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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】部品実装装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/02 20060101AFI20230324BHJP
   H05K 13/08 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
H05K13/02 C
H05K13/08 Q
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019096474
(22)【出願日】2019-05-23
(65)【公開番号】P2020191391
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】池田 徹
(72)【発明者】
【氏名】中村 光男
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-227402(JP,A)
【文献】特開2005-064366(JP,A)
【文献】特開2014-093380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を供給する複数の部品供給ユニットがそれぞれ着脱可能にセットされる複数の供給ユニット保持部と、前記複数の部品供給ユニットのそれぞれから供給された部品を部品取出位置にて取り出して基板に装着する装着ヘッドとを備えた部品実装装置において、
前記複数の部品供給ユニットのうちの1つの部品供給ユニットの前記部品取出位置の近傍の所定範囲に設定された領域に前記部品が正常でない状態で存在することを推認させる特定の事象を検知する特定事象検知手段と、
前記特定事象検知手段によって前記特定の事象が発生したことを検知したら、前記1つの部品供給ユニットに隣接する部品供給ユニットの部品取出位置を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された画像に基づき、前記隣接する部品供給ユニットの前記領域に前記部品が正常でない状態で存在するか否かを検知する部品検知手段とを備えた、部品実装装置。
【請求項2】
前記特定事象検知手段は、前記1つの部品供給ユニットから供給された部品を前記装着ヘッドが取り出す際にエラーが発生したことを検知する取出エラー検知手段であり、
前記撮像手段は、前記取出エラー検知手段によって前記エラーが発生したことを検知したら、前記1つの部品供給ユニットに隣接する部品供給ユニットの部品取出位置を撮像し、
前記部品検知手段は、前記撮像手段によって撮像された画像に基づき、前記隣接する部品供給ユニットの前記領域に前記エラーが発生した際に落下した部品が存在するか否かを検知する落下部品検知手段である、請求項1に記載の部品実装装置。
【請求項3】
前記特定事象検知手段は、前記供給ユニット保持部において1つの部品供給ユニットが引き抜かれた若しくは取り付けられた着脱動作を検知する部品供給ユニット着脱検知手段であり、
前記撮像手段は、前記部品供給ユニット着脱検知手段によって前記着脱動作が実行されたことを検知したら、前記1つの部品供給ユニットに隣接する部品供給ユニットの部品取出位置を撮像し、
前記部品検知手段は、前記撮像手段によって撮像された画像に基づき、前記隣接する部品供給ユニットの前記領域に前記着脱動作の際に前記1つの部品供給ユニットから移動した部品が存在するか否かを検知する移動部品検知手段である、請求項1に記載の部品実装装置。
【請求項4】
前記部品検知手段によって前記領域に正常でない状態で存在する部品を検知したらその旨を通知する通知手段をさらに備えた、請求項1から3のいずれかに記載の部品実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品供給ユニットから供給された部品を基板に装着する部品実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
実装基板を製造する基板実装ラインに配置された部品実装装置では、テープフィーダなどの部品供給ユニットから装着ヘッドによって部品を取り出して基板に装着する部品実装動作が反復して実行される。この部品実装動作における部品供給では、部品供給ユニットから部品が正常に取り出されない部品供給の異常が発生する場合があり、従来よりこのような異常発生時の対処機能を備えた部品実装装置が開示されている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1に示す先行技術では、異常が発生した部品供給ユニットの部品取出位置を部品実装装置が備えた基板認識カメラによって撮像することにより発生した異常の状態を把握し、その画像をモニタに表示するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-199445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
部品実装装置では複数の部品供給ユニットが並列状態で隣接配置される。1つの部品供給ユニットで部品吸着ミスによる部品落下などの異常が発生すると、その影響は当該部品供給ユニットのみならず隣接した部品供給ユニットにも及ぶ場合がある。このため、1つの部品供給ユニットにおいて異常発生が検知された場合には、隣接する部品供給ユニットを含めて監視対象とすることが望ましい。しかしながら上述の先行技術を含め、従来技術においては異常発生時に監視対象となる範囲は、異常が発生した当該部品供給ユニットに限定されていた。このため、異常発生時に必要とされる監視や異常の他への波及防止を十分に実行することができなかった。
【0005】
そこで本発明は、1つの部品供給ユニットにおいて異常発生が検知された場合に隣接する部品供給ユニットを含めて監視対象とすることができる部品実装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の部品実装装置は、部品を供給する複数の部品供給ユニットがそれぞれ着脱可能にセットされる複数の供給ユニット保持部と、前記複数の部品供給ユニットのそれぞれから供給された部品を部品取出位置にて取り出して基板に装着する装着ヘッドとを備えた部品実装装置において、前記複数の部品供給ユニットのうちの1つの部品供給ユニットの前記部品取出位置の近傍の所定範囲に設定された領域に前記部品が正常でない状態で存在することを推認させる特定の事象を検知する特定事象検知手段と、前記特定事象検知手段によって前記特定の事象が発生したことを検知したら、前記1つの部品供給ユニットに隣接する部品供給ユニットの部品取出位置を撮像する撮像手段と、前記撮像手段によって撮像された画像に基づき、前記隣接する部品供給ユニットの前記領域に前記部品が正常でない状態で存在するか否かを検知する部品検知手段とを備えた。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、1つの部品供給ユニットに異常発生が検知された場合に隣接する部品供給ユニットを含めて監視対象とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態の部品実装装置の構成を示す平面図
図2】本発明の一実施の形態の部品実装装置の断面図
図3】本発明の一実施の形態の部品実装装置における特定事象検知手段の構成および機能の説明図
図4】本発明の一実施の形態の部品実装装置における部品供給ユニットの部品取出位置を示す図
図5】本発明の一実施の形態の部品実装装置の制御系の構成を示すブロック図
図6】本発明の一実施の形態の部品実装装置における落下部品検知手段の説明図
図7】本発明の一実施の形態の部品実装装置における移動部品検知手段の説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず図1図2を参照して部品実装装置1の構造について説明する。部品実装装置1は、部品を供給する複数の部品供給ユニットであるテープフィーダ5がそれぞれ着脱可能にセットされる複数のフィーダベース4a(供給ユニット保持部)を備え、複数のテープフィーダ5のそれぞれから供給された部品をテープフィーダ5に設けられた部品取出位置5aにて取り出して、基板3に装着する装着ヘッドとを備えた構成となっている。
【0010】
図1において、基台1aの中央部には、X方向(基板搬送方向)に基板搬送機構2が配設されている。基板搬送機構2は、上流側から搬入された基板3を搬送し、以下に説明する部品実装機構による作業位置に位置決めする。基板搬送機構2の両側には、実装対象の部品を供給する部品供給部4が配置されている。
【0011】
図2に示すように、部品供給部4においてY方向に並列して設けられたフィーダベース4aには、部品を供給する複数の部品供給ユニットとしてのテープフィーダ5がそれぞれ着脱自在にセットされる。テープフィーダ5は、キャリアテープに保持された部品を以下に説明する部品実装機構による部品取出位置5aまでピッチ送りする機能を有している。
【0012】
基台1a上面のX方向の1端部上にはY軸移動テーブル6が配設されており、Y軸移動テーブル6には2台のX軸移動テーブル7がY方向にスライド自在に結合されている。X軸移動テーブル7にはそれぞれ装着ヘッド8がX方向にスライド自在に装着されている。装着ヘッド8は複数の単位実装ヘッド9より成る多連型ヘッドであり、単位実装ヘッド9の下端部に装着された吸着ノズル9a(図2参照)によってテープフィーダ5の部品取出位置5aから実装対象の部品を真空吸着によって保持する。Y軸移動テーブル6およびX軸移動テーブル7は装着ヘッド8を移動させるヘッド移動機構を構成し、ヘッド移動機構を駆動することにより、装着ヘッド8は部品供給部4と基板搬送機構2に位置決めされた基板3との間で移動する。装着ヘッド8および装着ヘッド8を移動させるヘッド移動機構は、部品供給部4から部品を取り出して基板3に実装する部品実装機構を構成する。
【0013】
図2に示すように、X軸移動テーブル7の下面には、それぞれ装着ヘッド8と一体的に移動する基板認識カメラ10が装着されている。ヘッド移動機構を駆動して基板認識カメラ10を基板搬送機構2に保持された基板3の上方へ移動させることにより、基板認識カメラ10は基板3に形成された認識マークを撮像する。また基板認識カメラ10を部品供給部4に移動させ、テープフィーダ5の部品取出位置5aの上方に位置させることにより基板認識カメラ10は部品取出位置5aを撮像する(図3参照)。
【0014】
部品供給部4と基板搬送機構2との間の装着ヘッド8の移動経路には、部品認識カメラ11が配設されている。部品供給部4から部品を取り出した装着ヘッド8が部品認識カメラ11の上方に位置することにより、部品認識カメラ11は装着ヘッド8に保持された状態の部品を撮像する。
【0015】
基板認識カメラ10、部品認識カメラ11によって取得された画像は、認識処理部25(図5参照)によって認識処理される。前述の部品実装機構による部品実装動作においては、基板認識カメラ10によって基板3を撮像した画像の認識結果と部品認識カメラ11によって部品を撮像した画像の認識結果とを加味して、部品Pの基板3の実装点に対する位置合わせが補正される。
【0016】
図3は、装着ヘッド8をテープフィーダ5の上方に位置させて部品取出位置5aから部品Pを取り出す際の状態を示している。すなわち単位実装ヘッド9に部品取出位置5aからの部品の取り出しに際しては、吸着ノズル9aを部品取出位置5aに対して位置合わせして部品取出位置5a内で露呈されたキャリアテープ14の部品ポケット14aから吸着ノズル9aによって部品Pを吸着して取り出す。
【0017】
このとき、装着ヘッド8に装着されたそれぞれの単位実装ヘッド9には、吸着エラー検出部26が設けられている。吸着エラー検出部26は、1つのテープフィーダ5から供給された部品Pを単位実装ヘッド9が取り出す際にエラーが発生したことを検知する取出エラー検知手段であり、各単位実装ヘッド9において吸着ノズル9aによる部品Pの真空吸着による取り出しが正常に行われたか否かを検出できるようになっている。
【0018】
また部品供給部4には、それぞれのフィーダベース4aにテープフィーダ5が装着されているか否かを検出するフィーダ装着検出センサ27が設けられており、単位実装ヘッド9による実装動作の対象位置にテープフィーダ5が正常に存在するか否かを検出することができるようになっている。
【0019】
図4は、部品供給部4においてテープフィーダ5を基板認識カメラ10によって撮像した画面を示している。図4(a)に示すように、並列して配置されたそれぞれのテープフィーダ5の先端部には、部品取出位置5aが開口して設けられている。部品取出位置5aの内部にはキャリアテープ14に形成された複数の部品ポケット14aのうち部品取り出し対象として部品取出位置5aに送られてカバーテープが剥離された露呈状態の部品ポケット14aが位置している。単位実装ヘッド9による部品取り出し動作では、このような露呈状態の部品ポケット14aを対象として吸着ノズル9aによる部品取り出しが行われる。
【0020】
この部品取り出し動作においては、部品ポケット14a内に収納された部品Pが常に正しい姿勢で吸着ノズル9aによって取り出されるとは限らない。例えば部品ポケット14a内の部品Pが吸着ノズル9aによって不安定な状態のまま吸着された後、吸着ノズル9aの移動に際して吸着状態から外れて隣接するテープフィーダ5に落下することが考えられる。
【0021】
また、テープフィーダ5の交換に際して、部品Pが部品ポケット14aに不安定な状態で収納されていた場合には、テープフィーダ5の抜き差し時の衝撃などによって部品ポケット14aから部品Pが跳び出して、同様に隣接するテープフィーダ5に落下することも考えられる。そしてこのようにして落下した部品Pが次回の取り出し対象の部品ポケット14aの近傍に存在すると、部品相互の干渉により正常な部品取り出しが阻害されて部品取り出しエラーの要因となる。このように、複数のテープフィーダ5が近接して配列された部品供給部4からの部品取り出しにおいては、直接に部品取り出しの対象となるテープフィーダ5の状態のみならず、当該テープフィーダ5に隣接するテープフィーダ5における部品Pの状態をも考慮する必要がある。
【0022】
本実施の形態では、このような隣接するテープフィーダ5への部品Pの不正常な移動に起因する部品取り出しエラーを防止するために、図4(b)に示すように、各テープフィーダ5において部品取出位置5aの周囲の所定範囲に、不要な部品Pが正常でない状態で存在するか否かをサーチするための領域Rを設定するようにしている。
【0023】
そして部品取り出し動作においては、部品実装シーケンスにて部品取り出し対象となるテープフィーダ5について、部品Pが正常でない状態で存在することを推認させる特定の事象が検知されたならば、部品取り出し対象となるテープフィーダ5のみならず、当該テープフィーダ5に隣接するテープフィーダ5の領域Rに部品Pが正常でない状態で存在するか否かを検知するようにしている。
【0024】
すなわち本実施の形態においては、複数の部品供給ユニットであるテープフィーダ5のうちの1つのテープフィーダ5の部品取出位置5aの近傍の所定範囲に設定された領域Rに部品Pが正常でない状態で存在することを推認させる特定の事象を検知する特定事象検知手段と、特定事象検知手段によって特定の事象が発生したことを検知したら、当該1つのテープフィーダ5に隣接するテープフィーダ5の部品取出位置5aを撮像する撮像手段としての基板認識カメラ10によってによって撮像された画像に基づき、隣接するテープフィーダ5の領域Rに部品Pが正常でない状態で存在するか否かを検知する部品検知手段とを備えた構成となっている。
【0025】
ここでは、後述するように、このような特定事象検知手段が、1つのテープフィーダ5から供給された部品を装着ヘッド8が取り出す際にエラーが発生したことを検知する取出エラー検知手段である例(図6参照)、フィーダベース4aにおいて1つのテープフィーダ5が引き抜かれた若しくは取り付けられた着脱動作を検知するフィーダ装着検出センサ27(部品供給ユニット着脱検知手段)である例(図7参照)を例示している。
【0026】
次に図5を参照して、部品実装装置1の制御系の構成を説明する。図5において、部品実装装置1は制御部20、記憶部21、機構駆動部24、認識処理部25、吸着エラー検出部26、フィーダ装着検出センサ27、操作・入力部30、表示部31、報知部32を備えている。制御部20は、記憶部21に記憶された各種のプログラムやデータに基づいて機構駆動部24を制御することにより、部品実装装置1の各部による部品実装作業のための作業動作を実行させる。記憶部21には、部品実装動作を規定する実装データ22のほか、図4(b)に示す領域Rの範囲を規定する領域データ23が含まれている。
【0027】
機構駆動部24は、制御部20に制御されて基板搬送機構2、部品供給部4、装着ヘッド8、Y軸移動テーブル6、X軸移動テーブル7よりなるヘッド移動機構を駆動する。認識処理部25は、基板認識カメラ10、部品認識カメラ11によって取得された画像を認識処理する。
【0028】
装着ヘッド8による部品実装動作においては、認識処理部25による部品認識結果を反映させてヘッド移動機構が位置制御される。また本実施の形態においては、認識処理部25は撮像手段としての基板認識カメラ10、部品認識カメラ11によって撮像された画像に基づき、隣接するテープフィーダ5の領域R(図4(b)参照)に部品Pが正常でない状態で存在するか否かを検知する部品検知手段としての機能を有している。
【0029】
吸着エラー検出部26は取出エラー検知手段であり、1つのテープフィーダ5から供給された部品Pを単位実装ヘッド9が取り出す際にエラーが発生したことを検知する。これにより、各単位実装ヘッド9において吸着ノズル9aによる部品Pの真空吸着による取り出しが正常に行われたか否かを検出できる。フィーダ装着検出センサ27は、部品供給部4が備えたそれぞれのフィーダベース4aにテープフィーダ5が装着されているか否かを検出する機能を有している。後述するように実施の形態では、フィーダ装着検出センサ27の検出結果に基づいて、部品Pが隣接するテープフィーダ5へ移動する可能性を有無を推認するようにしている。
【0030】
操作・入力部30は、キーボードなどの入力装置であり、部品実装装置1への操作コマンドやデータ入力のための入力操作を行う。表示部31は、液晶などの表示パネルであり、部品実装装置1の操作に必要な各種項目の表示を行う。報知部32はシグナルライトやブザーなどの報知手段であり、異常報知など部品実装装置1の稼働状態において必要な報知を行う。なお報知部32は、前述の部品検知手段によってテープフィーダ5の領域Rに正常でない状態で存在する部品Pを検知したら、その旨を作業者に通知する通知手段としての機能を有している。
【0031】
まず図6を参照して、一旦吸着ノズル9aによって持ち上げられた部品Pが吸着ノズル9aの移動の過程で落下することによって生じる不具合について説明する。吸着ノズル9aによる部品Pの取り出しでは、取り出し対象のテープフィーダ5*の上方に吸着ノズル9aを移動させる。次いで吸着ノズル9aに部品取り出しのための昇降動作を行わせて(矢印a)、部品ポケット14aから部品Pを取り出し、部品Pを保持した吸着ノズル9aを基板3の実装点に向かって移動させる(矢印b)。
【0032】
このとき、部品Pを取り出す際に吸着ノズル9aによって部品Pが正常に吸着保持されずに吸着ノズル9aから落下する(例えば矢印c参照)場合がある。このような場合には、部品Pは部品取り出し対象のテープフィーダ5*に位置せずテープフィーダ5*に隣接する部品取出位置5a、5B上に散逸して落下する場合がある。この場合には、制御部20は吸着エラー検出部26によってエラーが発生したことを検知したら、撮像手段である基板認識カメラ10を移動させて、対象となる1つのテープフィーダ5*のみならず、テープフィーダ5*に隣接するテープフィーダ5(ここに示す例では、テープフィーダ5*の両側に位置するテープフィーダ5A、テープフィーダ5B)の部品取出位置5aを撮像する。
【0033】
そして図6(b)に示すように、取得した画像を順次認識処理部25によって認識処理することにより、各テープフィーダ5(ここでは、テープフィーダ5*、テープフィーダ5A、テープフィーダ5B)の領域Rの内部に、部品Pが正常でない状態で存在するか否かを検知する。ここで領域Rの内部に、該当する部品Pが検知された場合には、報知部32によってその旨を作業者に報知する。その旨の報知を承けた作業者は、正常でない状態で存在する部品Pを除去するなどの処置を実行する。
【0034】
すなわち本実施の形態では、複数のテープフィーダ5のうち1つのテープフィーダ5の部品取出位置5aの近傍の所定範囲に設定された領域Rに部品Pが正常でない状態で存在することを推認させる特定の事象が検知されたと判断したならば、基板認識カメラ10によるサーチを実行するようにしている。ここでは、テープフィーダ5A、テープフィーダ5Bの上方に基板認識カメラ10が位置するように装着ヘッド8を移動させ、基板認識カメラ10によってテープフィーダ5A、テープフィーダ5Bを順次撮像する。
【0035】
図6に示す実施例では、基板認識カメラ10によって撮像された画像に基づき隣接するテープフィーダ5の領域Rにエラーが発生した際に落下した部品Pが存在するか否かを検知する落下部品検知手段が、前述の部品検出手段となっている。このように、隣接するテープフィーダ5から落下した部品Pを含めて吸着ミススに起因して落下した部品Pを検出することにより、誤った部品を取り出して実装する誤実装の発生を有効に防止することが可能となっている。
【0036】
次に図7を参照して、前述の特定事象検知手段が、フィーダベース4aにおいて1つのテープフィーダ5が引き抜かれた若しくは取り付けられた着脱動作を検知するフィーダ装着検出センサ27(部品供給ユニット着脱検知手段)である場合の例を説明する。図7に示す実施例では、フィーダベース4aにおいて1つのテープフィーダ5が引き抜かれた若しくは取り付けられた着脱動作を検知するフィーダ装着検出センサ27(部品供給ユニット着脱検知手段)である例(図7参照)を例示している。
【0037】
部品取出位置5a内において部品Pは必ずしも安定した姿勢で部品ポケット14a内に収納されているとは限らず、図7(a)に示すテープフィーダ5*のように、部品ポケット14aから部品Pが外れかかった不安定な状態となっている場合がある。このような状態において、図7(b)に示すようにテープフィーダ5*の着脱動作(矢印e参照)を行うと、外れかかった状態の部品Pが着脱時の抜き差しによる衝撃によって跳びはね現象を生じ、隣接したテープフィーダ5に移動する現象が生じる場合がある。図7に示す例では、テープフィーダ5*に不安定な状態で存在していた部品Pが、テープフィーダ5*の着脱動作によって隣接するテープフィーダ5Aに移動した状態を示している。
【0038】
図7に示す実施例では、テープフィーダ5*の着脱動作の実行をフィーダ装着検出センサ27によって検知することを以て、複数のテープフィーダ5のうち1つのテープフィーダ5の部品取出位置5aの近傍の所定範囲に設定された領域Rに部品Pが正常でない状態で存在することを推認させる特定の事象が検知されたと判断する。そしてこの特定の事象の検知を承けて、図6に示す例と同様に、基板認識カメラ10によるサーチを実行し、撮像された画像に基づき隣接するテープフィーダ5の部品取出位置5aの領域Rに部品Pが正常でない状態で存在するか否かを部品検知手段によって検知する。
【0039】
図7に示す実施例においては、この部品検知手段は、基板認識カメラ10によって撮像された画像に基づき、隣接するテープフィーダ5の領域Rにテープフィーダ5の着脱動作の際にフィーダベース4aに装着された複数のテープフィーダ5のうちの1つのテープフィーダ5から移動した部品Pが存在するか否かを、認識処理部25の画像認識処理機能により検知する移動部品検知手段である。図7に示す例においても、図6に示す例と同様に、隣接するテープフィーダ5から移動した部品Pを検出することにより、誤った部品を取り出して実装する誤実装の発生を有効に防止することが可能となっている。
【0040】
なお上述の図6図7に示す実施例では、検出対象となる特定事象として、吸着ノズル9aの保持不安定に起因する部品落下、フィーダ着脱時の振動や衝撃による部品Pの跳び移りのみを例示しているが、領域Rに部品Pが正常でない状態で存在することを推認させる特定の事象はこれらに限定されるものではない。例えば、キャリアテープ14の補給方式として既装着のテープに新たなテープを継合するスプライシング方式を採用する場合においては、テープ継合部において部品Pの収納保持状態が不安定となりやすい。このような場合にあっても、テープ継合部が通過するタイミングを同様に特定事象として予め設定しておくことにより、同様の効果を得ることができる。
【0041】
上記説明したように、本実施の形態に示す部品実装装置では、部品Pを供給する複数のテープフィーダ5がそれぞれ着脱可能にセットされる複数のフィーダベース4aと、複数のテープフィーダ5のそれぞれから供給された部品Pを部品取出位置5aにて取り出して基板3に装着する装着ヘッド8とを備えた部品実装装置1において、複数のテープフィーダ5のうちの1つのテープフィーダ5の部品取出位置5aの近傍の所定範囲に設定された領域Rに部品Pが正常でない状態で存在することを推認させる特定の事象を検知する特定事象検知手段と、特定事象検知手段によって特定の事象が発生したことを検知したら、1つのテープフィーダ5に隣接するテープフィーダ5の部品取出位置5aを撮像する基板認識カメラ10と、基板認識カメラ10によって撮像された画像に基づき、隣接するテープフィーダ5の領域Rに部品Pが正常でない状態で存在するか否かを検知する部品検知手段とを備えた構成としている。これにより、部品供給ユニット保持部に複数の部品供給ユニットが装着された構成において、1つの部品供給ユニットに異常発生が検知された場合に隣接する部品供給ユニットを含めて監視対象とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の部品実装装置は、1つの部品供給ユニットに異常発生が検知された場合に隣接する部品供給ユニットを含めて監視対象とすることができるという効果を有し、部品供給ユニットから装着ヘッドによって部品を取り出して基板に装着する技術分野において有用である。
【符号の説明】
【0043】
1 部品実装装置
4 部品供給部
4a フィーダベース
5 テープフィーダ
5a 部品取出位置
8 装着ヘッド
9a 吸着ノズル
10 基板認識カメラ
14 キャリアテープ
14a 部品ポケット
P 部品
R 領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7