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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】樹脂部品保持部材および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/00 20210101AFI20230324BHJP
   G03B 21/56 20060101ALI20230324BHJP
   G03B 21/62 20140101ALI20230324BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
G02B7/00 F
G02B7/00 B
G03B21/56
G03B21/62
G02B27/01
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020521055
(86)(22)【出願日】2019-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2019011175
(87)【国際公開番号】W WO2019225131
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2018098838
(32)【優先日】2018-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】古屋 博之
(72)【発明者】
【氏名】浦上 進
(72)【発明者】
【氏名】黒塚 章
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-203898(JP,A)
【文献】特開2008-231561(JP,A)
【文献】特開2012-203244(JP,A)
【文献】特開2008-197282(JP,A)
【文献】特開2002-196208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/00
G02B 7/18 - 7/24
G02B 27/01
G03B 21/56 - 21/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料から構成され、表面に化成処理が施され、所定の樹脂部品を保持する樹脂部品保持部材であって、
少なくとも前記樹脂部品が接触し得る領域において、前記化成処理によるアルカリ性残留物が前記樹脂部品に滲入することを防ぐための滲入防止構成を備え、
前記滲入防止構成は、
少なくとも前記樹脂部品が接触し得る領域の表面が切削されて前記化成処理による構成材が除去されて前記金属材料が露出した領域、および、
前記化成処理に代えてエポキシ塗料を用いた耐熱塗装が施された領域、の少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする樹脂部品保持部材。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂部品保持部材において、
前記滲入防止構成は、少なくとも前記樹脂部品が接触し得る領域の表面が切削されて前記化成処理による構成材が除去されて前記金属材料が露出した領域を少なくとも含む、
ことを特徴とする樹脂部品保持部材。
【請求項3】
請求項2に記載の樹脂部品保持部材において、
前記滲入防止構成は、前記化成処理に代えて前記エポキシ塗料を用いた前記耐熱塗装が施された領域を更に含む、
ことを特徴とする樹脂部品保持部材。
【請求項4】
請求項2または3に記載の樹脂部品保持部材において、
前記滲入防止構成は、少なくとも前記樹脂部品が接触し得る領域の表面から前記樹脂部品を離間させるためのスペーサを更に含む、
ことを特徴とする樹脂部品保持部材。
【請求項5】
請求項2ないし4の何れか一項に記載の樹脂部品保持部材において、
前記滲入防止構成は、前記樹脂部品が設置された状態において、前記樹脂部品保持部材の内部を前記樹脂部品の設置部分付近から外部に流通させる流通部を更に含む、
ことを特徴とする樹脂部品保持部材。
【請求項6】
請求項2ないし5の何れか一項に記載の樹脂部品保持部材において、
前記滲入防止構成は、少なくとも前記樹脂部品が接触し得る領域に形成されている、当該領域の表面から前記樹脂部品を離間させるための複数の突出部を更に含む、
ことを特徴とする樹脂部品保持部材。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一項に記載の樹脂部品保持部材と、
前記樹脂部品保持部材に保持された前記樹脂部品と、を備える、
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像表示装置において、
前記樹脂部品は、樹脂材料を基材とする光拡散部材である、
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項9】
請求項8に記載の画像表示装置において、
前記樹脂部品保持部材は、第1の光拡散部材と、前記第1の光拡散部材に対し所定の高さの段差をもって並ぶように配置される第2の光拡散部材とを保持し、前記第1の光拡散部材と前記第2の光拡散部材の境界に前記段差に応じた壁部を備え、
前記壁部の下端と前記第2の光拡散部材との間に、前記壁部から前記第2の光拡散部材への液だれを抑制するための構造が設けられている、
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の画像表示装置において、
前記光拡散部材は、少なくとも前記樹脂部品保持部材に保持される端部に、レンズ部がない平坦な平坦部が形成されている、
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項11】
請求項10に記載の画像表示装置において、
前記光拡散部材は、
樹脂製の基材と、
少なくとも前記基材の一方の面に形成された複数のレンズ部と、
前記レンズ部が形成される面のうち、少なくとも、前記樹脂部品保持部材に保持される前記端部と、を備える、
ことを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材料からなる部品を保持する樹脂部品保持部材、およびそれを用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘッドアップディスプレイと称される画像表示装置の開発が進められている。乗用車に搭載されるヘッドアップディスプレイでは、画像情報により変調された光がウインドシールド(フロントガラス)に向けて投射され、その反射光が運転者の目に照射される。これにより、運転者は、ウインドシールドの前方に、画像の虚像を見ることができる。
【0003】
この種の画像表示装置では、光源から出射されたレーザ光が、映像信号に応じて変調されつつ、スクリーンを走査する。レーザ光は、光拡散部材であるスクリーンで拡散され、運転者の目付近のアイボックスへと導かれる。これにより、運転者は、多少頭を動かしても、良好かつ安定的に画像(虚像)を見ることができる。スクリーンは、たとえば、樹脂材料により形成され、所定の保持部材に保持されて、装置に設置される。
【0004】
この構成において、スクリーンは、車内等の高温かつ高湿の環境下に晒され得る。したがって、スクリーンは、高温かつ高湿の環境下においても、適正に動作するよう装置に設置される必要がある。
【0005】
以下の特許文献1には、温度および湿度の変化で伸縮する複数のスクリーンから構成され、映像発生源より発せられた映像光が投写される透過型スクリーンが記載されている。この透過型スクリーンは、第1のスクリーンと、第1のスクリーンより相対的に低剛性の第2のスクリーンとを備える。高温または高湿中に放置されて伸長した状態の第2のスクリーンが、第1のスクリーンに固定される。これにより、相対的に低剛性の第2のスクリーンに、しわが寄ったり、セパレーションが生じたりすることが無く、映像の劣化の少ない透過形スクリーンが得られると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-271883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような画像表示装置では、太陽光等の外光が、光学系を逆行してスクリーンに向かうことが起こり得る。このため、スクリーンを保持する保持部材は、外光の集光による加熱の対策として、通常、金属材料で構成される。さらに、保持部材は、虚像生成用の光に迷光が混入することを防止するために、黒色の塗装や、つや消し等の表面加工の処理が施される。上記特許文献1では、このような表面加工の処理がスクリーンの特性に影響することは、全く検討されていない。
【0008】
かかる課題に鑑み、本発明は、樹脂部品保持部材に表面加工の処理が施される場合に、被保持部材である樹脂部品の特性を良好に確保することが可能な樹脂部品保持部材、およびそれを備えた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、金属材料から構成され、表面に化成処理が施され、所定の樹脂部品を保持する樹脂部品保持部材に関する。この態様に係る樹脂部品保持部材は、少なくとも前記樹脂部品が接触し得る領域において、前記化成処理によるアルカリ性残留物が前記樹脂部材に滲入することを防ぐための滲入防止構成を備える。前記滲入防止構成は、少なくとも前記樹脂部品が接触し得る領域の表面が切削されて前記化成処理による構成材が除去されて前記金属材料が露出した領域、および、前記化成処理に代えてエポキシ塗料を用いた耐熱塗装が施された領域、の少なくとも1つを含む。
【0010】
本態様に係る樹脂部品保持部材によれば、樹脂部品保持部材に設置された樹脂部品に、樹脂部品保持部材からアルカリ性残留物が滲入することを防ぐことができる。このため、樹脂部品保持部材に塗装やつや消し等の表面加工の処理が施される場合も、アルカリ性残留物による樹脂部品の劣化を抑制することができる。よって、被保持部材である樹脂部品の特性を良好に確保することができる。
【0011】
なお、本態様に係る樹脂部品保持部材は、必ずしも、スクリーン(光拡散部材)を保持するものに限られるものではなく、レンズ等の他の樹脂部品を保持するものであってもよい。また、本態様に係る樹脂部品保持部材は、必ずしも、画像表示装置に用いられるものでなくてもよく、レーザレーダ等の他の装置に用いられてもよい。
【0012】
本発明の第2の態様は、画像表示装置に関する。この態様に係る画像表示装置は、第1の態様に係る樹脂部品保持部材と、前記樹脂部品保持部材に保持された前記樹脂部品と、を備える。
【0013】
本態様に係る樹脂部品保持部材によれば、第1の態様と同様の効果が奏され得る。また、樹脂部品の劣化を抑制できるため、画像表示装置の品質および性能を高く維持することができる。
【0014】
本態様に係る画像表示装置において、前記光拡散部材は、樹脂製の基材と、少なくとも前記基材の一方の面に形成された複数のレンズ部と、前記レンズ部が形成される面のうち、少なくとも、前記樹脂部品保持部材に保持される前記端部と、を備えるよう構成され得る。
【0015】
この構成によれば、少なくとも、前記樹脂部品保持部材に保持される端縁付近の領域に平坦部が形成されているため、マザー基板から光拡散部材を切り出す際の応力により光拡散部材の端縁付近が基材から剥離することが抑止される。よって、端縁付近の剥離箇所から樹脂部品保持部材のアルカリ性残留物が樹脂製の基材に滲入することを抑止でき、基材の劣化をより効果的に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のとおり、本発明によれば、樹脂部品保持部材に表面加工の処理が施される場合に、被保持部材である樹脂部品の特性を良好に確保することが可能な樹脂部品保持部材、およびそれを備えた画像表示装置を提供することができる。
【0017】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(a)、(b)は、実施形態に係る画像表示装置の使用形態を模式的に示す図、図1(c)は、実施形態に係る画像表示装置の構成を模式的に示す図である。
図2図2は、実施形態に係る画像表示装置の照射光生成部および照射光生成部に用いる回路の構成を示す図である。
図3図3(a)は、実施形態に係るスクリーンの構成を模式的に示す斜視図、図3(b)は、実施形態に係るスクリーンと走査ラインの関係を模式的に示す図である。
図4図4(a)、(b)は、実施形態に係る、スクリーンを駆動する駆動部の構成を示す斜視図である。
図5図5(a)は、実施形態に係る支持部材とサスペンションとを組み立てた状態の構成を示す斜視図である。図5(b)は、実施形態に係る磁気回路の構成を示す斜視図である。
図6図6(a)、(b)は、それぞれ、実施形態に係るホルダの構成を示す斜視図である。
図7図7(a)は、比較例に係るホルダにスクリーンを設置した場合のスクリーンの劣化状態を模式的に示す図である。図7(b)は、スクリーンの劣化原因の検証結果を示す写真である。
図8図8(a)は、実施形態に係るホルダの平面図である。図8(b)は、実施形態に係る、化成処理によるアルカリ性残留物の存在を排除する領域を示す図である。
図9図9(a)、(b)は、それぞれ、実施形態に係る、化成処理によるアルカリ性残留物の存在を排除する領域を示す拡大図である。
図10図10(a)は、実施形態に係る、アルカリ性残留物を除去した場合のスクリーンの状態を検証した検証結果を示す写真である。図10(b)は、実施形態に係る、スクリーンが設置された状態のホルダを示す斜視図である。
図11図11(a)は、変更例1に係るホルダの平面図である。図11(b)は、変更例1に係る、スペーサが設置された状態のホルダの平面図である。
図12図12は、変更例2に係るホルダの構成を示す斜視図である。
図13図13(a)は、スクリーンに生じ得る剥離の状態を模式的に示す断面図である。図13(b)は、変更例3に係るスクリーンの構成を模式的に示す断面図である。図13(c)は、変更例3に係る、スクリーンにおいて平坦部を形成する領域を模式的に示す平面図である。
図14図14(a)、(b)は、それぞれ、変更例4に係るホルダの一部拡大図である。
【0019】
ただし、図面はもっぱら説明のためのものであって、この発明の範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。便宜上、各図には、適宜、互いに直交するX、Y、Z軸が付記されている。
【0021】
図1(a)、(b)は、画像表示装置20の使用形態を模式的に示す図である。図1(a)は、乗用車1の側方から乗用車1の内部を透視した模式図、図1(b)は、乗用車1の内部から走行方向前方を見た図である。
【0022】
本実施形態は、車載用のヘッドアップディスプレイに本発明を適用したものである。図1(a)に示すように、画像表示装置20は、乗用車1のダッシュボード11の内部に設置される。
【0023】
図1(a)、(b)に示すように、画像表示装置20は、映像信号により変調された光を、ウインドシールド12下側の運転席寄りの投射領域13に投射する。投射された光は、投射領域13で反射され、運転者2の目の位置周辺の横長の領域(アイボックス領域)に照射される。これにより、運転者2の前方の視界に、虚像として所定の画像30が表示される。運転者2は、ウインドシールド12の前方の景色上に、虚像である画像30を重ね合わせて見ることができる。すなわち、画像表示装置20は、虚像である画像30をウインドシールド12の投射領域13の前方の空間に結像させる。
【0024】
図1(c)は、画像表示装置20の構成を模式的に示す図である。
【0025】
画像表示装置20は、照射光生成部21と、ミラー22とを備える。照射光生成部21は、映像信号により変調された光を出射する。ミラー22は曲面状の反射面を有し、照射光生成部21から出射された光をウインドシールド12に向けて反射する。ウインドシールド12で反射された光は、運転者2の目2aに照射される。照射光生成部21の光学系とミラー22は、ウインドシールド12の前方に虚像による画像30が所定の大きさで表示されるように設計されている。
【0026】
ミラー22は、後述するスクリーン108、109(光拡散部材)から生じた光により虚像を生成するための光学系を構成する。この光学系は、必ずしも、ミラー22のみから構成されていなくてもよい。たとえば、この光学系が、複数のミラーを含んでいてもよく、また、レンズ等を含んでいてもよい。
【0027】
図2は、画像表示装置20の照射光生成部21の構成および照射光生成部21に用いる回路の構成を示す図である。
【0028】
照射光生成部21は、光源101と、コリメータレンズ102a~102cと、アパーチャ103a~103cと、ミラー104と、ダイクロイックミラー105a、105bと、走査部106と、補正レンズ107と、スクリーン108、109とを備える。
【0029】
光源101は、3つのレーザ光源101a、101b、101cを備える。レーザ光源101a、101b、101cは、1つの回路基板110に設置されている。
【0030】
レーザ光源101aは、635nm以上645nm以下の範囲に含まれる赤色波長のレーザ光を出射し、レーザ光源101bは、510nm以上530nm以下の範囲に含まれる緑色波長のレーザ光を出射し、レーザ光源101cは、440nm以上460nm以下の範囲に含まれる青色波長のレーザ光を出射する。
【0031】
本実施形態では、画像30としてカラー画像を表示するため、光源101がこれら3つのレーザ光源101a、101b、101cを備える。レーザ光源101a、101b、101cは、たとえば、半導体レーザからなっている。画像30として単色の画像を表示する場合、光源101は、画像の色に対応する1つのレーザ光源のみを備えていてもよい。また、光源101は、出射波長の異なる2つのレーザ光源を備える構成であってもよい。
【0032】
レーザ光源101a、101b、101cから出射されたレーザ光は、それぞれ、コリメータレンズ102a~102cによって平行光に変換される。コリメータレンズ102a~102cを透過したレーザ光は、それぞれ、アパーチャ103a~103cによって、略同じサイズの円形のビームに整形される。
【0033】
その後、レーザ光源101a、101b、101cから出射された各色のレーザ光は、ミラー104と2つのダイクロイックミラー105a、105bによって光軸が整合される。ミラー104は、コリメータレンズ102aを透過した赤色レーザ光を略全反射する。ダイクロイックミラー105aは、コリメータレンズ102bを透過した緑色レーザ光を反射し、ミラー104で反射された赤色レーザ光を透過する。ダイクロイックミラー105bは、コリメータレンズ102cを透過した青レーザ光を反射し、ダイクロイックミラー105aを経由した赤色レーザ光および緑色レーザ光を透過する。ミラー104と2つのダイクロイックミラー105a、105bは、レーザ光源101a、101b、101cから出射された各色のレーザ光の光軸を整合させるように配置されている。
【0034】
走査部106は、ダイクロイックミラー105bを透過した各色のレーザ光を反射する。走査部106は、たとえば、MEMS(micro electro mechanical system)ミラーからなっており、ダイクロイックミラー105bを透過した各色のレーザ光が入射されるミラー106aを、駆動信号に応じて、X軸に平行な軸と、X軸に垂直かつミラー106aの反射面に平行な軸の周りに回転させる。このようにミラー106aを回転させることにより、レーザ光の反射方向が、X-Z平面に平行な方向およびY-Z平面に平行な方向において変化する。これにより、後述のように、各色のレーザ光によってスクリーン108、109が2次元に走査される。
【0035】
補正レンズ107は、走査部106によるレーザ光の振り角に拘わらず、各色のレーザ光をZ軸正方向に向かわせるように設計されている。補正レンズ107は、たとえば、複数のレンズを組み合わせて構成される。
【0036】
スクリーン108、109は、光を拡散させる光拡散部材である。スクリーン108、109は、レーザ光が走査されることにより画像が形成され、入射したレーザ光を運転者2の目2aの位置周辺の領域(アイボックス領域)に拡散させる作用を有する。スクリーン108、109は、マイクロレンズアレイや拡散板等から構成され得る。スクリーン108、109は、たとえば、ポリカーボネートやPET(ポリエチレンテレフタレート)等の透明な樹脂から構成され得る。
【0037】
スクリーン108、109は、駆動部300によってZ軸方向に駆動される。スクリーン108は、奥行き方向に視差のある画像を表示するためのものであり、スクリーン109は、奥行き方向に視差のない画像を表示するためのものである。スクリーン108、109は、境界がY方向に略重なった状態で、Z軸方向に所定の段差で互いに離れるように配置される。スクリーン108、109は、駆動部300によって一体的にZ軸方向に駆動される。駆動部300は、たとえば、コイルと磁気回路を備え、コイルに生じた電磁力によってスクリーン108、109を保持するホルダを駆動する。駆動部300の構成は、追って、図4(a)~図6(b)を参照して説明する。
【0038】
スクリーン108、109を移動させながら各色のレーザ光によりスクリーン108に画像が描画されることにより、ウインドシールド12の前方に、奥行き方向に視差のある画像が表示される。また、スクリーン108、109をZ軸方向の所定位置に静止させた状態で、各色のレーザ光によりスクリーン109に画像が描画されることにより、ウインドシールド12の前方に、視差のない画像が表示される。
【0039】
画像制御回路201は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理ユニットやメモリを備え、入力された映像信号を処理してレーザ駆動回路202、ミラー駆動回路203およびスクリーン駆動回路204を制御する。
【0040】
レーザ駆動回路202は、画像制御回路201から入力される制御信号に応じて、レーザ光源101a、101b、101cの出射強度を変化させる。ミラー駆動回路203は、画像制御回路201からの制御信号に応じて、走査部106のミラー106aを駆動する。スクリーン駆動回路204は、画像制御回路201からの制御信号に応じて、駆動部300を駆動する。
【0041】
図3(a)は、スクリーン108の構成を模式的に示す斜視図である。
【0042】
スクリーン108は、基材108aの入射面と出射面に、それぞれ、レンズ層108b、108cが形成された構成となっている。レンズ層108bには、レーザ光をX軸方向に発散させる複数のレンズ部が、X軸方向に並ぶように形成されている。また、レンズ層108cには、レーザ光をY軸方向に発散させる複数のレンズ部が、Y軸方向に並ぶように形成されている。
【0043】
Y軸方向に見たとき、レンズ層108bに形成されたレンズ部は円弧形状である。また、X軸方向に見たとき、レンズ層108cに形成されたレンズ部は円弧形状である。各レンズ部の幅(ピッチ)は、数10μm程度である。各レンズ部の曲率は、スクリーン108を透過するレーザ光を、運転者2の目2aの位置周辺において、横長の領域(アイボックス領域)に導くように設定される。
【0044】
基材108aは、ポリカーボネートやPET等の透明な樹脂材料からなっている。基材108aの入射面と出射面に、それぞれ、紫外線硬化樹脂を用いた型押し成形により、レンズ層108b、108cが形成される。
【0045】
スクリーン109も、スクリーン108と同様の構成である。ただし、スクリーン109は、Y軸方向の幅がスクリーン108よりも短くなっている。後述のように、スクリーン108、109は、金属製のホルダ301に保持される。
【0046】
図3(b)は、スクリーン108、109と走査ラインの関係を模式的に示す図である。
【0047】
上記構成を有するスクリーン108、109の入射面(Z軸負側の面)が、各色のレーザ光が重ねられたビームB1によって走査される。スクリーン108、109の入射面に対して、予め、ビームB1が通る走査ラインL1~Lnが、Y軸方向に一定間隔で設定されている。走査ラインL1~Lnは、スクリーン108、109の境界BR1を跨いで設定される。走査ラインL1~Lnによって1フレームの画像が描画される。
【0048】
このように設定された走査ラインL1~Lnが、Y軸正側から順番にビームB1で走査される。走査ラインL1~Ln上の各画素位置において、レーザ光源101a~101cから各色のレーザ光が、所定のパルス幅でパルス発光される。
【0049】
こうして、スクリーン108、109がビームB1で2次元走査されることにより、スクリーン108、109に1フレーム分の画像が描画される。走査ラインL1から走査ラインLnまでの走査周期は、たとえば1/60秒である。上述のように、スクリーン108には、奥行き方向に視差のある画像を表示させるための画像が描画され、スクリーン109には奥行き方向に視差のない画像を表示させるための画像が描画される。
【0050】
図4(a)は、駆動部300の構成を示す斜視図、図4(b)は、磁気カバー308およびホルダ301を取り外した状態の駆動部300の構成を示す斜視図である。
【0051】
図4(a)、(b)には、駆動部300が支持ベース306および固定ベース310に支持された状態が示されている。支持ベース306および固定ベース310には、各色のレーザ光をZ軸方向に通過させるための開口が設けられている。この開口を介して、各色のレーザ光は、Z軸負側からスクリーン108、109に照射される。
【0052】
図4(a)に示すように、スクリーン108、109は、互いに同じ方向に傾くようにホルダ301に一体的に支持されている。2つのスクリーン108、109は、レーザ光の進行方向(Z軸方向)に垂直な方向(Y軸方向)に並び、且つ、レーザ光の進行方向(Z軸方向)に所定の段差で互いにずれた位置に設置されている。ホルダ301の上面に、遮光部材302a、302bが設置されている。遮光部材302a、302bは、図1(c)の光学系を逆行する外光が駆動部300の内部に侵入することを防ぐためのものである。
【0053】
スクリーン108、109が設置されたホルダ301が、図4(b)に示す支持部材303の内枠部303aに設置される。支持部材303は、4つのサスペンション304によって、Z軸方向に移動可能に、Y軸方向に並ぶ2つの支持ユニット305に支持されている。支持ユニット305は、支持ベース306に設置されている。支持ユニット305は、X軸正側とX軸負側にそれぞれゲルカバー305aを備え、これらゲルカバー305a内にダンピングのためのゲルが充填されている。
【0054】
こうして、スクリーン108、109は、ホルダ301、支持部材303、サスペンション304および支持ユニット305を介して、Z軸方向に移動可能に支持ベース306に支持される。
【0055】
支持ベース306には、さらに、磁気回路307が設置されている。磁気回路307は、支持部材303に装着されたコイル311(図5(a)参照)に磁界を付与するためのものである。コイル311に駆動信号(電流)を印加することにより、コイル311にZ軸方向の電磁力が励起される。これにより、コイル311と共に支持部材303がZ軸方向に駆動される。こうして、スクリーン108、109が、Z軸方向に移動する。
【0056】
磁気回路307の上面に、磁気カバー308が載せられる。磁気カバー308は、磁性材料からなっており、磁気回路307のヨークとして機能する。磁気回路307の上面に磁気カバー308が載せられると、磁気カバー308が磁気回路307に吸着される。これにより、磁気カバー308が駆動部300に設置される。図4(a)に示すように、磁気カバー308には、ホルダ301を通すための開口308aと、支持部材303の梁部303c(図5(a)参照)を通すためのスリット308bが設けられている。
【0057】
支持ベース306は、ダンパーユニット309を介して、固定ベース310に設置されている。ダンパーユニット309は、固定ベース310に対して支持ベース306をZ軸正方向に浮かせた状態で、支持ベース306を支持する。ダンパーユニット309は、支持部材303の駆動により生じた振動が支持ベース306から固定ベース310に伝搬する前に、振動を吸収する。
【0058】
固定ベース310には、さらに、位置検出ユニット400が設置されている。位置検出ユニット400は、支持部材303のX軸正側の側面に対向するプリント基板401を備える。このプリント基板401のX軸負側の面にエンコーダ(図示せず)が配置されている。このエンコーダによって、支持部材303のZ軸方向の位置が検出される。
【0059】
図5(a)は、支持部材303とサスペンション304とを組み立てた状態の構成を示す斜視図である。
【0060】
図5(a)に示すように、支持部材303は、枠状の形状を有する。支持部材303は、軽量かつ剛性の高い材料により形成される。支持部材303は、それぞれ平面視において略長方形の内枠部303aと外枠部303bとを備える。平面視において内枠部303aの中心と外枠部303bの中心が互いに一致するように、4つの梁部303cによって、内枠部303aと外枠部303bが連結されている。内枠部303aは、外枠部303bに対して上方(Z軸正方向)にシフトした位置に持ち上げられている。
【0061】
内枠部303aの上面に、ホルダ301が設置される。また、外枠部303bの下面に、コイル311が装着される。コイル311は、外枠部303bの下面に沿うように、長方形の角が丸められた形状に周回している。
【0062】
外枠部303bの四隅に、放射状に延びる連結部303dが形成されている。これら連結部303dは、上端および下端にそれぞれ鍔部を有する。連結部303dの上側の鍔部の上面に上側のサスペンション304の端部が固定具303eにより固着される。また、連結部303dの下側の鍔部の下面に下側のサスペンション304の端部が固定具303eにより固着される。こうして、サスペンション304が、支持部材303に装着される。
【0063】
さらに、支持部材303は、Y軸方向に隣り合う連結部303dを繋ぐ橋部303fを備える。橋部303fは、Y軸方向の両端を除く部分がY軸方向に平行に延びており、この部分の中央に、Y-Z平面に平行な設置面303gを有する。支持部材303のX軸正側の橋部303fの設置面303gに、スケールが設置される。このスケールが、図4(a)、(b)に示した位置検出ユニット400のエンコーダに対向する。こうして、エンコーダによって、支持部材303のZ軸方向の位置が検出される。
【0064】
サスペンション304は、X軸方向の中央位置に、3つの孔304aを有する。また、サスペンション304は、3つの孔304aの両側に、クランク形状の伸縮構造304bを有する。Y軸正側の2つのサスペンション304と、Y軸負側の2つのサスペンション304が、それぞれ、3つの孔304aを介して、図4(a)、(b)に示すように、支持ユニット305に装着される。
【0065】
図5(b)は、磁気回路307の構成を示す斜視図である。図5(b)には、磁気回路307が、支持ベース306の上面に設置された状態が示されている。
【0066】
磁気回路307は、Y軸方向に並ぶように配置された2つのヨーク321を備える。X軸方向に見たときのヨーク321の形状はU字状である。2つのヨーク321は、それぞれ、内側の壁部321bが2つに分かれている。各ヨーク321の外側の壁部321aの内側に磁石322が設置される。また、各ヨーク321の内側の2つの壁部321bの外側に、それぞれ、磁石322に対向するように磁石323が設置される。互いに対向する磁石322と磁石323との間には、上述のコイル311が挿入される隙間が生じている。
【0067】
さらに、磁気回路307は、X軸方向に並ぶように配置された2つのヨーク324を備える。Y軸方向に見たときのヨーク324の形状はU字状である。2つのヨーク324は、それぞれ、外側の壁部324aが2つに分かれており、内側の壁部324bも2つに分かれている。各ヨーク324の外側の2つの壁部324aの内側にそれぞれ磁石325が設置される。また、各ヨーク324の内側の2つの壁部324bの外側に、それぞれ、磁石325に対向するように磁石326が設置される。互いに対向する磁石325と磁石326との間には、上述のコイル311が挿入される隙間が生じている。磁石326のY軸方向の端部は、隣り合うヨーク321の内側の壁部321bに側面に重なっている。
【0068】
図6(a)、(b)は、それぞれ、ホルダ301の構成を示す斜視図である。図6(a)は、ホルダ301を上側から見た斜視図、図6(b)はホルダ301を下側から見た斜視図である。
【0069】
ホルダ301は、枠状の部材からなっている。ホルダ301は、剛性が高く、軽量の金属材料で形成される。ホルダ301は、表面反射が抑制されるよう構成される。ホルダ301の表面は、光の吸収率が高まるように、黒色で塗装される。本実施形態では、ホルダ301がマグネシウム合金で一体形成され、さらに、ホルダ301の表面に黒色酸化処理が施されている。ホルダ301が、アルミニウム等、マグネシウム以外の材料で形成されてもよい。ホルダ301は、X軸方向に対称な形状である。
【0070】
ホルダ301は、スクリーン108を支持するための下枠部301aと、スクリーン109を支持するための上枠部301bとを有する。
【0071】
下枠部301aは、平面視において長方形の開口301cを有する。また、下枠部301a上面のY軸正側の縁部分に上方に突出する2つの壁301dが設けられ、下枠部301a上面のX軸正負側の縁部分にも、それぞれ、壁301dが設けられている。さらに、これらの壁301dと開口301cとの間に、上方に突出する突起301eが設けられている。突起301eは、開口301cの周縁に沿うようにして連続的に形成されている。突起301eの高さは、壁301dの高さよりも低い。下枠部301aの上面には、壁301dの位置に、Z軸方向に突出する4つの鉤部301fが設けられている。また、Y軸負側の2つの壁301dの間に、Z軸方向に突出する円柱状の突部301mが形成されている。
【0072】
上枠部301bは、平面視において長方形の開口301gを有する。また、上枠部301b上面のY軸負側の縁部分に上方に突出する2つの壁301hが設けられ、上枠部301b上面のX軸正負側の縁部分にも、それぞれ、壁301hが設けられている。さらに、これらの壁301hと開口301gとの間に、上方に突出する突起301iが設けられている。突起301iは、開口301gの周縁に沿うようにして連続的に形成されている。突起301iの高さは、壁301hの高さよりも低い。上枠部301bの上面には、壁301hの位置に、Z軸方向に突出する4つの鉤部301jが設けられている。また、Y軸正側の2つの壁301dの間に、Z軸方向に突出する円柱状の突部301nが形成されている。
【0073】
下枠部301aと上枠部301bとの間の段差は、壁部301kで塞がれている。壁部301kの上面は、下方(Z軸負方向)に掘り下げられて、一段低くなっている。壁部301kの下端には、山型の切欠き301k1が形成されている。切欠き301k1は、壁部301kの略全長に亘って延びるように形成されている。
【0074】
また、図6(b)に示すように、ホルダ301の下面には、下面内側から下方に突出する6つの突片301lが設けられている。ホルダ301の下面の輪郭は、図5(a)に示した支持部材303の内枠部303aの輪郭と同一である。ホルダ301を内枠部303aに載せると、ホルダ301の6つの突片301lが、内枠部303aの内側に嵌まり込む。これにより、ホルダ301が支持部材303に位置決めされる。
【0075】
スクリーン108は、下枠部301aの突起301eに載せられて、ホルダ301に支持される。このとき、スクリーン108のY軸負側の端部が、壁部301kの下側に入り込む。突起301eは、スクリーン108が載せられた状態において、スクリーン108の3辺に沿って連続するように形成されている。この状態で、スクリーン108は、5つの壁301dの内側に収まり、スクリーン108の外周と壁301dとが略当接する。
【0076】
スクリーン109は、上枠部301bの突起301iに載せられて、ホルダ301に支持される。このとき、スクリーン109のY軸正側の端部が、壁部301kの上側に重なる。突起301iは、スクリーン109が載せられた状態において、スクリーン109の3辺に沿って連続するように形成されている。この状態で、スクリーン109は、5つの壁301hの内側に収まり、スクリーン109の外周と壁301hとが略当接する。
【0077】
こうして、スクリーン108、109がそれぞれ、下枠部301aおよび上枠部301bに設置された後、図4(a)に示した遮光部材302a、302bが、それぞれ、下枠部301aおよび上枠部301bに設置される。このとき、下枠部301aに設けられた4つの鉤部301fが遮光部材302aの4つの孔にそれぞれ嵌まり込み、上枠部301bに設けられた4つの鉤部301jが遮光部材302bの4つの孔にそれぞれ嵌まり込む。また、ホルダ301の2つの突部301m、301nがそれぞれ遮光部材302a、302bの孔に嵌まり込む。スクリーン108、109と遮光部材302a、302bとの間に、耐熱性の部材(耐熱パッキン)が介挿される。
【0078】
ところで、図1(c)に示した構成では、太陽光等の外光が、ミラー22を含む光学系を逆行してスクリーン108、109に向かうことが起こり得る。このため、スクリーン108、109を保持するホルダ301は、外光の集光による加熱の対策として、上記のように、マグネシウム合金等の金属材料で構成される。さらに、ホルダ301は、虚像生成用のレーザ光に迷光が混入することを防止するために、黒色の塗装や、つや消し等の表面加工の処理が施される。
【0079】
ここで、表面加工は、たとえば、陽極酸化処理を含む工程により行われ得る。この場合、塗料との親和性を高めるために、ホルダ301の表面に化成処理が施される。化成処理には、アルカリ成分を含む薬剤が用いられる。化成処理の後、ホルダ301は、脱脂洗浄され、さらに、中和処理が施されて、残留アルカリ成分が除去される。その後、ホルダ301は、黒色塗料が被服される。
【0080】
しかしながら、高温(85℃)、高湿(85%)の環境下に画像表示装置20を放置した後、ホルダ301から遮光部材302a、302bを取り外したところ、スクリーン108、109に顕著な劣化が確認された。具体的には、ホルダ301に載置されるスクリーン108の周辺部分において、スクリーン108の基材108aが溶融し、レンズ層108b、108cが基材108aから剥離していた。スクリーン108の下面は、ホルダ301の突起301eに貼り付いていた。スクリーン109にも、同様の劣化が生じた。
【0081】
図7(a)は、スクリーン108、109の劣化状態を模式的に示す図である。なお、図7(a)、(b)の検証では、図6(a)、(b)に示した切欠き301k1が形成されていないホルダ301は用いられた。すなわち、壁部301kの下端は、全領域において、X-Y平面に平行であり、下枠部301aに設置されたスクリーン108のY軸負側の端部に重なっていた。ここでは、スクリーン108、109の基材が、ポリカーボネートからなっていた。
【0082】
図7(a)において、ハッチングが付された領域A10、A11が、スクリーン108、109において劣化が生じた領域を示している。図7(a)に示すように、上枠部301bに設置されたスクリーン109は、ホルダ301と接触するY軸負側の端部およびX軸正負側の端部において劣化が生じた。下枠部301aに設置されたスクリーン108は、ホルダ301と接触するY軸正側の端部およびX軸正負側の端部のみならず、Y軸負側の端部にも、劣化が生じた。
【0083】
そこで、発明者らは、スクリーン108、109に生じた劣化の原因を鋭意検討した。そして、発明者らは、その原因が、上記化成処理においてホルダ301の表面に残留するアルカリ成分であることの可能性を、検証により確認した。
【0084】
図7(b)は、発明者らが行ったスクリーン108の劣化原因の検証結果を示す写真である。
【0085】
発明者らは、スクリーン108の半分(範囲W1)を、アルカリ成分を含有する薬剤に浸した後、スクリーン108を、上記と同様の高温、高湿の環境下に所定期間放置した。検証に用いた薬剤は、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)2.38%水溶液であった。その後、スクリーン108を上記環境下から取り出し、スクリーン108の劣化具合を確認した。これにより、図7(b)の検証結果が得られた。
【0086】
図7(b)に示すように、薬剤に浸された範囲W1において、図7(a)の場合と同様の劣化がスクリーン108に生じた。図7(b)の白矢印は、劣化箇所を示している。また、薬剤に浸されなかった範囲W2においても、範囲W1から薬剤が流れ込んだ部分において、スクリーン108に劣化が生じていた。
【0087】
この検証により、発明者らは、図7(a)に示したスクリーン108、109における劣化の原因が、ホルダ301に残留するアルカリ成分にあることを確認した。すなわち、発明者らは、アルカリ成分による還元反応(加水分解)により、スクリーン108、109の基材が溶解したものと判断した。その結果、発明者らは、少なくともスクリーン108、109が接触し得る領域において、化成処理によるアルカリ性残留物がスクリーン108、109に滲入することを防ぐための構成をホルダ301に施すことによって、図7(a)に示した劣化がスクリーン108に生じないとの結論に至った。
【0088】
そこで、本実施形態では、スクリーン108、109が接触し得る領域において、化成処理によるアルカリ性残留物がスクリーン108、109に滲入することを防ぐための構成が、ホルダ301に施されている。以下、この構成について説明する。
【0089】
図8(a)は、ホルダ301の平面図であり、図8(b)は、化成処理によるアルカリ性残留物の存在を排除する領域を示す図である。また、図9(a)、(b)は、それぞれ、化成処理によるアルカリ性残留物の存在を排除する領域を示す拡大図である。図8(b)および図9(a)、(b)において、ハッチングが付された領域が、化成処理によるアルカリ性残留物の存在を排除する領域である。
【0090】
図8(a)に示すように、スクリーン108、109は、壁301d、301hの内側に嵌め込まれるようにして、突起301e、301iの上面に載置される。したがって、スクリーン108、109は、少なくとも、突起301e、301iの上面と、何れかの壁301d、301hの内側面に接触する。また、突起301e、301iが低い場合、スクリーン108、109の下面と下枠部301aおよび上枠部301bの上面との隙間は狭い。このため、遮光部材302a、302bの設置によりスクリーン108、109が下方に押さえられると、スクリーン108、109の下面が下枠部301aおよび上枠部301bの上面に接触する可能性がある。
【0091】
また、スクリーン108、109の下面が下枠部301aおよび上枠部301bの上面に直接接触しない場合も、湿気による露等が介在して、スクリーン108、109の下面が下枠部301aおよび上枠部301bの上面に間接的に接触することも起こり得る。この場合、露等を介して、アルカリ性残留物が、下枠部301aおよび上枠部301bの上面からスクリーン108、109に移動する可能性がある。
【0092】
そこで、本実施形態では、図8(b)に示すように、下枠部301aおよび上枠部301bの上面のうち、少なくとも、スクリーン108、109が重なる領域が、化成処理によるアルカリ性残留物の存在を排除する領域に含まれている。また、図9(a)、(b)に示すように、壁301d、301hの内側面の全範囲および鉤部301f、301jの内側面の全範囲が、化成処理によるアルカリ性残留物の存在を排除する領域に設定されている。図9(a)、(b)に示した以外の壁301d、301hおよび鉤部301f、301jについても同様に、内側面の全範囲が、アルカリ性残留物の存在を排除する領域が設定されている。
【0093】
ここで、化成処理によるアルカリ性残留物の存在を排除する構成は、たとえば、以下のように適用され得る。
【0094】
(1)化成処理が終了した後、切削加工により100~200μm程度、ホルダ301表面の対象領域を掘り下げて構成材を除去し、対象領域においてホルダ301内部の金属部分を露出させる。
【0095】
(2)ホルダ301表面の対象領域を樹脂レジストで被覆して化成処理を実行し、化成処理の後に、有機溶剤で被覆部分を除去する。
【0096】
このように、図8(b)および図9(a)、(b)に示した領域から、化成処理によるアルカリ性残留物の存在を排除することにより、ホルダ301に設置されたスクリーン108、109に対し、ホルダ301に残留したアルカリ性残留物が滲入することを防ぐことができる。
【0097】
図10(a)は、ホルダ301からアルカリ性残留物を除去した場合のスクリーン108、109の状態を検証した検証結果を示す写真である。
【0098】
この検証では、化成処理後の中和処理を通常よりも強化して、アルカリ性残留物の排除を徹底した。具体的には、中和処理時の処理温度を常温から60℃程度に高めることにより、ホルダ301におけるアルカリ性残留物の排除を徹底した。ここでは、ホルダ301全体に対して中和処理を行った。その後、ホルダ301にスクリーン108、109と遮光部材302a、302bを設置して、ホルダ301を、上記と同様の高温、高湿の環境下に所定期間放置した。放置終了後、ホルダ301を上記環境下から取り出して、遮光部材302a、302bを取り除いた。
【0099】
図10(a)に示すように、この検証では、スクリーン108、109に劣化が確認されなかった。このことから、発明者らは、スクリーン108、109の劣化の原因がホルダ301のアルカリ性残留物にあることを再確認し、その滲入を排除することによりスクリーン108、109の劣化を防ぎ得ることを確認した。よって、上記のように、切削やレジストの塗布等によって、少なくとも、スクリーン108、109が接触し得る領域において、化成処理によるアルカリ性残留物がスクリーン108、109に滲入することを防ぐための構成を適用することにより、スクリーン108、109の劣化を防ぐことができる。
【0100】
<実施形態の効果>
以上、本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
【0101】
少なくとも、スクリーン108、109(樹脂部品)が接触し得る領域において、化成処理によるアルカリ性残留物がスクリーン108、109に滲入することを防ぐための構成を適用されるため、ホルダ301(樹脂部品保持部材)に設置されたスクリーン108、109に、ホルダ301からアルカリ性残留物が滲入することを防ぐことができる。このため、ホルダ301に塗装やつや消し等の表面加工の処理が施される場合も、アルカリ性残留物によるスクリーン108、109の劣化を抑制することができる。よって、スクリーン108、109の特性を良好に確保することができる。その結果、画像表示装置20の品質および性能を高く維持することができる。
【0102】
ここで、アルカリ性残留物がスクリーン108、109に滲入することを防ぐための構成は、たとえば、上記(1)に示したように、ホルダ301内部の金属材料が露出するまでホルダ301の対象領域を切削することにより実現され得る。これにより、対象領域からアルカリ性残留物を確実に排除でき、ホルダ301からスクリーン108、109にアルカリ性残留物が滲入することを確実に防ぐことができる。
【0103】
なお、本実施形態では、ホルダ301の壁部301kの下端に、山型の切欠き301k1が設けられている。このため、ホルダ301にスクリーン108、109が設置された状態では、図10(b)に示すように、壁部301kとスクリーン108のY軸負側の端部との間に山型の隙間が生じている。この構成により、壁部301kからスクリーン108の表面に液だれが生じることが防がれる。すなわち、湿気により壁部301kの表面に液滴が生じた場合、壁部301kの表面を流れ落ちる液滴は、切欠き301k1に到達した後、切欠き301k1の下面に回り込んで、切欠き301k1の下面に沿って切欠き301k1の最も低い端部へと移動する。その後、液滴は、切欠き301k1の端部からホルダ301の内側面へと移って、下方へ流れ落ちる。
【0104】
この構成により、アルカリ性残留物を含有する液滴がスクリーン108のY軸負側の端部に移動してこの端部が劣化することを防ぐことができる。すなわち、図7(a)に示したように、スクリーン108には、Y軸負側の端部にも劣化が生じていたが、この劣化は、アルカリ性残留物を含有する液滴が、壁部301kの表面からスクリーン108に流れ落ちることにより生じたものと考えられる。よって、上記のように、壁部301kの下端に切欠き301k1(壁部301kからスクリーン108への液だれを抑制するための構造)を設けて、壁部301kの表面を流れ落ちる液滴がスクリーン108に移動することを防ぐことにより、Y軸負側の端部におけるスクリーン108の劣化を防ぐことができる。
【0105】
<変更例1>
上記実施形態では、化成処理によるアルカリ性残留物が樹脂部材であるスクリーン108、109に滲入することを防ぐための構成として、切削加工およびレジストの被覆の適用、および中和処理の強化が例示されたが、アルカリ性残留物がスクリーン108、109に滲入することを防ぐための構成は、これに限られるものではない。
【0106】
たとえば、少なくともスクリーン108、109が接触し得る領域に、化成処理が施された表面からスクリーン108、109を離間させるためのスペーサを設けることにより、アルカリ性残留物がスクリーン108、109に滲入することを防ぐようにしてもよい。
【0107】
図11(a)、(b)は、この場合の変更例の構成を示す図である。図11(a)は、変更例1に係るホルダ301の平面図である。図11(b)は、変更例1に係る、スペーサ331、332が設置された状態のホルダ301の平面図である。
【0108】
図11(a)に示すように、変更例1では、下枠部301aおよび上枠部301bの上面から、それぞれ、突起301e、301iが省略されている。そして、図11(b)に示すように、アルカリ性残留物がスクリーン108、109に滲入することを防ぐための構成として、下枠部301aの上面にスペーサ331が設置され、また、上枠部301bの上面にスペーサ332が設置される。スペーサ331は、下枠部301aの4つの壁301dの内側に収まるようにして、開口301cの外周に沿って延びている。また、スペーサ332は、上枠部301bの4つの壁301hの内側に収まるようにして、開口301gの外周に沿って延びている。
【0109】
スペーサ331の厚みは、壁301dの高さよりも小さい。また、スペーサ332の厚みは、壁301hの高さよりも小さい。スペーサ331、332は、たとえば、フッ素ゴム、テフロン(登録商標)樹脂またはポリアミド等、アルカリ性残留物に対して耐性をもつ材料からなっている。
【0110】
変更例1によれば、下枠部301aおよび上枠部301bの上面と、スクリーン108、109との間にスペーサ331、332が介在するため、下枠部301aおよび上枠部301bの上面からスクリーン108、109にアルカリ性残留物が滲入することを防ぐことができる。また、変更例の構成によれば、切削やレジストの被覆等の工程を省略できるため、ホルダ301を簡易に構成することができる。
【0111】
なお、変更例1においても、壁301d、301hの内側面には、上記実施形態と同様、切削やレジストの被覆等によって、アルカリ性残留物がスクリーン108、109に滲入することを排除する構成が適用されることが好ましい。また、下枠部301aおよび上枠部301bの上面の、スクリーン108、109が重なる領域のうち、スペーサ331、332が設置される以外の領域にも、上記実施形態と同様、切削やレジストの被覆等によって、アルカリ性残留物がスクリーン108、109に滲入することを排除する構成が適用されることが好ましい。これにより、スクリーン108、109に対するアルカリ性残留物の滲入をより確実に防ぐことができる。
【0112】
<変更例2>
図12は、変更例2に係るホルダ301の構成を示す斜視図である。
【0113】
変更例2では、変更例1に比べて、下枠部301aの上面と上枠部301bの上面に、それぞれ、複数の溝部301o、301pが形成されている。溝部301o、301pの深さは、それぞれ、壁301d、301hの高さよりも大きい。また、溝部301o、301pによって、突起301e、301iが分断されている。さらに、変更例2においても、図8(b)および図9(a)、(b)にハッチングで示した領域のうち溝部301o、301p以外の領域に、化成処理によるアルカリ性残留物が前記樹脂部材に滲入することを防ぐための構成が適用されている。その他の構成は、上記実施形態と同様である。
【0114】
変更例2の構成によれば、スクリーン108、109が設置された状態において、溝部301o、301pにより、ホルダ301の内部をスクリーン108、109の設置部分付近から外部に流通させる流通部が構成される。これにより、ホルダ301が高温、高湿の環境下に置かれた場合も、ホルダ301内の湿気は、スクリーン108、109の設置部分に滞留することなく、溝部301o、301pを介して外部に放出される。よって、スクリーン108、109の設置部分が湿気により濡れ状態になること防ぐことができ、湿気により生じた水滴を介してアルカリ性残留物がスクリーン108、109に滲入することを防ぐことができる。よって、より確実に、アルカリ性残留物がスクリーン108、109に滲入することを防ぐことができる。
【0115】
なお、溝部301o、301pの数および形状は、図12に示したものに限られるものではなく、適宜、変更可能である。ホルダ301の内部をスクリーン108、109の設置部分付近から外部に流通させる流通部は、必ずしも、溝部301o、301pにより構成されなくてもよく、スクリーン108、109の設置部分の近傍に下枠部301aおよび上枠部301bを貫通する横孔を設けてもよい。
【0116】
<変更例3>
図13(a)は、スクリーン108に生じ得る剥離の状態を模式的に示す断面図である。
【0117】
図13(a)において、108b1、108c1は、それぞれ、スクリーン108のレンズ層108b、108cに形成された断面円弧形状のレンズ部を示している。一般に、スクリーン108は、レンズ部108b1、108c1が形成されたマザー基板から所定サイズの領域を切り出すことにより取得される。この場合、図13(a)に示すように、スクリーン108の端縁付近のレンズ部108c1には、切り出し時の応力によって、基材108aからの剥離が起こり得る。こうなると、剥離した箇所からアルカリ性残留物が基材108aに滲入し易くなる。その結果、アルカリ性残留物により樹脂製の基材108aに劣化が生じ易くなる。このことは、スクリーン109においても同様である。
【0118】
そこで、変更例3では、図13(b)に示すように、スクリーン108の端縁付近に、レンズ部108b1、108c1に代えて、所定厚みの平坦な平坦部108b2、108c2が設けられる。すなわち、スクリーン108の形成時において、端縁付近の領域には、レンズ部108b1、108c1と同様の紫外線硬化樹脂が所定厚みで均一に塗布される。このように、端縁付近に平坦部108b2、108c2が設けられることにより、端縁付近におけるレンズ層108b、108c(平坦部108b2、108c2)と基材108aとの密着強度が確保される。このため、切り出し時の応力によって端縁付近に剥離が生じにくくなる。これにより、剥離箇所からアルカリ性残留物が基材108aに滲入することが抑止され、アルカリ性残留物による基材108aの劣化をより効果的に抑止できる。この構成および効果は、スクリーン109においても同様である。
【0119】
図13(c)は、変更例3に係る、スクリーン108、109において平坦部を形成する領域を模式的に示す平面図である。
【0120】
図13(c)において、ハッチングが付された領域A21、A22が、上述の平坦部が設けられる領域を示している。平坦部は、長方形のスクリーン108、109の4つの辺のうち、少なくとも、ホルダ301に保持される辺を含む領域に設けられればよい。上記実施形態では、スクリーン108のY軸負側の辺は、ホルダ301に保持されず、ホルダ301から離間している。また、スクリーン109のY軸正側の辺は、ホルダ301に保持されず、ホルダ301から離間している。したがって、スクリーン108、109のこれらの辺には、ホルダ301からアルカリ性残留物が滲入することが起こりにくい。このため、これらの辺には、平坦部を設けて剥離を抑制せずとも、アルカリ性残留物の滲入による劣化が生じにくいと言える。
【0121】
ただし、これらの辺にも平坦部を設けた方がスクリーン108、109をマザー基板から円滑に切り出し得る場合は、これらの辺にも平坦部が設けられてもよい。
【0122】
平坦部の幅は、少なくとも、スクリーン108、109に対するレーザ光の走査領域、すなわち、スクリーン108、109上において画像が描画される領域を含まないように設定される。すなわち、レー光の走査領域には、必ず、レンズ部108b1、108c1が存在するように、平坦部の幅が設定される。
【0123】
なお、本変更例3に係るスクリーン108、109は、ホルダ301のスクリーン108、109が接触し得る領域にアルカリ性残留物の滲入を排除する構成が適用されていない場合にも、用いられ得るものである。すなわち、このような構成のホルダ301に変更例3に係るスクリーン108、109が設置されると、上記のように、スクリーン108、109の端縁付近は剥離が抑止されるため、この端縁付近において、ホルダ301からスクリーン108、109の基材にアルカリ性残留物が滲入しにくくなる。よって、この場合も、変更例3の上記構成を備えるにより、スクリーン108、109の劣化をより効果的に防ぐことができる。
【0124】
<変更例4>
図14(a)、(b)は、それぞれ、変更例4に係るホルダ301の構成を示す斜視図である。図14(a)、(b)には、ホルダ01の一部拡大図が示されている。
【0125】
図14(a)、(b)に示すように、変更例4では、図9に示した突起301e、301iが、下枠部301aおよび上枠部301bの上面から省略されている。そして、アルカリ性残留物がスクリーン108、109に滲入することを防ぐための構成として、下枠部301aの上面に複数の突出部301qが形成され、また、上枠部301bの上面に複数の突出部301rが形成されている。突出部301qは、下枠部301aの4つの壁301dの内側に収まるようにして、開口301cの外周に沿って形成される。また、突出部301rは、上枠部301bの4つの壁301hの内側に収まるようにして、開口301gの外周に沿って形成される。ここでは、突出部301q、301rは、略等間隔に配列するよう形成されている。
【0126】
下枠部301aの上面に形成される複数の突出部301qは、円柱状の形状である。突出部301qは、角柱や円錐、角錐等の他の形状であってもよい。突出部301qの高さは、一定である。突出部301qの高さは、壁301dの高さよりも低い。突出部301qのサイズは、下枠部301aの上面にスクリーン108を支持することができれば特に限定されない。
【0127】
上枠部301bの上面に形成される複数の突出部301rは、円柱状の形状である。突出部301rは、角柱や円錐、角錐等の他の形状であってもよい。突出部301rの高さは、一定である。突出部301rの高さは、壁301hの高さよりも低い。突出部301rのサイズは、上枠部301bの上面にスクリーン109を支持することができれば特に限定されない。なお、突出部301qの高さと突出部301rの高さとは、互いに異なっていてもよい。
【0128】
突出部301q、301rは、上記した切削やレジストの被覆により、アルカリ性残留物が除去される。これにより、下枠部301aおよび上枠部301bの上面からアルカリ性残留物が除去されていない状態であっても、スクリーン108、109と下枠部301aおよび上枠部301bの上面との間に、アルカリ性残留物が除去された突出部301q、301rが介在するため、スクリーン108、109にアルカリ性残留物が滲入することを防ぐことができる。また、変更例4の構成によれば、突出部301q、301rのみに切削やレジストの被覆等の工程が行われるため、ホルダ301を簡易に構成することができる。
【0129】
また、突出部301q、301rのうち、スクリーン108、109が直接接触する部分は、突出部301q、301rの上面であるため、突出部301q、301rの上面に対してのみ、切削やレジストの被覆が行われ、アルカリ性残留物が除去されてもよい。この場合、ホルダ301をより簡易に構成することができる。
【0130】
なお、突出部301q、301rが、円錐や角錐、半球の形状である場合、突出部301q、301rとスクリーン108、109との間の接触は略点接触となり、接点の接触面積は極めて小さい。この場合、突出部301q、301rに対してアルカリ性残留物を除去する処理が施されていなくても、接触面積が極めて小さいため、突出部301q、301rからスクリーン108、109にはアルカリ性残留物が殆ど滲入しないことも想定され得る。したがって、突出部301q、301rがこのような形状を有する場合は、突出部301q、301rに対してアルカリ性残留物を除去する処理が省略されてもよい。ただし、より確実にアルカリ性残留物の滲入を防ぐためには、突出部301q、301rがこのような形状を有する場合にも、突出部301q、301rに対してアルカリ性残留物を除去する処理が施されることが好ましい。
【0131】
なお、変更例4においても、壁301d、301hの内側面には、上記実施形態と同様、切削やレジストの被覆等によって、アルカリ性残留物がスクリーン108、109に滲入することを排除する構成が適用されることが好ましい。また、下枠部301aおよび上枠部301bの上面の、スクリーン108、109が重なる領域のうち、突出部301q、301rが設置される以外の領域にも、上記実施形態と同様、切削やレジストの被覆等によって、アルカリ性残留物がスクリーン108、109に滲入することを排除する構成が適用されてもよい。これにより、スクリーン108、109に対するアルカリ性残留物の滲入をより確実に防ぐことができる。
【0132】
<その他の変更例>
必ずしも、スクリーン108、109が接触し得る領域の全てに、アルカリ性残留物の滲入を排除するための同じ構成が適用されずともよく、たとえば、スクリーン108、109が接触し得る領域の一部に、切削により、アルカリ性残留物の滲入を排除する構成が適用され、他の一部に、レジストの被覆により、アルカリ性残留物の滲入を排除する構成が適用されてもよい。また、図11(b)に示した変更例のように、スクリーン108、109が接触し得る領域の一部にスペーサ331、332が配置され、他の一部に、切削またはレジストの被覆により、アルカリ性残留物の滲入を排除する構成が適用されてもよい。
【0133】
また、アルカリ性残留物の滲入を防ぐための構成が適用される領域は、必ずしも、図8(b)および図9(a)、(b)にハッチングで示した領域に限られるものではなく、少なくとも、スクリーン108、109が接触し得る領域を含んでいればよい。たとえば、図8(b)に示した領域のうち、突部301m、301nの周囲の領域は、アルカリ性残留物の滲入を防ぐための構成が適用される領域から外されてもよく、あるいは、下枠部301aおよび上枠部301bの上面の、壁301d、301hに挟まれた角の部分が、アルカリ性残留物の滲入を防ぐための構成が適用される領域に含まれてもよい。
【0134】
なお、上記実施形態および変更例1、2において、アルカリ性残留物の滲入を防ぐための構成が適用された領域には、化成処理に代えて、アルカリ性残留物が残留し得ない他の表面処理が施されてもよい。たとえば、この領域に、エポキシ塗料を用いた耐熱塗装(静電塗装法による粉体塗装)が行われてもよい。これにより、これらの領域にも黒色の塗装を施すことができ、ホルダ301によって反射された迷光が虚像生成用のレーザ光に混入することをより確実に防ぐことができる。
【0135】
また、壁部301k下端の切欠き301k1は、必ずしも、図10(b)に示したように両方向に傾斜した山型の形状でなくてもよく、たとえば、一方向のみに傾斜した形状であってもよい。
【0136】
また、壁部301kからスクリーン108への液だれを抑制するための構造は、必ずしも、切欠き301k1でなくてもよく、たとえば、壁部301kのY軸正側の側面に山型の庇を設ける構成であってもよい。この場合、壁部301kの側面を流れ落ちる水滴は、庇に受けられてX軸正側またはX軸負側の端部へと導かれる。
【0137】
また、ホルダ301の形状は、必ずしも、上記実施形態および変更例1、2に示した形状に限られるものではない。
【0138】
また、上記実施形態において、必ずしも、スクリーン108、109が接触し得る領域の全てにアルカリ性残留物の滲入を防ぐための構成が設けられていなくてもよい。たとえば、スクリーン108、109において、スクリーン108、109の機能に及ぼす影響が低いと考えられるような端の部分は、化成処理された領域に接触していてもよい。
【0139】
また、上記実施形態では、2つのスクリーン108、109がホルダ301に設置されたが、スクリーンの数はこれに限られるものではなく、1つのスクリーンのみがホルダ301に設置されてもよい。
【0140】
また、スクリーンは、必ずしもZ軸方向に移動しなくてもよく、所定の位置に固定されてもよい。この場合、奥行き方向に視差のない画像のみが表示される。
【0141】
また、スクリーン108、109は、必ずしも、両面にレンズ層が形成されていなくてもよく、たとえば、レーザ光をX軸方向およびY軸方向に拡散させる複数のレンズ部が、スクリーン108、109の一方の面にマトリックス状に並んで形成されてもよい。この場合、変更例3に示した平坦部は、これらレンズ部が形成されたスクリーン108、109の面に形成されればよい。
【0142】
また、上記実施形態では、本発明を乗用車1に搭載されるヘッドアップディスプレイに適用した例を示したが、本発明は、車載用に限らず、他の種類の画像表示装置にも適用可能である。
【0143】
また、画像表示装置20および照射光生成部21の構成は、図1(c)および図2に記載された構成に限られるものではなく、適宜、変更可能である。
【0144】
なお、本発明に係る樹脂部品保持部材は、上述の画像表示装置20の他、種々の装置に用いられ得る。たとえば、レーザ光を目標領域に出射し、その反射光により、目標領域における物体の存在または物体までの距離を測定するレーザレーダに、本発明に係る樹脂部品保持部材が用いられてもよい。この場合、樹脂部品保持部材は、たとえば、反射光を集光するための樹脂材料からなる集光レンズを保持するために用いられ得る。
【0145】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0146】
20 … 画像表示装置
108、109 … スクリーン(樹脂部品)
108c1、108b1 ・・・ レンズ部
108c2、108c2 ・・・ 平坦部
301 … ホルダ(樹脂部品保持部材)
301k … 壁部
301k1 … 切欠き(液だれを抑制するための構造)
301o、301p … 溝部(流通部)
301q、301r … 突出部
331、332 … スペーサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14