(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】酸溶液からのリチウムの回収方法
(51)【国際特許分類】
C22B 26/12 20060101AFI20230322BHJP
B09B 3/70 20220101ALI20230322BHJP
C01B 32/196 20170101ALI20230322BHJP
C22B 3/04 20060101ALI20230322BHJP
C22B 3/22 20060101ALI20230322BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20230322BHJP
H01M 10/54 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
C22B26/12
B09B3/70
C01B32/196
C22B3/04
C22B3/22
C22B7/00 C
H01M10/54
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021096047
(22)【出願日】2021-06-08
(62)【分割の表示】P 2020517307の分割
【原出願日】2018-07-17
【審査請求日】2021-07-12
(32)【優先日】2017-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520022849
【氏名又は名称】リーン ラリー
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】リーン ラリー
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-122885(JP,A)
【文献】特開2012-072464(JP,A)
【文献】特開2012-126945(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105304967(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105449305(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105552468(CN,A)
【文献】米国特許第09484606(US,B1)
【文献】特開2012-120943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 7/00
C22B 26/12
B09B 3/00
B09B 3/70
H01M 10/54
C01B 32/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みの再充電可能なリチウムイオンセルまたは電池から
グラフェンを回収する方法であって、以下を含む方法:
リチウムイオンセルまたは電池を分解し、カソードからアノードを分離して、分解されたリチウムイオンセルまたは電池を形成すること;
分解されたリチウムイオンセルまたは電池を10℃~100℃の温度で酸と混合して、
グラフェンおよびリチウムを含み、かつ任意に可溶性有機物、可溶性金属(リチウムを除く。)、および懸濁固体のうちの少なくとも1つを含む酸溶液を形成すること;前記酸は、2.5以下のpHを有し、かつ塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、クエン酸、またはそれらの組み合わせを含む
;
前記酸溶液を限外濾過膜に送って、酸、リチウム、可溶性有機物、および可溶性金属のうち少なくとも1つを含む透過液から懸濁固体の過半数を分離すること;および
前記酸溶液から
グラフェンを分離すること。
【請求項2】
前記分解が、リチウムイオンセルまたは電池のアノード、カソード、および電解質を取り囲むシェルを除去することを含む、請求項1に記載の
グラフェンを回収する方法。
【請求項3】
前記酸が、塩酸、硫酸、硝酸、またはそれらの組み合わせを含み、かつ水溶液中で0.5~30重量パーセントの酸濃度を有し、1以下のpHを有する、請求項1に記載の
グラフェンを回収する方法。
【請求項4】
前記混合を1分~120分間行う、請求項1に記載の
グラフェンを回収する方法。
【請求項5】
前記混合を50℃~70℃の温度で行う、請求項1に記載の
グラフェンを回収する方法。
【請求項6】
前記限外濾過膜が、0.01μm~0.5μmの孔径を有し、かつ10~100psiで操作される、請求項
1に記載の
グラフェンを回収する方法。
【請求項7】
前記リチウムイオンセルまたは電池が、金属酸化物カソード、金属箔アノード、電解質、およびポリマーセパレータを含む、請求項1に記載の
グラフェンを回収する方法。
【請求項8】
前記金属箔アノードがその上に
グラフェンを有する、請求項
7に記載の
グラフェンを回収する方法。
【請求項9】
前記金属酸化物カソードが、コバルトニッケル合金、リチウムコバルト酸化物、リン酸鉄リチウム、リチウムマンガン酸化物、フッ化リン酸リチウム、リチウムモリ酸化物、ニッケルコバルト酸化物、またはそれらの組み合わせのコーティングを有するアルミニウム箔である、請求項
7に記載の
グラフェンを回収する方法。
【請求項10】
前記電解質が、高分子有機物、有機溶媒、リン酸塩、フッ化物、リチウム塩、リン酸フッ化物、またはそれらの組み合わせである、請求項
7に記載の
グラフェンを回収する方法。
【請求項11】
前記ポリマーセパレータが、ポリプロピレン、ポリエチレン、またはそれらの組み合わせである、請求項
7に記載の
グラフェンを回収する方法。
【請求項12】
使用済み
の再充電可能なリチウムイオンセルまたは電池から得た酸処理
グラフェンであって、以下を含む方法によって得た酸処理
グラフェン:
使用済みリチウムイオンセルまたは電池を分解し、カソードからアノードを分離して、分解されたリチウムイオンセルまたは電池を形成
し、要素部分全体としてのアノード全体を、使用済みの再充電可能なリチウムイオンセルまたは電池から提供すること;
分解されたリチウムイオンセルまたは電池
のアノード全体を酸中で混合して酸溶液を形成すること;前記混合は10℃~100℃の温度で行われ、前記酸溶液は、
グラフェンおよびリチウムを含み、かつ可溶性有機物、可溶性金属(リチウムを除く。)および懸濁固体のうちの少なくとも1つを含み、および、前記酸は、2.5以下のpHを有し、かつ塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、クエン酸、またはそれらの組み合わせを含む;ならびに
前記酸溶液から酸処理
グラフェンを分離すること。
【請求項13】
前記酸が、塩酸、硫酸、硝酸、またはそれらの組み合わせを含み、かつ水溶液中で0.5~30重量パーセントの酸濃度を有し、1以下のpHを有する、請求項
12に記載の酸処理
グラフェン。
【請求項14】
前記使用済みリチウムイオンセルまたは電池が、金属酸化物カソード、金属箔アノード、電解質、およびポリマーセパレータを含む、請求項
12に記載の酸処理
グラフェン。
【請求項15】
前記金属箔アノードがその上に
グラフェンを有する、請求項
14に記載の酸処理
グラフェン。
【請求項16】
使用済みの再充電可能なリチウムイオンセルまたは電池から
グラフェンを回収するための酸溶液
を含むシステムであって、
タンク、前記タンクに収容された酸、分解された使用済みの再充電可能なリチウムイオンセルまたは電池からの、前記タンク中の酸に加えられた要素部分全体としてのアノード全体、グラフェン、ならびに、可溶性有機物、可溶性金属(リチウムを除く。)および懸濁固体のうちの少なくとも1つを含み;
前記酸が、塩酸、硫酸、硝酸、またはそれらの組み合わせを含み、かつ水溶液中で0.5~30重量パーセントの酸濃度を有し、
2.5以下のpHを有する、
システム:
ここで、前記酸によって使用済みの再充電可能なリチウムイオンセルまたは電池から金属が可溶化することで、グラフェンが前記可溶性金属と分離して前記酸溶液から回収可能となる。
【請求項17】
カルシウム、マグネシウム、亜鉛、銅、アルミニウム、鉄、リン酸塩、フッ化物、希土類金属、コバルト、ニッケルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される可溶性金属をさらに含む、請求項
16に記載の
システム。
【請求項18】
前記酸溶液を限外濾過膜に送って、酸、リチウム、可溶性有機物、および可溶性金属のうち少なくとも1つを含む透過液から懸濁固体の過半数を分離する、請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2017年7月21日に出願された米国特許出願第15/656,759号の優先権を主張する。上記出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示はリチウム含有材料からリチウムを回収する方法に関し、より詳細には、酸溶液の膜分離を利用してリチウム含有材料からリチウムを回収する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオンセルは、これらに限定されないが、電話、映画用カメラ、ハンドツール、ラップトップコンピュータ、および同様の装置などの装置における高周波再充電可能電池のための現在の選択肢である。さらに、リチウムイオンセルを使用する電気自動車および太陽蓄積装置(solar storage devices)の拡大に伴い、リチウムベースの電池技術は、予測可能な将来において好ましい電池である可能性が高い。再充電可能なリチウムイオン電池は比較的長い耐用年数を有することができるが、電池は最終的には故障するか、または故障前に廃棄されることが多く、廃棄物流の増加に寄与する。
【0004】
再充電可能なリチウムイオン電池は多くの小型装置電池(すなわち、電話、コンピュータ、ツールなど)について、6年まで、さらには10年までの有効電池寿命を持続すると主張されているにもかかわらず、より現実的な電池寿命は3年に近い。この実際の電池寿命平均は、リサイクルによって、使用済み電池から回収されるのに利用可能な大量のリチウムに変換される。このような電池の電池寿命が比較的短く、エレクトロニクスおよび自動車の需要が増加していることを考慮すると、数年後には、リチウム源に対する最終的な需要が大幅に増加することが予想される。鉱山資源からの新たなリチウム製造の需要と使用済みリチウムイオン電池のリサイクルの両方が、リチウム製造のための加速された需要を補完するであろう。
【0005】
しかしながら、従来のリチウムイオン電池およびセルでの回収に利用可能なリチウムの量が比較的少ないことを考慮すると、例えば高温冶金(pyrometallurgical)または湿式冶金(hydrometallurgical)の処理など、使用済み電池および他のリサイクル可能な材料から金属回収する従来の方法では、非効率的または非経済的である傾向がある。例えば、一般的な18650リチウムイオンセルのような従来のリチウムイオンセルは、合計約8グラムまでのリチウムを有する3.7または4.2ボルトセルである。従来の回収方法はエネルギー集約的であり、一般に、使用済み電池からリチウムを回収するには経済的ではない。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、本開示がリチウム含有材料からリチウムを回収する方法を提供する。この方法は、酸溶液中でリチウム含有材料を混合して、酸性リチウム溶液を形成することを含む。混合は、約10℃~約100℃の温度で行われる。酸性リチウム溶液は、酸溶液、リチウム、可溶性有機物、可溶性金属、および懸濁固体のうちの少なくとも1つを含む。混合後、酸性リチウム溶液を限外濾過前処理膜(ultrafiltration pretreatment membrane)に送って、懸濁固体の過半数を保持し、かつ、酸溶液、リチウム、可溶性有機物、および可溶性金属のうちの少なくとも1つを含む濾過された酸性リチウム溶液を透過させる。次に、濾過した酸性リチウム溶液がナノ濾過膜に送られて、保持液および透過液が形成される。ナノ濾過保持液は、可溶性有機物および可溶性金属の一方または両方を含み、ナノ濾過透過液は、酸溶液およびリチウムを含む、濾過された酸およびリチウムの溶液を形成する。次いで、濾過された酸およびリチウムの溶液は、逆浸透膜に送られて、保持液および透過液が形成される。逆浸透保持液はリチウムを含み、逆浸透透過液は酸溶液を含む。最後に、リチウムが、リチウム塩として逆浸透保持液から回収され、逆浸透透過液は、場合により混合ステップにリサイクルする。
【0007】
前段落の方法は、1つまたは複数の追加の方法ステップまたは特徴と組み合わせることができる。これらの追加の方法ステップまたは特徴は、以下のうちの1つ以上を含む:酸溶液が、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、クエン酸、およびそれらの組み合わせを含む;酸溶液が、約2.5以下のpHを有する;リチウム含有材料が、リチウムイオン電池またはリチウム含有鉱物堆積物である;ナノ濾過膜および逆浸透膜の一方または両方が塩素化されている;限外濾過前処理膜が、約0.01ミクロン~約0.5ミクロン(「ミクロン」は「μm」と同義である。)の孔径を有し、かつ約10~約100psiで操作される;ナノ濾過膜が、約0.0007ミクロン~約0.0012ミクロンの孔径を有し、かつ約200~約2000psiで操作される;逆浸透膜が、約0.0005ミクロン~約0.001ミクロンの孔径を有し、かつ約200~約2000psiで操作される;リチウム含有材料が、金属酸化物カソード、炭素アノード、電解質、およびポリマーセパレータを含むリチウムイオン電池またはセルであり、かつ、混合ステップが、金属酸化物カソード、炭素アノード、電解質、およびポリマーセパレータを酸溶液中に配置することを含む;リチウム含有材料がリチウム含有鉱物堆積物であり、かつ、混合ステップが、リチウム含有鉱物堆積物と酸溶液の比を約1:2~約1:20とし、リチウム含有鉱物堆積物からリチウムを浸出させて酸性リチウム溶液を形成することを含む;および/または、リチウム含有鉱物堆積物と酸溶液の混合ステップが、アルキルカーボネートおよびアルキルカーボネート類の混合物から選択されるポリマー材料をさらに含む。
【0008】
別の態様では、本開示は、リチウム含有材料からリチウムを回収する方法であって、以下の方法ステップおよび特徴を含む方法を提供する:まず、約2.5以下のpHを有する酸溶液中でリチウム含有材料を混合して、酸性リチウム溶液を形成する。混合は、約10℃~約100℃の温度で行われる。酸性リチウム溶液は、酸溶液、リチウム、可溶性有機物、可溶性金属、および懸濁固体のうちの少なくとも1つを含む。次に、濾過された酸性リチウム溶液を形成するために、酸性リチウム溶液を半透膜中で濾過して、懸濁固体を実質的に保持し、かつ、酸溶液、リチウム、可溶性有機物、および可溶性金属の1つまたは複数を実質的に透過させる。第3に、濾過された酸性リチウム溶液は次に、第1の塩素化半透膜中で濾過されて、可溶性有機物および可溶性金属の一方または両方を実質的に保持し、かつ、酸溶液およびリチウムを実質的に透過させて、濾過された酸およびリチウムの溶液を形成する。第4に、濾過された酸およびリチウムの溶液は次に、リチウムを実質的に保持し、酸溶液を実質的に透過させるために、第2の塩素化半透膜中で濾過される。最後に、リチウムは、保持されたリチウムからリチウム塩として回収され、任意で、第2の塩素化半透膜からの透過酸溶液は混合ステップにリサイクルする。
【0009】
前段落の方法は、1つまたは複数の追加の方法ステップまたは特徴と組み合わせることができる。これらの追加の方法ステップまたは特徴は、以下のうちの1つ以上を含む:酸溶液が、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、クエン酸、およびそれらの組み合わせから選択される;リチウム含有材料が、リチウムイオン電池またはリチウム含有鉱物堆積物である;半透膜が、約0.01ミクロン~約0.5ミクロンの孔径を有しかつ約10~約100psiで操作される限外濾過膜である;第1の塩素化半透膜が、約0.0007ミクロン~約0.0012ミクロンの孔径を有しかつ約200~約2000psiで操作されるナノ濾過膜である;第2の塩素化半透膜が、約0.0005ミクロン~約0.001ミクロンの孔径を有しかつ約200~約2000psiで操作される逆浸透膜である;リチウム含有材料が、金属酸化物カソード、炭素アノード、電解質、およびポリマーセパレータを含むリチウムイオン電池であり、かつ、混合ステップが、金属酸化物カソード、炭素アノード、電解質、およびポリマーセパレータを酸溶液中に配置することを含む;リチウム含有材料がリチウム含有鉱物堆積物であり、かつ、混合ステップが、鉱物堆積物と酸溶液の比を約1:2~約1:20とし、リチウム含有鉱物堆積物からリチウムを浸出させて酸性リチウム溶液を形成することを含む;および/または、リチウム含有鉱物堆積物と酸溶液の混合ステップが、アルキルカーボネートおよびアルキルカーボネート類の混合物から選択されるポリマー材料をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、例示的なリチウム回収方法の流れ図である。
【
図2】
図2は、例示的なリチウム回収方法の別の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、回収されたリチウムを精製および濃縮するための低pH溶液および膜技術を使用して、リチウム源またはリチウム含有材料からリチウムを回収する方法を記載する。リチウム源は、使用済みリチウムイオン電池/セル、リチウム含有鉱物堆積物、または他のリチウム含有材料を含むことができ、いくつかの例示的なリチウム源を示唆する。本明細書に記載される方法は、塩素化酸安定性膜などの1つまたは複数の選択された酸安定性半透膜を通して、低pH溶液でリチウム含有材料を消化した後にリチウムを回収する。場合によっては、本明細書の方法はまた、所望の処理流をリサイクルして、プロセスを費用効果的にし、必要により出発リチウム源の組成に応じて高レベルのリチウム(および他の成分)を回収するように動作可能にする能力を含む。
【0012】
いくつかのアプローチでは、本質的に電池またはセル全体がリサイクル可能であるか、または本質的に電池/セルのすべての構成要素が回収可能であり、その結果、それらはリサイクルされ、再使用され得る。本明細書のプロセスはまた、膜分離技術を利用して、純粋な酸を浸透させ、リチウムおよび金属を少量に排除することによって、リチウム、金属、および精製された酸の回収を可能にする。これは、膜技術を使用して、リチウムおよび/または金属を含有するより小さい体積の濃縮液、および、より大きい体積の透過液に供給物を分割するため、同時に起こる。透過液および濃縮液の両方に価値があり、必要であれば、再使用のために回収することができる。したがって、本明細書の方法は、本質的に電池全体をリサイクルするだけでなく、処理に使用される酸もリサイクルすることを可能にする。
【0013】
本明細書で使用されるリチウムイオンセルは、電極(カソードおよびアノード)、セパレータ、および電解質の基本構成要素を含む単一または基本電気化学ユニットを指す。一般的なリチウムイオンセルの場合、この基本単位は、円筒状、角柱状、またはポーチ状の単位であってもよい。電池は、より従来的には、適切なハウジング内のセルの集合体である。例えば、電話またはハンドヘルドツールのためのもののような単純な電池は、単一セルであってもよい。電気自動車用のような複雑な電池は、別個のモジュールの集合体内に何千ものセルを含むことができる。
【0014】
リチウムイオンセルのアノードまたは負極は、グラファイトまたは他の炭素系材料(グラフェンなど)で覆われたアノードプレートとしての銅箔であってもよい。カソードまたは正極は、金属酸化物であってもよく、コバルトニッケル合金、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リン酸鉄リチウム、リチウムマンガン酸化物、フッ化リン酸リチウム(LFP)、リチウムモリ酸化物(LMO)、または、ニッケルコバルト酸化物(NCO)などの他の金属酸化物で覆われたカソードプレートとしてアルミニウム箔を含んでもよい。電解質は、高分子有機物、有機溶媒、リン酸塩、フッ化物およびリチウム塩の混合物を含むことができ、有機溶媒およびリチウム、リン酸フッ化物(LiPF6)を含むことができる。カソードおよびアノードは一般に、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどのポリマーセパレータによって分離される。上記の構成要素は電池ケース内に含まれ、電池ケースはポーチ、シェル、または他のエンクロージャなどの金属またはポリマーの積層体であってもよい。本明細書中でさらに議論されるように、上記の成分の全ては、本出願の方法を使用して、特定の適用のために必要とされるように、回収され得るか、またはリサイクルされ得る。本明細書のプロセスに適したリチウムイオンセルの一例は、従来の18650リチウムイオンセルである。
【0015】
より詳細には、リチウム回収の例示的な方法が一般に、最初に、リチウム含有材料を加工または処理して、低pH酸溶液中でリチウムおよび他の材料を消化し、成分を可溶化し、次いで、酸溶液を、1つ以上の膜分離ステップを通して処理して、リチウム、酸、および他の材料を回収、濃縮、および精製することを含む。
【0016】
本明細書中で使用される場合、膜処理は、種々の流れを実質的に保持または透過し得る。この文脈において、「実質的」は、少なくとも過半数または少なくとも約50パーセント、他のアプローチにおいて、少なくとも約70パーセント、および他のアプローチにおいて、少なくとも約90パーセントの保持または透過を意味する。
【0017】
図1を参照すると、使用済みリチウムイオン電池のようなリチウム含有材料からリチウムを回収するための例示的なプロセス10が示されている。
図1のプロセスは、リチウム含有材料として使用済みリチウムイオン電池またはセル(従来の18650リチウムイオンセルなど)を使用して説明されるが、
図1のプロセスは他のリチウムイオン源と共に使用することもできる。リチウム含有鉱物堆積物を使用するさらに他のプロセスの議論は、本開示において後に提供される。一般に、回収プロセス10は、酸処理または消化ステップ12、前処理ステップ14、1つ以上の酸濾過ステップ16、およびリチウム回収ステップ18を含む。本明細書中で使用され、記載される膜は全て酸安定性であり、これは、それらが本明細書中のプロセスにおいて使用される低pH溶液を操作し、そして耐えることができることを意味する。酸安定性膜は、本明細書に記載されるような(必要に応じて修飾された)ナイロンまたは他のポリマーなどのポリマーベースまたはバリア層を含んでもよい。膜の他の材料は、ABSまたはPVCではなく、ポリスルホンまたはFRP(繊維強化プラスチック)であってもよい。エポキシ樹脂は、膜チューブ、ラップ、またはフレームを形成するために使用される。外側ラップまたは層は、ポリウレタンまたはポリプロピレンのオープンメッシュであってもよい。
【0018】
酸処理または消化ステップ12は、酸溶液、リチウムイオンまたはリチウム、可溶性有機物、可溶性金属、および懸濁固体のうちの1つ以上を含む酸性リチウム溶液20を生成する。酸性リチウム溶液20を製造するために、まず電池固体22をその要素部分に分解する(図示せず)。リチウムイオン電池またはセルの場合、処理されるユニットが機械的に分離され、金属またはプラスチックである外部材料またはシェルが除去されて、上述のように内部電池またはセル要素へのアクセスが可能となる。例えば、円筒形の18650リチウムイオンセルでは、要素を巻き戻し、分離することができる。他のタイプのセルまたは電池は、各セルタイプの必要に応じて分離または分解されてもよい。電池アノードは通常、グラファイトまたは他の炭素材料をその上に有する銅箔プレートであり、ポリマー電解質マトリックスを用いてカソード(上記のようにカソード材料をその上に有するアルミニウム箔)から物理的に分離される。
【0019】
消化ステップ12において、分解された電池要素22は、混合タンク24に直接添加され、低pHの無機または有機の酸溶液で可溶化される。次いで、可溶化されたアノード、カソード、および電解質材料は、
図1に示され、以下でより議論されるように、ステップ14、16、および18において、酸膜技術を使用して、濾過され、そこからリチウムが回収され得る。電解質、アノード及びカソードの全体(単一ユニット又は別個のユニットのいずれかとして)は、電池固体22の一部として混合タンク24に加えることができる。典型的には、電解質全体を混合タンク24内の酸溶液に溶解させることができる。アノード、銅アノードプレート、およびアルミニウムカソードプレートからのグラファイトまたはグラフェン(他の電池固体と共に)もまた、必要に応じて混合タンクから回収することができ(26)、プロセス全体を実質的にゼロの廃棄物および持続可能にする。カソード材料は、電池パックを注意深く分解することによって直接回収することができるコバルトニッケル合金とすることができる。ニッケル合金は、カソードを除去するための酸によって影響を受けないので、本質的に無傷で回収することができる。他のカソード材料は酸化マンガンまたは他の類似の金属酸化物であるが、これらは酸に可溶性であり、溶液中で一旦精製し、濃縮し、回収し、同様に酸も精製し(必要であれば濃縮し)、以下でさらに論じるように回収することができる。
【0020】
従来のリチウムイオン電池中のリチウムの量(すなわち、3.7ボルト電池中に典型的に見られる約1~約8グラム)に基づき、酸溶液上で大まかな質量バランスをとると、本開示の方法は、酸処理または消化ステップ12において、酸溶液中に全体の8グラムまで迅速かつ効果的に抽出することができる。その後の膜回収ステップを通して、本明細書のプロセスは、出発リチウムの約90~約99.5パーセントまでを回収することができる。酸の種類ならびにリサイクルプロセスから抽出された酸およびリチウムの濃度に応じて、すべてのステップを適用することができ、または1つまたは2つのステップのみを適用して、最も費用効果の高い結果を達成することができる。
【0021】
酸混合ステップ12では、多くの酸がこのプロセスに潜在的に有用であり得る。適切な酸は典型的には約2.5以下のpHを有し、他のアプローチでは、約0.3~約2.5のpHを有する。1つのアプローチにおいて、無機酸の使用は、電解質を溶液中に置き、そしてカソードおよびアノードを分離するために有効である。好適な無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられる。無機酸は、水溶液中で約0.5~約30パーセントの濃度を有し、約1以下のpHを有し、他の例では約0.3~約1のpHを有し、さらに他の例では約0.3~約0.5のpHを有する。電池要素の消化および分離ほど効果的ではないが、有機酸もまた、特定の用途に必要とされるように、混合ステップ12において使用され得る。適切な有機酸には、酢酸、クエン酸などが含まれる。有機酸は、水溶液中で約1~約30パーセントの濃度を有することができ、約0.1~約2.5のpHを有することができ、他の場合には、約1.0~約2.5のpHを有することができる。一般に良好な溶媒である水または蒸留水は、通常、約25℃の周囲温度、および周囲温度より高い温度(例えば、約60℃まで(またはそれ以上)の上昇温度)でさえ、電池要素を溶解および分離するために、混合ステップ12において作用しない。
【0022】
混合ステップ12は、約10℃~約100℃、他のアプローチでは約25℃~約70℃、さらに別のアプローチでは約50℃~約70℃の温度で行うことができる。例えば、混合中に無機酸(例えば、13%HCL溶液)を約25℃の周囲温度から約60℃に加熱すると、酸溶液中のリチウムの量によって一般に決定される周囲温度での混合と比較して、電解質を溶液中に約50パーセント入れる時間が短縮されることが発見された。いくつかのアプローチにおいて、混合および消化時間は約1分~約120分、他の場合には約1分~約30分、さらに他の場合には約10分~約15分であり得、そして酸浴中で使用される酸および濃度に依存して変化し得る。多くの場合、混合時間は約10分~約2時間である。
【0023】
従来の3.7Vリチウムイオンセルで利用可能なリチウムの典型的な量は約1~約8グラムであり、他のアプローチでは約4~約8グラム(電池の種類および製造業者に依存する)であり、本明細書の酸溶液および混合ステップは、溶液中に出発電池からのリチウムを約100パーセントまで含有する酸性リチウム溶液20をもたらした。他のアプローチでは、上述の加熱および混合後の酸性リチウム溶液20は、出発リチウム電池源22からのリチウムを約75~約99.5パーセント含む。いくつかのアプローチでは消化後の酸性リチウム溶液20は、リチウム含有源からリチウムを溶解するために使用される酸溶液の体積に応じて、約100~約5000ppmのリチウムを含むことができ、他のアプローチでは約100~約1000ppmのリチウムを含むことができ、さらに他のアプローチでは約500~約1000ppmのリチウムを含むことができ、さらに他のアプローチでは約100~約500ppmのリチウムを含むことができる。
【0024】
混合または酸消化のステップ12の後、形成された酸性リチウム溶液20は第1の膜ステップまたは前処理ステップ14の前に、任意の上清タンク27に移され、次いで任意の供給タンク28に移され得る。任意の上清タンクは、後続の膜処理のために小バランス供給タンク28に流れを導く前に酸およびリチウムの比較的透明な溶液を保持するプロセスにおける比較的広いまたは大きなタンクである。
【0025】
前処理ステップ14では、酸性リチウム溶液20を第1の半透膜30で前処理する。1つのアプローチでは、第1の半透膜30が約0.01~約0.5ミクロンの孔径を有する酸安定性限外濾過膜である。適切な膜は中空繊維であってもよいが、前処理膜30はスパイラル巻き、プレートおよびフレーム、またはセラミックチューブタイプの膜であってもよい。前処理膜に適した材料は、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリスルホン(PSF)、またはポリエーテルスルホン(PES)などの材料であってもよい。
【0026】
前処理14は、約10~約100psiの圧力下であってもよく、他のアプローチでは約20~約60psiであってもよい。前処理ステップ14の膜30は、濃縮された懸濁固体の過半数を濃縮または実質的に保持し(32)、酸溶液、リチウムイオンまたはリチウム、可溶性有機物、および可溶性金属のうちの1つ以上を通過または透過させて(34)、濾過された酸性リチウム溶液または流れ34を形成する。いくつかのアプローチでは、保持液または濃縮液32がその後、必要に応じて逆洗溶液として混合タンク24にリサイクルされてもよい。いくつかのアプローチでは、前処理14が透過液の約98パーセントまでの回収率を有し、他の場合では透過液の約75~約100パーセントの回収率を有する。前処理ステップにおける回収率は、供給物の量に対する透過液の量を意味する。
【0027】
次に、前処理ステップ14からの透過液34(すなわち、濾過された酸性リチウム溶液)は、1つ以上の酸安定性半透膜を含む酸濾過ステップ16に送られる。示されるように、濾過された酸性リチウム溶液34はまた、第1の酸濾過膜の前に、別の任意の供給タンク36を通過し得る。酸濾過ステップ16における酸安定性半透膜は、塩素化膜または改質膜であってもよい。以下でより議論されるように、膜の塩素化はいくつかの例において、所望の成分を排除および透過するように分離プロセスを調整するために、所望の膜細孔サイズを達成するために、酸濾過ステップ16において有益であり得る。
【0028】
図示のように、酸濾過ステップは2つの分離ステップ16aおよび16bを含み、酸溶液42から金属38およびリチウム40を分離する。第1の酸濾過ステップ16aは、ナノ濾過膜のような第2の半透膜39であってもよく、または以下により議論されるように、塩素化ナノ濾過膜であってもよい。この追加の膜39は、保持液流38及び透過液流41を形成する。保持液38は、濾過された酸性リチウム溶液供給物34からの可溶性有機物および可溶性金属の一方または両方を含む。流れ38中の排除された可溶性有機ポリマーは、電池またはセルのセパレータからのポリプロピレンおよびポリエチレンを含み得る。流れ38中の排除された可溶性金属は、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、銅などの金属のような酸可溶性二価カチオンを含み得る。流れ38中の排除された可溶性金属はまた、アルミニウム、鉄、リン酸塩、フッ化物、および場合によっては希土類元素などの金属を含み得る。希土類元素としては、例えば、ランタノイド 、スカンジウム、イットリウム、セリウム、その他の公知の希土類元素を挙げることができる。流れ38中の排除された可溶性金属は、酸及び出発リチウム源に応じてコバルト及びニッケルを含み得る。透過液流41は、1価のリチウムイオン又はリチウムと酸溶液とを含む。流れ38中の金属は、必要に応じて回収することができる。
【0029】
膜分離39は、供給流からのリチウムおよび酸の約90~約95%の回収率を有してもよく、他のアプローチでは約80~約99%の回収率を有する可能性がある。本明細書で使用される場合、ナノ濾過膜39を通る回収率は、供給物34の量に対する透過液41の量である。いくつかのアプローチでは、塩素化ナノ濾過膜などのナノ濾過膜39が、約100~約200ppmのリチウムを有する透過液流41を生成することができ、保持液流38は、約100~約200ppmのリチウムを有することができる。保持液流38は、供給流の約5~約10パーセントであってもよい。以下により詳細に説明するように、特定の用途に必要であれば、任意の透析濾過をこのプロセスステップで使用することもできる。
【0030】
酸安定性半透膜39は、約0.0007~約0.0012ミクロンの孔径を有してもよく、約200~約2000psi、および他のアプローチでは約200~約1800psi、さらに他のアプローチでは約500~約1000psiで操作されてもよい。第1の酸分離ステップ16aに適した膜は、中空繊維であってもよいが、膜16aはスパイラル巻き、プレートおよびフレーム、またはセラミックチューブタイプの膜であってもよい。第1の酸処理膜16aに適した材料には、ポリアミドなどの材料が含まれ、いくつかの供給業者を示唆すると、東レ(Toray)、ヒドラノーティクス(Hydranautics)、フィルムテック(Filmtec)、GE、および他の市販の膜供給業者から商業的に入手することができる。
【0031】
場合によっては、酸分離ステップ16aのための市販の膜は、所望の材料を十分に排除せず、十分に高い流速で通過させず、したがって、本明細書の方法で使用するために改変されて、より高い流速、より良好な選択性、およびより迅速な流体送達を提供することができる。分離ステップをより良好に調整するために、本明細書中のいくつかのアプローチにおいて、改変された膜が使用され得る。例えば、酸安定性半透膜39は、塩素化酸安定性ナノ濾過膜のような、修飾されたまたは塩素化された酸安定性半透膜であってもよい。より具体的には、塩素化膜は、膜39を約2~約4パーセントの塩素(約10~約12のpH)に約2~約4時間、周囲温度(約20~約30℃)で浸漬して改質/塩素化され、所望の酸およびリチウムの透過が可能となるように膜が解放されるが、なお金属および他の二価カチオンは排除される。塩素化後、膜は、約0.0007~約0.0012ミクロンの孔径を有することができ、および/または約300~約400ダルトンの分子量カットオフを有することができる。
【0032】
酸膜ステップ16aは一般に、流れ38中で、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムおよび鉄(および上記のような他の成分)のような任意の酸可溶性二価カチオンを除去するが、流れ41中で、一価リチウムの全てまたは少なくとも過半数を含む清浄な酸を実質的に透過させる。好ましくは、酸もリチウムもこの膜ステップ16aによって排除されない。この方法ステップは任意の回収率で実行することができるが、方法が約90%を超える回収率で実行される場合、透過液41中のリチウム濃度は実際には供給濃度の100%を超え、保持液38中のリチウム濃度は供給濃度未満である。いくつかのアプローチでは、流れ41中のリチウムの量が流れ38中のリチウムよりも10~20パーセント多いことがある。いくつかのアプローチでは、本明細書のプロセスのこの特徴が酸分離ステップ16aで失われるリチウムの量を減少させる点で、プロセス全体に有利である。いくつかのアプローチにおいて、高レベルのリチウム回収は、以下でより議論される限外濾過の使用によって補助される。
【0033】
ナノ濾過膜39からの透過液流41は、濾過された酸およびリチウムの溶液41であり、1価のリチウムイオンまたはリチウムおよび酸溶液を含む。それは、任意の供給タンク43に、次いで追加の酸分離ステップ16bに導くことができる。追加の酸濾過ステップ16bは、逆浸透膜、または以下でより議論されるように、塩素化逆浸透膜などの別の半透膜44であってもよい。この追加の膜44は、保持液40および透過液42を形成する。保持液40は、供給流(濾過された酸およびリチウムの流れ41)からの濃縮リチウムイオン又はリチウムを含む。保持液又は濃縮液の流れ40は、約100~約1500ppmのリチウムイオン又はリチウムを含むことができ、リチウムとして約5~約10g/lとすることができる。透過液流42は酸溶液を含み、透過液42は
図1に示すように、最初の電池固体の酸処理または消化に使用するために、混合タンク24にリサイクルして戻すことができる。あるいは、透過液流42が水から酸を分離するために、以下でさらに論じられるように、さらに処理されてもよい。
【0034】
酸安定性半透膜44は、逆浸透膜であってもよく、約0.0005~約0.001ミクロンの孔径を有してもよく、約200~約2000psi、および他のアプローチでは約1000~約1800psi、さらに他のアプローチでは約1000~約1500psiで操作されてもよい。追加の酸分離ステップ16bに適した膜は中空繊維であってもよいが、膜16bはスパイラル巻き、プレートおよびフレーム、またはセラミックチューブタイプの膜であってもよい。第2の酸処理膜16bに適した材料には、ポリアミド、ポリアラミド、およびスルホン化ポリスルホンなどの材料が含まれ、いくつかの供給業者を示唆すると、東レ、ヒドラノーティクス、フィルムテック、GE、および他の市販の膜供給業者から商業的に入手することができる。
【0035】
いくつかの例では、この追加の酸分離ステップ16bのための市販の膜もまた、所望の材料を十分に排除せず、十分に高い流速で通過させず、したがって、本明細書の方法で使用するために改変されて、いくつかのアプローチではより高い流量をもたらすより少ない塩排除を提供する。分離ステップをより良好に調整するために、本明細書中のいくつかのアプローチにおいて、改変された膜が使用され得る。例えば、酸安定性半透膜44は、塩素化酸安定性逆浸透膜などの塩素化酸安定性半透膜であってもよい。より具体的には、塩素化膜44は、膜を約2~約4パーセントの塩素(約10~約12のpH)に周囲温度で約2~約4時間浸漬して改質/塩素化され、所望の酸透過が可能となるように膜が解放されるが、依然としてリチウムイオンまたはリチウムを排除する。塩素化後、膜は、約0.0005~約0.001ミクロンの孔径を有することができ、および/または約100~約150ダルトンの分子量カットオフを有することができる。
【0036】
逆浸透膜のような膜分離16bは、供給流からのリチウムの約90~約95%の回収率を有することができ、他のアプローチでは、約80~約99%の回収率を有することができる。本明細書で使用されるように、膜44の回収パーセントは、供給流41に対する濃縮液/保持液40の量である。塩素化逆浸透膜などの逆浸透膜44は、約100~約700ppmのリチウムを有する透過液42を生成することができ、保持液40は、約1000~約20,000ppmのリチウムを有することができる。保持液流40は、供給流の約70~約98パーセントであってよい。以下により詳細に説明するように、特定の用途に必要であれば、任意の透析濾過をこのプロセスステップで使用することもできる。
【0037】
このプロセスにおけるこの第3の分離ステップ16bは、大部分の二価カチオンを含まない前のナノ濾過膜39からの透過酸41を使用する。このステップにおいて、酸膜44は、リチウムおよび少量の酸を、約95パーセントまで、場合によっては約90~約95パーセントまで濃縮(すなわち、排除)する。選択された酸に応じて、排除されるリチウムは、方法で使用される酸に基づいて、塩化リチウム、硫酸リチウム、または硝酸リチウムなどの形態であってもよい。いくつかのアプローチでは、潜在的な浸透圧が回収率を制限するので、酸排除は低い。高い回収率はリチウムの濃度を増加させ、次のプロセスステップ(すなわち、イオン交換、液体イオン交換または電解槽)への体積を減少させる。さらに、透過液流42は、少量のリチウム(例えば、約0.5~約10パーセント)および約50~約95パーセントの酸を含有する。
【0038】
濃縮液または保持液の流れ40は次いで、例えば、水酸化リチウムまたは炭酸リチウムの形態で、1つ以上のリチウム回収ステップ18においてリチウムを回収するために、さらに処理される。リチウム回収は、リチウムを回収するために、イオン交換、電気透析、またはその両方などのイオン回収ステップ44を含むことができる。いくつかのアプローチでは、回収されたリチウムが次に、水酸化リチウムまたは炭酸リチウムとして48aまたは48bを回収することができるように、水酸化ナトリウムまたは炭酸ナトリウムと混合される(46)。電気透析は、溶液のpHが約7のpHに中和された後、水酸化リチウムを形成するために使用され得る。必要に応じて、吸着後に、ナノ濾過膜を使用して硫酸リチウムから水酸化リチウムを分画することができる(硫酸を使用してリチウムのイオン交換を処理または取り除く場合)。溶液が硫酸リチウムを含む場合、炭酸ナトリウムの添加後に炭酸リチウムを優先的に沈殿させるために、リチウムとして2~3パーセント(20k~30k)の濃度が必要とされ得る。次いで、乾燥前に、フィルタープレスを使用して、懸濁固体および液体を除去することができる。
【0039】
必要に応じて、第1の酸濾過ステップ16a(および/または必要であれば第2の酸濾過ステップ16b)はまた、リチウムの分離を改善するために透析濾過を使用し得る。いくつかの場合において、ナノ濾過膜39からの濃縮液流38は、依然として、いくつかのレベルのリチウムを含むことがあり、これは、いくつかのアプローチにおいて、約100ppm~約150ppmのリチウムイオンであり得る。従って、透析濾過は任意に、濃縮液流38中のリチウムを半分に希釈するために、1体積の水または任意に逆浸透透過液42を添加することによって、濾過ステップ16aおよび濃縮液流38に対して実施され得る。次いで、ナノ濾過膜39は、流れ38中の体積をその元の量に濃縮して戻すが、膜38がリチウムを排除しないので、透過液流41はより多量のリチウム(場合によっては約60~約70ppm多いリチウム)を含み、濃縮液流38はより少ないリチウム(場合によっては約50パーセント少ないか、または約60~約70ppm少ないリチウム)を含む。例えば、透過液41は約150~約200ppmのリチウムを有することができ、保持液38は約100~約140ppmのリチウムを有することができる。ナノ濾過および逆浸透保持液の両方について、これらの流れは酸を保持するので、任意の透析濾過は保持液から酸を洗浄し、pHを増加させることができる(これは、イオン交換の次のプロセスステップに有利である)。透析濾過流体は、脱イオン水、水道水、(酸を含む任意の以前のプロセス流からの)低pH流体、高pHまたはかん水(例えば、100ppm~30,000ppmを有する塩化ナトリウム溶液)であり得、必要な場合、濃縮液の化学的性質を変化させる。
【0040】
いくつかのアプローチにおいて、改変されたナノ濾過膜および改変された逆浸透膜の性質のために、本明細書中のプロセスは、リチウムまたはコバルトを、従来の膜では排除されるであろう塩化物、硫酸塩、硝酸塩、または水酸化物と組み合わせることができる。ここで、改変された膜では、イオン補給(pHとのイオンバランスだけでなく)の変更のために、これらの材料が透過し、その結果、膜が排除するかまたは透過するイオン対は、さらなる処理のために最適化される。
【0041】
透過された酸溶液を実質的に含有する透過液流42はしばしば、
図1に示すように、酸処理または酸消化ステップ12にリサイクルして戻される。しかしながら、さらに別の任意のステップにおいて、透過液流42は、低pH透過液流42に耐えるのに適切な材料で巻かれた海水型逆浸透膜52を用いて、酸を水から分離するためにさらに処理されてもよい(50)。膜は、高いウェール数および高いエポキシ含量および/または細かいメッシュのステンレス鋼を有する材料を有してもよい。操作圧力は、約1000~約3500psiとすることができ、約10~約80℃の温度、および約1~約50パーセントの酸含量(場合によっては約1~約30パーセント)とすることができる。他の膜と同様に、追加の分離50のための適切な膜は中空繊維であってもよいが、膜52はスパイラル巻き、プレートおよびフレーム、またはセラミックチューブタイプの膜であってもよい。膜52に適した材料には、ナイロン、スルホン化ポリスルホン、ポリアラミドなどの材料が含まれ、いくつかの供給業者を示唆すると、東レ、ヒドラノーティクス、フィルムテック、GE、および他の市販の膜供給業者から商業的に入手することができる。この任意の分離ステップは、補給水を提供し、および/または酸流中のリチウムの回収を助けることができる。
【0042】
図2を参照すると、リチウム含有材料からリチウムを回収するための同様のプロセス100の例が示されており、この例ではリチウム含有鉱物パルプまたは堆積物(すなわち、リチウム含有固体)、例えば、ほんの数例を挙げると、ヘクトライト、モンモリロナイト、イライト、スメクタイト、カノライト、ベクトナイト、スポジュメンなどのリチウム含有粘土が挙げられるが、これらに限定されない。鉱物又は粘土からのリチウムの抽出は、
図1に関して上述したものと同様の方法である。ここではいくつかの相違点について説明するが、それ以外の点では方法100が
図1の方法10と同様である。
【0043】
第1に、リチウム含有パルプ102は、
図2に示すように、1つ以上の消化ステップ/タンク124において酸で消化される(12)。この方法は、混合タンク124を約50~100℃(他のアプローチでは約50~約60℃)に加熱することによって強化することができるが、加熱は任意である。消化または浸出12は、1つ以上の連続浸出ステップで起こり得る。
図2では3つが示されているが、浸出は特定の出発材料に必要とされる1つ、2つ、またはそれ以上の連続浸出ステップであってもよい。
【0044】
次に、酸浸出パルプは、タンク124からまたは連続タンク124の最後から、清澄器または他の分離プロセス107に移される。上清106は、清澄器または他の分離プロセス107を介して固体から分離される。浸出上清106溶液は、固体または電池中の酸および液体対リチウムの比率に応じて、約50~約5000ppmのリチウム、および他の場合には約50~約1000ppmのリチウム、さらに他の場合には約100~約1000ppmのリチウムを有することができる。上清106は最初に、100~200ミクロンスクリーニング(複数可)を使用する1つまたは複数の総濾過ステップで予備濾過110され、次いで、1つまたは複数の0.01~0.1ミクロン孔サイズの逆洗可能な中空繊維フィルタ(複数可)で研磨され、これは、残存する懸濁固体の過半数をすべて除去して、以前に記載されたものと同様の、後続の膜濾過ステップ14および16ならびに精製ステップ18への供給物として酸性リチウム溶液120を形成する。逆洗濾過ステップ110から分離された固体111は、混合および酸消化12に戻されて、1つ以上の混合タンク124にリサイクルされ得る。
【0045】
上記の方法10と同様に、酸性リチウム溶液120は次に、第1のまたは前処理膜30で前処理される(14)。その透過液34は、リチウム18の精製および濃縮の前に、第1の酸分離16aおよび第2の酸分離16bのような1つ以上の酸分離ステップ16で処理される。これらの分離ステップは、既に上述したものと同様である。
【0046】
図2に示されるように、方法100はまた、1つ以上の分離ステップから酸消化ステップ12に戻るリサイクル流を使用し得る。例えば、浄化器の下端107は、1つ以上の混合タンク124にリサイクルして戻すことができる。下端107はまた、特定の用途に必要とされるように、透過液42および/またはイオン交換洗浄流41と合わせることができる。
【0047】
場合によっては、リチウム含有パルプのための酸処理または消化ステップ12が2つ以上の浸出ステップを含んでもよい。使用される場合、任意の第2の浸出ステップ(または任意の第3の浸出ステップ)は、処理される酸消費量および水量を増加させるにもかかわらず、リチウムを濃縮するための膜プロセスの有効性のために、全体的なリチウム回収を増加させるのを助ける。一般に、パルプの少なくとも2つの浸出ステップを使用した場合、抽出は、パルプからのリチウム回収率の約97%まで増加した。また、必要に応じて、
図2に示すような第3の浸出ステップを用いてもよい。
【0048】
消化については、パルプ対液体の比が約1:2~約1:20であり、他のアプローチでは約1:2~約1:6であり、さらに他のアプローチでは第1のまたは最初の浸出ステップについては約1:5~約1:6である。液体混合物は、上記の酸溶液および水のいずれかであり得る。混合物は、約1~約2時間、および他のアプローチでは約15分~約1時間撹拌され、次いで約4~約6時間沈殿させることができる。第2のまたは後続の浸出ステップにおいて、第1の浸出ステップからの浸出パルプが第2の浸出のための供給物として使用される場合には、より低いパルプ対液体比、例えば1:2~約1:5、および他のアプローチでは、約1:2~約1:3が使用され得る。混合および沈殿時間は、任意の後続の浸出ステップについて短縮されてもよく、第2(または第3)の浸出ステップの混合時間については約5分~約1時間、沈殿時間については約15分~約1時間で変動してもよい。
【0049】
消化を改善するために、ある種のポリマーを混合タンク/浸出槽内で使用して、粘土上の正電荷を変化させることができる。これは、清澄化および沈殿時間の短縮を助けることができる。いくつかのアプローチにおいて、ポリマーまたはポリマー材料は、アルキルカーボネートおよびアルキルカーボネート類の混合物であり得る。適切なカーボネート類にはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネートなどのポリマーが含まれるが、これらに限定されない。EPCまたはエピクロロヒドリンも使用することができる。
【0050】
最初の浸出ステップにおいて、リチウムイオン回収率は、上清中に回収された供給パルプからのリチウムの約50~約99パーセントであり得、他のアプローチにおいては約70~約80パーセントであり得る。次に、リチウムの抽出を改善するために、第2の浸出ステップを実行することができる。第2の酸浸出は第1の浸出ステップからの浸出パルプを供給原料として使用するが、酸濃度が低下し(約1~約5パーセントの酸など)、パルプ対液体比が低下する。第2の浸出では、例えば、約2~約4パーセントの酸、例えば、約2.5パーセントの硫酸(または上述のような他の酸)を使用することができ、パルプ対液体比はパルプ(濾過された)1部対液体2部とすることができる。パルプは以前に浸出されていたので、炭酸塩の大部分が第1の浸出で消化されたという事実のために、第2の浸出酸消費は少なかった。その結果、混合および沈殿時間の両方を、それぞれ約30分および約2時間に短縮することができる。
【0051】
本明細書の方法の1つの利点は、大量の希釈流、この場合はリチウムの体積を、少量の濃縮リチウムに減少させることである。さらに、この方法は、再使用のために酸および水の両方を回収し得る。
【0052】
本開示およびその多くの利点のより良好な理解は、以下の実施例によって明らかにされ得る。以下の実施例は説明のためのものであり、その範囲または主旨を限定するものではない。当業者は、これらの例に記載された要素、方法、ステップ、および装置の変形が使用され得ることを容易に理解するのであろう。特に断らない限り、本開示に記載される全てのパーセンテージ、比率、および部は重量基準である。
【実施例】
【0053】
実施例1
酸消化の例は、5%硫酸を用いて電池からの銅カソードに対して行った。電池要素からのリチウムの抽出に関して、異なる消化時間および温度を評価した。結果を以下の表1および表2に示す。この試験では、表1の液体対質量の比は1対10であり、表2の液体対質量の比は1対5であった。
【0054】
表1:周囲温度(25℃)で約15分間消化した後の5%酸によるカソード-銅の消化
【表1】
【0055】
表2:70℃で約2時間加熱した後の5%酸によるカソード-銅の消化
【表2】
【0056】
実施例2
セルからの電解質を分解し、硫酸中で消化した。消化は70℃で約2時間実施された。以下の表3は、消化の結果を提供する。この試験では、液体対質量の比を1対2とした。
【0057】
表3:70℃で約2時間消化した後の5%酸による電解質の消化。
【表3】
【0058】
実施例3
6つの異なるリチウム含有鉱物またはパルプの酸浸出が完了した。各鉱物含有パルプは約960ppmのリチウムを含有していた。各サンプルの消化のために、約12.6kgのパルプおよび溶液を5%硫酸溶液で消化した。消化のために、約1部のパルプ対5.25部の液体混合物のパルプ対液体比を使用した。混合物を約1時間撹拌し、次いで約4~約6時間沈殿させた。
【0059】
消化を改善するために、粘土上の正電荷を変化させるために特定のポリマーの添加を使用することができ、これが清澄化および沈殿時間を減少させることが決定された。従って、約1~約5ppmのエピクロロヒドリンを混合タンクに添加した。
【0060】
この初期浸出では、リチウムイオン回収率が、上清中に回収された供給パルプからのリチウムの約80%であった。次に、リチウムの抽出を改善するために、第2の浸出を行った。第2の酸浸出は、供給原料として第1の浸出からのパルプを使用したが、酸濃度が低下し、パルプ対液体比が低下した。第2の浸出では約2.5パーセントの硫酸を使用し、パルプ対液体の比はパルプ(濾過された)1部対液体2部であった。パルプは以前に浸出されていたので、炭酸塩の大部分が第1の浸出で消化されたという事実のために、第2の浸出酸消費は少なかった。その結果、混合時間および沈殿時間の両方が、それぞれ約30分および約2時間に短縮された。第2の浸出からの上清は、リチウム濃度はより低いが、この実験では(最初の供給と比較して)第1および第2の浸出の両方からの全体的なリチウム抽出を約90パーセントまで増加させた。以下の試験手順および結果を、この実験について評価した。
【0061】
【0062】
最初の浸出からの固体を250ミクロンの濾膜で濾過し、次いで100ミクロンの濾膜で濾過して、上清を形成した。得られた濾過パルプは、約0.68kgの水を保持した。上清をリチウム含量について分析し、膜処理のために保存した。下記の表5の上清は、(出発パルプ中の約960ppmと比較して)約787.5ppmのリチウムを含んでいた。
【0063】
【0064】
実施例4
約100グラム(pH0.4の6.5%液体)を含有する実施例3からの濾過パルプ固体の小さなサンプルを、硫酸での第2の浸出の対象とした。約100グラムの第1浸出パルプを約200mlの水および約10mlの硫酸と合わせた。溶液を約30分間混合し、次いで約1時間沈殿させた。沈殿後、パルプを100ミクロンの濾膜で濾過し、上清を生成した。この第2の浸出プロセスの濾過されたパルプは、約96.5gの重量であった(パルプ中に約3.5%の水が保持された)。上清および固体をリチウム含量について分析し、以下の表6に示した。
【0065】
【0066】
実施例5
実施例3の最初の浸出液からの上清を、
図2に示すように、本開示の膜処理を用いてさらに処理した。各分離ステップへの供給量を以下の表7に示す。
【0067】
【0068】
表8のプロセスにおける全損失液体は、NF濃縮液中に約15パーセントを含んでいた。全損失リチウムは、透析濾過を用いてUFおよびNF濃縮液を合わせた約7.5%を含んでいた。パルプを消化するために消費された又は失われた全酸は、約40%と推定された。
【0069】
表7に示すように、NF供給原料またはナノ濾過供給原料は、約150ppmのリチウムを含有するUFプロセスからの9.62Kgの透過液流であった。ナノ濾過は、約8.9Kgの透過液、ならびに、マグネシウム、カルシウム、およびREE(rare earth elements)(希土類元素)を含む約0.72Kgの保持液をもたらした。ナノ濾過膜濃縮液流からの濃縮液流は、約132ppmのリチウムを含んでいた。ナノ濾過膜を、脱イオン水中の2%塩素で、80°F(26.7℃)で約2.5時間塩素化した。
【0070】
NF供給物を用いた透析濾過を使用すると、0.72Kgの濃縮液流中のリチウムは約132ppm(透析濾過前)から約67ppmまで減少させることができるが、それはまた、後続のROで処理されるべき体積を増加させる。したがって、ROによって濃縮されたリチウムはわずかに大きくなり、これは、NF処理からのリチウム損失を約7.5%のみに低減する。
【0071】
いくつかの態様では、これらの圧力および回収率%でのNF膜処理の独特の特徴は、透過液がより高いリチウム含有量(例えば、原料中の150ppmと比較して濃縮液中の約152ppm、したがって濃縮液中のより低いリチウム132ppm)を有することである。したがって、いくつかのアプローチでは、ただ1つの透析濾過ステップが損失を約7.5%以下に減少させる。
【0072】
実施例6
実施例3の最初の浸出からの上清を、加圧中空繊維0.04ミクロン孔径膜(オスモアジア(Osmoasia)、タイ)に通した。膜はPVCであったが、DVDF、PS、PES、またはセルロースであってもよい。システムは98%の回収率で運転され、これは、9.82kgの供給体積が9.62kgの清浄な透過液に変換され、懸濁固体がなく、シルト密度指数(silt density index)(SDI)が0.1未満であることを意味する。
【0073】
初期濃縮液質量0.49Kgを節約した。主として粘土固形物が95%のシステム回収率で濃縮された(20×)ので、固形物は急速に沈殿した。98%(9.62Kg)の全体的な液体回収のために、さらに0.29Kgの液体を回収する。残りの塊(粘土の細粒)は、第1の浸出酸混合タンクにリサイクルして戻すことによって、中和されるか、または潜在的に回収され得る。
【0074】
実施例7
pH0.4の実施例6の9.62Kgの清浄透過液を、NF膜を用いてさらに処理した。ナノ濾過膜を、実施例5に記載したのと同じ塩素化条件を用いて塩素化した。酸NF方法は、約92.5%の回収率、すなわち透過液として約8.35Kg、濃縮液として0.72Kgで実施した。92.5%の回収を達成するための圧力は約54バールであった。
【0075】
NF濃縮液(0.72kg)はカルシウム、マグネシウム、希土類元素(REE)、および原料中のリチウム(150ppm)よりも少量のリチウム(132ppm)を含有したが、体積は92.5%減少した。この現象は、粘土から抽出されるリチウムの損失を最小限に抑えるのに役立つので、本方法にとって有利である。上述のように、透析濾過を使用すると、高い回収率で、より高いppmのリチウム(利用可能なリチウムの100%を超える)を複合透過液中に通すことができる(すなわち、原料中の約150ppmと比較して、濃縮液中の約152ppm)ことが、本明細書の処理の有利な結果である。理論によって限定されることを望むものではないが、このリチウムのより高い回収は1価のリチウムカチオンの優先的な浸透のために達成されると考えられる。しかしながら、このプロセスステップでは、1つの目標がマグネシウム、カルシウムおよびREEを排除することである。
【0076】
必要であれば、透析濾過を使用し、0.72Kgの濃縮液に0.72Kgの液体を追加して、NF供給物にリサイクルして戻される新たな供給物体積の合計1.44Kgを得る。この新しい供給体積は、元の濃縮液中にあったリチウムの50%を除去して0.9Kgを透過させるために、同じNF膜を使用して50%減少される。このステップでは、希釈濃縮酸およびリチウムを元のNF保持液から回収する。このステップからの透過液は、次のROステップ(実施例8)の供給原料にリサイクルされ、そこで濃縮され、失われる代わりに生成物として回収される。場合によっては、リチウムはNF濃縮液中で失われるが、透析濾過は損失リチウムを減少させることができる。
【0077】
実施例8
実施例7からの8.9KgのNF透過液(152ppmのリチウムを含む)を、逆浸透膜である次のプロセスのための供給物として使用した。逆浸透膜を、実施例5に記載したのと同じ塩素化プロセスを用いて塩素化した。酸ROを約50バール下で約91.7%の回収率で運転して、約0.74kgのリチウム含有濃縮液を保持した。このステップの透過液は、約8.16Kgであり、約57ppmのリチウムを含有し、pH0.4であった。必要であれば、全ての透過液をリサイクルし、酸浸出ステップのための補給溶液として再使用することができるが、これはこの流れが、上述したように、酸を含む低硬度水を含有するからである。
【0078】
濃縮液0.74Kgは約556ppmのリチウムを含み、これは硫酸リチウム中のリチウムの半分のみを占める測定誤差であると考えられる。しかしながら、供給原料および透過濃縮液の物質収支もまた、この方法が約1200ppmまで濃縮できることを示唆した。濃縮されたリチウムは、イオン交換もしくは電気透析のいずれか、またはその両方の次のプロセスステップに適した小容量である。
【0079】
本開示の材料および方法は、本明細書の詳細な説明および概要と共に説明されてきたが、前記の説明は例示することを意図しており、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。他の態様、利点、および変更は、特許請求の範囲内である。
【符号の説明】
【0080】
10 回収プロセス
12 酸処理または消化ステップ
14 前処理ステップ
16 酸濾過ステップ
18 リチウム回収ステップ
20 酸性リチウム溶液
22 電池固体
30 第1の半透膜
32 膜30における保持液(または濃縮液)
34 膜30からの透過液
38 膜39における保持液(または濃縮液)
39 第2の半透膜
40 膜44における保持液(または濃縮液)
41 膜39からの透過液
42 膜44からの透過液
44 さらに別の半透膜
102 リチウム含有パルプ
120 酸性リチウム溶液