(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】モータユニット及び電動自転車
(51)【国際特許分類】
B62M 6/55 20100101AFI20230317BHJP
B62M 6/40 20100101ALI20230317BHJP
B62M 7/12 20060101ALI20230317BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20230317BHJP
【FI】
B62M6/55
B62M6/40
B62M7/12
H02K11/33
(21)【出願番号】P 2018099157
(22)【出願日】2018-05-23
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西森 雅人
(72)【発明者】
【氏名】川上 将史
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-292696(JP,A)
【文献】特開2011-114979(JP,A)
【文献】特開2002-220078(JP,A)
【文献】特開2017-189033(JP,A)
【文献】特開2017-027005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/55
B62M 6/40
B62M 7/12
H02K 11/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に並ぶ第一面及び第二面を有する基板と、
少なくとも1つの端子を有し、前記厚さ方向において前記第一面よりも前記第二面の近くに配置されたモータと、
前記第一面に実装された少なくとも1つの通電部材と、
を備え、
前記基板は、前記第一面から前記第二面まで貫通して前記端子又は前記通電部材が通される少なくとも1つの貫通部を有し、
前記通電部材は、少なくとも一部が変形可能であり、前記端子に接続されており、
前記基板は、前記モータの出力
軸側に配置されている、
モータユニット。
【請求項2】
前記通電部材がハーネスである、
請求項1記載のモータユニット。
【請求項3】
前記端子が前記第一面から突出し、
前記通電部材のうち前記端子に接続された部分は、前記第二面よりも前記第一面の近くに位置している、
請求項1又は請求項2記載のモータユニット。
【請求項4】
前記通電部材は、少なくとも一部に弾性を有し、
前記通電部材は、前記端子に対し、固着具を介して固定されている、
請求項3記載のモータユニット。
【請求項5】
前記端子が、前記第一面よりも前記第二面の近くに位置しており、
前記通電部材が前記貫通部に通された状態で前記端子に接続されている、
請求項1又は請求項2記載のモータユニット。
【請求項6】
前記第一面において、前記貫通部の外側部分が電気的に絶縁されている、
請求項1~5のいずれか1つに記載のモータユニット。
【請求項7】
前記基板に実装されたスイッチング素子を更に備え、
前記通電部材を複数備えており、
前記複数の通電部材の各々は、前記スイッチング素子に対し回路を介して接続される接続部を有し、
前記複数の通電部材の少なくとも1つの前記接続部が、前記厚さ方向に見て、前記貫通部と前記スイッチング素子との間にある、
請求項1~6のいずれか1つに記載のモータユニット。
【請求項8】
フレームと、
前記フレームに取り付けられた請求項1~7のいずれか1つのモータユニットと、
前記フレームに取り付けられており、前記モータユニットから出力された動力により回転する車輪と、
を備えた電動自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータユニット及び電動自転車に関し、より詳細には、基板とモータとを有するモータユニット及び電動自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来のモータ駆動ユニットが開示されている。この特許文献1に記載のモータ駆動ユニットは、モータと基板とを備えている。モータは、ユニットケースの一側面に取り付けられている。基板は、ユニットケースの内側面のうち、モータ側とは反対側の内側面に取り付けられている。
【0003】
基板の実装面は、モータ側に向く面である。モータは、基板に対してハーネスを介して接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1記載のモータユニットでは、モータと基板とが、ユニットケースに対して、互いに反対側の側面に取り付けられているため、小型化が難しい。モータと基板との間の距離を短縮しようとしても、特許文献1記載のモータユニットでは、基板におけるハーネスの実装面がモータ側を向いているため、基板とモータとの距離を短縮しにくいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、モータに対して基板を近付けて、小型化を図ることが可能なモータユニット及び電動自転車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一態様のモータユニットは、基板と、モータと、少なくとも1つの通電部材とを備える。前記基板は、厚さ方向に並ぶ第一面及び第二面を有する。前記モータは、少なくとも1つの端子を有し、前記厚さ方向において前記第一面よりも前記第二面の近くに配置される。前記通電部材は、前記第一面に実装されている。前記基板は、前記第一面から前記第二面まで貫通して前記端子又は前記通電部材が通される少なくとも1つの貫通部を有する。前記通電部材は、少なくとも一部が変形可能であり、前記端子に接続されている。
【0008】
本発明に係る一態様の電動自転車は、フレームと、フレームに取り付けられた前記モータユニットと、車輪とを備える。前記車輪は、フレームに取り付けられており、モータユニットから出力された動力により回転する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る上記態様のモータユニット及び電動自転車は、モータに対して基板を近付けて、小型化を図ることができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る電動自転車の側面図である。
【
図2】
図2は、同上の電動自転車のモータユニットの拡大図である。
【
図4】
図4は、同上のモータと第一分割体と基板との分解斜視図である。
【
図6】
図6は、同上の基板において通電部材と端子とを接続した状態を示す断面図である。
【
図8】
図8は、変形例1に係るモータユニットの基板の拡大斜視図である。
【
図9】
図9は、変形例1に係るモータユニットの通電部材と端子とを接続した状態を示す断面図である。
【
図10】
図10は、変形例2に係るモータユニットの通電部材と端子とを接続した状態を示す断面図である。
【
図11】
図11は、変形例3に係るモータユニットの断面図である。
【
図12】
図12は、変形例4に係るモータユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)実施形態
(1.1)概要
本実施形態に係るモータユニット5は、
図6に示すように、基板8と、少なくとも1つの通電部材84と、モータ7とを備える。基板8は、厚さ方向に並ぶ第一面81と第二面82とを有する。通電部材84は、例えば、電気配線851を含むハーネス85であり、基板8の第一面81に実装されている。モータ7は、基板8の第一面81よりも第二面82の近くに配置されている。モータ7は、通電部材84に接続される端子76を有する。
【0012】
基板8には、第一面81から第二面82までを貫通する少なくとも1つの貫通部83が形成されている。貫通部83には、端子76又は通電部材84が通される。通電部材84の少なくとも一部は変形可能である。
【0013】
このため、本実施形態に係るモータユニット5によれば、モータ7に対して基板8を近付けることができ、モータユニット5の小型化を図ることができる。また、本実施形態に係るモータユニット5によれば、基板8とモータ7とを近付けても、基板8とモータ7の端子76とがはんだで固定されておらず、基板8に対して端子76が拘束されていない。このため、基板8及びモータ7が振動しても、端子76から掛かる力により基板8に生じる応力を低減することができる。
【0014】
(1.2)詳細
以下、本実施形態に係るモータユニット5について説明する。以下では、モータユニット5の一例として、電動自転車1に用いられるモータユニット5を説明する。ただしこれは、本開示に係るモータユニット5の一例に過ぎず、本開示に係るモータユニット5の用途を電動自転車1に限る意図ではない。
【0015】
(1.2.1)電動自転車
電動自転車1は、電気的な動力を用いて走行可能な自転車である。本実施形態では、電動自転車1は、使用者の踏む力(「踏力」という場合がある)をモータ7により補助する電動アシスト自転車であるが、本開示では、モータ7のみで自走可能な自転車であってもよい。要するに、本開示に係る電動自転車1は、電動アシスト自転車であってもよいし、モータ7のみで自走可能な自転車であってもよい。電動自転車1は、
図1に示すように、フレーム2と、複数の車輪4と、バッテリ装置3と、ハンドル93と、サドル94と、クランクアーム90及びペダル91と、モータユニット5と、を備える。複数の車輪4は、前輪41と後輪42とを有する。
【0016】
ここで、本開示では、電動自転車1の進む方向を「前方向」とし、その反対方向を「後方向」として定義する。また、前方向及び後方向の2方向を「前後方向」として定義し、前後方向に直交しかつ水平面に沿う2方向を「左右方向」として定義する。
【0017】
フレーム2は、少なくとも、前輪41,後輪42及びバッテリ装置3を保持可能な骨組みである。フレーム2は、本実施形態では、アルミニウムを主成分とするアルミニウム合金で構成される。ただし、本開示では、フレーム2は、アルミニウム合金に限らず、鉄,クロムモリブデン鋼,ハイテンスチール,若しくはチタン等の金属,又はカーボン等で構成されてもよい。
【0018】
フレーム2は、複数のパイプを含む。フレーム2は、本実施形態では、複数のパイプとして、下パイプ20,立パイプ21,複数(本実施形態では2つ)のチェーンステー22,複数(本実施形態では2つ)のシートステー23,上パイプ24,ヘッドパイプ25及び前ホーク26を備える。さらに、フレーム2は、ボトムブラケット27を備える。
【0019】
ここで、本開示でいう「パイプ」とは、細長くて中空な部材を意味し、断面の形状は特に限らない。例えば、パイプは、断面正円形又は断面長円形(楕円形を含む)等の円形断面だけでなく、断面正方形,断面長方形,断面六角形等の多角形断面を含む。
【0020】
ボトムブラケット27は、少なくとも、下パイプ20の下端部とチェーンステー22の前方向の端部とが接続される部分である。本実施形態では、ボトムブラケット27には、下パイプ20及びチェーンステー22に加えて、立パイプ21の下端部が接続される。モータユニット5は、本実施形態では、ボトムブラケット27に取り付けられる。
【0021】
下パイプ20は、ボトムブラケット27とヘッドパイプ25とをつなぐパイプである。下パイプ20は、ボトムブラケット27の前後方向における前側の端部からヘッドパイプ25まで延びており、その長手方向において、前方向に行くに従って上方向に行くように傾斜する。本実施形態では、下パイプ20には電池パック32が着脱可能に取り付けられる。
【0022】
立パイプ21は、サドル94を保持するパイプである。本実施形態では、立パイプ21は、ボトムブラケット27と上パイプ24とをつなぐ。立パイプ21は、本実施形態では、ボトムブラケット27の上端部から上パイプ24よりも上方まで延びており、その長手方向において、後方向に行くに従って上方向に行くように傾斜する。立パイプ21は、立パイプ21の長手方向に沿って移動し得るようにサドル94を保持する。
【0023】
複数のチェーンステー22は、ボトムブラケット27とシートステー23とをつなぐパイプである。各チェーンステー22は、ボトムブラケット27の後方向の端部からシートステー23の後方向の端部まで延びる。本実施形態では、チェーンステー22は、左右方向に離れて2つあり、2つのチェーンステー22の間に、後輪42が配置される。チェーンステー22の後方向の端部には、後輪42の軸(後輪軸421)が取り付けられる軸受け221が形成されており、後輪42が回転し得るように取り付けられる。
【0024】
複数のシートステー23は、立パイプ21の上端部とチェーンステー22とをつなぐパイプである。各シートステー23は立パイプ21の上端部からチェーンステー22の後方向の端部まで延びており、その長手方向が、後方向に行くに従って下方向に行くように傾斜する。ここで言う「立パイプ21の上端部」とは、立パイプ21の上方向の先端から立パイプ21の長手方向に沿って下方向に一定の寸法位置する部分までの一定の範囲を有する部分を意味する。本実施形態では、シートステー23は、左右方向に離れて2つあり、2つのチェーンステー22に対して一対一で接続される。
【0025】
上パイプ24は、ヘッドパイプ25と立パイプ21とをつなぐパイプである。より詳細には、上パイプ24は、ヘッドパイプ25と立パイプ21の上端部とをつなぐ。上パイプ24の長手方向の後側の端部は、立パイプ21の上端部に接続されている。上パイプ24は、立パイプ21の上端部からヘッドパイプ25まで延びており、その長手方向において前方向に行くほど上方に位置するように傾斜する。本実施形態では、フレーム2は、上パイプ24と立パイプ21とをつなぐ補強パイプ241を有する。
【0026】
ヘッドパイプ25は、上パイプ24の前方向の端部と下パイプ20の前方向の端部とが接続されるパイプである。ヘッドパイプ25は、前ホーク26とハンドル93とを、ヘッドパイプ25の中心軸回りに回転し得るように支持する。
【0027】
前ホーク26は、前輪41の軸(前輪軸411)回りに回転し得るように前輪41が取り付けられるパイプである。前ホーク26は、前輪軸411を支持する一対のレッグ261と、レッグ261の上端部からヘッドパイプ25の中心軸に沿って上側に延びたステアリングコラム262とを有する。前ホーク26は、ステアリングコラム262がヘッドパイプ25に嵌め込まれることで、ヘッドパイプ25に取り付けられている。ステアリングコラム262の上端部には、ハンドル93が取り付けられている。これにより、ハンドル93がヘッドパイプ25の中心軸回りに回転すると、前ホーク26がヘッドパイプ25の中心軸回りに回転し、前輪41がヘッドパイプ25の中心軸回りに回転する。
【0028】
前輪41は、前後方向に並ぶ2つの車輪4のうちの前側の車輪4である。前輪41は、本実施形態では、前ホーク26によって、前輪軸411回りに回転し得るように支持される。前輪軸411の長手方向は、左右方向に平行である。前輪41は、本実施形態では、モータユニット5から動力の伝達を受けない車輪4である。
【0029】
後輪42は、前後方向に並ぶ2つの車輪4のうちの後側の車輪4である。後輪42は、本実施形態では、2つのチェーンステー22によって、後輪軸421回りに回転可能に支持される。後輪軸421の長手方向は、左右方向に平行である。後輪42は、本実施形態ではリアスプロケット422(ここでは、カセットスプロケット)を有しており、モータユニット5の駆動スプロケット57に動力伝達体92(ここでは、チェーン)を介して連結される。これにより、モータユニット5の動力が後輪42に伝達され得る。
【0030】
バッテリ装置3は、モータユニット5に対して、電力を供給する装置である。ただし、本開示では、バッテリ装置3は、モータユニット5に加えて、ヘッドライト,又はモータ7のON/OFFの操作部等に電力を供給するように構成されてもよい。バッテリ装置3は、電気的エネルギーを蓄える二次電池としての電池パック32と、電池パック32をモータ7に電気的に接続するバッテリ装着部31と、を備える。
【0031】
(1.2.2)モータユニット
モータユニット5は、電動自転車1において、電気的な動力を発生させる装置である。モータユニット5で発生した動力は、動力伝達体92を介して、車輪42に伝達する。モータユニット5は、ペダル91から踏力の入力があると、駆動補助出力を発生させる。なお、本開示でいう「駆動補助出力」とは、踏力に対して、モータ7を用いて補う力を意味する。モータユニット5は、本実施形態では、ペダル91及びクランクアーム90から踏力の入力があると、その踏力の入力値(ここでは入力軸54の回転数及びトルク)を検出し、入力値に応じて、駆動補助出力を動力伝達体92に対して出力する。
【0032】
ここで、
図2には、モータユニット5の拡大図を示す。
図2では、ユニットケース51の一部を破断している。
図3は、
図2におけるA-A線断面図である。モータユニット5は、
図3に示すように、ユニットケース51と、入力軸54と、入力体55と、出力体56と、駆動スプロケット57と、ワンウェイクラッチ581,582と、減速機構59と、モータ7と、基板8と、を備える。
【0033】
ユニットケース51は、モータユニット5の機器を収める。ユニットケース51は、本実施形態では、入力軸54,入力体55,出力体56,ワンウェイクラッチ581,582,及び減速機構59等を収容する。ユニットケース51は、本実施形態では、アルミニウム合金により構成されているが、本開示では、ステンレス鋼,スチール,カーボン,又は合成樹脂等で構成されてもよい。ユニットケース51は、本実施形態では、ダイカストにより形成されている。ユニットケース51は、本実施形態では、第一分割体52と、第二分割体53とを備える。
【0034】
第一分割体52は、一方向(ここでは、右方向)に向いた開口面を有する有底筒状に形成されている。第一分割体52は、左右方向において開口面側とは反対側(ここでは左側)に位置する第一側壁521と、第一側壁521の周縁から一方向(右方向)に突出した第一周壁525とを備える。本実施形態では、第一側壁521と第一周壁525とは一体である。
【0035】
第一側壁521には、入力軸54が通される第一貫通孔522と、モータ7の出力軸74が通されるモータ用貫通孔523(
図4参照)と、モータ7の端子76が通される端子用孔524(
図4参照)が形成されている。第一側壁521の外面(モータユニット5の外側面)には、モータ7が固着具を介して取り付けられる。第一側壁521にモータ7が取り付けられると、モータ7の出力軸74はモータ用貫通孔523に通され、モータ7の端子76は端子用孔524に通される。
【0036】
第二分割体53は、一方向とは反対方向(ここでは、左方向)に向いた開口面を有する有底筒状に形成されている。第二分割体53は、左右方向のうち開口面側とは反対側(ここでは右側)に位置する第二側壁531と、第二側壁531の周縁から一方向(左方向)に突出した第二周壁533とを備える。本実施形態では、第二側壁531と第二周壁533とは一体である。第二側壁531には、左右方向において、第一貫通孔522と同心である第二貫通孔532が形成されている。
【0037】
ユニットケース51では、第一周壁525の端面と第二周壁533の端面とが合わさり、第一分割体52の開口面と第二分割体53の開口面とが合わさっている。この状態において、第一周壁525と第二周壁533とは、固着具によって連結される。これによって、第一分割体52と第二分割体53とは、互いに固定される。ユニットケース51に対し、第二貫通孔532及び第一貫通孔522には、入力軸54が通されており、要するに、入力軸54は、ユニットケース51を左右方向に貫通する。
【0038】
入力軸54は、クランクアーム90からの踏力が入力される軸体である。入力軸54は、本実施形態では、第一貫通孔522に対して同心状となるように、第一分割体52に取り付けられた軸受650と、第二貫通孔532に対して同心状となるように第二分割体53に取り付けられた軸受651と、で支持されている。これにより、入力軸54は、ユニットケース51に対して、左右方向に延びた軸541回りに回転し得る。
【0039】
ここで、本開示でいう「軸」とは、物体の回転運動の中心となる一定直線を意味する。本実施形態では、入力軸54の軸541(回転軸)は、第一分割体52に取り付けられた軸受650と第二分割体53に取り付けられた軸受651とで回転可能に支持された入力軸54の中心軸によって実現されている。本実施形態に係る「軸受」は、ボールベアリングであるが、本開示では、ころ軸受,すべり軸受,又は流体軸受等であってもよい。
【0040】
入力軸54の両端部の各々には、クランクアーム90が取り付けられている。入力軸54は、クランクアーム90から軸541回りの踏力が入力されると、軸541回りに回転する。入力軸54には、入力体55が取り付けられている。
【0041】
入力体55は、入力軸54の回転動力を出力体56に伝達する部材である。入力体55は、入力軸54と同軸上に配置されており、入力軸54の外周面に取り付けられている。入力体55は、左右方向に平行な中心軸を有する円筒状に形成されている。入力体55の内周面には、中心軸方向(ここでは左右方向)の少なくとも一部に、第一結合部551が形成されている。一方、入力軸54の長手方向の一部には、第一結合部551に連結される第二結合部542が形成されている。第一結合部551及び第二結合部542は、例えば、スプライン,セレーション,又は,キー及びキー溝等により構成される。これによって、入力体55は、入力軸54に対して、少なくとも軸541回りに固定されている。本実施形態では、入力体55と入力軸54とは別部品(別体)であるが、一体であってもよい。
【0042】
出力体56は、入力体55から受けた回転動力を駆動スプロケット57に伝達する部材である。出力体56は、入力軸54と同軸上に配置されている。出力軸74は、入力体55と同軸上において、入力体55の外周面に取り付けられた軸受652と、第二貫通孔532に対して同心状となるように第二分割体53に取り付けられた軸受651とで、軸541回りに回転可能に支持されている。出力体56は、出力部561と、歯部562とを備える。本実施形態では、出力部561と歯部562とは一体である。
【0043】
出力部561は、駆動スプロケット57が取り付けられる部分である。駆動スプロケット57は、出力部561に取り付けられると、出力部561に対して固定される。出力部561は、出力体56の左右方向における外側(ここでは右側)の端部に形成されており、ユニットケース51から突出している。
【0044】
歯部562は、減速機構59につながっている。具体的には、歯部562は、減速機構59が有する歯車(第二伝達歯車62)にかみ合っている。したがって、減速機構59から出力部561に入力された動力は、駆動スプロケット57に伝達される。
【0045】
入力体55と出力体56との間には、ワンウェイクラッチ581が配置されている。ここで、電動自転車1を前方向に加速するときの、軸541回りの一回転方向を加速方向とする。一方、電動自転車1を前方向に対して減速するときの軸541回りの一回転方向を減速方向とする。
【0046】
ワンウェイクラッチ581は、入力体55が出力体56に対して、加速方向に回転すると、入力体55と同じ角速度で出力体56を軸541回りの加速方向に回転させる。一方、ワンウェイクラッチ581は、入力体55が出力体56に対して、減速方向に回転すると、入力体55から出力体56への回転動力の伝達を遮断する。したがって、減速機構59から出力体56に入力された動力によって、出力体56が入力体55に対して加速方向に回転した場合、すなわち、入力体55が出力体56に対して減速方向に回転した場合、ワンウェイクラッチ581は、出力体56から入力体55への回転動力の伝達を遮断する。
【0047】
クランクアーム90から、入力軸54に対して、加速方向の回転動力が掛かると、入力軸54が軸541回りの加速方向に回転し、入力軸54の回転に従って入力体55が加速方向に回転する。入力体55が軸541回りの加速方向に回転すると、その回転動力は、ワンウェイクラッチ581を介して出力体56に伝達する。すると、入力体55は、出力体56を軸541回りの加速方向に回転させ、駆動スプロケット57を軸541回りの加速方向に回転させる。駆動スプロケット57は、動力伝達体92を介してリアスプロケット422を回転させ、後輪42を回転させる。これにより、電動自転車1は前方向に進む。
【0048】
モータ7は、駆動電力の供給を受けて回転動力を出力する。本開示でいう「駆動電力」とは、モータ7を駆動するための電力を意味する。駆動電力は、基板8に形成された制御部から供給される電力である。制御部はバッテリ装置3に接続されている。モータ7は、金属カップ71と、ステータ72と、ロータ73と、出力軸74とを備える。
【0049】
金属カップ71は、ステータ72とロータ73とを収容する。金属カップ71は、一方向(ここでは右方向)に開口面を有する有底筒状に形成されており、第一分割体52に取り付けられる。第一分割体52に金属カップ71が取り付けられると、金属カップ71の開口面は、第一側壁521の外面に対向する。
【0050】
ステータ72は、金属カップ71の内側に取り付けられており、金属カップ71に対して固定されている。ステータ72は、本実施形態では、円筒状に形成されており、金属カップ71の内周面に嵌め込まれている。ロータ73は、ステータ72の内側に配置されており、ステータ72に対して回転可能である。ロータ73には出力軸74が取り付けられている。
【0051】
出力軸74は、モータ7の回転動力を出力する。出力軸74は、ロータ73に対して固定されている。出力軸74の長手方向におけるロータ73とは反対側の端部は、金属カップ71が第一分割体52に取り付けられると、モータ用貫通孔523(
図4参照)を介して、ユニットケース51内に通される。出力軸74は、金属カップ71に取り付けられた軸受653と、第二分割体53に取り付けられた軸受654と、に左右方向に延びた軸741回りに回転可能に支持されている。出力軸74において、ユニットケース51内に通される箇所には、減速機構59につながる歯部742が形成されている。
【0052】
減速機構59は、モータ7の出力軸74からの回転動力を受け、当該回転動力を、減速した上で出力体56に伝達する。減速機構59は、本実施形態では、伝達回転軸60と、第一伝達歯車61と、第二伝達歯車62とを備える。
【0053】
伝達回転軸60は、左右方向に延びた軸601回りに回転可能である。伝達回転軸60は、第一分割体52に取り付けられた軸受655と、第二分割体53に取り付けられた軸受656と、で支持されている。伝達回転軸60には、第一伝達歯車61と、第二伝達歯車62とが同軸上に取り付けられている。
【0054】
出力軸74を支持する軸受654は、出力軸74と略直交する方向のうちの伝達回転軸60と出力軸74とが並ぶ方向に観て、伝達回転軸60を支持する軸受656と少なくとも一部が重なるように配置される。ここで、出力軸74の長手方向におけるロータ73とは反対側の端部を支持する軸受654を、出力軸74の長手方向において、第二伝達歯車62よりも、ロータ73とは反対側の端部側に配置することが望ましい。本構成により、出力軸74の軸受653と軸受654との間の距離を長く取ることができ、出力軸74の回転が安定する。そのため、出力軸74の歯部742と第一伝達歯車61との歯当たりが改善し、モータユニット5の耐久性が向上する。
【0055】
第一伝達歯車61は、モータ7の出力軸74の歯部742にかみ合っている。第一伝達歯車61は、出力軸74の軸741回りの回転動力を受け、軸601回りに回転し得る。第一伝達歯車61と伝達回転軸60との間には、ワンウェイクラッチ582が配置されている。ワンウェイクラッチ582は、伝達回転軸60に対して、第一伝達歯車61が軸601回りにおける加速方向に回転すると、第一伝達歯車61と同じ角速度で伝達回転軸60を軸601回りの加速方向に回転させる。一方、ワンウェイクラッチ582は、第一伝達歯車61が伝達回転軸60に対して、軸601回りの減速方向に回転すると、第一伝達歯車61と伝達回転軸60との間の回転動力の伝達を遮断する。したがって、例えば、伝達回転軸60が軸601回りの加速方向に回転しているときに、モータ7の出力軸74の軸741回りの回転が止まった場合、第一伝達歯車61が伝達回転軸60に対して、軸601回りの減速方向に回転する。この場合、ワンウェイクラッチ582により、伝達回転軸60と第一伝達歯車61との間の動力の伝達が遮断される。
【0056】
第二伝達歯車62は、出力体56の歯部562にかみ合っている。第二伝達歯車62は、伝達回転軸60に対して固定されており、伝達回転軸60の軸601回りの回転に対し、同じ角速度で軸601回りに回転する。第二伝達歯車62は、本実施形態では、伝達回転軸60とは別部品(別体)であるが、第二伝達歯車62と伝達回転軸60とは一体でもよい。
【0057】
モータ7の出力軸74が軸741回りの加速方向に回転すると、第一伝達歯車61は、軸601回りの加速方向に回転する。第一伝達歯車61の軸601回りの加速方向の回転動力は、ワンウェイクラッチ582を介して、伝達回転軸60に伝達され、出力体56を加速方向に回転させる。また、上述したように、クランクアーム90から入力された踏力による動力も、出力体56に伝達される。これにより、出力体56では、踏力による力と、モータ7からの駆動補助出力とが合わさる。要するに、本実施形態に係るモータユニット5は、いわゆる一軸式のモータユニット5である。
【0058】
また、電動自転車1が前方向に進んでいるときに、モータ7による出力が止まると、伝達回転軸60に対して、第一伝達歯車61が、軸601回りの減速方向に回転する。したがって、伝達回転軸60と第一伝達歯車61との間の動力の伝達は遮断される。例えば、モータ7への駆動電力の供給が停止した場合等、モータ7の駆動が停止した場合でも、駆動スプロケット57に減速方向の回転動力を加えるのを抑え、また、クランクアーム90に過度な負荷が掛かるのを抑えることができる。
【0059】
本実施形態に係るモータユニット5は、
図3に示すように、トルク検出部63と、回転数検出部64と、制御部を有する基板8と、を更に備える。トルク検出部63,回転数検出部64,及び基板8はユニットケース51に収容されている。
【0060】
トルク検出部63は、踏力の入力を受けたときに、入力軸54に発生したトルクを検出する。トルク検出部63は、本実施形態では、磁歪式のトルクセンサである。ただし、本開示では、トルク検出部63は、磁歪式のトルクセンサに限らず、ポテンショメータを用いた方式であってもよい。
【0061】
回転数検出部64は、入力軸54の単位時間当たりの回転数を検出する。回転数検出部64は、入力体55に設けられた検知体641と、第一分割体52に取り付けられた検知素子642とを備える。回転数検出部64は、本実施形態では、光学式の検出器であるが、本開示では、電磁式であってもよい。
【0062】
基板8は、本実施形態では、プリント基板である。基板8は、制御部を有する。制御部は、トルク検出部63からの電気信号及び回転数検出部64からの電気信号が入力されると、この電気信号に基づいてロータ73の角速度を制御する。制御部は、例えば、マイクロコンピュータを主構成要素とし、ROM(Read Only Memory)等の記憶部に記憶されたプログラムを実行することで、各要素の動作を制御することができる。
【0063】
基板8は、本実施形態では、第一分割体52の第一側壁521に沿って配置されており、モータ7の出力軸74の長手方向(ここでは左右方向)に見て、少なくともモータ7の一部に重なっている。基板8の厚さ方向は、本実施形態では、出力軸74の長手方向に平行である。基板8は、厚さ方向に並ぶ第一面81と第二面82とを備える。
【0064】
第一面81は、基板8の一対の主面のうち、モータ7側とは反対側(ここでは右側)を向く面である。第一面81は、本実施形態では、電気部品811の実装面であり、複数の電気部品811が実装されている。本開示において「第一面81に実装される」とは、電気部品811等の実装部品が、第一面81に沿って配置された状態で基板8に取り付けられていることを意味する。すなわち、「第一面81に実装される」は、基板8の第一面81に配置された実装部品が第一面81にはんだで固定されていることのほか、基板8の第一面81に沿って配置された実装部品が、第2面82にはんだで固定されていることも含む。
【0065】
電気部品811は、本実施形態では、例えば,コンデンサ,集積回路(ホールIC),FET(電界効果トランジスタ;Field effect transistor)812,ダイオード,コイル,抵抗器,又はコネクタ等である。FET812は、モータ7に電力を供給するためのスイッチング素子である。本実施形態では、スイッチング素子は、接合型FETと、MOSFETと、MESFETであってもよい。
【0066】
第二面82は、第一分割体52の第一側壁521の内面に対向する面であり、基板8の一対の主面のうち、モータ7側(ここでは左側)を向く面である。第二面82の少なくとも一部は、モータ7のユニットケース51側の面700(ここでは右側の面)に対向している。本実施形態では、モータ7は、第一面81よりも第二面82に近い位置に配置されている。すなわち、モータ7と第二面82との距離は、モータ7と第一面81との距離よりも短い。
【0067】
ただし、本開示では、モータ7と基板8との間の距離は特に限らない。基板8の第二面82とモータ7とは、接触していてもよいし、間に隙間が介在してもよい。また、本実施形態では、モータ7は、出力軸74の長手方向にみて、基板8に重なっているが、本開示では、重なっていなくてもよい。
【0068】
図4は、モータ7と、第一分割体52と、基板8との分解斜視図である。モータ7は、
図4に示すように、第一分割体52の外側面に当たる面701から突出する突出部75と、突出部75に設けられた複数の端子76とを備える。
【0069】
突出部75は、第一分割体52の端子用孔524に通される。突出部75の先端面は、基板8に対向する。突出部75の先端面は、本実施形態では、基板8の第二面82との間に隙間がある。複数の端子76は、突出部75の先端面から、基板8に向かって突出しており、左右方向における基板8側に沿って延びている。本実施形態に係る端子76を「オス端子762」という場合がある。
【0070】
基板8は、複数(ここでは3つ)の貫通部83を有する。複数の貫通部83は、本実施形態では、複数の端子76が通される孔であり、第一面81から第二面82まで貫通する。貫通部83は、本実施形態では、左右方向にみて長円形に形成されている。ただし、本開示では、貫通部83は、楕円形,四角形,円形,又は多角形等であってもよい。また、本開示では、貫通部83は、本実施形態における複数の孔がつながった1つの孔であってもよいし、基板8の外縁部から切り欠かれた切欠きであってもよい。
【0071】
基板8は、第一分割体52の第一周壁525で位置決めされ、この状態でねじ等の固着具で第一分割体52に取り付けられる。第一分割体52の第一側壁521の所定位置に基板8が取り付けられ、モータ7が第一分割体52の第一側壁521の外面に取り付けられると、
図5に示すように、端子76は貫通部83に通され、基板8の第一面81から突出する。本実施形態では、複数の端子76は、複数の貫通部83に対して一対一で通される。各貫通部83に、対応する端子76が通されると、本実施形態では、貫通部83の内周面と端子76との間に隙間がある。
【0072】
モータ7の端子76には、
図6に示すように、通電部材84が接続される。通電部材84は、制御部に接続されており、モータ7の端子76に接続されることで、モータ7に電力を送る電路の一部を構成する。通電部材84は、本実施形態では、ハーネス85である。本実施形態に係るハーネス85は、例えば、複数の電線を有するワイヤーハーネスである。そして、ワイヤーハーネス85における複数の電線の少なくとも1本がモータ7の端子76に接続されている。ただし、本開示では、ハーネス85でなくてもよく、ワイヤ又はばね体86(変形例2参照)等で構成されてもよい。
【0073】
ハーネス85は、導体を含む電気配線851と、電気配線851の先端に設けられたコネクタ853とを備える。電気配線851の長手方向の端部は、基板8の第一面81に実装される。
【0074】
電気配線851は、全長にわたって変形可能であり、本実施形態では、全長にわたって柔軟性を有する。ただし、本開示では、長手方向の一部が変形可能であればよく、全長が変形可能でなくてもよい。電気配線851は、接続部852を有する。接続部852は、電気配線851の端部に形成されており、基板8の回路に接続される。本実施形態では、接続部852は、基板8の第二面82に形成された回路にはんだで接続されている。電気配線851の長手方向において、接続部852とは反対側の端部にはコネクタ853が設けられている。
【0075】
コネクタ853は、通電部材84のうちモータ7の端子76に接続される部分である。コネクタ853は、本実施形態ではメスコネクタ855である。コネクタ853が端子76に接続されると、コネクタ853の先端面は第一面81に対向する。コネクタ853の先端面は、本実施形態では、第一面81から離れているが、本開示では、第一面81に対して当たっていてもよい。要するに、コネクタ853は、基板8の厚さ方向において、第二面82よりも第一面81の近くに位置している。
【0076】
これにより、本実施形態に係るモータユニット5では、基板8に対して端子76がはんだ等で拘束されていないため、モータユニット5が振動しても、端子76から掛かる力により基板8に生じる応力を低減することができる。
【0077】
図7は、
図2におけるB部分の拡大図である。基板8には、電気部品811として、複数(ここでは6つ)のFET812が実装されている。FET812は、基板8に形成された回路、及び基板8の第一面81に実装されたハーネス85を介して端子76に接続される。複数のハーネス85の接続部852のうちの2つは、本実施形態では、
図7に示すように、基板8の厚さ方向にみて、貫通部83とFET812(スイッチング素子)との間にある。
【0078】
ここで、本開示において接続部852が「貫通部83とスイッチング素子との間にある」とは、複数の貫通部83が形成されている場合、複数の貫通部83をつなぐ仮想線Sとスイッチング素子(ここではFET812)との間に接続部852があることを意味する。本開示では、接続部852が仮想線S上に位置していてもよく、接続部852の少なくとも一部が仮想線Sよりもスイッチング素子側に位置していればよい。本実施形態では、複数の接続部852のうちの2つが、基板8の厚さ方向にみて、貫通部83よりもFET812側にある。本開示では、複数の接続部852のうちの1つが貫通部83とFET812との間に位置し、その他が貫通部83とFET812との間以外の箇所に位置してもよい。少なくとも1つの接続部852が、基板8の厚さ方向にみて、貫通部83とスイッチング素子との間にあることで、接続部852とスイッチング素子とをつなぐ回路の面積を広く確保することができる。
【0079】
また、本実施形態では、貫通部83の外側部分は電気的に絶縁されている。本実施形態では、
図7に示すように、少なくとも一点鎖線で囲む部分Tには、ランドが形成されていない。本開示において、「貫通部83の外側部分」とは、基板8の第一面81において、貫通部83の周縁部を意味する。本実施形態では、第一面81における貫通部83の外側だけでなく、貫通部の内周面にもランドが形成されていない。
【0080】
このため、本実施形態に係るモータユニット5によれば、仮に端子76が振動し、端子76が貫通部83の周縁に近付いても、モータ7等に電気的な影響が生じるのを抑えることができる。
【0081】
(2)変形例
実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0082】
(2.1)変形例1
上記実施形態では、端子76がオス端子762であったが、本変形例では、モータ7の端子76がメス端子761であり、この点で実施形態とは異なる。
【0083】
図8に示すように、本変形例に係る端子76の先端面は、基板8の厚さ方向において、第一面81よりも第二面82に近い位置に位置している。言い換えると、端子76の先端面は、基板8の厚さ方向において、第二面82よりもモータ側に位置している。モータ7の各端子76は、各貫通部83に対応する位置に配置される。モータ7の端子76は、本変形例では、
図9に示すように、通電部材84のコネクタ853が差し込まれるように構成される。
【0084】
通電部材84は、上記実施形態と同様、ハーネス85である。通電部材84は、本変形例では、柔軟性を有する電気配線851と、電気配線851の先端に接続されたコネクタ853とを備える。コネクタ853は、オスコネクタ854である。コネクタ853は、貫通部83に通され、モータ7のメス端子761に差し込まれて接続される。
【0085】
(2.2)変形例2
上記実施形態では、通電部材84がハーネス85であったが、本変形例では、通電部材84がばね体86であり、この点で実施形態とは異なる。
【0086】
図10に示すように、ばね体86は、基板8の第一面81に取り付けられており、要するに、基板8の第一面81に実装されている。ばね体86は、導電性を有しており、基板8の回路と端子76とを電気的に接続する。ばね体86は弾性を有しており、弾性変形可能である。ばね体86は、第一片861と、第二片862と、第三片863と、接続片864とを備える。第一片861,第二片862,第三片863,及び接続片864は、本変形例では、弾性を有する導体によって一体に形成されている。
【0087】
第一片861は、回路に接続されている。第一片861の少なくとも一部は、回路に接続される接続部852である。第二片862は、第一片861につながっており、第一面81から離れる方向に延びている。第三片863は、第二片862の端部につながっており、第一面81に沿う方向に延びている。接続片864は、第三片863につながっており、端子76(オス端子762)に沿って延びている。接続片864は、端子76に対して固着具865によって固定されている。
【0088】
このように、本変形例においても、端子76と貫通部83とは、互いに拘束されていないため、モータユニット5が振動しても、端子76から掛かる力により基板8に生じる応力を低減することができる。
【0089】
(2.3)変形例3
上記実施形態では、いわゆる一軸式のモータユニット5であったが、
図11に示すように、二軸式のモータユニット5であってもよい。
【0090】
本変形例に係るモータユニット5は、入力軸54とは別に、モータ7の出力軸74からの駆動補助出力を出力する電動回転軸573を備える。電動回転軸573は、左右方向に延びた軸576回りに回転可能である。電動回転軸573の長手方向の一方の端部(ここでは右側の端部)には、駆動スプロケット57として第二駆動スプロケット572が取り付けられている。第二駆動スプロケット572は、電動回転軸573に対して固定されている。電動回転軸573の他方の端部(ここでは左側の端部)には、ギア575が取り付けられている。ギア575は、モータ7の出力軸74に形成された歯部742にかみ合っている。電動回転軸573とギア575との間には、ワンウェイクラッチ574が配置されている。
【0091】
ワンウェイクラッチ574は、電動回転軸573に対してギア575が加速方向に回転すると、電動回転軸573に対して動力を伝達する。一方、電動回転軸573に対してギア575が減速方向に回転すると、ギア575と電動回転軸573との間の動力の伝達を遮断する。
【0092】
本変形例では、動力伝達体92(
図1参照)は、入力軸54に取り付けられた駆動スプロケット57としての第一駆動スプロケット571と、第二駆動スプロケット572と、リアスプロケット422(
図1参照)とに掛けられている。
【0093】
本変形例では、電動自転車1では、クランクアーム90から踏力の入力があるときに、モータ7の出力軸74が加速方向に回転すると、ギア575が加速方向に回転する。ギア575の軸576回りの回転動力は、ワンウェイクラッチ574を介して、電動回転軸573に伝達され、第二駆動スプロケット572を回転させる。
【0094】
本変形例に係るモータユニット5は、基板8が電動回転軸573と入力軸54との間に配置されている。モータ7の端子76は、オス端子762であり、基板8の第一面81から突出している。端子76には、通電部材84としてのハーネス85が接続されている。
【0095】
(2.4)変形例4
変形例3に係る二軸式のモータユニットは、
図12に示すような構成であってもよい。本変形例は、変形例3と大部分において同じであるため、主に異なる箇所について説明する。
【0096】
電動回転軸573は、軸受657と軸受658とで、軸576回りに回転可能に取り付けられている。軸受657は、第一分割体52の内面に取り付けられている。軸受658は、第二分割体53の内面に取り付けられている。
【0097】
モータ7の出力軸74は、軸受653と、軸受654とで回転可能に支持されている。軸受653は、金属カップ71に取り付けられている。軸受654は、第二分割体53の内面に取り付けられている。軸受654は、出力軸74と略直交する方向のうちの電動回転軸573と出力軸74とが並ぶ方向に観て、軸受658と少なくとも一部が重なるように配置される。
【0098】
ここで、出力軸74の長手方向におけるロータ73とは反対側の端部を支持する軸受654を、出力軸74の長手方向において、ギア575よりも、ロータ73とは反対側の端部側に配置することが望ましい。本構成により、出力軸74の軸受653と軸受654との間の距離を長く取ることができ、出力軸74の回転が安定する。そのため、出力軸74の歯部742とギア575との歯当たりが改善し、モータユニット5の耐久性が向上する。
【0099】
(2.5)その他の変形例
以下、実施形態1の変形例を列挙する。
【0100】
上記実施形態では、モータ7は金属カップ71を有していたが、本開示では、ステータ72を樹脂モールドした構造であってもよい。
【0101】
上記実施形態では、電動自転車1のモータユニット5であるが、本開示では、電動自転車1のモータユニット5に限らない。
【0102】
実施形態では、動力伝達体92はチェーンであるが、本開示ではこれに限らない。例えば、動力伝達体92は、ベルト又はワイヤ等であってもよい。
【0103】
(3)態様
以上説明したように、第1の態様に係るモータユニット(5)は、基板(8)と、モータ(7)と、少なくとも1つの通電部材(84)とを備える。基板(8)は、厚さ方向に並ぶ第一面(81)及び第二面(82)を有する。モータ(7)は、少なくとも1つの端子(76)を有し、厚さ方向において、第一面(81)よりも第二面(82)の近くに配置されている。通電部材(84)は、第一面(81)に実装されている。基板(8)は、第一面(81)から第二面(82)まで貫通して端子(76)又は通電部材(84)が通される少なくとも1つの貫通部(83)を有する。通電部材(84)は、少なくとも一部が変形可能であり、端子(76)に接続されている。
【0104】
この態様によれば、モータ(7)に対して基板(8)を近付けることができ、モータユニット(5)の小型化を図ることができる。また、本実施形態に係るモータユニット(5)によれば、基板(8)とモータ(7)とを近付けても、基板(8)とモータ(7)の端子(76)とがはんだで固定されておらず、基板(8)に対して端子(76)が拘束されていない。このため、基板(8)及びモータ(7)が振動しても、端子(76)から掛かる力により、基板(8)に生じる応力を低減することができる。
【0105】
第2の態様に係るモータユニット(5)では、第1の態様において、通電部材(84)がハーネス(85)である。
【0106】
この態様によれば、端子(76)との接続作業を容易にすることができる。
【0107】
第3の態様に係るモータユニット(5)では、第1又は第2の態様において、端子(76)が第一面(81)から突出している。通電部材(84)の端子(76)に接続された部分は、第二面(82)よりも第一面(81)の近くに位置している。
【0108】
この態様によれば、オス型の端子(76)を有するモータ(7)を用いても、基板(8)に対して端子(76)を拘束しないようにできる。
【0109】
第4の態様に係るモータユニット(5)では、第3の態様において、通電部材(84)は、少なくとも一部に弾性を有する。通電部材(84)は、端子(76)に対し、固着具(865)を介して固定されている。
【0110】
この態様によれば、ハーネス(85)よりも比較的変形しにくい素材を用いて、モータ(7)と基板(8)の回路との接続を行うことができ、通電部材(84)が振れることによる損傷を極力抑えることができる。
【0111】
第5の態様に係るモータユニット(5)では、第1又は第2の態様において、端子(76)が、第一面(81)よりも第二面(82)の近くに位置している。通電部材(84)が貫通部(83)に通された状態で、端子(76)に接続されている。
【0112】
この態様によれば、メス型の端子(76)を有するモータ(7)を用いても、基板(8)に対して端子(76)を拘束しないようにできる。
【0113】
第6の態様に係るモータユニット(5)では、第1~5のいずれか1つの態様において、第一面(81)において貫通部(83)の外側部分が電気的に絶縁されている。
【0114】
この態様によれば、仮に端子(76)が振動し、端子(76)が貫通部(83)の周縁に近付いても、モータ(7)等に電気的な影響が生じるのを抑えることができる。
【0115】
第7の態様に係るモータユニット(5)では、第1~6のいずれか1つの態様において、基板(8)に実装されたスイッチング素子(実施形態では、FET(812))を更に備える。通電部材(84)を複数備える。複数の通電部材(84)の各々は、スイッチング素子に対し回路を介して接続される接続部(852)を有する。複数の通電部材(84)の接続部(852)のうちの少なくとも1つの接続部(852)が、基板(8)の厚さ方向に見て、貫通部(83)とスイッチング素子との間にある。
【0116】
この態様によれば、接続部(852)が、基板(8)の厚さ方向に見て、貫通部(83)よりもスイッチング素子側にあることで、接続部(852)とスイッチング素子とをつなぐ回路の面積を広く確保することができる。
【0117】
第8の態様に係る電動自転車(1)は、フレーム(2)と、フレーム(2)に取り付けられた第1~7のいずれか1つの態様のモータユニット(5)と、車輪(4)とを備える。車輪(4)は、フレーム(2)に取り付けられており、モータユニット(5)から出力された動力により回転する。
【0118】
この態様によれば、振動によって、モータ(7)の端子(76)が基板(8)に与える力により生じる応力を低減することができる電動自転車(1)を得ることができる。
【0119】
第2~第7の態様に係る構成については、モータユニット(5)及び電動自転車(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0120】
1 電動自転車
4 車輪
5 モータユニット
76 端子
8 基板
81 第一面
812 FET(スイッチング素子)
82 第二面
83 貫通部
84 通電部材
85 ハーネス
852 接続部
865 固着具