記湯タンクの上限水位より上方には、連通孔が形成されている。
これによれば、連通孔を形成することにより、蒸気戻し管を通じて湯タンクの水(湯)が逆流することを防止することができるので、ボイラ側に蒸気が送られてしまうことを防止することができる。
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の飲料供給装置1の正面図である。
図2は、飲料供給装置1の前面ドア8、側面パネル、コーヒー豆キャニスタ70等を取り外した状態の斜視図である。
図3は、
図2の平面図である。
図4は、
図2の左側面図である。
図5は、
図2の右側面図である。
図6は、飲料供給装置1の部分概略構成図である。
【0013】
本実施形態の飲料供給装置1は、本体を備えており、本体の前面には、コーヒー液を排出する抽出ノズル2と、ミルクフォームやスチームミルク(ホットミルク)、コールドミルクを排出するミルクノズル3と、飲料原料となるココアパウダー等の粉末原料と湯を混合撹拌することにより得られる飲料を排出する飲料ノズル4とを備えたノズルユニット5および図示しない湯ノズルとが設けられている。
そして、これらノズルユニット5と、飲料ノズル4の下方には、抽出されたコーヒー液やその他の飲料を受容するカップを載置するカップ支持台7が設けられている。
【0014】
本体6の前面には、一側に回動自在に枢支されたドア8が開閉可能に設けられている。このドア8の前面には、飲料供給装置1において提供可能な飲料の種類を選択する複数の飲料選択ボタン9が設けられている。
本実施の形態の飲料供給装置1は、本体6内に、湯タンク11と、湯タンク11の底部近傍に取り付けられた湯ポンプ(ギヤポンプ)12と、コーヒー抽出機30と、ミルクフォーマー60とを備えている。
【0015】
また、本実施の形態では、挽き豆からコーヒー液を抽出することにより得られるコーヒー飲料のみならず、飲料原料となる粉末原料と湯を混合撹拌することにより得られる飲料も提供可能である。そのため、
図1に示すように、本体6上部には、粉末原料を貯蔵する粉原料貯蔵容器17がコーヒー豆キャニスタ70、70と並設される。
図2に示すように、本体には、粉原料貯蔵容器17から排出された所定量の粉末原料と所定量の湯とを混合撹拌して飲料を生成する粉飲料生成部18が設けられている。
【0016】
湯タンク11は、数リットルの飲料水を貯水可能とする大気開放型のタンクである。また、湯タンク11の底部近傍(本実施の形態では、湯タンク11下部前方)に設けられた湯ポンプ12は、湯タンク11内の湯を加圧して排出するポンプであり、この湯ポンプ12の排出口には、
図6に示すようにフィルタ13と、流量計14と、給湯弁(電磁弁)15とが順次介設された給湯配管16が接続されており、この給湯配管16の他端は、コーヒー抽出機30を構成するシリンダ33の給湯口に接続されている。
なお、湯タンクの詳細については、後述する。
【0017】
給湯配管16には、給湯弁15とコーヒー抽出機30との間に位置して当該給湯配管16から分岐する排水管19が接続されている。この排水管19には、コーヒー抽出機30や後述するコーヒー液配管39内の残液等を外部に排出を制御するための排水弁(電磁弁)20が設けられている。
【0018】
また、
図2に示すように、本体の下方には、コーヒー液の抽出に使用された残滓を受容するとともに、ドア8を開放した状態で、前方に引出自在に設けられる滓受け部材を収容するように形成された滓受け部材収容部21が設けられている。
本体6の上部には、本体6内に位置してコーヒー抽出機30の上方に配設されたミル71が設けられ、このミル71の上方に前記コーヒー豆キャニスタ70が着脱自在に取り付けられる。ミル71はコーヒー豆キャニスタ70から落下するコーヒー豆を粉砕刃により粉砕して挽き豆とするものである。また、湯タンク11の上方には本体6内の廃熱を排出するための排気ファン25が設けられている。
【0019】
コーヒー抽出機30は、ミル71から供給される挽き豆を湯に通すことにより抽出されるコーヒー液をフィルタでろ過するものである。このコーヒー抽出機30は、昇降装置32により移動可能に設けられたシリンダユニット31と、このシリンダユニット31の上方に設けられたキャップ35とを備えている。シリンダユニット31は、上面が開口したシリンダ33と、このシリンダ33内に上下に移動可能に設けられた通水性のピストン34とから構成されている(
図6)。
【0020】
シリンダ33の底部側面には、給湯配管16が挿脱可能に接続される。また、シリンダ33内にキャップ35が填め込まれた状態で、キャップ35の下面、シリンダ33の内壁およびピストン34の上面に囲まれた空間内にコーヒー液の抽出室が形成される。
キャップ35の下面には、抽出室内で抽出されたコーヒー液の抽出口50が形成されており、抽出口50は、キャップ35の下面に設けられた図示しないメッシュフィルタに囲まれている。また、この抽出口50は、キャップ35内を上下に貫通して形成される図示しない抽出路と連通して形成されており、抽出路の上端部に設けられたコーヒー液取出部には、コーヒー液配管39が接続されている。このコーヒー液配管39には、抽出弁(電磁弁)52が介設されているとともに、その端部には、抽出ノズル2が接続されている。
【0021】
シリンダユニット31が所定の待機位置とされた状態で、飲料選択ボタン9が操作されると、ミル71が所定時間回転駆動され、コーヒー豆キャニスタ70内に収容されたコーヒー豆は順次粉砕されて挽き豆とされ、所定量の挽き豆がシリンダ33の抽出室内に投入される。
次に、昇降装置32が上昇し、これによりシリンダユニット31も上昇していき、シリンダ33の上面開口内にキャップ35の下端が押し込まれていく。抽出室内に投入された挽き豆(コーヒー原料粉末)は、内底部に位置するピストン34と、キャップ35により挟まれて閉じこめられ、圧縮される。
【0022】
続いて、湯ポンプ12が運転され、且つ、給湯弁15が開いて、湯タンク11から湯がシリンダ33内に加圧供給される。この湯の供給量は、流量計14で検出し、所定量に達した時点で湯ポンプ12が停止され、給湯弁15も閉じられる。このとき、抽出弁52も通電開放される。なお、この抽出弁52は、いわゆる抵抗弁として作用するものであるため、抽出弁52が通電開放されていなくても流路は確保されている。
【0023】
これにより、湯が抽出室内を通過する過程で加圧されて、挽き豆からのコーヒー成分の溶出が促進され、更に湯が加圧供給されることで、挽き豆の組織内に湯が浸透し、濃いコーヒー液、即ちエスプレッソコーヒーが得られる。このコーヒー液は、キャップ35の下面に形成された抽出口50から当該キャップ35内を通過し、抽出弁52が開放されたコーヒー液配管39を介して抽出ノズル2から排出(販売)される。カップ支持台7上に、抽出ノズル2の下方に対応してカップ等を載置することで、コーヒー液がカップ内に抽出される。
【0024】
次に、
図7を参照してミルクフォーマー60の構成について説明する。
図7はミルクフォーマー60の概略構成図である。
本実施の形態のミルクフォーマー60は、前記湯タンク11から湯を取り出す湯供給経路(配管)61と、この湯供給経路61に介設された湯供給制御手段としての電磁ポンプ72と、湯供給経路61が入口に接続された蒸気発生手段となる貫流式のボイラ73と、ミルカー62等から構成される。ボイラ73の出口には蒸気吐出経路(配管)74が接続され、この蒸気吐出経路74はミルカー62に接続されている。
【0025】
ボイラ73は、電気ヒータを内蔵しており、湯タンク11から電磁ポンプ72の運転により湯供給経路61を経て供給された湯を、例えば約+170℃に加熱して蒸気を生成し、この蒸気を蒸気吐出経路74により、三方弁76(後述)を介してミルカー62へ吐出するものである。蒸気吐出経路74には蒸気流路制御手段としての三方弁(三方電磁弁)76が取り付けられており、三方弁76のコモン入口と常閉出口が蒸気吐出経路74に介設されている。三方弁76の常開出口には蒸気戻し経路(配管)77が蒸気吐出経路74から分岐するかたちで接続されている。そして、この蒸気戻し経路77は湯タンク11に至り、内部に連通して接続されている。
【0026】
三方弁76は通電された状態において、ボイラ73で生成された蒸気をミルカー62に吐出する。また、非通電状態ではボイラ73から出る蒸気を、蒸気戻し経路77を経て湯タンク11に戻すものである。
【0027】
前記ミルカー62は、略円筒状の本体63により構成されており、この本体63の側面には、中心よりも左右どちらか一方に変位すると共に、当該本体63の内部に突出した吐出部64が一体に形成され、本体63の底面には、本体63内にて生成されたミルクフォーム、又は、供給されたスチームミルク、若しくは、コールドミルクを排出(販売)する前記ミルクノズル3が一体に形成されている。
【0028】
吐出部64は、左右に開口した略円筒状を呈しており、本体63側とは反対側の端部64Aには、三方弁76の下流側に位置する蒸気吐出経路74の端部が接続される。吐出部64の下面には、吐出部64内部に連通したミルク流入口67が形成されていると共に、吐出部64の上面には、同じく吐出部64内部に連通した空気吸引口68が形成されている。
【0029】
このミルカー62のミルク流入口67には、一端がミルク保冷庫69に収納されたミルクパック78内に挿入されるミルク供給経路(チューブ)79が接続される。このミルク供給経路79には、ミルク供給制御手段としてのチューブポンプ81が取り付けられている。このチューブポンプ81は正逆回転可能および/または回転数可変可能なポンプであり、正回転されてミルクパック78内のミルクをミルカー62のミルカー流入口67に送給する。また、逆回転されてミルク供給経路79内の残留ミルクをミルクパック78に戻すものである。尚、前記ミルク保冷庫69は図示しない冷却機(ペルチェ素子等)により所定温度にミルクパック78を保冷するものである。
【0030】
また、ミルカー62の空気吸引口68には、空気供給経路82が接続されると共に、この空気供給経路82の他端には、空気供給制御手段としてのエア弁83の出口が接続されている。このエア弁83は、その入口側が空気入口84として大気に連通されている。エア弁83は通電状態で空気入口84を通して大気へ開放し、非通電状態では大気を封止しているものである。
【0031】
次に、湯タンクの詳細について説明する。
図8は、湯タンクの概略を示す構成図である。
図8に示すように、湯タンク11には、貯留された水を例えば+97℃に加熱保温するヒータ40が設けられている。ヒータ40は、略L字状に形成されており、ヒータ40の下端部は湯タンク11の底面から所定間隔をもって配置されている。
ヒータ40は、湯タンク11内に貯留された水を加熱して湯とするものであり、ヒータ40は、L字状の略水平方向に延在する部分が湯タンク11の底面に対して所定間隔を有するように配置されている。
【0032】
湯タンク11には、三方弁76からの蒸気戻し経路77に接続される蒸気戻し管41が設けられている。蒸気戻し管41は、その下端開口42が湯タンク11の下方に位置するよう配置されることが好ましい。湯タンク11はその上部側から水道水などの比較的冷たい水が供給され、後述する給水パイプ48を通って湯タンク11の下から水が流入するため、湯タンク11の下方は温度が低い状態になっているからである。
三方弁76から蒸気戻し経路(配管)77を経由し、蒸気戻し管41によって湯タンクへ戻る蒸気は、後述するとおり、一気に冷却されることが好ましく、なるべく温度の低い領域に蒸気戻し管41の下端開口42が配置されることが好ましい。
本実施の形態においては、蒸気戻し管41の下端開口42を湯タンク11の下方であって、更にヒータ40の最下部より下方に位置するように配置されている。また、
図8に示すように、給水パイプ48の出口付近に蒸気戻し管41の下端開口42を配置させてもよく、効果的に戻された蒸気を冷却することが可能である。
蒸気戻し管41の湯タンク11の上限水位より上方位置には、連通孔43が形成されている。
【0033】
湯タンク11の上部には、湯タンク11内の水位に連動して上下動するフロート44が設けられている。フロート44の上部には、支持棒45が取り付けられている。湯タンク11の上方には、フロート44に対応して支持棒45が接触するフロートスイッチ46が設けられている。
フロートスイッチ46は、湯タンク11の上限水位におけるフロート44の位置に対応した上限水位スイッチ46a、湯タンク11の下限水位におけるフロート44の位置に対応した下限水位スイッチ46bと、を備えている。
【0034】
湯タンク11には、湯タンク11の内部に水を供給する水配管47が設けられている。水配管47には、例えば、水道に接続されている。水配管47は、必要に応じて所定量の水を湯タンク11の内部に供給するものである。
水配管47から供給される水は、湯タンク11側の先端部の延長に位置する給水パイプ48内に流入する。また、給水パイプ48の出口側は湯タンク11の下方に配置され、湯タンク11内の湯量が減少して水配管47から供給されると、給水パイプ48を通じて湯タンク11に入り込む水は、湯タンク11の下方から流れ込むことになる。
給水部のタンク側端部と、給水パイプ48の入口側端部とは、水の逆流防止のために所定間隔(例えば、オーバーフロー配管55との間に必要な値である25mm以上の間隔)を有するように配置されるとともに、給水パイプ48の入口端は湯タンク11の上限水位より高い位置に位置するように配置されている。
【0035】
湯タンク11の上方には、オーバーフロー配管55が接続されている。オーバーフロー配管55は、湯タンク11内に貯留された湯が何らかの原因で上限水位を超えた場合、余剰分の湯を排出させるとともに、湯タンク11内の湯が沸騰した場合、湯から発生した蒸気を排出させるものである。
オーバーフロー配管55の中途部には、沸騰検出センサ56が設けられている。沸騰検出センサ56は、オーバーフロー配管55から排出される蒸気を検出することにより、湯タンク11の湯が沸騰しているか否かを判断するものである。
湯タンク11の上部には、湯タンク11の湯をボイラ73に送るための湯供給経路(配管)61が接続されている。
【0036】
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態においては、フォームミルクを生成する場合、ミルクパック78からチューブポンプ81を介してミルクをミルクフォーマー60に送るとともに、湯タンク11から電磁ポンプを介してボイラ73に湯を供給して、ボイラ73にて蒸気とした後ミルクフォーマー60に送られ、これにより、ミルクと蒸気とを混合してフォームミルクが生成される。
そして、フォームミルクの生成が終了した後もボイラ73にて生成され続けている蒸気は、蒸気戻し経路77を経由して湯タンク11内に戻される。
【0037】
湯タンク11に蒸気戻し管41を介して戻された蒸気は、蒸気戻し管41の下端開口42から湯タンク11の内部に放出される。
この場合に、湯タンク11の湯量が減少して水配管47から湯タンク11へ低い温度の水が供給されたばかりのときは、湯タンク11の下方は上方よりも水温が低い状態にある。また、湯タンク11の湯がヒータ40により温められる際に、湯タンク11の湯は、ヒータ40より上方の水温が高くなり、ヒータ40より下方の水温は低くなる。この場合において、本実施の形態では、蒸気戻し管41の下端開口42をヒータ40の最下部より下方に配置しているので、湯タンク11の比較的温度の低い湯が貯留されている箇所に蒸気が放出されることになる。
そのため、蒸気は急激に冷却され、湯タンク11の内部に蒸気が充満してしまうことを防止することができる。
【0038】
なお、蒸気戻し管41から送られる蒸気は、連通孔43を通過する際に、連通孔43からわずかに湯タンク11の内部に放出されるが、連通孔43は、下端開口42に比較して極めて小さい径に形成されているため、湯タンク11の内部に蒸気が充満してしまうことはない。
ここで、連通孔43を形成しない場合、湯タンク11に戻された水蒸気が一気に冷却されることにより、蒸気戻し管41の内部の圧力が急激に低下するため、蒸気戻し管41が湯タンク11の水(湯)を吸い上げてしまい、吸い上げた水(湯)が蒸気戻し経路77、三方弁76を経由してボイラ73に逆流してしまう不都合が生じる。
そこで、蒸気戻し管41の湯タンク11の上限水位より上方位置に連通孔43を形成さすることにより、圧力の不均衡が生じることを防いで湯タンク11の水がボイラ73側に逆流することを防止している。
【0039】
図9はボイラ温度と沸騰検出センサ56による検出温度および周辺温度との関係を示すグラフである。
図9(a)は本実施形態の飲料供給装置による測定結果を示したものであり、
図9(b)は、蒸気を湯タンク11上部に放出する従来の飲料供給装置による測定結果を示したものであり、説明の便宜上、特に
図9(a)のスチームボイラ温度の左側で脈動している部分を時系列的に拡大した図である。
図9(b)に示すように、従来の飲料供給装置においては、飲料を提供(販売)するために、湯タンク11から湯が供給されボイラ73が動作されると、ボイラ73の温度がわずかに低下される。この飲料の供給が行われる毎に、蒸気戻し系統により蒸気が湯タンク11に戻されると、湯タンク11の内部に蒸気が充満してしまい、余分な蒸気が湯タンク11からオーバーフロー配管55を介して外部に排出される。このように蒸気がオーバーフロー配管55から排出されると、沸騰検出センサ56による検出温度が任意の閾値である沸騰検出温度よりも上昇してしまい、湯タンク11の湯が沸騰していると判断する誤動作が生じてしまう。
【0040】
これに対して、本実施形態の飲料供給装置においては、
図9(a)に示すように、飲料を提供(販売)するために、ボイラ73からの蒸気が蒸気戻し系統および蒸気戻し管41により湯タンク11に戻された場合でも、蒸気温度センサによる検出温度が上昇してしまうことがない。これは、前述のように、湯タンク11の比較的温度の低い湯の領域に蒸気が排出されるので、湯タンク11の内部に蒸気が充満してしまうことがなく、沸騰検出温度を超えて誤作動を起こすことが無いことを示している。
【0041】
以上述べたように、本実施の形態においては、湯タンク11の供給される水を加熱するヒータ40と、ボイラ73からの余剰の蒸気を湯タンク11に戻す蒸気戻し経路に接続される蒸気戻し管41とを備え、蒸気戻し管41の湯タンク11の内部における下端開口42は、湯タンク11の下方に位置しており、特に、ヒータ40の最下部より下方に配置されている。
これにより、蒸気戻し管41の下端開口42を湯タンク11の内部でも比較的温度の低い下方であって、ヒータ40の最下部より下方に配置しているので、湯タンク11の比較的温度の低い湯が貯留されている箇所に蒸気が放出され、その結果、蒸気を急激に冷却することができ、湯タンク11の内部に蒸気が充満してしまうことを防止することができ、沸騰検出センサ56による誤動作を防止することができる。
【0042】
また、本実施の形態においては、蒸気戻し管41の中途部であって湯タンク11の上限水位より上方には、連通孔43が形成されている。
これにより、連通孔43を形成することにより、蒸気戻し管41を湯タンク11の水(湯)が逆流することを防止できるので、ボイラ73側に湯タンク11の水(湯)が送られてしまうことを防止することができる。
【0043】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明に係る飲料供給装置は、湯タンクの内部にボイラからの蒸気が充満してしまうことがなく、沸騰検出センサによる誤動作を防止することできる飲料供給装置として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 飲料供給装置
11 湯タンク
12 湯ポンプ
13 フィルタ
40 ヒータ
41 蒸気戻し管
42 下端開口
43 連通孔
44 フロート
45 支持棒
46 フロートスイッチ
46a 上限水位スイッチ
46b 下限水位スイッチ
47 水配管
48 給水パイプ
55 オーバーフロー配管
56 沸騰検出センサ
60 ミルクフォーマー
61 湯供給経路
73 ボイラ
77 蒸気戻し経路