(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】表示システム、ヘッドアップディスプレイ、及び移動体
(51)【国際特許分類】
B60K 35/00 20060101AFI20230317BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20230317BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20230317BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20230317BHJP
G03B 21/16 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G02F1/1333
G02F1/13357
G02B27/01
G03B21/16
(21)【出願番号】P 2019129666
(22)【出願日】2019-07-11
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】結城 康三
(72)【発明者】
【氏名】熊野 豊
(72)【発明者】
【氏名】不破 裕史
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-284700(JP,A)
【文献】特開2002-365618(JP,A)
【文献】特開2006-184872(JP,A)
【文献】特開2015-126322(JP,A)
【文献】特表2017-512145(JP,A)
【文献】特開2006-276623(JP,A)
【文献】特開2018-185410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
G02F 1/133
G02B 27/01
G03B 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発する表示面を有する表示器と、
光透過性を有する光透過部材と、
放熱性能を有する材料からなり、前記表示器の前記表示面とは反対側の面から熱を前記表示器の外部に逃がすように配置される枠体と、を備え、
前記光透過部材は、前記表示器で発生した熱を外部へ逃がすように、前記表示器の前記表示面側に配置されており、かつ、
前記光透過部材は、水晶よりも高い熱伝導率を有
し、
前記枠体は、前記光透過部材と前記表示器とを前記枠体に対して相対的に固定するように、前記光透過部材と前記表示器とを保持する保持部を有し、
前記光透過部材における前記表示面に対向する面は、前記表示面よりも面積が大きく、
前記保持部は、前記光透過部材を保持する第1保持部と、前記表示器を保持する第2保持部と、を含み、
前記第1保持部と前記第2保持部とは、別体に形成されている、
表示システム。
【請求項2】
前記表示器と前記光透過部材との間に配置され、前記表示面と前記光透過部材とを接合する接合部材を更に備える、
請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記表示器、前記光透過部材、前記接合部材の屈折率をそれぞれf1、f2、f3としたときに、以下の条件式(1)
f1<f3<f2・・・(1)
を満たす、
請求項2に記載の表示システム。
【請求項4】
放熱性能を有する材料からなり、前記光透過部材を前記表示面に向けて押し付ける押さえ部材を更に備える、
請求項1~3のいずれか1項に記載の表示システム。
【請求項5】
前記光透過部材と前記押さえ部材との間に配置される緩衝部材を更に備える、
請求項4に記載の表示システム。
【請求項6】
前記表示器に対して前記光透過部材とは反対側に配置され、透過する光を拡散する光拡散部材を更に備える、
請求項1~5のいずれか1項に記載の表示システム。
【請求項7】
前記光透過部材はサファイアガラスである、
請求項1~6のいずれか1項に記載の表示システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の表示システムと、
前記表示システムから出射された表示光をウィンドシールドに投射する投射光学系と、
を備える、
ヘッドアップディスプレイ。
【請求項9】
請求項8に記載のヘッドアップディスプレイと、
前記ヘッドアップディスプレイが搭載される移動体本体と、を備える、
移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示システム、ヘッドアップディスプレイ、及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両等の移動体に搭載されるヘッドアップディスプレイ装置の開発が進められている。このようなヘッドアップディスプレイ装置として、光源から照射される光を透過する液晶パネルを備えるものが知られている。例えば特許文献1に開示されている液晶表示装置は、
図8に示すように、液晶パネル3000と、透明部材2000と、ヒートシンク1000と、を備えている。透明部材2000は液晶パネル3000の
図8における下側の面(第1面)に接合され、ヒートシンク1000は透明部材2000に対して液晶パネル3000と接着される面とは反対側から接合される。
【0003】
特許文献1では、光源光の透過により液晶パネル3000の中央部分で発生した熱を、透明部材2000を介してヒートシンク1000へ伝導させることにより、液晶パネル3000の中央部分における過熱を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている構成は、液晶パネル3000の中央部分の熱を逃がすために、液晶パネル3000の第1面側に透明部材2000を配置する構成となっており、液晶パネル3000の第1面とは反対側の面で温度上昇が生じる場合には、十分に熱を逃がすことができない場合がある。
【0006】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、表示器の表示面における温度上昇が生じることを抑制する、表示システム、ヘッドアップディスプレイ、及び移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の表示システムは、表示器と、光透過部材と、枠体と、を備える。前記表示器は、光を発する表示面を有する。前記光透過部材は、光透過性を有し、前記表示器で発生した熱を外部へ逃がすように、前記表示器の表示面側に配置される。前記枠体は、放熱性能を有する材料からなり、前記表示器の前記表示面とは反対側の面から熱を前記表示器の外部に逃がすように配置される。前記光透過部材は、水晶よりも高い熱伝導率を有する。前記枠体は、前記光透過部材と前記表示器とを前記枠体に対して相対的に固定するように、前記光透過部材と前記表示器とを保持する保持部を有する。前記光透過部材における前記表示面に対向する面は、前記表示面よりも面積が大きい。前記保持部は、前記光透過部材を保持する第1保持部と、前記表示器を保持する第2保持部と、を含む。前記第1保持部と前記第2保持部とは、別体に形成されている。
【0008】
本開示の一態様のヘッドアップディスプレイは、上記の表示システムと、前記表示システムから出射された表示光をウィンドシールドに投射する投射光学系と、を備える。
【0009】
本開示の一態様の移動体は、上記のヘッドアップディスプレイと、前記ヘッドアップディスプレイが搭載される移動体本体と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、表示器の温度上昇が生じにくい、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態の表示システムを備えるヘッドアップディスプレイが搭載された自動車を示す図である。
【
図2】
図2は、同上のヘッドアップディスプレイを用いた場合のユーザの視野を示す図である。
【
図3】
図3は、同上のヘッドアップディスプレイの構造を説明する図である。
【
図4】
図4は、同上の表示システムの概略断面図である。
【
図5】
図5は、同上の表示システムの概略斜視図である。
【
図6】
図6は、変形例の表示システムの概略断面図である。
【
図7】
図7は、同上の表示システムの概略斜視図である。
【
図8】
図8は、従来のヘッドアップディスプレイの表示システムの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
以下、図を参照して、本開示の実施の形態について説明する。
【0013】
(ヘッドアップディスプレイを用いた自動車の構成)
まず、表示システム10を含むヘッドアップディスプレイ1を用いた自動車100について
図1及び
図2を参照して説明する。ヘッドアップディスプレイ1は、一例として、移動体に搭載される。本実施の形態では、
図1に示すように、移動体が自動車100である場合を例に挙げて説明する。自動車100は、移動体本体としての車体100aと、車体100aに搭載されるヘッドアップディスプレイ1とを備えている。
図1は、表示システム10を備えるヘッドアップディスプレイ1が搭載された自動車100を示す図である。
【0014】
ヘッドアップディスプレイ1は、自動車100の車体100aのウィンドシールド101に下方から画像を投影するように、自動車100の車室内に設置されている。ウィンドシールド101の下方のダッシュボード102内に、ヘッドアップディスプレイ1が配置されている。ヘッドアップディスプレイ1からウィンドシールド101に画像が投影されると、反射部材としてのウィンドシールド101で反射された画像が運転者であるユーザ200に視認される。
【0015】
言い換えると、ユーザ200は、自動車100の前方に設定された対象空間400に投影された虚像310を、ウィンドシールド101越しに視認することになる。本開示における「虚像」とは、ヘッドアップディスプレイから出射される光がウィンドシールド等の反射物にて反射するとき、その反射光によって、実際に物体があるように結ばれる像を意味する。そのため、自動車100を運転しているユーザ200は、
図2に示すように、自動車100の前方に広がる実空間に重ねて、ヘッドアップディスプレイ1にて投影される虚像310を見ることができる。
図2は、ヘッドアップディスプレイ1を用いた場合のユーザの視野を示す図である。
【0016】
したがって、ヘッドアップディスプレイ1は、例えば、車速情報、ナビゲーション情報、歩行者情報、前方車両情報、車線逸脱情報、及び車両コンディション等の、種々の運転支援情報を、虚像310として表示し、ユーザ200に視認させることができる。
図2では、虚像310は、ナビゲーション情報であり、一例として、車線変更を示す矢印を表示している。これにより、ユーザ200は、ウィンドシールド101の前方に視線を向けた状態からわずかな視線移動だけで、運転支援情報を視覚的に取得することができる。
【0017】
ヘッドアップディスプレイ1では、対象空間400に形成される虚像310は、ヘッドアップディスプレイ1の光軸500に交差する仮想面501上に形成される。本実施形態では、光軸500は、自動車100の前方の対象空間400において、自動車100の前方の路面600に沿っている。そして、虚像310が形成される仮想面501は、路面600に対して略垂直である。例えば、路面600が水平面である場合には、虚像310は鉛直面に沿って表示されることになる。なお、虚像310が形成される仮想面501は、光軸500に対して傾いていてもよい。光軸500に対する仮想面501の傾きの角度は、特に限定されない。
【0018】
(ヘッドアップディスプレイの構成)
次に、ヘッドアップディスプレイ1の構成について
図3を用いて説明する。ヘッドアップディスプレイ1は、
図3に示すように、表示システム10及び投射光学系20を備える。表示システム10及び投射光学系20について、
図3及び
図4を用いて以下に詳述する。
【0019】
(投射光学系の構成)
投射光学系20は、表示システム10の画像を構成する光をウィンドシールド101に向けて反射して、ウィンドシールド101に画像を投射して対象空間400に虚像310を投射するように構成される。投射光学系20は、
図3に示すように、第1光学部材20a及び第2光学部材20bを備える。第1光学部材20aは、表示システム10からの光を第2光学部材20bに向けて反射するミラーである。第2光学部材20bは、第1光学部材20aからの光をウィンドシールド101に向けて反射するミラーである。このように、投射光学系20は、表示システム10の画像を、第1光学部材20a及び第2光学部材20bにより、ウィンドシールド101に投射することで、対象空間400に虚像310を投射する。
【0020】
(表示システムの構成)
続いて、表示システム10の構成について説明する。表示システム10は、
図4及び
図5に示すように、表示器15、光透過部材13、光拡散部材16、押さえ部材11、及び枠体17を備える。表示システム10を構成する各部材について以下に説明する。
【0021】
表示器15は、表示面15aを有する。表示器15は、具体的には、液晶パネル又は有機ELパネル等である。特に表示器15が液晶パネルによって構成される場合には、表示器15は、バックライトからの光を選択的に透過させることで、表示面15aに画像を形成する。表示器15の外周形状は矩形であり、かつ表示器15は平板状の部材である。特に、表示器15は、画像を表示する面である表示面15aを有する。表示面15aは、光を選択的に透過させる部位である光透過部位に対応する領域である。
【0022】
光透過部材13は、光透過性を有し、水晶よりも高い熱伝導率を有する。光透過部材13は、
図4に示すように、表示器15における表示面15aに、接合部材14を介して接合されていることが好ましい。接合部材14は、光透過性を有する。接合部材14は、例えば、接着剤、粘着テープ又は樹脂等である。一例として、接合部材14が接着剤であれば、光透過部材13は表示面15aに対して接着剤によって接合される。ここで、本開示において用いられる「熱伝導率」とは、光透過部材13が置かれる環境の周囲温度が20℃のときに測定した熱伝導率の値を指す。
【0023】
ここで、光透過部材13と表示器15とは、接合部材14を介さずに直接接合されていてもよいが、接合部材14を介することによって、画質の向上が図れる。すなわち、接合部材14が介在することにより、表示器15の表示面15aと光透過部材13との間に隙間が生じにくくなり、表示面15aと光透過部材13との間での光の屈折、反射及び拡散等が抑制され、画像の歪みが抑制され得る。結果的に、光透過部材13と表示器15とが接合部材14を介さずに直接接合される場合に比べて、接合部材14を介することにより画質の向上を期待し得る。
【0024】
光透過部材13は、表示システム10の放熱性を向上させる機能を有する。特に、光透過部材13は、表示器15の温度上昇を抑制し得る。光透過部材13は、水晶よりも熱伝導率が高い。光透過部材13は、一例としては、サファイアガラス等を用いることができる。光透過部材13は、表示器15と同様に、平板状の部材であり、その外周形状は矩形である。本実施形態では、光透過部材13は表示器15と同じサイズである。ただし、光透過部材13は表示器15と必ずしも同じサイズである必要はない。光透過部材13は、光透過部材13の放熱性の機能を阻害しない範囲でサイズを小さくすることができる。また、光透過部材13は、表示システム10の他の部材と干渉しない範囲でサイズを大きくしてもよい。
【0025】
押さえ部材11は、光透過部材13を表示面15aに向けて押し付ける部材である。押さえ部材11は、矩形の板状の部材であり、表示器15の表示領域に対応する位置に矩形の開口部を有する。つまり、押さえ部材11は、枠状の部材であり、その外周形状は矩形である。押さえ部材11は、光透過部材13のうち、表示器15の表示領域以外に対応する部分に接触する。押さえ部材11は、光透過部材13に対して表示器15とは反対側に配置され、表示器15とは反対側から光透過部材13に接触することで、光透過部材13を表示器15に押し付ける。また、押さえ部材11は、熱伝導性を有する。押さえ部材11の熱伝導率は、光透過部材13の熱伝導率よりも高いことが好ましい。押さえ部材11は、一例としては、アルミニウム製である。
【0026】
また、押さえ部材11は、緩衝部材12を介して光透過部材13を押さえていてもよい。この場合、緩衝部材12は、押さえ部材11と光透過部材13との間に配置される。緩衝部材12は、弾性を有している。緩衝部材12は、押さえ部材11と同様に、板状の部材であり、その外周形状は矩形で、さらに矩形の開口部を有する。つまり、緩衝部材12は、枠状の部材であり、その外周形状は矩形である。また、緩衝部材12の熱伝導率は、光透過部材13の熱伝導率よりも高いことが好ましい。
【0027】
光拡散部材16は、
図4に示すように、表示器15における表示面15aとは反対側に設けられている。光拡散部材16は、表示器15の表示面15aでの均斉度を向上する機能を有する。光拡散部材16の外周形状は矩形であり、かつ光拡散部材16は板状の部材である。光拡散部材16は、光透過性を有する。光拡散部材16の材料としては、例えば、PET又はガラス等が挙げられる。光拡散部材16は、断熱性を有していないことが好ましい。また、光拡散部材16は、表示器15の光透過部位を覆う大きさであることが好ましい。
【0028】
枠体17は、表示器15を取り付けるために設けられる。枠体17は、光拡散部材16における表示器15とは反対側の面の周縁部に接触するように配置される。また、枠体17は、光透過部材13及び光拡散部材16よりも熱伝導率が高いことが好ましい。枠体17は、一例としては、アルミニウム製である。枠体17をこのように構成することにより、表示システム10の放熱性を向上させやすくなる。なお、押さえ部材11によって表示器15の熱を十分に逃がすことができる場合には、枠体17を樹脂等によって形成してもよい。枠体17の外周形状は矩形であり、かつ枠体17は筒状の部材であり、複数(ここでは、4つ)の保持部170を有する。各保持部170は、
図5に示すように、光透過部材13と表示器15と光拡散部材16とを、枠体17に対して相対的に固定する。より具体的には、光透過部材13と接合部材14と表示器15と光拡散部材16とを1つの直方体状の部材と見たとき、この部材の4つの側面とそれぞれ対向するように、4つの保持部170が配置されている。そして、4つの保持部170により、この部材が枠体17に対して相対的に固定される。
【0029】
表示システム10では、既に述べたように、光透過部材13と表示器15と光拡散部材16とは、枠体17の複数の保持部170に保持される。そして、押さえ部材11は、直接又は緩衝部材12を介して、光透過部材13に接触する。つまり、表示器15の表示面15aで発生した熱は、光透過部材13を介して押さえ部材11へ伝達され、外部の空気中へ放熱される。
【0030】
光透過部材13としては、サファイアガラスを用いることが好ましい。ここで、サファイアガラスの屈折率は、1.06マイクロメートルの波長の光に対して1.75程度である。このように光透過部材13として屈折率が1.75程度の材料を用いる場合、表示器15と光透過部材13との間の屈折率の差が大きくなり、画質に影響が生じることがある。
【0031】
このような場合には、適切な接合部材14を用いることで画質への影響を抑制することができる。すなわち、表示器15、光透過部材13、接合部材14の屈折率をそれぞれf1、f2、f3とすると、以下の条件式(1)を満たすように、接合部材14を用いることが好ましい。
f1<f3<f2・・・(1)
【0032】
(まとめ)
以上に述べた表示システム10では、光透過部材13が表示器15の表示面15aに接合部材14を介して接合されていることで、表示面15aの放熱性の向上が図れる。ここで、例えば表示器15の表示面15aとは反対側に光透過部材13を設けた場合には、太陽光が表示器15の表示面15aに集光することにより表示器15の表示面15aに生じた熱を、十分に逃がすことができない場合がある。特に、ヘッドアップディスプレイ1が大型化すると、太陽光による影響は更に大きくなり、さらに、表示器15の表示面15aにおける太陽光の集光が局所的であるほど、表示器15の表示面15aの温度が瞬時に上昇し、表示器15の表示に異常をきたし得る。一方、本実施形態に係る表示システム10によれば、太陽光が表示器15の表示面15aに集光しても、表示器15が温度上昇しにくくなり、表示器15の表示への影響が生じることを抑制できる。
【0033】
また、光透過部材13としてサファイアガラスなどの屈折率の高い部材を使用する場合に、条件式(1)を満たすような接合部材14で表示器15の表示面15aと光透過部材13とを接合することにより、屈折率の差による表示への影響が生じにくい。
【0034】
(変形例)
本開示の実施形態は、上述した実施形態の内容に限定されない。実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、実施形態の変形例を記載する。なお、上述した実施形態と同一の部材については同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0035】
図6及び
図7は、変形例の表示システム10Aを示す。表示システム10Aは、表示器15と、光透過部材13Aと、光拡散部材16と、押さえ部材11と、枠体17Aと、を備える。表示システム10Aでは、表示システム10の場合とは異なり、光透過部材13Aにおける表示器15の表示面15aに対向する面は、表示器15の表示面15aよりも面積が大きい。より詳細には、光透過部材13Aは、表示面15aに対向する面の側から見て、表示面15aを含むように、表示面15aよりも大きい面積を有する。
【0036】
表示システム10Aでは、光透過部材13Aと表示器15と光拡散部材16とは、枠体17Aの複数(ここでは、4つ)保持部170Aに保持される。各保持部170Aは、第1保持部171Aと第2保持部172Aとを含む。ここで、光透過部材13は第1保持部171Aに保持され、表示器15及び光拡散部材16は第2保持部172Aに保持される。より具体的には、4つの第1保持部171Aは、光透過部材13Aの4つの側面とそれぞれ対向するように配置され、枠体17Aに対して光透過部材13Aを固定している。また、接合部材14と表示器15と光拡散部材16とを1つの直方体状の部材と見たとき、この部材の4つの側面とそれぞれ対向するように、4つの第2保持部172Aが配置されている。そして、4つの第2保持部172Aにより、この部材が枠体17Aに対して相対的に固定される。
【0037】
表示システム10Aは、表示器15の表示面15aよりも面積が大きい面で表示面15aに対向する光透過部材13Aを有していることから、光透過部材13Aと押さえ部材11との接触面積の増加が図れる。よって、放熱性の向上が図れる。
【0038】
(その他の変形例)
例えば、表示システム10(10A)は、押さえ部材11及び緩衝部材12を有していなくてよい。あるいは、緩衝部材12は有し、押さえ部材11を有していない構成であってもよい。この場合、光透過部材13(13A)を直接あるいは緩衝部材12を介して放熱性能を有する部材に接合するように構成するのが好ましい。また、例えば、表示システム10(10A)は、光拡散部材16を有していなくてよい。
【0039】
(付記事項)
実施形態及び変形例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
【0040】
第1の態様の表示システム(10、10A)は、表示器(15)と、光透過部材(13、13A)と、を備える。表示器(15)は、光を発する表示面(15a)を有する。光透過部材(13、13A)は、光透過性を有し、表示器(15)で発生した熱を外部へ逃がすように、表示器(15)の表示面(15a)側に配置される。光透過部材(13、13A)は、水晶よりも高い熱伝導率を有する。第1の態様によれば、表示器(15)の温度が上昇しにくい。
【0041】
第2の態様の表示システム(10、10A)は、第1の態様との組み合わせにより実現され得る。第2の態様では、表示システム(10、10A)は、表示器(15)と光透過部材(13、13A)との間に配置される接合部材(14)を更に備える。接合部材(14)は、表示面(15a)と光透過部材(13、13A)とを接合する。第2の態様によれば、光透過部材(13、13A)を表示器(15)に対して容易に固定することができ、更に、画質が低下しにくく、最も効果的な場合には、表示品位を損なうことはない。
【0042】
第3の態様の表示システム(10、10A)は、第2の態様との組み合わせにより実現され得る。第3の態様では、表示システム(10、10A)は、表示器(15)、光透過部材(13、13A)、接合部材(14)の屈折率をそれぞれf1、f2、f3としたときに、以下の条件式(1)を満たす。
f1<f3<f2・・・(1)
【0043】
第3の態様によれば、画質が低下しにくく、最も効果的な場合には、表示品位を損なうことはない。
【0044】
第4の態様の表示システム(10、10A)は、第1~第3の態様のいずれか1つとの組み合わせにより実現され得る。第4の態様では、表示システム(10、10A)は、放熱性能を有する材料からなり、光透過部材(13、13A)を表示面(15a)に向けて押し付ける押さえ部材(11)を更に備える。第4の態様によれば、表示器(15)の温度が上昇しにくい。
【0045】
第5の態様の表示システム(10、10A)は、第4の態様との組み合わせにより実現され得る。第5の態様では、表示システム(10、10A)は、光透過部材(13、13A)と押さえ部材(11)との間に配置される緩衝部材(12)を更に備える。第5の態様によれば、押さえ部材(11)によって光透過部材(13、13A)を表示面(15a)に向けてより確実に押し付けやすくなる。
【0046】
第6の態様の表示システム(10、10A)は、第1~第5の態様のいずれか1つとの組み合わせにより実現され得る。第6の態様では、表示システム(10、10A)は、表示器(15)に対して光透過部材(13、13A)とは反対側に配置される光拡散部材(16)を更に備える。光拡散部材(16)は、透過する光を拡散する。第6の態様によれば、表示器(15)の表示面(15a)での均斉度の向上が図りやすい。
【0047】
第7の態様の表示システム(10、10A)は、第1~第6のいずれかの態様との組み合わせにより実現され得る。第7の態様では、表示システム(10、10A)は、放熱性能を有する材料からなり、表示器(15)の表示面(15a)とは反対側の面から熱を表示器(15)の外部に逃がすように配置される枠体(17、17A)を更に備える。第7の態様によれば、表示器(15)の温度が上昇しにくい。
【0048】
第8の態様の表示システム(10、10A)は、第7の態様との組み合わせにより実現され得る。第8の態様では、枠体(17、17A)は、保持部(170、170A)を有する。保持部(170、170A)は、光透過部材(13、13A)と表示器(15)とを枠体(17、17A)に対して相対的に固定するように、光透過部材(13、13A)と表示器(15)とを保持する。第8の態様によれば、光透過部材(13、13A)及び表示器(15)を枠体(17、17A)に対して容易に固定できる。
【0049】
第9の態様の表示システム(10A)は、第8の態様との組み合わせにより実現され得る。第9の態様では、光透過部材(13A)における表示面(15a)に対向する面は、表示面(15a)よりも面積が大きい。第9の態様によれば、表示器(15)の温度が上昇しにくい。
【0050】
第10の態様の表示システム(10A)は、第9の態様との組み合わせにより実現され得る。第10の態様では、保持部(170A)は、第1保持部(171A)と第2保持部(172A)とを含む。第1保持部(171A)は、光透過部材(13A)を保持する。第2保持部(172A)は、表示器(15)を保持する。第10の態様によれば、光透過部材(13A)及び表示器(15)を枠体(17A)に対して容易に固定できる。
【0051】
第11の態様の表示システム(10、10A)は、第1~第10の態様のいずれか1つとの組み合わせにより実現され得る。第11の態様では、光透過部材(13、13A)は、サファイアガラスである。第11の態様によれば、表示器(15)の温度が上昇しにくい。
【0052】
第12の態様のヘッドアップディスプレイ(1)は、第1~第11の態様のいずれか1つの表示システム(10、10A)と、表示システム(10、10A)から出射された表示光をウィンドシールド(101)に投射する投射光学系(20)と、を備える。第12の態様によれば、表示器(15)の温度が上昇しにくい。
【0053】
第13の態様の移動体(100)は、第12の態様のヘッドアップディスプレイ(1)と、ヘッドアップディスプレイ(1)が搭載される移動体本体(100a)と、を備える。第13の態様によれば、表示器(15)の温度が上昇しにくい。
【符号の説明】
【0054】
10、10A 表示システム
11 押さえ部材
12 緩衝部材
13、13A 光透過部材
14 接合部材
15 表示器
15a 表示面
16 光拡散部材
17、17A 枠体
170、170A 保持部
171A 第1保持部
172A 第2保持部
1 ヘッドアップディスプレイ
20 投射光学系
100 自動車(移動体)
100a 車体(移動体本体)
101 ウィンドシールド