(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】検出回路および荷重検出装置
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20230317BHJP
【FI】
G01L5/00 101Z
(21)【出願番号】P 2019206447
(22)【出願日】2019-11-14
【審査請求日】2022-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】浮津 博伸
(72)【発明者】
【氏名】森浦 祐太
(72)【発明者】
【氏名】松本 玄
(72)【発明者】
【氏名】山口 光隆
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄大
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/187516(WO,A1)
【文献】特表2009-534673(JP,A)
【文献】国際公開第2018/096901(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0032136(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00
G01L 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に並んで配置された複数の第1電極と、前記複数の第1電極に交差して配置された第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在する誘電体とを備える静電容量型荷重センサに対し、前記第1電極と前記第2電極との交差位置における静電容量の変化を検出するための検出回路であって、
矩形電圧を出力するための電圧出力部と、
前記複数の第1電極にそれぞれ対応して設けられ、前記矩形電圧を前記第1電極に選択的に供給するための複数のマルチプレクサと、
それぞれ前記マルチプレクサを複数含む複数の組に前記矩形電圧を選択的に供給するためのデマルチプレクサと、を備える、
ことを特徴とする検出回路。
【請求項2】
請求項1に記載の検出回路において、
前記マルチプレクサは、2以上の所定の自然数の倍数の数だけ前記静電容量型荷重センサに配置され、
前記組は、前記マルチプレクサの総数を前記自然数で除した数だけ構成され、
前記各組に含まれる前記マルチプレクサの数は、前記全ての組との間で互いに同じである、
ことを特徴とする検出回路。
【請求項3】
請求項1または2に記載の検出回路において、
全ての前記組が、1つの前記デマルチプレクサに接続されている、
ことを特徴とする検出回路。
【請求項4】
請求項1または2に記載の検出回路において、
所定数の前記組ごとに前記デマルチプレクサが配置され、
前記デマルチプレクサに選択的に前記矩形電圧を供給するための他のデマルチプレクサをさらに備える、
ことを特徴とする検出回路。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の検出回路と、
前記静電容量型荷重センサと、を備える、
ことを特徴とする荷重検出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の荷重検出装置において、
前記第1電極および前記第2電極の一方は、線状の導電部材であり、
前記誘電体は、前記導電部材の周囲に被覆され、
前記第1電極および前記第2電極の他方は、導電性の弾性体により形成されている、
ことを特徴とする荷重検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量の変化に基づいて外部から付与される荷重を検出する静電容量型荷重センサに用いられる検出回路、および当該検出回路と静電容量型荷重センサとを備える荷重検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷重センサは、産業機器、ロボットおよび車両などの分野において、幅広く利用されている。近年、コンピュータによる制御技術の発展および意匠性の向上とともに、人型のロボットおよび自動車の内装品等のような自由曲面を多彩に使用した電子機器の開発が進んでいる。それに合わせて、各自由曲面に高性能な荷重センサを装着することが求められている。
【0003】
以下の特許文献1には、可撓性を有し且つ伸縮自在な誘電層の上下に、それぞれ、複数の第1電極と複数の第2電極とが互いに交差するように配置された静電容量型センサ装置が記載されている。第1電極の上面に外力が付与されると、誘電層が圧縮されて、第1電極と第2電極との距離が縮まる。これにより、第1電極と第2電極との交差部分の静電容量が変化する。
【0004】
測定動作時には、複数の第1電極に対し、順番に、電圧印加素子から矩形波電圧が印加される。矩形波電圧が印加される第1電極が、入力側切替回路により切り替えられる。また、複数の第2電極が、順番に、電圧計測器に接続される。電圧計測器に対する接続の切り替えは、出力側切替回路によって行われる。電圧計測部は、入力側切替回路と出力側切替回路とによって切り替えがなされた状態で、第1電極と第2電極との間の静電容量に応じた電圧を計測する。この電圧値は、これら第1電極と第2電極との交差部分の静電容量に対応する。この電圧値に基づいて、当該交差部分に付与された外力の大きさが測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような構成では、入力側切替装置としてマルチプレクサが用いられ得る。この場合、マルチプレクサの構成上、マルチプレクサの入力部と出力部にそれぞれ静電容量成分が生じる。このため、上記構成では、これらの静電容量成分が測定対象の静電容量に重畳された状態で、測定が行われることになる。このような不要な静電容量成分は、第1電極の数が増えるに伴い増大する。すなわち、第1電極の数が増えるに伴いマルチプレクサの切り替え端子の数が増加するため、測定対象に重畳される不要な静電容量成分が増加する。全体の静電容量に対する不要な静電容量成分の割合が増加すると、測定対象の静電容量が埋もれてしまい、測定対象の静電容量の測定精度が低下する。
【0007】
かかる課題に鑑み、本発明は、測定対象の静電容量に不要な静電容量成分が重畳することを抑制することが可能な検出回路および静電容量型荷重検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、一方向に並んで配置された複数の第1電極と、前記複数の第1電極に交差して配置された第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在する誘電体とを備える静電容量型荷重センサに対し、前記第1電極と前記第2電極との交差位置における静電容量の変化を検出するための検出回路に関する。本態様に係る検出回路は、矩形電圧を出力するための電圧出力部と、前記複数の第1電極にそれぞれ対応して設けられ、前記矩形電圧を前記第1電極に選択的に供給するための複数のマルチプレクサと、それぞれ前記マルチプレクサを複数含む複数の組に前記矩形電圧を選択的に供給するためのデマルチプレクサと、を備える。
【0009】
本態様に係る検出回路によれば、第1電極と第2電極との交差位置における静電容量の変化を検出する際に、検出対象の第1電極に電気的に接続されるマルチプレクサが、全てのマルチプレクサではなく、デマルチプレクサによって矩形電圧の供給対象に選択された1つの組に含まれるマルチプレクサのみに制限される。よって、測定対象の静電容量(測定対象の交差位置の静電容量)に対するマルチプレクサの静電容量成分の重畳量が、顕著に低減される。この場合、デマルチプレクサにおける静電容量成分が、新たに測定対象の静電容量に重畳される。しかし、この静電容量成分は、矩形電圧の供給対象外とされた他の組のマルチプレクサの静電容量成分の総容量よりも顕著に小さくなる。よって、測定対象の静電容量に対する不要な静電容量成分の重畳を抑制することができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、荷重検出装置に関する。本態様に係る荷重検出装置は、第1の態様に係る検出回路と、上記静電容量型荷重センサとを備える。
【0011】
本態様に係る荷重検出装置によれば、第1の態様に係る検出回路を備えるため、上記のように、測定対象の静電容量に対する不要な静電容量成分の重畳を抑制できる。よって、測定対象の静電容量の変化をより精度良く測定でき、荷重の検出精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のとおり、本発明によれば、測定対象の静電容量に不要な静電容量成分が重畳することを抑制することが可能な検出回路および静電容量型荷重検出装置を提供できる。
【0013】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(a)は、実施形態1に係る、基材および導電弾性体を模式的に示す斜視図である。
図1(b)は、実施形態1に係る、被覆付き銅線を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、実施形態1に係る、糸を模式的に示す斜視図である。
図2(b)は、実施形態1に係る、基材が設置されたことにより組み立てが完了した荷重センサを模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3(a)、(b)は、実施形態1に係る、X軸負方向に見た場合の被覆付き銅線の周辺を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る、Z軸負方向に見た場合の荷重センサを模式的に示す平面図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る、荷重検出装置の回路構成を示す図である。
【
図6】
図6(a)は、実施形態1に係る、デマルチプレクサに重畳する静電容量成分を示す図である。
図6(b)は、実施形態1に係る、マルチプレクサに重畳する静電容量成分を示す図である。
図6(c)は、比較例に係る、マルチプレクサ周辺回路を示す図である。
【
図7】
図7(a)は、比較例に係る、1つの素子部を測定対象とする場合に重畳される静電容量を示す図である。
図7(b)は、実施形態1に係る、1つの素子部を測定対象とする場合に重畳される静電容量を示す図である。
【
図8】
図8(a)は、実施形態1の変更例1に係る、マルチプレクサの周辺回路を示す図である。
図8(b)は、実施形態1の変更例1に係る、1つの素子部を測定対象とする場合に重畳される静電容量を示す図である。
【
図9】
図9(a)は、実施形態1の変更例2に係る、マルチプレクサの周辺回路を示す図である。
図9(b)は、実施形態1の変更例2に係る、1つの素子部を測定対象とする場合に重畳される静電容量を示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態2に係る、マルチプレクサの周辺回路を示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態2に係る、1つの素子部を測定対象とする場合に重畳される静電容量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る静電容量型荷重センサは、付与された荷重に応じて処理を行う管理システムや電子機器の荷重センサに適用可能である。
【0016】
管理システムとしては、たとえば、在庫管理システム、ドライバーモニタリングシステム、コーチング管理システム、セキュリティー管理システム、介護・育児管理システムなどが挙げられる。
【0017】
在庫管理システムでは、たとえば、在庫棚に設けられた荷重センサにより、積載された在庫の荷重が検出され、在庫棚に存在する商品の種類と商品の数とが検出される。これにより、店舗、工場、倉庫などにおいて、効率よく在庫を管理できるとともに省人化を実現できる。また、冷蔵庫内に設けられた荷重センサにより、冷蔵庫内の食品の荷重が検出され、冷蔵庫内の食品の種類と食品の数や量とが検出される。これにより、冷蔵庫内の食品を用いた献立を自動的に提案できる。
【0018】
ドライバーモニタリングシステムでは、たとえば、操舵装置に設けられた荷重センサにより、ドライバーの操舵装置に対する荷重分布(たとえば、把持力、把持位置、踏力)がモニタリングされる。また、車載シートに設けられた荷重センサにより、着座状態におけるドライバーの車載シートに対する荷重分布(たとえば、重心位置)がモニタリングされる。これにより、ドライバーの運転状態(眠気や心理状態など)をフィードバックすることができる。
【0019】
コーチング管理システムでは、たとえば、シューズの底に設けられた荷重センサにより、足裏の荷重分布がモニタリングされる。これにより、適正な歩行状態や走行状態へ矯正または誘導することができる。
【0020】
セキュリティー管理システムでは、たとえば、床に設けられた荷重センサにより、人が通過する際に、荷重分布が検出され、体重、歩幅、通過速度および靴底パターンなどが検出される。これにより、これらの検出情報をデータと照合することにより、通過した人物を特定することが可能となる。
【0021】
介護・育児管理システムでは、たとえば、寝具や便座に設けられた荷重センサにより、人体の寝具および便座に対する荷重分布がモニタリングされる。これにより、寝具や便座の位置において、人がどのような行動を取ろうとしているかを推定し、転倒や転落を防止することができる。
【0022】
電子機器としては、たとえば、車載機器(カーナビゲーション・システム、音響機器など)、家電機器(電気ポット、IHクッキングヒーターなど)、スマートフォン、電子ペーパー、電子ブックリーダー、PCキーボード、ゲームコントローラー、スマートウォッチ、ワイヤレスイヤホン、タッチパネル、電子ペン、ペンライト、光る衣服、楽器などが挙げられる。電子機器では、ユーザーからの入力を受け付ける入力部に荷重センサが設けられる。
【0023】
以下の実施形態における荷重センサは、上記のような管理システムや電子機器の荷重センサにおいて典型的に設けられる静電容量型荷重センサである。このような荷重センサは、「静電容量型感圧センサ素子」、「容量性圧力検出センサ素子」、「感圧スイッチ素子」などと称される場合もある。また、以下の実施形態における検出回路は、上記のような荷重センサに接続される検出回路であり、以下の実施形態における荷重検出装置は、上記のような荷重センサおよび検出回路を備える荷重検出装置である。以下の実施形態は、本発明の一実施形態あって、本発明は、以下の実施形態に何ら制限されるものではない。
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。便宜上、各図には互いに直交するX、Y、Z軸が付記されている。Z軸方向は、荷重センサ1の高さ方向である。
【0025】
<実施形態1>
図1(a)~
図4を参照して、荷重センサ1について説明する。
【0026】
図1(a)は、基材11と、基材11の上面に設置された3つの導電弾性体12とを模式的に示す斜視図である。
【0027】
基材11は、弾性を有する絶縁性の部材であり、X-Y平面に平行な平板形状を有する。基材11は、非導電性を有する樹脂材料または非導電性を有するゴム材料から構成される。基材11に用いられる樹脂材料は、たとえば、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂(たとえば、ポリジメチルポリシロキサン(PDMS)など)、アクリル系樹脂、ロタキサン系樹脂、およびウレタン系樹脂等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料である。基材11に用いられるゴム材料は、たとえば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、および天然ゴム等からなる群から選択される少なくとも1種のゴム材料である。
【0028】
導電弾性体12は、基材11の上面(Z軸正側の面)に接着剤等により設置される。
図1(a)では、基材11の上面に、3つの導電弾性体12が設置されている。導電弾性体12は、弾性を有する導電性の部材である。各導電弾性体12は、基材11の上面においてY軸方向に長い帯状の形状を有しており、X軸方向に互いに離間した状態で並んで設置されている。各導電弾性体12のY軸負側の端部に、導電弾性体12と電気的に接続されたケーブル12aが設置される。導電弾性体12は、樹脂材料とその中に分散した導電性フィラー、またはゴム材料とその中に分散した導電性フィラーから構成される。
【0029】
導電弾性体12に用いられる樹脂材料は、上述した基材11に用いられる樹脂材料と同様、たとえば、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂(ポリジメチルポリシロキサン(たとえば、PDMS)など)、アクリル系樹脂、ロタキサン系樹脂、およびウレタン系樹脂等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料である。導電弾性体12に用いられるゴム材料は、上述した基材11に用いられるゴム材料と同様、たとえば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、および天然ゴム等からなる群から選択される少なくとも1種のゴム材料である。
【0030】
導電弾性体12に用いられる導電性フィラーは、たとえば、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、C(カーボン)、ZnO(酸化亜鉛)、In2O3(酸化インジウム(III))、およびSnO2(酸化スズ(IV))等の金属材料や、PEDOT:PSS(すなわち、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)からなる複合物)等の導電性高分子材料や、金属コート有機物繊維、金属線(繊維状態)等の導電性繊維からなる群から選択される少なくとも1種の材料である。
【0031】
図1(b)は、
図1(a)の構造体に載置された3つの被覆付き銅線13を模式的に示す斜視図である。
【0032】
被覆付き銅線13は、
図1(a)に示した3つの導電弾性体12の上面に重ねて配置される。ここでは、3つの被覆付き銅線13が3つの導電弾性体12の上面に重ねて配置されている。各被覆付き銅線13は、導電性の線材と、当該線材の表面を被覆する誘電体とからなる。3つの被覆付き銅線13は、導電弾性体12の長手方向(Y軸方向)に沿って、導電弾性体12に交差するように並んで配置されている。各被覆付き銅線13は、3つの導電弾性体12に跨がるよう、X軸方向に延びて配置される。被覆付き銅線13の構成については、追って
図3(a)、(b)を参照して説明する。
【0033】
図2(a)は、
図1(b)の構造体に設置された糸14を模式的に示す斜視図である。
【0034】
図1(b)のように3つの被覆付き銅線13が配置された後、各被覆付き銅線13は、被覆付き銅線13の長手方向(X軸方向)に移動可能に、糸14で基材11に接続される。
図2(a)に示す例では、12個の糸14が、導電弾性体12と被覆付き銅線13とが重なる位置以外の位置において、被覆付き銅線13を基材11に接続している。糸14は、導電性を有する材料により構成され、たとえば、繊維とその中に分散した導電性の金属材料から構成される。糸14に用いられる導電性の金属材料は、たとえば銀である。
【0035】
図2(b)は、
図1(b)の構造体に設置された、基材15を模式的に示す斜視図である。
【0036】
図2(a)に示した構造体の上方から、
図2(b)に示すように、基材15が設置される。基材15は、絶縁性の部材である。基材15は、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、およびポリイミド等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料である。基材15は、X-Y平面に平行な平板形状を有し、X-Y平面における基材15の大きさは、基材11と同様である。基材15の四隅の頂点が基材11の四隅の頂点に対して、シリコーンゴム系接着剤や糸などで接続されることにより、基材15が基材11に対して固定される。こうして、
図2(b)に示すように、荷重センサ1が完成する。
【0037】
図3(a)、(b)は、X軸負方向に見た場合の被覆付き銅線13の周辺を模式的に示す断面図である。
図3(a)は、荷重が加えられていない状態を示し、
図3(b)は、荷重が加えられている状態を示している。
【0038】
図3(a)に示すように、被覆付き銅線13は、銅線13aと、銅線13aを被覆する誘電体13bと、により構成される。銅線13aは、銅により構成されており、銅線13aの直径は、たとえば、約60μmである。誘電体13bは、電気絶縁性を有し、たとえば、樹脂材料、セラミック材料、金属酸化物材料などにより構成される。誘電体13bは、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂(たとえば、ポリエチレンテレフテレート樹脂)、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂などからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料でもよく、Al
2O
3およびTa
2O
5などからなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物材料でもよい。
【0039】
図3(a)に示す領域に荷重が加えられていない場合、導電弾性体12と被覆付き銅線13との間にかかる力、および、基材15と被覆付き銅線13との間にかかる力は、ほぼゼロである。この状態から、
図3(b)に示すように、基材11の下面に対して上方向に荷重が加えられ、基材15の上面に対して下方向に荷重が加えられると、被覆付き銅線13によって導電弾性体12が変形する。なお、基材11の下面または基材15の上面が静止物体に載置されて、他方の基材に対してのみ荷重が加えられた場合も、反作用により静止物体側から同様に荷重を受けることになる。
【0040】
図3(b)に示すように、荷重が加えられると、被覆付き銅線13は、導電弾性体12に包まれるように導電弾性体12に近付けられ、被覆付き銅線13と導電弾性体12との間の接触面積が増加する。これにより、被覆付き銅線13内の銅線13aと導電弾性体12との間の静電容量が変化し、この領域の静電容量が検出され、この領域にかかる荷重が算出される。
【0041】
図4は、Z軸負方向に見た場合の荷重センサ1を模式的に示す平面図である。
図4では、便宜上、糸14および基材15の図示が省略されている。
【0042】
図4に示すように、3つの導電弾性体12と3つの被覆付き銅線13とが交わる位置に、荷重に応じて静電容量が変化する素子部A11、A12、A13、A21、A22、A23、A31、A32、A33が形成される。各素子部は、導電弾性体12と被覆付き銅線13を含み、被覆付き銅線13は、静電容量の他方の極(たとえば陽極)を構成し、導電弾性体12は、静電容量の一方の極(たとえば陰極)を構成する。
【0043】
すなわち、被覆付き銅線13の銅線13aは、荷重センサ1(静電容量型荷重センサ)の一方の電極を構成し、導電弾性体12は、荷重センサ1(静電容量型荷重センサ)の他方の電極を構成し、被覆付き銅線13の誘電体13bは、荷重センサ1(静電容量型荷重センサ)において静電容量を規定する誘電体に対応する。この構成では、銅線13aが、特許請求の範囲に記載の「第1電極」に対応し、導電弾性体12が、特許請求の範囲に記載の「第2電極」に対応し、誘電体13bが、特許請求の範囲に記載の「誘電体」に対応する。
【0044】
各素子部に対してZ軸方向に荷重が加わると、荷重により被覆付き銅線13が導電弾性体12に包み込まれる。これにより、被覆付き銅線13と導電弾性体12との間の接触面積が変化し、当該被覆付き銅線13と当該導電弾性体12との間の静電容量が変化する。被覆付き銅線13のX軸負側の端部およびケーブル12aのY軸負側の端部は、
図5を参照して後述する検出回路2に接続されている。
【0045】
図4に示すように、3つの被覆付き銅線13をラインL11、L22、L23と称し、3つの導電弾性体12から引き出されたケーブル12aをラインL21、L22、L23と称する。ラインL11がラインL21、L22、L23に接続された導電弾性体12と交わる位置が、それぞれ、素子部A11、A12、A13であり、ラインL12がラインL21、L22、L23に接続された導電弾性体12と交わる位置が、それぞれ、素子部A21、A22、A23であり、ラインL13がラインL21、L22、L23に接続された導電弾性体12と交わる位置が、それぞれ、素子部A31、A32、A33である。
【0046】
素子部A11に対して荷重が加えられると、素子部A11において導電弾性体12と被覆付き銅線13との接触面積が増加する。したがって、ラインL11とラインL21との間の静電容量を検出することにより、素子部A11において加えられた荷重を算出することができる。同様に、他の素子部においても、当該他の素子部において交わる2つのライン間の静電容量を検出することにより、当該他の素子部において加えられた荷重を算出することができる。
【0047】
次に、
図5~
図7(b)を参照して、実施形態1の荷重検出装置3の構成について説明する。
【0048】
図5は、荷重検出装置3の回路構成を示す図である。荷重検出装置3は、上記のような荷重センサ1と、荷重センサ1に電気的に接続された検出回路2と、を備える。
図5において、便宜上、荷重センサ1については、被覆付き銅線13と導電弾性体12のみが図示されており、導電弾性体12は、線状に図示されている。また、便宜上、ケーブル12aの図示は省略されており、導電弾性体12がマルチプレクサ23に直接接続するように図示されている。また、
図5においては、被覆付き銅線13と導電弾性体12の数は、
図1(a)~
図4に示した例とは異なり、いずれも16個である。
【0049】
検出回路2は、デマルチプレクサ21と、16個のマルチプレクサ22と、16個のマルチプレクサ23と、電圧出力部31と、抵抗32と、等電位生成部33と、電圧計34と、制御部35と、を備える。検出回路2は、荷重センサ1に対し、被覆付き銅線13と導電弾性体12との交差位置における静電容量の変化を検出するための検出回路である。
【0050】
電圧出力部31は、電源31aとスイッチ31bを備え、矩形電圧を回路に出力する。スイッチ31bは、電源31aの陽極側に接続されている。抵抗32は、電圧出力部31の陽極側に接続されている。電圧出力部31に接続された抵抗32の端子とは反対側の端子には、第1供給ラインL1が接続されている。
【0051】
第1供給ラインL1には等電位生成部33と電圧計34が並列に接続されている。第1供給ラインL1に接続された等電位生成部33の端子(入力側のプラス端子)とは反対側の端子(出力側端子)には、第2供給ラインL2が接続されている。等電位生成部33は、オペアンプであり、出力側端子と入力側のマイナス端子とが互いに接続されている。等電位生成部33は、第1供給ラインL1の電位と等電位の抑止電圧を、第2供給ラインL2に出力する。第1供給ラインL1に接続された電圧計34の端子(入力側端子)とは反対側の端子(出力側端子)には、グランドラインL3が接続されている。グランドラインL3は、電圧出力部31の陰極側に接続されている。
【0052】
16個のマルチプレクサ22は、それぞれ、16個の被覆付き銅線13(銅線13a)に対応して設けられており、電圧出力部31が出力した矩形電圧を被覆付き銅線13の銅線13aに選択的に供給する。すなわち、各マルチプレクサ22の出力側端子に、被覆付き銅線13の銅線13aが接続されている。各マルチプレクサ22の入力側端子は2つあり、入力側端子の一方に第1供給ラインL1がデマルチプレクサ21を介して接続される。この入力側端子に、第1供給ラインL1および抵抗32を介して、電圧出力部31から矩形電圧が印加される。マルチプレクサ22の他方の入力側端子は、第2供給ラインL2に接続されている。
【0053】
第1供給ラインL1には、1つのデマルチプレクサ21が接続されている。デマルチプレクサ21の入力側端子に、第1供給ラインL1が接続されている。デマルチプレクサ21の出力側端子は4つある。
【0054】
16個のマルチプレクサ22は4つの組G1~G4に分かれており、4つの組G1~G4は、それぞれ、4つのマルチプレクサ22を含んでいる。組G1の4つのマルチプレクサ22と、組G2の4つのマルチプレクサ22と、組G3の4つのマルチプレクサ22と、組G4の4つのマルチプレクサ22の一方の入力側端子は、デマルチプレクサ21の4つの異なる出力側端子にそれぞれ接続されている。これにより、デマルチプレクサ21は、4つの組G1~G4のマルチプレクサ22に矩形電圧を選択的に供給可能となっている。
【0055】
16個のマルチプレクサ23は、それぞれ、16個の導電弾性体12に対応して設けられており、導電弾性体12をグランドラインL3に選択的に接続する。すなわち、各マルチプレクサ23の出力側端子に、導電弾性体12(ケーブル12a)が接続されている。各マルチプレクサ23の入力側端子は2つあり、入力側端子の一方に第2供給ラインL2が接続されている。マルチプレクサ23の他方の入力側端子は、グランドラインL3に接続されている。
【0056】
制御部35は、演算処理回路とメモリを備え、たとえばFPGAやMPUにより構成される。制御部35は、スイッチ31b、デマルチプレクサ21、およびマルチプレクサ22、23の切り替えを行う。
【0057】
次に、荷重検出時の制御部35の制御について説明する。
【0058】
荷重検出装置3が起動すると、制御部35は、たとえば以下に示すように、被覆付き銅線13と導電弾性体12とが交わる位置(
図5の場合は256箇所)における素子部の静電容量を順に測定し、各素子部にかかる荷重を算出する。
【0059】
具体的には、制御部35は、1つの素子部について測定を開始すると、制御部35は、当該素子部の電極を構成する被覆付き銅線13(銅線13a)に接続された1つのマルチプレクサ22がデマルチプレクサ21の出力側端子に接続されるよう、このマルチプレクサ22の切り替えを行う。また、制御部35は、他の15個のマルチプレクサ22が第2供給ラインL2に接続されるよう、他の15個のマルチプレクサ22の切り替えを行う。また、制御部35は、上記1つのマルチプレクサ22を含む組が第1供給ラインL1に接続されるよう、デマルチプレクサ21の切り替えを行う。
【0060】
さらに、制御部35は、上記素子部の電極を構成する導電弾性体12に接続された1つのマルチプレクサ23がグランドラインL3に接続されるよう、このマルチプレクサ23の切り替えを行う。また、制御部35は、他の15個のマルチプレクサ23が第2供給ラインL2に接続されるよう、他の15個のマルチプレクサ23の切り替えを行う。
【0061】
その後、制御部35は、スイッチ31bを所定時間オンに設定して、電圧出力部31に矩形電圧を出力させる。これにより、測定対象の素子部に、抵抗32を介して矩形電圧が印加され、測定対象の素子部に電荷がチャージされる。これに伴い、抵抗Rと、荷重に応じた測定対象の素子部の容量とで規定される時定数により、測定対象の素子部の電位が上昇する。この電位は、第1供給ラインL1の電位に反映される。この電位は、電圧計34により測定されて、制御部35に出力される。
【0062】
制御部35は、矩形電圧の印加期間の所定のタイミングにおいて、電圧計34の測定電圧を参照し、この測定電圧と上記時定数および矩形電圧の電圧値とに基づいて、測定対象の素子部の静電容量Cを算出する。そして、制御部35は、静電容量Cに基づいて、測定対象の素子部にかかる荷重を算出する。
【0063】
このとき、測定対象の素子部と同じ行の他の素子部には、陰極側に等電位生成部33からの電位が印加されるため、陽極と陰極とが等電位となる。よって、これら他の素子部に電荷が貯まることはないため、測定対象の素子部に適切に電荷が貯まり、測定対象の素子部の電圧を精度良く計測できる。また、測定対象の素子部の列および行と異なる列および行の素子部には、陽極および陰極に等電位生成部33からの電位が印加されるため、これら素子部にも電荷が貯まることはない。よって、これらの素子部を、測定において無効化することができる。
【0064】
制御部35は、測定対象の素子部に対して荷重を算出すると、スイッチ31bをオフに切り替える。こうして1つの素子部における荷重の測定が終了する。その後、制御部35は、図示しない放電系により、各素子部に貯まった電荷を放電させる。そして、制御部35は、次の素子部の荷重を測定するために、デマルチプレクサ21およびマルチプレクサ22、23の接続状態を設定し、スイッチ31bをオンに切り替える。こうして、制御部35は、スイッチ31bと、デマルチプレクサ21と、マルチプレクサ22、23とを切り替えて、測定対象の素子部の静電容量を順に測定し、各素子部にかかる荷重を算出する。
【0065】
ここで、デマルチプレクサやマルチプレクサには、回路特性上、静電容量成分が重畳することが知られている。
【0066】
図6(a)は、デマルチプレクサ21に重畳する静電容量成分を示す図であり、
図6(b)は、マルチプレクサ22に重畳する静電容量成分を示す図である。
【0067】
図6(a)に示すように、デマルチプレクサ21の入力側端子には静電容量C11が生じ、デマルチプレクサ21の各出力側端子には静電容量C12が生じる。したがって、入力側端子といずれかの出力側端子とが接続されると、このデマルチプレクサ21においてC11+C12の静電容量成分が生じることになる。
【0068】
また、
図6(b)に示すように、マルチプレクサ22の各入力側端子には静電容量C21が生じ、マルチプレクサ22の出力側端子には静電容量C22が生じる。したがって、いずれかの入力側端子と出力側端子とが接続されると、このマルチプレクサ22においてC21+C22の静電容量成分が生じることになる。
【0069】
ここで、1つのマルチプレクサ22が被覆付き銅線13と第1供給ラインL1を接続する場合、第1供給ラインL1に接続された他のマルチプレクサ22の一方の入力側端子における静電容量成分が、さらに重畳されることになる。したがって、複数のマルチプレクサ22を用いる場合、
図6(a)、(b)に示したような静電容量成分が、マルチプレクサ22の数に応じて増大し、無視できない値となる場合がある。このことについて、以下、
図6(c)~
図7(b)を参照して説明する。
【0070】
図6(c)は、比較例に係るマルチプレクサ22の周辺回路を示す図である。比較例では、
図5に示した実施形態1とは異なり、16個全てのマルチプレクサ22が第1供給ラインL1に接続されている。この場合、1つの素子部を測定対象とした場合でも、16個全てのマルチプレクサ22に生じる静電容量が重畳される。
【0071】
図7(a)は、
図6(c)に示す比較例において1つの素子部を測定対象とする場合に重畳される静電容量を示す図である。比較例では、マルチプレクサ22の入力側の静電容量C21が全てのマルチプレクサ22において生じ、マルチプレクサ22の出力側の静電容量C22が測定対象に応じて1つだけ生じる。よって、比較例の場合、合計でC21×16+C22の静電容量が重畳する。
【0072】
図7(b)は、実施形態1において1つの素子部を測定対象とする場合に重畳される静電容量を示す図である。実施形態1では、デマルチプレクサ21において、入力側の静電容量C11と出力側の静電容量C12が生じる。また、測定対象の素子部に対応するマルチプレクサ22が含まれる組のみがデマルチプレクサ21に接続されているため、マルチプレクサ22の入力側の静電容量C21が4個のマルチプレクサ22において生じ、マルチプレクサ22の出力側の静電容量C22が測定対象に応じて1つだけ生じる。よって、実施形態1の場合、合計でC11+C12+C21×4個+C22の静電容量が重畳する。
【0073】
たとえば、デマルチプレクサ21の静電容量成分がC11=12pF、C12=5pFであり、マルチプレクサ22の静電容量成分がC21=5pF、C22=8pFである場合、比較例の場合に重畳される静電容量は、5pF×16個+8pF×1個=88pFとなる。一方、実施形態1の場合に重畳される静電容量は、12pF+5pF+5pF×4個+8pF×1個=45pFとなる。この場合、実施形態1によれば、比較例に比べて、重畳される静電容量を、88pF-45pF=43pF低減させることができる。
【0074】
<実施形態1の効果>
以上、実施形態1によれば、以下の効果が奏される。
【0075】
被覆付き銅線13の銅線13a(第1電極)と導電弾性体12(第2電極)との交差位置における静電容量の変化を検出する際に、検出対象の銅線13a(第1電極)に電気的に接続されるマルチプレクサ22が、全てのマルチプレクサ22ではなく、デマルチプレクサ21によって矩形電圧の供給対象に選択された1つの組に含まれるマルチプレクサ22のみに制限される。よって、測定対象の静電容量(測定対象の交差位置の静電容量)に対するマルチプレクサ22の静電容量成分の重畳量が、顕著に低減される。この場合、デマルチプレクサ21における静電容量成分が、新たに測定対象の静電容量に重畳される。しかし、この静電容量成分は、矩形電圧の供給対象外とされた他の組のマルチプレクサ22の静電容量成分の総容量よりも顕著に小さくなる。よって、測定対象の静電容量に対する不要な静電容量成分の重畳を抑制することができる。
【0076】
組G1~G4にそれぞれ含まれるマルチプレクサ22の数が互いに同じ4個であるため、デマルチプレクサ21がどの組に接続されたとしても、測定対象の静電容量に重畳される不要な静電容量の総容量が同じとなる。よって、静電容量の変化に基づく荷重の算出処理を組ごとに修正する必要がなく、算出処理を簡易かつ円滑に行うことができる。
【0077】
全ての組G1~G4が、1つのデマルチプレクサ21に接続されている。この場合、検出回路2にデマルチプレクサ21を1つのみ配置すればよいため、構成の簡素化とコストの低減を図ることができる。
【0078】
荷重検出装置3は、荷重センサ1と検出回路2を備える。これにより、上記のように、測定対象の静電容量に対する不要な静電容量成分の重畳を抑制できる。よって、測定対象の静電容量の変化をより精度良く測定でき、荷重の検出精度を高めることができる。
【0079】
被覆付き銅線13の銅線13aは、線状の導電部材であり、誘電体13bは、銅線13aの周囲に被覆され、導電弾性体12は、導電性の弾性体により形成されている。この構成によれば、誘電体13bと導電弾性体12との間の接触面積の変化により、静電容量が変化するため、荷重付与時の静電容量の変化が微小となる。これに対し、検出回路2は、不要な静電容量を効果的に抑制できるため、このように荷重付与時の静電容量の変化が微小であっても、静電容量の変化を適正に測定できる。
【0080】
<実施形態1の変更例>
上記実施形態1では、16個のマルチプレクサ22が4つの組に分けられ、1つの組に含まれる4つのマルチプレクサ22が、デマルチプレクサ21の1つの出力側端子に接続された。しかしながら、マルチプレクサ22の組数は4つに限らず、たとえば、マルチプレクサ22の組数は、以下の変更例1のように2つでもよく、以下の変更例2のように8つでもよい。
【0081】
図8(a)は、変更例1に係るマルチプレクサ22の周辺回路を示す図である。変更例1では、2つの組G1、G2が設定されており、各組に8つのマルチプレクサ22が含まれている。また、変更例1では、実施形態1と比較して、デマルチプレクサ21に代えてデマルチプレクサ24が設置されている。デマルチプレクサ24の出力側端子は2つあり、2つの出力側端子に、2つの組G1、G2のマルチプレクサ22が接続されている。
【0082】
図8(b)は、変更例1において1つの素子部を測定対象とする場合に重畳される静電容量を示す図である。変更例1では、デマルチプレクサ24において、入力側の静電容量C31と出力側の静電容量C32が生じる。また、マルチプレクサ22の入力側の静電容量C21が8個のマルチプレクサ22において生じ、マルチプレクサ22の出力側の静電容量C22が1つだけ生じる。よって、変更例1の場合、合計でC31+C32+C21×8個+C22の静電容量が重畳する。
【0083】
たとえば、デマルチプレクサ24の静電容量成分がC31=8pF、C32=5pFであり、マルチプレクサ22の静電容量成分が上記と同様C21=5pF、C22=8pFである場合、変更例1の場合に重畳される静電容量は、8pF+5pF+5pF×8個+8pF×1個=61pFとなる。この場合、変更例1によれば、
図7(a)に示した比較例に比べて、重畳される静電容量を、88pF-61pF=27pF低減させることができる。
【0084】
図9(a)は、変更例2に係るマルチプレクサ22の周辺回路を示す図である。変更例2では、8つの組G1~G8が設定されており、各組に2つのマルチプレクサ22が含まれている。また、変更例2では、実施形態1と比較して、デマルチプレクサ21に代えてデマルチプレクサ25が設置されている。デマルチプレクサ25の出力側端子は8つあり、8つの出力側端子に、8つの組G1~G8のマルチプレクサ22が接続されている。
【0085】
図9(b)は、変更例2において1つの素子部を測定対象とする場合に重畳される静電容量を示す図である。変更例2では、デマルチプレクサ25において、入力側の静電容量C41と出力側の静電容量C42が生じる。また、マルチプレクサ22の入力側の静電容量C21が2個のマルチプレクサ22において生じ、マルチプレクサ22の出力側の静電容量C22が1つだけ生じる。よって、変更例2の場合、合計でC41+C42+C21×2個+C22の静電容量が重畳する。
【0086】
たとえば、デマルチプレクサ25の静電容量成分がC41=25pF、C32=5pFであり、マルチプレクサ22の静電容量成分が上記と同様C21=5pF、C22=8pFである場合、変更例2の場合に重畳される静電容量は、25pF+5pF+5pF×2個+8pF×1個=48pFとなる。この場合、変更例2によれば、
図7(a)に示した比較例に比べて、重畳される静電容量を、88pF-48pF=40pF低減させることができる。
【0087】
なお、1つの組に含まれるマルチプレクサ22の数が減るほど、マルチプレクサ22の静電容量成分の重畳量は減少するものの、デマルチプレクサの切り替え段数が増加し、デマルチプレクサの静電容量成分が増加する傾向にある。したがって、これら2つの静電容量成分のトレードオフを考慮して、重畳される静電容量成分が最小となるように、1つの組に含まれるマルチプレクサ22の数を設定することが好ましい。たとえば、上記のようにマルチプレクサ22の総数が16である場合、実施形態1のように、1つの組に含まれるマルチプレクサ22の数を4に設定することにより、マルチプレクサ22およびデマルチプレクサ21による静電容量成分の重畳量を最も小さくできる。よって、この構成では、1つの組に含まれるマルチプレクサ22の数を4に設定することが、最も好ましいと言える。
【0088】
<実施形態2>
実施形態1では、マルチプレクサ22と第1供給ラインL1との間に1つのデマルチプレクサ21が配置されたが、実施形態2では、マルチプレクサ22と第1供給ラインL1との間に直列的に2つのデマルチプレクサが配置される。
【0089】
図10は、実施形態2に係るマルチプレクサ22の周辺回路を示す図である。実施形態2では、4つの組ごとにデマルチプレクサ27が配置され、2つのデマルチプレクサ27に選択的に矩形電圧を供給するためのデマルチプレクサ26が配置されている。
【0090】
具体的には、実施形態2では、8つの組G1~G8が設定されており、各組に2つのマルチプレクサ22が含まれている。また、実施形態2では、実施形態1と比較して、デマルチプレクサ21に代えて1つのデマルチプレクサ26と2つのデマルチプレクサ27が設置されている。デマルチプレクサ26の出力側端子は2つあり、2つの出力側端子に、2つのデマルチプレクサ27が接続されている。一方のデマルチプレクサ27の出力側端子は4つあり、4つの出力側端子に、4つの組G1~G4のマルチプレクサ22が接続されている。他方のデマルチプレクサ27の出力側端子も4つあり、4つの出力側端子に、4つの組G5~G8のマルチプレクサ22が接続されている。
【0091】
図11は、実施形態2において1つの素子部を測定対象とする場合に重畳される静電容量を示す図である。実施形態2では、デマルチプレクサ26において、入力側の静電容量C51と出力側の静電容量C52が生じる。デマルチプレクサ27において、入力側の静電容量C61と出力側の静電容量C62が生じる。また、マルチプレクサ22の入力側の静電容量C21が2個のマルチプレクサ22において生じ、マルチプレクサ22の出力側の静電容量C22が1つだけ生じる。よって、実施形態2の場合、合計でC51+C52+C61+C62+C21×2個+C22の静電容量が重畳する。
【0092】
たとえば、デマルチプレクサ26、27の静電容量成分が、それぞれ、C51=8pF、C52=5pFおよびC61=12pF、C62=5pFであり、マルチプレクサ22の静電容量成分が上記と同様C21=5pF、C22=8pFである場合、実施形態2の場合に重畳される静電容量は、8pF+5pF+12pF+5pF+5pF×2個+8pF×1個=48pFとなる。この場合、実施形態2によれば、
図7(a)に示した比較例に比べて、重畳される静電容量を、88pF-48pF=40pF低減させることができる。
【0093】
なお、この算出結果では、重畳される静電容量が、上記実施形態1の場合よりも大きくなったが、荷重センサ1の素子部の数がさらに増加し、マルチプレクサ22の数がさらに増加した場合は、実施形態2のように、複数のデマルチプレクサを用いる方が、重畳される静電容量を減少させ得ることが想定され得る。よって、実施形態2の構成は、特に、素子部の数が多い場合に用いて好適であると言える。
【0094】
<実施形態2の効果>
以上、実施形態2によれば、実施形態1と同様の効果に加えて、以下の効果が奏される。
【0095】
被覆付き銅線13の銅線13a(第1電極)の数の増加に伴いマルチプレクサ22の数が増加する場合、全てのマルチプレクサ22を1つのデマルチプレクサに接続すると、デマルチプレクサにおける不要な静電容量が増大する。これに対し、実施形態2のように複数のデマルチプレクサをカスケードに配置すると、各デマルチプレクサの端子数が減少するため、各デマルチプレクサにおける静電容量を減少させることができる。その結果、荷重測定時に1つの銅線13a(第1電極)に接続される複数のデマルチプレクサの静電容量の総量を、全てのマルチプレクサを1つのデマルチプレクサに接続する場合に比べて、減少させることができる。したがって、この構成によれば、銅線13a(第1電極)の数の増加に伴いマルチプレクサの数が増加する場合に、不要な静電容量をより効果的に抑制することができる。
【0096】
<その他の変更例>
荷重センサ1および検出回路2の構成は、上記実施形態1、2および変更例に示した構成以外に、種々の変更が可能である。
【0097】
たとえば、上記実施形態1、2および変更例では、
図5に示したように、基材11の表面に16個の導電弾性体12が形成されたが、導電弾性体12の数は16個に限らず、基材11に1つの導電弾性体12のみが形成されてもよい。また、導電弾性体12の上面に16個の被覆付き銅線13が配置されたが、配置される被覆付き銅線13は、3個に限らず、2個以上であればよい。
【0098】
また、上記実施形態1、2および変更例において、被覆付き銅線13に代えて、銅以外の物質からなる線状の導電部材と、当該導電部材を被覆する誘電体と、により構成された電極が用いられてもよい。この場合の電極の導電部材は、たとえば、金属体、ガラス体およびその表面に形成された導電層、樹脂体およびその表面に形成された導電層などにより構成される。
【0099】
また、荷重センサ1の構成は、必ずしも、被覆付き銅線と導電弾性体とを組み合わせた構成でなくてもよく、たとえば、上下の電極の間に伸縮性の誘電体が挟まれた構成であってもよい。複数のマルチプレクサによって電圧が印加される陽極が切り替える構成が適用され得る構造である限りにおいて、他の構成の荷重センサ1が用いられてもよい。
【0100】
また、上記実施形態1、2および変更例では、2以上の所定の自然数Nの倍数mの数だけマルチプレクサ22が配置され、組の数は、マルチプレクサ22の総数(=N×m)を自然数Nで除した数(=倍数m)に設定され、各組に含まれるマルチプレクサ22の数は、全ての組との間で同じに設定された。しかしながら、マルチプレクサ22の総数、組の数、および組に含まれるマルチプレクサ22の数は、上記実施形態1、2および変更例に限らない。たとえば、3つの組G1~G3が設定され、組G1に4個のマルチプレクサ22が含まれ、組G2に5個のマルチプレクサ22が含まれ、組G3に7個のマルチプレクサ22が含まれてもよい。
【0101】
また、上記実施形態2では、マルチプレクサ22と第1供給ラインL1との間に、複数のデマルチプレクサが2段にカスケード接続されたが、3段以上のカスケード接続により複数のデマルチプレクサが接続されてもよい。
【0102】
また、上記実施形態1、2および変更例では、デマルチプレクサ21、24、25、27の各出力側端子には、複数のマルチプレクサ22を含む組が接続されたが、これらデマルチプレクサの少なくとも1つの出力側端子に、1つのマルチプレクサ22が接続されてもよい。また、陰極側のマルチプレクサ23に、上記と同様のデマルチプレクサを用いた構成がさらに適用されてもよい。
【0103】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 荷重センサ(静電容量型荷重センサ)
2 検出回路
3 荷重検出装置
12 導電弾性体(第2電極)
13a 銅線(第1電極)
13b 誘電体
21 デマルチプレクサ
22、24、25、27 マルチプレクサ
26 デマルチプレクサ(他のマルチプレクサ)
31 電圧出力部
G1~G8 組