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特許7249430透明電極および透明電極の製造方法、ならびに透明電極を具備した光電変換素子
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  • 特許-透明電極および透明電極の製造方法、ならびに透明電極を具備した光電変換素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】透明電極および透明電極の製造方法、ならびに透明電極を具備した光電変換素子
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/50 20230101AFI20230323BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20230323BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20230323BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20230323BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20230323BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20230323BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20230323BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20230323BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20230323BHJP
   H10K 30/82 20230101ALI20230323BHJP
   H10K 50/805 20230101ALI20230323BHJP
   H10K 85/20 20230101ALI20230323BHJP
   H10K 30/30 20230101ALI20230323BHJP
   H10K 102/10 20230101ALN20230323BHJP
【FI】
H10K30/50
H05B33/14 A
H05B33/28
H05B33/26 A
H05B33/26 Z
H05B33/22 Z
H05B33/02
H05B33/10
H01B5/14 B
H01B13/00 503D
H10K30/82
H10K50/805
H10K85/20
H10K30/30
H10K102:10
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021549638
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2020008695
(87)【国際公開番号】W WO2021176518
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】信田 直美
(72)【発明者】
【氏名】内藤 勝之
(72)【発明者】
【氏名】齊田 穣
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107765511(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107651668(CN,A)
【文献】特開2014-208469(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109979642(CN,A)
【文献】特開2013-209261(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0020218(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0091403(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0099903(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0287639(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/20
H10K 30/00-39/38
H10K 50/00-59/95
H05B 33/28
H01B 5/14、13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の上に、パターン化された電極層を具備し、前記電極層が、金属ナノワイヤを含有する導電性膜と、前記導電性膜の上に積層され、前記導電性膜の上部を被覆した、グラフェン炭素骨格の一部が窒素原子で置換された、ポリエチレンイミン鎖が結合したN-グラフェンを含有する保護膜とを含む、透明電極。
【請求項2】
前記透明基材と前記電極層との間に、さらに密着層を具備する、請求項1に記載の透明電極。
【請求項3】
前記密着層が架橋性透明ポリマーを含む、請求項2に記載の透明電極。
【請求項4】
前記導電性膜が接着性ポリマーを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の透明電極。
【請求項5】
前記電極層の表面抵抗が20Ω/□以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の透明電極。
【請求項6】
前記金属ナノワイヤが銀または銀合金のナノワイヤである、請求項1~5のいずれか1項に記載の透明電極。
【請求項7】
前記透明基材が、有機材料からなる、請求項1~6のいずれか1項に記載の透明電極。
【請求項8】
(A)透明基材の上に金属ナノワイヤを含有する分散液を塗布し、乾燥して導電性膜を形成する工程と、
(B)前記導電性膜の上に、前記導電性膜の上部を被覆する、ポリエチレンイミン鎖が結合したN-グラフェンを含有する保護膜を形成する工程と、
(C)前記保護膜の上にフォトレジスト膜を形成する工程と、
(D)前記フォトレジスト膜に光を照射し、現像してフォトレジストのパターンを形成する工程と、
(E)前記パターンをマスクにして非マスク部をエッチングして、非マスク部の直下にある保護膜および導電性膜を除去する工程と、
(F)前記フォトレジストのパターンを除去する工程と、
を含む、透明電極の製造方法。
【請求項9】
工程(A)に先立って、前記透明基材の上に密着層を形成する工程(A’)をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程(B)が、ポリエチレンイミン鎖が結合したグラフェンを含む分散液を前記導電性膜の上に塗布することを含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
工程(C)が、前記保護膜にレジストフィルムを貼り合わせることを含む、請求項8~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記フォトレジスト膜がノボラック系ポリマーを含む、請求項8~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程(F)において、アルカリ性水溶液で処理することによりフォトレジストを除去する、請求項8~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか1項に記載の透明電極と、光電変換層と、対向電極とを具備する光電変換素子。
【請求項15】
前記光電変換層に隣接する、電子機能を有するバッファ層をさらに具備する、請求項14に記載の素子。
【請求項16】
前記対向電極が光透過性である、請求項14または15に記載の素子。
【請求項17】
前記対向電極にグラフェン層を具備するものである、請求項14~16のいずれか1項に記載の素子。
【請求項18】
太陽電池である、請求項14~17のいずれか1項に記載の素子。
【請求項19】
有機エレクトロルミネッセンス素子である、請求項14~17のいずれか1項に記載の素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、透明電極および透明電極の作製方法ならびにその透明電極を具備した光電変換素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年エネルギーの消費量が増加してきており、地球温暖化対策として従来の化石エネルギーに代わる代替エネルギーの需要が高まっている。このような代替エネルギーのソースとして太陽電池に着目が集まっており、その開発が進められている。太陽電池は、種々の用途への応用が検討されている。太陽電池には発電効率が求められるが、それ以外にも多様な設置場所に対応するために太陽電池のフレキシブル化と耐久性が特に重要となっている。しかし、最も基本的な単結晶シリコン系太陽電池はコストが高いうえ、フレキシブル化が困難であるという課題がある。また、昨今注目されている有機太陽電池や有機無機ハイブリッド太陽電池は製造コストや耐久性の点で改良の余地がある。
【0003】
このような太陽電池の他、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、EL素子ということがある)、光センサーといった光電変換素子についても、フレキシブル化を目的とした検討が行われている。有機材料を用いた素子は塗布法により製造することができるため、一般に熱に弱いフレキシブルなポリマー基板を組み合わせるのに有利である。そのような素子に用いる電極も塗布による製造ができることが好ましく、材料として金属ナノ材分散液が用いられることがある。金属ナノ材には種々の形状があり、ナノワイヤ状のものは透明電極にも適用できるものとして用いることができることが知られている。具体的には銀(銀合金を含む)や銅(銅合金を含む)ナノワイヤは特に優れた透過性と低抵抗を実現できる。ここで。金属ナノワイヤを透明電極の材料として光電変換素子等に用いる場合、金属ナノワイヤからなる電極層のパターニングが必要となる。このようなパターニングを行う際に、一般的なフォトレジストを用いてパターニングをするとエッチング処理過程やフォトレジスト剥離過程で電極層の剥離や劣化が起こりやすいので、剥離等を抑制する技術が望まれている。また、金属ナノワイヤを含む電極は、素子作製過程や素子駆動中にも金属ナノワイヤの劣化が起こりやすい傾向があり、その改善も望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-217785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本実施形態は、上記のような課題に鑑みて、金属ナノワイヤによってもたらされる優れた特性を具備したうえで、従来の金属ナノワイヤを用いた電極において解決が望まれていた課題を解決した透明電極を提供しようとするものである。具体的には、フォトレジストを用いたパターニング処理を行っても金属ナノワイヤ層の剥離や劣化が起こりにくく、その後の素子作製過程や素子駆動中にも金属ナノワイヤの劣化が起こりにくい、透明電極および透明電極の作製方法および光電変換素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態による透明電極は、
透明基材の上に、パターン化された電極層を具備し、前記電極層が、金属ナノワイヤを含有する導電性膜と、前記金属ナノワイヤの上に積層された、グラフェン炭素骨格の一部が窒素原子で置換されたN-グラフェンを含有する保護膜とを含むものである。
【0007】
また、実施形態による透明電極の製造方法は、
(A)透明基材の上に金属ナノワイヤを含有する分散液を塗布し、乾燥して導電性膜を形成する工程と、
(B)前記導電性膜の上にN-グラフェン膜を形成する工程と、
(C)前記N-グラフェン膜の上にフォトレジスト膜を形成する工程と、
(D)前記フォトレジスト膜に光を照射し、現像してフォトレジストのパターンを形成する工程と、
(E)前記パターンをマスクにして非マスク部をエッチングして、非マスク部の直下にあるN-グラフェン膜および導電性膜を除去する工程と、
(F)前記フォトレジストのパターンを除去する工程と、
を含むものである。
【0008】
また実施形態による光電変換素子は、前記の透明電極と、光電変換層と、対向電極とを具備するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態による透明電極の構造を示す概念断面図。
図2】実施形態による透明電極の製造方法を示す概念図
図3】実施形態による光電変換素子の構造を示す概念図。
図4】別の実施形態による光電変換素子の構造を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下実施形態を詳細に説明する。
【0011】
[実施形態1]
図1を用いて、第1の実施形態に係る透明電極について説明する。
【0012】
図1の透明電極100は透明基材101の上にパターン化された電極層102を具備している。電極層102は、金属ナノワイヤを含有する導電性膜102aと、グラフェン炭素骨格の一部が窒素原子で置換されたN-グラフェンを含む保護膜102bとが積層された構造を有している。保護膜は導電性膜の上に積層されており、後述するようにエッチング処理などの際に導電性膜を保護する機能を有している。
【0013】
そして、この電極層は、透明基材の上でパターン化されている。したがって、電極層は透明基材の表面において均一に広がっているのではなく、透明基材の表面の一部には電極層が存在していない。そして、その断面形状を観察すると、図1に示されるように、電極層が離間している。すなわち、電極層と電極層との間に空間が存在し、それらを分離している。このように一断面を観察したときに離間している電極層は、それぞれが全く独立していてもよいし、その断面以外の部分で連結していてもよい。すなわち、透明基材の表面に垂直な方向から観察した場合に、電極層が格子状の空間によって区切られて、多数の電極層が離間して配置されていてもよい。
【0014】
そして、単一の透明基材上に、完全に分離した電極層を複数配置されたパターンを採用することで、それぞれの電極に対して、独立した素子構造を複数形成させることができる。このようなパターンは、複数の素子を直列などに配列された装置の製造を容易とする。
本実施形態において、透明基材は光を透過し、素子に必要な透明性を有するものであれば特に限定されない。具体的には透明基材として、ガラスなどの無機材料、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などの有機材料が用いられる。透明基材は複数の素材で形成されていてもよい。なお、本発明による透明電極は、柔軟性を有する素子に適したものであり、柔軟性を有する有機材料を透明基材として用いることが好ましい。
【0015】
本実施形態の透明電極では、導電性膜の上部がN-グラフェン膜で被覆されている。このような構造により、電極上に素子を作製するプロセス中や形成された素子の駆動中に、おいてN-グラフェン層が金属ナノワイヤを含む導電性膜の保護膜として機能して劣化や剥離を防ぐことができる。
【0016】
本実施形態においては、金属ナノワイヤに含まれる金属は特に限定されないが、導電性などの観点から、銀、銀合金、銅、および銅合金からなる群から選択される金属からなるナノワイヤが好ましく、銀合金からなるナノワイヤが特に好ましい。
【0017】
複数の金属ナノワイヤは、互いに一部が接触または融合して、網目状や格子状等のネットワーク状構造を形成する。こうして複数の導電性パスが形成され、全体が連なった導電クラスターが形成される(パーコレーション導電理論)。そのような導電クラスターの導電性を高めるためには、ナノワイヤの密度が高いことが好ましい。一方で、透明性や柔軟性が求められる素子に用いる電極を得るためには、ナノワイヤの密度が一定以下であることが好ましい。具体的には、実施形態におけるナノワイヤの塗設量は、一般に、0.05~50g/m、好ましくは、0.1~10g/m、より好ましくは0.15~1g/mである。金属ナノワイヤの密度がこの範囲内であると、得られる導電性膜は十分な透明性と柔軟性と導電性とを両立できる。
【0018】
本実施形態においては、金属ナノワイヤは、通常、直径10~500nm、長さ0.1~50μmの金属ナノワイヤから構成されている。一般的には、導電クラスターが形成されやすいのは、より長いナノワイヤであり、導電性が大きいのは、直径のより大きなナノワイヤである。このように、ナノワイヤを用いることによってネットワーク状構造が形成されるため、ナノワイヤを含む導電性膜は金属の量は少ないものの全体として高い導電性を示す。
【0019】
ナノワイヤの直径が小さすぎる場合には、ナノワイヤ自体の電気抵抗が大きくなる傾向があり、一方、直径が大きすぎる場合には、光散乱等が増大して透明性が低下するおそれがあるので注意が必要である。こうした問題を回避するために、ナノワイヤの直径は、好ましくは10~500nm、より好ましくは20~150nm、特に好ましくは、30~120nmである。
【0020】
ナノワイヤの長さが短すぎる場合には、十分な導電クラスターが形成されず電気抵抗が高くなる傾向にあり、ナノワイヤの長さが長すぎる場合には、電極等を製造する際の溶媒への分散が不安定になる傾向にあるので注意が必要である。こうした問題を回避するために、ナノワイヤの長さは、好ましくは0.1~50μm、より好ましくは、1~40μm、特に好ましくは5~30μmである。なお、金属ナノワイヤの直径および長さは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)によって選られるSEM画像の解析により測定することができる。
【0021】
金属ナノワイヤは、任意の方法で製造することができる。例えば銀ナノワイヤは、銀イオンの水溶液を種々の還元剤を用いて還元することによって、製造することができる。用いる還元剤の種類、保護ポリマーまたは分散剤、共存イオンを選択することによって、銀ナノワイヤの形状やサイズを制御できる。銀ナノワイヤの製造には、還元剤としてはエチレングリコールなどの多価アルコールを用い、保護ポリマーとしてはポリビニルピロリドンやその誘導体を用いることが好ましい。こうした原料を用いることによって、ナノオーダーのいわゆるナノワイヤが得られる。
【0022】
導電性膜は、上記したナノワイヤだけで構成することができるが、その他の成分を含んでいてもよい。例えばポリマーを含むことができる。ポリマーは、種類によって金属ナノワイヤのバインダーとして機能したり、導電性膜と透明基材との接着性を改良して、導電性膜の剥離を抑制することができる。本実施形態においては、例えば接着性ポリマーをこのような用途で用いることができる。このような接着性ポリマーとしては極性基が導入されたポリオレフィン、アクリル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマーなどが挙げられる。しかしながら、導電性膜中のポリマー等の配合量が過度に高いと、導電性膜の電気抵抗を低下させる可能性もある。このような観点から、金属ナノワイヤ以外の成分の含有量は低いことが好ましい。具体意的には、導電性膜に含まれる金属ナノワイヤの含有率は、導電性膜の総質量を基準として95質量%以上であることが好ましい。
【0023】
また、導線性膜は、金属ナノワイヤ以外の導電性材料、例えば金属ナノ粒子や導電性酸化物ナノ粒子を含んでいてもよい。
【0024】
導電性層の厚さは特に限定されないが、十分な導電性を確保するためには厚いことが好ましく、十分な透明性を確保するためには一定以下の厚さであることが好ましい。このような観点から導電性層の厚さは、50~500nmであることが好ましく、100~300nmであることがより好ましい。
【0025】
また、本実施形態において、導電性膜と透明基材との間に、密着層を有していてもよい。そのような密着層を設けることによって、導電性膜が透明基材から剥離することを抑制することができる。このような密着層は、架橋性透明ポリマー、より具体的にはアクリル系ポリマー、メタクリル系ポリマー、エポキシ樹脂などを含むことができる。
【0026】
本実施形態において、電極層は、上記した導電性膜の上にN-グラフェン膜が積層されている。ここで、N-グラフェンとは、グラフェン炭素骨格の一部が窒素原子で置換されたものである。このようなN-グラフェン膜は、後述するように塗布法やCVD法によって形成させることができる。
【0027】
N-グラフェン膜の厚さは特に限定されないが、例えば2~50Å、好ましくは5~20Åである。このような薄いN-グラフェン膜は、グラフェンの単分子層(以下、単層グラフェン層という)が、平均で1層以上4層以下積層された構造を有することが好ましい。このような非常に薄いN-グラフェン膜によって、導電性の保護できることは驚くべきことである。N-グラフェン膜における窒素の含有量(N/C原子比)はXPSで測定することができ、0.1~30atom%であることが好ましく、1~10atom%であることがより好ましい。N-グラフェン層は遮蔽効果が高く、酸やハロゲンイオンの拡散を防ぐことにより金属ナノワイヤの劣化を低下することもできる。
本実施形態における透明電極は、比較的金属含有量が少ないものであるが、非常に高い導電性を有する。具体的には、透明電極層の表面抵抗が20Ω/□以下であることが好ましく、15Ω/□以下であることがより好ましい
【0028】
[実施形態2]
図2を用いて、第2の実施形態に係る透明電極の製造方法について説明する。図2(A)~(F)は、本実施形態に係る透明電極200の製造方法の概略図である。この電極の製造方法は、
(A)透明基材201の上に金属ナノワイヤを含有する分散液を塗布し、乾燥して導電性膜202を形成する工程と、
(B)前記導電性膜202の上にN-グラフェン膜203を形成する工程と、
(C)前記N-グラフェン膜203の上にフォトレジスト膜204を形成する工程と、
(D)前記フォトレジスト膜204に光を照射し、現像してフォトレジストのパターン204aを形成する工程と、
(E)前記パターン204aをマスクにして非マスク部をエッチングして、非マスク部の直下にあるN-グラフェン膜203および導電性膜202を除去する工程と、
(F)前記フォトレジストのパターン204aを除去する工程と、
を含む。
【0029】
(工程(A))
まず、透明基材201の上に金属ナノワイヤを含有する分散液を直接塗布して導電性膜202を形成させる。
【0030】
分散液を塗布する方法として、例えば、基材201と離間し、かつ平行に配置された塗布バーとの間に分散液を坦持し、バーまたは基材を移動させる方法(バーコート法)が挙げられる。
【0031】
基材と塗布バーとの間隔は基材の材質、塗布液の材質、塗布バーの種類によって調整することができる。分散液は基材と塗布バーとの隙間にノズルで供給したり、または塗布バーがノズルの機能を併せ持っていてもよい。
【0032】
そのほか、そのほか、ブラシコート法、スプレーコート法、ディップコート法など、目的に応じて任意の方法を用いることができる。例えばスプレーコート法においては、複数の固定ノズルを用いたり、ノズルを往復移動させることによって、大規模な塗布を行うことができる。
【0033】
金属ワノワイヤ分散液に含まれる分散媒としては、水、アルコール類、またはこれらの混合物が用いられる。これらの中では水は環境的に最も好ましく、安価である。ただし、分散媒が水のみであると、塗布法によって疎水性膜上に均一な塗膜を形成させることは一般に難しいので、水とアルコール等の有機溶媒との混合液を分散媒として用いることが好ましい。また、塗布を容易にするためには、疎水性膜を高温にした上で、ノズル塗布に代えてスプレー塗布することが好ましい。
【0034】
また、分散媒としてアルコール類を用いると、分散液の表面張力が小さいため疎水性膜上にも塗布しやすくなる。アルコール類のうち比較的低温で蒸発するものがより好ましく、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、またはこれらの混合分散媒が好ましい。水とこれらアルコールとの混合分散媒も使用することができる。分散媒中には分散剤が混合されていてもよい。分散剤としてはポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールやこれらの誘導体などの高分子化合物、t-ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノt―ブチルエーテルなどの低分子化合物が挙げられる。
【0035】
なお、分散液中に、金属ナノ粒子を含ませることもできる。例えば、銀ナノワイヤ分散液中には、銀ナノ粒子が含まれていてもよい。銀ナノワイヤと銀ナノ粒子とは凝集しやすく、銀ナノ粒子は接着材として作用して、銀ナノワイヤ同士を良好に接合する。その結果、導電フィルムとしての電気抵抗を下げる働きを有する。
【0036】
導電性膜202を形成させた後、必要に応じて加熱処理や減圧処理によって、分散媒の一部または全てを流去することもできる。
【0037】
(工程(B))
次に、工程Aで形成された導電性202の表面に、N-グラフェン膜203を形成させる。N-グラフェン膜は、任意の方法で形成させることができるが、塗布法によって形成させることが好ましい。塗布法によれば、大面積の電極を容易に得られ、またロール・ツー・ロール法を適用することも容易になる。
【0038】
典型的には、グラフェン炭素骨格の一部が窒素原子で置換されたN-グラフェンを分散媒中に分散させた分散液を導電性膜の上に塗布し、必要に応じて乾燥することによってN-グラフェン膜を得ることができる。ここで用いる塗布型のN-グラフェン膜は、例えば、アルキル鎖等で置換された酸化グラフェンを含む膜に対して、ヒドラジン化合物やアミン化合物、例えば水和ヒドラジンを加えて還元することによっても製造できる。
【0039】
グラフェンまたはN-グラフェンを含有する分散液に含まれる分散媒としては、水、アルコール類、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、クロルベンゼン、またはこれらの混合物と幅広い溶剤が用いられる。これらの中では水は環境的に最も好ましく、安価である。
【0040】
そのほか、塗布法以外の方法として、
(i)導電性膜の表面上に、メタンや水素などの基本原料に加えて、アンモニア、ピリジン、メチルアミン、エチレンジアミン、または尿素などの低分子窒素化合物を組み合わせて、化学蒸着法によってN-グラフェン膜を形成させる、
(ii)別の基材上にN-グラフェン膜を形成させた後、それを導電性膜の上に転写する、
(iii)導電性基材の表面に無置換グラフェン膜を形成させた後、窒素プラズマ中で処理して製造する、
などの方法で、N-グラフェン膜を製造することもできる。
【0041】
(工程(C))
次に、工程(B)で形成されたN-グラフェン膜203の表面に、フォトレジストを塗布して、フォトレジスト膜204を形成させる。ここで用いられるフォトレジストは特に限定されず、従来知られている任意の材料を用いることができる。ただし、フォトレジストはN-グラフェン膜に直接接触するため、N-グラフェン膜を溶解したり、N-グラフェン骨格にダメージを与えないものを採用すべきである。また、シート状に成形されているレジストフィルムを用い、それを電極層の上に貼り付けることでフォトレジスト膜を形成することもできる。
【0042】
(工程(D))
次に、形成されたフォトレジスト膜を、リソグラフィー法などによって加工をして、パターン204aを形成させる。具体的には、光や電子線などの活性エネルギー線をフォトレジスト膜204の表面に像様に照射して露光し、必要に応じて露光後加熱を行った後、現像液で現像し、レジストパターン204aを形成させる。
【0043】
(工程(E))
次に、工程(D)で形成されたレジストパターン204aをエッチングマスクとして用い、レジストパターン204aの下層にある金属ナノワイヤ層203ならびにグラフェン層204をエッチング液を用いてエッチングする。このエッチング処理によって、レジストパターンの存在しない領域、すなわち非マスク部の直下にあるN-グラフェン膜および導電性層が除去される。エッチング液は導電性層202に含まれる金属ナノワイヤに化学的に作用するものであるが、N-グラフェン膜203は、例えば10Å程度の超薄膜であるため物理的に離型し、レジストパターン204aの形状が導電性層202ならびにN-グラフェン膜203に転写される。
【0044】
(工程(F))
次に、工程(E)で形成されたパターンの最表面にあるレジストパターン204aをレジスト剥離液を用いて剥離する。これによって、導電性層202aならびにN-グラフェン膜203aが積層された電極のパターンが形成される。
以上の方法によって、本実施形態による透明電極を製造することができる。
【0045】
[実施形態3-1]
図3を用いて、第3の実施形態に係る光電変換素子(太陽電池素子)について説明する。
【0046】
図3の光電変換素子300は透明基材301の上に金属ナノワイヤを含有する導電性膜302とN-グラフェン膜303からなる複数の電極層が、銀ナノワイヤおよびグラフェンのない領域で分離されている。その上に光電変換層304と対向電極305があり、対向電極305と隣のセルの透明電極はブリッジ電極306で接続され、各セルが直列に接続されている。
【0047】
光電変換素子300は、このセルに入射してきた太陽光L等の光エネルギーを電力に変換する太陽電池としての機能を有する素子である。太陽光Lが透明電極側のみから入射する場合、対向電極は不透明であってもよいし透明であってもよい。透明である場合には、対向電極が実施形態による透明電極であってもよい。
【0048】
光電変換層304は、入射してきた光の光エネルギーを電力に変換して電流を発生させる半導体層である。光電変換層304は、一般に、p型の半導体層とn型の半導体層とを具備している。光電変換層としてはp型ポリマーとn型材料との積層体、ABXで示されるペロブスカイト型(ここでAは一価のカチオン、Bは二価のカチオン、Xはハロゲンイオンである)、シリコン半導体、InGaAsやGaAsやカルコパイライト系やCdTe系やInP系やSiGe系などの無機化合物半導体、量子ドット含有型、さらには色素増感型の透明半導体を用いてもよい。いずれの場合も効率が高く、より出力の劣化を小さくできる。
【0049】
光電変換層304と電極層の間には電荷注入を促進またはブロックするためにさらにバッファ層等が挿入されていてもよい。
【0050】
陽極用バッファ層や電荷輸送層としては例えばバナジウム酸化物、PEDOT/PSS、p型ポリマー、五酸化バナジウム(V)、2,2’,7,7’-Tetrakis[N,N-di(4-methoxyphenyl)amino]-9,9’- spirobifluorene(Spiro-OMeTAD)、酸化ニッケル(NiO)、三酸化タングステン(WO)、三酸化モリブデン(MoO)等からなる層を用いることができる。
【0051】
一方、陰極用のバッファ層や電荷輸送層としてはフッ化リチウム(LiF)、カルシウム(Ca)、6,6’-フェニル-C61-ブチル酸メチルエステル(6,6’-phenyl-C61-butyric acid methyl ester、C60-PCBM)、6,6’-フェニル-C71-ブチル酸メチルエステル(6,6’-phenyl-C71-butyric acid methyl ester、C70-PCBM)、インデン-C60ビス付加体(Indene-C60 bisadduct、ICBA)、炭酸セシウム(CsCO)、二酸化チタン(TiO)、poly[(9,9-bis(3’-(N,N-dimethylamino)propyl)-2,7-fluorene)-alt-2,7-(9,9-dioctyl- fluorene)](PFN)、バソクプロイン(BCP)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、ポリエチンイミン等からなる層を用いることができる。
【0052】
本実施形態の光電変換素子は、光電池、太陽電池セルなどのほか、光センサーとしても使用できる。ここで光としては赤外線から紫外線、γ線まで広い波長の光を選択することができる。
【0053】
実施形態による光電変換素子には、紫外線カット層、またはガスバリア層をさらに具備することができる。紫外線カット層に含まれる紫外線吸収剤の具体例としては、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ第3ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-第3オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物;フェニルサリチレート、p-オクチルフェニルサリチレート等のサリチル酸エステル系化合物が挙げられる。これらは400nm以下の紫外線をカットするものであることが望ましい。
【0054】
ガスバリア層としては特に水蒸気と酸素を遮断するものが好ましく、特に水蒸気を通しにくいものが好ましい。例えば、SiN、SiO、SiC、SiO、TiO、Alの無機物からなる層、超薄板ガラス等を好適に利用することができる。ガスバリア層の厚みは特に制限されないが、0.01~3000μmの範囲であることが好ましく、0.1~100μmの範囲であることがより好ましい。0.01μm未満では十分なガスバリア性が得られない傾向にあり、他方、前記3000μmを超えると重厚化しフレキシブル性や柔軟性等の特長が消失する傾向にある。ガスバリア層の水蒸気透過量(透湿度)としては、10g/m・d~10-6g/m・dが好ましく、より好ましくは10g/m・d~10-5g/m・dであり、さらに好ましくは1g/m・d~10-4g/m・dである。尚、透湿度はJIS Z0208等に基づいて測定することができる。ガスバリア層を形成するには、乾式法が好適である。乾式法によりガスバリア性のガスバリア層を形成する方法としては、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、誘導加熱蒸着、及びこれらにプラズマやイオンビームによるアシスト法などの真空蒸着法、反応性スパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、ECR(電子サイクロトロン)スパッタリング法などのスパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理的気相成長法(PVD法)、熱や光、プラズマなどを利用した化学的気相成長法(CVD法)などが挙げられる。中でも、真空下で蒸着法により膜形成する真空蒸着法が好ましい。
【0055】
[実施形態3―2]
図4を用いて、別の実施形態に係る光電変換素子(有機EL素子400)の構成について説明する。有機EL素子400は、この素子に入力された電気エネルギーを光Lに変換する発光素子としての機能を有する素子である。
【0056】
有機EL素子400は、実施形態による透明電極401と、光電変換層403と、対向電極402とを具備する。そして、透明電極401は、透明基板401a、導電性膜401b、およびN-グラフェン膜401cを具備している。
【0057】
光電変換層403は、電力を変換して光を発生させる半導体層である。光電変換層403は、一般に、p型の半導体層とn型の半導体層とを具備している。光電変換層403と電極の間には電荷注入を促進またはブロックするためにさらにバッファ層が挿入されていてもよい。
【0058】
そして、本実施形態による透明電極は、パターン化された電極層を有している。図4において図示されている複数の電極層が、それぞれ独立しており、それぞれの電極層に担持される光電変換層に、独立に電気エネルギーを供給することによって、この光電変換素子は、画像を表示することが可能となる。
【0059】
実施形態を諸例を用いて説明すると以下の通りである。
【0060】
(実施例1)
直径70nm、長さ15μmの銀ナノワイヤを水に分散させ0.3質量%の分散液を作製する。PETフィルム上にPMMA膜をコートして透明基材とする。PMMA膜上に上記銀ナノワイヤ分散液を塗布バーを用いて塗布してシート抵抗が約10Ω/□の導電性膜を作製する。
【0061】
導電性膜上にポリエチレンイミン鎖が結合したN-グラフェンのエタノール分散液を塗布バーを用いて塗布し、100℃で10分加熱する。
【0062】
ノボラック系のフォトレジストフィルムをN-グラフェン上に貼り付ける。露光、現像によりフォトレジストをパターニングする。残ったフォトレジストをマスクとして酸を用いてエッチング処理を行い、導電性層の非マスク部の直下にある電極層を除去する。水洗後、さらにアルカリ性剥離液で、マスクとしたレジストを剥離し、水洗することにより図1で示すような透明電極を作製する。導電部のシート抵抗は10Ω/□と変化がなく、パターン型性によって電極層がダメージを受けていないことが確認できる。
【0063】
(比較例1)
N-グラフェン膜の形成工程を省略することを除いては実施例1と同様にして透明電極を作製する。電極層の剥離が見られ、導電性も失われる。
【0064】
(比較例2)
N-グラフェンの代わりに酸化グラフェンを用いることを除いては実施例1と同様にして透明電極を作製する。酸化グラフェンを含む膜は、酸化していないグラフェン部分と酸化が進行した部分とを含んでいる。比較例2の透明電極は電極層の一部に剥離が見られ、導電性も低下する。
【0065】
(実施例2)
銅箔上にメタン、水素、アンモニアガスから1000℃で熱CVD法で形製されたN-グラフェン膜上にPMMA膜を塗布し、銅を酸で溶解する。
直径30nm、長さ8μmの銀ナノワイヤを水に分散させ0.3wt%の分散液を作製する。エタノールで表面を洗浄したPETフィルム上に上記銀ナノワイヤ分散液を塗布バーを用いて塗布してシート抵抗が約10Ω/□の導電性膜を作製する。
【0066】
導電層の上にN-グラフェン/PMMA膜をラミネートする。酢酸エチルでPMMA膜を溶解させ、銀ナノワイヤを含む導電性膜の上にN-グラフェン層を作製する。
【0067】
ノボラック系のフォトレジストフィルムをN-グラフェン上に張り付ける。露光、現像によりフォトレジストをパターニングする。残ったフォトレジストをマスクとして非マスク部を酸を用いて銀ナノワイヤをエッチングする。水洗により銀ナノワイヤとその上部のグラフェンを除去して分離領域を作製する。アルカリ性の剥離液で残ったレジストを剥離、水洗することにより図1で示すような透明電極を作製する。導電部のシート抵抗は10Ω/□と変化がない。
【0068】
(比較例3)
銅箔上にメタン、水素ガスから1000℃で熱CVD法で形製された無置換グラフェン膜上にPMMA膜を塗布し、銅を酸で溶解する。この無置換グラフェン膜を用いることを除いては実施例2と同様にして透明電極を作製する。電極層に見かけ上の剥離は見られないが、導電性が若干低下し、導電性層が一部劣化している。
【0069】
(実施例3)
図3で示すような半透明な太陽電池を作成する。
【0070】
実施例1で得られる透明電極上に、PEDOT・PSSの水溶液をバーコーターで塗布し、100℃で30分乾燥してPEDOT・PSSを含む正孔輸送層(50nm厚)を形成させる。
【0071】
正孔輸送層上にポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)(P3HT)とC60-PCBMとを含むクロルベンゼン溶液をバーコーターで塗布し、100℃で20分乾燥することにより光電変換層を製造する。
【0072】
光電変換層の上に電子輸送層として酸化スズのナノ粒子のエタノール分散液をバーコーターで塗布して乾燥させ、電子輸送層を形成させる。
【0073】
直径70nmの銀ナノワイヤを水に分散させ0.3質量%の分散液を作製する。10cm角の厚さ100μmのポリテトラフルオロエチレンシートを120℃の台の上に設置し、銀ナノワイヤ水性分散液をスプレー塗布して導電性膜を形成させる。
【0074】
100℃に加熱されたプレートの上に銀ナノワイヤ層が上になるようにポリテトラフルオロエチレンシートを置き、酸化スズの電子輸送層と接するように金属ローラーを転がして端から圧着、剥離を行い導電性膜を転写させる。
【0075】
次に下地の分離領域層に従って、上部の膜をメカニカルスクライブする。次に断面に絶縁層、次に銅をスパッタして金属配線層を製造する。これにより短冊状のセルは直列に配線される。
【0076】
全体を熱硬化性のシリコーン樹脂でコートした後加熱して厚さ40μmの絶縁層を製造する。絶縁層の上に紫外線カットインクをスクリーン印刷して紫外線カット層を製造する。紫外線カット層の上にCVDでシリカ層を製膜しガスバリア層を製造する。さらに周りを封止することにより太陽電池モジュールを製造する。
【0077】
得られる太陽電池モジュールは半透明であり、1SUNの擬似太陽光に対して4%以上のエネルギー変換効率を示す。また大気中、60℃、連続1000時間の擬似太陽光照射で効率の低下は2%以内である。
【符号の説明】
【0078】
100…透明電極
101…透明基材
102…電極層
102a…導電性膜
102b…N-グラフェン膜
200…透明電極
201…透明基材
202…導電性膜
203…N-グラフェン膜
204…レジスト膜
204a…レジストパターン
300…光電変換素子
301…透明基材
302…導電性膜
303…N-グラフェン膜
304…光電変換層
305…対向電極
306…ブリッジ電極
図1
図2
図3
図4