(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/08 20060101AFI20230317BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
H01G9/08 F
H01G9/00 030
(21)【出願番号】P 2019509754
(86)(22)【出願日】2018-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2018011967
(87)【国際公開番号】W WO2018181088
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2017071831
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴行
(72)【発明者】
【氏名】西野 穂菜美
(72)【発明者】
【氏名】藤田 真
(72)【発明者】
【氏名】田代 智之
(72)【発明者】
【氏名】森 将人
(72)【発明者】
【氏名】日野 裕久
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-090423(JP,U)
【文献】特開2005-210069(JP,A)
【文献】特開平10-214604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/00-9/18
H01G 9/21-9/28
H01M 50/00-50/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子を収容するケースと、
前記コンデンサ素子の少なくとも一部を覆うように配置された絶縁性の第1の熱放射層と、を備え、
前記ケースの厚み方向の熱伝導率λ
Cが、1W/m・K以上であり、
前記第1の熱放射層の熱放射率ε
1が、0.7以上であり、
さらに、熱伝導層を備え、
前記熱伝導層が、前記ケースの
前記コンデンサ素子に対向する内表面または
前記内表面とは反対側の外表面に接触して、その少なくとも一部を覆うように配置されており、
前記熱伝導層の厚み方向の熱伝導率λ
Lが、前記第1の熱放射層の厚み方向の熱伝導率λ
1以上である、電解コンデンサ。
【請求項2】
前記第1の熱放射層が、前記ケースの前
記内表面に、その少なくとも一部を覆うように配置されている、請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項3】
前記第1の熱放射層が、前記コンデンサ素子の表面に、その少なくとも一部を覆うように配置されている、請求項1または2に記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
さらに、絶縁性の第2の熱放射層を備え、
前記第2の熱放射層の熱放射率ε
2が、0.7以上であり、
前記第2の熱放射層が、前記ケースの前
記外表面に、その少なくとも一部を覆うように配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサに関し、特に放熱性の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサに交流電圧を印加すると、電解コンデンサには交流の充放電電流(リプル電流)が流れる。電解コンデンサを構成するコンデンサ素子はESR(等価直列抵抗)といわれる内部抵抗を有しているため、リプル電流により発熱する。この熱により、コンデンサ素子は劣化し易く、長期間の使用が困難になる場合がある。そこで、電解コンデンサのケースの表面に熱放射塗布層を設けるなどの放熱対策がなされている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のように、ケースの表面に熱放射性の層を設けただけでは、放熱効果は十分ではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記に鑑み、本発明の一局面は、コンデンサ素子と、前記コンデンサ素子を収容するケースと、前記コンデンサ素子の少なくとも一部を覆うように配置された絶縁性の第1の熱放射層と、を備え、前記ケースの厚み方向の熱伝導率λCが、1W/m・K以上であり、前記第1の熱放射層の熱放射率が、0.7以上である、電解コンデンサに関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、コンデンサ素子から生じる熱がケースの外部に放熱され易くなるため、高寿命化が可能になるとともに、リプル電流を高く設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の
第1実施形態に係る電解コンデンサ
の例を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の
第2実施形態に係る電解コンデンサ
の例を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の
第3実施形態に係る電解コンデンサ
の例を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の
第4実施形態に係る電解コンデンサ
の例を模式的に示す断面図である。
【
図5】本発明の
第5実施形態に係る電解コンデンサ
の例を模式的に示す断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るコンデンサ素子の構成を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態に係る電解コンデンサは、コンデンサ素子と、コンデンサ素子を収容するケースと、コンデンサ素子の少なくとも一部を覆うように配置された絶縁性の第1の熱放射層と、を備える。ケースの厚み方向の熱伝導率λCは1W/m・K以上であり、第1の熱放射層の熱放射率ε1は0.7以上である。ここで、ケースの厚み方向の熱伝導率とは、ケースの内表面から外表面に向かう方向における熱伝導率を意味している。
【0009】
熱放射率εは、仮想的な物体である黒体の熱放射量に対するその物質の熱放射量の割合であり、熱吸収率αと同じ数値である。つまり、熱放射率εの高い物質は、熱吸収率αも高い。そのため、本実施形態に係る電解コンデンサでは、コンデンサ素子から生じる熱は、高い熱放射率を有する第1の熱放射層に速やかに吸収されるとともにケースへと放射され、その後、厚み方向に高い熱伝導性を有するケースの外部へと効率よく伝導される。よって、高寿命化が可能になるとともに、リプル電流を高く設定することができる。
【0010】
(ケース)
コンデンサ素子は、例えば有底で中空構造のケースに収容されている。ケースの厚み方向の熱伝導率λCは1W/m・K以上であり、2W/m・K以上であることが好ましい。これにより、ケースの内部から外部への熱伝導性が向上する。
【0011】
ケースの素材としては特に限定されず、樹脂(エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂等)、金属(アルミニウム、鉄、ステンレス鋼等)、セラミックス(酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等)などが挙げられる。樹脂のように厚み方向の熱伝導率λCが1W/m・K未満の材質をケースに用いる場合、その材質に高い熱伝導性を有するフィラー(以下、第1の熱伝導フィラーと称す。)を配合することが好ましい。第1の熱伝導フィラーとしては特に限定されず、銀、銅、グラファイト、炭化珪素、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等が例示できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
第1の熱伝導フィラーの形状は特に限定されないが、厚み方向における熱伝導率を高めるためには、フィラー同士が接触して、効率的に熱が伝わることが好ましい。そのため、熱伝導フィラーは、粒子状であることが好ましい。粒子状とは、例えば、アスペクト比が1以上、2未満の形状である。また、高アスペクト比の熱伝導フィラーと低アスペクト比の熱伝導フィラーとを組み合わせて用いてもよい。これにより、熱伝導フィラーが最密充填化される。
【0013】
第1の熱伝導フィラーの平均粒径も特に限定されないが、例えば、1~50μmである。平均粒径は、体積粒度分布の累積体積50%における粒径(D50)である(以下、同じ)。平均粒径D50は、例えば、レーザー回折式の粒度分布測定装置を用いたレーザー回折散乱法によって測定される。
【0014】
ケースのコンデンサ素子に対向しない外表面は、樹脂フィルムによって被覆されていてもよい。樹脂フィルムには、必要に応じて製品番号、型名、メーカー名等の情報が印刷、捺印等により記載される。
【0015】
樹脂フィルムは、一般的に、中程度の熱放射率(例えば、0.6~0.7)を有するものの、熱伝導率は低い(例えば、0.1W/m・K)。ケースがこのような樹脂フィルムで被覆されている場合であっても、ケースの厚み方向の熱伝導率λCが高く、さらに、熱放射率εに優れる第1の熱放射層がケースに隣接して配置されていることにより、コンデンサ素子から生じる熱のケースの外部への放熱性は高まる。後述するように、第1の熱放射層、第2の熱放射層および熱伝導層の少なくとも1層をケースの外表面に配置する場合、樹脂フィルムは、外表面に配置される上記層よりも外側に配置される。
【0016】
(第1の熱放射層)
第1の熱放射層は、ケースの内表面、外表面あるいはコンデンサ素子の表面であって、
コンデンサ素子の少なくとも一部を覆うことができるような位置に配置される。第1の熱放射層は、ケースのコンデンサ素子に対向する内表面に、その少なくとも一部を覆うように配置されていてもよいし、コンデンサ素子の表面に、その少なくとも一部を覆うように配置されていてもよいし、ケースの外表面に、その少なくとも一部を覆うように配置されていてもよい。なかでも、コンデンサ素子から生じた熱を効率的に吸収できる点で、第1の熱放射層は、ケースの内表面および/またはコンデンサ素子の表面に接触するように配置されることが好ましい。
【0017】
第1の熱放射層の熱放射率ε1は0.7以上であり、0.85以上であることが好ましい。これにより、コンデンサ素子から生じた熱は、速やかに第1の熱放射層に吸収されるとともに、ケースへと効率よく放射される。熱放射率ε1は1以下である。
【0018】
第1の熱放射層は、例えば、絶縁性であり熱放射性を有するフィラー(以下、第1の熱放射フィラーと称す。)と、絶縁性のバインダ(以下、第1のバインダと称す。)と、を含む。
【0019】
第1の熱放射フィラーとしては、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタンおよび酸化鉄等のセラミックス、エンステタイト(MgO・SiO2)、ディオブサイド(CaO・MgO・2SiO2)、フォルステライト(2Mg2・SiO4)、ジルコン(ZrO2・SiO2)、コージェライト(2MgO・2Al2O3・5SiO)、ハイドロタルサイト(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O)、ステアタイト(MgO・SiO2)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、スポジュメン(Li2O・Al2O3・SiO2)、ワラストナイト(CaSiO3)、アノーサイト(CaAl2Si2O8)、アルバイト(NaAlSi3O8)、ウィレマイト、ペタライト等の天然鉱物あるいは人工鉱物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、第1の熱放射フィラーは、熱放射性に優れる点で、アルミニウム元素、マグネシウム元素およびケイ素よりなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、特に、これらの元素をすべて含むことが好ましい。具体的には、コージェライトが好ましい。第1の熱放射フィラーの平均粒径は特に限定されず、例えば、1.0~50μmである。
【0020】
第1のバインダとしては、特に限定されず、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂等)、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等)、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂およびシリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂、および、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、シアネート樹脂、フェノール樹脂およびレゾール樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、耐熱性に優れる点で、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂が好ましい。
【0021】
第1の熱放射層における第1の熱放射フィラーの含有量は、特に限定されない。なかでも、熱放射性の観点から、第1の熱放射フィラーの上記含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。一方、第1の熱放射層の強度の観点から、第1の熱放射フィラーの上記含有量は、95質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。
【0022】
第1の熱放射層の厚みも特に限定されない。ただし、第1の熱放射層が過度に薄いと、第1の熱放射層が形成されるケースあるいはコンデンサ素子の表面による熱の反射率が影響して、第1の熱放射層の効果が十分に発揮されない場合がある。金属光沢を備える物質は、一般的に熱の反射率が高く、放射率が低い。そのため、例えば、第1の熱放射層がケ
ースの内表面に配置されていて、かつ、ケースの内表面が金属光沢を有する場合、第1の熱放射層によって吸収され、ケースに向けて放射された熱は、ケースの内表面に反射され易くなって、外部に放出され難くなる。この点を考慮すると、第1の熱放射層の厚みは、10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましい。一方、電解コンデンサの小型化の観点から、第1の熱放射層の厚みは、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。
【0023】
第1の熱放射層は、熱伝導性を有することが好ましく、厚み方向に高い熱伝導性を有することがより好ましい。これにより、第1の熱放射層に吸収された熱は、ケースに向けて放射されるとともに伝導されるため、ケースの外部への放熱性がさらに高まる。この場合、第1の熱放射層とケースとは接触していることがより好ましい。第1の熱放射層の厚み方向の熱伝導率λ1は、1W/m・K以上であることが好ましく、2W/m・K以上であることがより好ましい。これにより、ケースへの熱伝導性が向上する。
【0024】
(第2の熱放射層)
電解コンデンサは、第1の熱放射層とともに、絶縁性の第2の熱放射層を備えることが好ましい。第2の熱放射層は、第1の熱放射層とケースを挟んで対向するように配置することが好ましい。これにより、コンデンサ素子から生じた熱をさらに効率的に放射することができる。例えば、第1の熱放射層がケースの内表面に配置される場合、第2の熱放射層は、ケースの内表面とは反対側の外表面に、その少なくとも一部を覆うように配置されることが好ましい。第1の熱放射層がコンデンサ素子の表面に配置される場合も同様に、第2の熱放射層は、ケースの外表面に、その少なくとも一部を覆うように配置されることが好ましい。
【0025】
第2の熱放射層の熱放射率ε2は特に限定されないが、熱放射性の観点から、0.7以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましい。熱放射率ε2は1以下である。第2の熱放射層の構成は特に限定されないが、第1の熱放射層と同様の構成であってもよい。第2の熱放射層の厚みも、第1の熱放射層と同じであってもよい。
【0026】
第2の熱放射層も、熱伝導性を有することが好ましく、厚み方向に高い熱伝導性を有することがより好ましい。第2の熱放射層の厚み方向の熱伝導率λ2は、1W/m・K以上であることが好ましく、2W/m・K以上であることがより好ましい。
【0027】
(熱伝導層)
電解コンデンサは、第1の熱放射層とともに、熱伝導層を備えていてもよい。熱伝導層を、ケースの内表面または外表面に接触させて、その少なくとも一部を覆うように配置することにより、ケースの内部から外部への熱伝導性が高まって、放熱性がさらに向上する。
【0028】
例えば、第1の熱放射層がケースの内表面に配置される場合、熱伝導層は、第1の熱放射層とケースとの間に介在するように配置してもよいし、ケースの外表面に配置してもよい。なかでも、ケース内部の温度を低下させ易い点で、熱伝導層は、第1の熱放射層とケースとの間に介在するように配置されることが好ましい(第4実施形態)。第1の熱放射層がコンデンサ素子の表面に配置される場合も同様である。
【0029】
熱伝導層の厚み方向の熱伝導率λLは、第1の熱放射層の厚み方向の熱伝導率λ1以上であることが好ましい。なかでも、ケースの内部から外部への熱伝導性がより向上する点で、熱伝導率λLは、1W/m・K以上であることが好ましく、2W/m・K以上であることがより好ましい。
【0030】
熱伝導層は、例えば、熱伝導フィラー(以下、第2の熱伝導フィラーと称す。)とバインダ(以下、第2のバインダと称す。)とを含む。
第2の熱伝導フィラーとしては、第1のフィラーと同じものが挙げられる。なかでも、熱伝導性に優れる点で、炭化ケイ素が好ましい。第2の熱伝導フィラーの平均粒径は特に限定されず、例えば、5~50μmである。第2のバインダとしては特に限定されず、第1のバインダと同様の樹脂が挙げられる。なかでも、耐熱性に優れる点で、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂が好ましい。
【0031】
熱伝導層における第2の熱伝導フィラーの含有量は、特に限定されない。なかでも、熱伝導性の観点から、第2の熱伝導フィラーの上記含有量は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。一方、熱伝導層の強度の観点から、第2の熱伝導フィラーの上記含有量は、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
【0032】
熱伝導層の厚みも特に限定されないが、熱伝導性の観点から、10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましい。一方、電解コンデンサの小型化の観点から、熱伝導層の厚みは、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。
【0033】
以下、図面を参照しながら、各実施形態について詳細に説明する。
図1~5は、各実施形態に係る電解コンデンサ100の断面模式図である。ただし、電解コンデンサ100の構成はこれに限定されない。
【0034】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る電解コンデンサ100は、
図1に示すように、コンデンサ素子10と、コンデンサ素子を収容するケース20と、ケース20のコンデンサ素子10に対向する内表面に、その少なくとも一部を覆うように配置された絶縁性の第1の熱放射層30Aと、を備える。
【0035】
このような電解コンデンサ100は、例えば、以下のようにして製造される。まず、ケース20の材料である板状物に、第1の熱放射層30Aの材料(例えば、第1の熱放射フィラーと第1のバインダとの混合物)を塗布するか、上記材料をシート状に成形したシート材を積層して、積層体を得る。得られた積層体を、第1の熱放射層30Aが内側になるようにケース20の形状に成型し、その後、コンデンサ素子10を収容する。ケース20が金属材料から構成される場合、ケース20の成型は、例えば絞り加工により行われる。第1の熱放射層30Aの材料が熱硬化性樹脂を含む場合、ケース20を成型した後、加熱して、熱硬化性樹脂を硬化させる。ケース20の加熱は、コンデンサ素子10が収容される前であってもよいし、収容された後であってもよい。
【0036】
熱放射率εの高い第1の熱放射層30Aが、熱源であるコンデンサ素子10に対面するように配置されるため、コンデンサ素子10から生じた熱は、速やかに第1の熱放射層30Aに吸収される。加えて、第1の熱放射層30Aは、厚み方向の熱伝導率λの高いケース20の内表面に形成されている。そのため、第1の熱放射層30Aに吸収された熱は、ケース20の内表面から外表面に速やかに伝導されて、電解コンデンサ100の外部に放出される。
【0037】
電解コンデンサ100は、さらに、ケース20の開口を塞ぐ封口体21と、封口体21を覆う座板22と、封口体21から導出され、座板22を貫通するリード線23A、23Bと、各リード線とコンデンサ素子10の各電極とを接続するリードタブ24A、24Bと、を備える。ケース20の開口端近傍は、内側に絞り加工されており、開口端は封口体
21にかしめるようにカール加工されている。電解コンデンサ100は、さらに、コンデンサ素子10とともにケース20に収容される電解質を備える。
【0038】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る電解コンデンサ100は、
図2に示すように、絶縁性の第1の熱放射層30Aがコンデンサ素子10の表面に、その少なくとも一部を覆うように配置されていること以外、第1実施形態と同様である。この場合、第1の熱放射層30Aからケース20への熱伝導性が高まる点で、第1の熱放射層30Aとケース20とは接触していることが好ましい。
【0039】
このような電解コンデンサ100は、例えば、コンデンサ素子10の表面に、第1の熱放射層30Aの材料を塗布するか、上記材料をシート状に成形したシート材を熱溶融して接着した後、ケース20に収容することにより得られる。第1の熱放射層30Aの材料が熱硬化性樹脂を含む場合、コンデンサ素子10の表面を第1の熱放射層30Aの材料で被覆した後、コンデンサ素子10を加熱して、熱硬化性樹脂を硬化させる。コンデンサ素子10の加熱は、ケース20に収容される前であってもよいし、収容された後であってもよい。
【0040】
第1の熱放射層30Aがコンデンサ素子10に接触しているため、コンデンサ素子10から生じた熱は、より速やかに第1の熱放射層30Aに吸収される。加えて、第1の熱放射層30Aは、厚み方向の熱伝導率λに優れるケース20に対向するように配置されているため、第1の熱放射層30Aに吸収された熱は、ケース20の内表面から外表面に速やかに伝導されて、電解コンデンサ100の外部に放出される。
【0041】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る電解コンデンサ100は、
図3に示すように、ケース20の内表面に配置された第1の熱放射層30Aとともに、ケース20の外表面に、その少なくとも一部を覆うように配置された第2の熱放射層30Bを備えること以外、第1実施形態と同様である。
【0042】
このような電解コンデンサ100は、例えば、以下のようにして製造される。まず、ケース20の材料である板状物の一方の面に、第1の熱放射層30Aの材料を塗布するか、上記材料をシート状に成形したシート材を積層し、板状物の他方の面に、第2の熱放射層30Bの材料を塗布するか、上記材料をシート状に成形したシート材を積層して、積層体を得る。得られた積層体を、第1の熱放射層30Aが内側になるようにケース20の形状に成型した後、コンデンサ素子10を収容する。あるいは、第1実施形態と同様の方法により、内表面に第1の熱放射層30Aが配置されたケース20を作製した後、ケース20の外表面に、第2の熱放射層30Bの材料を塗布してもよい。第1の熱放射層30Aの材料および/または第2の熱放射層30Bの材料が熱硬化性樹脂を含む場合、ケース20を成型した後、加熱して、熱硬化性樹脂を硬化させる。ケース20の加熱は、コンデンサ素子10が収容される前であってもよいし、収容された後であってもよい。
【0043】
本実施形態では、第1の熱放射層30Aと第2の熱放射層30Bとが、ケース20を介して対向している。コンデンサ素子10から生じた熱は、熱源であるコンデンサ素子10に対面するように配置された第1の熱放射層30Aに速やかに吸収される。そして、第1の熱放射層30Aに吸収された熱は、ケース20の内表面から外表面に速やかに伝導される。このとき、熱放射性の高い第2の熱放射層30Bがケース20の外表面に配置されているため、熱は、ケース20の厚み方向にさらに伝導され易い。ケース20の外表面に伝導された熱は、第2の熱放射層30Bによって効率よくケース20の外部に放射される。
【0044】
[第4実施形態]
第4実施形態に係る電解コンデンサ100は、
図4に示すように、第1の熱放射層30Aとケース20との間に介在するように、ケース20の内表面に接触させて配置された熱伝導層40を備えること以外、第1実施形態と同様である。
【0045】
このような電解コンデンサ100は、例えば、以下のようにして製造される。まず、ケース20の材料である板状物の一方の面に、熱伝導層40の材料(例えば、第2の熱伝導フィラーと第2のバインダとの混合物)を塗布するか、上記材料をシート状に成形したシート材を積層し、その表面に、さらに第1の熱放射層30Aの材料を塗布するか、上記材料をシート状に成形したシート材を積層して、積層体を得る。得られた積層体を、第1の熱放射層30Aが内側になるようにケース20の形状に成型した後、コンデンサ素子10を収容する。第1の熱放射層30Aの材料および/または熱伝導層40の材料が熱硬化性樹脂を含む場合、ケース20を成型した後、加熱して、熱硬化性樹脂を硬化させる。ケース20の加熱は、コンデンサ素子10が収容される前であってもよいし、収容された後であってもよい。
【0046】
熱放射率ε(熱吸収率α)の高い第1の熱放射層30Aが、熱源であるコンデンサ素子10に対面するように配置されるため、コンデンサ素子10から生じた熱は、速やかに第1の熱放射層30Aに吸収される。そして、熱伝導層40が、ケース20の内表面に接触し、その少なくとも一部を覆うように配置されていることにより、第1の熱放射層30Aに吸収された熱は、熱伝導層40からケース20の内表面に速やかに伝導されるとともに、ケース20外表面にまで速やかに伝導されて、電解コンデンサ100の外部に放出される。熱伝導層40が、ケース20の外表面に接触させて配置される場合も、同様である。
【0047】
[第5実施形態]
第5実施形態に係る電解コンデンサ100は、
図5に示すように、絶縁性の第1の熱放射層30Aがコンデンサ素子10の表面全体を覆うように配置されていること以外、第1実施形態と同様である。
【0048】
このような電解コンデンサ100は、例えば、コンデンサ素子10をケース20に収容した後、ケース20に第1の熱放射層30Aの材料を充填することにより得られる。第1の熱放射層30Aの材料が熱硬化性樹脂を含む場合、ケース20に熱放射層30Aの材料を充填した後、加熱して、熱硬化性樹脂を硬化させる。この方法によれば、コンデンサ素子10の表面全体を覆い、かつ、ケース20に接触した第1の熱放射層30Aを容易に形成することができる。さらに、この方法によれば、ケース20とコンデンサ素子10との間を埋めるように第1の熱放射層30Aが形成されるため、放熱性はさらに向上する。
【0049】
第1の熱放射層30Aは、コンデンサ素子10の表面全体を覆うため、コンデンサ素子10から生じた熱は、より速やかに第1の熱放射層30Aに吸収される。加えて、第1の熱放射層30Aは、厚み方向の熱伝導率λに優れるケース20に接触しているため、第1の熱放射層30Aに吸収された熱は、ケース20の内表面から外表面に速やかに伝導されて、電解コンデンサ100の外部に放出される。
【0050】
(コンデンサ素子)
以下、本実施形態に係るコンデンサ素子を図面を参照しながら説明する。
図6は、コンデンサ素子10の一部を展開した概略図である。ただし、コンデンサ素子10の構成はこれに限定されない。
【0051】
例えば、コンデンサ素子10は、箔状の陽極11と箔状の陰極12とこれらの間に介在するセパレータ13とを備える。陽極11および陰極12は、セパレータ13を介在させ
ながら捲回されて、捲回体を形成している。捲回体の最外周は、巻止めテープ14により固定される。陽極11は、リードタブ24Aと接続され、陰極12は、リードタブ24Bと接続されている。また、コンデンサ素子10は、陽極11および陰極12をセパレータ13を介在させながら積層させた、積層型であってもよい。
【0052】
コンデンサ素子10は、弁作用金属を含む焼結体(多孔質体)を陽極体として備えていてもよい。焼結体を用いる場合、陽極側のリードの一端は、焼結体に埋め込まれる。このようなコンデンサ素子は、例えば、上記の陽極体と、陽極体を覆う誘電体層と、誘電体層を覆う陰極部とを備える。陰極部は、例えば、誘電体層を覆う固体電解質層と、固体電解質層を覆う陰極引出層とを備える。
【0053】
(陽極)
陽極11は、例えば、陽極体と陽極体を覆う誘電体層とを備える。
陽極体は、弁作用金属、弁作用金属を含む合金、および弁作用金属を含む化合物などを含むことができる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。弁作用金属としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタンが好ましく使用される。陽極体の表面は、多孔質である。このような陽極体は、例えば、エッチングなどにより弁作用金属を含む基材(箔状または板状の基材など)の表面を粗面化することで得られる。
【0054】
誘電体層は、弁作用金属の酸化物(例えば酸化アルミニウム、酸化タンタル)を含む。誘電体層は、陽極体の多孔質な表面(孔の内壁面を含む)に沿って形成される。
【0055】
誘電体層は、例えば、陽極体の表面を、化成処理などにより陽極酸化することで形成される。陽極酸化は、公知の方法、例えば、化成処理などにより行うことができる。化成処理は、例えば、陽極体を化成液中に浸漬することにより、陽極体の表面に化成液を含浸させ、陽極体をアノードとして、化成液中に浸漬したカソードとの間に電圧を印加することにより行うことができる。
【0056】
(陰極)
陰極12は、陰極としての機能を有していればよく、特に限定されない。陰極12は、例えば陽極11と同様に、弁作用金属、弁作用金属を含む合金、および弁作用金属を含む化合物などにより形成される。必要に応じて、陰極12の表面を粗面化してもよい。
【0057】
(セパレータ)
セパレータ13としては、セルロース繊維製の不織布、ガラス繊維製の不織布、ポリオレフィン製の微多孔膜、織布、不織布などが好ましく用いられる。セパレータ13の厚みは、例えば10~300μmであり、10~60μmが好ましい。
【0058】
(電解質)
電解質としては、電解液、固体電解質、またはその両方を用いることができる。
電解液としては、非水溶媒であってもよく、非水溶媒とこれに溶解させたイオン性物質(溶質、例えば、有機塩)との混合物であってもよい。非水溶媒は、有機溶媒でもよく、イオン性液体でもよい。非水溶媒としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、スルホラン、γ-ブチロラクトン、N-メチルアセトアミドなどを用いることができる。有機塩としては、例えば、マレイン酸トリメチルアミン、ボロジサリチル酸トリエチルアミン、フタル酸エチルジメチルアミン、フタル酸モノ1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム、フタル酸モノ1,3-ジメチル-2-エチルイミダゾリニウムなどが挙げられる。
【0059】
固体電解質は、例えば、マンガン化合物や導電性高分子を含む。導電性高分子としては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンおよびこれらの誘導体などを用いることができる。固体電解質層は、ドーパントを含んでもよい。より具体的には、固体電解質層は、導電性高分子としてポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、および、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸(PSS)を含むことができる。
【0060】
導電性高分子を含む固体電解質は、例えば、原料モノマーを、陽極体に形成された誘電体層上で化学重合および/または電解重合することにより、形成することができる。あるいは、導電性高分子が溶解した溶液、または、導電性高分子が分散した分散液を、誘電体層に塗布することにより、形成することができる。ただし、固体電解質は、陽極11と陰極12との間に配置されればよく、陽極11、セパレータ13および陰極12を巻回した巻回体を、原料モノマーあるいは導電性高分子を含む処理液に含浸させることにより、形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る電解コンデンサは、放熱性に優れるため、様々な用途に利用できる。
【符号の説明】
【0062】
100:電解コンデンサ
10:コンデンサ素子
11:陽極
12:陰極
13:セパレータ
14:巻止めテープ
20:ケース
21:封口体
22:座板
23A、23B:リード線
24A、24B:リードタブ
30A:第1の熱放射層
30B:第2の熱放射層
40:熱伝導層