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  • 特許-デプスフィルター 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】デプスフィルター
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/16 20060101AFI20230322BHJP
   B01D 39/08 20060101ALI20230322BHJP
   D04H 1/559 20120101ALI20230322BHJP
   D04H 1/541 20120101ALI20230322BHJP
   D04H 1/544 20120101ALI20230322BHJP
【FI】
B01D39/16 E
B01D39/08 Z
B01D39/16 A
D04H1/559
D04H1/541
D04H1/544
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018180090
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020049413
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507416827
【氏名又は名称】JNCフィルター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】峯尾 良太
(72)【発明者】
【氏名】西原 尚人
(72)【発明者】
【氏名】山口 修
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-126721(JP,A)
【文献】特開2015-097979(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0318024(US,A1)
【文献】特開平11-090135(JP,A)
【文献】国際公開第2015/046564(WO,A1)
【文献】特開2019-077962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00-41/04
D04H 1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、濾過層と、表皮層とをこの順で有するデプスフィルターであって、
前記基材層及び前記表皮層は、不織布が巻回され、熱融着されてなる層であり、
前記濾過層は、少なくとも濾過層用不織布とネットとを積層した積層体が二重以上に巻回され、
前記濾過層用不織布は、互いに平均繊維径が異なる2種類の繊維を混合してなる混繊不織布を含み、
前記混繊不織布が、平均繊維径が10~50μm(10μmを除く)の第一の繊維と、平均繊維径が30~100μmであり、第一の繊維よりも太い第二の繊維とが、10:90~80:20の割合で混繊されてなる不織布である、
デプスフィルター。
【請求項2】
前記基材層または前記表皮層を構成する不織布と、前記濾過層不織布とが互いに異なる不織布であって、
前記基材層または前記表皮層を構成する不織布の平均繊維径は、前記濾過層不織布の平均繊維径よりも大きい、請求項1に記載のデプスフィルター。
【請求項3】
前記混繊不織布が、どちらもポリオレフィン系鞘芯型複合繊維を含む、請求項1または2に記載のデプスフィルター。
【請求項4】
前記濾過層用不織布が、前記混繊不織布と、平均繊維径が0.5~200μmである1種類の繊維からなる不織布と、を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のデプスフィルター。
【請求項5】
前記濾過層用不織布が、前記混繊不織布を、2つ以上含む、請求項1~のいずれか1項に記載のデプスフィルター。
【請求項6】
前記濾過層用不織布が、メルトブローン不織布及び/又はスルーエア不織布である、請求項1~のいずれか1項に記載のデプスフィルター。
【請求項7】
前記ネットは、1~5mm目の範囲の目合いであり、50~300μmの範囲の平均繊維径を有する、請求項1~のいずれか1項に記載のデプスフィルター。
【請求項8】
前記基材層を構成する不織布が、ポリオレフィン系繊維のメルトブローン不織布またはスルーエア不織布である、請求項1~のいずれか1項に記載のデプスフィルター。
【請求項9】
前記基材層を構成する不織布と、前記表皮層を構成する不織布とが同じ不織布である、請求項1~のいずれか1項に記載のデプスフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子を含む流体を濾過するためのデプスフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
微粒子を含む流体として、スラリーあるいは粉体を含むゲル状流動体等がある。このような流体から固形分を精製濾過するために、フィルターが用いられている。
【0003】
一方で、リチウム二次電池材料のスラリー等においては、濾過後の乾燥時間の短縮や揮発した液体の凝縮量の減容化等を目的として、固形分の高濃度化が進んでいる。しかしながら、高濃度になるほど流体の粘度が上昇し、粉体同士の相互作用が強まるため、フィルターによる濾過が困難になる。例えば、水用のカートリッジフィルターをスラリーの濾過に用いると、スラリー中の粉体がフィルターの平均孔径より小さくても、フィルターを通過するときに粉体粒子の凝集(ブリッジ)が生じてみかけ粒径が増大し、目詰まりを起こすことが知られている。これをラッシュ現象という。
【0004】
特許文献1は、粘性流体の濾過において、差圧によって濾過精度が変化する、フィルター寿命が短くなるといった問題を解消するとともに、脈圧や高差圧が生じても、柔らかいゲル状固形物を捕捉しうるフィルターを提案している。特許文献1の発明は、フィルターの主濾過層において、熱融着処理して空隙率50~80%とした第一の主濾過層と、熱融着処理していない空隙率80%以上の第二の主濾過層とを有し、第二の主濾過不織布は、空隙率が第一の主濾過不織布の1.2倍以上となるように構成するものである。
【0005】
また形態保持性がよく、濾過精度と濾過ライフとのバランスに優れた高精度濾過フィルターを得るために、少なくとも2層の不織布が積層されており、上層側の不織布の充填率を0.3~0.8とし、下層側の不織布の充填率を0.01~0.25としたフィルター用不織布が提案されている(特許文献2)。この発明は、サブミクロン粒子等の微小粒子を高精度で濾過することを目的としており、フィルターの下層側に充填率の低い不織布層を配置することによって、不織布層とサポート材との接触面に微小な空間を保持し、またクッション材としても作用させて、フィルターの利用効率と形態保持性を向上させるものである。
【0006】
さらに、粉体粒子の凝集体(ブリッジ)が発生しにくく、濾過差圧が生じるまでの時間の長い、すなわち濾過ライフの長いフィルターを提供することを課題として、基材層と濾過層と表皮層とを有するフィルターにおいて、濾過層を少なくともスルーエア不織布とネットとを積層した積層体が多重に巻回され、かつ、圧着されていない層とし、また、基材層及び表皮層を構成する不織布の平均細孔径が、濾過層を構成するスルーエア不織布の平均細孔径よりも大きくなるようにしたものが提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-137121号公報
【文献】特開2000-218113号公報
【文献】特開2015-97979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のとおりフィルターについて様々な改良が行われてきたが、高濃度・高粘度化するスラリーに対して十分な濾過精度を有し、長時間の濾過を可能とするフィルターは未だ得られていない。特に、リチウム二次電池用スラリーにおいては、高固形分濃度化につれてスラリーの高粘度化が進む一方で、このようなスラリーには粗大粒子が含まれているのが現状である。そこで、高粘度のスラリー中の粗大粒子を除去しつつ、かつ、微粒子を通過させるフィルターが求められている。有用な微粒子の粒径は、電池デバイスの仕様にもよるが、およそ数μm~50μmであるケースが多い。
この状況に鑑み、本発明は、高濃度・高粘度の粉体微粒子を含む流体に対しても、濾過精度及び長時間の濾過を可能とするための耐圧性能に優れたフィルターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは上記課題に取り組む中で、高粘度のスラリーがフィルターを通過する際に、フィルターに大きな負荷がかかるため、フィルターにはこの負荷に耐えうる耐圧性能が必要であること、さらに、高濃度スラリーの濾過ではラッシュ現象が多発し、目詰まりが生じやすくなっていることを見出し、これらを主な着眼点としてフィルターの改良に取り組んだ。そして、フィルターの濾過層として、不織布とネットとが二重以上に巻回された構成を採用し、さらに、濾過層に用いる不織布として、繊度(繊維径)の異なる複数種類の繊維を含んでなる混繊不織布を少なくとも一部に含むことによって、濾過精度が大幅に向上し、かつ、耐圧性能が向上し、目詰まりが生じにくくなることから、濾過精度と耐圧性能とに優れたフィルターが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は以下の構成を有する。
[1]基材層と、濾過層と、表皮層とをこの順に有するデプスフィルターであって、
前記基材層及び前記表皮層は、不織布が巻回され、熱融着されてなる層であり、
前記濾過層は、少なくとも不織布とネットとを積層した積層体が二重以上に巻回され、前記濾過層に含まれる不織布は、互いに平均繊維径が異なる2種類以上の繊維を含んでなる混繊不織布を含む、デプスフィルター。
[2]前記基材層または前記表皮層を構成する不織布と、前記濾過層を構成する不織布とが互いに異なる不織布であって、
前記基材層または前記表皮層を構成する不織布の平均繊維径は、前記濾過層を構成する不織布の平均繊維径よりも大きい、[1]に記載のデプスフィルター。
[3]前記濾過層に含まれる、互いに平均繊維径が異なる2種類以上の繊維を含んでなる混繊不織布が、平均繊維径が0.5μm以上の第一の繊維と、平均繊維径が1μm以上であり、第一の繊維よりも太い第二の繊維とが、1:99~90:10の割合で混繊されてなる不織布である、[1]又は[2]に記載のデプスフィルター。
[4]前記濾過層に含まれる、互いに平均繊維径が異なる2種類以上の繊維を含んでなる混繊不織布が、どちらもポリオレフィン系鞘芯型複合繊維を含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載のデプスフィルター。
[5]前記濾過層が、
前記互いに平均繊維径が異なる2種類以上の繊維を含んでなる混繊不織布と、
平均繊維径が0.5~200μmである1種類の繊維からなる不織布と、
を含む、[1]~[4]のいずれか1項に記載のデプスフィルター。
[6]前記濾過層が、
前記互いに平均繊維径が異なる2種類以上の繊維を含んでなる混繊不織布を、2つ以上含む、[1]~[4]のいずれか1項に記載のデプスフィルター。
[7]前記濾過層に含まれる不織布が、メルトブローン不織布及び/又はスルーエア不織布である、[1]~[6]のいずれか1項に記載のデプスフィルター。
[8]前記ネットは、1~5mm目の範囲の目合いであり、50~300μmの範囲の平均繊維径を有する、[1]~[7]のいずれか1項に記載のデプスフィルター。
[9]前記基材層を構成する不織布が、ポリオレフィン系繊維のメルトブローン不織布またはスルーエア不織布である、[1]~[8]のいずれか1項に記載のデプスフィルター。
[10]前記基材層を構成する不織布と、前記表皮層を構成する不織布とが同じ不織布である、[1]~[9]のいずれか1項に記載のデプスフィルター。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高濃度、高粘度のスラリーに対しても、濾過精度、耐圧性能に優れ、また、粗大粒子を除去するとともに微粒子は通過させる分級性能に優れ、さらに目詰まりが生じ難いフィルターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施例のデプスフィルターの断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のデプスフィルターは、基材層と、濾過層と、表皮層とをこの順に有するデプスフィルターであって、前記基材層及び前記表皮層は不織布が巻回され、熱融着されてなる層であり、前記濾過層は少なくとも不織布とネットとを積層した積層体が二重以上に巻回され、前記濾過層に含まれる不織布は互いに平均繊維径が異なる2種類以上の繊維を含んでなる混繊不織布である。
【0014】
上記のとおり、本発明のデプスフィルターの濾過層は、少なくとも不織布とネットとを積層した積層体が巻回され、また、濾過層を構成する不織布は、互いに平均繊維径が異なる2種類以上の繊維を含んでなる混繊不織布を含んでいるという特徴を有する。特定の理論に拘束されるものではないが、本発明のデプスフィルターは、濾過層において、不織布とネットとを積層することによって、実質的に濾過機能を担う不織布の積層間に適度な間隙が形成される。そのため濾過層内で流体や流体中の粉体の流動性が向上して、ブリッジの形成が抑制されると考えられている。また、不織布の積層間にネットが位置することによって、不織布の重層による細孔の小径化や閉塞が回避される。さらに、不織布とネットとの積層体の接着が弱い、もしくは少なくとも一部を熱融着しないことによって、濾過層内で不織布がわずかに動くことができ、流体や流体中の粉体の流動性がさらに向上するとともに、ネットによって濾過層の形態が保持されて濾過性能が安定的に発揮されると考えられている。またさらに、濾過層に含まれる不織布の少なくとも一部として、互いに平均繊維径が異なる2種類以上の繊維を含んでなる混繊不織布を採用することによって、分級性能(粗大な粒子を捕捉し、粒径が一定以下の粒子は通過させる)に優れるとともに、耐圧性能の高いデプスフィルターが得られるものと考えられている。
【0015】
<濾過層用不織布>
濾過層は上記のとおり、少なくとも不織布とネットとを積層した積層体を用いて構成される。濾過層に用いられる不織布としては、所望の性能が得られる限り特に制限されないが、例えば、スルーエア不織布、メルトブローン不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布等を用いることができ、中でも、嵩高く、不織布の厚み方向(濾過する流体の流れ方向)にも繊維配向が分布する点から、スルーエア不織布を用いることが好ましい。スルーエア不織布とは、熱風接着プロセスで得られた不織布をいう。熱風接着プロセスとは、オーブン中にコンベアベルトまたはロータリードラムを備えて、ウェブを通過させた後、一方に吸引することで、接着効果を高め、厚さ方向に均一な不織布を得るための方法で、エアスルー方式とも称される。スルーエア不織布は、エアスルー不織布とも称される。
【0016】
スルーエア不織布は、一般に、捲縮を有する短繊維をカード機に通してウェブとし、得られたウェブを熱風処理し、短繊維同士の交絡点を熱融着させて得られる。スルーエア不織布を構成する短繊維としては、安定した性能を維持するために、短繊維の交点で短繊維同士が融着及び/又は接着していることが好ましい。このことから、短繊維として熱融着性複合繊維が好ましく利用できる。熱融着性複合繊維の種類は、特に限定されず、公知の複合繊維を使用することができる。熱融着性複合繊維としては、融点差を有する2種類以上の成分からなる複合繊維が使用でき、具体的には、高融点成分と低融点成分とからなる複合繊維が例示できる。複合繊維の高融点成分としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン6,6、ポリ-L-乳酸などの熱可塑性樹脂が例示でき、複合繊維の低融点成分としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどのポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート共重合体、ポリ-DL-乳酸、プロピレン共重合体、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂が例示できる。熱融着性複合繊維の高融点成分と低融点成分の融点差は、特に限定されないが、熱融着の加工温度幅を広くするためには、融点差が15℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましい。また、複合の形態は特に限定されないが、同心鞘芯型、偏心鞘芯型、並列型、海島型、放射状型などの複合形態を採用することができる。特に嵩高性を持たせるためには偏心鞘芯型複合繊維が好適である。
【0017】
本発明では、濾過層中の不織布が、互いに平均繊維径が異なる2種類以上の繊維を含んでなる混繊不織布を含む。混繊不織布に含まれる繊維の種類は、発明の効果が得られる限り2種類以上であればよく、3種類、4種類、それ以上でもよいが、2種類であることが好ましい。
【0018】
濾過層用不織布を構成する繊維として、平均繊維径が0.1~200μmの範囲の繊維を用いることができ、濾過液の性状や濾過の目的に応じて適宜選択することが可能である。本発明では、2種類の繊維として、例えば平均繊維径が0.5μm以上である第一の繊維と、平均繊維径が1μm以上であり、第一の繊維よりも太い第二の繊維と、を混繊することが好ましく、より好ましくは、細い繊維(第一の繊維)として平均繊維径が5~50μmである繊維と、太い繊維(第二の繊維)として平均繊維径が20~200μmである繊維と、を混繊することが好ましい。第一の繊維の平均繊維径に対して、第二の繊維の平均繊維径が、1.5倍以上であることが好ましく、1.7倍以上であることがより好ましい。混繊する繊維は、互いに同じ組成で繊維径のみが異なるものを用いてもよいし、組成及び繊維径が異なる2種類以上の繊維を混繊して用いることもできる。また、濾過層において、混繊不織布は1種類でもよいし、混繊不織布を2つ以上用いることも好ましい。なお、混繊不織布の平均繊維径という場合には、含まれる複数種類の繊維の平均繊維径とそれぞれの含有割合から算出される、混繊不織布全体の平均繊維径のことをいう。
【0019】
混繊不織布における混繊の重量比は、所望の濾過性能を発揮できる限り特に制限されないが、例えば細い繊維(第一の繊維)と太い繊維(第二の繊維)との重量比を1:99~90:10の割合とすることができ、10:90~80:20の割合とすることが好ましい。より具体的には例えば、平均繊維径が5~50μmである第一の繊維と平均繊維径が20~200μmであり第一の繊維よりも太い第二の繊維とを、10:90~90:10の割合で混繊することがより好ましく、平均繊維径が10~50μmである第一の繊維と平均繊維径が30~100μmであり第一の繊維よりも太い第二の繊維とを、10:90~80:20の割合で混繊することがさらに好ましい。
【0020】
第一の繊維と第二の繊維との混繊において、平均繊維径の比率と混繊の重量比を上記の範囲とすることで、耐圧性能に優れたデプスフィルターを得ることができる。特定の理論に拘束されるものではないが、混繊不織布において、太い繊維は粗大粒子の除去および耐圧性能の維持の役目を果たし、細い繊維は微粒子の分級の役目を果たすものと考えられているため、所望の濾過精度を有する濾過層用不織布の一部に太い繊維を混繊することによって、耐圧性能が向上する効果が得られる。さらには、太い繊維が強固に結合しているため、繊維間に形成される開孔部の変形や拡張を防止し、その結果、濾材の外側で粗大粒子を着実に捕捉できるため、効率的な深層濾過を可能とするものと考えられる。
【0021】
また、濾過層用不織布として、前述の混繊不織布に加えて、平均繊維径が0.5~200μmである1種類の繊維からなる不織布(単繊不織布と称する)を用いることも好ましい。単繊不織布の平均繊維径は、10~200μmであることがより好ましい。混繊不織布と併用する単繊不織布としては、スルーエア不織布、メルトブローン不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布等を用いることができるが、混繊不織布と同様に、スルーエア不織布を用いることが好ましい。また、不織布の材質も、混繊不織布と同様のものが例示でき、具体的には例えば、高融点成分としてポリプロピレンを芯成分、低融点成分としてポリエチレンを鞘成分とする偏心鞘芯型複合繊維からなるスルーエア不織布を用いることができる。
【0022】
濾過層において混繊不織布と単繊不織布とを併用する場合、単繊不織布からなる部分が濾過層の上流側に位置してもよいし、単繊不織布からなる部分が濾過層の下流側に位置してもよい。また、単繊不織布の平均繊維径は、混繊不織布の平均繊維径よりも大きくても小さくてもよい。単繊不織布の平均繊維径が混繊不織布の平均繊維径よりも大きい場合、単繊不織布を濾過層の外側(濾液の上流側)に配置することによって、濾過精度をより粗くすることができる。また逆に、単繊不織布の平均繊維径が混繊不織布の平均繊維径よりも小さい場合、単繊不織布を濾過層の内側(濾液の下流側)に配置することによって、濾過精度をより細かくすることができる。
【0023】
混繊不織布と単繊不織布とを併用する場合、混繊不織布と単繊不織布の割合は90:10~10:90とすることができる。混繊不織布の割合を増やすほど、分級性能が向上する。混繊不織布の外側に太い繊度の繊維からなる単繊不織布を挿入することで、粗大粒子を除去できるため、濾過ライフが延びる。一方で、混繊不織布の内側に細い繊度の繊維からなる単繊不織布を挿入することで、微粒子の粒子捕捉率は向上する。すなわち、スラリーに対応して、フィルター濾材における混繊不織布と単繊不織布の挿入位置を決定すればよい。混繊不織布と単繊不織布の割合が、15:85~85:15であれば、分級性能と耐圧性能のバランスに優れるため好ましい。混繊不織布を使用する本発明の効果を得るためには、濾過層用不織布のうち、混繊不織布を15%以上用いることが好ましい。
【0024】
濾過層用不織布の目付は、繊維の材質、繊維径との関係である程度規定されるが、例えば、5~100g/mのものを用いることができ、好ましくは、20~60g/mのものであり、より好ましくは、25~55g/mのものである。目付が25~55g/mであれば、濾過層の厚みと濾過性能を調整するための選択範囲が広がるので、好ましい
【0025】
濾過層用不織布に用いられる熱融着性複合繊維は、本発明の効果を妨げない範囲で機能剤を含んでいてもよく、機能剤としては、抗菌剤、消臭剤、帯電防止剤、平滑剤、親水剤、撥水剤、酸化防止剤、耐候剤などを例示できる。また、熱融着性複合繊維は、その表面を繊維仕上げ剤で処理されていてもよく、これによって親水性や撥水性、制電制、表面平滑性、耐摩耗性などの機能を付与することができる。
【0026】
<ネット>
濾過層に挿入されるネットは、デプスフィルターの捕集効率には影響しないが、不織布間に間隙を作り出すとともに、濾過層の形態を保持し、耐圧性能を維持・向上させるために用いられる。そのため、ネットは、50~300μmの範囲の繊維径のモノフィラメントを用いることが好ましく、60~280μmの範囲の繊維径のモノフィラメントを用いることがより好ましい。さらに、ネットの目合いは1~5mm目の範囲とすることが好ましく、1~4mm目の範囲とすることがより好ましい。この範囲のネットを用いることで、捕集効率に影響を与えず、かつフィルターの強度が確保されるため、より濾過ライフの長いフィルターを得ることができる。
【0027】
モノフィラメントは、特に限定はないが、熱可塑性樹脂から構成されていることが好ましく、例えば、単一構成繊維、複合繊維、混繊繊維が利用できる。モノフィラメントに使用できる熱可塑性樹脂は、溶融紡糸可能な熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、例えば、熱融着性複合繊維で例示したような熱可塑性樹脂が使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,12等を挙げることができ、なかでも、ポリプロピレン、ナイロン6又はナイロン6,6が特に好ましい。モノフィラメントには、これらの1種類の熱可塑性樹脂を用いても、2種類以上の熱可塑性樹脂の混合物を用いてもよい。また、モノフィラメントが複合繊維の場合、熱融着性複合繊維で例示したような熱可塑性樹脂の組み合わせを使用することで、熱処理によりモノフィラメント同士の交点を熱融着させることができるため、目ずれが生じないことから好ましい。
【0028】
<濾過層の構成>
本発明のデプスフィルターの濾過層は、少なくとも上記の混繊不織布とネットとを積層した積層体を二重以上に巻回して形成される。不織布とネットの積層順は特に制限されないが、不織布とネットを各1枚ずつ、すなわち、不織布とネットとが1層ずつ交互になるように巻くことが好ましい。このように形成された濾過層は、不織布と不織布の間に目の粗いネットが挟み込まれた構造になり、不織布同士が密着することなく積層される。不織布として、混繊不織布と単繊不織布を併用する場合には、まず混繊不織布(又は単繊不織布)とネットとを積層して所定の長さまで巻回し、次いで、単繊不織布(又は混繊不織布)とネットとを積層して所定の長さまで巻回することができる。
【0029】
濾過層に用いる積層体は、全てが熱融着されていてもよいが、熱融着されていない部分を有していてもよい。熱融着されていない部分を有していると、不織布の嵩高さが保持される。なお、「熱融着されていない」とは、濾過層の少なくとも一部が熱融着によって一体的に硬化された形態ではない、という意味であり、フィルターの形態保持性を高める等の目的で濾過層の一部が熱融着されていてもよい。また、濾過層と基材層の間や、濾過層と表皮層の間が、熱圧着、熱融着ないし接着されていてもよい。
【0030】
また、必要に応じて、前述の不織布とネット以外にも、さらなる不織布やネット等が積層されていてもよい。例えば、混繊不織布、単繊不織布及びネットに加えて、目の粗いメルトブロー不織布を挿入して、3層構造の積層体を巻回し、濾過層の保形性や捕集効率を向上させることができる。濾過層にメルトブロー不織布を積層する場合、基材層や表皮層に用いるのと同じメルトブロー不織布を用いることが好ましい。
【0031】
捕集効率は、対数透過則から流体が通過する濾過層の厚みによって制御されることが公知であり、濾過層の厚み(積層体の巻き数)は、求める捕集効率に応じて適宜選択することができる。濾過層の厚み(積層体の巻き数)が大きいほど、捕集効率は向上し、粒径の小さい粉体を捕集できる。
【0032】
<基材層用不織布>
本発明に用いる基材層用不織布は、熱融着が可能で、熱融着後にデプスフィルターの基材層として必要な保形性を確保できれば特に制限されず、メルトブロー不織布、スルーエア不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布等を用いることができる。
【0033】
基材層用不織布としてメルトブロー不織布を用いる場合、メルトブロー不織布を構成する繊維の種類やその製造方法は特に限定されず、公知の繊維や製造方法を使用することができる。例えば、メルトブロー不織布は、熱可塑性樹脂を溶融押出し、メルトブロー紡糸口金から紡出し、さらに高温高速の気体によって極細繊維流としてブロー紡糸し、捕集装置で極細繊維をウェブとして捕集し、得られたウェブを熱処理し、極細繊維同士を熱融着させることで製造できる。メルトブロー紡糸で用いる高温高速の気体は、通常、空気、窒素ガス等の不活性気体が使用される。気体の温度は200~500℃、圧力は0.1~6.5kgf/cmの範囲が一般に用いられる。
【0034】
メルトブロー不織布を基材層用不織布に用いる場合、その繊維径は、濾過液の性状や濾過の目的に応じて適宜選択することが可能であるが、濾過層を構成する不織布の平均繊維径よりも大きいことが好ましい。具体的には例えば、平均繊維径は、1~149μmであることが好ましく、6~149μmであることがより好ましく、8~149μmであることが最も好ましい。メルトブロー不織布を構成する繊維の平均繊維径が1μm以上であれば、生産性が良好であり、メルトブロー不織布を構成する極細繊維の力学強度が高く、極細繊維の単糸切れや極細繊維層の破れが生じにくくなる。また、メルトブロー不織布を構成する繊維の平均繊維径が149μm以下であれば、繊維径の小ささ(細さ)に由来する極細繊維の本来の特性が十分に発揮される。
【0035】
また基材層用不織布の目付は、繊維の材質や繊維径との関係である程度規定されるが、例えば、5~100g/mの目付を用いることができ、30~60g/mの目付を用いることがより好ましい。この範囲の目付であれば、フィルターの外径調整及び基材層の強度設計の調節の観点から好適である。
【0036】
基材層用のメルトブロー不織布は、単一構成繊維からなるメルトブロー不織布、複合繊維からなるメルトブロー不織布、混繊繊維からなるメルトブロー不織布等が利用できる。また、前記メルトブロー不織布に使用できる樹脂は、溶融紡糸可能な熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、例えば、熱融着性複合繊維で例示したような熱可塑性樹脂が使用でき、単一の熱可塑性樹脂を用いても、2種類以上の熱可塑性樹脂の混合物を用いてもよい。さらに、熱可塑性樹脂には、本発明の効果を妨げない範囲で各種機能剤を含んでいてもよく、具体的には、抗菌剤、消臭剤、親水化剤、撥水化剤、界面活性剤などが例示できる。また、メルトブロー不織布は、その効果を妨げない範囲で機能付与のために二次加工を施されていてもよく、親水化や疎水化のコーティング処理、メルトブロー不織布を構成する極細繊維の表面に特定の官能基を導入する化学処理、滅菌処理などが例示できる。
【0037】
基材層用不織布に用いる樹脂としては、例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン)、ポリプロピレン(プロピレンを主成分とするプロピレン共重合体、結晶性ポリプロピレン)等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,12等のポリアミド系樹脂が挙げられる。また、基材層用不織布にスルーエア不織布を用いる場合、濾過層用不織布で例示した一般的なスルーエア不織布が利用できる。
【0038】
基材層は主にフィルターの強度を確保するための層であり、メルトブロー不織布が積層され、熱融着により一体化された層であることが好ましい。基材層の厚みや巻き数は、使用するメルトブロー不織布に応じて適切に設定されるが、フィルターの強度が確保され、かつ一定の濾過性能が得られれば特に制限されない。
【0039】
<表皮層>
表皮層はフィルターの最も外側(濾過液の上流側)に位置する層であり、特に大粒径の凝集物や夾雑物が濾過層内に侵入しないようにブロックするほか、濾過層を保護し、フィルター形態を保持することを主な目的とする層である。
【0040】
表皮層は不織布を含む層であり、不織布からなる層であることが好ましい。表皮層に用いる不織布は特に制限されないが、平均繊維径が濾過層用不織布の平均繊維径よりも大きいことが好ましい。不織布の材質も特に制限されず、平均繊維径、材質ともに、基材層用不織布で例示したのと同様のものが使用できる。表皮層用不織布として、基材層用不織布と同じ不織布を用いることができる。具体的には例えば、表皮層用不織布及び基材層用不織布として、ポリオレフィン系繊維のメルトブロー不織布を用いることができる。
【0041】
表皮層の巻き数や厚みは特に制限されないが、巻き数や厚みが大きくなると、濾過液が濾過層に達する以前に表皮層内でブリッジを形成するという不具合が生じることがあるので、なるべく薄い表皮層とすることが好ましい。例えば、メルトブロー不織布を1~5回、好ましくは1~2回巻回して、熱融着して形成することがブリッジの形成を低減できる点から好ましい。
【0042】
<デプスフィルターの製造方法>
本発明のデプスフィルターは、基材層用不織布、濾過層用不織布及びネット、表皮層用不織布の順に積層しながら巻回することで製造できる。具体的には、例えば、基材層用不織布であるメルトブロー不織布をまず熱融着させながら円柱状の鉄棒に巻き上げて、コアとなる基材層を形成する。続いて、濾過層用不織布であるスルーエア不織布及びネットを順に挿入し、加熱することなく巻き上げて濾過層を形成する。最後に、表皮層用不織布であるメルトブロー不織布を1~2回巻回して、熱融着させることで、デプスフィルターを形成する。
【0043】
上記方法において基材層を形成する温度は、巻き取り部分(円柱状の鉄棒)において基材層用不織布が溶融し、熱融着される温度であればよい。また製造ラインの速度は特に制限されないが、濾過層の形成時は、不織布にかかるテンションは10N以下であることが好ましく、テンションを掛けずに巻き上げることが好ましい。
【0044】
デプスフィルターの径や厚みは、目的とする性能や濾過液の性状に応じて適宜設定でき、特に制限されるものではないが、例えば、リチウム二次電池材料の製造工程におけるスラリー濾過に用いられるデプスフィルターである場合、内径が23~45mm程度、外径が60~80mm程度であるデプスフィルターとすることができる。このようなデプスフィルターは、例えば、基材層用不織布を0.2~20m程度、濾過層用不織布及びネットの積層体を0.2~8m程度、さらに表皮層を0.2~7m程度巻き取ることで製造することができる。
【0045】
上記のように製造されるフィルターは、適切な大きさに切断し、両端にエンドキャップを貼付して円筒型フィルターとして好適に用いられる。
また、上記の製造方法は概要のみであり、上記の工程以外に必要に応じて、熱処理、冷却、薬剤処理、成型、洗浄等の公知の工程を実施することができる。
【実施例
【0046】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はそれらによって制限されるものではない。
実施例中に示した物性値の測定方法や定義は次のとおりである。
1)平均繊維径の測定方法
電子顕微鏡で撮影したフィルター濾材の断面より、1本当たりの繊維の長さ方向と直角方向の長さ(直径)を100本計測し、算術平均値を平均繊維径とした。この計算は、Scion Corporation社の画像処理ソフト「Scion Image」(商品名)を使用して行った。
2)目付の測定方法
250mm×250mmに切断した不織布の重量を測定し、単位面積当たりの重量(g/m)を求め、これを目付とした。
【0047】
[実施例1]<濾過層用不織布として混繊不織布(55μm/32μm=80/20)を用いた例>
(材料)
基材層用不織布:目付50g/m、平均繊維径107μmのプロピレンを主成分とするプロピレン共重合体(融点135℃)と結晶性ポリプロピレン(融点165℃)との混繊比率が1:1からなる混繊メルトブロー不織布を用いた。
濾過層用不織布A:結晶性ポリプロピレン(融点165℃;芯)/高密度ポリエチレン(融点135℃;鞘)の偏心鞘芯型複合繊維からなる、目付が40g/mのスルーエア不織布を用いた。このスルーエア不織布は、繊維径55μmの偏心鞘芯型複合繊維と繊維径32μmの偏心鞘芯型複合繊維とが、80:20の割合(重量比)で混合されている、混繊不織布である。
ネット:ポリプロピレンモノフィラメント(平均繊維径250μm)からなる、目合いが2.0mm目であるネットを用いた。
(製造方法)
中芯(鉄棒)を予め150℃に加熱し、150℃で加熱を続けながら、この中芯に基材層用不織布を5.6m分巻取った。続いて、濾過層用不織布Aとネットの挿入を開始した。濾過層用不織布A及びネットの挿入長さは2mとし、基材層用メルトブロー不織布とともに巻き取った。このとき、最初の1mはヒーター出力7.8kW、150℃で加熱することで熱融着させ、残り1mはヒーター出力を0kWとし、加熱せず、熱融着させずに巻取り、濾過層を形成した。続いて、ヒーター出力を7.8kWで加熱し、表皮層として基材層用メルトブロー不織布を熱融着させながら1m巻取り、円筒型フィルターを製造した。
【0048】
[実施例2]<濾過層用不織布として混繊不織布(55μm/32μm=80/20)及び単繊不織布(73μm)を用いた例>
(材料)
濾過層用不織布A:結晶性ポリプロピレン(融点165℃;芯)/高密度ポリエチレン(融点135℃;鞘)の偏心鞘芯型複合繊維からなる、目付が40g/mのスルーエア不織布を用いた。このスルーエア不織布は、平均繊維径55μmの複合繊維と平均繊維径32μmの複合繊維とが、80:20の割合(重量比)で混合されている、混繊不織布である。
濾過層用不織布B:平均繊維径73μmの結晶性ポリプロピレン(融点165℃;芯)/高密度ポリエチレン(融点135℃;鞘)の偏心鞘芯型複合繊維からなる単繊スルーエア織布である。
(製造方法)
上記濾過層用不織布A1.7m及び上記濾過層用不織布B0.3mを継ぎ足して一反とした。濾過層用不織布Bが円筒形フィルターの外側に配置されるように巻き取り、それ以外は、実施例1と同じ方法で、円筒形フィルターを製造した。
【0049】
[実施例3]<濾過層用不織布として混繊不織布(55μm/32μm=80/20)及び単繊不織布(32μm)を用いた例>
(材料)
濾過層用不織布A:結晶性ポリプロピレン(融点165℃;芯)/高密度ポリエチレン(融点135℃;鞘)の偏心鞘芯型複合繊維からなる、目付が40g/mのスルーエア不織布を用いた。このスルーエア不織布は、繊維径55μmの複合繊維と繊維径32μmの複合繊維とが、80:20の割合(重量比)で混合されている、混繊不織布である。
濾過層用不織布C:平均繊維径32μmの結晶性ポリプロピレン(融点165℃;芯)/高密度ポリエチレン(融点135℃;鞘)の偏心鞘芯型複合繊維からなる単繊スルーエア不織布である。
(製造方法)
上記濾過層用不織布A1.7m及び上記濾過層用不織布C0.3mを継ぎ足して一反とした。濾過層用不織布Cが円筒形フィルターの内側に配置されるように巻き取り、それ以外は、実施例1と同じ方法で、円筒形フィルターを製造した。
【0050】
[比較例1]<濾過層用不織布として1種類の単繊不織布を用いた例>
(材料)
濾過層用不織布E:繊維径32μmの結晶性ポリプロピレン(融点165℃;芯)/高密度ポリエチレン(融点165℃;鞘)の偏心鞘芯型複合繊維からなる単繊スルーエア不織布である。
(製造方法)
上記濾過層用不織布E2mを、濾過層用不織布として用いた以外は、実施例1と同じ方法で、円筒形フィルターを製造した。
【0051】
<補集効率>
実施例1~3及び比較例1の円筒型フィルターについて、下記の試験粉体及び方法に従って初期捕集性能として捕集効率を測定した。
試験粉体はJIS Z 8901 試験用粉体に記載の7種を使用した。
JIS7種粉体を速度0.3g/minで水中に添加した試験流体を30L/minの流量でフィルターに通し、フィルター前後の粒子数を測定した(参考文献 ユーザーのためのフィルターガイドブック 日本液体清澄化技術工業会)。
粒子数はパーティクルセンサー(KS-63 リオン製)を用い、パーティクルカウンター(KL-11 リオン製)を使用して測定した。
捕集効率は以下の定義式によって求めた。
捕集効率(%)=(1-フィルター通過後の粒径xμmの粒子数/フィルター通過前の粒径xμmの粒子数)×100
捕集効率の測定結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示されるとおり、実施例1~3のフィルターは100μm以上の粒子を99.9%以上捕集し、かつ30μmの粒子の捕集効率は50%未満であった(すなわち、半数以上通過させた)。一方、比較例1のフィルターは100μm以上の粒子を100%捕集したが、30μmの粒子の捕集効率は57.2%であった(すなわち、半数以上捕集した)。50μmの粒子の捕集効率においても、実施例1~3は84.9~88.3%であるのに対して、比較例1は91.2%と高い値を示した。この結果は、実施例1~3のフィルターは、除去すべき粗大粒子を確実に捕集し、また比較例1のフィルターよりも、通過させるべき小粒子を確実に通過させることが可能であること、すなわち目詰まりが生じにくく、分級性能に優れることを示している。
【0054】
<耐圧性能>
実施例1~3及び比較例1の円筒型フィルターついて、ラップフィルムを全面に巻きつけて覆い、フィルター表面を密閉することで、耐圧試験用サンプルとした。
このフィルターをハウジングに取り付け、ポンプにより水を送液し、流路内を水で満たした。次いで、ポンプの流量を上げることによって、系内の圧力を0.1MPaから0.02MPaずつ上げて1分間保持し、フィルターの変形を目視確認することによって、フィルターが変形する限界の圧力を測定した。
耐圧性能試験の結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
(考察)
実施例1~3のフィルターは、濾過時において耐圧性能が高いことがわかった。一方で、比較例1のフィルターは耐圧テストにおいて濾材が潰れることがわかった。これは、実施例1~3のフィルターでは濾過層に、太い複合繊維を含むのに対して、比較例1のフィルターは濾過層に太い繊維を含まないことに起因すると考えられている。耐圧性能が高いことによって、より高粘度のスラリーを長時間濾過することが可能となる。
また、実施例1~3のフィルターは、100μm相当の微粒子は除去し、50μm以下の所望の粒子の多くを通過させることができるため、比較例1のフィルターよりも目詰まりが生じにくく、分級性能が高いことが確認された。
これらの結果から、本願発明に係る実施例1~3のデプスフィルターは、濾過精度と耐圧性能とに優れることがわかった。
【0057】
図1に本発明の実施例のデプスフィルターの断面を示す。図1のデプスフィルターにおいて、基材層1は、メルトブロー不織布が巻回されてなる層である。濾過層2は、混繊スルーエア不織布と、メルトブロー不織布と、ネットとが重ねられて巻回されてなる層である。表皮層3は、メルトブロー不織布が巻回されてなる層である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のデプスフィルターは、様々な粒径を有するスラリーを濾過するにあたり、濾過層において、太い繊維及び細い繊維を含む混繊不織布を配置しているため、耐圧性能が高い。さらに、本発明のデプスフィルターは、低濃度~高濃度(10ppm~70%)の微粒子(粉体)を含む懸濁液、スラリー、ゲル状流体から凝集物や夾雑物を除去し、粒径が一定以下の微粒子を得るために用いる濾過フィルターとして好適に用いられる。本発明のデプスフィルターは、リチウム二次電池の製造過程におけるスラリー濾過用フィルター、研磨剤スラリー、塗料用スラリー、顔料分散液、フィラーを含有する種々の流体、例えば、封止材、接着剤、フィルム用組成物およびコーティング剤を含む液体ないし流体を濾過するための工業用フィルターとして好適に用いられる。
【符号の説明】
【0059】
1 基材層
2 濾過層
3 表皮層
図1