(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20230317BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
(21)【出願番号】P 2019138155
(22)【出願日】2019-07-26
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】羽田 崇人
(72)【発明者】
【氏名】宮本 智明
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-036464(JP,A)
【文献】特開2017-198800(JP,A)
【文献】米国特許第04740780(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102010062634(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する板状の表示媒体と、
画像を表示する表示部と、
前記表示部によって表示される画像を前記表示媒体に導くことによって、前記表示媒体に対して観察者と反対側に虚像を形成する投射光学系とを備え、
前記表示部の画像中心から出た光線が観察者の瞳の中心を通る光路が中心光路とされる場合、
前記投射光学系および前記表示媒体を含む合成光学系の前記中心光路における合成パワーを、前記表示媒体の前記中心光路におけるパワーで微分することによって得られる値の絶対値である第1の値は、4以下である、
ヘッドアップディスプレイ。
【請求項2】
前記投射光学系は、1つのミラーからなり、
前記合成パワーをφとして示し、前記ミラーの前記中心光路におけるパワーをφ
1として示し、前記表示媒体の前記中心光路におけるパワーをφ
2として示し、前記ミラーと前記表示媒体との間の前記中心光路に沿った距離をL
2として示す場合、前記合成パワーφは下記式(1)によって示され、前記第1の値は下記式(2)を満たす、
【数1】
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項3】
前記表示部から、前記合成光学系における前記表示部側の主点である前側主点までの前記中心光路に沿った距離の逆数を、前記表示媒体の前記中心光路におけるパワーで微分することによって得られる値の絶対値である第2の値は、4以下である、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項4】
前記投射光学系は、1つのミラーからなり、
前記中心光路における合成パワーをφとして示し、前記ミラーの前記中心光路におけるパワーをφ
1として示し、前記表示媒体の前記中心光路におけるパワーをφ
2として示し、前記表示部と前記ミラーとの間の前記中心光路に沿った距離をL
1として示し、前記ミラーと前記表示媒体との間の前記中心光路に沿った距離をL
2として示し、前記ミラーと前記前側主点までの距離をδ
1として示し、前記表示部から前記前側主点までの前記中心光路に沿った距離をDとして示す場合、
前記距離Dは下記式(3)によって示され、前記第2の値は下記式(4)を満たす、
【数2】
請求項3に記載のヘッドアップディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば車両などに搭載されるヘッドアップディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両などに搭載されるヘッドアップディスプレイが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1のヘッドアップディスプレイは、投射器と、導光ミラーと、コンバイナとを備える。投射器は表示光を導光ミラーに向けて投射し、導光ミラーはその表示光をコンバイナに向けて反射する。コンバイナによって反射された表示光は、車両の乗員に向かう。その結果、車両の乗員は、コンバイナの奥側、すなわち車両の外側に存在する虚像を視認することができる。ここで、上記特許文献1のヘッドアップディスプレイでは、導光ミラーにおける表示光を反射する面は凸面状である。これにより、その虚像の視認性を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のヘッドアップディスプレイでは、視点によって虚像が歪む可能性があるという課題がある。
【0005】
そこで、本開示は、虚像の歪みの発生を抑えることができるヘッドアップディスプレイを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るヘッドアップディスプレイは、透光性を有する板状の表示媒体と、画像を表示する表示部と、前記表示部によって表示される画像を前記表示媒体に導くことによって、前記表示媒体に対して観察者と反対側に虚像を形成する投射光学系とを備え、前記表示部の画像中心から出た光線が観察者の瞳の中心を通る光路が中心光路とされる場合、前記投射光学系および前記表示媒体を含む合成光学系の前記中心光路における合成パワーを、前記表示媒体の前記中心光路におけるパワーで微分することによって得られる値の絶対値である第1の値は、4以下である。
【0007】
なお、この包括的または具体的な態様は、システムまたは方法などによって実現されてもよく、システムまたは方法などの任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示のヘッドアップディスプレイは、虚像の歪みの発生を抑えることができる。
【0009】
本開示の一態様における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施の形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態におけるヘッドアップディスプレイの配置および構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態における虚像の歪みが抑えられる状況を説明するための図である。
【
図3】
図3は、実施の形態におけるヘッドアップディスプレイの光学系と、合成パワーと、表示部から前側主点までの距離とを示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態におけるヘッドアップディスプレイの光学系での、合成パワーと、表示部から前側主点までの距離とのそれぞれの条件を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の基礎となった知見)
本発明者は、「背景技術」の欄において記載した特許文献1のヘッドアップディスプレイに関し、以下の課題が生じることを見出した。
【0012】
例えば、互いに異なる視点の何れからでも虚像を観察者に視認させるために、その視点に応じてヘッドアップディスプレイのコンバイナの傾きが調整される場合がある。このような場合には、その視点に応じてコンバイナにおける表示光の反射角が異なる。すなわち、その視点に応じてコンバイナのパワー(すなわち屈折力)が変化する。その結果、所定の視点から視認される虚像には歪みが生じていなくても、他の視点から視認される虚像には大きな歪みが生じる場合がある。したがって、上記特許文献1のヘッドアップディスプレイを、互いに視点が異なる複数の車種に対して共用化することは難しい。つまり、車種ごとに、その車種の車両に搭載されるヘッドアップディスプレイを、その車種の視点に応じて設計しなければならい。
【0013】
このような課題を解決するために、本開示の一態様に係るヘッドアップディスプレイは、透光性を有する板状の表示媒体と、画像を表示する表示部と、前記表示部によって表示される画像を前記表示媒体に導くことによって、前記表示媒体に対して観察者と反対側に虚像を形成する投射光学系とを備え、前記表示部の画像中心から出た光線が観察者の瞳の中心を通る光路が中心光路とされる場合、前記投射光学系および前記表示媒体を含む合成光学系の前記中心光路における合成パワーを、前記表示媒体の前記中心光路におけるパワーで微分することによって得られる値の絶対値である第1の値は、4以下である。例えば、前記投射光学系は、1つのミラーからなり、前記合成パワーをφとして示し、前記ミラーの前記中心光路におけるパワーをφ1として示し、前記表示媒体の前記中心光路におけるパワーをφ2として示し、前記ミラーと前記表示媒体との間の前記中心光路に沿った距離をL2として示す場合、前記合成パワーφは下記式(1)によって示され、前記第1の値は下記式(2)を満たす。
【0014】
【0015】
これにより、第1の値が4以下であるため、合成パワーを表示媒体のパワーの変化に対して鈍感にすることができる。つまり、視点に応じて表示媒体の傾きが調整されてその表示媒体のパワーが変化したとしても、合成パワーの変化を抑えることができる。その結果、虚像の歪みの発生を抑えることができる。したがって、互いに視点が異なる複数の車種に対してヘッドアップディスプレイを容易に共用化することができる。
【0016】
また、前記表示部から、前記合成光学系における前記表示部側の主点である前側主点までの前記中心光路に沿った距離の逆数を、前記表示媒体の前記中心光路におけるパワーで微分することによって得られる値の絶対値である第2の値は、4以下であってもよい。例えば、前記投射光学系は、1つのミラーからなり、前記中心光路における合成パワーをφとして示し、前記ミラーの前記中心光路におけるパワーをφ1として示し、前記表示媒体の前記中心光路におけるパワーをφ2として示し、前記表示部と前記ミラーとの間の前記中心光路に沿った距離をL1として示し、前記ミラーと前記表示媒体との間の前記中心光路に沿った距離をL2として示し、前記ミラーと前記前側主点までの距離をδ1として示し、前記表示部から前記前側主点までの前記中心光路に沿った距離をDとして示す場合、前記距離Dは下記式(3)によって示され、前記第2の値は下記式(4)を満たす。
【0017】
【0018】
これにより、第2の値が4以下であるため、表示部から前側主点までの距離を表示媒体のパワーの変化に対して鈍感にすることができる。つまり、視点に応じて表示媒体の傾きが調整されてその表示媒体のパワーが変化したとしても、その距離の変化を抑えることができる。その結果、虚像の歪みの発生をさらに抑えることができる。したがって、互いに視点が異なる複数の車種に対してヘッドアップディスプレイをさらに容易に共用化することができる。
【0019】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0020】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0021】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
【0022】
(実施の形態)
図1は、本実施の形態におけるヘッドアップディスプレイの配置および構成を示す図である。
【0023】
本実施の形態におけるヘッドアップディスプレイ100は、例えば車両10に搭載されて虚像1を形成する。この虚像1は、例えば車両10の前方外側に存在するように、車両10の運転者である観察者20に視認される。このようなヘッドアップディスプレイ100は、筐体101と、表示部102と、ミラー103と、コンバイナ104とを備える。
【0024】
筐体101は、例えば樹脂成型品であって、車両10のダッシュボードの内部に配置される。また、筐体101は、表示部102およびミラー103を収納する。
【0025】
コンバイナ104は、例えば樹脂成型品であって、透光性を有する板状の表示媒体の一例である。このようなコンバイナ104は、筐体101の上部に取り付けられている。また、コンバイナ104は、筐体101に対して出没自在に取り付けられていてもよい。
【0026】
表示部102は、観察者20に虚像1として視認される画像を表示する。表示部102は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)である。なお、表示部102は、LCD以外のデバイス、例えば有機発光ダイオード(エレクトロルミネッセンス)、蛍光表示装置(セブンセグメント)、またはプラズマディスプレイなどであってもよい。また、表示部102は、プロジェクタまたは走査型レーザであってもよい。このような表示部102は、筐体101の底面側に収納されて、車両10の後方上側に画像を表示する。
【0027】
ミラー103は、投射光学系の一例である。このミラー103は、表示部102によって表示される画像をコンバイナ104に導くことによって、そのコンバイナ104に対して観察者20と反対側に虚像を形成する。つまり、ミラー103は、表示部102によって表示される画像の光を受けると、その光をコンバイナ104に向けて反射する。例えば、ミラー103は、車両10の前方上側に光を反射する。その結果、コンバイナ104は、ミラー103からその光を受けると、その光を観察者20の視点に向けて反射する。これにより、観察者20は、コンバイナ104を介して、車両10の前方外側にある道路、歩行者または構造物などのオブジェクトと共に、そのオブジェクトに重畳される虚像1を視認することができる。
【0028】
ここで、本実施の形態におけるヘッドアップディスプレイ100の光学系は、コンバイナ104のパワーの変化に対して鈍感に構成されている。これにより、観察者20の視点が所定の位置にある場合に限らず、他の位置にある場合であっても、ヘッドアップディスプレイ100によって形成される虚像の歪みを抑えることができる。
【0029】
図2は、虚像の歪みが抑えられる状況を説明するための図である。
【0030】
例えば、視点aはヘッドアップディスプレイ100の設計中心にある。したがって、観察者20が視点aから、ヘッドアップディスプレイ100によって形成される虚像1を視認する場合には、虚像1の歪みがなくなるように表示部102の表示の形状が決定されるため、虚像1の歪みはない。一方、視点bはヘッドアップディスプレイ100の設計中心から例えば鉛直上方に離れた位置にある。ここで、観察者20が視点bから、ヘッドアップディスプレイ100によって形成される虚像を視認する場合には、コンバイナ104は、観察者20の視点が視点aにある場合よりも傾けられる。つまり、ヘッドアップディスプレイ100のコンバイナ104は、表示部102からミラー103を介して投射される画像の光が視点aよりも鉛直上方の視点bに向かって反射されるように傾けられる。具体的には、コンバイナ104の上端部が車両10の前方側に傾けられる。このとき、コンバイナ104のパワーは変化する。したがって、仮に、ヘッドアップディスプレイ100の光学系が、コンバイナ104のパワーの変化に敏感であれば、観察者20によって視点bから視認される虚像は、
図2の破線枠で示す虚像1bのように大きく歪む可能性がある。
【0031】
しかし、本実施の形態におけるヘッドアップディスプレイ100の光学系は、上述のように、コンバイナ104のパワーの変化に対して鈍感に構成されている。
【0032】
具体的には、本実施の形態では、ミラー103およびコンバイナ104を含む合成光学系の中心光路Lにおける合成パワーを、コンバイナ104の中心光路Lにおけるパワーで微分することによって得られる値の絶対値である第1の値は、4以下である。なお、中心光路Lは、表示部102の画像中心から出た光線が観察者20の瞳の中心を通る光路である。
【0033】
さらに、本実施の形態では、表示部102から、上述の合成光学系における表示部102側の主点である前側主点までの中心光路Lに沿った距離の逆数を、コンバイナ104の中心光路Lにおけるパワーで微分することによって得られる値の絶対値である第2の値は、4以下である。なお、その距離は、具体的には、表示部102において画像が表示される表示面の中心(すなわち上述の画像中心)から前側主点までの中心光路Lに沿った距離である。
【0034】
このように、本実施の形態におけるヘッドアップディスプレイ100の光学系、すなわち第1の値および第2の値は、コンバイナ104のパワーの変化に対して鈍感である。したがって、本実施の形態では、観察者20によって視点bから視認される虚像を、
図2の実線枠で示すように、視点aから視認される虚像1と同程度に歪みが抑えられた虚像1aとして形成することができる。
【0035】
図3は、ヘッドアップディスプレイ100の光学系と、合成パワーと、表示部102から前側主点までの距離とを示す図である。なお、
図3に示すヘッドアップディスプレイ100の光学系では、その光学系に含まれる各光学素子が等価的に直線上に配列されている。
【0036】
図3において、ミラー103の中心光路におけるパワーはφ
1として示され、コンバイナ104の中心光路におけるパワーはφ
2として示される。さらに、表示部102とミラー103との間の中心光路に沿った距離はL
1として示され、ミラー103とコンバイナ104との間の中心光路に沿った距離はL
2として示される。さらに、ミラー103と前側主点との間の中心光路に沿った距離はδ
1として示される。
【0037】
なお、その中心光路は、表示部102における上述の表示面の中心から出た光線が、観察者20の瞳の中心を通る光路である。また、下記に示すパワーおよび距離は、何れも中心光路におけるパワーおよび距離である。
【0038】
このような場合、ミラー103およびコンバイナ104を含む合成光学系の合成パワーφは、以下の式(5)によって示される。
【0039】
【0040】
さらに、表示部102から前側主点までの中心光路に沿った距離Dは、下記式(6)によって示される。
【0041】
【0042】
図4は、ヘッドアップディスプレイ100の光学系における合成パワーφおよび距離Dのそれぞれの条件を示す図である。
【0043】
本実施の形態では、合成パワーφが上記式(5)によって示されるため、合成パワーφをコンバイナ104のパワーφ
2で微分することによって得られる値の絶対値である第1の値、すなわち、
【数5】
は、下記式(7)の条件を満たす。
【0044】
【0045】
例えば、第1の値が4を超える場合には、視点調整時に諸収差が大きくなり画質が劣化し、特に、虚像の縦横のアスペクト比が崩れ、ボケなどが生じることが想定される。つまり、虚像に大きな歪みが生じることが想定される。したがって、本実施の形態におけるヘッドアップディスプレイ100では、第1の値が4以下であるため、合成パワーφをコンバイナ104のパワーφ2の変化に対して鈍感にすることができる。つまり、視点に応じてコンバイナ104の傾きが調整されてそのコンバイナ104のパワーが変化したとしても、合成パワーφの変化を抑えることができる。その結果、虚像1の歪みの発生を抑えることができる。したがって、互いに視点が異なる複数の車種に対してヘッドアップディスプレイ100を容易に共用化することができる。
【0046】
また、本実施の形態におけるヘッドアップディスプレイ100では、第1の値が1.5以上であるため、ヘッドアップディスプレイ100の大型化を抑制することができる。つまり、ミラー103のパワーφ1が小さくなることによるヘッドアップディスプレイ100の大型化を抑制することができる。
【0047】
さらに、本実施の形態では、距離Dが上記式(6)によって示されるため、その距離Dの逆数を、コンバイナ104のパワーφ
2で微分することによって得られる値の絶対値である第2の値、すなわち、
【数7】
は、下記式(8)の条件を満たす。
【0048】
【0049】
例えば、第1の値と同様に、第2の値が4を超える場合にも、視点調整時に諸収差が大きくなり画質が劣化し、特に、虚像の縦横のアスペクト比が崩れ、ボケなどが生じることが想定される。つまり、虚像に大きな歪みが生じることが想定される。したがって、本実施の形態におけるヘッドアップディスプレイ100では、第2の値が4以下であるため、表示部102から前側主点までの距離Dをコンバイナ104のパワーφ2の変化に対して鈍感にすることができる。つまり、視点に応じてコンバイナ104の傾きが調整されてそのコンバイナ104のパワーφ2が変化したとしても、その距離Dの変化を抑えることができる。その結果、虚像1の歪みの発生をさらに抑えることができる。したがって、互いに視点が異なる複数の車種に対してヘッドアップディスプレイ100をさらに容易に共用化することができる。
【0050】
また、本実施の形態におけるヘッドアップディスプレイ100では、第1の値と同様に、第2の値が0.8以上であるため、ヘッドアップディスプレイ100の大型化を抑制することができる。つまり、ミラー103のパワーφ1が小さくなることによるヘッドアップディスプレイ100の大型化を抑制することができる。
【0051】
(変形例)
本開示のヘッドアップディスプレイについて、上記実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態に施したものも、本開示の範囲内に含まれてもよい。
【0052】
例えば、上記実施の形態では、第1の値および第2の値のそれぞれは4以下であるが、第1の値および第2の値のうちの何れか一方の値のみが4以下であってもよい。つまり、合成パワーφをコンバイナ104のパワーφ2で微分することによって得られる値の絶対値である第1の値が4以下であって、第2の値はどのような値であってもよい。逆に、表示部102から前側主点までの光路に沿った距離Dの逆数を、コンバイナ104のパワーφ2で微分することによって得られる値の絶対値である第2の値が4以下であって、第1の値はどのような値であってもよい。
【0053】
このような場合であっても、第1の値または第2の値が4以下であるため、ヘッドアップディスプレイ100の光学系を、コンバイナ104のパワーの変化に対して鈍感にすることができる。その結果、視点に応じて生じる虚像の歪みを抑えることができる。
【0054】
また、第1の値または第2の値が4以下であるだけでなく、さらに、それらの値以外の第3の値が閾値C以下であってもよい。
【0055】
第3の値は、例えば、コンバイナ104から後側主点までの距離δ2を、コンバイナ104のパワーφ2で微分することによって得られる値の絶対値である。なお、後側主点は、上述の合成光学系におけるコンバイナ104側の主点である。また、距離δ2は、具体的には、コンバイナ104における上述の反射面の中心から後側主点までの距離である。このような距離δ2は、以下の式(9)によって示される。
【0056】
【0057】
したがって、上述の第3の値である
【数10】
は、下記式(10)の条件を満たす。
【0058】
【0059】
このようなヘッドアップディスプレイ100では、第3の値が閾値C以下であるため、閾値Cを適切な値に設定すれば、距離δ2をコンバイナ104のパワーφ2の変化に対して鈍感にすることができる。つまり、視点に応じてコンバイナ104の傾きが調整されてそのコンバイナ104のパワーφ2が変化したとしても、その距離δ2の変化を抑えることができる。その結果、虚像1の歪みの発生をさらに抑えることができる。したがって、互いに視点が異なる複数の車種に対してヘッドアップディスプレイ100をさらに容易に共用化することができる。
【0060】
また、上記実施の形態では、投射光学系は1つのミラー103からなるが、複数のミラーから構成されていてもよく、レンズを含んでいてもよい。つまり、投射光学系は、表示部102によって表示される画像をコンバイナ104に導くことによって、そのコンバイナ104に対して観察者20と反対側に虚像1を形成するものであれば、どのような光学系であってもよい。また、上記実施の形態では、ミラー103における光を反射する面は凸面状であるが、その形状は凸面状に限定されることなく、平面状であっても凹面状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本開示は、例えば車両などに搭載されるヘッドアップディスプレイに利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1、1a、1b 虚像
10 車両
20 観察者
100 ヘッドアップディスプレイ
101 筐体
102 表示部
103 ミラー(投射光学系)
104 コンバイナ
a、b 視点