(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】通信装置および通信システム
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20230317BHJP
【FI】
H04L12/28 200Z
H04L12/28 400
(21)【出願番号】P 2019132897
(22)【出願日】2019-07-18
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 嘉一
【審査官】宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-275165(JP,A)
【文献】特開2019-083450(JP,A)
【文献】特開2014-072673(JP,A)
【文献】特表2020-532184(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0249312(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0030576(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00-13/18,41/00-49/9057,61/00-65/80,69/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタ装置として車両に搭載され、DSI(Distributed System Interface)プロトコルに基づいて前記車両に搭載された複数のスレーブ装置と通信する通信装置であって、
車載制御装置との通信に用いられるスレーブポートと、
前記複数のスレーブ装置のそれぞれに対応する複数のチャンネルを用いて通信し、前記複数のチャンネルそれぞれに設けられる複数のマスタポートと、
前記複数のマスタポートのそれぞれに対応して別々に設けられた複数のバッファメモリと、
前記車載制御装置から受け取った前記複数のスレーブ装置のそれぞれに宛てられたコマンドを前記複数のバッファメモリのそれぞれに振り分けて格納し、前記車載制御装置から前記コマンドの送信を指示するトリガを受け取ったときに、前記複数のバッファメモリから前記コマンドを読み出し、該コマンドを前記複数のマスタポートのそれぞれから同時に送信する制御部と、を有
し、
前記制御部は、
予め前記車載制御装置からチャンネルの指定を受け付けた場合、前記トリガを受け取ったときに、指定されたチャンネルに対応する前記バッファメモリから前記コマンドを読み出し、該コマンドを該バッファメモリに対応する前記マスタポートから送信する、
通信装置。
【請求項2】
前記複数のマスタポートのそれぞれに対し、前記スレーブ装置がデイジーチェーン接続により複数個接続される、
請求項
1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記複数のマスタポートのそれぞれに対し、前記スレーブ装置がパラレルバス接続により複数個接続される、
請求項
1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記スレーブ装置は、前記車両の周辺をセンシングする超音波ソナーセンサである、
請求項1
または2に記載の通信装置。
【請求項5】
マスタ装置として用いられる請求項1から
3のいずれか1項に記載の通信装置と、
前記通信装置と通信を行う複数のスレーブ装置と、
前記通信装置と通信を行う車載制御装置と、を有する、
通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信装置および通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マスタ装置とスレーブ装置との間において、異なる2つの通信方法を相互に切り替えて通信を行う通信システムが知られている。
【0003】
例えば非特許文献1には、DSI(Distributed System Interface)3プロトコルを用いた通信システムが開示されている。このDSI3プロトコルでは、CRM(Command and Response Mode)通信とPDCM(Periodic Data Collection Mode)通信との2つの通信方法が規定されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】DSI3 Bus Standard Revision 1.00 February 16,2011
【文献】NXP Semiconductor MC33SA0528 Datasheet Rev.3.0, 7/2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の通信システムでは、複数のスレーブ装置を同期させる点に改善の余地があった。
【0006】
本開示の一態様の目的は、複数のスレーブ装置間の同期を実現することができる通信装置および通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る通信装置は、マスタ装置として車両に搭載され、DSI(Distributed System Interface)プロトコルに基づいて前記車両に搭載された複数のスレーブ装置と通信する通信装置であって、車載制御装置との通信に用いられるスレーブポートと、前記複数のスレーブ装置のそれぞれに対応する複数のチャンネルを用いて通信し、前記複数のチャンネルそれぞれに設けられる複数のマスタポートと、前記複数のマスタポートのそれぞれに対応して別々に設けられた複数のバッファメモリと、前記車載制御装置から受け取った前記複数のスレーブ装置のそれぞれに宛てられたコマンドを前記複数のバッファメモリのそれぞれに振り分けて格納し、前記車載制御装置から前記コマンドの送信を指示するトリガを受け取ったときに、前記複数のバッファメモリから前記コマンドを読み出し、該コマンドを前記複数のマスタポートのそれぞれから同時に送信する制御部と、を有する。
【0008】
本開示の一態様に係る通信システムは、マスタ装置として用いられる本開示の一態様に係る通信装置と、前記通信装置と通信を行う複数のスレーブ装置と、前記通信装置と通信を行う車載制御装置と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、複数のスレーブ装置間の同期制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本開示の実施の形態に係る通信システムおよびマスタ装置の構成の一例を示すブロック図
【
図1B】本開示の実施の形態に係る車両の一例を示す模式図
【
図2】本開示の実施の形態に係るマスタ装置の動作例1の説明に供する模式図
【
図3】本開示の実施の形態に係るマスタ装置の動作例2の説明に供する模式図
【
図4】本開示の変形例2に係るスレーブ装置の接続例を示す模式図
【
図5】本開示の変形例2に係るスレーブ装置の接続例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本開示に至った知見>
まず、本開示に至った知見について説明する。
【0012】
ここでは例として、車両に搭載されるソナーシステムを例に挙げて説明する。このソナーシステムは、例えば、複数の超音波ソナーセンサ(スレーブ装置の一例)と、それらと通信を行うマスタ装置とを含む。
【0013】
超音波ソナーセンサは、音波を送波した後、物体からの反射波を受信し、音波の送波を開始した時刻から反射波を受信した時刻までの時間に基づいて、超音波ソナーセンサと物体との間の距離を推定する。
【0014】
ここで、1つの超音波ソナーセンサから送波された音波は、その超音波ソナーセンサだけでなく、音波の送信を行っていない超音波ソナーセンサでも受信される。そのため、複数の超音波ソナーセンサが同期して制御されていない場合では、各超音波ソナーセンサにおいて認識される音波の送波開始時刻に差異が生じ、反射波を受信した時刻までの時間に測定バラツキが発生する。その結果、正確な距離の推定を実現することができないという問題が生じる。
【0015】
本開示は、複数の超音波ソナーセンサの同期制御を実現することを目的とする。
【0016】
以上、本開示に至った知見について説明した。
【0017】
<本開示の実施の形態>
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通する構成要素については同一の符号を付し、それらの説明は適宜省略する。
【0018】
[構成]
まず、
図1Aを用いて、本実施の形態に係る通信システム100およびマスタ装置1の構成について説明する。
図1Aは、本実施の形態の通信システム100およびマスタ装置1の構成の一例を示すブロック図である。
【0019】
図1Aに示す通信システム100は、例えば、マスタ装置1とスレーブ装置3a,3bの間の通信手段として、DSI3プロトコルを用いた通信システムである。上述したとおり、DSI3プロトコルでは、CRM通信とPDCM通信の2つの通信方式が規定されている。よって、通信システム100では、CRM通信とPDCM通信との切り替えが行われる。
【0020】
CRM通信は、マスタ装置1とスレーブ装置3a、3bとの間で双方向の通信を行うことが可能である(但し、マスタ装置1からスレーブ装置3a、3bへの一方通行の通信も可能)。これに対し、PDCM通信は、スレーブ装置3a、3bがマスタ装置1からBRC(Broadcast Read Command)トリガを受けた場合にスレーブ装置3a、3bからマスタ装置1への一方通行の通信を行うことを特徴としている。なお、PDCM通信は、CRM通信に比べて、ハイレートのデータ通信が可能である。
【0021】
図1Aに示すように、通信システム100は、マスタ装置1、ECU(Electronic Control Unit)2、スレーブ装置3a、3bを有する。
【0022】
本実施の形態では、
図1Bに示すように、通信システム100が車両Vに搭載されるソナーシステムである場合を例に挙げて説明する。例えば、スレーブ装置3a、3bは、車両Vの前方をセンシングする超音波ソナーセンサである。ECU2は、「車載制御装置」の一例に相当する。なお、
図1Bでは、車両Vが乗用車である場合を例示したが、通信システム100が搭載される車両は、乗用車以外の車両(例えば、商用車)であってもよい。また、マスタ装置1、ECU2、スレーブ装置3a、3bそれぞれの設置位置は、
図1Bに示す位置に限定されない。
【0023】
例えば、スレーブ装置3aが、自ら音波を送波し、その反射波を測定する一方で、スレーブ装置3bが、自らは音波の送波を行わず、スレーブ装置3aが送波した音波の反射波を測定してもよい。または、スレーブ装置3bが、自ら音波を送波し、その反射波を測定する一方で、スレーブ装置3aが、自らは音波の送波を行わず、スレーブ装置3aが送波した音波の反射波を測定してもよい。
【0024】
なお、本実施の形態では、スレーブ装置の数が2つである場合を例に挙げて説明するが、スレーブ装置の数は2つ以上であってもよい。また、本実施の形態では、スレーブ装置が車両の前方をセンシングする超音波ソナーセンサである場合を例に挙げて説明するが、スレーブ装置は、車両の後方、左方、右方、または、それらに限られない位置をセンシングする超音波ソナーセンサであってもよい。また、本実施の形態では、スレーブ装置が超音波ソナーセンサである場合を例に挙げて説明するが、これに限定されず、他の車載デバイスであってもよい。
【0025】
以下、マスタ装置1の構成について説明する。
【0026】
マスタ装置1は、ECU2およびスレーブ装置3a、3bのそれぞれと通信を行う通信装置である。
【0027】
図1Aに示すように、マスタ装置1は、1チャンネル分のスレーブポート10、2チャンネル分のマスタポート11a、11b、バッファメモリ12a、12b、および制御部13を有する。なお、
図1Aに示す点線の囲みは、1つのチャンネルに対応する1つのマスタポートと1つのバッファメモリの組み合わせを示している。例えば、マスタポート11aおよびバッファメモリ12aは、スレーブ装置3aに対応するチャンネルに設けられている。また、マスタポート11bおよびバッファメモリ12bは、スレーブ装置3bに対応するチャンネルに設けられている。
【0028】
スレーブポート10は、ECU2と電気的に接続され、ECU2と通信を行うポートである。スレーブポート10とECU2との間では、例えば、SPI(Serial Peripheral Interface)通信が行われる。
【0029】
マスタポート11aは、スレーブ装置3aと電気的に接続され、スレーブ装置3aに対応するチャンネルに設けられ、そのチャンネルを用いてスレーブ装置3aと通信を行うポートである。マスタポート11aとスレーブ装置3aとの間では、DSIプロトコルに準拠した通信が行われ、例えば、CRM通信またはPDCM通信のいずれかが行われる。
【0030】
マスタポート11bは、スレーブ装置3bと電気的に接続され、スレーブ装置3bに対応するチャンネルに設けられ、そのチャンネルを用いてスレーブ装置3bと通信を行うポートである。マスタポート11bとスレーブ装置3bとの間では、DSIプロトコルに準拠した通信が行われ、例えば、CRM通信またはPDCM通信のいずれかが行われる。
【0031】
バッファメモリ12aは、マスタポート11aに対応して設けられており、ECU2により発行されたスレーブ装置3a宛てのコマンドを一時的に記憶するメモリである。
【0032】
バッファメモリ12bは、マスタポート11bに対応して設けられており、ECU2により発行されたスレーブ装置3b宛てのコマンドを一時的に記憶するメモリである。
【0033】
本実施の形態では、上記コマンドが、スレーブ装置3a、3bそれぞれの動作の条件が設定されたコマンドである場合を例に挙げて説明する。例えば、コマンドでは、音波の送波を行うスレーブ装置に対しては音波の送波の指示や送波の条件等が設定され、反射波の測定を行うスレーブ装置に対しては反射波の測定の指示や測定の条件等が設定される。
【0034】
また、本実施の形態では、上記コマンドがユニキャストコマンドである場合を例に挙げて説明するが、グローバルコマンドであってもよい。ユニキャストコマンドは、スレーブ装置3a、3bからのレスポンスがあるコマンドであり、グローバルコマンドは、スレーブ装置3a、3bからのレスポンスがないコマンドである。また、本実施の形態で説明するコマンドは、CRMコマンドである。
【0035】
制御部13は、ECU2およびスレーブ装置3a、3bとの間の通信を制御する。制御部13が行う制御の詳細については、後述する。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態のマスタ装置1は、スレーブ装置3a、3bのそれぞれと1対1に接続するマスタポート11a、11bを有し、かつ、マスタポート11a、11b(スレーブ装置3a、3bと言ってもよい)のそれぞれに対応するように別々に設けられたバッファメモリ12a、12bを有する。
【0037】
以上、マスタ装置1の構成について説明した。
【0038】
なお、図示は省略しているが、マスタ装置1は、ハードウェアとして、例えば、CPU(Central Processing Unit)、コンピュータプログラムを格納したROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有する。本実施の形態で説明するマスタ装置1の各機能は、CPUがROMから読み出したコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、これに限定されず、例えば、マスタ装置1は、それぞれ、CPUを備えない単純なハードウェアロジックで構成されてもよい。また、マスタ装置1は、基板上に各機能を構築されたIC(Integrated Circuit)で実現されてもよい。すなわち、例えば、マスタ装置1の各機能は、ハードウェアとの連携においてソフトウェアで実現されてもよいし、ハードウェアのみで実現されてもよい。
【0039】
[動作]
以下、
図2、
図3を用いて、マスタ装置1の動作について説明する。
図2は、マスタ装置1の動作例1の説明に供する模式図である。
図3は、マスタ装置1の動作例2の説明に供する模式図である。
図2および
図3において、時間軸は、左から右へ進むものとする。また、
図2および
図3に図示する各ポートにおいて、上段は受信(入力)側を表しており、下段は送信(出力)側を表している。また、
図2および
図3では、説明を簡便にするために、対応するコマンド同士、対応するレスポンス同士を同一符号で図示しているが、同一符号が付されたコマンド同士、同一符号が付されたレスポンス同士は、実際には互いに異なる信号である。
【0040】
動作例1、2では、マスタ装置1とスレーブ装置3a、3bとがCRM通信を行う場合を例に挙げて説明する。動作例1は、バッファメモリ12a、12bのそれぞれにおいて1つのコマンドが記憶される場合である。動作例2は、バッファメモリ12a、12bのそれぞれにおいて複数のコマンドが記憶される場合である。
【0041】
【0042】
まず、スレーブポート10は、ECU2からコマンドC1、コマンドC2、および宛先情報を受信する。宛先情報は、コマンドC1、C2それぞれの宛先を示す情報(例えば、レジスタアドレス情報)である。そして、コマンドC1、C2および宛先情報は、制御部13へ出力される。
【0043】
ここでは例として、コマンドC1がスレーブ装置3a宛てのコマンドであり、コマンドC2がスレーブ装置3b宛てのコマンドであるとする。また、ここでは例として、コマンドC1が音波の送波および反射波の受波の指示であり、コマンドC2が反射波の受波の指示であるとする。また、ここでは例として、マスタポート11a、11bから出力されるコマンドC1、C2がCRMユニキャストコマンドであるとする。
【0044】
次に、制御部13は、宛先情報に基づいて、コマンドC1、C2それぞれの宛先を認識する。そして、制御部13は、スレーブ装置3a宛てのコマンドC1をバッファメモリ12aに格納し、スレーブ装置3b宛てのコマンドC2をバッファメモリ12bに格納する。
【0045】
次に、スレーブポート10は、ECU2から、コマンドC1、C2の送信指示である送信指示トリガT1を受信する。そして、送信指示トリガT1は、制御部13へ出力される。
【0046】
制御部13は、送信指示トリガT1を受け取ると、バッファメモリ12aに格納されているコマンドC1をマスタポート11aからスレーブ装置3aへ送信し、かつ、バッファメモリ12bに格納されているコマンドC2をマスタポート11bからスレーブ装置3bへ送信する。このコマンドC1、C2の送信は、同時に(
図2に示すタイミングt1参照)に行われる。
【0047】
次に、図示は省略するが、スレーブ装置3aは、コマンドC1を受信すると、それを記憶する。また、スレーブ装置3bは、コマンドC2を受信すると、それを記憶する。そして、スレーブ装置3aは、コマンドC1に対するレスポンスR1をマスタ装置1へ送信する。また、スレーブ装置3bは、コマンドC2に対するレスポンスR2をマスタ装置1へ送信する。また、ここでは例として、レスポンスR1、R2はそれぞれコマンドC1、C2がスレーブ装置3a、3bで正常に認識されたことを示す応答信号であるとする。
【0048】
次に、マスタポート11aは、スレーブ装置3aからレスポンスR1を受信する。また、マスタポート11bは、スレーブ装置3bからレスポンスR2を受信する。そして、レスポンスR1、R2は、それぞれ、制御部13へ出力される。
【0049】
次に、制御部13は、レスポンスR1、R2をスレーブポート10からECU2へ送信する。
【0050】
以上、動作例1について説明した。
【0051】
次に、
図3を用いて、動作例2について説明する。上述したとおり、動作例2は、バッファメモリ12a、12bのそれぞれにおいて複数のコマンドが記憶される場合である。
【0052】
まず、スレーブポート10は、ECU2から、コマンドC3~C7と、コマンドC1~C7それぞれの宛先を示す宛先情報とを受信する。そして、コマンドC1~C7および宛先情報は、制御部13へ出力される。
【0053】
ここでは例として、コマンドC3、C5がスレーブ装置3a宛てのコマンドであり、コマンドC4、C6、C7がスレーブ装置3b宛てのコマンドであるとする。また、ここでは例として、マスタポート11a、11bから出力されるコマンドC3~C7がCRMユニキャストコマンドであるとする。
【0054】
次に、制御部13は、宛先情報に基づいて、コマンドC3~C7それぞれの宛先を認識する。そして、制御部13は、スレーブ装置3a宛てのコマンドC3、C5をバッファメモリ12aに格納し、スレーブ装置3b宛てのコマンドC4、C6、C7をバッファメモリ12bに格納する。
【0055】
次に、スレーブポート10は、ECU2から、コマンドC3~C7の送信指示である送信指示トリガT2を受信する。そして、送信指示トリガT2は、制御部13へ出力される。
【0056】
制御部13は、送信指示トリガT2を受け取ると、バッファメモリ12aに格納されているコマンドC3、C5をこの順でマスタポート11aからスレーブ装置3aへ送信する。また、制御部13は、バッファメモリ12bに格納されているコマンドC4、C6、C7をこの順でマスタポート11bからスレーブ装置3bへ送信する。コマンドC3、C4の送信は、同時に(
図3に示すタイミングt2参照)に行われる。また、コマンドC5、C6の送信は、同時に(
図3に示すタイミングt3参照)に行われる。
【0057】
図示は省略するが、スレーブ装置3aは、コマンドC3、C5を受信すると、それらを記憶する。また、スレーブ装置3bは、コマンドC4、C6、C7を受信すると、それらを記憶する。そして、スレーブ装置3aは、コマンドC3に対するレスポンスR3、および、コマンドC5に対するレスポンスR5をこの順でマスタ装置1へ送信する。また、スレーブ装置3bは、コマンドC4に対するレスポンスR4、コマンドC6に対するレスポンスR6、およびコマンドC7に対するレスポンスR7をこの順でマスタ装置1へ送信する。また、ここでは例として、レスポンスR3からR7はそれぞれコマンドC3からC7がスレーブ装置3a、3bで正常に認識されたことを示す応答信号であるとする。
【0058】
次に、マスタポート11aは、スレーブ装置3aからレスポンスR3、R5をこの順で受信する。また、マスタポート11bは、スレーブ装置3bからレスポンスR4、R6、R7をこの順で受信する。そして、レスポンスR3~R7は、順次、制御部13へ出力される。
【0059】
次に、制御部13は、レスポンスR3~R7を順次スレーブポート10からECU2へ送信する。なお、このとき、スレーブ装置3aからはレスポンスR3、R5の順で送信され、かつ、スレーブ装置3bからはレスポンスR4、R6、R7の順で送信されればよい。よって、例えば、レスポンスR3、R5、R4、R6、R7の順で送信されてもよいし、レスポンスR4、R6、R3、R5、R7の順で送信されてもよい。
【0060】
以上、動作例2について説明した。
【0061】
なお、動作例1、2では、コマンドC1~C7がCRMユニキャストコマンドである場合を例に挙げて説明したが、コマンドC1~C7は、CRMグローバルコマンドであってもよい。また、動作例2では、スレーブ装置3a宛てのコマンドが2つであり、スレーブ装置3b宛てのコマンドが3つである場合を例に挙げて説明したが、コマンドの数はそれらに限定されない。
【0062】
以上説明したように、本実施の形態のマスタ装置は、スレーブ装置と接続するマスタポートを複数備え、かつ、各マスタポートに対応するバッファメモリを複数備えており、各バッファメモリに格納されたコマンドを同時に各スレーブ装置へ送信することを特徴とする。これにより、よって、複数のスレーブ装置間の同期制御を実現することができる。したがって、例えば、スレーブ装置が超音波ソナーセンサである場合、各スレーブ装置において送波開始のタイミングを同期させることができるので、それぞれの受波の時刻を計測することで、正確な距離の推定を実現することができる。
【0063】
<本開示の変形例>
なお、本開示は、上述した実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【0064】
[変形例1]
実施の形態において、制御部13は、ECU2から送信指示トリガを受け取った場合、予めECU2から指定されたチャンネル(マスタポートと言い換えてもよい)に対応するバッファメモリからコマンドを読み出し、そのバッファメモリに対応するマスタポートから、読み出したコマンドを送信してもよい。
【0065】
例えば、マスタ装置1が、4チャンネル(以下、CH1~CH4という)分のマスタポートと、それらのマスタポートに対応して別々に設けられた4つのバッファメモリとを備えるとする。
【0066】
そして、例えば、制御部13は、4つのバッファメモリのそれぞれにコマンドを格納した後、ECU2からCH1、CH3の指定を受け付けたとする。その後、制御部13は、ECU2により発行された送信指示トリガを受け取ると、指定されたCH1、CH3に対応するバッファメモリからコマンドを読み出し、CH1、CH3に対応するマスタポートからコマンドを送信する。この場合、CH2、CH4に対応するマスタポートからコマンドは送信されない。
【0067】
なお、ECU2からのチャンネルの指定は、各バッファメモリにコマンドが格納される前に行われてもよい。
【0068】
また、上記説明では、4つのバッファメモリのそれぞれにコマンドが格納された後、ECU2からCH1、CH3の指定が行われた場合を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、4つのバッファメモリのうち、CH1、CH3に対応するバッファメモリのそれぞれにコマンドが格納された後、ECU2からCH1、CH3の指定が行われてもよい。この場合も上記同様に、制御部13は、ECU2により発行された送信指示トリガを受け取ると、指定されたCH1、CH3に対応するバッファメモリからコマンドを読み出し、CH1、CH3に対応するマスタポートからコマンドを送信する。
【0069】
このように、本変形例では、同期させたいスレーブ装置を選択することができるので、スレーブ装置に対する制御の自由度を向上させることができる。例えば、車両の前方をセンシングする複数の超音波ソナーセンサだけを同期させたり、車両の後方をセンシングする複数の超音波ソナーセンサだけを同期させたりすることができる。
【0070】
また、バッファメモリが1段である場合では、送信済みのコマンドが消去されずにバッファメモリに残ることがありうる。その場合、そのコマンドが再度送信されてしまうおそれがある。これに対し、本変形例では、送信対象のチャンネルを選択できるため、不要なコマンドの送信を回避することができる。
【0071】
[変形例2]
実施の形態では、
図1Aに示したように、1つのマスタポートに対して1つのスレーブ装置が電気的に接続される場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
【0072】
例えば、
図4に示すように、マスタポート11aと、スレーブ装置3a、3c、3d、3eとが、デイジーチェーン接続され、マスタポート11bと、スレーブ装置3b、3f、3g、3hとが、デイジーチェーン接続されてもよい。
図4に示すスレーブ装置3c、3d、3e、3f、3g、3hは、スレーブ装置3a、3bと同様に、例えば、車載超音波ソナーセンサである。
【0073】
なお、
図4では、マスタポート11a、11bのそれぞれとデイジーチェーン接続されたスレーブ装置の数が4つである場合を例示したが、デイジーチェーン接続されたスレーブ装置の数は、4つに限定されない。また、
図4では、マスタ装置1におけるマスタポート11a、11b以外の構成要素(
図1Aに示したスレーブポート10、バッファメモリ12a、12b、制御部13)の図示は省略している。
【0074】
例えば、
図5に示すように、マスタポート11aと、スレーブ装置3a、3c、3d、3eとが、パラレルバス接続され、マスタポート11bと、スレーブ装置3b、3f、3g、3hとが、パラレルバス接続されてもよい。
図5に示すスレーブ装置3c、3d、3e、3f、3g、3hは、スレーブ装置3a、3bと同様に、例えば、車載超音波ソナーセンサである。
【0075】
なお、
図5では、マスタポート11a、11bのそれぞれとパラレルバス接続されたスレーブ装置の数が4つである場合を例示したが、パラレルバス接続されたスレーブ装置の数は、4つに限定されない。また、
図5では、マスタ装置1におけるマスタポート11a、11b以外の構成要素(
図1Aに示したスレーブポート10、バッファメモリ12a、12b、制御部13)の図示は省略している。
【0076】
<本開示のまとめ>
本開示のまとめは、以下のとおりである。
【0077】
本開示の通信装置は、マスタ装置として車両に搭載され、DSI(Distributed System Interface)プロトコルに基づいて前記車両に搭載された複数のスレーブ装置と通信する通信装置であって、車載制御装置との通信に用いられるスレーブポートと、前記複数のスレーブ装置のそれぞれに対応する複数のチャンネルを用いて通信し、前記複数のチャンネルそれぞれに設けられる複数のマスタポートと、前記複数のマスタポートのそれぞれに対応して別々に設けられた複数のバッファメモリと、前記車載制御装置から受け取った前記複数のスレーブ装置のそれぞれに宛てられたコマンドを前記複数のバッファメモリのそれぞれに振り分けて格納し、前記車載制御装置から前記コマンドの送信を指示するトリガを受け取ったときに、前記複数のバッファメモリから前記コマンドを読み出し、該コマンドを前記複数のマスタポートのそれぞれから同時に送信する制御部と、を有する。
【0078】
本開示の通信装置において、前記制御部は、予め前記車載制御装置からチャンネルの指定を受け付けた場合、前記トリガを受け取ったときに、指定されたチャンネルに対応する前記バッファメモリから前記コマンドを読み出し、該コマンドを該バッファメモリに対応する前記マスタポートから送信する。
【0079】
本開示の通信装置において、前記複数のマスタポートのそれぞれに対し、前記スレーブ装置がデイジーチェーン接続またはパラレルバス接続により複数個接続される。
【0080】
本開示の通信装置において、前記スレーブ装置は、前記車両の周辺をセンシングする超音波ソナーセンサである。
【0081】
本開示の通信システムは、マスタ装置として用いられる本開示の通信装置と、前記通信装置と通信を行う複数のスレーブ装置と、前記通信装置と通信を行う車載制御装置と、を有する。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本開示の通信装置および通信システムは、複数のスレーブ装置を同期させる技術に有用である。
【符号の説明】
【0083】
1 マスタ装置
2 ECU
3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h スレーブ装置
10 スレーブポート
11a、11b マスタポート
12a、12b バッファメモリ
13 制御部
100 通信システム