IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

特許7249549樹脂組成物およびこれを含む異方性導電フィルム、並びに電子装置
<>
  • 特許-樹脂組成物およびこれを含む異方性導電フィルム、並びに電子装置 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】樹脂組成物およびこれを含む異方性導電フィルム、並びに電子装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/20 20060101AFI20230324BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
C08G59/20
H01R11/01 501C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019051335
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2020152789
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池内 智史
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】岸 新
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-119287(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0188468(US,A1)
【文献】特開2013-071152(JP,A)
【文献】特開2018-131569(JP,A)
【文献】国際公開第2008/123087(WO,A1)
【文献】特開2012-156526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59/00- 59/72
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
B23K35/00- 35/40
H01R11/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料と、樹脂成分と、硬化剤と、非導電性の無機フィラーと、を含む樹脂組成物であって、
前記導電性材料は、はんだを含み、
前記樹脂成分は、エポキシ樹脂およびフェノキシ樹脂を含み、
前記エポキシ樹脂は、
ビスフェノール型エポキシ樹脂と、
多環芳香族型エポキシ樹脂と、
ノボラック型エポキシ樹脂と、を含み、
前記無機フィラーは、前記樹脂組成物中の不揮発成分に15質量%以上、50質量%以下含まれ
前記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は30000以上であり、
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂の重量平均分子量は1000以下である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記多環芳香族型エポキシ樹脂の含有量は、前記ビスフェノール型エポキシ樹脂100質量部に対して11質量部以上、41質量部以下であり、
前記ノボラック型エポキシ樹脂の含有量は、前記ビスフェノール型エポキシ樹脂100質量部に対して1質量部以上、20質量部以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化剤は、イミダゾール系硬化剤である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機フィラーは、シリカ粒子である、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記無機フィラーの平均粒径は、前記導電性材料の平均粒径より小さい、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記導電性材料は、はんだ粒子である、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記硬化剤は、前記エポキシ樹脂100質量部に対して1質量部以上、50質量部以下含まれる、請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記フェノキシ樹脂は、前記エポキシ樹脂100質量部に対して10質量部以上、120質量部以下含まれる、請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記導電性材料は、前記樹脂組成物中の不揮発成分に10質量%以上、65質量%以下含まれる、請求項1~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記はんだは、スズ-ビスマス合金、スズ-ビスマス-インジウム合金およびビスマス-インジウム合金よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は100000以下であり、
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂の重量平均分子量は280以上である、請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、異方性導電フィルム。
【請求項13】
第1回路部材と、第2回路部材と、前記第1回路部材と前記第2回路部材とを接続する接続材料と、を備え、
前記接続材料は、請求項1~11のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物である電子装置。
【請求項14】
前記第1回路部材および前記第2回路部材の少なくとも一方が、ガラス基板、ガラスエポキシ基板およびフレキシブルプリント基板よりなる群から選択される少なくとも1つを備える、請求項13に記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性材料を含む樹脂組成物およびこれを含む異方性導電フィルム、並びに電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル基板とリジット基板との接合や、電子部品と配線基板との電気的接続には、異方性導電接着剤が利用されている。異方性導電接着剤は、例えば、エポキシ樹脂および導電性材料を含む。導電性材料は、通常、樹脂粒子とその表面を被覆する導電層とで形成されている。このような導電性材料は、例えば、200℃近い高温下、50MPa~150MPaの高圧力で、電極間で圧縮されることにより、電極との電気的な接触を達成する。この場合、基板には、熱による膨張収縮の応力および圧縮の際にかかる応力が残留し易い。近年、配線基板の薄型化が進んでいるため、上記のような応力による不具合が顕在化しつつある。
【0003】
そこで、導電性材料として、はんだを用いることが提案されている(特許文献1~3)。これにより、低温および低荷重で、電子部品と配線基板との電気的接続が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/124275号パンフレット
【文献】国際公開第2017/033935号パンフレット
【文献】特開2006-108523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電極同士の接続信頼性を高めるには、硬化したエポキシ樹脂が熱によって収縮および/または膨張を繰り返す場合にも、電極と導電性材料との接触が維持されていなければならない。上記のような樹脂粒子とその表面を被覆する導電層とで形成された導電性材料を用いる場合、導電性粒子も膨張および収縮するため、電極と導電性材料との接触が維持され易い。一方、導電性材料としてはんだを用いる場合、固化したはんだは、ほとんど変形しないため、エポキシ樹脂の膨張および収縮によって電極から剥離する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、導電性材料と、樹脂成分と、硬化剤と、非導電性の無機フィラーと、を含む樹脂組成物であって、前記導電性材料は、はんだを含み、前記樹脂成分は、エポキシ樹脂およびフェノキシ樹脂を含み、前記エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂と、多環芳香族型エポキシ樹脂と、ノボラック型エポキシ樹脂と、を含み、前記無機フィラーは、前記樹脂組成物中の不揮発成分に15質量%以上、50質量%以下含まれる、樹脂組成物に関する。
【0007】
また、本発明は、前記樹脂組成物を含む、異方性導電フィルムに関する。
【0008】
さらに、本発明は、第1回路部材と、第2回路部材と、前記第1回路部材と前記第2回路部材とを接続する接続材料と、を備え、前記接続材料が、前記樹脂組成物の硬化物である電子装置に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い接続信頼性を実現できる樹脂組成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る電子装置の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
エポキシ樹脂の膨張および収縮の影響を小さくするため、樹脂組成物に無機フィラーを配合することが考えられる。これにより、硬化後の樹脂組成物の弾性率が向上して、硬化したエポキシ樹脂が熱によって収縮および/または膨張を繰り返す場合にも、電極と硬化した樹脂組成物との接触が維持され易くなることが期待される。しかし、導電性材料がはんだを含む場合、無機フィラーを配合するだけでは、接続信頼性を向上させるには不十分である。
【0012】
シリカおよびはんだを含む樹脂組成物において、高い接続信頼性が得られない理由は定かではないが、エポキシ樹脂のガラス転移温度、シリカが配合された樹脂組成物の線膨張係数や溶融粘度、はんだの融点等が影響していると考えられる。
【0013】
ここで、はんだを含む樹脂組成物において、シリカ等の無機フィラーを特定の割合で配合するとともに、複数種のエポキシ樹脂を特定の割合で使用することにより、高い接続信頼性が得られることが判明した。本実施形態は、高い接続信頼性が得られる樹脂組成物に関する。さらに、本実施形態は、この樹脂組成物を含む異方性導電フィルム、および、樹脂組成物の硬化物を含む電子装置に関する。
【0014】
[樹脂組成物]
本実施形態に係る樹脂組成物は、異方性導電接着剤として、回路部材同士の接続、例えば電子部品を配線基板に直接実装するチップオングラス(COG)実装などに用いられる。樹脂組成物は、導電性材料と、樹脂成分と、硬化剤と、非導電性の無機フィラーと、を含む。導電性材料は、はんだを含む。
【0015】
無機フィラーは、樹脂組成物中の不揮発成分に15質量%以上、50質量%以下含まれる。これにより、樹脂組成物の硬化物は優れた弾性を示す。以下、樹脂組成物中の不揮発成分を固形分と称する場合がある。不揮発成分の質量は、調製された樹脂組成物から溶媒の質量を引いて算出される。また、樹脂組成物の硬化物の全体の質量は、樹脂組成物中の不揮発成分の質量とみなしてよい。
【0016】
固形分に対する無機フィラーの質量割合は、樹脂組成物を含むフィルム(溶媒除去後の樹脂組成物)の厚み方向の断面から求めてもよい。例えば、フィルムの厚み方向の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて倍率100倍以上で撮影した画像を、導電性材料、無機フィラーおよび樹脂成分にわけて三値化する。そして、観察視野内において導電性材料、無機フィラーおよび樹脂成分が占めるそれぞれの面積割合を算出する。この面積割合をフィルムにおける体積割合とみなし、各成分の比重を考慮することによって、各成分の質量割合が算出できる。無機フィラーの質量割合は、上記フィルムの硬化物の断面から求めてもよい。
【0017】
樹脂成分は、エポキシ樹脂およびフェノキシ樹脂を含む。樹脂成分全体に含まれるエポキシ樹脂およびフェノキシ樹脂の合計量は、90質量%以上であることが好ましい。
【0018】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂と、多環芳香族型エポキシ樹脂と、ノボラック型エポキシ樹脂と、が用いられる。多環芳香族型エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂100質量部に対して、11質量部以上、41質量部以下配合される。ノボラック型エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂100質量部に対して、1質量部以上、20質量部以下配合される。これにより、上記範囲の無機フィラーを含む場合における樹脂組成物の硬化物の接続信頼性は、著しく向上する。
【0019】
A.樹脂成分
樹脂成分は、エポキシ樹脂およびフェノキシ樹脂を含む。
【0020】
a.エポキシ樹脂
エポキシ樹脂は、分子内に少なくとも1つのエポキシ基を有し、エポキシ基が開環して付加反応が起こることにより硬化する。
【0021】
本実施形態において、エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂と、多環芳香族型エポキシ樹脂と、ノボラック型エポキシ樹脂と、を含む。これらエポキシ樹脂は、官能基として、グリシジルエーテル基、グリシジルアミン基およびグリシジルエステル基よりなる群から選択される少なくとも1つを有する。これらエポキシ樹脂は、官能基を2つ有していてもよいし、3つ以上有していてもよい。
【0022】
a1.ビスフェノール型エポキシ樹脂
ビスフェノール型エポキシ樹脂は、2つのフェニル基が炭化水素基等を介して結合した基本骨格を有し、主に接着性の向上に寄与する。
【0023】
一例として、少なくとも2つのグリシジルエーテル基を有するビスフェノール型エポキシ樹脂の一般式(1)を示す。なお、炭素に結合している水素は省略されている。
【0024】
【化1】
【0025】
一般式(1)中、R1は、炭化水素基、または、スルホニル基であり、nは0以上の整数である。
【0026】
炭化水素基であるR1は特に限定されない。炭化水素基であるR1は、例えば、-CR-で表される。RおよびRはそれぞれ独立して、例えば、水素、フッ素、塩素、炭素数が1~6の脂肪族炭化水素基、炭素数が4~14の脂環式炭化水素基、芳香族基、多環芳香族基、複素環等、あるいはこれらの組み合わせであってよい。RおよびRに含まれる水素は、フッ素、塩素、グリシジルエーテル基、炭素数が1~6の脂肪族炭化水素基、炭素数が4~14の脂環式炭化水素基、芳香族基、多環芳香族基、複素環により置換されていてよい。炭化水素基であるR1は、脂環式炭化水素基であってよい。
【0027】
このような炭化水素基R1としては、例えば、-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-CH(C11)、-C(CH)(C11)-、-C(C11-、-C(=C(Cl))-、-CH(C)-、-C(C-、-C(CH-(C)-C(CH-、C10-、-C1222-等が挙げられる。
【0028】
基本骨格であるフェニル基に含まれる水素は、フッ素、塩素、炭素数が1~6の脂肪族炭化水素基、炭素数が4~14の脂環式炭化水素基、芳香族基、多環芳香族基、複素環基等により置換されていてよい。
【0029】
加熱時の流動性および硬化後の接着性の観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。ビスフェノール型エポキシ樹脂は、1種を単独で、あるいは、複数種を組み合わせて用いられる。
【0030】
ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ当量は特に限定されず、例えば100以上であってよく、500以下であってよい。エポキシ当量が上記の範囲内であると、樹脂組成物の接着性がさらに高くなり易い。ビスフェノール型エポキシ樹脂の分子量(重量平均分子量)は特に限定されず、例えば280以上であってよく、1000以下であってよい。エポキシ樹脂の分子量が上記の範囲であると、エポキシ当量が上記の範囲になり易い。
【0031】
a2.多環芳香族型エポキシ樹脂
多環芳香族型エポキシ樹脂は、基本骨格として多環芳香族炭化水素を有し、主に低温硬化性および弾性率の向上に寄与する。
【0032】
芳香環の員数は特に限定されず、4員環、5員環、6員環、7員環等であってもよい。また、芳香環は、酸素原子や窒素原子等を含む複素環であってもよい。多環芳香族型エポキシ樹脂として、具体的には、ナフタレン型エポキシ樹脂、多官能ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂等が挙げられる。多環芳香族型エポキシ樹脂は、1種を単独で、あるいは、複数種を組み合わせて用いられる。
【0033】
一例として、少なくとも2つのグリシジルエーテル基を有するナフタレン型エポキシ樹脂の一般式(2)を示す。ナフタレン型エポキシ樹脂は、一般式(2)で示される化合物をモノマー単位とするオリゴマーであってもよい。なお、炭素に結合している水素は省略されている。
【0034】
【化2】
【0035】
ナフタレン基に含まれる水素は、フッ素、塩素、炭素数が1~6の脂肪族炭化水素基、炭素数が4~14の脂環式炭化水素基、芳香族基、多環芳香族基、複素環等により置換されていてよい。ナフタレン型エポキシ樹脂には、複数の上記一般式(2)で表される化合物が、炭化水素基(例えば-CH-)を介して2以上結合した化合物(多官能ナフタレン型エポキシ樹脂)も含まれる。
【0036】
多環芳香族型エポキシ樹脂のエポキシ当量は特に限定されず、例えば100以上であってよく、500以下であってよい。エポキシ当量が上記の範囲内であると、樹脂組成物の低温硬化性および弾性率がさらに高くなり易い。多環芳香族型エポキシ樹脂の分子量は特に限定されず、例えば280以上であってよく、1000以下であってよい。エポキシ樹脂の分子量が上記の範囲であると、エポキシ当量が上記の範囲になり易い。
【0037】
多環芳香族型エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂100質量部に対して、11質量部以上、41質量部以下配合される。多環芳香族型エポキシ樹脂がこの範囲で含まれることにより、低温硬化性が向上するとともに、樹脂組成物の弾性率も高まる。多環芳香族型エポキシ樹脂の上記配合量は、15質量部以上であってよく、20質量部以上であってよい。多環芳香族型エポキシ樹脂の上記配合量は、35質量部以下であってよく、30質量部以下であってよい。
【0038】
a3.ノボラック型エポキシ樹脂
ノボラック型エポキシ樹脂は、例えば、フェノールあるいはクレゾールが縮合された基本骨格を有し、主に弾性率の向上に寄与する。
【0039】
ノボラック型エポキシ樹脂として、具体的には、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン含有ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ノボラック型エポキシ樹脂は、1種を単独で、あるいは、複数種を組み合わせて用いられる。なかでも、硬化後の弾性率の観点から、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0040】
一例として、少なくとも2つのグリシジルエーテル基を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂の一般式(3)を示す。なお、炭素に結合している水素は省略されている。
【0041】
【化3】
【0042】
一般式(3)中、Rは、炭化水素基、または、スルホニル基であり、mは0以上の整数である。
【0043】
炭化水素基であるRは特に限定されない。炭化水素基であるRとしては、例えば、上記Rと同様の基が挙げられる。基本骨格であるフェニル基に含まれる水素は、フッ素、塩素、炭素数が1~6の脂肪族炭化水素基、炭素数が4~14の脂環式炭化水素基、芳香族基、多環芳香族基、複素環等により置換されていてよい。
【0044】
ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ当量は特に限定されず、例えば100以上であってよく、500以下であってよい。エポキシ当量が上記の範囲内であると、樹脂組成物の弾性率がさらに高くなり易い。ノボラック型エポキシ樹脂の分子量(重量平均分子量)は特に限定されず、例えば300以上であってよく、1000以下であってよい。エポキシ樹脂の分子量が上記の範囲であると、エポキシ当量が上記の範囲になり易い。
【0045】
ノボラック型エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂100質量部に対して、1質量部以上、20質量部以下配合される。ノボラック型エポキシ樹脂がこの範囲で含まれることにより、樹脂組成物の弾性率が高まる。ノボラック型エポキシ樹脂の上記配合量は、5質量部以上であってよく、7質量部以上であってよい。ノボラック型エポキシ樹脂の上記配合量は、15質量部以下であってよい。
【0046】
a4.その他のエポキシ樹脂
樹脂成分は、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂、多環芳香族型エポキシ樹脂およびノボラック型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を含んでもよい。
【0047】
その他のエポキシ樹脂としては、例えば、トリフェニルメタン型(トリスフェノールメタン型)エポキシ樹脂、テトラキスフェノールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール・ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。その他のエポキシ樹脂は、1種を単独で、あるいは、複数種を組み合わせて用いられる。
【0048】
b.フェノキシ樹脂
フェノキシ樹脂は、例えば、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンとの反応により合成される。フェノキシ樹脂によって、樹脂組成物はフィルム状に形成され易くなる。さらに、得られるフィルムは、高い可撓性を有する。そのため、フィルムは、回路部材同士の間に密着するように配置され得る。よって、低温、短時間かつ低荷重の熱圧着であっても、回路部材同士を強固に接着することができる。
【0049】
フェノキシ樹脂の骨格は、特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型の骨格、ビスフェノールF型の骨格、ビスフェノールS型の骨格、ビフェニル骨格、ノボラック骨格、ナフタレン骨格、イミド骨格などを有していてもよい。フェノキシ樹脂は、1種を単独で使用することができ、必要に応じて2種以上を任意に組み合わせて使用することができる。
【0050】
フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、例えば30000以上であり、好ましくは35000以上、100000以下であってよく、38000以上、70000以下であってよい。フェノキシ樹脂の重量平均分子量が上記範囲であると、フェノキシ樹脂の軟化点は約80℃~約160℃になり、常温で固体である。そのため、フェノキシ樹脂は熱可塑性樹脂として挙動し、樹脂組成物はよりフィルム形成され易くなる。
【0051】
フェノキシ樹脂は、例えば、エポキシ樹脂100質量部に対して、30質量部以上、120質量部以下配合されてよく、35質量部以上、80質量部以下配合されてよい。フェノキシ樹脂の含有量が上記の範囲内であると、樹脂組成物はさらにフィルム形成され易くなる。また、樹脂成分の硬化不足による接着強度の低下が抑制され易くなり、信頼性が向上する。
【0052】
c.その他の樹脂成分
樹脂組成物は、エポキシ樹脂およびフェノキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂などの樹脂成分を含んでもよい。
【0053】
B.導電性材料
導電性粒子は、はんだを含む。はんだを含む導電性粒子は、はんだのみから構成されたはんだ粒子であってもよく、例えば、はんだ以外の基材粒子をはんだで被覆した粒子であってもよい。また、樹脂組成物には、はんだを含まない導電性粒子が含まれてもよい。低温での熱圧着による接続が容易となる点で、導電性粒子は、はんだのみから構成されたはんだ粒子であることが好ましい。また、同様の観点から、導電性粒子として含まれるはんだの量は、導電性粒子全量の90質量%以上であることが好ましい。
【0054】
導電性粒子に含まれるはんだは特に限定されないが、融点が85℃以上、150℃以下であることが好ましい。このようなはんだとしては、例えば、スズ(Sn)、インジウム(In)、ビスマス(Bi)などの元素を含む金属や合金などが挙げられる。はんだは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意に選択し、組み合わせて用いてもよい。なかでも、スズおよびビスマスを含むスズ-ビスマス合金、スズ、ビスマスおよびインジウムを含むスズ-ビスマス-インジウム合金、ビスマスおよびインジウムを含むビスマス-インジウム合金であることが好ましい。特に、融点が85℃以上100℃以下である点で、ビスマス-インジウム合金が好ましい。
【0055】
ビスマス-インジウム合金から構成されるはんだにおいて、ビスマスの含有量は、ビスマスおよびインジウムの合計100質量%に対して、例えば33質量%以上85質量%以下の範囲内であり、好ましくは40質量%以上85質量%以下の範囲内である。ビスマスの含有量が上記の範囲内であると、はんだは、エポキシ樹脂の硬化温度以下の温度で溶融することができる。また、LCDモジュールなどの製造に樹脂組成物を用いる際、樹脂組成物に加える荷重を低減することができる。そのため、回路部材へのストレスを大幅に低減することができる。
【0056】
導電性粒子の平均粒径は、例えば1μm以上、20μm以下であってよく、1μm以上、10μm以下であってよい。導電性粒子の平均粒径が上記範囲内にあると、回路部材同士の電気的接続がより良好になる。また、回路部材に設けられた隣接する電極間のショートが低減され易い。
【0057】
平均粒径は、体積基準の粒度分布における累積体積50%における粒径(D50。以下同じ。)である。平均粒径は、樹脂組成物を含むフィルムの厚み方向の断面から求めてもよい。例えば、フィルムの厚み方向の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて倍率1000倍以上で撮影した画像を、導電性材料、無機フィラーおよび樹脂成分にわけて三値化する。そして、観察視野内から任意の複数個(例えば、10個)の導電性材料を選択して粒子径を算出し、平均化することにより求めることができる。導電性材料の断面の面積と同じ面積を有する円の直径を、その導電性材料の粒子径とすればよい。無機フィラーの平均粒径も同様にして求められる。無機フィラーの平均粒径は、上記フィルムの硬化物の断面から求めてもよい。
【0058】
導電性粒子の含有量は、樹脂組成物の固形分を100質量%として、例えば1質量%以上、50質量%以下であってよく、20質量%以上、50質量%以下であってよく、20質量%以上、45質量%以下であってよい。導電性粒子の含有量が上記範囲であると、電気的接続の信頼性が確保されるとともに、上記ショートが低減され易くなる。
【0059】
導電性材料としてはんだ粒子を含む樹脂組成物を用いて、回路部材同士を熱圧着させたときの樹脂組成物の挙動は、以下のようであると考えられる。まず、はんだ粒子が溶融する。液体となったはんだは、例えば回路部材に設けられた電極上に濡れ広がる。その後、樹脂成分が流動し始めて、回路部材同士の間に広がる。さらに加熱されると、樹脂成分中のエポキシ樹脂の硬化が始まる。その後、冷却されることにより、回路部材に設けられている電極同士は、樹脂組成物に含まれるはんだを介して接触し、電気的に接続されるとともに、回路部材同士は、樹脂成分によって接合される。
【0060】
C.硬化剤
硬化剤は特に限定されない。硬化剤は、樹脂組成物の硬化物の弾性率が高まり易い点で、アミン化合物を含んでよい。ここで、硬化剤は、一般に硬化促進剤と言われる化合物を含む。
【0061】
アミン化合物としては特に限定されず、例えば、イミダゾール系硬化剤、エポキシアミンアダクト硬化剤、エポキシイミダゾールアダクト硬化剤、脂肪族ポリアミン化合物、芳香族ポリアミン化合物、アミンイミド化合物またはブロックイソシアネート化合物にカルバミン酸エステルを反応させて得られるオキサゾリジノン環を有する化合物、イミダゾールとカルボン酸との塩、アミンのカルバミン塩あるいはオニウム塩などが挙げられる。これらのアミン化合物は、1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて使用できる。アミン化合物は、アミン化合物を含むコアの表面が、無機酸化物または合成樹脂を含むシェルによって被覆された構造(マイクロカプセル型構造)で含まれていてもよい。なかでも、硬化剤は、樹脂組成物の硬化物の弾性率がより高まり易い点で、イミダゾール系硬化剤を含むことが好ましい。
【0062】
イミダゾール系硬化剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾールなどが挙げられる。
【0063】
エポキシアミンアダクト硬化剤とは、エポキシ樹脂とアミン化合物との反応生成物(いわゆる、エポキシ樹脂アミンアダクト)である。詳しくは、単官能および多官能エポキシ樹脂のエポキシ基と、活性水素を1分子内に1個以上有し、かつ1級、2級、3級アミノ基の中から選ばれた置換基を少なくとも1分子内に1個以上有するアミン化合物とが、付加反応して得られる反応生成物である。
【0064】
エポキシイミダゾールアダクト硬化剤とは、エポキシ樹脂とイミダゾール化合物との反応生成物(いわゆる、エポキシ樹脂イミダゾールアダクト)である。
【0065】
脂肪族ポリアミン化合物は、通常、アミン化合物とイソシアネート化合物との反応生成物である。具体的には、ジアルキルアミノアルキルアミン化合物または分子内に活性水素を有する窒素原子を1あるいは2個以上有する環状アミン化合物と、ジイソシアネート化合物との反応生成物(すなわち、脂肪族ポリアミン変性体)などである。
【0066】
芳香族ポリアミン化合物としては、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、あるいはこれらの変性体などが挙げられる。
【0067】
これらのアミン化合物の市販品としては、フジキュアーFXE-1000、フジキュアーFXR-1020、フジキュアーFXR-1081(いずれも(株)T&K TOKA製);アミキュアPN-23、アミキュアPN-H、アミキュアMY-24(いずれも味の素ファインテクノ(株)製);アデカハードナーEH-4357S、アデカハードナーEH-5030S、アデカハードナーEH-5057P(いずれも(株)ADEKA製);ノバキュアHX-3742、ノバキュアHXA-3922HP、ノバキュアHX-3088、ノバキュアHX-3942(いずれも旭化成(株)製)などが挙げられる。
【0068】
アミンアダクト硬化剤、イミダゾールアダクト硬化剤、脂肪族ポリアミン化合物および芳香族ポリアミン化合物は、いわゆる潜在性の硬化剤である。潜在性の硬化剤は、室温付近では、一般的な液状のエポキシ樹脂には不溶であるが、加熱することにより可溶化して、硬化剤として作用する。
【0069】
硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、1質量部以上、50質量部以下であってよく、3質量部以上、20質量部以下であってよい。
【0070】
樹脂組成物は、アミン化合物以外に、例えば、ポリアミド、酸無水物、ジシアンジアミド、ホスフィン、ホスホニウム塩などの公知の硬化剤を含んでいてもよい。硬化剤全体に含まれるアミン化合物の量は、80質量%以上であることが好ましい。
【0071】
D.無機フィラー
無機フィラーとしては、非導電性である限り特に限定されない。具体的には、溶融シリカなどのシリカ、タルク、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。なかでも、安価である点で、溶融シリカが好ましい。
【0072】
無機フィラーの含有量は、樹脂組成物に含まれる固形分の15質量%以上、50質量%以下である。これにより、樹脂組成物の接着性を損なわずに、その硬化物の弾性率を向上することができる。無機フィラーの上記含有量は、17質量%以上、40質量%以下であってよく、20質量%以上、35質量%以下であってよい。
【0073】
無機フィラーの平均粒径は特に限定されない。導電性材料による導通が妨げられ難い点で、無機フィラーの平均粒径Dは、導電性材料の平均粒径Dより小さくてよい。平均粒径Dに対する平均粒径Dの割合(D/D)は、1未満であってよく、0.6以下であってよい。無機フィラーの平均粒径は、例えば0.1μm以上、10μm以下であってよく、0.2μm以上、7μm以下であってよい。
【0074】
無機フィラーは、表面処理が施されていてもよい。例えば、無機フィラーの表面は、シランカップリング剤で処理されていてもよく、グリシジル基を有する化合物で処理されていてもよい。
【0075】
樹脂組成物は、導電性材料、樹脂成分、硬化剤、無機フィラー以外に、溶媒、カップリング剤などを含んでもよい。溶媒は、例えば、樹脂組成物を調製する際に、フェノキシ樹脂を溶解するために用いられる。このとき、フェノキシ樹脂は、予め溶媒中に溶解させた後に他の成分と混合されてもよい。溶媒は特に限定されない。フィルム成形性の観点から、溶媒は、蒸気圧が低く、沸点が120℃以下であってよい。このような溶媒としては、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチルなどが挙げられる。溶媒は、1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0076】
樹脂組成物は、例えば、導電性材料、樹脂成分、硬化剤、無機フィラーおよび上記その他の成分をミキサーなどで混合することによって製造することができる。
【0077】
[異方性導電フィルム]
本実施形態に係る異方性導電フィルムは、上記の樹脂組成物を含む。このような異方性導電フィルムの硬化物は、十分な弾性、接着強度および導電性を備える。
【0078】
異方性導電フィルムは、例えば、樹脂組成物を上記の溶媒に溶解させた後、バーコーターなどを用いて所望の膜厚になるように離型紙に塗布し、溶媒を除去することにより得られる。また、異方性導電フィルムは、例えば、樹脂組成物を加熱してフィルム状に伸ばした後、さらに加熱して、エポキシ樹脂を半硬化させることによっても形成することができる。
【0079】
異方性導電フィルムの厚さは特に限定されない。異方性導電フィルムの厚さは、例えば、5μm以上、50μm以下であってよく、10μm以上、40μm以下であってよい。フィルムがこのような厚さであると、ハンドリング性および可撓性が高まりやすい。
【0080】
硬化後の異方性導電フィルムの弾性率は特に限定されない。ただし、硬化後の異方性導電フィルムの高温時における弾性率は、過度に低くないことが好ましい。硬化後の異方性導電フィルムの高温時(70℃~100℃)における弾性率Eは、例えば、2.5GPa以上であってよく、3GPa以上であってよい。これにより、接続信頼性はさらに高まる。一方で、高温時における弾性率Eが高い場合に、接続信頼性が高いとは限らない。弾性率は、粘弾性測定装置により測定することができる。
【0081】
硬化後の異方性導電フィルムの接続抵抗値は、信頼性試験中において過度に変化しないことが好ましい。例えば、信頼性試験中に測定された最小の接続抵抗値Rminに対する、試験中に測定された最大の接続抵抗値Rmaxの割合(=Rmax/Rmin)は、5以下であってよく、3以下であってよい。これにより、接続信頼性はさらに高まる。
【0082】
信頼性試験は、例えば、以下のようにして行われる。異方性導電フィルムを、2枚の基板(例えば、ガラス基板およびフレキシブル基板)の間に配置し、加熱しながら圧着して接合体を得る。加熱および荷重は、フィルムの組成に応じて適宜設定する。例えば、150℃に加熱しながら、30MPaの圧力で10秒間加圧する。得られた接合体を、JIS C 60068-2-14法に準じて、冷熱衝撃信頼性試験を行う。具体的には、低温(T)-40℃、高温(T)85℃、放置時間(t)30分、サイクル数1000であってよい。試験中の接続抵抗値は、150サイクルごとに接合体を試験装置から取り出して測定すればよい。
【0083】
[電子装置]
本発明の実施形態に係る電子装置は、第1回路部材と、第2回路部材と、第1回路部材および第2回路部材を接続する接続材料と、を備える。接続材料は、本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物である。上記樹脂組成物は低温で短時間での硬化が可能であるため、接続後の回路部材の歪みおよび反りが小さく、良好な電気的接続を有する電子装置が得られる。
【0084】
第1回路部材および第2回路部材として用いられる回路部材は、特に限定されず、半導体チップ、電子部品パッケージ、配線基板、コネクタなどである。第1回路部材と、第2回路部材とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0085】
第1回路部材と第2回路部材とを接続する樹脂組成物は、低温、低荷重かつ短時間での硬化が可能である。そのため、第1回路部材および第2回路部材の少なくとも一方の厚みは、例えば5mm以下であってよく、1mm以下であってよく、500μm以下であってよい。また、第1回路部材および第2回路部材の少なくとも一方は、耐熱性の低いガラス基板、ガラスエポキシ基板およびフレキシブルプリント基板であってもよい。これらのような回路部材を用いても、接続後に回路部材の歪みおよび反りが生じにくくなり、良好な電気的接続を有する電子装置を得ることができる。
【0086】
第1回路部材および第2回路部材の少なくとも一方は、例えば、テレビ、タブレット、スマートフォン、ウェアラブルデバイスなどが具備する表示パネルに用いられる透明基板を含んでもよい。透明基板は、半透明であってもよい。透明基板としては、ガラス基板および樹脂フィルム基板が挙げられる。樹脂フィルム基板は、透明性を有する樹脂フィルムで形成されている。透明性を有する樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などが挙げられる。
【0087】
このような第1回路部材と、第2回路部材とを備える電子装置としては、例えば、LCDモジュール、カメラモジュール、ハードディスク、電子ペーパー、タッチパネル、プリンタヘッド、ICカード、タグ、携帯電話内部などがある。
【0088】
図1は、電子装置の要部である第1回路部材10と第2回路部材20との接続部分の縦断面の拡大図である。第1回路部材10と、第2回路部材20とは、樹脂組成物の硬化物30によって接続される。樹脂組成物が硬化する際、樹脂組成物に含まれるはんだが加熱によって溶融し、その後、固化することにより、はんだ部32が形成される。はんだ部32によって、第1回路部材10の電極1と第2回路部材20の電極2とが電気的に接続する。樹脂部31は、第1回路部材10と第2回路部材20とを接着するとともに、はんだ部32を覆って、はんだ部32を保護する役割を果たしている。図示例では、両電極とはんだ部32との隙間を埋めるように樹脂部31が形成されている。はんだ部32を形成しない導電性材料33は、樹脂部31に分散しており、隣接する電極間における絶縁性は確保される。無機フィラー34もまた樹脂部31に分散している。
【0089】
第1回路部材および第2回路部材を備えた電子装置の製造方法について、第1回路部材および第2回路部材がそれぞれ電極を備える場合を例にして説明する。
第1回路部材が備える電極の少なくとも一部を覆う領域(以下、第1接続領域)に、接続材料である本実施形態に係る樹脂組成物を配置する。樹脂組成物が未硬化または半硬化状態のペースト状であれば、印刷装置、ディスペンサ、インクジェットノズルなどを用い、第1接続領域に樹脂組成物を塗布すればよい。樹脂組成物がフィルム状であれば、基材から所定形状に切り出された当該フィルムを剥がし、第1接続領域に圧着すればよい。このような操作は、例えば公知のテープ貼り付け装置により行われる。なお、第2回路部材が備える電極の少なくとも一部を覆う領域(第2接続領域)に、樹脂組成物を配置してもよく、第1および第2接続領域の両方に配置してもよい。これにより、第1回路部材と第2回路部材とが対向配置された積層構造が得られる。
【0090】
第1回路部材と第2回路部材とを対向配置する際に、樹脂組成物を短時間だけ加熱する仮圧着を行ってもよい。これにより、第1回路部材と第2回路部材との位置ずれを防止することができる。仮圧着は、例えばヒーターなどの加熱手段により、第2回路部材(または第1回路部材)を介して、樹脂組成物中のはんだ粒子が溶融せず、かつ樹脂組成物が僅かに硬化する程度の加熱を樹脂組成物に対して行うことができる。仮圧着の際、第1回路部材および/または第2回路部材を押圧する圧力は、例えば0.5MPa以上、1.0MPa以下であればよく、仮圧着の時間は、例えば0.1秒以上、1秒以下程度であればよい。仮圧着の温度は、例えばはんだの融点より10℃低い温度以下であればよい。
【0091】
次に、第2回路部材を第1回路部材に対して押圧しながら加熱(熱圧着)して、樹脂組成物に含まれるはんだを溶融させると同時に樹脂組成物中の樹脂を硬化させる。その後、加熱が停止され、溶融したはんだは固化する。なお、第2回路部材を第1回路部材に対して押圧すると、第1回路部材も第2回路部材に対して押圧されることになる。つまり、どちらの回路部材に押圧のためのツールを押し当ててもよい。これにより、第1回路部材と、第2回路部材と、第1回路部材および第2回路部材を接続する樹脂組成物の硬化物を備えた電子装置が形成される。
【0092】
熱圧着工程において、第1回路部材および/または第2回路部材を加熱する温度は、樹脂組成物に含まれるはんだの融点、エポキシ樹脂の硬化温度などに応じて適宜決定される。加熱温度は、例えば、100℃以上、160℃以下であってよく、100℃以上、150℃以下であってよい。第1回路部材および第2回路部材を接続する樹脂組成物は、このような低温でも硬化される。
【0093】
熱圧着の際、第1回路部材および/または第2回路部材を押圧する圧力は、10MPa以上、50MPa以下であってよく、10MPa以上、30MPa以下であってよい。はんだが溶融しているため、過度に高い圧力を回路部材に印加しなくても、電極とはんだとの濡れにより、電気的接続を容易に確保できる。
【0094】
熱圧着の時間は、特に限定されない。熱圧着の際の圧力が上記範囲の場合、熱圧着の時間は、例えば、60秒以下であってよく、5秒以上、30秒以下であってよく、5秒以上、15秒以下であってよい。製造コストが低減されるとともに、回路部材の歪みおよび反りを抑制し易いためである。第1回路部材および第2回路部材を接続する樹脂組成物は、このような短時間であっても硬化される。
【0095】
[実施例]
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0096】
[実施例1~6、比較例1~8]
(樹脂組成物の調製)
フィルム状の樹脂組成物を、以下のような方法で調製した。樹脂組成物に含まれる各成分の配合量を表1に示す。
表1に示す配合量で各成分を混合し、自転・公転ミキサーにて混練し、ペーストを調製した。フェノキシ樹脂は、トルエンおよび酢酸エチルを用いて予め溶解させておいた。作製したペーストを、バーコーターを用いて離型紙に塗布した後、常温で乾燥させることによって、フィルム状の樹脂組成物(膜厚20~35μm)を得た。
【0097】
実施例1~6、比較例1~8で使用した各成分は、以下の通りである。
ビスフェノール型エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、製品名 jER828、エポキシ当量 184~194、分子量 約370、三菱ケミカル(株)製
多環芳香族型エポキシ樹脂:ナフタレン型エポキシ樹脂、製品名 EPICLON HP-4032D、エポキシ当量 136~150、DIC(株)製
ノボラック型エポキシ樹脂:フェノールノボラック型エポキシ樹脂、製品名 jER152、エポキシ当量 176~178、三菱ケミカル(株)製
フェノキシ樹脂:ビスフェノールA型、製品名 PKHC、重量平均分子量 43000、Gabriel Phenoxies社製
硬化剤:2-メチル-イミダゾール、製品名 キュアゾール2MZ-H、四国化成工業(株)製
導電性材料:はんだ粒子、Bi-In合金(Bi55質量%、In45質量%)、平均粒径1μm~6μm、融点89℃
無機フィラーA:球状溶融シリカ、製品名 シーホースターKE-S50、平均粒径0.5μm、(株)日本触媒製
無機フィラーB:球状溶融シリカ、製品名 シーホースターKE-S30、平均粒径0.3μm、(株)日本触媒製
無機フィラーC:溶融シリカ、平均粒径0.5μm、グリシジル基表面導入タイプ
無機フィラーD:溶融シリカ、平均粒径0.3μm、グリシジル基表面導入タイプ
【0098】
(接続抵抗値の評価)
酸化インジウムスズ(ITO)を蒸着したガラス基板と、金メッキを施したポリイミド製フレキシブル基板とを用意した。ガラス基板のサイズは、30mm×30mm×0.3mmであり、ITO(電極)の膜厚は、2000Å~2500Å(オングストローム)であった。ポリイミド製フレキシブル基板のサイズは、35mm×16mm×0.08mmであり、金メッキ(電極)の膜厚は、0.03~0.5μmであった。
【0099】
実施例1~6および比較例1~8で調製したフィルム状の樹脂組成物(1.5mm×15mm)を、それぞれガラス基板とフレキシブル基板との間に配置し、150℃に加熱しながら、30MPaの圧力で10秒間加圧して接着させることで、接合体を得た。
【0100】
各接合体について、JIS C 60068-2-14法に準じ、冷熱衝撃信頼性試験を行った。低温(T)を-40℃、高温(T)を85℃、放置時間(t)を30分間、サイクル数を1000とした。試験前の接続抵抗値(初期抵抗値)R、試験中の接続抵抗値および試験後の接続抵抗値(試験後抵抗値)Rを、テスター(マルチ計測器(株)、MCD008)にて測定した。初期抵抗値を測定した後、約20サイクル後に接合体を試験装置から取り出して、試験中1回目の接続抵抗値を測定した。その後、再び接合体を試験装置へ投入し、約150サイクルごとに接合体を試験装置から取り出して、試験中2回目以降の接続抵抗値を測定した。
【0101】
初期抵抗値Rが10kΩ未満である場合をA、10kΩ以上100kΩ未満である場合をB、100kΩ以上1000kΩ未満である場合をC、1000kΩ以上である場合をDとした。試験後抵抗値Rも同様に、10kΩ未満である場合をA、10kΩ以上100kΩ未満である場合をB、100kΩ以上1000kΩ未満である場合をC、1000kΩ以上である場合をDとした。OLは、テスターの測定範囲を超えたことを示す。
【0102】
また、試験中に測定された最小の接続抵抗値Rminに対する、試験中に測定された最大の接続抵抗値Rmaxの割合(=Rmax/Rmin)を算出した。結果を表1および表2に示す。
【0103】
(弾性率の評価)
実施例1~6および比較例1~8で調製した樹脂組成物について、粘弾性測定装置(日立ハイテクサイエンス社製、粘弾性測定装置 DMA7100)を用いて、85℃における弾性率Eと、25℃における弾性率Eとを測定した。試験片は、長辺30mm、短辺1mm、厚み1mmのシリコーンゴム製の枠体の中に、実施例1~6および比較例1~8で調製したペースト状の樹脂組成物を入れ、恒温槽にて硬化させることにより作製した。
【0104】
弾性率Eが3GPa以上である場合をA、2.5GPa以上3GPa未満である場合をB、1.5GPa以上2.5GPa未満である場合をC、1.5GPa未満である場合をDとした。結果を表1および表2に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
実施例1~6で調製した樹脂組成物の硬化物は、いずれも高温時における弾性率が高かった。さらに、初期および試験後の接続抵抗値は小さく、試験中における接続抵抗値の変化も小さかった。一方、比較例1、8では、初期の接続抵抗値は低いものの、試験後の接続抵抗値は大きく、試験中における接続抵抗値の変化も大きかった。さらに、高温時における弾性率は低かった。比較例2~6では、高温時における弾性率が低く、試験後の接続抵抗値は測定範囲を超えるほど大きかった。比較例7では、高温時における弾性率が高かったものの、初期および試験後の接続抵抗値は、測定範囲を超えるほど大きかった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の樹脂組成物は、低温、低荷重かつ短時間の熱圧着により硬化するとともに、その硬化物は、高い接続信頼性を有する。また、フィルム状に成形されやすい。よって、本発明の樹脂組成物は、異方性導電接着剤として有用であり、LCDモジュールなどの様々な電子装置の接着剤として、好ましく使用できる。
【符号の説明】
【0109】
10 第1回路部材
1 第1回路部材の電極
20 第2回路部材
2 第2回路部材の電極
30 樹脂組成物の硬化物
31 樹脂部
32 はんだ部
33 導電性材料
34 無機フィラー
図1