(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】イオン除去システム
(51)【国際特許分類】
C02F 5/00 20230101AFI20230317BHJP
C02F 1/461 20230101ALI20230317BHJP
C02F 1/58 20230101ALI20230317BHJP
C02F 1/24 20230101ALI20230317BHJP
【FI】
C02F5/00 610Z
C02F5/00 620B
C02F1/461 A
C02F1/58 J
C02F1/24 B
(21)【出願番号】P 2021536630
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(86)【国際出願番号】 JP2020021359
(87)【国際公開番号】W WO2021019892
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2019139353
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183276
【氏名又は名称】山田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】神田 卓矢
(72)【発明者】
【氏名】竹久 綾音
(72)【発明者】
【氏名】前田 康成
(72)【発明者】
【氏名】穐田 朋弘
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-213569(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159693(WO,A1)
【文献】特開2010-221127(JP,A)
【文献】特開2003-236549(JP,A)
【文献】特開平09-187770(JP,A)
【文献】特開平07-132291(JP,A)
【文献】特開2020-032402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 5/00- 5/14
C02F 1/58- 1/64
C02F 1/46- 1/48
C25B 1/00- 9/77
C25B 13/00- 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気分解によりアルカリ水と酸性水とを生成する電気分解装置と、
前記電気分解装置が生成したアルカリ水と酸性水を交互に通水可能な第1流路および第2流路と、
前記電気分解装置に接続され、前記電気分解装置に硬水を供給する硬水流路と、
前記電気分解装置の上流側又は下流側の流路で微細気泡を発生させる微細気泡発生装置と、を備え、
前記第1流路に第1流量調整バルブを接続し、前記第2流路に第2流量調整バルブを接続し、
制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記第1流路にアルカリ水を通水して前記第2流路に酸性水を通水する第1モードと、前記第1流路に酸性水を通水して前記第2流路にアルカリ水を通水する第2モードを実行するように、前記電気分解装置を制御し、
前記第1流量調整バルブの開度を、前記第1モードよりも前記第2モードの方が小さくなるように設定し、前記第2流量調整バルブの開度を、前記第2モードよりも前記第1モードの方が小さくなるように設定した
、イオン除去システム。
【請求項2】
電気分解によりアルカリ水と酸性水とを生成する電気分解装置と、
前記電気分解装置が生成したアルカリ水と酸性水を交互に通水可能な第1流路および第2流路と、
前記電気分解装置に接続され、前記電気分解装置に硬水を供給する硬水流路と、
前記電気分解装置の上流側又は下流側の流路で微細気泡を発生させる微細気泡発生装置と、を備え、
前記第1流路に第1流量調整バルブを接続し、前記第2流路に第2流量調整バルブを接続し、
前記電気分解装置は、
前記硬水流路が接続される入口側ポートと、
前記第1流路が接続される第1出口側ポートと、
前記第2流路が接続される第2出口側ポートと、
前記入口側ポートに連通する共通流路と、
前記共通流路の下流側に接続して前記第1出口側ポートに連通する第1分岐流路と、
前記共通流路の下流側に接続して前記第2出口側ポートに連通する第2分岐流路と、
前記第1分岐流路と前記第2分岐流路を隔てる隔壁部材と、
前記第1分岐流路に配置した第1電極と、
前記第2分岐流路に配置した第2電極と、を備え、
前記隔壁部材は、板状の前記第1電極の両面を挟むように2股に別れて前記第1分岐流路を内側に形成し、前記第1分岐流路を下流側に開放する開口部を形成した形状を有し、
前記第1電極を収容した前記隔壁部材を、前記隔壁部材同士の間に板状の前記第2電極を配置しながら前記第2分岐流路を形成するように、横方向に複数並べて配置した
、イオン除去システム。
【請求項3】
前記隔壁部材のそれぞれは、前記第1電極の両面に接触するように内側に突出した複数の第1リブと、前記第2電極の両面に接触するように外側に突出した複数の第2リブと、を備える、請求項
2に記載のイオン除去システム。
【請求項4】
前記第1リブおよび前記第2リブは、前記隔壁部材の2股に別れた部分において同じ位置に表裏で設けられる、請求項
3に記載のイオン除去システム。
【請求項5】
前記隔壁部材のそれぞれは、前記第1電極を介さずに互いに直接接触するように内側に突出した複数の第3リブと、外側に突出した複数の第4リブと、をさらに備え、
隣接する2つの前記隔壁部材において、前記第4リブ同士が前記第2電極を介さずに直接接触する、請求項
3又は
4に記載のイオン除去システム。
【請求項6】
前記第1リブおよび前記第2リブの配置パターンを、前記第3リブおよび前記第4リブの配置パターンと異ならせた、請求項
5に記載のイオン除去システム。
【請求項7】
前記入口側ポートから前記共通流路への流入方向は横方向であり、
前記第1電極および前記第2電極の各主面は、平面視において前記流入方向に沿って延びる、請求項
2から
6のいずれか1つに記載のイオン除去システム。
【請求項8】
複数の前記隔壁部材が並ぶ方向に沿って見たときに、隣接する2つの前記隔壁部材における前記開口部同士が互いにオフセットして配置されている、請求項
2から
7のいずれか1つに記載のイオン除去システム。
【請求項9】
複数の前記隔壁部材における前記開口部をまとめて前記第1出口側ポートに連通させる継手部材をさらに備え、
前記継手部材の外側の空間において、複数の前記隔壁部材における前記第2分岐流路を前記第2出口側ポートに連通させた、請求項
2から
8のいずれか1つに記載のイオン除去システム。
【請求項10】
電気分解によりアルカリ水と酸性水とを生成する電気分解装置と、
前記電気分解装置が生成したアルカリ水と酸性水を交互に通水可能な第1流路および第2流路と、
前記電気分解装置に接続され、前記電気分解装置に硬水を供給する硬水流路と、
前記電気分解装置の上流側又は下流側の流路で微細気泡を発生させる微細気泡発生装置と、を備え、
前記第1流路に第1流量調整バルブを接続し、前記第2流路に第2流量調整バルブを接続し、
前記電気分解装置は、
前記硬水流路が接続される入口側ポートと、
前記第1流路が接続される第1出口側ポートと、
前記第2流路が接続される第2出口側ポートと、
前記入口側ポートに連通する共通流路と、
前記共通流路の下流側に接続して前記第1出口側ポートに連通する第1分岐流路と、
前記共通流路の下流側に接続して前記第2出口側ポートに連通する第2分岐流路と、
前記第1分岐流路と前記第2分岐流路を隔てる隔壁部材と、
前記第1分岐流路に配置した第1電極と、
前記第2分岐流路に配置した第2電極と、を備え、
前記電気分解装置は、前記共通流路に整流部材を備える
、イオン除去システム。
【請求項11】
前記共通流路は、前記電気分解装置の内部の底面に接する位置に設けられ、前記第1分岐流路および前記第2分岐流路は、前記共通流路の上方に設けられており、
前記整流部材は、前記電気分解装置の前記底面に設けた第1整流部材と、前記電気分解装置の前記底面から離れた位置に設けた第2整流部材と、を備える、請求項
10に記載のイオン除去システム。
【請求項12】
前記第1整流部材は、前記電気分解装置の前記底面に立設した複数の棒状部材であり、
前記第2整流部材は、複数の貫通孔を有する板状部材を互いに対向させながら複数配置したものである、請求項
11に記載のイオン除去システム。
【請求項13】
前記第2整流部材を構成する複数の前記板状部材は、同じ位置に貫通孔を形成した同形状の複数の板を、隣接する板同士で表裏逆転させて配置したものである、請求項
12に記載のイオン除去システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン除去システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、硬水中の金属イオンを除去するイオン除去システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のイオン除去システムは、硬水を収容する硬水収容部と、微細気泡を発生させて硬水収容部に供給する微細気泡発生手段とを備える。硬水収容部において硬水中の金属イオンを微細気泡に吸着させて、硬水中から金属イオンを除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今では、微細気泡による金属イオンの除去効果を高めることが求められている。特許文献1に開示されるような構成を含めて、微細気泡による金属イオンの除去効果を高めることに関して未だ改善の余地がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、金属イオンの除去効果を高めることができるイオン除去システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のイオン除去システムは、電気分解によりアルカリ水と酸性水とを生成する電気分解装置と、前記電気分解装置が生成したアルカリ水と酸性水を交互に通水可能な第1流路および第2流路と、前記電気分解装置に接続され、前記電気分解装置に硬水を供給する硬水流路と、前記電気分解装置の上流側又は下流側の流路で微細気泡を発生させる微細気泡発生装置と、を備え、前記第1流路に第1流量調整バルブを接続し、前記第2流路に第2流量調整バルブを接続している。
【発明の効果】
【0008】
本発明のイオン除去システムによれば、金属イオンの除去効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1におけるイオン除去システムの概略図
【
図2A】実施形態1における原水注水モードの第1段階の水の流れを示す図
【
図2B】実施形態1における原水注水モードの第2段階の水の流れを示す図
【
図3A】実施形態1における第1結晶化処理モードの水の流れを示す図
【
図3B】実施形態1における第2結晶化処理モードの水の流れを示す図
【
図4】実施形態1における処理水供給モードの水の流れを示す図
【
図5】イオン除去装置による金属イオンの吸着の仮説原理を説明するための模式図
【
図6】イオン除去装置による金属イオンの結晶化の仮説原理を説明するための模式図
【
図7】イオン除去装置による金属イオンの吸着の仮説原理を説明するための模式図
【
図8】イオン除去装置による金属イオンの結晶化の仮説原理を説明するための模式図
【
図9】実施形態1における異常発生時モードの水の流れを示す図
【
図10】イオン除去装置による再生処理の仮説原理を説明するための模式図
【
図11】実施形態1における電気分解装置の切欠斜視図
【
図12】実施形態1における電気分解ユニットの斜視図
【
図13】実施形態1における第1電解パックと第2電解パックの斜視図
【
図14】実施形態1における電気分解ユニットの側面図
【
図15】実施形態1における電気分解ユニットにおける分岐流路を表す断面図
【
図16】実施形態1における電気分解ユニットの縦断面を表す切欠き斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によって本発明が限定されるものではない。
【0011】
(実施形態1)
図1は、実施形態1におけるイオン除去システム2の概略図である。
【0012】
イオン除去システム2は、微細気泡を用いて硬水中から金属イオンを除去するシステムである。ここでの金属イオンとは、カルシウムイオン(Ca2+)とマグネシウムイオン(Mg2+)である。実施形態1におけるイオン除去システム2は、硬水中から金属イオンを除去して分離することにより、硬水中における金属イオンの濃度(硬度)を所定濃度以下まで低下させて、軟水を製造する軟水化装置である。なお、硬水及び軟水の定義としては、例えば、WHOの定義を用いてもよい。すなわち、硬度120mg/L未満を軟水と定義し、硬度120mg/L以上を硬水と定義してもよい。
【0013】
実施形態1における微細気泡とは、直径100μm以下の気泡である。微細気泡には、マイクロバブル(直径が例えば1μm以上100μm以下)と、ナノバブル(直径が例えば1μm未満)が含まれる。マイクロバブルは、水処理の分野における当業者がマイクロオーダーの気泡径と認識できる気泡としてもよい。また、ナノバブルは、水処理の分野における当業者がナノオーダーの気泡径と認識できる気泡としてもよい。微細気泡は、水中での滞留時間が長いこと、気泡単体として直径が大きくなりにくく他の気泡と合体しにくいこと、接触面積が大きく化学反応が生じやすいこと等、通常の気泡とは異なった性質を有する。
【0014】
なお、微細気泡としては、直径100μm以上の気泡(ミリバブルなど)を少しの割合で含むものでもよい。例えば、直径100μm以下の割合が90%以上のものを微細気泡と定義してもよい。これに加えて、直径60μm以下の割合が50%以上、直径20μm以下の割合が5%以上などの条件を加えてもよい。また、気泡の直径(気泡径)を測定する際には、例えば、高速度カメラで微細気泡を含む硬水を直接撮影して、画像処理により3点法で気泡径を算出してもよく、あるいは、それ以外の任意の方法で測定してもよい。気泡径を測定するタイミングは、微細気泡が滞留している時間であれば任意のタイミングであってもよい。なお、前述した高速度カメラを用いた測定方法の条件の一例は、以下の通りである。
【0015】
高速度カメラ :FASTCAM 1024 PCI (株式会社フォトロン)
レンズシステム :Z16 APO (Leica社)
対物レンズ :Planapo 2.0x(Leica社)
撮影速度 :1000fps
シャッター速度 :1/505000sec
画像領域 :1024×1024 pixel(マイクロバブル撮影領域 1.42mm×1.42mm、ミリバブル撮影領域 5.69mm×5.69mm)
画像処理ソフト :Image-Pro Plus (Media Cybermetics社)
【0016】
図1に示すイオン除去システム2は、硬水流路4と、バッチ処理タンク6と、電気分解装置8と、微細気泡発生装置10A、10Bと、分離装置12と、制御部13とを備える。
【0017】
硬水流路4は、電気分解装置8に硬水を供給する流路である。硬水流路4は、図示しない硬水の水源に接続されている。実施形態1の硬水流路4は、バッチ処理タンク6を経由して電気分解装置8に硬水を供給するように電気分解装置8に接続されている。
【0018】
硬水流路4の途中には、バッチ処理タンク6に加えて、バルブ11、ポンプ14、流量センサ16、バルブ18が設けられている。
【0019】
バッチ処理タンク6は、硬水流路4の途中に設けられたタンクである。バッチ処理タンク6は、硬水流路4から供給される硬水を収容する。バッチ処理タンク6を設けることにより、バッチ処理が可能となる。
【0020】
バルブ11は、硬水流路4からバッチ処理タンク6への通水を制御する弁である(実施形態1では電磁弁)。ポンプ14は、バッチ処理タンク6に収容されている硬水を電気分解装置8へ供給するためのポンプである。流量センサ16は、バッチ処理タンク6から電気分解装置8へ供給される硬水の流量を測定するセンサである。
【0021】
電気分解装置8は、硬水流路4から供給される硬水を電気分解することによりアルカリ水と酸性水を生成する装置である。電気分解装置8の詳細な構成については後述する。電気分解装置8には2つの流路として、第1流路22と第2流路24とが接続されている。
【0022】
第1流路22と第2流路24は、電気分解装置8が生成するアルカリ水と酸性水を交互に通水可能な流路である。第1流路22がアルカリ水を通水するときは第2流路24が酸性水を通水し、第1流路22が酸性水を通水するときは第2流路24がアルカリ水を通水する。
【0023】
第1流路22の途中には微細気泡発生装置10Aと脱気泡装置202Aが設けられている。同様に、第2流路24の途中には微細気泡発生装置10Bと脱気泡装置202Bが設けられている。
【0024】
微細気泡発生装置10A、10Bはそれぞれ、第1流路22、第2流路24に微細気泡を発生させて供給する装置である。微細気泡をそれぞれの流路に供給することにより、流路を流れる水に含まれる金属イオンを微細気泡に吸着して水中から除去することができる。実施形態1の微細気泡発生装置10A、10Bは、キャビテーション作用により微細気泡を発生させる装置である。微細気泡発生装置10A、10Bは、微細気泡発生装置10A、10Bを通過する水に対して自動的に微細気泡を供給する。
【0025】
脱気泡装置202A、202Bはそれぞれ、第1流路22、第2流路24を流れる水に含まれる気泡を外部に排出するための装置である。実施形態1の脱気泡装置202A、202Bは、第1流路22、第2流路24を流れる水に対してそれぞれ遠心分離を行うことにより、気泡を外部に排出する。脱気泡装置202A、202Bによって気泡を排出することにより、微細気泡発生装置10A、10Bに送られる水に含まれる気泡の量を低減することができる。
【0026】
電気分解装置8を運転するとアルカリ水および酸性水が生成されると同時に、H2やO2等の気泡が発生する。このような気泡を多く含む水が微細気泡発生装置10A、10Bに送られると、後述する微細気泡による気泡収縮の効果が妨げられ、結果として金属イオンの結晶化が阻害されるおそれがある。これに対して、脱気泡装置202A、202Bを設けて第1流路22、第2流路24の中の気泡を排出することで、微細気泡による金属イオンの結晶化を促進することができる。
【0027】
第1流路22には、第1戻し流路26と、第1排水流路28とが接続されている。第1戻し流路26は、第1流路22からバッチ処理タンク6に接続される流路である。第1排水流路28は、第1流路22からバッチ処理タンク6を経由せずにイオン除去システム2の系外に延びる流路である。
【0028】
第1戻し流路26と第1排水流路28が第1流路22に接続する箇所にはバルブ30が設けられている。バルブ30は、第1流路22から第1戻し流路26又は第1排水流路28への通水を切り替えるための弁である(実施形態1では電動弁)。
【0029】
第2流路24には、第2戻し流路31と、第2排水流路32とが接続されている。第2戻し流路31は、第2流路24からバッチ処理タンク6に接続される流路である。第2排水流路32は、第2流路24からバッチ処理タンク6を経由せずにイオン除去システム2の系外に延びる流路である。
【0030】
第2戻し流路31と第2排水流路32が第2流路24に接続する箇所にはバルブ34が設けられている。バルブ34は、第2流路24から第2戻し流路31又は第2排水流路32への通水を切り替えるための弁である(実施形態1では電動弁)。
【0031】
上述した第1戻し流路26と第2戻し流路31が硬水流路4に接続される接続ポイントは、実施形態1ではバッチ処理タンク6に相当する。接続ポイントに相当するバッチ処理タンク6よりも下流側において硬水流路4には分岐流路36が接続されている。分岐流路36は、バッチ処理タンク6と電気分解装置8の間で硬水流路4から分岐する流路である。
【0032】
分岐流路36が硬水流路4に接続する箇所には前述したバルブ18が設けられている。バルブ18は、硬水流路4から分岐流路36への通水および止水を切り替えるための弁である(実施形態1では電動弁)。
【0033】
分岐流路36には分離装置12が接続されている。分離装置12は、金属成分の結晶を水中から分離する装置である。実施形態1の分離装置12は、水中に含まれる結晶等の固体を遠心分離により分離するサイクロン方式の分離装置である。
【0034】
分離装置12には2つの流路として、第3流路38と第3排水流路40が接続されている。第3流路38は、分離装置12により結晶が分離された処理水を通水する流路である。排水流路40は、分離装置12で分離された結晶を含む排水を通水する流路である。排水流路40は、前述した第1排水流路28、第2排水流路32とともに、バッチ処理タンク6を経由せずにイオン除去システム2の系外に延びている。
【0035】
第3流路38の途中には、pHセンサ42と濁度センサ44と二酸化炭素投入装置212とが設けられている。pHセンサ42および濁度センサ44は、第3流路38に通水される処理水のpH値と濁度をそれぞれ測定するセンサである。二酸化炭素投入装置212は、第3流路38に通水されている処理水に二酸化炭素を投入する装置である。
【0036】
第3流路38の途中にはさらに、第3戻し流路46が接続されている。第3戻し流路46は、第3流路38とバッチ処理タンク6の間に接続される流路である。
【0037】
第3戻し流路46が第3流路38に接続する箇所にはバルブ47が設けられている。バルブ47は、第3流路38から第3戻し流路46への通水および止水を切り替えるための弁である(実施形態1では電動弁)。
【0038】
第3流路38にはさらに、貯水タンク48が接続されている。貯水タンク48は、第3流路38から供給される処理水を貯水するタンクである。貯水タンク48に貯水された処理水はポンプ50により水栓52に供給される。水栓52は、ユーザへ処理水が供給され処理水供給ポイントである。ポンプ50を駆動することで、イオン除去システム2で硬水を処理することにより得られた処理水(すなわち、軟水)を水栓52に供給して利用することができる。
【0039】
制御部13は、上述したイオン除去システム2の各構成要素を制御する部材である。制御部13は、各バルブの開閉制御、各ポンプのON/OFF制御、電気分解装置8のON/OFF制御、分離装置12のON/OFF制御等を実行する。制御部13は例えば、マイクロコンピュータである。
【0040】
制御部13は、イオン除去システム2を複数の運転モードで運転する。これらの運転モードについて説明する。
【0041】
(原水注水モード)
原水注水モードは、イオン除去システム2の運転を開始する際に、原水である硬水を各流路に注入するモードである。具体的には、
図2A、
図2Bに示すような流れを生じさせるように制御部13が制御する。
図2A、
図2B以降の図面では、水の流れを矢印で表し、矢印のない流路には水の流れは生じていないものとする。
【0042】
図2Aは、原水注水モードの第1段階として、流路に残存している残水を排水するモードを示す。
図2Aに示すように、制御部13は、硬水流路4に硬水を通水するようにバルブ11を開くとともに、バッチ処理タンク6の硬水を電気分解装置8に供給するようにポンプ14を駆動する。制御部13はこのとき、バッチ処理タンク6から電気分解装置8に流れる硬水の流量を、流量センサ16の検知結果に基づいて取得する。制御部13はさらに、硬水流路4から分岐流路36へは止水して硬水が流れないようにバルブ18の開閉を制御する。制御部13はさらに、電気分解装置8を運転せず、硬水流路4に通水する硬水を第1流路22と第2流路24にそのまま通水するように制御する。制御部13はさらに、第1流路22に通水した硬水を第1排水流路28に通水するようにバルブ30の開閉を制御し、第2流路24に通水した硬水を第2排水流路32に通水するようにバルブ34の開閉を制御する。これにより、
図2Aに示すような矢印の流れが生じ、各流路に残存している残水が排水される。
【0043】
図2Bは、原水注水モードの第2段階として、バッチ処理タンク6に新たな硬水を注入するモードを示す。制御部13は、
図2Aに示す状態からバルブ30、34の開閉を変更する。具体的には、第1流路22に通水される硬水を第1戻し流路26へ通水するようにバルブ30の開閉を制御し、第2流路24に通水される硬水を第2戻し流路31へ通水するようにバルブ34の開閉を制御する。これにより、
図2Bに示すような矢印の流れが生じ、バッチ処理タンク6に新たな硬水が注入される。
【0044】
上述した原水注水モードを実行した後、以下で説明する第1結晶化処理モードあるいは第2結晶化処理モードを実行する。
【0045】
(第1結晶化処理モード(第1モード))
図3Aは、第1結晶化処理モードを示す。制御部13はバルブ11を閉じるとともに、バッチ処理タンク6に収容された硬水を電気分解装置8に供給するようにポンプ14を駆動する。制御部13は、硬水流路4から分岐流路36に通水しないようにバルブ18を制御する。制御部13はさらに、電気分解装置8を駆動して、アルカリ水と酸性水を生成させる。具体的には、電気分解装置8がバッチ処理タンク6から供給される硬水を電気分解することにより、アルカリ水と酸性水を生成する。
【0046】
電気分解装置8が生成するアルカリ水と酸性水のうち、第1結晶化処理モードでは、アルカリ水を第1流路22に通水し、酸性水を第2流路24に通水するように制御部13が電気分解装置8を制御する。
【0047】
制御部13はさらに、第1流路22に通水したアルカリ水を第1戻し流路26に通水するようにバルブ30を制御し、第2流路24に通水した酸性水を第2排水流路32に通水するようにバルブ34を制御する。これにより、
図3Aに示すような矢印の流れが生じる。
【0048】
図3Aに示す流れにおいては、バッチ処理タンク6、電気分解装置8、第1流路22、第1戻し流路26の順にアルカリ水がループして流れる循環流路が形成される。第1流路22は、第1戻し流路26とともに戻し流路として機能する。当該循環流路において、第1流路22に通水されるアルカリ水に対して微細気泡発生装置10Aから微細気泡が供給される。微細気泡の供給により、アルカリ水中に含まれる金属イオンが微細気泡に吸着されて、アルカリ水中から除去される。微細気泡による金属イオンの除去の原理については後述する。
【0049】
金属イオンの除去処理が行われた硬水は「処理水」となり、バッチ処理タンク6に溜められる。処理水はその後、ポンプ14により吸引されて電気分解装置8に送られ、微細気泡発生装置10Aにより再度、微細気泡が供給される。処理水が循環流路を流れることにより、処理水に微細気泡が継続的に供給され、金属イオンの除去処理が継続的に行われる。
【0050】
循環流路にアルカリ水を循環させることにより、循環流路を流れる水のpH値を上昇させながら、微細気泡による金属イオンの除去が継続的に行われる。pH値を上昇させることで、微細気泡の表面に存在する負の電荷を持つOH-が増加し、Ca2+が微細気泡に吸着されやすくなる。その結果、後述するように金属イオンの結晶化を促進することができ、金属イオンの除去効果を高めることができる。また、金属成分の結晶を含むアルカリ水を循環させることで、水中に含まれる金属イオンを結晶に付着させる形で結晶化させることができ、金属イオンの結晶化をさらに促進することができる。
【0051】
(第2結晶化処理モード(第2モード))
図3Bは、第2結晶化処理モードを示す。第2結晶化処理モードでは、
図3Aに示した第1結晶化処理モードと異なり、電気分解装置8が生成したアルカリ水と酸性水のうち、酸性水を第1流路22に通水し、アルカリ水を第2流路24に通水するように制御部13が電気分解装置8を制御する。さらに、第1流路22に通水した酸性水を第1排水流路28に通水するようにバルブ30を制御し、第2流路24に通水したアルカリ水を第2戻し流路31に通水するようにバルブ34を制御する。これにより、
図3Bに示すような矢印の流れが生じる。
【0052】
図3Bに示す流れにおいては、バッチ処理タンク6、電気分解装置8、第2流路24、第2戻し流路31の順にアルカリ水がループして流れる循環流路が形成される。第2流路24は、第2戻し流路31とともに戻し流路として機能する。当該循環流路において、第2流路24に通水されるアルカリ水に対して微細気泡発生装置10Bから微細気泡が供給される。微細気泡の供給により、アルカリ水中に含まれる金属イオンが微細気泡に吸着されて、アルカリ水中から除去される。
【0053】
第1結晶化処理モードと同様に、循環流路にアルカリ水を循環させることで、循環流路を流れる水のpH値を上昇させながら、微細気泡による金属イオンの除去を継続的に行うことができる。これにより、第1結晶化処理モードと同様の効果を奏することができる。
【0054】
上述した第1結晶化処理モードあるいは第2結晶化処理モードを実行した後、以下で説明する処理水供給モードを実行する。
【0055】
(処理水供給モード(第3モード))
図4は、処理水供給モードを示す。処理水供給モードは、第1結晶化処理モードと第2結晶化処理モードで硬水を処理することにより得られた処理水を水栓52に供給する運転モードである。
【0056】
制御部13はまず、分岐流路36へ通水するようにバルブ18の開閉を制御する。この状態でポンプ14を駆動することにより、バッチ処理タンク6に溜められた処理水を分岐流路36に通水する。制御部13はこのとき、電気分解装置8へ通水しないようにバルブ18の開閉を制御する。
【0057】
分岐流路36に通水された処理水は分離装置12に送られる。分離装置12は、処理水に含まれる金属成分の結晶を分離する。分離装置12はさらに、結晶が分離された処理水を第3流路38に供給し、結晶を含む排水を第3排水流路40に通水する。
【0058】
第3流路38に通水された処理水は、貯水タンク48に溜められる。その後、ポンプ50を作動させることにより、貯水タンク48に溜められた処理水(すなわち軟水)を水栓52に供給して、水栓52で処理水が利用可能となる。
【0059】
制御部13は、上述した原水注水モード、第1結晶化処理モード、処理水供給モードを順に行う制御と、原水注水モード、第2結晶化処理モード、処理水供給モードを順に行う制御を交互に行う。第1結晶化モードと第2結晶化モードはともに、バッチ処理タンク6、電気分解装置8、戻し流路26、31を含む流路に循環流路を構成し、循環流路にアルカリ水を循環させながら、酸性水をイオン除去システム2の系外に排水するものである。第1結晶化処理モードと第2結晶化処理モードを交互に実施することにより、アルカリ水を通水した流路を酸性水で洗浄することができ、イオン除去システム2内の流路を金属イオンの除去処理に適した状態に保つことができる。これにより、微細気泡による金属イオンの除去効果を高めることができる。
【0060】
<軟水化処理(金属イオンの除去処理)>
上述した微細気泡による金属イオンの除去処理、すなわち「軟水化処理」の原理についてより詳しく説明する。
【0061】
空気を含む微細気泡が硬水中に供給されることで、硬水中の金属イオンに対して以下の(1)、(2)の欄に記載するような作用が生じると推測される。具体的には、硬水中の金属イオンを微細気泡に吸着させるとともに、吸着した金属イオンを結晶化させて、硬水中から金属成分の結晶を除去することができると推測される。より具体的には、以下の通りである。なお、以下の(1)、(2)の欄に記載する特定の原理に拘束される訳ではない。
【0062】
(1)金属イオンの吸着
図5に示すように、空気を含む微細気泡が硬水中に供給されると、微細気泡の表面にはH
+(水素イオン)とOH
-(水酸化物イオン)が混在し、H
+は正の電荷に帯電し、OH
-は負の電荷に帯電する(
図5ではOH
-のみを図示)。一方で、硬水中には、正の電荷に帯電した金属イオンとして、Ca
2+及びMg
2+が存在する。以降の説明では、金属イオンとしてCa
2+を例として説明する。
【0063】
正の電荷を持つCa2+は、分子間力の作用(イオン間相互作用)によって、微細気泡の表面に存在するOH-に吸着される。このようにしてCa2+を微細気泡に吸着させることができる。なお、微細気泡の表面にはCa2+に反発するH+が存在するが、H+よりもOH-が優先的に作用してCa2+を吸着すると考えられる。
【0064】
(2)金属イオンの結晶化
図5で示した反応に加えて、空気を含む微細気泡を硬水中に供給することにより、
図6で示す反応が促進される。具体的には、硬水中に供給された微細気泡は通常の気泡とは異なり浮上しにくく、硬水中に溶け出していくため、表面張力が増加して、
図6に示すように徐々に収縮していく。前述したように、微細気泡の表面にはCa
2+が吸着されている。より具体的には、可溶性のCa(HCO
3)
2(炭酸水素カルシウム)のカルシウムイオンとして存在している。ここで、微細気泡が徐々に収縮していくと、微細気泡の表面におけるCa
2+の溶解濃度が上昇する。溶解濃度の上昇により、ある時点で過飽和の状態となり、Ca
2+が結晶化して析出する。具体的な化学式で表すと、以下の式1の通りである。
【0065】
(式1)
Ca(HCO3)2→CaCO3+CO2+H2O
【0066】
CaCO3(炭酸カルシウム)は不溶性(非水溶性)であるため、金属成分の結晶として析出する。これにより、Ca(HCO3)2のCa2+として溶解していたものが、金属成分の結晶として析出される。このような反応が促進されることにより、硬水中から金属イオンのCa2+を結晶化して析出したCaCO3を分離することができる。
【0067】
なお、同じ水の中で式1とは逆向きの反応も生じうるが、微細気泡を継続的に供給することにより、当該平衡関係において式1の向きの反応が優先的に行われるものと推測される。また、式1の逆向きの反応は基本的にはCO2ガスを外部から吹きかけないと起こらない反応であるため、式1の向きの反応が優先的に生じるものと考えられる。
【0068】
実施形態1では、軟水化処理における微細気泡の気体として空気を用いたが、このような場合に限らない。微細気泡の気体として例えば、空気に代えて窒素を用いてもよい。微細気泡発生装置10A、10Bから窒素の微細気泡を発生させて硬水中に供給することで、前述した「(1)金属イオンの吸着」、「(2)金属イオンの結晶化」の作用に加えて、以下の(3)、(4)の欄に記載するような作用が促進されると推測される。なお、以下の(3)、(4)の欄に記載する特定の原理に拘束される訳ではない。
【0069】
(3)金属イオンの吸着の促進
図7(a)に示すように、微細気泡の周囲には、H
+とOH
-が帯電している。前述したように、負の電荷に帯電したOH
-には、正の電荷に帯電したCa
2+が吸着される。このような状況下で、微細気泡として窒素を用いた場合、以下の式2の反応が促進される。
【0070】
(式2)
N2+6H++6e-→2NH3
NH3+H2O→NH4
++OH-
【0071】
式2の反応が促進されることにより、
図7(b)に示すように、OH
-イオンの数に対してH
+イオンの数が減少する。これにより、微細気泡としては負の電荷が強くなり、正の電荷をもつCa
2+が吸着されやすくなる。
【0072】
本変形例のように窒素を用いた場合では、空気を用いた場合と比較して、式2の反応を促進できるため、金属イオンの吸着がより促進される。これにより、硬水中からより多くの金属イオンを分離して除去することができる。
【0073】
なお、前記原理は窒素に限らず、H+イオンと反応し、OH-イオンの数に対してH+イオンの数を減少させることができる気体であれば、同様に当てはまると推測される。
【0074】
(4)金属イオンの結晶化の促進
窒素は、空気とは異なる不活性ガスであるため、硬水中に供給されたときに、硬水中に含まれる気体の分圧のバランスが崩れた状態となる。これにより、
図8に示すような反応が促進される。
【0075】
図8に示すように、窒素で構成される微細気泡に対して、硬水中に溶けた他の気体成分が置き換わろうと作用する。
図8に示す例では、微細気泡の周囲に存在するCa(HCO
3)
2にCO
2が含まれており、このCO
2が抽出されて窒素に置き換わろうと作用する。すなわち、以下の反応が促進される。
【0076】
(式3)
Ca(HCO3)2→CaCO3+CO2+H2O
【0077】
このように、可溶性のCa(HCO3)2から不溶性のCaCO3が生じる反応が生じる。このとき、CO2とH2Oが生じる。CaCO3は不溶性であるため、金属成分の結晶として析出する。
【0078】
前記反応により、硬水中にCa(HCO3)2のCa2+として含まれていた金属イオンを結晶化して析出させることができる。これにより、硬水中から金属成分の結晶を除去することができる。
【0079】
なお、前記原理は窒素に限らず、硬水中に溶けている気体の分圧のバランスを崩れさせる空気以外の気体であれば、同様に当てはまると推測される。
【0080】
前述したように、窒素を取り込んで微細気泡を発生させて硬水中に供給することで、空気を用いた場合に比べて、「(3)金属イオンの吸着の促進」、「(4)金属イオンの結晶化の促進」の欄で説明した反応を促進することができる。これにより、硬水中から金属イオンを除去する精度を向上させることができる。
【0081】
なお、前記では、金属イオンとしてCa2+を例として説明したが、Mg2+についても同様の反応が起こると推測される。
【0082】
(異常発生時モード)
制御部13は、上述した複数のモードとは別のモードとして、以下で説明する異常発生時モードを実行可能である。
【0083】
図4に示した処理水供給モードにおいて、第3流路38から貯水タンク48に通水される処理水に関してpHセンサ42と濁度センサ44のそれぞれの測定値が異常値として検出される場合がある。そのような場合に、貯水タンク48への処理水の通水を停止するために、以下で説明する異常発生時モードを実行する。
【0084】
図9は、異常発生時モードを示す。制御部13は、
図4に示す処理水供給モードからバルブ47の開閉制御を変更する。具体的には、第3流路38から貯水タンク48へ通水していたところ、第3流路38から貯水タンク48への流路を止水して第3戻し流路46へ通水するように、バルブ47の開閉を制御する。これにより、
図9に示すような矢印の流れが生じる。
【0085】
第3流路38から貯水タンク48への流れを止水することで、pH値あるいは濁度の異常値が検出された処理水の供給を停止することができる。
【0086】
図9に示す異常発生時モードでは、第3戻し流路46を含んだ一連の流路として循環流路が構成される。具体的には、第3戻し流路46、バッチ処理タンク6、硬水流路4、分岐流路36、分離装置12、第3流路38の順に処理水が流れる循環流路が構成される。
【0087】
当該循環流路において、二酸化炭素投入装置212によって二酸化炭素が投入される。処理水に二酸化炭素を投入することで、二酸化炭素が処理水に溶けて、処理水の酸性度が高まる。これにより、循環流路における処理水のpHを低下させることができる。二酸化炭素はさらに、後述するように結晶として析出している不溶性のCaCO3と反応して、可溶性のCa(HCO3)2を生成するように作用する。これにより、循環流路における処理水の濁度を低下させることができる。このように、二酸化炭素は処理水のpHと濁度の両方を低下させる機能を有する。
【0088】
循環流路に二酸化炭素を継続的に供給することで、pHセンサ42あるいは濁度センサ44の測定値が異常値として検出された場合でも、処理水を循環させながら、当該測定値を正常値に近付けるようにすることができる。
【0089】
測定値が正常値に戻ると、制御部13は、第3流路38から貯水タンク48へ通水して第3戻し流路46は止水するように、バルブ210の開閉を制御する。これにより、水の流れは、
図9に示す異常発生時モードから、
図4に示す処理水供給モードの流れに切り替わる。
【0090】
<再生処理(洗浄処理)>
二酸化炭素による流路の洗浄処理、すなわち「再生処理」の原理について詳しく説明する。
【0091】
軟水化処理を行うことで、金属イオンを結晶化して析出したCaCO3の一部は、流路の内壁面に付着する。このCaCO3をCa(HCO3)2に戻すための処理として、再生処理を行う。
【0092】
図10に示すように、流路の内壁面に付着したCaCO
3に対して二酸化炭素を供給することで、以下の反応が促進される。
【0093】
(式4)
CaCO3+CO2+H2O→Ca(HCO3)2
【0094】
当該反応により、不溶性のCaCO3から可溶性(水溶性)のCa(HCO3)2が生成される。Ca(HCO3)2は水の中に溶け出していく。これにより、流路の内壁面に付着していた不溶性のCaCO3を外部に排出し、元の状態に戻すことができる。
【0095】
ここで、実施形態1のバルブ18、30、34、47のそれぞれは、一方の流路を閉じて他方の流路を開くという機能に加えて、当該他方の流路を開く開度を調整して流量を可変にする機能を有する。すなわち、バルブ18、30、34、47のそれぞれは、「流量調整バルブ」として機能する。
【0096】
このような流量調整機能によれば、バルブ18は、バッチ処理タンク6から電気分解装置8に供給する硬水/処理水の流量を可変とすることができ、同様に、硬水流路4から分岐流路36に供給する処理水の流量を可変とすることができる。バルブ30、34、47についても同様である。
【0097】
制御部13は、
図3Aに示すモードにおいて、第1流路22から第1戻し流路26にアルカリ水を流す際に、バルブ30の開度を調整することにより流量を調整する。同様に、制御部13は、第2流路24から第2排水流路32に酸性水を流す際に、バルブ34の開度を調整することにより流量を調整する。
図3Bに示すモードでも同様である。
【0098】
ここで、実施形態1の制御部13は、電気分解装置8を運転してアルカリ水と酸性水を発生させる際に、酸性水の流量が少なくなるようにバルブ30、34の開度を調整している。具体的には、
図3Bに示すようにバルブ30が酸性水を流す場合は、
図3Aに示すようにアルカリ水を流す場合よりもバルブ30の開度を小さく設定して、酸性水の流量を少なくする。同様に、
図3Aに示すようにバルブ34が酸性水を通過させる場合は、
図3Bに示すようにアルカリ水を流す場合よりもバルブ34の開度を小さく設定して、酸性水の流量を少なくする。このように、第1、第2結晶化処理モードにおいて酸性水の流量を少なくすることで、各流路における酸性水の酸性度を高めることができる。これにより、酸性水による流路の洗浄効果を高めることができる。
【0099】
上述したように、実施形態1のイオン除去システム2は、電気分解装置8と、第1流路22および第2流路24と、硬水流路4と、微細気泡発生装置10A、10Bと、を備える。第1流路22に第1流量調整バルブ30を接続し、第2流路24に第2流量調整バルブ34を接続している。
【0100】
このような構成によれば、第1流路22と第2流路24にアルカリ水と酸性水をそれぞれ交互に通水することで、それぞれの流路22、24でアルカリ水を通水した後に酸性水を通水することができ、流路22、24の洗浄を行うことができる。これにより、各流路22、24を金属イオンの除去処理に適した状態に保つことができ、微細気泡による金属イオンの除去効果を高めることができる。また、流量調整バルブ30、34によってアルカリ水と酸性水の流量の割合を調整することで、酸性水の酸性度を高める等、金属イオンの除去効果をさらに高める制御が可能となる。
【0101】
また、実施形態1の制御部13は、第1流路22にアルカリ水を通水して第2流路24に酸性水を通水する第1結晶化処理モードを実行し、第1流路22に酸性水を通水して第2流路24にアルカリ水を通水する第2結晶化処理モードを実行する。制御部13は、第1流量調整バルブ30の開度を、第1結晶化処理モードよりも第2結晶化処理モードの方が小さくなるように設定し、第2流量調整バルブ34の開度を、第2結晶化処理モードよりも第1結晶化処理モードの方が小さくなるように設定する。
【0102】
このような制御によれば、第1流路22と第2流路24を流れる酸性水の酸性度を高めることができ、流路の洗浄効果を高めることができる。
【0103】
次に、電気分解装置8の詳細な構成について、
図11~
図18を用いて説明する。
【0104】
図11は、電気分解装置8の縦断面を表す切欠き斜視図である。
図11に示す電気分解装置8は、筐体102と、入口側ポート104と、第1出口側ポート106と、第2出口側ポート108とを備える。
【0105】
入口側ポート104は、前述した硬水流路4に接続されるポートである。第1出口側ポート106は、前述した第1流路22に接続されるポートである。第2出口側ポート108は、前述した第2流路24に接続されるポートである。
【0106】
入口側ポート104および出口側ポート106、108はいずれも筐体8の側面に設けられる。入口側ポート104から筐体102に流入する水の流入方向をX1、出口側ポート106、108から筐体102の外部に流出する水の流出方向をX2、X3とする。流入方向X1、X2、X3はいずれも横方向(水平方向)である。
【0107】
図11に示すように、入口側ポート104に連通する位置に共通流路109が設けられる。共通流路109は、筐体102の内部の底面118に接する位置に設けられた流路である。入口側ポート104から共通流路109に流入した水は共通流路109を上昇する。
【0108】
電気分解装置8はさらに、第1整流部材110と、第2整流部材112と、電気分解ユニット114と、継手部材132とを備える。
【0109】
第1整流部材110および第2整流部材112は、共通流路109を整流するための部材である。
【0110】
図11に示す例では、第1整流部材110は、筐体102の底面118に立設された複数の棒状部材である。第2整流部材112は、第1整流部材110の上方に配置された複数の板状部材である。第2整流部材112は、複数の貫通孔を有する板を、上下に間隔を空けて複数設けて構成される。第2整流部材112を構成する各板は、同じ位置に貫通孔を有する同形状の板であり、隣接する第2整流部材112同士で表裏を逆転させて配置している。このような配置によれば、共通流路109を上昇する水に対して、隣接する第2整流部材112同士で貫通孔の位置を異ならせることができ、整流効果を向上させることができる。
【0111】
このような第1整流部材110および第2整流部材112によって共通流路109を2段階で整流することで、整流効果を高めることができる。これにより、電気分解ユニット114に対してより均一な流量の水を供給することができる。
【0112】
電気分解ユニット114は、電気分解によりアルカリ水と酸性水を生成するユニットである。電気分解ユニット114の内部には、2種類の分岐流路と2種類の電極が設けられる。それぞれの分岐流路でアルカリ水と酸性水が交互に生成される。
【0113】
次に、電気分解ユニット114の詳細な構成について、
図12~
図18を用いて説明する。
【0114】
図12は、電気分解ユニット114の斜視図である。
図12に示す電気分解ユニット114は、複数の第1電解パック116Aと、複数の第2電解パック116Bとを備える。第1電解パック116Aと第2電解パック116Bが横方向であるA方向に沿って、交互に配列されている。
【0115】
図12に示すように、第1電解パック116Aの第1開口部130Aと、第2電解パック116Bの第2開口部130Bは、オフセットして配置されている。具体的には、第1開口部130Aと第2開口部130BをA方向から見たときに、A方向に交差する横方向であるB方向に互いにオフセットされている。このような配置により、第1電解パック116Aと第2電解パック116BをA方向に近付けて配置することができ、より密に配置することができる。
【0116】
次に、第1電解パック116Aと第2電解パック116Bの斜視図を
図13に示す。さらに、電気分解ユニット114の側面図を
図14に示し、電気分解ユニット114における分岐流路を表す断面図を
図15に示す。
図15において、(a)は第1電解パック116Aの第1開口部130Aを含む断面を示し、(b)は第2電解パック116Bの第2開口部130Bを含む断面を示す。
【0117】
図13に示すように、第1電解パック116Aと第2電解パック116Bはそれぞれ、第1電極120および第2電極122を収容している。
【0118】
第1電解パック116Aは、第1流路構成部124Aと、第1防水膜固定部126Aと、第1開口部130Aとを備える。同様に、第2電解パック116Bは、第2流路構成部124Bと、第2防水膜固定部126Bと、第2開口部130Bとを備える。
【0119】
第1、第2流路構成部124A、124Bはそれぞれ、内部に流路を構成する部材である。第1、第2流路構成部124A、124Bはそれぞれ、板状の第1電極120を内側に挟み、位置決めしている。一方で、第1流路構成部124Aと第2流路構成部124Bの間には、板状の第2電極122が挟まれて、位置決めされている。
【0120】
流路構成部124Aの両面には、第1防水膜固定部126Aが取り付けられている。第1防水膜固定部126Aは、第1流路構成部124Aに第1透湿防水膜128A(
図15参照。
図13では図示せず)を固定するための部材である。同様に、流路構成部124Bの両面には、第2防水膜固定部126Bが取り付けられている。第2防水膜固定部126Bは、第2流路構成部124Bに第2透湿防水膜128B(
図15参照)を固定するための部材である。
【0121】
第1、第2透湿防水膜128A、128Bは、透湿防水性の膜である。第1、第2透湿防水膜128A、128Bと第1、第2流路構成部124A、124Bによって、第1分岐流路S1と第2分岐流路S2が形成される。
【0122】
第1分岐流路S1は、第1流路構成部124Aと第1透湿防水膜128Aの内側に形成される空間である。第1分岐流路S1は、第2流路構成部124Bと第2透湿防水膜128Bの内側にも形成される。1つの第1分岐流路S1には、1つの第1電極120が配置される。
【0123】
第2分岐流路S2は、第1透湿防水膜128Aと第2透湿防水膜128Bの間、および、第1流路構成部124Aと第2流路構成部124Bの間に形成される空間である。1つの第2分岐流路S2に、1つの第2電極122が配置される。
【0124】
共通流路109から電気分解ユニット114に流入してくる水は、第1分岐流路S1に流入する水W1と、第2分岐流路S2に流入する水W2に別れる。
【0125】
第1分岐流路S1に流入した水W1は、第1分岐流路S1に配置された第1電極120に沿って第1分岐流路S1を上昇した後、第1開口部130Aあるいは第2開口部130Bから下流側に開放される。第2分岐流路S2に流入した水W2は、第2分岐流路S2に配置された第2電極122に沿って第2分岐流路S2を上昇した後、開口部130Aと開口部130Bの間の空間から下流側に開放される。
【0126】
図11に戻ると、電気分解ユニット114の第1、第2開口部130A、130Bは、継手部材132に接続されている。継手部材132は、複数の第1開口部130Aおよび複数の第2開口部130Bをまとめて第1出口側ポート106に接続する。継手部材132によって、第1分岐流路S1から第1開口部130Aおよび第2開口部130Bに流れた水W1は、第1出口側ポート106に案内される。
【0127】
継手部材132の外側には空間Pが形成されている。空間Pは、電気分解ユニット114における複数の第2分岐流路S2に連通している。空間Pは第2出口側ポート108にも連通しており、第2分岐流路S2から空間Pに流れてきた水W2は、第2出口側ポート108に案内される。
【0128】
上述した構成を有する電気分解装置8は、制御部13(
図1等)に電気的に接続されている。制御部13は、第1電極120と第2電極122に対して電圧を印加する電圧印加モードを実行する。実施形態1の制御部13は、第1電極120と第2電極122のうち、一方を陽極、他方を陰極として電圧を印加する第1電圧印加モードと、一方を陰極、他方を陽極として電圧を印加する第2電圧印加モードを実行する。
【0129】
第1電圧印加モードでは、
図15に示した第1分岐流路S1を流れる水W1がアルカリ水として生成され、第2分岐流路S2を流れる水W2が酸性水として生成される。生成されたアルカリ水は、継手部材132を介して第1出口側ポート106に流れ、第1出口側ポート106に接続された第1流路22に通水される。酸性水は、継手部材132の外側の空間Pを介して第2出口側ポート108に流れ、第2出口側ポート108に接続された第2流路24に通水される。
【0130】
上述した第1電圧印加モードは、第1流路22にアルカリ水を通水して第2流路24に酸性水を通水するモードであり、
図3Aに示した第1結晶化処理モードに対応する。
【0131】
一方で、第2電圧印加モードでは、
図15に示した第2分岐流路S2を流れる水W2がアルカリ水として生成され、第1分岐流路S1を流れる水W1が酸性水として生成される。アルカリ水は、継手部材132の外側の空間Pを介して第2出口側ポート108に流れ、第2流路24に通水される。一方で、酸性水は、継手部材132を介して第1出口側ポート106に流れ、第1流路22に通水される。
【0132】
上述した第2電圧印加モードは、第2流路24にアルカリ水を通水して第1流路22に酸性水を通水するモードであり、
図3Bに示した第2結晶化処理モードに対応する。
【0133】
上記モードにおいて、
図15に示した第1、第2流路構成部124A、124B、第1、第2防水膜固定部126A、126Bおよび第1、第2透湿防水膜128A、128Bは、第1電極120と第2電極122を隔てる「隔壁部材」として機能する。
【0134】
図11に示すように、板状の第1、第2電極120、122は、それぞれの両主面が上下方向に延在するように配置されている。これにより、板状の電極120、122の各主面が、平面視において流入方向X1に沿って延びるように配置される。このような配置によれば、筐体102の内部において流入方向X1の手前側よりも奥側の方が水の流量が多くなるという分布が生じるところ、いずれの電極120、122においても同様の流量分布となる。これにより、各電極120、122に沿って流れる水の流量の均一化を図ることができる。
【0135】
上述したように、実施形態1の電気分解装置8は、入口側ポート104と、第1出口側ポート106と、第2出口側ポート108と、共通流路109と、第1分岐流路S1と、第2分岐流路S2と、第1電極120と、第2電極122と、を備える。実施形態1の電気分解装置8はさらに、第1分岐流路S1と第2分岐流路S2を隔てる隔壁部材として、第1、第2流路構成部124A、124B、第1、第2防水膜固定部126A、126Bおよび第1、第2透湿防水膜128A、128Bを備える。
【0136】
このような構成によれば、共通流路109の下流側に2つの分岐流路S1、S2を接続することで、アルカリ水と酸性水の差圧の発生点を分岐流路S1、S2の直前とすることができる。より上流側で差圧が生じ始める場合に比べて、分岐流路S1、S2で生じるアルカリ水と酸性水の差圧を小さくすることができる。これにより、第1、第2透湿防水膜128A、128Bが隔てるアルカリ水と酸性水が、差圧によって、誤って第1、第2透湿防水膜128A、128Bを透過して混合することを抑制することができる。これにより、電気分解装置8の能力低下を抑制することができる。また差圧を小さくすることで、電気分解装置8を繰り返し運転したときに、隔壁部材である第1、第2流路構成部124A、124Bや電極120、122が変形して破損することを抑制することができる。
【0137】
また、実施形態1の電気分解装置8によれば、隔壁部材である第1、第2流路構成部124A、124Bおよび第1、第2透湿防水膜128A、128Bは、板状の第1電極120の両面を挟むように2股に別れて第1分岐流路S1を内側に形成する。隔壁部材はさらに、第1分岐流路S1を下流側に開放する開口部130A、130Bを形成する。第1電極120を収容した隔壁部材は、隔壁部材同士の間に板状の第2電極122を配置しながら第2分岐流路S2を形成するように、横方向であるA方向に複数並べて配置されている。
【0138】
このような構成によれば、隔壁部材によって第1電極120と第2電極122を隔てながら、第1分岐流路S1と第2分岐流路S2を形成することができる。
【0139】
次に、電気分解ユニット114に設けたリブ134、136、138、140について、
図16~
図18を用いて説明する。
【0140】
図16は、電気分解ユニット114の縦断面を表す切欠き斜視図である。
図17、
図18はそれぞれ、
図16の一部拡大斜視図である。
図16~
図18では、
図15に示した第1、第2透湿防水膜128A、128Bの図示を省略している。
【0141】
図16に示すように、電解パック116A、116Bはそれぞれ、第1リブ134と、第2リブ136とを備える。
【0142】
第1リブ134は、電解パック116A、116Bのそれぞれにおいて内側に突出した突起である。第2リブ136は、電解パック116A、116Bのそれぞれにおいて外側に突出した突起である。
【0143】
図17に示すように、第1リブ134は、板状の第1電極120を挟むように第1電極120の両主面に接触する。第1電極120は、第1リブ134によって位置決めされる。第2リブ136は、板状の第2電極122を挟むように第2電極122の両主面に接触する。第2電極122は、第2リブ136によって位置決めされる。
【0144】
上述した第1リブ134および第2リブ136を設けることで、第1分岐流路S1と第2分岐流路S2を塞がないようにしながら、第1、第2電極120、122を位置決めすることができる。
【0145】
図16に戻ると、電解パック116A、116Bはそれぞれ、第3リブ138と、第4リブ140とを備える。
【0146】
第3リブ138および第4リブ140は、電極120、122に接触しない位置に設けられた突起である。第3リブ138は、電解パック116A、116Bのそれぞれにおいて内側に突出し、第4リブ140は、電解パック116A、116Bのそれぞれにおいて外側に突出する。
【0147】
図18に示すように、互いに対向する2つの第3リブ138は、電極120、122を介さずに直接、接触する。同様に、互いに対向する2つの第4リブ140は、電極120、122を介さずに直接、接触する。第1、第2リブ134、136とは異なる種類のリブとして、このような第3、第4リブ138、140を設けることで、隔壁部材の変形を効果的に抑制することができる。
【0148】
上述したリブ134、136、138、140はいずれも円柱状に形成される。
図16に示すように、リブ134、136、138、140のそれぞれを点在させることで、第1、第2分岐流路S1、S2の流路抵抗の上昇を抑えつつ、電極120、122を位置決めし、隔壁部材の変形も抑制できる。
【0149】
図16に示すように、第1リブ134および第2リブ136は、隔壁部材が2股に別れた部分において、同じ位置に表裏の関係で設けられる。同様に、第3リブ138および第4リブ140は、隔壁部材が2股に別れた部分において、同じ位置に表裏の関係で設けられる。このような配置により、隔壁部材の変形を効果的に抑制することができる。
【0150】
図16に示すように、第1リブ134と第2リブ136は、上下方向に間隔を空けて規則的に配置されている。一方で、第3リブ138および第4リブ140は千鳥状に配置されている。このように第1リブ134と第2リブ136の配置パターンと、第3リブ138と第4リブ140の配置パターンを異ならせることで、それぞれの位置に応じて適切な配置パターンをとることができる。
【0151】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、実施形態1では、微細気泡発生装置10A、10Bが、微細気泡発生装置10A、10Bを通過する水に対して微細気泡を自動的に発生させる場合について説明したが、このような場合に限らない。微細気泡発生装置10A、10Bを電動式とし、制御部13が微細気泡発生装置10A、10Bを駆動したときにのみ微細気泡を供給するようにしてもよい。
【0152】
なお、上記様々な形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0153】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した特許請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。また、実施形態における要素の組み合わせや順序の変化は、本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明は、家庭用のイオン除去システムにも業務用のイオン除去システムにも有用である。
【符号の説明】
【0155】
2 イオン除去システム
4 硬水流路
6 バッチ処理タンク
8 電気分解装置
10A、10B 微細気泡発生装置
11 バルブ
12 分離装置
13 制御部
14 ポンプ
16 流量センサ
18 バルブ(流量調整バルブ)
22 第1流路
24 第2流路
26 第1戻し流路
28 第1排水流路
30 バルブ(流量調整バルブ)
31 第2戻し流路
32 第2排水流路
34 バルブ(流量調整バルブ)
36 分岐流路
38 第3流路
40 第3排水流路
42 pHセンサ
44 濁度センサ
46 第3戻し流路
47 バルブ(流量調整バルブ)
48 貯水タンク
50 ポンプ
52 水栓
102 筐体
104 入口側ポート
106 第1出口側ポート
108 第2出口側ポート
110 第1整流部材
112 第2整流部材
114 電気分解ユニット
116A 第1電解パック
116B 第2電解パック
118 底面
120 第1電極
122 第2電極
124A 第1流路構成部(隔壁部材)
124B 第2流路構成部(隔壁部材)
126A 第1防水膜固定部(隔壁部材)
126B 第2防水膜固定部(隔壁部材)
128A 第1透湿防水膜(隔壁部材)
128B 第2透湿防水膜(隔壁部材)
130A 第1開口部
130B 第2開口部
132 継手部材
134 第1リブ
136 第2リブ
138 第3リブ
140 第4リブ
202A、202B 脱気泡装置
212 二酸化炭素投入装置
S1 第1分岐流路
S2 第2分岐流路
W1、W2 水